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令和元年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費 クウェート既設変電所におけるガス絶縁開閉装置の保全更新計画最適化に係る事業性調査 調査報告書 令和 2 年 2 月 委託先 : 中部電力株式会社

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令和元年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費 クウェート既設変電所におけるガス絶縁開閉装置の保全更新計画最適化に係る事業性調査

調査報告書 令和2年2月

委託先:中部電力株式会社

(2)

要旨

クウェートでは、1970 年代後半から 1980 年代にかけ、ガス絶縁開閉装置(GIS:Gas

Insulated Switchgear)を用いた多くの変電所が建設された。これら多くのGISが設計時

の期待寿命を超過しつつあり、更新を計画する時期にきている。一律の年次(例えば設計時 期待寿命)で更新すると、多くのGISを同時期に更新することになり、多額の投資やネッ トワークの停止制約、工事量増大といった課題に直面する。

一方、日本では 1960年代からGISが導入され、GISの高経年化が進む中、電力会社お よびメーカは、経年GISの劣化調査を行い、更新時期の見極めと必要な保全策の検討(延 命化活動)を共同で実施し、設計期待寿命を超えたGISの運用を実現している。工事物量 増大への対応と作業停止制約の中で、更新数量を均平化し、更新対応を順次進める必要があ ることから、更新の優先順位付けと延命化の検討、実践が各社でなされている。

そこで今回、先行する日本の知見を活用し、クウェートの高経年 GISにおける課題解決 のため、「クウェート既設変電所におけるガス絶縁開閉装置の保全更新計画最適化に係る事 業性調査」を行った。本調査では、クウェートでのGISの保全実態や、高経年GIS(実機)

の劣化状況を調査し、海外メーカ勢が実施していないGISの延命化(保全更新計画最適化)

に資する技術提案、技術啓発を行い、本邦企業によるGIS 長期使用のためのメンテナンス 事業の獲得と、クウェートにおける日本の技術の優位性を得ることを目指す。

調査結果、クウェートでは GISの簡易な点検は実施しているものの、分解手入れ、消耗 部品の交換は今まで実施されておらず、実機調査の結果、構成部品の劣化が顕著にみられた。

また、分解手入れにより機能の回復も確認できた。設計期待寿命を超えて長期に GISを運 用するためには、適切なメンテナンスにより機能維持を図ること、また劣化状況を掴むこと が必要であることをクウェート国電力・水省(MEW:Ministry of Electricity and Water)

に説明し、理解を図ることができた。

日本メーカは高経年GISの細密点検(Over Hauling)をMEWに提案しており、本調査 での活動を通じて、提案中のメンテナンス事業の獲得と、さらにはその次のGISメンテナ ンス事業の可能性が高まった。また、MEWは劣化調査にも関心を示し、今後の GISメン テナンス事業とともに様々な機種での劣化調査業務も期待できる。

令和2年2月 中部電力株式会社

(3)

略語一覧

略称 名称 日本語名称

AfDB African Development Bank アフリカ開発銀行

AIIB Asian Infrastructure Investment

Bank アジアインフラ投資銀行

AIS Air Insulated Switchgear 気中絶縁開閉装置

AR Augmented Reality 拡張現実

A/C Air Conditioner エアコン

AUS Assistance Under Secretary 次官補

BIL Basic Impulse Insulation Level 基準衝撃絶縁強度

CB Circuit Breaker 遮断器

CBM Condition Based Maintenance 状態基準保全

CEO Chief Executive Officer 最高経営責任者

CIGRE Conseil International des Grands

Réseaux Électriques 国際大電力システム会議

CO2 Carbon Dioxide 二酸化炭素

DCC District Control Center 地方制御所

DS Disconnecting Stitch 断路器

EHV Extra High Voltage 超高(電)圧

EPRI Electric Power Research Institute 電力研究所

ES Earthing Switch 接地開閉器

EU Europian Union 欧州連合

FAO Food and Agriculture Organization 国際連合食糧農業機関 FT-IR Fourier Transform Infrared

Spectroscopy フーリエ変換赤外分光法

FS Feasibility Study 事業実施可能性調査事業

GCB Gas Circuit Breaker ガス遮断器

GCC Gulf Cooperation Council 湾岸協力会議

GDP Gross Domestic Product 国内総生産

GIB Gas Insulated Busbar ガス絶縁母線

GIS Gas Insulated Switchgear ガス絶縁開閉装置

HV High Voltage 高(電)圧

IEC International Electrotechnical

Commission 国際電気標準会議

IED Intelligent Electronics Device 汎用型デジタルリレー IEEJ The Institute of Electrical

Engineers of Japan 日本電気学会

IDA International Development

Association 国際開発協会

IFC International Finance Corporation 国際金融公社 ILO International Labor Organization 国際労働機関

IMF International Monetary Fund 国際通貨基金

IPCC Intergovernmental Panel on

Climate Change 国連気候変動に関する政府間パネル

IWPP Independent Water and Power

Producer 独立造水・発電事業者

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略称 名称 日本語名称 JCIF Japan Center for International

Finance 公益財団法人国際金融情報センター

J-ETRA Japan Electric Technology

Research Association 一般社団法電気協同研究会

JETRO Japan External Trade

Organization 日本貿易振興機構(ジェトロ)

JIS Japanese Industrial Standards 日本産業規格

JNC Japan National Committee 日本CIGRE国内委員会

JOGMEC Japan Oil, Gas and Metals Nation

Corporation 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

km Kilo Meter キロメートル

kV Kilo Volt キロボルト

KIA Kuwait Investment Authority クウェート投資庁

KWD Kuwaiti Dinar クウェートディナール

LCC Local Control Cubicle GIS操作箱

MEED Middle East Economic Digest 中東経済専門誌 METI Ministry of Economy, Trading and

Indstry 経済産業省

MEW Ministry of Electricity and Water クウェート国 電力・水省 MOFA Ministry of Foreign Affiars 外務省

MOU Memorandum of Understanding 技術交流協定

MW Mega Watt メガワット

NCC National Control Center 中央給電制御所

OAPEC Organization of the Arab

Petroleum Exporting Countries アラブ石油輸出国機構

OCB Oil Circuit Breaker 油遮断器

OIC Organization of the Islamic

Conference イスラム協力機構

OPEC Organization of the Petroleum

Exporting Countries 石油輸出国機構

PC Personal Computer パソコン

PPP Public Private Partnership 官民パートナーシップ

PSMD Primary Substation Maintenance Department

クウェート国 電力・水省 系統変電所保守部門

RBM Risk Based Maintenance リスク基準保全

RCM Reliability-centered maintenance 信頼性中心保全 SAIFI System Average Interruption

Frequency Index 平均停電回数指標

SAIDI System Average Interruption

Duration Index 平均停電継続時間指標

SC Study Committee 検討委員会

SF6 Sulfur Hexafluoride 六フッ化硫黄

S/S Substation 変電所

TB Technical Brochure 技術小冊子

TBM Time Based Maintenance 時間基準保全

TG Thermogravimetry 熱重量測定

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略称 名称 日本語名称

USD United States Dollar アメリカドル

UAE United Arab Emirates アラブ首長国連邦

VAT Value Added Tax 付加価値税

VCB Vacuum Circuit Breaker 真空遮断器

WTO World Trade Organization 世界貿易機関

WTI West Texas Intermediate ウェスト・テキサス・インターミデ

ィエイト

(6)

