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(1)

創造神話と新創造論

(2)

現代によみがえる神話

 神話に描かれた天地創造の物語は、科学時代の 今日、荒唐無稽なものと考えられたり、単なるお とぎ話にすぎないと見られる場合が多い。しかし 統一思想の新創造論の観点から、これらの創造 神話を解釈すれば、決して荒唐無稽なものでなく 、またおとぎ話でもないことが明らかになる。すな わち創造神話も神様が人類に与えた象徴的な物 語であって、新創造論を通じて、現代に生かすこ とができるのである。

(3)

宗教と神話を迷信として抹殺しようと

した共産主義

共産主義は科学の力をもって、神様を否定しました。 共産主義のみが科学的であるとし、科学の発達は神 様と宗教とあらゆる神話を迷信に規定できるものと信 じました。そして、「宗教は民衆のアヘンである」と宣言 したのです。では、20世紀の科学は果して、共産主義 が予言したとおりに、神様と宗教と神話をこの地球上 で抹殺し得たのでしょうか。いいえ、そうではありませ ん。20世紀の科学は、それとは正反対に、科学的であ ることを誇っていた共産主義を19世紀の迷信として墜 落させてしまい、かえって神様を証すものとなっていき つつあります。 文鮮明 『南北統一』 p.927

(4)

(1)原人神話

原初に原人(あるいは神や女神)が存 在し、その原人が死んで、または生贄 になって、原人の身体より、人間、動物、 植物、天と地が生じたという神話が世 界各地に見られる。その中で代表的な ものをあげる。

(5)

① 巨人プルシャ(古代インド)

神々が巨人プルシャを生贄としたとき、祭祀 が生じ、一切の家畜が生じた。プルシャの口 からバラモン(祭司)、両腕からクシャトリア (王族)、両腿からヴァイシャ(農工商)、両足 からシュードラ(奴隷)が生じた。さらにプル シャの心臓から月、目から太陽、口からイン ドラ神とアグニ神、呼吸から風神ヴェーユが 生じた。またプルシャのへそから空界、頭か ら天界、足から地界、耳から方位が生じた。

(6)

巨人プルシャ

『ヒンドゥー教の本』 (学習研究社)より

(7)

② 巨人盤古(古代中国の神話)

天と地ができる以前は、混沌としたモヤのよ うな状態であった。その混沌の中から盤古 が生まれた。盤古はどんどん成長して大巨 人になったが、やがて死を迎えた。死んだ盤 古は万物の元になった。その息は風雲とな り、声は雷に、左の眼は太陽に、右の眼は 月になった。手足と体は山に、血は川に、肉 は土に、皮や毛は草木に、歯や骨は金属や 石に、汗は雨になった。

(8)

万物の祖として崇められる巨人・盤古

Mythology

(9)

③ 巨人イミル(北欧神話)

巨人イミルは世界最古の存在であり、神々 とこれに敵対する巨人一族との共通の祖先 だったとされている。彼はオーディン、ヴィリ、 ヴェという三柱の兄弟の神によって殺され、 三神はイミルの死体から世界を造った。イミ ルの身体の肉は大地となり、血は海となり、 骨は山脈となり、髪の毛は樹木となった。頭 蓋骨は空となり、脳髄は雲になったという。

(10)

原初の牝牛アウドフムラの乳を吸うイ

ミル

(11)

④ 原初の女神ティアマト(バビロニア) 救世主とされる太陽の子、マルドゥク神 は塩水の海の女神ティアマトを殺して、 彼女を二つに裂いた。そしてティアマト の身体の上半分から星を伴った天空が 創られ、下半分から植物と動物を備え た大地が創られた。ティアマトの愛人で あったキングは首をはねられ、その血 から人間が創られた。

(12)

ティアマト退治の図

(13)

⑤ イザナギ神話(日本神話)

