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農業と国際貿易交渉を考える

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(1)

ISSN  1342−5749

2012

農業と国際貿易交渉を考える

DECEMBER

12

●日中韓FTAと農業

●貿易自由化と日本農業の重要品目

●国際貿易交渉

(2)

今どきの若者の生活意識・社会意識

内閣府の2012年度「国民生活に関する世論調査」によると,20歳代の75%が現在の生活 に満足していて他のどの世代よりも高い割合となっている。近年,就職難で若年層の非正 規雇用比率が上昇している経済環境下で意外感のある調査結果である。今どきの若者のラ イフスタイルを考えてみると,シェアハウスに住み,服はファストファッション,昼はコ ンビニ弁当,夜は集まって鍋,寝るまではインターネットでYouTubeをみるかSkypeで 友達とおしゃべりという感じで,お金は無くてもそれなりに楽しい日常生活を送っている ということであろうか。バブル期を経験した中高年からすると車もブランド品も無くてそ れで満足なのという感じだが,20歳代が育ってきたいわゆる「失われた20年」の間にも,

企業のビジネスモデルの変革や情報通信技術の革新で安価で良質なモノ・サービスが提供 されるようになり,デフレ経済で所得環境が厳しいなかでもこうしたモノ・サービスを利 用し,エコでシンプルでシェア志向のライフスタイルが醸成されてきたものと思われる。

ただし,同じ世論調査で20歳代の62%が悩みや不安を感じ,特に将来の収入・資産に対す る不安が強いという結果も出ており,将来不安があるからこそ今の幸せを大事にするとい うことで現在の生活満足度が高くなっている可能性もある。

一方で内閣府の11年度「社会意識に関する世論調査」によると,20歳代の70%が社会へ の貢献意識を持っており02年度調査の45%から大きく増加している。また社会志向か個人 志向かの設問でも社会志向の割合が02年度36%から11年度50%と大きく増加している。こ れは将来不安を社会への貢献で払拭したいという気持ちが出ているものと思われる。東日 本大震災に際し,被災地でのボランティア活動に駆け付けた多くの若者の姿がその社会貢 献意識の高さを表したものといえよう。大都市部においても,高齢化の進む東京高島平団 地で地元の大学を中心に若者と団地自治会が連携し,高齢化・空洞化する団地のコミュニ ティ再生に取り組むなどの活動事例もみられる。

また,内閣府が05年に実施した「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」によ ると,都市部在住の20歳代は農山漁村への定住願望を持つものが30%と他の世代より高い 地方志向を持っており,世界を均質化させるグローバル化が進展する時代だからこそ地方 的なものが志向されるのであろう。実際に島根県隠岐郡海

(人口約2,400人)では,町 の定住促進政策により04年度から

8

年間で若者中心に I ターンの移住者が327人にも上って いるという。

地域活性化には,一般的に「よそ者,若者,ばか者」が必要であるといわれるが,上記 のとおりエコでシンプルでシェア志向・地方志向のライフスタイルを持ち社会貢献意識の 高い今どきの若者のなかには,地域活性化の活動に興味を示す者も多数存在すると思われ る。地域活性化の活動で若者の取り込みに悩んできた組織・団体も,今後はFacebook等 のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を有効活用することなどで全国から有 能で熱意を持った若者を集め,新たな視点での活動が期待できる時代が到来しているとい えよう。

((株)農林中金総合研究所 調査第二部長 堀内芳彦・ほりうち よしひこ

農林中金総合研究所  http://www.nochuri.co.jp/

(3)

農 林 金 融 第 65 巻 第 12 号〈通巻802号〉 目  次

東京に作る農業経営大学校 貿易自由化と日本農業の重要品目

清水徹朗・藤野信之・平澤明彦・一瀬裕一郎 ── 

20

アジアの経済連携にどう位置づけるか 今月のテーマ

農業と国際貿易交渉を考える

今月の窓

(株)農林中金総合研究所 調査第二部長 堀内芳彦 今どきの若者の生活意識・社会意識

石田信隆 ── 

2

日中韓FTAと農業

統計資料 ──

70

<第65巻総目次>巻末添付

1927年の輸出入禁止制限撤廃条約交渉とその今日的意義

早稲田大学 日米研究機構 客員上級研究員 林 正德 ── 

46

国際貿易交渉

U・I ターンで活性化する海士町

石田信隆・寺林暁良 ── 

61

情 本 

矢口芳生 著

『農業貿易摩擦論』

19

平澤明彦 ──

日本農業経営大学校 校長 岸 康彦 ──

44

談 話 室

(4)

