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属植物病原菌は,有性世代が見いだされて

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(1)

15

は じ め に

Alternaria

属植物病原菌は,有性世代が見いだされて

いない

Mitosporic fungi

グループ(かつては不完全菌類

(Deuteromycetes, Fungi imperfecti)と呼ばれた)に分 類され,多種の野菜・果樹類に病気を引き起こす。なか でも,強病原性を示す

A. alternata

菌群は,宿主植物の みに対して毒性を示す二次代謝産物である宿主特異的毒 素(host specifi c toxin(以下,HST とする))を生産す ることが報告されている。本菌群では,現在までに少な くとも七つの植物種に病原性を示す変種の存在が認めら れており,これらの変種は,それぞれの宿主植物名を冠 した病原型と呼称されている。後述するが,本菌群にお ける分類については,形態学的な見地から複数の種に分 類することも提案されている。本稿では,病原性と形態 学的分類との関連性が希薄であることから,それぞれの

変種を

A. alternata

の病原型として扱う。七つの病原型

は,それぞれニホンナシ,イチゴ,リンゴ,タンジェリ ン,ラフレモン,タバコおよびトマトの特定の品種に対 して非常に強い病原性を示す。一方,宿主以外の品種に は病気を引き起こすことができない。この高い寄生性を 決定しているのが

HST

であり,これまでにタバコを除 く

6

病原型において,

HST

の化学構造が決定されている。

その構造は,ポリケチド,環状ペプチドおよびデカトリ エン酸誘導体等多岐にわたる(T

SUGE et al., 2012)。

同属同種である

A. alternata

が,異なる

HST

生産能を 持ち,病原性を変化させる分子機構は一体何か?その機 構と分類および進化との関係はどのようなものなのか?

本稿では,Alternaria 属菌の中でも

HST

生合成機構・

病原性発現機構の分子レベルにおける解析が進んでいる

A.alternata

病原型を題材として,本菌群がどのように

病原性を獲得し,寄生性を分化・進化させていったのか を議論したい。

I

における系統解析

1 形態学的特徴

A. alternata

の分生子は茶褐色,丸みを帯びた棍棒状

の形態をしており,培地上では時間の経過とともに丸く 隔壁の少ないものから,棍棒状の隔壁の多いものへと変 化する。縦の隔壁がない分生子も多いが,成熟した分生 子では二つ以上の縦の隔壁が認められるものもある。多 くの菌と同様に富栄養培地上で長く継代すると分生子生 産能が低下する傾向があるが,分離直後の

A. alternata

は一般に高い分生子生産能をもつ。分生子のつき方には 大きく分けて

2

種類あり,鎖状に連なるものと枝分かれ 状に分生子がついていくものがある(口絵①)。このよ うな形態的相違に基づき,本菌群は細かく分類されるこ ともあるが(S

IMMONS, 2007),口絵①のように胞子形態

および分生子のつき方,すなわち形態学的差異と病原性 には関連性がない。これは例として示したトマト病原型 以外の病原型でも同様である。そのため,本菌群におい ては, 形態を基準に病原菌名を同定することは困難である。

2 分子生物学的解析

近年,菌類の分類では,形態的な特徴のみではなく分 子系統学的データを加味した解析が主流となり,新種の 同定には両分類基準の比較検討が必要になっている。分 子系統解析に基づく分類では,多くの場合,生物種で高 度に保存されたゲノム領域をシークエンスし,塩基の違 い を 比 較 す る 方 法,あ る い は

AFLP,RAPD

お よ び

RFLP

のようなゲノム全体をランダムに調べる手法が採 られている。前者のシークエンス解析は,生物種間で共 通した領域(数百塩基〜千塩基程度)を利用する必要が あることから,その対象領域は制限される。そのため,

同じ領域におけるデータが蓄積しやすく,他菌種とデー タを比較することが可能である。また,非常に汎用性の ある方法であるため,どのような菌種でも容易に比較解 析することが可能である。一方,保存された領域を使う ことから,近縁種では塩基の違いがあまり見られないこ ともあり,使用する領域によっては十分な比較が難しい ケースもある。その場合,ミトコンドリア

DNA

なども 含む複数領域を合わせて解析対象とする必要がある。

AFLP

など後者の手法は,前者とは異なり,ゲノム上の 一部の領域ではなく,ランダムに全ゲノム上の領域の違 いを見いだす手法であるため,良いプロトコルが構築さ れさえすれば,系統間の差異を容易に検出可能である。

他方,異なる菌間の系統解析にそのプロトコルを転用す ることが前者ほど容易ではなく,また,プロトコルを構

Alternaria 属菌の病原性進化

赤木 靖典・柘植 尚志・児玉 基一朗

鳥取大学農学部・名古屋大学大学院生命農学研究科

Evolution of Pathogenicity in the Alternaria Plant Pathogens.  