イザナギの神が黄泉の国から帰った後、 みそぎをした時、彼の左の眼から太陽 神のアマテラスが、右の眼から月神の ツキヨミが、鼻からは暴風神的性格が 著しいスサノオが生まれた。この神話 は原人神話の変形であるといえよう。 よ  み

(14)

イザナギから生まれた日と月と風の神

(15)

原人神話と新創造論

原人神話によれば、原初に原人が存在 し、その原人の身体から、人間と万物 が生じたという。新創造論によれば、神 が始めに人間始祖(アダム・エバ)の構 想を立てられ、その構想をモデルにし て、人類、動物、植物、鉱物、天体を構 想された。したがって神話の原人とは、 人間始祖を指すと見れば、原人神話は 新創造論に通じているといえよう。

(16)
(17)

(2)宇宙卵の神話

世界が一個の卵から創られたという神 話が、世界各地に見出される。これは 何を意味するのであろうか。主要なも のを取りあげてみよう。

(18)

① 旧約聖書の天地創造神話(ユダヤ・ 

キリスト教)

創世記一章には、 「地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあ り、神の霊が水のおもてをおおっていた」とあ るが、この文章の最後に用いられているヘブ ライ語の表現は、文字通り訳せば、「神の霊が 巨大な鳥の形を取って、原初の大洋の上で卵 を暖めていた」ことを意味すると言われる。

(19)

② ヒンドゥー教の宇宙創造神話

プルシャ(原人)は宇宙卵の中で1000 年間、眠っていたが、やがて目覚め の時がきて宇宙卵が割れると、中か らプルシャが現れ、彼の目覚めととも に世界が発生した。

(20)

世界という胎児を宿す梵卵

『ヒンドゥー教の本』 (学習研究社)より

(21)

ブラフマー(梵天)は最初に海を創り、 その中に種子を一粒まいた。その種子 はやがて卵に成長した。それをブラフ マーは二つに割った。割られた卵の金 の半分から天空が、銀の半分から大 地が生じた。ついであらゆる森羅万象 が創られた。

(22)

宇宙卵から天地が創造された

『宇宙大紀行』 (福武書店)より

(23)

③ 中国の盤古神話

初めに巨大な卵があり、中には混沌が あった。それは陰と陽――男女、静と 動、冷と熱、湿と乾の混ざりあったもの であった。この陰陽の中に盤古がいた。 盤古が卵の殻を破って現れると、天と 地が分かれていった。

(24)

④ 韓国の卵生神話

東扶余の金蛙王の時代であった。王はある日、 川のほとりで世にも美しい娘、柳花に出会った。 柳花は天帝の孫を身ごもっていた。王が柳花 を連れて王宮に戻ると、柳花が大きな卵を生 んだ。やがて卵がかえり、なかからひとりの男 の子が現れた。男の子は朱蒙と呼ばれるよう になった。 キムワァ ユファ チュモン

(25)

やがて朱蒙の才を恐れた金蛙王の王子たち から生命をねらわれるようになり、朱蒙は逃亡 した。朱蒙一行は淹水に至り、追いつめられた が、魚とすっぽんが一列になって橋を作り、無 事に川をわたった。朱蒙は南下して高句麗を 興し、高句麗の始祖となった。朱蒙は東明王と 称された。扶余国の王と同一人物である。 ウォムス

(26)

新羅の始祖、朴赫居世 紫色にかがやく大卵の前で白馬が跪いていた。 その大卵から生まれた。 パク ヒョ クォ セ 新羅の第四代の王、脱解 船にのせられて流されたとき、卵の状態であっ た。 加羅(伽耶)の首露王 天から降りてきた黄金色の六つの卵のなかの 一つから生まれた。 カ ラ ダ  ヘ ス ロ カ ヤ ○ ○ ○

(27)

⑤ 「カレワラ」の卵神話(フィンランド)