農林金融2012・12

2

 - 796

〔要   旨〕

1

 尖閣諸島・竹島問題で日中・日韓間に軋轢が高まっている。また日本国内ではTPP交渉 への参加をめぐって激しい綱引きが行われている。一方日中韓FTAは2012年

5

月の首脳会 談で交渉開始が合意され,事務レベル協議を終了した。このFTAはウィン・ウィンの状況 をもたらすとされるが,日本と韓国の農業には深刻な影響を生じる懸念があり,共同研究 報告書は各国のセンシティブ品目に然るべく配慮することが重要であるとしている。

2

 アジア・太平洋地域では,ASEAN+

3

,ASEAN+

6

,RCEP,TPPなどさまざまな 連携構想が出されている。日本はアジアの中でアジアと共に成長する戦略をとることが重 要であり,アジアを分断するTPPには参加すべきでない。日本は戦後ヨーロッパの経験に 学び,日中韓三国を核としつつアジアの連携を進めるべきである。そのために,尖閣・竹 島問題を乗り越える対話と知恵を追求すべきである。

3

 日中韓三国の農業は,農地面積や生産規模の違い,生産コストの違い,食料自給率の違 いなど相違点もあるが,一方では,農業経営の規模が小さい,農業人口の高齢化,将来に おける食料安全保障問題,都市化に伴う諸問題など,共通する問題も少なくない。

4

 2000年代に入り,ASEAN+

3

の農産物貿易は,急激に拡大し,その姿をダイナミック に変えてきている。その背景には,中国の経済発展に伴う需要の増加,中国における輸出 農業の展開,この地域で形成されてきたFTAとりわけACFTA(アセアンー中国FTA)の影 響がある。

5

 日中韓FTAは,農業分野に関しては特定の部門・品目に致命的な打撃が及ばないよう慎 重に検討しつつ,共通する課題に取り組む協力を広く織り込むことが望ましい。そのこと を通して,尖閣・竹島問題を乗り越え,アジアの経済連携の核としての役割を果たすこと が期待される。

日中韓FTAと農業

─アジアの経済連携にどう位置づけるか─

理事研究員 石田信隆

農林中金総合研究所  http://www.nochuri.co.jp/

(5)

1

 アジアの経済連携と   日中韓FTA    

1

) 

2013

年初に交渉が開始される 日中韓FTA

日中韓FTAについては,2003年から2009 年まで,民間共同研究が実施された。この 研究に参加した機関は,日本の総合研究開 発機構

(NIRA)

,中国の国務院発展研究中心

(DRC)

,韓国の対外経済政策研究院

(KIEP)

であった(注1)

この共同研究の結果を受け,3か国首脳 は09年10月の日中韓サミットで,日中韓FTA 産官学共同研究の立ち上げについて一致し た。この共同研究は,11年12月の会合で完 了し,12年3月に共同研究報告書の全文が 公表された。

12年5月に開催された日中韓サミットで は,12年内の交渉開始について3か国首脳 が一致した。これを受けて,交渉開始に向 けた事務レベル協議が12年8月と9月に開 催され,終了している。

はじめに

尖閣諸島・竹島問題で日中・日韓の間で 高まった軋轢は,日本の経済・社会にもさ まざまな反応を呼び起こしている。日本企 業は中国とどう付き合えばよいのか,中国 以外の東南アジア諸国やインドに活路を開 くべきか,など,さまざまな声が聞こえて くる。

