密 教 文 化
十
急
怒
尊
に
つ
い
て
大
西
秀
城
密 教 で は 諸 尊 が 葱 怒 の 姿 を と り 登 場 す る こ と が あ る 。 こ れ ら 葱 怒 尊 は 後 期 密 教 の 時 代 に は 、 四 方 、 四 隅 、 上 下 の 十 (1) 方 を 守 る 護 法 の 諸 尊 と し て 、 十 葱 怒 尊 と い う グ ル ー プ を 形 成 す る 。 十 葱 怒 尊 は 、 マ ン ダ ラ 上 に お い て は 常 に 最 外 院 に 位 置 し 、 ま た マ ン ダ ラ に 描 か れ な い 場 合 に は 守 護 輪 の 観 想 時 に 登 (2) 場 す る 。 守 護 輪 と は 車 輪 状 の 武 器 で あ り 、 十 本 の 輻 を も つ た め 十 輻 輪 と も 呼 ば れ る 。 十 分 心怒 尊 は そ れ ぞ れ 十 本 の 輻 に (3) 乗 り 内 部 の 空 間 を 守 る 働 き を す る 。 つ ま り 十 葱 怒 尊 と は 、 結 界 の 役 割 を 果 た す 尊 格 グ ル ー プ で あ る 。 本 論 文 で 取 り 上 げ る 十 葱 怒 尊 と そ の 守 護 す る 方 角 は 次 の よ う に な っ て い る 。 東 ヤ マ ー ン タ カ (k a a pntka) 南 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ (Prajnantaka)ま た は ア パ ラ ー ジ タ (Aparajita) 西 パ ド マ ー ン タ カ ( Padmantaka)ま た は ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ (Hayagriva) (4) 北 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ (Vighnantaka)ま た は ア ム リ タ ク ン ダ リ ン (Amrtakundalin) 北 東 ア チ ャ ラ (Acala) 南 東 タ ッ キ ラ ー ジ ャ (Takkirjaja)南 西 ニ ー ラ ダ ン ダ (Noiladamda) 北 西 マ ハ ー バ ラ (Majabala) 上 ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン (Usnisacakravartin) 下 ス ン バ (Sunmbha) ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ で は 上 下 の 守 護 者 が 以 下 の よ う に な る 。 上 ス ン バ 下 ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ (Vajrapatala) 本 論 文 第 一 章 で は 、 葱 怒 尊 が グ ル ー プ を な し 登 場 す る 聖 典 を 取 り 上 げ る 。 続 い て 第 二 章 で は 、 十 葱 怒 尊 が グ ル ー プ 化 さ れ る 以 前 の 聖 典 に つ い て 、 分 心怒 尊 が ど の よ う に 説 か れ て い る か 調 べ て い く 。 そ し て そ れ ら の 記 述 に よ り 、 十 分 心 怒 尊 の グ ル ー プ 化 の 過 程 と 、 各 葱 怒 尊 の 特 徴 と に つ い て 考 察 を 行 っ て い く 。 三 、 十 葱 怒 尊 の 説 か れ る 聖 典 十 分 心 怒 尊 の 説 か れ る 代 表 的 な 聖 典 と し て ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ が あ る 。 ま た 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ 、 ﹃ 妙 吉 祥 平 等 秘 密 最 上 観 門 大 教 王 経 ﹂ 等 に も 十 分 心 怒 尊 は 登 場 す る 。 以 下 、 そ れ ぞ れ の 聖 典 に お け る 十 葱 怒 尊 の 記 述 に つ い て 見 て い く 。 1 、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹂ 十 葱 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹂ は 無 上 喩 伽 部 ・ 父 タ ン ト ラ の 代 表 的 聖 典 で あ る 。 本 聖 典 は 十 八 章 か ら 成 る が 、 第 十 七 章 ま で (5) の 根 本 タ ン ト ラ と 第 十 八 章 の ウ ッ タ ラ タ ン ト ラ に 区 分 す る こ と が で き 、 し か も 第 十 八 章 の 成 立 が 最 も 遅 い と さ れ る 。 分 心 怒 尊 が 三 つ の グ ル ー プ と し て ま と め て 説 か れ て い る の は 、 第 一 、 第 十 三 、 第 十 四 、 第 十 八 章 で あ る 。 第 一 章 で は 四 葱 怒 つ ま り 、 ヤ マ ー ン タ ク リ ト (Yamantakrt)、プ ラ ジ ナ ー ン タ ク リ ト (Pr ajnantkart)、パド マ ー (6) タ ク リ ト ( Padmanakrt)、ヴ ィ グ ナ ー ン タ ク リ ト (Vighnartakrt)が 東 南 西 北 の 四 門 に そ れ ぞ れ 配 さ れ る 。 (7) 第 十 三 章 で は ) 度 に わ た り 、 十 葱 怒 尊 の 影 像 に つ い て の 記 述 が あ る 。 そ の 十 分 心怒 尊 は 次 の 順 序 で 登 場 す る 。 ヤ マ ー ン タ カ ア パ ラ ー ジ タ ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ ヴ ァ ジ ラ ア ム リ タ (Vajramrta) タ ッ キ ラ ー ジ ャ マ ハ ー バ ラ ニ ー ラ ダ ン ダ ま た は ニ ー ラ ヴ ァ ジ ラ (Nilavajra) ア チ ャ ラ マ ハ ー ウ シ ュ ニ ー シ ャ (Maha-Usnisa)ま た は ヴ ィ デ ィ ヤ ー チ ャ ク ラ (Vidyaca Kra) ス ン バ こ の 章 で は 、 右 の よ う に 尊 名 の 固 定 し て い な い 尊 格 が あ る 。 ま た 、 マ ハ ー バ ラ と 二 ー ラ ダ ン ダ の 登 場 す る 順 番 が 方
(8) 角 に 基 づ い た 順 番 と 異 な っ て い る 。 (9) 第 十 四 章 で は 、 十 分 心怒 尊 の う ち 九 分 心怒 尊 の 真 言 が 説 か れ る 。 そ れ は 次 の 順 序 で あ る 。 ヤ マ ー ン タ カ ア ム リ タ ク ン ダ リ ン ア パ ラ ー ジ タ (10) パ ド マ サ ン バ ヴ ァ ( Padmasambhava) ニ ー ラ ダ ン ダ マ ハ ー バ ラ タ ッ キ ラ ー ジ ャ ア チ ャ ラ ス ン バ ハ コ し こ の 章 に 説 か れ て い る の は 九 分 心 怒 尊 だ け で あ り 、 し か も 登 場 す る 順 番 は 方 角 と は 関 係 の な い も の で あ る 。 第 十 八 章 は 十 分 心 怒 尊 の 教 義 的 な 意 味 が 説 か れ る 。 ヤ マ ー ン タ ク リ ト 、 プ ラ ジ ナ ー ン タ ク リ ト 、 パ ド マ ー ン タ ク リ ト 、 (12) ヴ ィ グ ナ ー ン タ ク リ ト の 四 葱 怒 尊 の 説 明 は 詳 し く 、 そ れ 以 外 の 六 葱 怒 尊 の 説 明 は 簡 単 な も の で あ る 。 そ の 他 に 、 六 葱 (13)(14) 怒 尊 が 四 隅 、 上 下 に 配 さ れ る こ と が 示 さ れ て い る 。 ま た 、 十 分 心怒 尊 が 十 輻 輪 上 に 布 置 さ れ る こ と も 説 か れ て い る 。 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の 十 分 心 怒 尊 に 関 す る 記 述 は 以 上 で あ る 。 第 一 章 は 四 分 心怒 尊 し か 登 場 し な い 。 第 十 三 章 は 十 分 心 怒 尊 が 登 場 す る が 、 そ の 説 か れ る 順 番 が 完 全 に は 方 角 に 基 づ く も の で は な く 、 尊 名 も 固 定 し て い な い 。 第 十 四 章 は 九 十 分 心 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 分 心怒 尊 の み で あ り 、 し か も 無 秩 序 な 順 序 で 説 か れ て い る よ う に 思 わ れ る 。 