初めに、原始の海と空があった。空の娘イ ルマタルが海上を漂っていた時、一羽の小 鴨が飛んできてイルマタルの膝に金の卵六 つと鉄の卵一つを産んだ。イルマタルの膝 から落ちた卵は水中に落ち、風にゆられ、波 にもまれて割れてしまった。卵の殻の下は 大地となり、上の部分は大空となり、白身は 月と星となり、黄身は太陽となった。やがて イルマタルは、最初の人間であるパイナモイ ネンを生んだ。

(28)

⑥ ギリシアの宇宙卵神話

女性神カオスが海を造り、その波の上で 踊った。踊りから生じた風によって物質 ができた。カオスはその物質から巨大な 蛇を造った。カオスは鳩の姿になって巨 大な卵を産み、蛇がそれを孵化した。こ の原初の卵から宇宙の万物が生じたの である。

(29)

ギリシア神話の宇宙卵

Mythology

(Thunder Bay Press)より

(30)

⑦ ヘリオポリス神話の火の鳥(エジプト) ヘリオポリス神話によれば、原初にベヌと 呼ばれる聖なる鳥の形でアトゥム神が現 れた。鳥が海の上で鳴くことによってゆら ぎが生じて創造が始った。アメン神が海 (ヌン)の上で、がちょうのように鳴くことに より、宇宙的な激動が生じたという説もあ る。鳥が原初の盛り土にとまって卵を生ん だ。卵がかえると、そこに太陽神が現れた。 ギリシアのヘロドトスはその鳥を火の鳥 (フェニックス)と記した。

(31)

火の鳥(フェニックス)

Mythology

(32)

⑧ 現代の宇宙卵

―ビッグバン理論

今から135~150億年前に、宇宙は一点 の爆発から生まれ、急激な膨張インフ レーションを伴って、急速に広がって いった。そこから素粒子、原子、天体が 生まれ、現在のような広大な宇宙に なったというのである。これは宇宙卵が 爆発的に孵化したものと見ることができ よう。

(33)
(34)

宇宙卵神話と新創造論

新創造論によれば、神は始めにロゴス(言)を 形成され、次に被造世界を創造された。ロゴス とは、被造世界に対する神の構想または設計 図であるが、ロゴスの形成においては人間の構 想をモデルにして、高級な生物→低級な生物→ 天体→原子→素粒子→光というように、下向的 に構想がなされた。ところが被造世界の創造に おいては、その逆に光から始まり、人間を目指 していったのである。したがって宇宙はビッグバ ンから始まったのである。大昔の神話において はそれを宇宙卵として捉えていたのである。

(35)

宇宙卵の中にはロゴスが宿っていた。そ してロゴスに導かれて世界が創造された のであった。ロゴスすなわち神の構想は 人間(アダム・エバ)を目標とするもので あった。つまり宇宙卵の中に人間と万物 の構想が入っていた。したがって卵から 人間と万物が生まれたという神話の物語 も新創造論の立場から見れば、理解でき るのである。

(36)

ロゴスに従い、ビッグバンから始った宇

宙の創造

(37)

(3)男女神の交合による天地創造

神は男性と女性の両性をそなえておら れる。したがって神の形に似せて男と 女が創造された。さらに男女神の結合 によって万象が生まれた。そのような神 話が世界中でみられる。

(38)

① ユダヤ・キリスト教

神は自分のかたちに人を創造された。 すなわち、神のかたちに創造し、男と女 とに創造された(創世記1:27)。

(39)

アダムとエバ

(40)
(41)

アダムとイヴの楽園追放

(トルコ・トプカプ宮殿博物館)

『イスラム教の本』 (学習研究社)より

(42)

③ イザナギとイザナミ(日本の神話)

天と地が始ったとき、高天原に天之御中主神を 中心とする5神の別天神と2神の根源神が生ま れた。これらの神々は姿を現さず、男女の性別 がなかった。次に生まれた10神は男女ペアの、 姿を現す神であり、最後に生まれたのがイザナ ギの神、イザナミの神であった。イザナギとイザ ナミが天の浮橋に立って、天の沼矛をかき回すと オノゴロ島となった。 あめのみなかぬしのかみ ことあまつかみ あめ ぬぼこ