目次

1 調査の目的と背景及び概要 ... 1

1.1 クウェート国を取り巻く環境と調査目的・背景及び概要 ... 1

1.1.1 経済発展に伴うエネルギー消費の拡大と将来構想 ... 1

1.1.2 日本とクウェート国との関係 ... 4

1.1.3 クウェート国での変電所GIS化と本邦企業の進出 ... 5

1.1.4 既設GIS変電所の老朽化と現状の対応 ... 6

1.1.5 GISの高経年化への対応に関する世界の動向 ... 9

1.1.6 日本におけるGISの保全および更新対応の実績 ... 12

1.1.7 本調査事業の背景と目的 ... 19

1.2 調査内容 ... 21

1.2.1 一般調査事項 ... 21

1.2.2 アンケート調査事項 ... 23

1.2.3 GISサンプリング調査事項 ... 23

1.3 調査スケジュール ... 24

1.4 実施体制 ... 24

2. GIS変電所の保全・更新に関する基本情報 ... 25

2.1 日本におけるGISの保全・更新状況 ... 25

2.1.1 GISの最適な更新計画 ... 25

2.2 各国における関連活動状況 ... 27

3 調査結果 ... 29

3.1 一般調査事項... 29

3.1.1 主要経済指標 ... 29

3.1.2 電力セクター指標 ... 32

3.1.3 クウェート国での本邦メーカの活動状況 ... 41

3.1.4 既設変電所の保全状況調査結果 ... 42

3.2 GISサンプリング劣化調査結果 ... 61

3.2.1 GISサンプリング調査対象の選定 ... 61

3.2.2 GISサンプリング劣化調査手順 ... 64

3.2.3 日本の保守、アセットマネジメント に関する技術情報及び意見交換 ... 64

3.2.4 GISサンプリング劣化調査 ... 65

3.3 最適保全・更新計画の提案 ... 73

3.3.1 保全計画の提案 ... 73

3.3.2 更新計画に関する提案 ... 74

(7)

4 プロジェクト費用積算 ... 78

5 環境社会影響評価... 81

6 プロジェクト評価... 82

7 本調査の成果と今後の展開 ... 83

7.1 本調査の成果... 83

7.2 今後の展開 ... 83

8 参考文献 ... 84

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1 1 調査の目的と背景及び概要

1.1 クウェート国を取り巻く環境と調査目的・背景及び概要

1.1.1 経済発展に伴うエネルギー消費の拡大と将来構想

1.1.1.1 経済発展に伴うエネルギー消費の拡大

クウェート国(以下、ク国)においては、近年、豊富な石油資源に支えられた経済 成長と人口増加により、国内エネルギー消費が急速に拡大している。1990年のイラク 国によるク国への侵攻により経済成長が一次停滞したものの、フセイン政権崩壊後に 国内インフラ設備の整備等を目的とした大規模な投資と開発が進められたことが背景 にある。1988年から2018年まで過去20年の人口と国内における一人当たりの電力 消費量の推移を図1.1.1.1-1に示す。

図1.1.1.1-1 クウェート国の人口と一人当たりの電力消費量推移

(出典:MEW Kuwait (2019), Statistical Year Book 2019 (Electrical Energy))

図1.1.1.1-1より、人口、電力消費量のどちらも右肩上がりとなっていることがわか

る。ク国は人口の約7割[1]が外国人居住者であり、労働市場は外国人労働者に依存し ている。こうした労働者の流入もあり、人口は過去10年間で37%増加した。このこと は、電力・水の供給、交通網の整備、住宅開発など、インフラ投資の大きな要因にもな っている。2014 年の 1 人当たりの電力消費量は15,533kWh であり、GCC 諸国で3 位、世界では6位であった[2]。ピーク時の電力需要は年平均で5.7%増加し、2025年

には25,800MW に達する想定であり[2]、大規模な電力設備の増強も計画されている。

電力以外のエネルギー消費量も急速に増加しており、国内で供給される電力・石油製品 が低廉な価格水準で販売されていることも消費量の急増に寄与していると考えられる。

図1.1.1.1-2に、ク国におけるガソリンの販売価格を示す。日本、米国だけでなく、世

界最大の原油生産国でもあるサウジアラビア国と比較しても、ク国のガソリン価格は 低廉な価格水準となっている。

(9)

2

図1.1.1.1-2 ガソリン価格の比較(2019年11月)

(出典:Trading Economicsデータベース(2019)より作成)

ク国は世界第9位(2018年BP統計)の原油生産国であり、輸出品目も原油関連に 強く依存している。2018 年断面における原油及び鉱物性燃料の割合は 92.7%であり、

プラスチックなどの石油化学製品を含めると 98.1%にもなる。このことからもわかる ように、ク国の経済は原油や天然ガスの価格動向に影響を受けやすい。

2007年から2019年の原油価格と経済成長率の推移を図1.1.1.1-3に示す。原油価格 の乱高下や、世界金融危機があった2009年には経済成長率が低下しているが、原油価 格の高騰した2011年には増加が見られ、原油価格が成長率に大きく寄与していること がわかる。2014年以降は原油価格が下落し、この頃から経済成長率も低い値で推移し ている。

図1.1.1.1-3 原油価格と経済成長率の推移(2007-2019)

(出典:IMFデータベース(2019)より作成)

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3

1.1.1.2 財政の悪化と電気料金の値上げ

ク国の国家財政と原油価格の変化を表1.1.1.2-1に示す。1999年から2014年までの 15年にかけてク国財政は黒字を維持していたが、原油価格の下落により、2014年6月 以降は赤字が続いている。2017年3月には、ク国政府は財政赤字の補てんを目的とし て国際市場向けに80億USDの新規国債を発行した。併せて、付加価値税(VAT)の 導入による非石油収入の増加や公共支出削減、燃料・電気・水道料金、医療費といった 公共料金の値上げといった財政赤字削減の施策が打ち出され、電気・水道料金の値上げ が2018 年 2月までに順次実施された[1]。長引く原油価格の低迷や中東情勢の混迷の 中で、歳入減と歳出増に伴う対外資産の急速な取り崩しや国債発行など、ク国の財政逼 迫を伝える報道が続いている。

表1.1.1.2-1 国家財政と年間平均油価

(出典:在クウェート日本大使館(2018年11月)「クウェート経済概要」)

1.1.1.3 将来構想財政の悪化と電気料金の値上げ

2010年、ク国政府は、石油依存から脱却し経済の多様化を目指す「クウェート・ビ

ジョン2035」を発表し、4ヶ年の開発計画を開始した。現在は2015年4月に開始し

た第二次5ヶ年開発計画「クウェート開発計画」が進行中である[3]。クウェート開発 計画では、1,113億USDを投じ、発電・造水施設の建造、都市内・国内鉄道網の新設、

道路網の整備、住宅・都市開発、空港・港湾の整備、医療・教育施設の新設等を行う[2]。

近年は財政赤字が続いているものの、過去の貯蓄に加え、世界有数の政府系投資機関で あるクウェート投資庁(KIA)があるため、インフラへの投資資金は確保されている。

ク国のインフラ建設は政府機関が計画・実施しており、送変電を含む電力設備につい てはクウェート国 電力・水省(MEW:Ministry of Electricity and Water)が監督し ている。クウェート開発計画のような国家的なインフラ開発戦略のもと、国内電力需要 の増大と電源開発計画に対応するため、送変電設備についても拡張が進められている。

超高圧系統では、2010 年から 400kV 電力設備が新たに導入されたほか、従来からの

300kV 系統も継続的に拡張されている。ク国とサウジアラビア国とを結ぶ国際鉄道や

クウェート市内の地下鉄が計画・建設中であることを考慮すると、送変電設備の拡張は、

今後も継続すると考えられる。

持続的な経済の発展を支える強固な電力インフラ網を造成・維持するためには、上述 のような送変電設備の新設・増強ももちろん重要であるが、既設設備の保全更新も不可

(11)