十 葱 怒 尊 が す べ て 登 場 し 、 し か も 完 全 に 方 角 に 基 づ い た 順 序 で 出 て く る の は 最 も 成 立 の 遅 い 第 十 八 章 だ け で あ る 。 よ っ て 前 十 七 章 ま で に は 十 葱 怒 尊 は 完 成 さ れ た 形 で は 登 場 し て い な い 。 2 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹂ ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ は 、 ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ と ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ と の 中 間 的 聖 典 と し て 重 要 な も の で あ る 。 本 聖 典 の 梵 文 原 典 は 発 見 さ れ て い な い が 、 蔵 訳 と 漢 訳 が 存 在 す る 。 蔵 訳 は 新 旧 二 訳 あ り 、 そ の う ち 新 訳 の 方 が 旧 訳 よ り も 古 く 、 (15)(16) し か も 新 訳 が 漢 訳 と 対 応 す る と さ れ る 。 よ っ て こ こ で は 新 訳 を 資 料 と し て 取 り 上 げ て い る 。 (17) ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ で 葱 怒 尊 が ま と め て 説 か れ て い る の は 第 二 、 第 三 、 第 四 、 第 五 、 第 六 章 で あ る 。 (18) 第 二 章 で は 次 の よ う に 八 葱 怒 尊 が 八 方 に 配 さ れ る 。 東 門 ヤ マ ー ン タ カ 南 門 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ 西 門 パ ド マ ー ン タ カ 北 門 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ 東 北 偶 ア チ ャ ラ 東 南 隅 タ ッ キ ラ ー ジ ャ 西 南 隅 ニ ー ラ ダ ン ダ
西 北 隅 マ ハ ー バ ラ (19) 第 三 章 で は 、 第 二 章 と 同 じ 八 葱 怒 尊 の 短 い 真 言 が 説 か れ る 。 説 か れ る 順 番 も 第 二 章 と 同 じ で あ る 。 蔵 訳 の こ の 部 分 は 、 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ 、 パ ド マ ー ン タ カ 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の 尊 名 が そ れ ぞ れ ア パ ラ ー ジ タ 、 ハ ヤ リ ー ヴ ゥ 、 ア ム リ タ ク ン ダ リ ン と な っ て い る 。 た だ し 、 真 言 に は 漢 訳 と 同 じ く 、 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ 、 パ ド マ ー ン タ カ 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の 名 前 が 使 わ れ て い る 。 (20) 第 四 章 も 、 八 葱 怒 尊 の 影 像 が 第 二 章 、 第 三 章 と 同 じ 順 番 で 説 か れ る 。 し か も 、 そ の す ぐ 後 に ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン の 影 像 も 登 場 し て い る 。 し か し 、 ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン は 分 心 怒 尊 の 姿 を と っ て い な い 。 一 方 、 そ の 前 に 出 て く る 八 葱 怒 尊 は 分 心怒 の 相 を 示 し 様 々 な 武 器 を 持 っ て い る 。 ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン と 前 の 分 心 怒 尊 と の 影 像 の 違 い は 明 ら か で あ り 、 こ こ で は ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン が 分 心 怒 尊 グ ル ー プ に 含 ま れ て い る と は 考 え に く い 。 (21) 第 五 章 は 、 前 章 ま で の 八 葱 怒 尊 に ス ン バ を 加 え た 九 葱 怒 尊 の 長 い 真 言 が 説 か れ る 。 そ れ は 次 の 順 番 で 登 場 す る 。 ヤ マ ー ン タ カ ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ プ ラ ジ ナ ー ン タ カ バ ド マ ー ン タ カ ニ ー ラ ダ ン ダ マ 、 バ ー バ ラ 十 葱 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 タ ッ キ ラ ー ジ ャ ア チ ャ ラ ス ン バ こ の 順 序 は 前 章 ま で の よ う に 方 角 に 基 づ い た も の で は な い 。 し か も 、 そ の 後 に ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ の 鉤 召 法 が 出 て き て い る 。 し か し 真 言 は 説 か れ て い な い 。 な お 蔵 訳 に は ヤ マ ー ン タ カ か ら パ ド マ ー ン タ カ ま で の 四 葱 怒 尊 の 尊 名 は 説 か れ て い な い 。 第 六 章 は 、 印 に つ い て 説 か れ て い る 。 こ の 章 は 漢 訳 と の 問 に 大 き な 違 い が あ る 。 漢 訳 で は 、 第 二 、 第 三 、 第 四 章 で 説 か れ て い た 八 分 心怒 尊 が 方 角 に 基 づ く 順 序 で 現 れ る 。 そ れ に 加 え て 、 降 三 世 明 王 と 嚇 日 曜 播 多 羅 明 王 (Vajrpatala ) (22) の 印 も あ る 。 し か し 、 こ の 二 尊 は 八 葱 怒 尊 と は 全 く 別 の 場 所 に 説 か れ て い る 。 三 方 、 蔵 訳 で は 、 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ 、 パ ド マ ー ン タ カ の 名 称 が ア パ ラ ー ジ タ 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ と な っ て い る 。 し か も 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の 印 は 説 か れ て い (23)(24) な い 。 ま た 、 漢 訳 の 降 三 世 明 王 に 当 た る 部 分 は 蔵 訳 で はrDorje hummd な っ て お り 、 ス ン バ と は 直 接 関 係 な い と 考 え ら れ る 。 以 上 の よ う に 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹂ に 説 か れ て い る 葱 怒 尊 は 基 本 的 に 八 葱 怒 尊 か ら 構 成 さ れ て い る 。 第 四 章 で は ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ン が 説 か れ 、 第 五 、 第 六 章 で は ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ も 登 場 し て い る 。 し か し 、 こ れ ら の 尊 を 他 の 八 葱 怒 尊 と 全 く 同 三 の グ ル ー プ と し て 考 え る に は 不 適 当 で あ る 。 と こ ろ が 、 第 五 章 の み は 明 ら か に ス ン バ を 加 え た 九 分 心 怒 尊 で 構 成 さ れ て い る と い え る 。 し か も 、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の 第 十 四 章 も 九 葱 怒 尊 か ら な る 真 言 を 説 く 章 で あ っ た 。 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ と ﹃ 幻