経済連携をめぐって,いま日本では,TPP 交渉への参加の是非をめぐって激しい綱引 きが行われているが,これに関連しても,

尖閣問題を契機に「米国とのつながりを経 済連携面でも重視すべきだ」というような 声も聞かれる。

こうした状況のなかで,交渉を立ち上げ ることが首脳間で合意されている日中韓 FTAについて,どう考えればよいのであろ うか。

本稿では農業を軸にしつつ,日中韓FTA のあり方について考察する。

目 次 はじめに

1 アジアの経済連携と日中韓FTA

(1)  2013年初に交渉が開始される日中韓FTA

2) 共同研究報告書の整理と提言

(3) 日本とアジアの経済連携

4) 尖閣・竹島問題と日本のFTA 2 日中韓三国農業の現況と課題

(1) 日中韓三国農業の概観

(2) 中国農業の現況と課題

3) 韓国農業の現況と課題 3 日中韓三国の農産物貿易

1) 日中韓三国の農産物関税

(2) 日中韓三国の農産物貿易概況

3) 中国の農産物貿易動態 4 日中韓FTAの課題

(6)

農林金融2012・12

4

 - 798

し,このような結論が具体化されていく過 程では,日本にとっては,①日中韓FTAを FTA戦略のなかにどう位置づけるかを明 確にして戦略的に対応すること,②具体論 のレベルで報告書が指摘する「農業生産へ の深刻な影響」をいかに回避するかについ て十分な検討と交渉を行うこと,が重要で あろう。

3

) 日本とアジアの経済連携

アジア・太平洋地域では,さまざまな経 済連携構想が推進されてきた

(第1図)

このなかで,アジアでの経済連携の中心 になってきたのが,ASEANである。ASEAN は1992年に先行加盟6か国によりAFTA(注2) CEPT(注3)協定への署名が行われ,93年から CEPT協定に基づく関税引下げが開始され た。その後残りの4か国が協定に加わり,

2010年にはAFTA―CEPT協定を引き継ぐ 基本協定としてATIGA

(AFTAの物品貿易 に関する協定)

が発効した。10年には目標ど おり先行6か国でセンシティブ品目を除く 99%以上の品目で関税を撤廃,新規加盟4 か国は2015年に関税を撤廃し,ASEAN経済 共同体の完成が目指されている。

アジア・太平洋地域では,ASEANを軸 としてFTAが拡大され,ASEANと日本,中 国,韓国,インド,オーストラリア,ニュ ージーランドとASEAN+1の形で協定が 締結されてきた。

さらに,より広域の経済連携についても,

ASEANを軸に議論が行われてきた。中国・

韓国によって提唱されたASEAN+3

(日中

そして,11月20日にプノンペンで開かれ

た3か国経済貿易大臣会合はFTAの交渉 入りを宣言,13年の初めから実務者レベル の交渉を開始することとなった。

(注1 日本は,09年にNIRAから日本貿易振興機構

(JETRO)に変更された。

2

) 共同研究報告書の整理と提言

「日中韓産官学共同研究報告書」は,三国 間FTAが3か国すべてにマクロ経済上の 利益をもたらし,ウィン・ウィンの状況を もたらすとして,交渉の開始を提言した。

報告書は,農業に関しては以下のとおり 整理している。

まず,日中韓FTAは,消費者がより安い 価格で幅広い農産品を入手できるようにな ること,輸出者にとって相手国市場へのア クセスが改善されるなど,3か国に潜在的 利益がもたらされるであろうとする。中国 は一次産品の,日本と韓国は付加価値の高 い加工品の輸出を増加させうるとしている。

しかし,三国間の農産物貿易には非対称 的な効果が生じ,日本と韓国において国内 農業生産への深刻な影響に関する懸念を生 む可能性があること,また,中国において も資源・国内需要・コスト高騰などの制約 要因があることを指摘している。

このため報告書は,各国のセンシティブ 品目に然るべく配慮すべきであること,ま た同時に,各国が持続可能で強靭な農業を 実現すること,自国の農業を再生すること が重要であるとした。

これらの考え方は,大枠においては,現 実に即した違和感のないものである。ただ

農林中金総合研究所  http://www.nochuri.co.jp/

(7)

ハゼ」戦略は,戦略とはいえない。

TPPについては,中国,韓国,インドネ シアなどアジアの主要国が参加せず,アジ アを分断し混乱を持ち込むものであること が第一の大きな問題である。TPPはAPEC 全体をFTA化するFTAAP構想につながる ものと位置づけられているが,多様な国・