4

欠である。経年設備の余寿命診断とその結果に基づく優先順位を考慮した更新や、保守 などを実施していかないと、建設ラッシュ当時の電力設備取替のピーク時に、計画停電 を余儀なくされることになる。電力系統の安定的運用のためには、地域の需要及びリス クを評価した、設備の新設、既設設備の増設、適切な定期メンテナンス又、既設設備の 持続的な運用が重要である。財政が逼迫しているク国だからこそ、費用対効果を最大化 させる方策が求められると考える。

1.1.2 日本とクウェート国との関係

1.1.2.1 日・クウェート包括的パートナーシップ

16 世紀にヨーロッパ列強が湾岸地域へ進出したことでク国の存在が知られるように なった。1899年に英国の保護国となったのち、1938年に大油田が発見され、1961年 6月19日に英国から独立した。この際、日本もク国の独立を承認し、1962年には在東 京クウェート大使館、1963年には在クウェート日本大使館が設置された。以来、現在 に至るまで、日本とのク国との外交関係は50年以上にわたって継続している[3]。

2011年3月の東日本大震災の際には、ク国政府から500万バレルの原油が無償供与 されたほか、岩手、福島、宮城の被災三県にて復興支援事業が実施された。2012 年3 月にサバーハ首長(当時)が国賓として訪日した際にも、500万USDの追加寄付を表 明し、7月に贈呈式が行われた。ク国からの支援は被災地の様々な復興プロジェクトに 活用されている[3]。

2013年8月、安倍総理大臣がク国を訪問し、H.H.Sheikh Nawaf Al-Ahmed Al-jabir Al-Sabah皇太子(当時)およびH.H.Sheikh Jabir AI-Mubarak Al-Ahmed Al-Sabah首 相(以下、Jabir首相)との会談を行った。二国間協力をさらに拡大することの重要性 について確認し、エネルギーのみならず、政治・安全保障、経済、教育、農業、保健を 含む幅広い分野において両国間で協力する「包括的なパートナーシップ関係」を構築す ることで一致した[4]。

2016年5月、安倍総理大臣の招待を受けてJabir首相がハイレベル随行団を伴って 実務訪日し、二国間での公式協議を行った。官民に渡る様々な人の交流を通じ、政治、

経済、エネルギー、文化等の幅広い分野について、2013年の「包括的パートナーシッ プ関係」をさらに強化していく意思を確認した。エネルギー関連では、日本の経済産業 省とク国の MEW の電力・水分野に関する協力関係について触れ、電力・水インフラ の発展における協力関係を強化していく方向で合意した[5]。

1.1.2.2 日・クウェート電力・水分野政策対話

2016年5月、経済産業省製造産業局の若井審議官をヘッドとする一行がク国を訪問 し、当局間で「第1回 日・クウェート電力・水分野政策対話」を行った。双方が電力、

水道事業の取り組みを紹介し、ク国での新たな計画推進に向けた議論を行った[6]。

(12)

5

2018年10月、ク国にて「第3回 日・クウェート電力・水分野政策対話」が実施 され、ク国に対して変電所のガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switchgear)等 の電力関連製品の納入実績がある日立製作所もこれに出席した。会議の中で、中部電力 および日立製作所が共同で実施しているGISの保全更新最適化(延命化)活動や、本 邦企業が持つGISの長期運用技術・実績について紹介したところ、ク国側議長を務め たMEW送変電ネットワーク局のJassem M. Al-Nouri次官補(以下、Al-Nouri次官 補)が大きな関心を示した。ク国では1970年台後半から変電所の建設ラッシュが始ま り、日本製を含む多くのGISが導入されたが、現在それらがメーカの設計時期待寿命 を超え、更新時期を迎えていることから、ク国においてもこの活動に向け調整を進める よう要請があった。

1.1.3 クウェート国での変電所GIS化と本邦企業の進出

ク国では、1970年後半からGIS変電所の建設ラッシュが開始され、日欧の変電機器 メーカを主契約者とした市場だったが、1990年8月のイラク国によるクウェート侵攻 に始まる湾岸戦争(多国籍軍は、1991年2月にクウェート市を解放)を機会に 10年 近く建設ラッシュが止まり、被害を受けた発電所、変電所、ネットワークの修復が中心 に行なわれた。2000年になると新GIS変電所の建設が再開したが、市場価格の下落に よりエンジニアリング会社を主契約者とした市場にかわり、日欧の変電機器メーカは、

機器単品を納入するだけの契約形態へ変っていき、また変電機器単品も徐々に韓国、中 国、現地製造メーカの介入を許す市場となった。

<1970年代後半~湾岸戦争勃発前>

フルターンキーによる変電所の建設(日欧の変電機器メーカが主契約社)

変電所の建設

土木・建築工事

特別高圧GIS据付

高圧MCS (Metal-Clad Switchgear) 据付

保護制御盤据付

高圧ケーブル据付

諸試験

<2000~2010年>

エンジニアリング会社主導。機器製造メーカから機器単品納入契約。

<2011年~現在>

132kV GIS・韓国、中国、現地製造メーカ / 300kV GIS韓国勢

(13)

6

日立製作所だけでも132kV、300kV 合わせて337回線(Bay)のGIS台数を納入し ており、日欧6社の納入台数総計は2000回線(Bay)を超えると推定される。

ク国に納入、設置された日欧の GISを分類すると、第 1 世代(1970 年代後半から 1990年納入。1985年を平均とした機器平均年齢35年)と第2世代(2000年から2010 年納入。2005 年を平均とした機器平均年齢15 年)のグループに分けられる。また、

2011年以降に納入された韓国、中国、現地メーカ製が多く納入された時期のものを第 3世代と呼ぶ。今後、本報告書での第1世代、第2世代、第3世代とは、ク国でのGIS 納入、設置年代の分類のことをいう。これは日欧メーカの傾向であるが、本邦企業の進 出傾向と同じである。

1.1.4 既設GIS変電所の老朽化と現状の対応

通常のGIS機器の設計寿命は、25~30年と言われており、日本では余寿命を評価す るために各メーカ各形式において、タンク開放しての内部点検(以下、内部開放点検)

およびサンプリング調査を実施している。

ク国でも第1世代のGISに関して1985年頃(6から7年経過した変電所)から操 作機構部に関する簡易点検の実施を開始したが、本体の内部開放点検や操作機構の分 解点検に関しては実施されておらず、不具合の多いGISは、修理、取替といった事後 的対応となっている。また、35 年を経ることによる数々の不具合現象もみられ、本来 1年の保証期間が終了すると無償で対応する責務がメーカ側にないため、日本で実施さ れているような品質向上のための電力会社―メーカ間の技術情報交換活動/不具合発 生時の原因究明と対策水平展開、予防保全活動に類する文化がない。

<第1世代のGISの老朽化現象事例>

(1) 1970 年代に IEC 等の国際標準規格には規定されていなかった仕様によるトラブ ルの発生(二重母線で発生するループ電流開閉や多頻度開閉)