(25) 化 網 タ ン ト ラ ﹄ に は 類 似 あ る い は 同 文 の 箇 所 が あ る こ と は 、 既 に 指 摘 さ れ て い る が 、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ 第 十 四 章 と ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹂ 第 五 章 、 こ の 二 つ の 章 は ほ ぼ 同 じ 構 成 を し て い こ と が わ か る 。 つ ま り 、 両 章 と も 最 初 に 四 明 妃 の 真 言 が あ り 次 に 九 葱 怒 尊 の 真 言 が 同 じ 順 序 で 説 か れ る 。 そ の 後 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ は 鉤 召 法 、 ヴ ァ ジ ラ エ ー カ ジ ャ タ ー と ヴ ァ ジ ラ ブ リ ク テ ィ ー の 真 言 、 降 伏 法 が 説 か れ る 。 二 方 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ は 鉤 召 法 (嚇 日 曜 播 多 羅 明 王 ) 大 分 心怒 金 剛 菩 薩 、 大 尊 那 菩 薩 、 大 法 甘 露 ( 漢 訳 名 ) の 真 言 、 成 就 法 と 続 い て お り 、 両 経 の 真 三三 口 の 内 容 も ほ ぼ 三 致 し て い る 。 た だ ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ は そ の 後 も 色 々 な 真 言 が 説 か れ る が 、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の 方 は 最 後 の 部 分 を 身 語 心 の 金 剛 楓 の 真 言 で 終 わ っ て お り そ の 点 は 異 っ て い る 。 こ の 二 つ の 章 は と も に 九 分 心怒 尊 の 真 言 し か 説 か れ な い 。 し か も そ の 登 場 す る 順 序 も 同 じ で あ り 、 他 の 章 と は 大 幅 に 異 な っ て い る 。 ま た ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ で は 第 十 三 章 で す で に 十 葱 怒 尊 が で て い る に も か か わ ら ず 、 第 十 四 章 で は 九 分 心怒 尊 で あ る 。 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ も 他 の 章 で は 基 本 的 に 八 分 心 怒 尊 で あ る の に 対 し 第 五 章 は 九 分 心 怒 尊 で 構 成 さ れ て い た 。 こ れ ら の こ と か ら 真 言 が 説 か れ る 体 系 と し て 九 分 心怒 尊 と い う グ ル ー プ が 存 在 し た の で は な い か と 考 え ら れ る の で あ る 。 (26) 次 に ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 十 分 心怒 尊 を 考 え る 上 で 重 要 な 資 料 と し て ﹃ 幻 化 網 大 喩 伽 教 十 葱 怒 明 王 大 明 観 想 儀 軌 経 ﹄ が あ る 。 (以 下 ﹃ 十 分 心怒 儀 軌 ﹄ と 略 す ) こ の 聖 典 は 九 九 四 年 、 法 賢 に よ る 漢 訳 の み が 存 在 す る 。 ﹃ 十 葱 怒 儀 軌 ﹄ は ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 葱 怒 尊 の 影 像 を 説 く 部 分 と 真 言 を 説 く 部 分 と を つ な ぎ 合 わ せ た 聖 典 で あ り 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹂ に は な い ス ン バ の 影 像 、 ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ の 影 像 と 真 言 と を 加 え る こ と で ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ で は 不 完 全 で あ っ た 十 分 心 怒 尊 の 記 述 を 補 い 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 十 分 心怒 尊 を 完 成 さ せ て い る 。 十 葱 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 (27) こ の 聖 典 で も 十 葱 怒 尊 は 左 の よ う に 方 角 に 基 づ い た 順 序 で 説 か れ て い る 。 ヤ マ ー ン タ カ ア パ ラ ー ジ タ (真 言 は ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ ) パ ド マ ー ン タ カ ( 真 言 は ア パ ラ ー ジ タ ) ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ ( 真 言 は パ ド マ ー ン タ カ ) ア チ ャ ラ タ ッ キ ラ ー ジ ャ ニ ー ラ ダ ン ダ マ ハ ー バ ラ ス ン バ ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ し か し 、 こ れ は 木 村 秀 明 氏 に よ っ て 指 摘 さ れ て い る こ と で あ る が 、 よ く 見 て み る と ア パ ラ ー ジ タ 以 下 の 三 葱 怒 尊 の 真 言 の 順 序 が 違 っ て い る 。 ア パ ラ ー ジ タ の 所 に ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の 真 言 、 パ ド マ ー ン タ カ の 所 に ア パ ラ ー ジ タ の 真 言 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の 所 に パ ド マ ー ン タ カ の 真 言 が 間 違 っ て つ け ら れ て い る 。 (28) そ の 理 由 に 関 し て 木 村 氏 は 述 べ て い る 。 ﹃ 十 葱 怒 儀 軌 ﹄ の 原 文 は 、 蔵 訳 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 用 い た 原 典 か ら 再 構 成 さ れ た も の で あ る 。 蔵 訳 の ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 第 五 章 で は 先 に 述 べ た 様 に 真 言 が 無 秩 序 に 並 べ ら れ て い る 。 し か も ヤ マ ー ン タ カ 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ 、 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ 、 パ ド マ ー ン タ カ の 尊 名 は 書 か れ て な い 。 そ こ で 、 ﹃ 十 葱 怒
儀 軌 ﹄ の 原 典 の 編 集 者 は 、 こ の 部 分 を そ の ま ま の 順 序 で 機 械 的 に 訳 し た 。 そ の た め 右 の よ う な 誤 認 が 生 じ た と さ れ る の で あ る 。 3 、 ﹃妙 吉 祥 平 等 秘 密 最 上 観 門 大 教 王 経 ﹂ ﹃妙 吉 祥 平 等 秘 密 最 上 観 門 大 教 王 経 ﹂ (以 下 ﹃ 妙 吉 祥 観 門 経 ﹄ と 略 す ) の 梵 文 原 典 は 未 発 見 で あ り 、 蔵 訳 も 存 在 し (29) な い 。 し か し 、 本 経 は 漢 訳 聖 典 中 で は 最 も 整 備 さ れ た 十 葱 怒 尊 が 説 か れ て い る 聖 典 で あ る 。 本 聖 曲 ハは 南 宋 の 時 代 ( 一 一 一七-二 二 七 九 ) に 慈 賢 に よ っ て 訳 さ れ た 。 ﹃ 妙 吉 祥 観 門 経 ﹂ に は 十 葱 怒 尊 の 配 置 、 真 言 、 印 が 説 か れ る が ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ や ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の よ う に 尊 格 の 移 動 や 増 減 は 無 く 本 論 文 で 扱 っ て い る 最 (30) も 完 成 さ れ た 十 分 心 怒 尊 が 説 か れ て い る 。 