191 191 ぶんせき
強みを活かす
火 原 彰 秀
最近,国際誌などに発表される先端研究や融合研究の進展などから,分析化学分 野の益々の発展を確信するに至っております。私たちの学会も,この発展の一翼を 担っているわけですが,しばしば学会活性化と言う議論がおこっております。運営 面での課題の議論が多いようですが,適切な議論がなされ一定の方向性が示されつ つあると感じています。一方で,学術的発展を取り込み,分野の団結を促す戦略・
施策といった面では,議論の余地が残されているように感じています。
学会の方向性を議論するとき,話が学術的施策の話に近づいてくると,「研究の ことは個別に方向性を見いだせばよい」,「新しい取り組みには追加の労力が必要で あり,効率運営の観点から好ましくない」という意見が出てくる可能性が高いよう に思います。これらの「良識」は説得力のある見識であり,一つの大事な観点だろ うと考えます。
「良識」は一旦脇に置き,別の起点から考えた学会活性化策も,一考の価値があ るかもしれません。学会活性化の一つの中心は,年会・討論会活性化であることに 大きな異論はないと思います。年会・討論会に「参加する/しない」を各人が判断 するミクロな視点から考えると,「参加したくなる,参加しなければならないと期 待を感じるプログラム」,「参加して楽しかった,ためになったとbenefitを感じる プログラム」,つまり「学術的benefitを,期待し,実際に持ち帰れるサービス提 供」が大事な視点であると考えます。一般投稿を待ち受けるスタイルに,能動的な アクションを加えてサービス向上ができないかという論考になるかと思います。
セッションと並行して実施されるシンポジウムは,重要なサービスの一つですが,
普段参加しているセッションで議論・理解を深めたいという「学術的benefit」に 対する要望も自然に存在すると考えます。
2012年に行われた学会活性化の議論に参加した際,研究を実質的に先導する立 場にある研究者(PI)が講演する「PI講演」を各セッションに入れる案を提案い たしました。私たちの分野には,キラリと光る研究を進めている研究者が多数い らっしゃいますので,その強みを付加的な「サービス」につなげようという提案で す。その後,数回の年会でご賛同が得られ,実現して頂きました。PI講演が配置 されたセッションでは,講演者の方が最先端で何をどのように考えているのかを知 る機会が増え,本当に楽しかったのを記憶しています。私たちの多くは,「自分の 研究」を最も強力なコミュニケーションツールとしています。PI講演の時間にな ると自然に聴講者が増え,気のせいかもしれませんが,分野としての団結力の高ま りを感じることもできました。
PI講演は,ここ数年行われていないようです。「良識」派にもご賛同頂けるやり 方でなかった面があるのだと感じています。しかし,われわれが最も得意とする
「自分の研究を話す」ということを集積して,学会全体の力・強みにしていくとい う方向性自体はあり得るものと今も考えています。
〔Akihide HIBARA,東北大学多元物質科学研究所,日本分析化学会東北支部役員〕