(2) 計器用変成器などのコイル機器製品の劣化 (3) グリース劣化による操作トラブル

(4) 空気操作機構部のフランジ部からの空気漏れ (5) フランジ部Oリング劣化によるSF6ガス漏れ

(6) 屋内設置型GISであるが、粒子の小さな酸性砂嵐の侵入による発錆

上記の記載の内容は、いずれも供給障害を起こす原因となる事象で未然に発見して 対応をしなければならない。(本来設計寿命を25~30年とメーカが設定していたため、

上記のような老朽化現象に対する計画的対策の実施が延命化を可能とする。)また、意

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7

外にも同国の変電所では火事の発生が多発しており、海外からの作業者に盗まれた接 地の導体断線によるサージ発生などが原因になることもある。

2000年以降に納入された第2世代GISの操作機構は電動ばね方式であり、欧州メー カは、メンテナンスレスと称して第1世代のGISの電動ばね方式への改造、もしくは リプレースを推奨している。MEW はこれを”Up-Grading”と呼んでいる。ここでいう 改造とは、GISのガス遮断器(GCB:Gas Circuit Breaker)部分の一部を改造するこ とである。これに対し、本FSでは、以下の2点を強調し、そのためにも内部開放点検 や操作機構の分解点検が大切であることを説明した。

(1) 日本では、メーカ推奨をもとに電力会社で設定した周期・内容による定期点検をベ ースに、劣化調査を実施することで、初期形GISを 45 年以上使用しており、25

~30年での一律改造やリプレースなどは実施していない。

(2) リプレース工事には対象設備の長期停止が必要となるが、短期間に集中的に建設 された全てのGIS を期待寿命に合わせてリプレースするということは、送変電設 備の停止がある年代に集中することを意味するため、現実的ではない。そのため、

分解点検や詳細劣化調査を実施して更新の優先順位を評価し、停止ピークを平準 化することが重要である。

ク国における変電所定期点検の事例(2019年9月入札発表)

(1) 5年間で全変電所の簡易点検を2回ずつ実施する。点検はメーカ(全9社)がそれ ぞれ実施し、対象は、GIS、変圧器、11kVスイッチギア(11kVの気中絶縁開閉装 置キュービクル)。

(2) 変電所1箇所にかけられる日数は7日程でGISの内部開放点検、分解点検は実施 しない。

ク国の GISに関する保守の方針は、上記の例のような簡易点検の繰り返しである。

過去に同様の点検プロジェクトに従事した技術者に聞くと“一律に定められた保守メニ ューだけを短期間に行なうので、その機種特有の不具合を修理や点検調査をすること が出来ていない。経年6~7年程度の新しいGISは良いが、経年が進んでくると新たな 問題も出てくる。点検サイクルを2回、3回と繰り返しても、一律のメニューで保守・

点検していてはそういった個別の問題に対応出来ない。”との報告もある。

各メーカの機種のトラブルポテンシャルはそれぞれ特色があるので、MEWの簡易点 検に加え、操作機構の分解点検やサンプリングでの内部開放点検による調査を実施し て、保全方法を見直す必要がある。

(15)

8

上記のMEWの操作機構部簡易点検の事例(2019年入札発表)では特にGIS、変圧 器、11kVスイッチギアに関して点検を行っているが、それぞれの機種は特に下記のよ うな特徴をもっている。

(1) GIS 設計寿命25~30年。ただし、サンプリング詳細調査を実施

して、各機種の保守メニューを作成、実施すれば、45年は 使用できる。

(2) 変圧器 設計寿命25~30 年といわれるものの、物によっては40~

50年間、手を加えなくとも使用できるものもある。外部か らの監視(計器類、漏油など)や油を採取しての分析(診断)

で健全性を評価できる。

(3) 11kVスイッチギア 一般的に3~6年周期に点検、問題のある部品を交換しなが

ら25~30年使用するという設計思想である。

従って GISを長期使用(延命化)するためには、日本的な考え方を導入する必要が ある。

また、ク国納入の第1、第2世代のGISは日欧であるが、2011年以降の第3世代で は韓国や中国、現地製造メーカ製GISに対しての保守を実施しなければならず、今後 のアセットマネジメントの考え方を見直す必要がある。

日立製作所もサプライチェーン・マネジメントと称して2005年から中国に工場を建 設して中国国内へ納入する 500kV-1100kV GIS プロジェクトを実施したが、品質確 保のために同社が 1970 年代に日本で対策した数々のポイントを中国で技術指導して 物づくりを進めてきた。日立製作所の中国工場製品は 500kV-1100kV GIS といった

重要な500kV以上の高電圧機器ということもあって厳しい品質改善の下、中国国内へ

納入している。しかし、主に以下に示す理由により、現在まで日立製作所中国工場から ク国へ直送できる品質には至っていない。

ボルト等各部材の錆他の品質(結局日本製へ変更)

めっきの品質(未だに日本から定期的な技術指導を要する)-異物発生原因

塗装塗り漏れ

操作機構部そのものの不良(結局他国の日立製作所技術提携メーカから供給)

グリース、Oリング(仕様規定)

ボルト締め付け不足による緩み

絶縁物(中国に工場を建設して日本から技術指導を実施)

ク国へ納入される中国メーカ製の第3世代GISもまた、同様の品質問題を内包して いる可能性が高い。

(16)

9

1.1.5 GISの高経年化への対応に関する世界の動向

CIGREなどの国際学会でも変電設備の効率的な保守・点検・更新について議論され

るなど、既存設備の最適な保守計画は、世界でも注目を集めている議題である。

CIGRE発行による技術小冊子(TB)では、各国の電力会社を対象とした変電設備保守

計画の最適化に関する調査結果と各国の電力会社が直面している問題について、2016 年に公開されている[7]。各国の電力会社が直面している問題について、以下のように 述べている。

各電力会社は、電力供給に対して高い信頼性が要求されている一方で、多くの既存の 設備は、設計時期待寿命を超過して運用しており、電力系統を維持するための保守や設 備投資がますます必要になってきている。従って、円滑な設備更新の流れ、最適なコス ト、リスク管理を確立し、電力設備のパフォーマンスの維持向上を図ることが課題とさ れている。

上記課題に対して、これまで新設された設備には、通常、時間基準保全(TBM)を 行うことを前提に製造元の保証が付いているが、これはすべての設備および動作環境 に対応するように定められているために、TBM の周期は、保守的な短い傾向にある。

つまり、電力会社にとって効率の悪いものとなっている。効率的な保守計画の策定の方 針として、TBM からの方針転換として、各国電力会社が近年用いている方法として、

状態基準保全(CBM)、リスク基準保全(RBM)、信頼性中心保全(RCM)がある。

CBM のための状態監視は、状態または性能低下の兆候を監視するために使用され、

変電所の点検の一部としても活用することが出来る。電力系統にとって重要な設備に ついては、継続的な監視を実施することによって事故・障害発生のリスクを減らし、結 果として保守コストの低減につなげることが出来る。監視により、問題が発見された機 器に対しては、停電調査、適切な停止中の検査または内部点検が実施される。

RBMは例えば遮断器の動作回数、ポンプなどの運転時間に基準を設け、基準値を超 過した機器に対してメンテナンスを実施するものである。RCM は電力系統において、

重要な回線、機器などに重点を置いて保守計画を策定するもので、主にRBMなど他の アプローチと併せて活用される。変電設備保守計画の最適化に関する調査は2015年に 実施され[8]、日本を始めとする21の国、36の電力会社から回答を得ている。調査結 果を以下に示す。

変電所における機器の寿命は、図1.1.5-1に示されるとおり、50年以上経年している 機器も散見されており、導入当初の期待寿命がおおよそ25~30年であることを鑑みる と、すでに期待寿命を超えて使用していることが分かる。

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図1.1.5-1 変電所における機器の寿命

(出典:CIGRE TB660 (2016), Saving though optimized maintenance in Air Insulated Substations)