十 分 心 怒 尊 の 配 置 は 次 の よ う に な っ て い 。 東 ヤ マ ー ン タ カ 南 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ ( 真 言 は ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ ) 西 パ ド マ ー ン タ カ ( 真 言 は プ ラ ジ ナ ー ン タ カ ) 北 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ ( 真 言 は パ ド マ ー ン タ カ ) 南 東 タ ッ キ ラ ー ジ ャ 南 西 ニ ー ラ ダ ン ダ 北 西 マ ハ ー バ ラ 北 東 ア チ ャ ラ 十 分 心 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 上 ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン (31) 下 ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ ( ス ン バ ) 真 言 も こ の 順 序 で 説 か れ る 。 そ の 真 言 の 内 容 は 、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 真 言 と 二 致 す る 尊 格 が (32) 多 い 。 し か し 、 こ こ で も ま た ﹃ 十 葱 怒 儀 軌 ﹄ の 時 と 同 じ 真 言 の 取 り 違 え が あ る 。 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ の 所 に ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の 真 言 、 パ ド マ ー ン タ カ の 所 に プ ラ ジ ー ナ ン タ カ の 真 言 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の 所 に パ ド マ ー ン タ カ の 真 言 が 、 間 違 っ て 付 け ら れ て い る 。 そ の 理 由 は 、 ﹃ 十 葱 怒 儀 軌 ﹄ の と き と 同 じ で あ る と 考 え ら れ る 。 ヤ マ ー ン タ カ か ら パ ド マ ー ン タ カ の 真 言 の 尊 名 が 説 か れ て い な い 蔵 訳 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹂ が 用 い た 原 典 、 も し く は そ れ に 近 い も の か ら 、 本 経 が 再 構 成 さ れ た た め だ と 考 え ら れ る 。 も し く は も っ と 単 純 に ﹃ 十 葱 怒 儀 軌 ﹄ 以 来 の 間 違 い が 引 き 継 が れ て い る の か も し れ な い 。 (33) ま た 、 本 経 に は ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン の 真 言 も 説 か れ て い る 。 ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン の 真 言 が 説 か れ て い る の は 、 こ の 章 で 取 り 扱 っ て い る 聖 典 で は 本 経 だ け で あ る 。 そ の 真 言 は ﹁ 嚢 莫 三 満 多 迦 野 嚇 迦 嘲 移 嚇 日 曜 南 庵 戌 禮 禰 件 娑 婆 賀 ﹂ で あ る 。 こ の 真 言 は 、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ 第 十 四 章 の ヴ ァ ジ ラ エ ー カ ジ ャ (34)(35) タ ー の 真 言 と 、 ま た ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ 第 五 章 の 大 分 心怒 金 剛 菩 薩 の 真 言 と ﹁ 庵 戌 禮 禰 娑 婆 賀 ( オ ー ン シ ュ ー リ ニ ス ヴ ァ ー ハ ー ) ﹂ の 部 分 が 同 じ で あ る 。 先 に も 触 れ た が 、 こ の 尊 格 は 九 分 心 怒 尊 の 真 言 が 説 か れ た 後 、 最 初 に 登 場 す る も の で あ る 。 ﹃ 妙 吉 祥 観 門 経 ﹄ の 作 者 は 、 本 来 説 か れ て い な か っ た ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン の 真 言 を 作 る た め ヴ ァ ジ ラ エ ー カ ジ ャ タ ー ( 大 葱 怒 金 剛 菩 薩 ) の 真 言 を 借 用 し た 可 能 性 も 指 摘 で き る 。 こ れ ら の こ と か ら 、 ﹃ 妙 吉 祥 観 門 経 ﹄ も 九 葱 怒 尊 の 真 言 を 説 く 体 系 か ら 影 響 を 受 け て い る こ と が 分 か る の で あ る 。
今 ま で の こ と を 表 に ま と め て み る 。 四 分 心 怒 尊 の グ ル ー プ を パ タ ー ン A 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 十 分 心 怒 尊 を パ タ ー ン B ( こ れ は 八 分 心怒 尊 と 十 葱 怒 尊 の グ ル ー プ が あ る 。 ) ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の 十 分 心 怒 尊 を パ タ ー ン C と し た 。 こ れ ら は 全 て 方 角 に 基 づ い た 順 序 で 並 ん で い る 。 パ タ ー ン D は 多 少 配 置 が 異 な る の で 区 別 し た 。 パ タ ー ン D は マ ハ ー バ ラ と 二 ー ラ ダ ン ダ を 入 れ 替 え れ ば 方 角 に 基 づ く 順 序 と な る 。 二 方 、 こ れ ら パ タ ー ン A B C D と は 全 く 別 の 順 序 で 十 葱 怒 尊 が 登 場 す る の が 、 真 言 が 説 か れ 九 葱 怒 尊 か ら な る パ タ ー ン E で あ る 。 こ こ で 取 り 上 げ た 聖 典 の 十 分 心 怒 尊 は 全 て こ の パ タ ー ン E の 影 響 を 受 け て お り 重 要 な も の で あ る 。 こ の パ タ ー ン E は 八 分 心怒 尊 か ら 十 葱 怒 尊 へ と 発 展 す る 時 に 現 れ た 過 渡 的 な も の で は な い と 思 わ れ る 。 な ぜ な ら 、 過 渡 的 存 在 で あ れ ば 八 葱 怒 尊 の グ ル ー プ の 最 後 に ス ン バ を 加 え る だ け で よ く 、 パ タ ー ン E の よ う な 複 雑 な 順 序 を 作 り 出 す 必 要 は 無 い か ら で あ る 。 逆 に 九 分 心怒 尊 グ ル ー プ が 初 め に あ り 、 こ れ ら の 尊 格 が 曼 茶 羅 に 配 さ れ る 時 、 整 合 性 を 持 た す た め 八 葱 怒 尊 、 十 分 心 怒 尊 と い う グ ル ー プ が で き た と い え よ う 。 し か も 本 来 九 分 心 怒 尊 し か 説 か れ て い な か っ た た め 、 十 番 目 の 尊 格 を ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ と す る か ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン と す る か の 違 い が で き た の だ と い え る 。 ま た 、 こ れ ら の 分 心 怒 尊 グ ル ー プ は 大 き く ) つ に 分 け る こ と が で き る 。 そ れ は 、 パ タ ー ン A B C と パ タ ー ン D E の グ ル ー プ と で あ る 。 前 者 は パ ド マ ー ン タ カ 等 、 尊 名 に ア ン タ カ ( antaka)の つ く 尊 格 が 登 場 し て お り 、 完 全 に 整 理 さ れ て い る 。 そ れ に 対 し て 後 者 は ヤ マ ー ン タ カ 以 外 、 尊 名 に ア ン タ カ の つ く 尊 格 は 見 ら れ ず 、 尊 名 も 固 定 せ ず 未 整 理 の も の で あ る 。 パ ド マ ー ン タ カ 等 の 尊 格 は 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ に 置 い て 初 め て 登 場 す る も の で あ り そ れ 以 前 の 聖 典 に は 全 く 登 場 し て い な い 。 