By Yasunori AKAGI, Takashi TSUGE and Motoichiro KODAMA

(キーワード:宿主特異的毒素,病原性染色体,水平移動)

(2)

16

築すること事体が困難な場合がある。このように両者と も長所,短所があるが,最近では,簡便なシークエンス 解析による系統解析がよく利用されている。

A. alternata

における分子分類は,これまでにシーク

エンスおよび

RFLP

解析などで行われきたが,病原性と リンクするという結果は得られていない。最近,本菌群 のトマト病原型

2

菌株と非病原性系統

1

菌株において,

ドラフトゲノム解析を行ったところ,系統分類によく利 用 さ れ る

ITS

領 域 や 交 配 型 遺 伝 子 の 周 辺 な ど 合 計

100,000

塩基を超える領域において,トマト病原型間で

の相同性よりも,非病原性菌とトマト病原型の一方の菌 株との相同性のほうが高かった。このように本菌群で は,系統解析で利用される領域を広範囲で比較しても病 原性との関連性は認められなかった。

さらに,トマト病原型菌における複数の病原性関連候 補遺伝子の機能解析の結果から,胞子形態にかかわる遺 伝子がいくつか見いだされた。これら遺伝子の変異体 は,野性株に比べ胞子が小型であり(口絵②)

,形態的

には野性株と異なると判断される。一方,変異体では標 的遺伝子以外の領域が親株と同一であり,また胞子形態 に関与する遺伝子は系統解析によく利用される遺伝子と は異なるため,現在行われているようなシークエンス解 析では,同一菌とみなされる。このような単一あるいは 少数遺伝子における変異が,分類基準となる形態に大き な影響をおよぼす場合,形態分類と分子分類の間に齟齬 をきたす可能性も考えられる。

II HST

生合成遺伝子の同定および

      機能解析の現状

A.alternata

における病原性および寄生性は,前述し

たように

HST

生産能に依拠している。そのため,各病 原型で

HST

生合成遺伝子の同定が進められ,これまで にタバコ病原型を除く

6

病原型において

HST

生合成に 必須である遺伝子が見いだされている。同定された各病 原型の

HST

生合成遺伝子は,他の病原型には存在しな

い固有のものが多く見つかっており,HST の一部に共 通構造をもつイチゴ,ナシおよびタンジェリン病原型間 においても,共通部分に関連すると考えられる遺伝子以 外にユニークな

HST

生合成遺伝子が見いだされている

(表―1)。これらのことから,

A. alternata病原型を分類・

同定するためには,HST 生合成遺伝子の有無を第一に 検討することが,植物防疫上最も効果的である。これま でに得られた圃場分離株の解析結果から,各病原型にお ける

HST

生合成遺伝子保有の有無と病原性はほぼ一致 しており,簡便な遺伝子増幅法(PCR 法)により,病 原菌の同定を高い確度で果たすことが可能であった

(J

OHNSON et al., 2000)。

III

 小型染色体に座乗している        

HST

生合成遺伝子

A. alternata

の染色体は,これまでにパルスフィール

ドゲル電気泳動法(PFGE)により解析され,染色体サ イズおよび染色体数が見積もられている。この解析から 本菌群の総ゲノムサイズは,他の糸状菌と同程度の約

30 Mb

であり,染色体数は

10

本程度であることが明ら かとなった(A

KAMATSU et al., 1999)。さらに,各病原型

および非病原性系統における染色体サイズ,座乗遺伝子 などの解析を通じて,A. alternata 菌群における染色体 構成が,比較的類似していることが示唆された。

染色体解析から得られた最も興味深い点は,A. alter-

nata

の各病原型菌は,非病原性

A. alternata

が保持して いない

2 Mb

以下の小型染色体を保持していたことであ り,

HST

生合成遺伝子の同定が進むにつれ,各病原型 の

HST

生合成遺伝子が,これら小型染色体に座乗する ことも明らかとなった。リンゴ,イチゴおよびトマト病 原型では,これら小型染色体が他の

A. alternata

が共通 して保有する

2 Mb

以上の染色体と相同性がほとんどな い非常にユニークな染色体であることが示されている。

さらに,前述

3

病原型の小型染色体の脱落実験により得 られた

“染色体欠損変異体”