電力ネットワーク(送電線、変電所他)の建設にあたっては、建設時の用地取得、周 辺都市計画との調和等諸々の条件に基づき計画をされたシステムであり、機器の寿命 とは別に、変電所そのものはより長く機能を維持していく必要がある(例えば、場所に よっては100年近く運用しなければならない場所もある)。導入当初の期待寿命を延長 して40から50 年使用出来る実績がでてくると必然的にTBMからCBMへ方針転換 していき、既存の設備を限界まで使用するという考え方となってくる。

しかしながら、世界的には、日本で実施している様な GIS変電所の劣化診断、寿命 評価といった活動にはなされていない。電力会社が各機器へ適用している保守対応の 方針を図1.1.5-2に示す。

図1.1.5-2 変電設備に対する保守対応方針

(出典:CIGRE TB660 (2016), Saving though optimized maintenance in Air Insulated Substations)

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ほぼ全ての機器に対し、CBM が適用されているものの、TBM も依然として適用さ れていることがわかる。一方、RCM、RBM の適用は限定的である。ようやく RCM、

RBMが一般的に検討されるようになってきた昨今、さらに効率的な保守対応が期待さ れるところである。保守・更新活動とはライフサイクルの要素の1つに過ぎず、それ自 体で終わらせるものではないという視点をもち、各社の経験に基づく資産管理の導入 により、設備投資全体で大幅なコスト削減を実現し、電力システムとビジネスの両方の パフォーマンスを向上させることが可能となる。

さらに、電力設備の高経年化や新設設備への費用低減要求などへの対応として先頃 議論が活発化してきているというニーズの高まりから「アセットマネジメントへの期 待と展望」と題して英国や米国、日本におけるアセットマネジメントの課題や最新の技 術動向について講演会が開催されている。2017年に日本CIGRE国内委員会が主催し た2017 JNC Conferenceの基調講演では、米国電力研究所EPRI副社長のRobin E.

Manning氏より「Asset Management Research and Development」と題して、近年 の発達目覚ましいディジタル技術を用いることにより“センサー利用によるReal-Time 評価”、“作動不良・作動数・経年数など予防保全計画の決定指標となるデータ解析”、

“瞬時評価を可能にするモデリングや状態の見える化を可能にするツール利用”、“AR

(拡張現実)やロボットを用いた新しい操作機器”といった要素技術を取り入れて、変 電機器を含む変電所のアセットマネジメントメニューの多様化が提案されている。

CIGREでは、GISに焦点を当てた上記のようなメンテナンス方針の調査も実施して

いる。GIS に関するTBM、CBM、RCM、その他の4つのメンテナンス方針を選択肢 とした電圧階級ごとの調査結果が表1.1.5-1である。

表1.1.5-1 GISのメンテナンス方針毎の稼働実績分類

(出典:2016年,CIGRE TB513“Final Report of the 2004 – 2007 International Enquiry on Reliability of High Voltage Equipment”)

表1.1.5-1では、TBMがGISのメンテナンス方針の中心となっている。CIGREで

はアセットマネジメント計画やGISの信頼性への影響においてもメンテナンスは極め

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て重要であると述べている。そのためCBMや、CBMとTBMを併用したRCMとい った方針は既に紹介されている。

1.1.6 日本におけるGISの保全および更新対応の実績

わが国においては、電力需要の低成長・電力自由化の時代であり、設備投資を抑制す るため既存の設備を限界まで使用することが要求されるため、設計期待寿命とされる 30年を超えた高経年機器の増加が想定されている。変電所の主要機器であるGISの経 年毎の台数推移を図1.1.6-1に示す。

GISに関しては、2010年度末で経年30年を超える機器は約9.5%であり、現在の設 備量でこのまま更新せずに経年が推移したと仮定すると、2020年度には全体の42%が 経年30年を超えることとなり、高経年化が進むことが予想される。

上記データからも分かるように、わが国では電力用機器が高経年期を迎え、老朽化変 電所が増加するなか、電力会社およびメーカでは機器の寿命推定のための劣化調査が 行われており、また一部では劣化進行に伴う更新も行われている。

図1.1.6-1 GISの経年分布

(出典:電協研70巻 2号「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」)

高度経済成長期に大量に設置された電力用機器が高経年期を迎える中、電力の安定 供給のため、機器の状態を適切に判断することが必要である。また、電力自由化に伴い 電力流通部門における公平性・透明性を高めるため、投資につながることから適切な判 断により適切な時期に設備保全および設備更新を行っていく必要がある。このような 状況下において、わが国の電力会社およびメーカの協業により、変電設備の状態を的確

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に把握し、効率的な点検・手入れ、部品取替、寿命推定および更新時期の見極めのため の劣化調査が進められている。

このような電力設備の保全や劣化対応に関する取り組みは、一般社団法電気協同研 究会(電気技術の諸問題を解決するため、電気事業者、電機・電線・通信機器メーカ、

電設業者、電気使用者等の技術者のほか、学識経験者、関係する各方面の研究者、専門 技術者の協力による委員会を組織し、より効率的・合理的に調査・研究を行い、その成 果を報告書に取り纏め、関係者に提供する組織。以下、この組織を電協研といい、その 報告書を電協研○巻○号という。)にて適時調査・研究され、報告書に取りまとめられて いる。

GISに関しては、2010年12月に電協研「ガス絶縁開閉装置保全高度化専門委員会」

が設立され、GISに関する最新の障害内容、劣化評価に関する知見及び情報を収集し、

劣化メカニズムとその評価を行い、延命化及び更新の考え方構築に向けた研究が行わ れた。その成果として、電協研第70巻第2号「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」(2014 年8 月)が発刊され、劣化調査部品や診断技術についても整理された。

また、2018年4月には電協研「変電設備の保全高度化とアセットマネジメント専門 委員会」が設立され、変圧器やGISだけでなく変電設備全般に関して、最新の障害内 容や劣化評価に関する知見及び情報を収集し、劣化メカニズムとその評価を行い、延命 化及び更新の考え方構築に向けた研究活動を実施している。(2021 年 3 月活動終了予 定)。

1.1.6.1 日本におけるGISの保全

GIS は電力系統の要であり、系統故障時の大電流から系統設備や受電設備を守る役 目を果たす必要がある。日本の電力会社は、GIS故障時の社会的影響を鑑みて、電力の 安定供給、事故・障害発生数を減らすべく、予防保全として巡視・点検を実施している。

表1.1.6.1-1 遮断器の保全内容と周期(電力会社の実態)

内容 周期

外部一般点検 1回/3~6年 測定試験 1回/6~12年 内部分解点検

・遮断部

・操作機構

必要の都度

1回/6~12年、規定回数、必要の都度 開閉操作 1回/1~3年

(出典:電協研61巻 3号「密閉形変電設備の劣化保全技術高度化」)

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14

結果として、SAIFIおよびSAIDIは、世界の電力会社に比べ高水準であり、日本の 電力設備の信頼度は高い。(ただし、近年は災害の激甚化により SAIFI および SAIDI が悪化傾向にある。)

1.1.6.2 GIS劣化調査状況

上記のような予防保全を行い、劣化しやすい操作機構部のガスケットや O リング、

弁体などは定期的に交換され、手入れされることで日本の電力設備は高経年になって も故障率が少ない。加えて、日本の電力会社は、製造メーカと協力し、機器の劣化状態 について、定量的な調査・評価を行っている。

GIS の劣化調査は、機器構成別では遮断器を中心に実施されている。製造年でみる と、1990年以前の機器で調査がなされ、1970年代中頃や1986年頃に製造された機器 が調査されている。部品・材料では、Oリングの調査が多くなされ、その他にはグリー ス・銀めっきなどが調査されている。部品・材料ごとの劣化調査方法を表1.1.6.1-2に 示す。

表1.1.6.1-2 劣化調査状況(調査項目)

(出典:電協研70巻2号「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」)