こ れ ら の こ と か ら パ タ ー ン D E は 、 パ タ ー ン A B C 以 前 に 成 立 し て い た と 考 え ら れ る の で あ る 。 十 分 心 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 二 、 グ ル ー プ 化 以 前 の 十 葱 怒 尊 前 章 で は 十 葱 怒 尊 が ま と め て 説 か れ て い る 聖 典 を 見 て き た 。 次 に そ れ ら の 尊 格 が 、 十 葱 怒 尊 成 立 以 前 の 聖 典 に は ど の よ う に 登 場 し て い た か を 調 べ て い く 。 1 、 四 門 を 護 る 葱 怒 尊 四 門 を 護 る 葱 怒 尊 、 ヤ マ ー ン タ カ 、 プ ラ ジ ナ ー ン タ カ 、 パ ド マ ー ン タ カ 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ の う ち ヤ マ ー ン タ カ を 除 く 三 尊 は 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ 以 前 の 聖 典 に は 現 れ な い 。 そ れ ぞ れ ア パ ラ ー ジ タ 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ 、 ア ム リ タ ク ン ダ リ ン の 尊 名 で 聖 典 に 登 場 し て い る 。 ま ず 、 そ れ ら の 三 尊 に つ い て み て い く 。 南 門 を 護 る ア パ ラ ー ジ タ に は 、 ア パ ラ ー ジ タ ー (Aparajta)とい う 女 尊 が 存 在 す る こ と が 特 徴 で あ る 。 ﹃ 大 日 経 ﹂ で は ア パ ラ ー ジ タ と ア パ ラ ー ジ タ ー ( 無 能 勝 と 無 能 勝 妃 ) の ) 尊 が 対 に な っ (36) て 登 場 し て い る 。 そ し て 、 そ の ア パ ラ ー ジ タ ー は 初 期 密 教 聖 典 で あ る ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹄ (七 世 紀 中 葉 、 阿 地 盟 多 に よ り 漢 訳 ) に す で に 登 場 し て い る 。 ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹄ は そ の 経 題 か ら 分 か る よ う に 様 々 な 尊 格 の 陀 羅 尼 を 集 め た も の で あ り 、 十 二 巻 か ら 構 成 さ れ て い る 。 各 巻 に は 割 注 が つ け ら れ 、 巻 第 一-第 二 が ﹁ 仏 部 ﹂ 、 巻 第 四 -第 六 は ﹁ 観 世 音 ﹂ 、 巻 第 七-九 は ﹁ 金 剛 部 ﹂ 、 巻 第 十-第 十 一 は ﹁ 諸 天 ﹂ に 分 け ら れ て い る 。 そ の 巻 第 一 ﹁ 仏 部 ﹂ 中 に 、 様 々 な 仏 頂 尊 の 印 や 陀 羅 尼 (37) に ま じ っ て ア パ ラ ー ジ タ ー の 印 呪 が 説 か れ て い る 。
十 分 心怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 仏 頂 尊 の 功 徳 に つ い て 説 か れ る ﹃ 一 字 奇 特 仏 頂 経 ﹄ で は 、 ア パ ラ ー ジ タ は 頂 輪 王 真 言 を 修 す る 者 を 護 る 重 要 な 尊 格 (38) と し て 現 れ て い る 。 同 じ 仏 頂 系 の 聖 典 で あ る ﹃ 一 字 仏 頂 輪 王 経 ﹂ で も ア パ ラ ー ジ タ は 頂 輪 王 の 左 に 描 く こ と と さ れ て (39) い る 。 仏 蓮 金 の 三 部 形 式 を 持 つ ﹃ 蘇 悉 地 掲 羅 経 ﹄ で は 明 王 、 分 心怒 が 仏 部 、 蓮 華 部 、 金 剛 部 の 三 部 に 配 さ れ て い る が 、 (40) こ こ で ア パ ラ ー ジ タ は 仏 部 の 葱 怒 と な っ て い る 。 以 上 の よ う に ア パ ラ ー ジ タ は 仏 部 (仏 頂 ) と 関 係 の 深 い も の と さ れ て い る こ と が 分 か る の で あ る 。 西 の 門 護 で あ る ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ は 、 常 に 観 音 、 蓮 華 部 と 関 係 す る 尊 格 で あ る 。 ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹄ 巻 第 六 ﹁ 観 世 音 ﹂ は 、 (41) そ の 前 半 が ﹁ 何 耶 掲 劇 婆 観 世 音 法 印 呪 品 ﹂ と な っ て お り 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ の 印 が 八 、 呪 が 十 六 説 か れ て い る 。 楡 伽 タ ン ト ラ の 代 表 的 聖 典 で あ る ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ で は 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ は ﹁ 遍 調 伏 品 ﹂ に 登 場 す る 。 ﹁ 遍 調 伏 品 ﹂ の 特 徴 は 、 こ こ に 登 場 す る 尊 格 が パ ド マ ( Padma 蓮 華 ) を そ の 尊 名 に 冠 し て い る こ と で あ る が 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ は こ こ で 門 護 と さ れ て い る 。 ﹃ 蘇 悉 地 掲 羅 経 ﹄ に お い て は 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ ( 馬 頭 ) は 蓮 華 部 の 明 王 で あ り 、 ま た ﹃ 三 字 仏 頂 輪 王 (44) 経 ﹄ で は 、 観 世 音 の 後 ろ に ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ を 描 く こ と と な っ て い る 。 (45) 北 門 を 護 る ア ム リ タ ク ン ダ リ ン は ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹄ の 巻 八 ﹁ 金 剛 部 ﹂ に 金 剛 阿 蜜 哩 多 軍 茶 利 菩 薩 と し て あ ら わ れ る 。 (46) ﹃ 蘇 悉 地 翔 羅 経 ﹂ ﹃ 蘇 婆 呼 童 子 経 ﹂ 等 で は 、 ア ム リ タ ク ン ダ リ ン は 金 剛 部 の 葱 怒 で あ る 。 ﹃ 三 字 仏 頂 輪 王 経 ﹄ で は 、 金 (47) 剛 密 迩 主 菩 薩 の 後 に 軍 肇 利 童 子 を 描 く こ と と さ れ て い る 。 こ の 他 に も 、 ア ム リ タ ク ン ダ リ ン は 金 剛 部 に 属 す る も の と し て 多 く の 聖 典 に 説 か れ て い る 。 以 上 の 三 尊 は 、 ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹂ に 説 か れ て お り 、 早 く か ら 経 典 に 登 場 す る 尊 格 で あ る と い え る 。 し か も ﹃ 蘇 悉 地 翔 羅 経 ﹄ ﹃ 一 字 仏 頂 輪 王 経 ﹄ 等 で も 仏 蓮 金 の 三 部 に 配 さ れ た 形 で 登 場 す る 尊 格 で あ る 。