は,それぞれの

HST

生産能

表−1 A. alternataにおける宿主特異的毒素(HST)およびHST生合成遺伝子 病原型 宿主特異的毒素 HST生合成遺伝子 引用文献 ニホンナシ

イチゴ リンゴ トマト ラフレモン タンジェリン タバコ

AK毒素

AF毒素

AM毒素

AAL毒素 ACR毒素 ACT毒素 AT毒素(未同定)

AKT遺伝子群 AFT遺伝子群 AMT遺伝子群 ALT遺伝子群 ACRT遺伝子群 ACTT遺伝子群 未同定

TANAKA et al.(1999 ; 2000)

HATTA et al.(2002)ITO et al.(2004)RUSWANDI et al.(2005)

JOHNSON et al.(2000),HARIMOTO et al.(2007 ; 2008)

AKAMATSU et al.(2003),AKAGI et al.(2009 a)

IZUMI et al.(2012)

MASUNAKA et al.(2000 ; 2005),MIYAMOTO et al.(2008 ; 2009)

(3)

17

および宿主に対する病原性を失ったが,培地上での生 育,胞子発芽等は野性株と同等であった。このような,

菌の生存には必須ではないが,植物病原性など特定の場 における重要形質の発現を支配する付加的染色体は,

conditionally dispensable chromosome(CDC)と呼称さ

れている(C

OVER T, 1998)。結果的にこれらHST

生産菌 の病原性は,CDC 保有の有無によって決定されるため,

常染色体に座乗する

rDNA ITS

領域のシークエンス解析 などに基づく菌の系統分類の結果を反映しない。すなわ ち,形態分類および分子系統解析から導かれる菌の系統 に,実際の病原性は沿っていないのである。

IV 

トマト病原型における      病原性獲得機構

トマト病原型菌(トマトアルターナリア茎枯病菌,A.

alternata tomato pathotype)は,HST

と し て

AAL

毒 素 を生産し,ファースト系トマトなど特定のトマト品種に 著しい病徴を示す。本毒素はポリケチド構造を有してお り,Fusarium 属菌が生産するマイコトキシン,フモニ シンと化学構造が極めて類似している(図―1)。AAL 毒 素生合成遺伝子(ALT)クラスターは茎枯病菌のみに存 在 し,ポ リ ケ チ ド 合 成 酵 素(PKS)遺 伝 子(ALT1)

ABC

トランスポーター,LAG 蛋白質,P450 等をコード する少なくとも

13

遺伝子群から構成されている。糸状 菌の二次代謝産物生合成には複数の遺伝子がかかわる が,一般的にこれらの遺伝子はゲノム上で物理的に近接 して存在することが知られており,遺伝子クラスターと よばれる。遺伝子ターゲッティングの結果より,クラス ター上のいくつかの遺伝子は,毒素生合成と同時に病原 性発現に直接関与することが確認され,本菌において,

“毒素生合成遺伝子=病原性遺伝子”

であることが証明 された。

ALT

クラスターはトマト病原型菌が保有する小型染 色体,すなわち

CDC

に座乗しており,また,興味深い ことに世界各地で分離された本病原菌株の

CDC

はすべ て同サイズ(1 Mb,総ゲノムサイズの約

30

分の

1)で

あることが示された。他の

A. alternata

病原型における

CDC

のサイズは菌株間で異なることがあるが,トマト 病原型の

CDC

サイズは同一であった。なぜ,トマト病 原型における

CDC

のサイズは同一なのか?この疑問に 対する仮説として,①使用した菌株は世界各地で分離さ れたものであるが,由来を一にする同一菌株であった,

②特定の

CDC

が水平移動することで

A. alternata

集団 中に拡散した,という二つが考えられた。仮に①が事実

フモニシン

AAL毒素 R3

H H H COCH3

COCH3

R2 OH H H H H R1 OH OH H OH H TA TB TC TD TE

NHR3

O O

O O

O

OH

O O

OH

OH OH

O O

OH

O OH CH3

O CH3

OH

CH3

O CH3

R2

R2 R1

NH2

OH

R1 OH

R2 OH H OH H R1 OH OH H H FB 1 2 3 4

16 17 14 15 12 13 10 11 8 9

6 7 4 5 2 3 1

19 20 17 18 15 16 13 14 11 12 9 10 7 8

5 6 3 4 1 2

図−1 AAL毒素およびフモニシンの化学構造

(4)