フランジ部は、シール性能というGIS運転上重要な要素を有している。その劣化状 態の調査としてO リング劣化やフランジ面の錆の状況調査がなされている。通電部の 劣化調査では、接触子に使われているグリースの分析や接触子の銀めっき摩耗状態の 調査が行われている。これら主な劣化部位の調査について以下に述べる。

(1) Oリング

O リングは圧縮永久ひずみ率を測定し評価している。経年劣化が進行して圧縮永久 ひずみ率が 80%に達すると、ガスリーク発生の可能性が急激に高まることが報告され ており、圧縮永久ひずみ率80%がガスシールの限界となる。圧縮永久ひずみ率は、JIS K6262に従い、図1.1.6.1-3のように求めている。

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図1.1.6.1-3 Oリングの圧縮永久ひずみ率の求め方

(出典:電協研70巻2号「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」)

(2) グリース

グリースの劣化は、油分率、広がりちょう度、増ちょう剤の破壊、異物混入、酸化状 態などについて調査しており、多くの劣化調査では油分率分析を実施している。

GIS の構成機器である GCB や断路器(DS:Disconnecting Switch)、接地開閉器

(ES:Earthing Switch)の接触子表面には導電性グリースが塗布されている。グリー

スは増ちょう剤と油分で構成されている。増ちょう剤が油分を保持するスポンジのよ うな役割を果たしており,油分により潤滑性能を維持している。コンタクトの摺動部に 塗布されたグリースは開閉動作により増ちょう剤が破壊されて軟化したり,蒸発や離 油により油分が減少するなどの劣化が進展する。したがって,油分率を測定することで グリースの劣化程度が把握できる。油分率の測定方法としては、熱重量測定法(TG法)

や赤外分光法(FT-IR法)などがある。熱重量測定法の測定例を図1.1.6.1-4に示す。

図1.1.6.1-4 熱重量測定結果の例

(出典:極微量グリースの油分率測定,2003年電気学会全国大会,6-212)

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16 (3) 銀めっき

GCB など GIS 構成機器の接触子部に適用している銀めっきの残存厚さを測定する ことにより、劣化(摩耗)度を調査している。断面観察は、コンタクト類を切断し、切 断面を顕微鏡にて拡大観察を行い、銀めっき残存厚さを測定している。

このように、国内各社がGISの各部位の劣化調査・寿命評価を行い、保全方策や更 新時期の見極めに活用している。劣化調査の成果は国内外の会議で報告されている。

1.1.6.3 GISの延命化

GISは開発・導入から 40 年以上が経過し、設計期待寿命30年を超えて継続運用さ れることが想定される中、使用者としては、機器の延命化、点検周期の延長や保守の低 減のニーズが高まっている。前述の通り、様々な劣化調査・評価が行われる中、各部位 の劣化進展速度の違いから、構成機器を少しでも長く運用するためには、劣化の進展が 早い部位を修理し、機能維持を図ることが重要である。

延命化には、①部位の修理による構成機器の延命化、②構成機器の更新によるGISの 延命化、の2通りが考えられている。電協研70巻2号では、構成機器を少しでも長く 運用するために劣化進展が早い部位を修理し、機能維持を図ること、すなわち①を延命 化として扱っている。

延命化の考え方としては、初期の GIS や劣化の著しい機器に対する延命化を検討す る場合、機器の状態把握と保全の検討、部品供給や技術者の派遣可否、運用面などを含 めた延命化可否の検討,延命化方策と更新コスト比較や現状のメンテナンスコストの みでなく、将来にわたってのライフサイクルコストを含めた検討が必要である。これら の検討項目と手順をまとめた延命化の概略フローを図1.1.6.3-1に示す。

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図1.1.6.3-1 延命化の概略フロー

(出典:電協研70巻2号「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」)

電協研70巻2号では、GISの劣化事象からの延命化方策と、劣化評価からの延命化 方策について述べられている。主なものを表1.1.6.3-1、表1.1.6.3-2に示す。

表1.1.6.3-1 劣化事象からの延命化方策

部位(劣化事象) 延命化策

フランジ(ガス漏れ) フランジ部の防水処理 碍管(ガス漏れ) セメンチング部の防水処理 ガス配管(ガス漏れ) パッキン、Oリング交換 電装品(不動作障害) 定期交換

圧力計・密度スイッチ(指示不良/動作不良) 定期交換

空気配管(空気漏れ) パッキン、Oリング交換、エアレス化 グリース(開閉動作不良) グリース塗布、対策構造品への交換

(出典:電協研70巻2号「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」)

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表1.1.6.3-2 劣化評価からの延命化方策

部位 延命化策

Oリング (配管などの細径)細密点検時の交換

(フランジの太径)部分更新の際に交換 通電部

(運転回数多)動作回数制限が可能な場合は、銀めっき摩耗を遅らせ るために、機器操作の順位変更などを検討。

(グリース油分率低下)内部開放可能な機器にはグリースアップ。

軸シール

(運転回数多)動作回数制限が可能な場合は、銀めっき摩耗を遅らせ るために、機器操作の順位変更などを検討。

(グリース油分率低下)現地解体可能な場合は、細密点検時のグリー スアップ。Oリング、パッキン交換。

(出典:電協研70巻2号「ガス絶縁開閉装置の保全高度化」)

このうち、フランジ部はシール性能というGIS運転上重要な要素を有し、劣化する とガス漏れに至る。また、フランジ部の状態確認にはガス回収、内部開放が必要となる ため、実施が困難である。部位によっては、現地取り外しが不可能なフランジも存在す る。したがって、フランジ面やボルト部からの雨水浸入などによる錆や腐食による劣化 を防ぐために、延命化策としてフランジ防水処理(コーキング)を実施している。基本 的には、屋外GISのフランジ部を対象に防水処理を実施するのだが、製造メーカによ り防水処理方法や防水構造の変遷が異なることから、GIS の状況に合わせ対象部位を 厳選して実施している。フランジ防水処理を実施したGISの例を、写真1.1.6.3-1に示 す。

(全体) (フランジ部)

写真1.1.6.3-1 フランジ部の防水処理を実施したGIS

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19

1.1.7 本調査事業の背景と目的

1.1.7.1 クウェートの電力設備を取り巻く状況と日本の保全技術によるアプローチ

ク国では、2010年から2018年の期間で、最大電力需要は年平均3%と年平均経済成

長率の1.8%を上回るペースで伸びてきた。政府は2018 年度の政府の戦略として以下

の2軸を掲げている。①新たな発電設備と送変電設備の構築による電力ネットワーク の生産性の向上、②国のプロジェクトとして掲げている『Rationalize:合理化』を通じ た消費電力の削減、これらの二つを主軸とし、ネットワークの増設に注力している[9]。

一方、ク国の既存の電力設備の高経年化が進んでおり、主要な発変電設備の中には経年 が30年を超える設備があり、設計寿命を超過し始めている。既存の開閉装置、変圧器 といった変電所の主要機器が万が一故障を起こせば復旧に半年を要し、将来再び大規 模停電を発生させ安定的な電力供給を妨げる大きなリスクになりかねない。ク国では、

現状で欧州、ロシア、中国、韓国メーカが進出し、老朽化設備のリプレースおよび新規 設備の建設に特化している。

一方、日本の停電時間(1軒当り21分/年)は欧州・米国の先進主要国の中でもトップ クラスの低さであり優秀な電力の品質を誇る。停電は多くの場合、電気設備の故障が原 因であり、日本ではこれまで機器メーカとそのユーザである電力会社は定期的なトラ ブル対策の情報交換等を通じて協力しながら、ハード面とソフト面の対策をしっかり 行ってきた成果でもある。