東 門 を 護 る ヤ マ ー ン タ カ は 十 葱 怒 尊 の 中 で は 最 初 に 位 置 す る 最 も 重 要 な 尊 格 で あ る 。 漢 訳 聖 典 に お い て ヤ マ ー ン タ (48) カ が 初 め て 登 場 す る の は ﹃ 聖 閻 曼 徳 迦 威 怒 王 立 成 大 神 験 念 調 法 ﹄ で あ る 。 こ の 聖 典 を 初 め と し て 、 ヤ マ ー ン タ カ に 関 (49)(50) す る 聖 典 は ヤ マ ー ン タ カ 三 尊 の 成 就 法 を 説 く も の が 多 い 。 そ の 他 に ﹃ 文 殊 菩 薩 最 勝 真 実 名 義 経 ﹂ 等 に も 登 場 す る 。 し か し そ れ ら の 聖 典 で も 、 ヤ マ ー ン タ カ は 妙 吉 祥 童 子 が 変 じ た 重 要 な 尊 格 と し て 説 か れ 、 他 の 十 分 心怒 尊 と グ ル ー プ を な し て い な い 。 つ ま り ヤ マ ー ン タ カ が 十 分 心怒 尊 グ ル ー プ 以 外 で 登 場 す る 場 合 、 常 に 単 独 で 登 場 し て い る と い え る 。 ま た 、 ヤ マ ー ン タ カ は そ の 尊 名 か ら も 分 か る よ う に ヤ マ を 滅 ぼ す 者 (yama+antaka)と 解 釈 で き る 。 聖 典 中 で も ヤ マ ー ン タ カ は 敵 を 降 伏 す る 者 と し て 登 場 す る 。 ま た 、 仏 教 が 滅 び 末 法 の 時 代 に お い て 仏 法 僧 の 三 宝 に 不 利 益 を 為 す 者 か ら 仏 教 を 護 る 為 に 説 い た の が ヤ マ ー ン タ カ で あ る と さ れ る 。 こ の よ う に ヤ マ ー ン タ カ は 単 独 で 聖 典 に 登 場 し て お り 、 特 別 な 尊 格 で あ る と い え る 。 し か も 敵 を 死 に 至 ら し め 仏 教 を 守 る 強 力 な 力 を 持 っ た 葱 怒 尊 で あ り 、 十 分 心 怒 尊 の 筆 頭 と な る べ き 性 格 を 十 分 に 備 え て い た 尊 格 で あ っ た と 考 え ら れ る 。 2 、 四 隅 を 守 護 す る 葱 怒 尊 次 に 、 四 隅 を 守 護 す る 分 心怒 尊 に つ い て み て い く 。 ま ず ニ ー ラ ダ ン ダ は 、 十 葱 怒 尊 グ ル ー プ が 成 立 し て 初 あ て 聖 典 に 登 場 す る 尊 格 で あ り 、 そ れ 以 前 の 聖 典 に は 認 め ら れ な い 。 ( 51)(52)(53) ア チ ャ ラ ( 不 動 尊 ) は ﹃ 大 日 経 ﹄ ﹃ 二 字 仏 頂 輪 王 経 ﹄ ﹃ 不 空 絹 索 神 変 真 言 経 ﹄ 等 に 説 か れ る 尊 格 で あ る 。 タ ッ キ ラ ー ジ ャ は 、 十 葱 怒 尊 グ ル ー プ 成 立 以 前 に は 尊 格 と し て は 説 か れ る こ と は な か っ た 。 し か し 、 タ ッ キ 十 葱 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 (54) (Takki)と い う 言 葉 が 使 わ れ る 真 言 は ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ ﹁ 金 剛 界 品 ﹂ に あ り 、 ま た ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ と 関 係 の 深 い ﹃ 金 剛 峯 櫻 (55) 閣 三 切 喩 伽 喩 祇 経 ﹂ に も 愛 染 明 王 の 真 言 と し て 説 か れ て い た 。 (56) マ ハ ー バ ラ と 繋 が り が あ る 尊 格 は 、 そ の 真 言 か ら 烏 櫃 慧 摩 (Ucchuusma)で あ る こ と が わ か る 。 烏 椹 蘇 摩 は ﹃ 陀 羅 (57) 尼 集 経 ﹄ の 金 剛 部 に 既 に 登 場 し て い る 。 し か し 、 ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹄ で 同 じ 金 剛 部 に 説 か れ て い る ア ム リ タ ク ン ダ リ ン が ﹃ 蘇 悉 地 掲 羅 経 ﹄ 等 で も 金 剛 部 に 配 さ れ 、 ま た そ れ 以 外 の 聖 典 で も 金 剛 と 関 係 の 深 い も の と さ れ て い る の に 対 し 、 烏 櫃 蒜 摩 は 金 剛 部 に 属 す る こ と が 明 確 に 示 さ れ な い 尊 格 で あ る 。 烏 椹 念 摩 は ﹃ 蘇 悉 地 翔 羅 経 ﹄ ﹃ 蘇 婆 呼 童 子 経 ﹂ 等 に 現 (58) れ た 。 以 上 の よ う に 四 隅 を 護 る 葱 怒 尊 、 二 ー ラ ダ ン ダ 、 マ ハ ー バ ラ (烏 福 蘇摩)と ア チ ャ ラ の 三 尊 格 、 タ ッ キ と い う 言 葉 (59) が 使 わ れ る 真 三三 口 、 以 上 の 四 つ は 同 一 聖 典 に 登 場 し な い 。 ま た マ ハ ー バ ラ ( 烏 櫃 念 摩 ) を 除 き 、 仏 蓮 金 の 三 部 に 配 さ れ る こ と も な い 。 こ れ は 、 ア パ ラ ー ジ タ 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ 、 ア ム リ タ ク ン ダ リ ン の 三 尊 が 仏 蓮 金 の 三 部 に 配 さ れ 、 同 一 の 聖 典 に 説 か れ る こ と と 対 照 的 で あ る と い え る 。 3 、 上 下 の 守 護 者 (60) ス ン バ は ﹃ 蘇 悉 地 翔 羅 経 ﹄ の 仏 蓮 金 の 三 部 中 の 金 剛 部 の 明 王 と し て 初 め て 聖 典 に 登 場 し て い る 。 ス ン バ の 真 言 は 、 (61) ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ で は ヴ ァ ラ パ ー 二 ( Vajrapani)を 出 現 さ せ る 時 に 使 わ れ て お り 、 重 要 な も の で あ っ た と 考 え ら れ る 。 (62) ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ は ﹃ 真 実 摂 経 ﹄ に お い て 、 地 下 の 住 者 を 鉤 召 す る 真 言 中 に そ の 尊 名 が 登 場 し て い る 。 よ っ て こ れ が 後 に 、 下 方 を 護 る 者 と し て 十 葱 怒 尊 に 取 り 入 れ ら れ た と 考 え ら れ る 。
ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ン は 上 方 を 護 る 葱 怒 尊 で あ る 。 し か し 本 来 仏 頂 尊 の グ ル ー プ に 属 す べ き 尊 格 で あ り 、 分 心 怒 尊 で は な か っ た と 考 え ら れ る 。 仏 頂 尊 は グ ル ー プ を な し 登 場 す る こ と が 多 い が 、 仏 頂 輪 王 は そ の 仏 頂 尊 の (63) グ ル ー プ の 中 に 認 め ら れ る 。 仏 頂 尊 は ﹃ 蘇 悉 地 掲 羅 経 ﹄ ﹃ 菱 咽 耶 経 ﹄ 等 で は 仏 部 の 明 王 と し て 登 場 し て い る が 、 ﹃ 一 字 (64)(65) 仏 頂 輪 王 経 ﹄ ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ に 説 か れ て い る 影 像 か ら 判 断 し て 分 心 怒 尊 と は 考 え ら れ な い 。 本 論 文 第 三 章 で 、 九 分 心 怒 尊 と い う 尊 格 グ ル ー プ が あ る こ と を 述 べ た が 、 そ の グ ル ー プ は 葱 怒 尊 の 真 言 を 集 め た も の で あ っ た 。 そ こ に ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ン が 含 ま れ て い な か っ た こ と も 、 こ の 尊 格 が 葱 怒 尊 で は な か っ た こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。 で は 、 な ぜ 葱 怒 尊 で な い ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ バ ル テ ィ ン が 十 葱 怒 尊 に 加 わ っ た の で あ ろ う か 。 こ れ は チ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ン つ ま り 転 輪 聖 王 の 本 来 の 意 味 を 考 え る と 頷 け る こ と で あ る と 思 わ れ る 。 転 輪 聖 王 と は 偉 大 な 統 治 者 の こ と で あ り 、 天 か ら 宝 の 輪 を 感 得 し 、 戦 車 が 回 転 し て 敵 を 粉 砕 す る よ う に 、 宝 の 輪 を 転 が し て 四 方 を 征 服 し 治 め る も の (66) で あ る 。 ま た 、 ﹃ 三 字 奇 特 仏 頂 経 ﹄ で は 、 仏 頂 輪 王 に は 敵 の 軍 隊 を 破 壊 す る 効 力 が あ る こ と も 度 々 説 か れ て い る 。 