地域の集合体であるAPECを近い将来FTA 化 す る こ と は 非 現 実 的 で あ る。 北 米 に NAFTAがあるように,アジアにはアジア の連携ができるのが自然であり,アジアの まとまりをしっかりと作っていくことが,こ の地域の発展につながる。

第二の問題は,TPPは米国のグローバル 企業がアジアで利益を獲得するための地盤 作りであることである。公共分野の営利企 業への開放と米国基準による紛争解決手続 の導入は,食料安全保障をはじめ医療・福

韓 )

, 日 本 が 提 唱 し たASEAN+ 6

( 日 中

韓+インド,オーストラリア,ニュージーラン ド)

などである。そしてそれらは最近にな り,東アジア諸国で参加国を限定せず進め ようとするRCEP

(Regional  Comprehensive  Economic Partnership:地域包括的経済連携)

へと収斂しつつある。そして一方では,東 アジアにおいて抜きんでた経済力を持つ日 本・中国・韓国のFTAも交渉開始目前とな っている。

一方では,06年に発効した環太平洋連携 協定

(通称P4協定)

への参加という形で10年 に交渉が開始されたTPPは,これらの連携 構想にも大きな影響を及ぼすこととなった(注4,5)

このようななかで,日本は,どのような 連携を進めるのか,戦略を改めて明確にし て取り組むことが課題になっている。なん でもFTAなら取り組むというような「ダボ

第1図 環太平洋地域のさまざまな経済連携構想

コロンビア

インドネシア タイ フィリピン

シンガポール ブルネイ ベトナム マレーシア ニュージーランド オーストラリア ラオス

ミャンマー カンボジア インド

太平洋同盟(AP)

ASEAN(AFTA)

TPP チリ ペルー

ロシア

香港 台湾

パプアニューギニア メキシコ

アメリカ カナダ

FTAAP(APEC)

NAFTA

日中韓FTA ASEAN+3(EAFTA)

ASEAN+6(CEPEA)・RCEP 日本   中国   韓国

資料 筆者作成

(注) TPPは,シンガポール,ブルネイ,ニュージーランド,チリで発足,その他は参加交渉国。

(8)

農林金融2012・12

6

 - 800

この地域の成長によって地域自体が消費市 場として成長し,域内の内需によってけん 引される成長パターンが強まっていくこと が予想される。欧州の債務危機による影響 は無視できないが,中長期的にみれば,こ の流れは変わることがなく,アジアは21世 紀の成長センターとしての役割を果たして いくであろう。

日本は,この地域から離れて成長するこ とは不可能である。TPP推進論者は,「アジ アの成長を取り込む」ためにTPPを進める べきだと主張する。中国が入らないTPPで アジアの成長を取り込めるのかという問題 もあるが,そもそも,他国に自国の果実を 取り込んでほしいと思う国などあるだろう か。そのようなスタンスではなく,日本は アジアの中で,アジアと共に成長する姿勢 を明確にし,そのための連携戦略を構築す べきである。

(注2 ASEAN自由貿易地域

(注3 共通効果特恵関税

(注4 TPPについては石田(2010)(2011a)(2011b)

(2012)を参照されたい。

(注5 P4協定はブルネイ,チリ,ニュージーラン ド,シンガポールが締結。TPP参加交渉は10 からこれら4か国に加え,米国,オーストラリ ア,ペルー,ベトナム,マレーシアで実施され,

12年秋よりカナダ,メキシコが交渉に参入した。

4

) 尖閣・竹島問題と日本のFTA このような日本の経済成長戦略を考える うえで,尖閣・竹島問題をどう考えたらよ いであろうか。

筆者は,日本は中国・韓国と向き合うこ の東アジアから出ていくことはできないし,

中国・韓国と経済面でも政治・文化・社会 祉・食品安全などの公共政策を大きく制約

し,米国型格差社会と同様の姿に日本の経 済・社会を変化させることが懸念される。

以上から,TPPに日本が加わることは絶対 に避けるべきである。

それでは,日本はどのような連携を志向 すべきであろうか。筆者は,日本にはアジ アの一員として,アジアとしっかりと結び つく以外の戦略はないと考える。

アジアにおいて経済連携構想が積極的に 進められていることの背景には,この地域 の経済が緊密に結びついていることがある。

第2図は貿易

(輸出+輸入)