そのような背景から本FSでは、日本が世界に誇る電力の品質を支える変電所の保守 運用に関する技術支援を機器メーカとそのユーザである電力会社と共同で実施する事 で、欧州、韓国、中国メーカとは違ったユーザ視点のアセットマネジメントの考え方を 根付かせ、日本メーカの裨益につながる変電所設備保全プロジェクトの獲得と、クウェ ートにおける日本の技術の優位性を得ることを目指す。日本の電力会社は設備の状況 を把握し定期的な予防保全を実施しながらメーカの製品寿命を上回る運用を行ってき た実績があり、本FSを通じて欧州、韓国、中国メーカが推奨をするリプレースの考え 方とは違うライフサイクルコストの考え方も浸透させて行く。

1.1.7.2 本調査事業の背景と目的

ク国では、1970年代後半から1980年代にかけ、GIS変電所が多く建設され、これ らのGISが設計時の期待寿命を超過しつつあり、更新を計画する時期にきている。一 律の年次(例えば設計時期待寿命)で更新すると、多くのGISを同時期に更新するこ とになり、多額の投資やネットワークの停止制約、工事量増大といった課題に直面する。

一方、日本では 1960年代からGISが導入され、GISの高経年化が進む中、電力会 社およびメーカは、経年GISの劣化調査を行い、更新時期の見極めと必要な保全策の 検討(延命化活動)を共同で実施し、設計期待寿命を超えたGISの運用を実現してい る。工事物量増大への対応と作業停止制約の中で、更新数量を均平化し、更新対応を順

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20

次進める必要があることから、更新の優先順位付けと延命化の検討、実践が各社でなさ れている。

そこで本FSでは、ク国の高経年 GISにおける課題解決のため、先行する日本の知 見を活用し、ク国でのGISの保全実態や高経年GIS(実機)の劣化状況を調査し、海 外メーカ勢が実施していないGISの延命化(保全更新計画最適化)に資する技術提案、

技術啓発を行い、本邦企業によるGIS長期使用のためのメンテナンス事業の獲得と、

クウェートにおける日本の技術の優位性を得ることを目指す。

1.1.7.3 本調査に至る背景と経緯

昨今CIGRE等の国際学会でも、GISの老朽化が課題として取り上げられている。気

中絶縁変電所は機器毎の交換が容易なため、事故時のスペアパーツやスペア機器を常 備することが変電所延命化の基本方針である。一方、GISは経年25~30年で劣化状況 を調査の上、適切な延命化策を計画する必要があり、一度事故が起これば復旧に長期間

(例えば半年間)を要する事態となる。

日本は、土地の狭さと地震等による災害への対応として、早くからGIS変電所を導 入してきた。中近東諸国では、気象条件の厳しさと産油国としての安定した電力供給の 要求も重なり、サウジアラビア国、ク国先導で早期に GIS変電所建設が開始された。

これらの国では1970年代からGIS変電所の建設が始まり、経年35年以上に達する変 電所もあり、GISの設計時期待寿命25~30年を越えつつある。

日本では、電力会社と機器メーカで、定期的なトラブル対策情報交換および延命化調 査・活動を実施しており、GISを45年から50年運用するのが通常となりつつある。

一方、欧州の考え方は新規GISへのリプレースであり(GCB区画のみの更新を含む)、 中東諸国でのGIS延命化という考えは浸透していない。新規GIS更新を行った場合に 附帯するCO2排出の課題もあり、延命化のための保守計画による、ク国でのビジネス モデル策定が望まれている。

1980 年代にメンテナンスフリーで売り込まれてきた GIS は一度事故が生じると復 旧までに時間がかかり、設計寿命25~30 年を越えた GIS の余寿命診断は世界で注目 を集めつつある。GIS 変電所を採用する中近東諸国では、人口増加や経済成長を背景 に、急激な電力需要の増加から、送電網などの電力流通インフラの増強が進められてき た。ク国の変電所は、すべての高電圧開閉設備を気中絶縁設備(AIS)からGISに変更 しており、経年化が進む中、GIS変電所の劣化による不良ポテンシャルの増大に直面し ている状況にある。

これまで中部電力は、日本のGISメーカと共同でCIGRE等において日本のGIS延 命化対策について発信を続けてきた。2005 年から2016 年にかけてシンガポール国,

インドネシア国,タイ国の経年GIS延命化に向けた余寿命診断を実施し、日本のGIS 保守への考え方や韓国・中国・欧州機器メーカとは違った付加価値を提供してきた。

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日立製作所はク国において、変電所で使用する製品(GIS、変圧器)の保守や予防保 全などについての協議を実施し、技術情報の交換会を通じて日本の延命化技術や経験 を長年共有してきた。

そして、2019年1月、日本貿易振興機構(以下、ジェトロ)を通じて、中部電力お よび日立製作所は、Al-Nouri次官補を含むMEW幹部に対し、日本のGIS延命化に関 するセミナーを開催した。Al-Nouri次官補は、日本の取り組みに大きな関心を持った。

このような背景、経緯により、「令和元年度質の高いエネルギーインフラの海外展開 に向けた事業実施可能性調査事業」にて、本FS「クウェート既設変電所におけるガス 絶縁開閉装置の保全更新計画最適化に係る事業性調査」を実施した。

写真1.1.7.1-1 GIS延命化に関するセミナー

1.2 調査内容

1.2.1 一般調査事項 (1) 基礎情報収集

公開情報等を収集し本FSに必要な基礎情報を収集する。日本の企業、公的機関発行 の関係文献、ク国政府、MEWの発行資料等を参照し、ク国の主要経済指標および電力 セクター指標として、以下の項目について調査、整理する。

・主要経済指標: 名目GDP、一人当たりのGDP、GDP構成比、貿易額など

・電力セクター指標: 電力需要、発電電力量、送配電設備など

(2) GIS変電所の保全実態調査

ク国 MEWおよび MEW の系統変電保守部門である PSMD(Primary Substation

Maintenance Department)への聞き取りおよび変電所の現地調査を実施し、GIS変電

所の運用・保全の現状について情報収集する。特に、保全業務の実施体制、巡視・点検 の考え方(周期、実施項目)、過去の不具合情報、メーカとの関係性等について調査し、

GIS変電所の保全・更新計画へ反映する。

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(3) GIS調査におけるサンプリング回線の選定および分解調査作業

「GIS延命化プロジェクト」の実行可能性を調査するため、ク国の一般的な系統電圧 であり、かつ本邦メーカが納入後30年以上経過したものもある132kV GISについて、

サンプリング回線として 1 回線を選定し、日本の電力会社と機器メーカで詳細分解点 検および劣化調査による構成部品の寿命診断を実施する。なお、点検および劣化調査の 詳細については、1.2.3項に後述する。

① GISサンプリング回線選定

以下の項目について検討し、サンプリング回線を決定する。

・運転履歴(経年数、操作回数、事故履歴など)

・日本の電力会社での経年GIS現象との比較

・システムにおける重要性(停電調査の容易さ)