こ の よ う な 敵 を 倒 す 力 を も つ 尊 格 と し て 、 本 来 、 分 心怒 尊 で は な か っ た 仏 頂 輪 王 が 上 方 を 護 る も の と し て 十 葱 怒 尊 に 取 り 入 れ ら れ た の で は な い だ ろ う か 。 三 、 ま と め 本 論 文 で は 十 葱 怒 尊 が 説 か れ る 聖 典 を 取 り 上 げ 、 十 分 心 怒 尊 成 立 以 前 に 九 分 心怒 尊 か ら な る グ ル ー プ が あ る こ と を 明 ら 十 葱 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 か に し た 。 こ の 九 分 心 怒 尊 が 曼 茶 羅 に 配 さ れ る 時 、 整 合 性 を 持 た せ る た め 八 葱 怒 尊 、 十 分 心 怒 尊 と い う グ ル ー プ が で き た と い え る 。 そ し て 十 分 心 怒 尊 へ 発 展 す る 際 、 本 来 葱 怒 尊 は 九 尊 し か な か っ た た め 、 最 後 の 尊 格 を ウ シ ュ ニ ー シ ャ チ ャ ク ラ ヴ ァ ル テ ィ ン に す る か ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ に す る か の 違 い が 生 じ た 。 前 者 は 転 輪 聖 王 と い う 性 格 か ら 、 後 者 は そ の 地 下 を 護 る と い う 役 割 か ら 、 十 葱 怒 尊 に 採 用 さ れ た の で あ る 。 ま た 十 分 心怒 尊 の 中 で ﹃ 陀 羅 尼 集 経 ﹄ か ら 登 場 し て お り 仏 蓮 金 の 三 部 に 配 さ れ る ア パ ラ ー ジ タ 、 ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ 、 ア ム リ タ ン ダ リ ン が 、 十 分 心怒 尊 の 中 で も 中 心 と な っ て い る 。 つ ま り こ の 三 尊 は 四 方 ( 四 門 ) を 護 る と い う 、 他 の 葱 怒 尊 に 比 べ て 、 よ り 重 要 な 役 割 を 与 え ら れ て い る 。 葱 怒 尊 の 真 言 が 無 秩 序 な 順 序 で 説 か れ る 九 分 心 怒 尊 グ ル ー プ の 中 で も 、 こ の 三 尊 は 一 組 に な っ て 登 場 し て お り 、 明 ら か に 他 の 葱 怒 尊 と 一 線 を 画 し て い る 。 一 方 、 二 ー ラ ダ ン ダ 、 ア チ ャ ラ 、 タ ッ キ ラ ー ジ ャ 、 マ ハ ー バ ラ は 、 先 の 三 尊 や ヤ マ ー ン タ カ に 比 べ て 、 比 較 的 重 要 度 が 落 ち る た め 、 四 隅 に 配 さ れ て い る と い え る 。 (67) ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ は 本 来 、 三 部 の シ ス テ ム で あ る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 十 分 心 怒 尊 に お い て も そ の 中 心 を な し て い る ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ 、 ア ム リ タ ク ン ダ リ ン 、 ア パ ラ ー ジ タ は 三 部 に 配 さ れ る 尊 格 で あ る 。 よ っ て 、 十 分 心 怒 尊 も そ の 中 心 は 三 部 組 織 の 流 れ を 引 く も の と 言 え る の で あ る 。
主 略 号 大 正 大 正 新 脩 大 蔵 経 東 北 西 蔵 大 蔵 経 総 目 録 ( デ ル ゲ 版 ) 葉 数 はDharma Publishhingの も の を 用 い る 。 北 京 西 蔵 大 蔵 経 総 目 録 ( 北 京 版 ) ( 1 ) 森 雅 秀 ﹁ 十 葱 怒 尊 の イ メ ー ジ を あ ぐ る 考 察 ﹂ ﹃ 仏 教 の 受 容 と 変 容 ﹂ 立 川 武 蔵 編 集 佼 成 出 版 社 二 九 九 三 年 に 、 十 葱 怒 尊 に つ い て 詳 し い 説 明 が あ る 。 ( 2 ) 守 護 輪 に つ い て は 、 羽 田 野 伯 猷 ﹁Tantric Buddhism に お け る 人 間 存 在 ﹂ ﹃ チ ベ ッ ト ・ イ ン ド 学 集 成 ﹂ 第 三 巻 イ ン ド 篇 第 二 二 〇 九 頁 。 ( 3 ) 十 葱 怒 尊 の 結 界 法 に つ い て は 、 森 雅 秀 ﹁ イ ン ド 密 教 に お け る 結 界 法 し ﹃ 名 古 屋 大 学 文 学 部 研 究 論 集 ﹂ 三 一 四 ・ 哲 学 三 八 三 九 九 ) 年 。 ( 4 ) プ ラ ジ ナ ー ン タ カ と ア パ ラ ー ジ タ 、 パ ド マ ー ン タ カ と ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ 、 ヴ ィ グ ナ ー ン タ カ と ア ム リ タ ク ン ダ リ ン 、 こ の 三 組 は そ れ ぞ れ 同 尊 と 考 え ら れ る 。 そ れ は 、 そ れ ぞ れ の 真 言 が 共 通 し て い る か ら で あ る 。 ( 5 ) 松 長 有 慶 ﹃密 教 経 典 成 立 史 論 ﹂ 法 蔵 館 三 九 八 ○ 年 二 三 五 頁 。 ( 6 ) 松 長 有 慶 校 訂 梵 本 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ 東 方 出 版 三 九 七 八 年 八 頁-九 頁 。 ( 7 ) 松 長 本 五 四 頁 二 〇 五-三 二 四 、 五 七 頁-五 九 頁 。 ( 8 ) 十 葱 怒 尊 は 普 通 方 角 に 基 づ い た 順 序 で 登 場 す る 。 つ ま り 東 の ヤ マ ー ン タ カ か ら 始 ま り 、 右 回 り に 東 南 西 北 の 四 方 の 尊 格 が 、 次 に ア チ ャ ラ 以 下 、 北 東 、 南 東 、 南 西 、 北 西 と 四 隅 の 尊 格 が 、 こ れ も 右 回 り に 説 か れ る 。 そ し て 最 後 に 上 下 の ) 尊 が 登 場 す る 。 し か し 、 こ こ で は マ ハ ー バ ラ ( 北 西 ) 、 ニ ー ラ ダ ン ダ (南 西 ) の 登 場 す る 順 序 が 違 っ て い る 。 ( 9 ) 松 長 本 六 二 頁-六 五 頁 。 ( 10 ) 真 言 の 内 容 よ り ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ の こ と で あ る 。 ( 11 ) 漢 訳 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ 第 十 四 章 (大 正 十 八 巻 八 八 五 番 四 九 三 二頁 上 ) で は 嚇 日 嚥 播 多 羅 を 加 え 十 葱 怒 尊 に し て い る 。 し か し 、 こ れ は 梵 本 のekajataを 囎 日 嘱 播 多 羅 と 訳 し て い る た あ で あ る 。 ( 12 ) 松 長 本 二 三 七 頁-二 三 八 頁 五 三 -六 四 。 ( 13 ) 松 長 本 一 二 〇 頁 一 〇 二 、 三 〇 三 。 ( 14 ) 松 長 本 三 二 九 頁 八 三 。 ( 85 ) 松 長 前 掲 書 二 四 〇 頁-二 四 四 頁 。 (16 ) 大 正 十 八 巻 八 九 〇 番 北 京 一 〇 二 番 東 北 四 六 六 番 。 ( 17 ) ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ の 十 葱 怒 尊 に つ い て は 、 木 村 秀 明 ﹁ 幻 化 網 タ ン ト ラ に お け る 曼 茶 羅 ﹂ ﹃ 豊 山 教 学 大 会 紀 要 ﹄ 第 十 六 号 二 九 八 八 年 、 木 村 秀 明 ﹁ 幻 化 網 タ ン ト ラ の 諸 尊-十 分 心 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 1 ﹂ ﹃ 密 教 学 研 究 ﹂ 第 二 十 一 号 一 九 八 九 年 に 詳 し い 。 ( 18 ) 大 正 十 八 巻 八 九 〇 番 五 六 一 頁 下 北 京 三 〇 二 番 六 十 三 枚 表 東 北 四 六 六 番 二 九 三 枚 。 ( 19 ) 大 正 十 八 巻 八 九 〇 番 五 六 三 頁 下-五 六 四 頁 上 北 京 三 〇 ) 番 六 五 枚 裏 東 北 四 六 六 番 二 九 七 枚-二 九 八 枚 。 ( 20 ) 大 正 十 八 巻 八 九 〇 番 五 六 六 頁 上-五 六 七 頁 上 北 京 一 〇 二 番 六 九 枚 裏-七 二 枚 表 東 北 四 六 六 番 三 〇 六 枚 -三 二 枚 。 (21 ) 大 正 十 八 巻 八 九 〇 番 五 六 九 頁 上-五 七 三 頁 中 北 京 三 〇 二 番 七 六 枚 裏-七 九 枚 表 東 北 四 六 六 番 三 一 九 枚 -三 二 四 枚 。 ( 22 ) 大 正 十 八 巻 八 九 〇 番 五 七 五 頁 上 中 下 。 ( 23 ) 北 京 三 〇 二 番 八 五 枚 裏 東 北 四 六 六 番 三 三 六 枚 。 ( 24 ) 北 京 一 〇 二 番 八 六 枚 裏 東 北 四 六 六 番 三 三 八 枚 。 ( 25 ) 松 長 前 掲 書 二 四 二 頁 。 ( 26 ) 大 正 十 八 巻 八 九 一 番 。 ( 27 ) 大 正 十 八 巻 八 九 一 番 五 八 三 頁 上-五 八 七 頁 中 。 ( 28 ) 木 村 秀 明 ﹁ 幻 化 網 タ ン ト ラ に お け る 曼 茶 羅 ﹂ ﹃ 豊 山 教 学 大 会 紀 要 ﹄ 第 十 六 号 三 九 八 八 年=二 八 頁 。 ( 29 ) 田 中 公 明 氏 は 本 聖 典 を ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の 曼 茶 羅 の 発 展 を 考 え る 上 で 重 要 な も の で あ る と し て い る 。 田 中 公 明 ﹁ ﹃ 秘 密 集 会 ﹄ 曼 茶 羅 の 歴 史 的 展 開 ﹂ ﹃ 密 教 図 像 ﹂ 九 号 密 教 図 像 学 会 一 九 九 〇 年 。 ( 30 ) 大 正 二 十 巻 一 一 九 二 番 九 〇 五 頁 中 。 ( 31 ) 本 聖 典 で は ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹂ で 下 方 を 護 る ス ン バ と 、 ﹃幻 化 網 タ ン ト ラ ﹂ で 下 方 を 護 る ヴ ァ ジ ラ パ ー タ ー ラ が 折 衷 さ れ 嚇 日 嘱 播 多 羅 降 三 世 明 王 と い う 名 前 で 登 場 し て い る 。 大 正 二 十 巻 二 一 九 ) 番 九 〇 五 頁 中 。 ( 32 ) タ ッ キ ラ ー ジ ャ と ア チ ャ ラ の 真 言 が ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹂ 、 ﹃幻 化 網 タ ン ト ラ ﹂ の 真 言 と 異 な っ て い る が 、 そ れ 以 外 は ほ ぼ 同 じ 真 言 で あ る 。 九 〇 七 頁 下-九 〇 九 頁 中 。 ( 33 ) 大 正 二 十 巻 三 二 九 二 番 九 〇 九 頁 中 。 ( 34 ) 松 長 本 六 七 頁 。 ( 35 ) 大 正 十 八 頁 八 九 〇 番 五 七 二 頁 下 。 ( 36 ) 大 正 十 八 巻 八 四 八 番 八 頁 上 。 ( 37 ) 大 正 十 八 巻 九 〇 一 番 七 九 一 頁 下 。 真 言 が ﹁ 阿 祓 曜 二 合 質 提 ) (aparajite)﹂と な っ て お り 、aparajita女 性 形 の 呼 格 と 考 え ら れ る 。 ( 38 ) 大 正 一 九 巻 九 五 三 番 三 〇 六 頁 上 。 ( な お 、 こ の 真 言 は ﹃秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の ア パ ラ ー ジ タ の 真 言 と ﹁ 爾 撃 哩 致 吃 (jinaroto)﹂の 部 分 が 同 じ で あ る 。 ) ( 39 ) 大 正 十 九 巻 九 五 三 番 二 三 一 頁 上 。
( 40 ) 大 正 十 八 巻 八 九 三 番 六 〇 四 頁 上 。 ( 41 ) 大 正 十 八 巻 九 〇 二 番 八 三 三 頁 下-八 四 〇 頁 下 。 ( な お 八 三 四 頁 下 -八 三 五 頁 下 の 真 言 は 、 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の パ ド マ サ ン バ ヴ ァ ( ハ ヤ グ リ ー ヴ ァ ) の 真 言 と 二 致 す る 部 分 が あ り そ の 関 係 が 注 目 で き る 。 ) ( 42 ) 堀 内 寛 仁 ﹃梵 漢 蔵 対 照 初 会 金 剛 頂 経 の 研 究 梵 本 校 訂 篇 ﹄ 高 野 山 大 学 密 教 文 化 研 究 所 三 九 八 三 年 下 巻 十 九 頁 三 五 三 五 。 ( 43 ) 大 正 十 八 巻 八 九 三 番 六 〇 四 頁 上 。 ( 44 ) 大 正 十 九 巻 九 五 三 番 二 三 〇 頁 下 。 ( 45 ) 大 正 十 八 巻 九 〇 二 番 八 五 一 頁 下-八 五 九 頁 上 。 ( 八 五 五 頁 中 の ア ム リ タ ク ン ダ リ ン の 真 言 は ﹃秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹂ の ア ム リ タ ク ン ダ リ ン の 真 言 と 二 致 す る 部 分 が あ る 。 ) ( 46 ) 大 正 十 八 巻 八 九 三 番 六 〇 四 頁 上 。 ( こ の 真 言 も ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ の ア ム タ ク ン ダ リ ン の 真 言 と よ く 三 致 す る 。 ) 大 正 十 八 巻 八 九 五 番 七 三 三 頁 下 。 ( 47 ) 大 正 十 九 巻 九 五 三 番 二 三二 〇 頁 下 。 ( 48 ) 大 正 ) 十 三 巻 三 二 三 四 番 。 ( 49 ) 大 正 ) 十 三 巻=二 五 番 、 一 二 三 六 番 、 三 二 一 七 番 、 二 二 一 八 番 。 ( 50 ) 大 正 二 十 巻 一 三 八 九 番 、 三 三 九 三 番 。 ( 51 ) 大 正 十 八 巻 八 四 八 番 七 頁 中 。 ( 52 ) 大 正 十 九 巻 九 五 三 番 ) 四 八 頁 中 。 ( 53 ) 大 正 二 十 巻 二 〇 九 二 番 二 七 一 頁 中 。 ( 54 ) 堀 内 本 上 巻 三 三 〇 頁 六 六 二 。 ( 55 ) 大 正 十 八 巻 八 六 七 番 二 五 七 頁 上 。 頼 富 本 宏 ﹃ マ ン ダ ラ の 仏 た ち ﹂ 東 京 美 術 三 九 八 五 年 二 二 二 頁 で 、 真 言 の 内 容 か ら 愛 染 明 王 と タ ッ キ ラ ー ジ ャ の 関 係 が 指 摘 さ れ て い る 。 ( 56 ) ﹃ 密 教 大 事 典 ﹄ 法 蔵 館 二 五 四 七 頁 中 で マ ハ ー バ ラ と 烏 福 慧 摩 は 同 尊 と さ れ る 。 ﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹄ 第 十 四 章 、 ﹃ 幻 化 網 タ ン ト ラ ﹄ 第 五 章 の マ ハ ー バ ラ の 真 言 は 、 ﹃ 大 威 怒 烏 劉 澁 座 儀 軌 経 ﹄ (大 正 二 十 一 巻 三 二 二 五 番 一 三 七 頁 上 ) で は 烏 橿 慧 摩 の 根 本 真 言 と さ れ て い る 。 ま た 、 烏 福 慧 摩 の 真 言 中 に マ ハ ー バ ラ と い う 言 葉 が 出 て く る 。 ( 57 ) 大 正 十 八 巻 九 〇 三 番 八 六 〇 頁 下 。 ( 58 ) 大 正 十 八 巻 八 九 三 番 六 八 四 頁 上 、 大 正 十 八 巻 八 九 七 番 七 六 六 頁 上 、 に 烏 橿 蒜 摩 は 登 場 し て い る が 、 こ の 尊 格 が 金 剛 部 に 属 す る こ と は 説 か れ な い 。 ( 59 ) た だ し 、 不 動 と 烏 橿 蒜 摩 は 同 三 の 経 典 に 説 か れ る こ と も あ る 。 そ れ は 、 大 正 九 ) 三 番 、 三 〇 〇 〇 番 、 三 〇 〇 一 番 等 で あ る 。 ( 60 ) 大 正 十 八 巻 八 九 三 番 六 〇 四 頁 上 。 ( 61 ) 堀 内 本 上 巻 三 二 八 頁 六 五 六 。 ( 62 ) 堀 内 本 上 巻 三 七 一 頁-三 七 二 頁 七 九 三 。 (63 ) 大 正 十 八 巻 八 九 三 番 六 〇 四 頁 上 。 十 葱 怒 尊 に つ い て
密 教 文 化 ( 64 ) 大 正 十 九 巻 九 五 二 番 二 三 〇 頁 中 。 ( 65 ) 大 正 十 八 巻 八 九 〇 番 五 六 七 頁 上 北 京 一 〇 二 番 七 二 枚 表 東 北 四 六 六 番 三 一 三 枚 。 ( 66 ) 大 正 十 九 巻 九 五 三 番 ) 九 八 頁 上 。 ( 67 ) 松 長 有 慶 ﹁ 三 部 と 五 部-﹃ 秘 密 集 会 タ ン ト ラ ﹂ の 構 造 に 関 し て-﹂ ﹃ 佛 教 文 化 史 論 集 ﹂I-九九)年。