の推移をみたも のであるが,東アジアの貿易額は世界全体 に占めるシェアを着実に高めており,また,域 内の貿易比率も5割近くまで上昇している。

現在は,「世界の工場」としての中国の域 外への輸出の伸びが著しく,それとつなが る域内の経済の緊密な発展によって,東ア ジアは成長してきた。そしてこれからは,

40 35 30 25 20 15 10 5 0

50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0

(兆円) (%)

第2図 東アジアの貿易

0001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 資料  日本貿易振興機構「世界貿易マトリクス」から作成

(注)  東アジアは,日本,中 国,韓 国,香 港,台 湾 および ASEAN(2007以前はタイ,マレーシア,インドネシア,フィリ ピン)

東アジア貿易の 世界シェア(右目盛)

東アジア域内 貿易比率(右目盛)

世界の貿易(輸出+輸入)額 東アジアの貿易額 東アジア域内貿易額

28.3 45.6 39.9

23.5

農林中金総合研究所  http://www.nochuri.co.jp/

(9)

小さな島があることによって日中・日韓 が反目することは,いかほどの損失を三国 およびその周辺に与えることであろうか。

それを乗り越える対話と知恵が追求されな ければならない。

2 日中韓三国農業の現況と課題

1

) 日中韓三国農業の概観

第一次産業のGDP比率をみると,日本・

韓国は1〜2%で先進国水準に下がってい

(第1表)

。中国も,急速な経済成長によ って低下し,約10%になっている。日本と 韓国は農村から都市への大量の人口移動を 経て,農村人口比率は低いが,中国では,

農村地域人口が約7億人と総人口の半数に のぼっている。

農家の経営規模は三国とも小規模で,と くに中国の1戸当たり耕地面積は日本の3 分の1以下である。

主要穀物および大豆の生産・消費等を比 較すると,日本および韓国では,米はミニ マム・アクセスによる輸入米を除けばほぼ の面でもよい関係を築くことでしか,より

よい未来を創りだすことはできないと考え る。そしてそのことは,中国・韓国にとっ ても同様である。

経済に限ってみても,GDP世界第2位と 第3位の中国と日本,そして急速な発展で 世界での存在感を示している韓国,これら 隣接する三国が緊密に協調するか抗争する かによっては,東アジアの将来は大きく変 わるであろう。これから世界で最も成長が 期待されるこの地域で,日中韓三国が,い ま生じている問題を乗り越えてより高い次 元の協調関係を創りだすことは,単にこれ ら三国だけではなく,アジア,世界の経済 に対する責務である。

すでに現代の歴史は,そのような人間の 意思をもって現実を変えた経験を持ってい る。第二次世界大戦以前のヨーロッパは,

ドイツとフランスの対立をはじめとして,

つねに緊張を含み,繰り返される戦争の度 に国境線が書きかえられる地域であった。

このような対立に終止符を打つという意思 のもとに,1952年に欧州石炭鉄鋼共同体が 発足し,半世紀近い歳月を経てEUの発足 に至ったのである。現在ヨーロッパは欧州 債務危機の渦中にあるが,それは現時点の 一局面であり,ヨーロッパの歩んだ道の歴 史的意義を損ねるものではない。

日本はアジアで最初に先進国となった国 として,また過去にこの地域に多大な苦難 を及ぼした国であるからこそ,積極的に協 調のアジアを生みだすことを基本的な戦略 とすべきである。

名目GDP(暦年)

農林水産業総生産額 同 GDP対比 人口

農村地域人口 同 割合 農家世帯

耕地面積1戸当たり耕作面積

億ドル 億ドル

千人 千人

千戸 千ha ha

単位 日本

49,844 5,337 1,33410.7,740 712,880 259,75053.4 121,716 0.47 50,420

7121.4 128,056 6,503 2,5285.1 4,609 1.82

8,325 1952.3 48,747 3,117 1,1956.4 1,737 1.45

中国 韓国

第1表 日中韓三国の農業概観(2009年)

資料 『日中韓FTA産官学共同研究報告書』(2011年12月16日)から 作成

 ただし,GDPおよび農林水産業総生産額は,農林水産省『ポ ケット農林水産統計』,耕地面積は日本:同,中国:『中国統計年 鑑(2008年値)』,韓国:『農林水産食品主要統計』