(43)

 天の御柱を回るイザナギとイザナミ イザナギの神とイ ザナミの神が天の 御柱のまわりを 廻って、夫婦の交 わりをすることに よって、大八島の 国(日本)が生ま れた。 酒井倫子『神話かるた絵ことば』錦正社より

(44)

④ ヒンドゥー教の男女神

『リグ・ヴェーダ』によれば、天の男性神ディアウ スと大地の女性神プリティヴィーが合体した天 地両神ディヤーヴァー・プリティヴィーが万物の 父母であり、その維持者であるという。ディアウ スとプリティヴィーから生まれたのが『ヴェーダ』 の神々の王インドラ(帝釈天)である。 ○ たいしゃくてん ヒンドゥー・タントリズムによれば、男性神シ ヴァと女性神シャクティ(パールヴァティー妃) の性的合一による宇宙創成が説かれている。 ○

(45)

ヒンドゥー教:シヴァ神とパールヴァティー妃 シヴァ神と神妃 シャクティ(パー ルヴァティー)の 性的合一によっ て世界が創造さ れた。二神が合 一し、サーマラ スヤ(愛の歓喜) に至ると世界創 造が起きる。 『インドの神々』創元社より

(46)

龍の女神である女媧は人類を創造した神と も考えられていたが、後に女媧は伏羲と尾 を絡ませた一対の神とされた。女媧と伏羲 は始祖の神であるとともに、天地を創造した 神であった。 大洪水を生きのびた伏羲と女媧の兄妹(あ るいは弟姉)が夫婦となって人類の始祖とな るという伝承がある。

⑤ 伏羲と女媧(中国の神話)

ふっ き じょ か ○ ○

(47)

伏羲と女媧が交 わることによって 国が生まれた。

『世界の神々の事典』 学習研究社より

(48)
(49)

⑥ 陰陽による宇宙創成(中国の思想)

宇宙の根源である太極から陰陽

の二気が生じ、二気から四象が

生じ、四象から八卦が生じるとい

うようにして、宇宙は創成された。

(50)

陰陽と八卦

(51)

男女神による天地創造と新創造論

神は陽性と陰性の二性性相の中和的 主体である。したがって神は男性神と 女性神が一つになった存在であると見 ることができる。神はロゴス(言)によっ て被造世界を創造なさったが、ロゴス は神の陽陰の二性性相に似ていた。し たがって男と女、雄と雌、おしべとめし べ、陽イオンと陰イオンのペアシステム の世界が創造されたのである。

(52)

(4)回転による創造

神 が 棒 で 海 や 地 上 を 攪

拌しながら世界を創造さ

れたという神話がある。

(53)

① 古代インドの乳海攪拌

遠い昔、ヴィシュヌ神が神々に、マンダラ山 を攪拌の棒とし、ヴァースキ龍を綱にして乳 海をかき混ぜるように命じた。ヴィシュヌ自 身も巨大な亀に姿を変えて回転の軸受けと なった。この攪拌によって、月と太陽、女神 ラクシュミー、白い象などが現れた。最後に、 神々の侍医ダヌヴァンタリが不死の霊薬を 奪 っ た が 、 ヴ ィ シ ュ ヌ が そ れ を 取 り 返 し 、 神々はそれを飲んで勢力を回復した。

(54)

乳海の攪拌図

(55)

乳海の攪拌図

(56)

② 天の沼矛(日本の神話)

天之御中主神を中心とした五つの別天神がイザ ナギとイザナミの二神に天の沼矛を授けた。イザ ナギとイザナミが天の浮橋に立って、橋の上から はるか下に長い沼矛を下して、ぐるぐるとかき回 すと、矛の先からポタポタと塩がしたたり落ちた。 落ちた塩がかさなり積って、オノゴロ島ができた。 あめ ぬぼこ あめ うきはし