18

であれば,CDC 上と他の常染色体(essential chromo-

some(以下,EC

とする))上に座乗する遺伝子の系統

は一致し,さらに,トマト病原型菌株は分子系統解析に おいて他の

A. alternata

病原型と明確に区別されるはず である。一方,CDC が異なる遺伝的バックグラウンド

を有する

A. alternata

菌株間で水平移動しているならば,

CDC

上の遺伝子は菌株間で極めて類似または同一であ るが,

EC

上の遺伝子では多型が検出されることが予期 できる。この場合,CDC と

EC

の由来が異なるという 結果を示すはずである。

CDC

に座乗している

2

遺伝子と

EC

に座乗している

8

遺伝子の部分領域をそれぞれシークエンス解析し,世界 各地で分離した

5

菌株を使って配列間に差異があるかど うか検討した。その結果,CDC 上の

2

遺伝子は,イン トロン領域も含め菌株間で完全に一致していた。一方,

EC

上の

8

遺伝子は,高度に保存されている

ITS

領域を 除き, 菌株間で多型が認められた。さらに, ニホンナシ,

リンゴ等他の

A. alternata

病原型菌株においても,

EC

上の

8

遺伝子について系統解析を行った。その結果,ト マト病原型菌株間における配列の差異は,他の病原型と トマト病原型間を比較した場合と同等であった。特に,

リンゴ病原型菌

M―71

株は,他のトマト病原型菌株より も分子系統学的にトマト病原型菌

As

27

株に極めて近 い菌株であることが明らかとなった。ゲノム全体を比較 する

RFLP

解析,あるいはテロメアフィンガープリンテ ィング解析等によっても,これらトマト病原型菌株間で 多型が認められ,検定した菌株の由来,遺伝的バックグ ラウンドが異なることが示唆された。このように,

EC

は菌株間で多様性を示すが,

CDC

はすべての菌株で同 一であると考えられ,CDC の由来が他のゲノム領域と 異なることが明確に示された。つまり,CDC は

EC

と は独立して,水平移動を通して

A. alternata

集団中に伝 播した可能性が考えられた。

仮に,A. alternata 間で

CDC

の水平移動がおこってい るのであれば,異なった遺伝的バックグラウンドを持つ

A. alternata

菌株において,茎枯病菌の

CDC

が安定して

移行,維持されるはずである。そこで,人工的にトマト 病原型と他の病原型菌株間におけるハイブリッド株を作 出し,トマト病原型の

CDC

が他の病原型のゲノム上で 安定して維持されるのかどうかを検討した。トマト病原 型とイチゴ病原型のプロトプラストを融合した結果,複 数のハイブリッド株が得られ,トマト病原型の

CDC

と イチゴ病原型の

CDC

の両方を保持する株や,片方のみ をもつ株等が得られた。これらハイブリッド株の病原性 は,それぞれの由来の

CDC

の保持と一致した。また,

トマト病原型の

CDC

を保持したハイブリッド株の場合,

安定して

CDC

が維持されることが確認された。このよ うに, トマト病原型

CDC

はA. alternata 菌株間で移行し,

異なる遺伝的バックグラウンドを有する菌株ゲノムにお いて安定して保持されることが示された。

さらにハイブリッド株における染色体構成を解明する ため,発芽管破裂法と

DAPI

染色を用いて,染色体を蛍 光顕微鏡下で直接観察した。ハイブリッド株の染色体数 は親株とほぼ同様の

11

12

本であったことから,細胞 融合後に,核融合,核分裂および体細胞分裂を経て,一 時的に

2 n

となった後に

EC

の脱落を通して,最終的に は

n

の状態で安定化すると考えられた。EC 座乗遺伝子 のシークエンス解析により,ハイブリッド株の

EC

がど ち ら の 親 株 由 来 な の か を 検 討 し た 結 果(A

KAGI et al.,

2009 b),ハイブリッド株はランダムに両親株の染色体

を受け継いでいた。また,ハイブリッド株の中には,ほ ぼイチゴ病原型のバックグラウンドを持ちながら,トマ ト病原型

CDC

を保持する株も見いだされた。すなわち 本株においては,イチゴ菌染色体に対してトマト菌

CDC

が添加された染色体構成を有する。本株は,イチ ゴ お よ び ト マ ト 病 原 型 の

HST

で あ る

AF

毒 素 お よ び

AAL

毒素を同時に生産し,両宿主植物に病気を引き起 こす自然界には存在しないハイブリッド型病原体である

(図―

2

)。

これら一連の研究結果を踏まえ,HST を生産する

A.

alternata

病原菌における病原性の進化と多様性形成過

程に,HST 生合成遺伝子クラスター,さらには

CDC

の 水平移動(伝播)が関与しているとの作業仮説(染色体 水平移動説)を提唱した(

AKAGI et al., 2009 a

)。

CDC

HST

生産菌における

“病原性染色体”

と呼ぶにふさわし いと考えられる。さらに最近,Fusarium 属菌において,

病原性にかかわる染色体が水平移動することにより,そ れまで病原性のなかった菌株が病原性を獲得する可能性 が,ゲノム解析に基づき報告された(

MA et al., 2010

)。

毒素生産遺伝子だけではなく,広く病原性関連遺伝子の 水平移動が,植物病原菌の進化と分化に寄与している可 能性もあると思われる。

それでは,このような自然界における菌株間での遺伝

子交換の機会,場はどこにあるのだろうか?