(10)

農林金融2012・12

8

 - 802

中国政府は1999年から退耕還林政策を開始 し,傾斜度が高いなど農地に適さない土地 等に造林を行い,林地に戻してきた。また,

都市における土地需要は,経済成長に伴い 極めて旺盛で,都市的用途への農地転用も 高い水準で続いている

(第3表)

また,農地とならんで水も,農業的利用 と都市的利用の間での競合が強まっており,

農業生産の制約要因となっている。

中国では食糧

(穀物および大豆)

の自給を 95%以上確保することが政策目標とされて 完全に自給しているが,その他の産品は輸

入依存度が極めて高いのが特徴である

(第 2表)

。中国は,これら産品の消費量の世界 シェアが20〜30%にのぼる大消費国であり,

大豆を除く3品目についても同様のシェア を有する大生産国である。しかし大豆は,

需要が急速に伸びている反面,国内生産は 農地の制約から限定的で,輸入が膨大な量 にのぼっている。

2

) 中国農業の現況と課題

中国では,増大する農産物への需要に対 比し農地は緩やかな減少が続いており,農 地賦存量の面からの制約が強まっている。

農地の増加は,開拓適地が少なく,近年 は小規模である。中国では過去に,傾斜度 が大きく農地に適さない土地まで開拓した 結果,土壌流失,河川下流域における土砂 堆積と河川氾濫,河川の断流

(地上水の消 失)

などの問題が深刻化した。これに対し

トウモロコシ

小麦

大豆

生産 輸出 輸入 国内消費

生産 輸出 輸入 国内消費

生産 輸出 輸入 国内消費

生産 輸出 輸入 国内消費

7,266 61018 7,824 04 16,636 16,019 910371 5,593 6,550 50 4,161 4,302

日本 数量

1.70.1 2.11.8 0.00.0 14.9 2.2 0.2 0.2 3.7 1.1 0.0 0.05.6 1.9

世界シェア 数量 世界シェア 数量 世界シェア

124,994 1,312 1,000 124,854 152,419 5,591 4,656 146,496 109,298 3,759 2,061 106,114 12,725 33,198533 45,299

中国

28.63.8 293.4.5 19.44.9 4.2 19.9 18.1 2.2 1.4 17.3 5.8 44.50.7 20.1

4,027 2553 4,149 10384 8,714 8,659 697 3,429 3,167 1142 1,186 1,299

韓国 世界計

0.90.0 0.91.0 0.00.1 7.8 1.2 0.0 0.0 2.3 0.5 0.1 0.01.6 0.6

437,509 34,368 29,151 423,471 787,440 113,464 111,645 735,947 604,465 167,091 149,826 612,530 219,579 75,350 74,532 225,160 第2表 日中韓三国の農産物需給比較(2007年)

(単位 千トン,%)

資料  FAO, Food Balance Sheetsから作成

00年01 0203 0405 0607 08

128,243 127,616 125,930 123,392 122,444 122,067 121,776 121,735 121,716 耕地面積

604266 341344 346307 367196 230 増加面積

1,566 2,027893 2,881 1,146 595583 237249 減少面積

163164 197229 145139 167188 192 うち 建設

763591 1,426 2,237 733390 33925 退耕還林 第3表 中国の耕地面積

(単位 千ha)

資料  農業部『中国農業発展報告』から作成

農林中金総合研究所  http://www.nochuri.co.jp/

(11)

しかし都市住民の所得との格差は,1980年 の2.5倍から2010年の3.2倍へと拡大している。

このような状況の下で,中国農業の課題 としては,以下のことが挙げられよう。

①食料自給の維持

農地面積の維持,農地利用率の向上・単 収の増加・飼料効率の向上など生産効率の さらなる向上,農業技術の開発,水資源の 開発と確保など。

②持続可能な農業経営の確立

農村労働力の農外移出と高齢化の下での 農業労働力の確保,農地制度の改革,農業 金融の確立

③都市と農村の格差是正

農業経営の収益性の向上,農外就労機会 の確保

(注6 国家統計局『中国統計年鑑』

3

) 韓国農業の現況と課題

韓国農業は,日本農業とよく似ている。

前掲第1表にみるとおり農業が国の経済に 占める割合は低い。農家の規模も小さく,減 少が続いている。農家の高齢化が著しく,

それは日本の農家の高齢化を追い越すに至 っている。かつては米が主要な作目であっ たが,畜産・野菜・果樹の比率が高まって 生産は多様化した。しかし米は,依然とし て農村が存立するうえでの基幹的な作物と しての地位を維持している。両国ともに,