(57)

天の沼矛をかき回すイザナギとイザナミ

酒井倫子『神話かるた絵ことば』 (錦正社)より

(58)

③ 世界の柱祭り(おんばしら)

(59)

日本のおんばしら

(60)

イギリスのメーポール(

Mayplole)

ヨーロッパでは、五月一日のメーデーに、教会や 町の広場に柱を建て、その先端に緑の葉を結び、 結びつけたひもを手に持って、その周囲をまわり ながら踊る風習がある。このメーポールは原初的 な宇宙柱を象徴するものといえる。日本の御柱 の伝承とも共通している。 鳥居 礼 おんばしら

(61)

④ 現代科学の宇宙像

宇宙誕生10億年後、光る物質が集っ て、雲をつくり、雲から生まれた原始の 星は、群れをつくり銀河を形成した。 クェーサーは当時の銀河の活発な中 心核であるといわれる。

(62)

宇宙の創生の歴史を見せるクェーサー

NHKサイエンススペシャル 『宇宙銀河オデッセイ6』より

(63)

超新星の形骸パルサー

―星の最後―

星の死である超新星の爆発の跡に残 されるのがパルサーと呼ばれる中性 子星である。X線ビームを中心として 高速で回転している。

(64)

高速で自転するパルサー

NHKサイエンススペシャル 『銀河宇宙オデッセイ2』より

(65)

銀河中心核

銀河中心核にあるブラックホールは物 質をジェットで宇宙空間に吐き出すエ ンジンとして働いているといわれる。中 心から噴出するジェット流を中心軸とし てガス雲が高速で回転している。

(66)

ジェットを中心軸として回転する銀河中心核

(67)

宇宙創造における回転と新創造論

神の宇宙創造は創造の原理である天道によって 行われ、宇宙は天道によって運行している。主体 と対象が中心軸を中心として円満な授受作用を 行い、円環運動を行うというのがその基本的な法 則である。(その時、主体が中心軸に位置してい る場合が多い。)したがって宇宙の創造も、銀河 の運行も、星の最後も、中心軸を中心として回転 しながら営まれているのである。人間においては、 男と女が縦的な真の愛(神の愛)の軸を中心とし て愛しあうとき、真なる夫婦となるのであり、個人 においては、心の軸を中心として体が回転するこ とにより、真なる人格を形成するのである。

(68)
(69)

(5)言による創造

ヨハネ福音書に「始めに言があった。

言は神と共にあった。・・・・・・すべての

ものは、これによってできた」とあるよう

に、キリスト教では、神が言(ロゴス)に

よって世界を創造したのである。その

他の神話においても、同様な創造説が

見られる。

① キリスト教

(70)

② 「かくあれ」の言で創造(イスラム教)

天地の造り主。ご命令をくだしたもうと

きは、ただ、「かくあれ」との言で、すべ

てその通りになる(コーラン2:117)。

もしこのお方があることをきめたもうな

ら、ただ、「あれ」と一言発せられるだ

けで成就する(コーラン40:68)。

(71)

③ 創造神プタハの言による

創造(エジプト)

メンフィスの人々はプタハを世界の

創造主であると考えた。プタハはす

べてのものを思考と言によって創っ

たのである。彼の心臓から出る思

考と舌から出る言によって、すべて

のものは現実のものとなったので

ある。

(72)

プタハ神の像

Mythology

(73)

④ マヤ神話の創造論 原初、空と海が広がる中、テペウと 「羽毛の蛇」(グクマッツ)しか存在しな かった。空っぽの空間に何かができれ ばいいと彼らが考えると、実際に何か が現れた。「大地あれ」と言うと大地が でき、「山」を思うと山が現れ、「木よ」 と言うと木が生まれた。こうして創造は 続いた。

(74)