A. alterna- ta

の場合,圃場における自然感染病斑から菌の分離を

行うと,本来の病原菌に加え,圃場において多数存在す

る非病原性(腐生性)A. alternata 菌株が高頻度で分離

される。この病斑中では,高密度で病原菌と非病原菌が

存在し,両者のコンタクトの機会があることは想像に難

くない。したがって,重複感染病斑は,異なった菌株間

(5)

19

における遺伝子交換の場となり,病原性染色体(

CDC

) の水平移動を通した

A. alternata

集団中への拡散に寄与 している可能性も考えられる。

お わ り に

Alternaria

属菌における病原性進化の分子機構に関し

て,HST 生産

A. alternata

を題材として,毒素生合成遺 伝子が座乗する病原性染色体の水平移動という新規仮説 を中心に紹介した。現在,イチゴ,リンゴ,トマトおよ びタンジェリン等各病原型菌が保有する

CDC

の全塩基 配列がほぼ決定されており,

CDC

の比較解析が進化の 観点から議論されている。トマト病原型菌の

CDC

に関 しては,水平移動により

A. alternata

集団中に拡散した 可能性が示されているが,このような特別な構造・機能

を有する

CDC,あるいはHST

生合成遺伝子クラスター

が,菌ゲノム上でいかに形成,維持されてきたのかはい まだ不明である。今後,比較ゲノミクス,系統ゲノミク ス研究の進展とともに,病原性の獲得および進化,また 寄生性の分化における分子機構が解明され,新たな病害 防除戦略や病原菌発生の予測技術の確立へとつながるこ とを期待したい。

引 用 文 献

1 AKAGI, Y. et al.2009 a: Eukaryot. Cell 8 : 17321738.

2) et al.(2009 b): J. Gen. Plant Pathol. 75 : 101109.

3) AKAMATSU, H. et al.(1999): Curr. Genet. 35 : 647656.

4) (2003): Fungal Genet. Newsl. 50 : 355.

5 COVER T, S. F.1998: Curr. Genet. 33 : 311319.

6) HARIMOTO, Y. et al.(2007): Mol. Plant-Microbe Interact. 12 : 14631476.

7) et al.(2008): J. Gen. Plant Pathol. 74 : 222229.

8 HATTA, R. et al.2002: Genetics 161 : 5970.

9 ITO, K. et al.2004: Mol. Microbiol. 52 : 399411.

10) IZUMI, Y. et al.(2012): Mol. Plant-Microbe Interact. 25 : 14191429.

11) JOHNSON, R. D. et al.(2000): Phytopathology 90 : 973976.

12 MA, Li-J. et al.2010: Nature 464 : 367373.

13) MASUNAKA, A. et al.(2000): Phytopathology. 90 : 762768.

14) et al.(2005): ibid. 95 : 241247.

15) MIYAMOTO, Y. et al.(2008): Mol. Plant-Microbe Interact. 21 : 15911599.

16) et al.(2009): Phytopathology 99 : 369377.

17) RUSWANDI, S. et al.(2005): J. Gen. Plant Pathol. 71 : 107116.

18) SIMMONS, E. G.(2007): ALTERNARIA An Identification Manual, CBS Fungal Biodiversity Centre, Utrecht, the Netherlands, p.

1775.

19) TANAKA, A. and T. TSUGE(2000): Mol. Plant-Microbe Interact. 

13 : 975986.

20et al.1999: ibid. 12 : 691702.

21) TSUGE, T. et al.(2012): FEMS Microbiol. Rev. 37 : 4466.

ハイブリッド株

トマト菌 イチゴ菌

図−2 ハイブリッド株の染色体構成と病原性 上段:ハイブリッド株における染色体の模式図.

中段: トマト葉におけるトマト菌,イチゴ菌および ハイブリッド株の病原性.

下段: イチゴ葉におけるトマト菌,イチゴ菌および ハイブリッド株の病原性.

参照

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