② GISサンプリング回線分解点検

GISサンプリング回線のGCBについて、操作機構部の分解手入れと構成部品 の寿命診断を実施する。主な調査・確認項目は以下の通り。

・GCB操作機構部の詳細調査、動作確認

・Oリング /グリースの劣化状況

・補助リレーの劣化状況

なお、GIS本体の劣化調査については、本FSの限られた実施期間では計画実 施ができなかったため、外観検査による調査を行う。

(4) GIS延命化に係る重点予防保全メニューと保守計画の作成

操作機構部の詳細点検および構成部品の寿命診断結果と、日本の電力会社が保有す る変電所における経年GISの調査結果とを比較し、重点予防保全メニューを作成する。

MEW、PSMDと協議のうえ、GIS延命化のための最適な保守計画を作成する。

(5) 現地報告会等の開催

MEW 本省、PSMD との技術情報の交換会を含めたキックオフミーティングや中間 報告ミーティング、調査結果の取りまとめの段階で最終報告会を実施する。

(6) プロジェクト費用積算

調査結果を踏まえ、「GIS延命化プロジェクト」に係る費用を積算する。

(7) 環境社会影響評価

プロジェクト実施に伴うエネルギー起源CO2の排出抑制量の試算、環境改善効果・

環境社会面への影響等の評価を行う。

(30)

23 (8) プロジェクト評価

調査結果を踏まえたプロジェクトの評価を行う。結果については MEW と協議し、

フィードバックする。

1.2.2 アンケート調査事項

ク国における変電所保全実態を把握するため、PSMD のメンバーに対してアンケー ト調査を実施する。アンケートでは、PSMD における巡視・点検の周期や実施内容、

故障発生時の対応、情報共有の方法等について確認する。

1.2.3 GISサンプリング調査事項

先に述べた通り、日本ではGISの開発・導入から40年以上が経過している。安定供 給に向けた信頼性とコスト低減が求められている中、高経年化に伴う機器の寿命推定、

更新時期見極めのために、GISの劣化調査が各社で実施されている。

ク国でも経年 30 年を超える GISが運転されている一方、適正なメンテナンスが実 施されているか定かでなく、今後の継続使用、長期使用に向けた保全、更新時期見極め が重要となる。そこで、今回、ク国の経年GISについて、劣化状態からの寿命推定、

長期使用に向けた保全計画の提案、今後のGIS延命化プロジェクトの可能性確認を目 的に、日本で実施され知見のあるGIS劣化調査を実施する。

選定した変電所の132kV GISについて、代表1回線を停止し、構成機器の状態確認 や部品の劣化調査を実施する。

構成機器の状態確認としては、GCBの動作状態確認や外観チェック、GCBの特性試 験(開閉極時間測定)、操作機構部の分解手入れを実施する。

劣化調査では、1.1.6項で述べた日本国内における劣化調査項目を実施する。具体的

には表1.2.3-1に示す項目を実施する。それぞれのイメージは図2.2-2を参照のこと。

表1.2.3-1 GISサンプリング回線における劣化調査項目

部位 調査対象 機能・目的 調査方法

操作機構 Oリング、ゴムパッキン シール性能

外観チェック

圧縮永久ひずみ率測定 硬度測定

グリース 潤滑性能 油分率測定 電装品 補助リレー、スイッチ類 機器動作 接触抵抗測定 その他 全般 各種機能 外観チェック

(31)

24 1.3 調査スケジュール

図1.3-1 調査実施スケジュール

1.4 実施体制

表1.4-1 調査体制と役割

実施主体 役割分担

中部電力 1) クウェート国電力事情調査 2) 本邦GISメーカの活動状況調査 3) 変電所保全実態調査計画

4) GISサンプリング劣化調査対象、項目の選定 5) 変電所保全実態調査

6) GISサンプリング劣化調査

7) 現地調査結果の分析・評価、保全計画の作成 8) 各調査段階におけるMEWとの協議

9) 現地報告会の実施 10) 報告書の作成 日立製作所

(外注先)

1) 現地報告会の実施

2) 業務調整-現地事務所を活用したロジ・アドミ業務(現地アポイントメント 取得、ホテル・車の手配等)

3) GIS専門調査員派遣

4) 変電所GIS調査の実施および準備(調査対象、項目の選定含む)

5) クウェート国での活動状況のまとめ

6) クウェート国納入済のGISトラブル履歴と対策状況のまとめ 7) 将来プロジェクト費用積算、環境社会影響評価(CO2削減等)

8) 報告書作成補助

図1.4-1 調査体制図 中部電力株式会社

株式会社日立製作所

(32)

25 2. GIS変電所の保全・更新に関する基本情報

2.1 日本におけるGISの保全・更新状況 2.1.1 GISの最適な更新計画

日本の電力系統は容易に停電を取れない状況にある。一方で、年を追うごとに設備更 新が必要となるGISの数が増えていく傾向にある。日本の電力会社のGISを経年によ り一律で更新していく場合の将来の更新台数の一例を図2.1.1-1(a)に示す。この例では、

2020年には経年30年以上の機器が全体の42%を占める見込みである。

電力の安定供給と信頼性の確保、資金・要員を考慮した年度計画を展開するには、経 年を基準にした設備保守、更新ではなく、設備の劣化状況を加味したGISの長期使用

(延命化)による更新作業の平準化が必要となってくる。図2.1.1-1(b)では、設備を取 り巻く状況を考慮し、リスクマネジメントにより更新時期を見直し、将来のGIS更新 台数を平準化したものである。日本の電力会社は、設備の劣化状況の把握や系統への影 響度、部品供給・技術員確保の状況、経済性を考慮して、更新計画を策定している傾向 にある。

(a) (b)

図2.1.1-1 変電所GISの経年による一律更新計画台数(a)と

リスクマネジメントによる平準化後の更新計画台数分布(b)

(出典:CIGRE SC B3 (2014), No. 213)

図 2.1.1-2 は、既設 GIS における事故に関する過去の調査結果である。円グラフよ

り、自然劣化が72%と最も多いことが分かる。自然劣化による事故の内訳を図2.1.1-3 に示す。全体では動作不良が最も多く、次いでガス漏れ、接触不良の順となっている。

機器本体(タンク)では、ガス漏れが最も多く、操作装置では漏気、制御回路・電装品 では、動作不良、接触不良が多くなっている。

(33)

26

既述の調査結果から、日本国内において劣化調査・寿命評価を実施する際には、本体 ではガス漏れの原因となるO リングの劣化やフランジの発錆状況の調査、通電部では GCB等の摺動接触部の銀めっき残存厚やグリース劣化の確認、操作機構や制御回路・

電装品では、動作不良の原因となるグリースの劣化、電装品の動作不良、接触不良、腐 食等による劣化を確認することが主流となっている。

図2.1.1-2 原因別GIS障害件数

(出典:電協研70巻2号より中部電力作成)

図2.1.1-3 自然劣化の様相別事故件数

(出典:電協研70巻2号より中部電力作成)

Malfunction Gas Leakage Poor Contacting Air Leakage Partial Failure /Destruction Characteristics Abnormality Rusting Oil Leakage The Others /Unknown

Control Circuit

/Electrical Component 124 0 42 0 0 16 0 0 41

Driving Mechanism 63 0 0 39 19 6 0 2 43

Main Tank 0 44 0 0 11 0 10 0 34

0 50 100 150 200

Number of Failures

図 1.1.1.1-1 より、人口、電力消費量のどちらも右肩上がりとなっていることがわか る。ク国は人口の約 7 割[1]が外国人居住者であり、労働市場は外国人労働者に依存し ている。こうした労働者の流入もあり、人口は過去 10 年間で 37%増加した。このこと は、電力・水の供給、交通網の整備、住宅開発など、インフラ投資の大きな要因にもな っている。2014 年の 1 人当たりの電力消費量は 15,533kWh であり、GCC 諸国で 3 位、世界では 6 位であった[2]。ピーク時の電力需要は年平均で
図 1.1.5-1  変電所における機器の寿命
表 1.1.5-1 では、TBM が GIS のメンテナンス方針の中心となっている。CIGRE で
図 3.1.2-2  電源構成(発電容量)
+7

参照

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