新創造論:「創造の二段構造」

新創造論によれば、始めにロゴス(言)が 形成され、次にロゴス(言)に従って被造世 界が創造された。ロゴスの形成は下向性で あった。すなわち、神は人間始祖アダム・エ バの構想を最初に立てられ、それをモデル にして、高級な生物から低級な生物、そし て天体、原子、素粒子、光という順序で世 界を構想された。次にロゴスに従って被造 世界が創造されたのであるが、それはロゴ スの形成とは逆の順序で上向的に、光か ら始って、最後に人間が造られたのである。

(75)

(6)原初の質料

原初に水(海)や土(泥)があったとい う神話がある。 無から創造がなされたという神話もあ る。「無からの創造」の神話はエクス・ 二ヒロ(ex nihilo)またはデ・ノヴォ(de novo)型創造と呼ばれ、特に一神教 の宗教に顕著に見られる。 ○ ○

(76)

① キリスト教

キリスト教における「無からの創造」は アウグスティヌスによって確立された。 神は無から質料を創造し、その質料を もとにして世界を創造した。すなわち、 全能なる神は、なんの材料もなく、ど んな手段もつかわずに宇宙を創造し たのである。

(77)

② イスラム教

「彼ら[人間]は無から造られたではな いか」(52:35)とあるように、『コーラン』 には「無から」の創造を示す例がいく つか見られる。

(78)

③ 仏教

仏教では、世界の創造に関してはあまり関心 がもたれていないが、初期のインド仏教の経典 の中に、釈迦がこの世の終わりと新しい世の 創造について語っている。そこでは創造者にあ たる存在はなく、一種の「無からの創造」である。 初めに、すべては水と闇に覆われていた。長い 間、日も月も星もなく、季節の移り変わりもなく、 生き物も人もいなかった。熱い乳が次第に冷め て表面に皮ができるように、水の上に地ができ た。そして肉体をもつ者が現れ、日と月と星が 現れ、男と女の両性ができた。

(79)

④ 土や原初の海(水)からの創造

原初の海からの創造も、多くの創造神話 に共通して見られる主題である。また土 から造られたという説も見られる。そして 超越神が動物(あひる、亀など)を原初の 海の中へ潜らせ、水底から採った泥土で 創造されたという潜水型の創造神話もあ る。

(80)

⑤ 現代科学の「無からの宇宙創生論」 アレクサンダー・ビレンキンは「無からの宇 宙創生論」を発表した。ある時、突然、時間 も空間もない「無」から、素粒子より小さい閉 じた宇宙が、エネルギーの壁をトンネルのよ うにくぐり抜けて誕生したという。ここでビレ ンキンのいう「無」とは、何もない無ではなく て、「何かに満ちている無」、「とてつもない 力を背後に秘めた無」であり、「真空のエネ ルギー」を秘めているのである。

(81)

ビッグバン宇宙から物質が生じた

(82)

新創造論から見た無からの創造

神は何もないところから被造世界を創造 された。したがって被造世界は正に無か ら創造されたのである。しかし神には世 界を生みだすエネルギーが備わってい るのであり、そのエネルギー(前エネル ギーという)によって力と物質が生じた のである。そういう意味では、全くの無 からの創造ではない。

(83)

現代宇宙論のいう「真空のエネル ギー」とは「前エネルギー」であるとい えよう。神のエネルギーである前エネ ルギーからエネルギーが生じ、さらに エネルギーから素粒子、原子、分子、 そして原初の物質である水や空気や 土が生じたのである。 神の創造において、始めに「光があっ た」という光とは、ビッグバンにおける 熱エネルギーに相当する。 ○ ○

(84)

現代の物理学によれば、原初の物質 はエネルギーであり、エネルギーより光、 素粒子、原子、分子が現れ、さらに水 や土や空気が現れたのである。しかし ながら、自然科学が発達していなかっ た古代の神話においては、水や土を原 初の物質と見るほかなかったのである。

参照

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