食料自給率は極めて低い水準にまで低下し ている。

日本と異なるのは,韓国では専業農家の 比率が高いことである。1970年の67.7%か おり,米,小麦,トウモロコシについては

高い国内自給を維持してきている

(第4表)

しかし,肉類消費の増加から畜産飼料向け トウモロコシと大豆への需要が増大してお り,また食用油への需要も急速に拡大して いる。これに対し,トウモロコシの生産を 優先した結果,大豆およびパームオイルの 輸入は膨大な量に拡大し,中国の2011/12 穀物年度の大豆輸入量は5,800万トンと,世 界全体の輸入量の60%を占める見込みであ

(USDAによる予測)

国連の予測によれば,中国の人口は10年 の1,341百万人から2030年に1,393百万人とな ってピークを迎えるが,今後,人口増加と 生活水準の向上に伴う肉・食用油需要の増 加から,農産物への需要はさらに増加する。

中国の農村住民の所得は,1980年から 2010年までの30年間に30.1倍に増加した(注6)

小麦

トウモロコシ

大豆

食用植物油

綿花

豚肉

生産量 輸入量 輸出量 生産量 輸入量 輸出量 生産量 輸入量 輸出量 生産量 輸入量 輸出量 生産量 輸入量 輸出量 生産量 輸入量 輸出量 生産量 輸入量 輸出量

18,791 29625 9,964 9219 10,600 1,0480 1,541 1,042 22 835187 11 44225 30 3,966 2411 00

18,059 5269 9,745 35461 13,937 8640 1,635 2,659 41 2,071 62123 571275 1 4,555 2039 05

19,510 3679 11,512 9025 16,397 138 1,498 4,255 36 3,280 95012 638176 1 4,891 5318 09 第4表 主要農畜産物の需給(中国)

(単位 万トン)

資料  第3表に同じ

(12)

農林金融2012・12

10

 - 804

の政策を継続している。韓国は巨大経済圏 とのFTAを同時多発的に進める方針をと り,すでにインド,EU,米国とのFTAが 発効しており,オーストラリア,ニュージ ーランド,カナダ,中国等と交渉中である。

このような政策の背景には,韓国経済は 貿易依存度が極めて高く(注8),いち早く巨大市 場との間でFTAを結び,先行者利益を確保 したいとする意向があった。

しかし,このような戦略は,農業部門に は大きな被害をもたらすことが予想される。

特に韓米FTAは,米を例外扱いとしたもの の,その他の品目は,長期間をかけるもの はあっても最終的には完全に市場を開放す る内容であり,農業者は激しい反対運動を 展開した(注9)

韓国政府は,04年からFTA対策として 119兆ウォンの長期投融資計画を実施し,

また韓米FTA対策としても20兆ウォンの 対策を打ち出している。しかしこれらの対 策は,金額は大きいとはいえ既存の政策も 含んで再編成したものであり,また新しい 政策の内容も,被害補償,直接支払い,畜 舎現代化などが中心で,コスト低減効果は 限定的であるとみられる。

韓国の小規模で担い手の高齢化が進む稲 作をどのようにして持続可能な姿に変えて いくのか,また,稲作以外の分野で成長し てきた畜産・園芸・果樹等の農業がFTAに よって被る被害にどう対処するのか,韓国 の農政は大きな課題に直面している。

(注7 韓国農林水産食品部『農林水産食品主要統 計』

(注8 08年現在92.2%(GDPに占める輸出・輸入

ら徐々に低下してきたが,2010年現在なお 53.3%を占める(注7)。これは,韓国の農村では 兼業機会が少なく,また農家の子弟の都市 就業意向が強いことから,農家の子弟の多 くが都市部に転出し農外就労をしてきたこ とによる。

韓国農業は,1990年以降大きな変動の波 を被ってきた。

韓国は,ガット・ウルグアイ・ラウンド 交渉が妥結に向かうなかで,国際化に対応 する42兆ウォンの投資計画を打ち出した。

これは,施設型農業へのシフト,農業機械 の導入を進め,輸出戦略品目の専門団地を 育成し,特に日本市場をターゲットに競争 力強化を図ろうとするものであった。しか しこれは,97年アジア通貨危機もあり思う ような海外市場開拓につながらず,不適切 な事業認定もあって,農家負債の激増とい う結果に終わった

(第3図)

。農家負債対策 は,2000年代に入ってからも韓国農政の重 要な課題になっている。

韓国では2000年代に入り,盧武鉉政権が 積極的なFTA戦略に転じ,李明博政権もそ

3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0

100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

(万ウォン) (%)

80年 90 00 08

資料  農林水産食品部『農林水産食品主要統計』から作成 農家負債比率b/a

(右目盛)

12.6

42.9

87.6 農家所得a 84.5

農家負債b

第3図 韓国の農家負債比率推移

農林中金総合研究所  http://www.nochuri.co.jp/

(13)

1

) 日中韓三国の農産物関税

はじめに,日中韓三国の農産物関税につ いて確認しておく

(第5表)

日本は無税品目の割合が他の2か国と比 べて高い。反面,最高税率は韓国と同様,高 い税率を適用している品目がみられる。日 本は,市場開放できる品目はすでに相当開 放が進んでおり,残っている品目は,食料 安全保障や地域経済にとって重要な品目で あることから,このような姿になっている。

中国は,平均税率・最高税率ともに低い。

農産物全般にわたり競争力があることを反 映している。しかし無税品目の割合は低く,

多くの品目で相応の関税をかけていること がわかる。

韓国は日本同様,最高税率は高く,一方 無税品目の割合は低い。ただし,韓米FTA など自由化度の高いFTAが増加すると,

FTA税率を含めてみる必要がある。

2

) 日中韓三国の農産物貿易概況 以下,米,野菜,果実,加工食品の貿易

合計の比率)

(注9 韓米FTAは農業への被害以外に大きな問題 が指摘されている。詳しくは,宋基昊(2012『恐 怖の契約 米韓FTA―TPPで日本もこうなる―』

農山漁村文化協会,参照。

3

 日中韓三国の農産物貿易

「日中韓産官学共同研究報告書」が指摘 するように,日中韓FTAはその内容次第で は,日本と韓国の農業に深刻な影響を及ぼ す懸念があり,品目別に詳細な検討を行う 必 要 が あ る。 以 下 で は そ の 前 提 と し て,

ASEANとの関係もふまえつつ三国の農産 物貿易の現状について概観する。

また,中国はASEANとのFTAを締結し ており,その結果協定国・地域間の農産物 貿易にどのような変化が生じているかも,

日中韓FTAを考えるうえで参考になると 考えられるので,2000年代に入ってからの 中国を軸とした農産物貿易の動態について も分析することとする。

畜産物 乳製品

果実,野菜,植物 コーヒー,茶 穀物および調整品 油糧種子および油脂 砂糖および菓子類 飲料およびたばこ 綿

その他の農産品

18.993.3 10.6 15.3 42.09.0 27.2 14.6 0.0 4.4

日本 平均

43.89.5 19.7 22.7 16.341.9 12.7 32.3 100.0 70.6 無税割合

271640 394184 618613 9454 5620 最高

14.812.0 14.8 14.724.3 11.027.4 22.3 15.2 11.4

中国 平均

10.10.0 5.9 0.03.4 5.30.0 2.2 0.0 9.4 無税割合

2520 3032 6530 5065 4038 最高

22.1 67.5 57.4 134.553.9 37.016.8 31.7 16.10.0

韓国 平均

2.4 0.0 0.2 0.00.3 124.1.5 0.0 100.0 18.3 無税割合

17689 887514 800630 243270 7540 最高 第5表 品目別MFN実行関税率(2010年)

(単位 %)

資料  WTO, World Tariff Profiles 2011から作成

(注)1  MFNは最恵国待遇税率。

 2  タリフライン(関税分類上の細目品目)を集計したもの。

(14)

農林金融2012・12

12

 - 806

に向けて,国内生産のシフトが起こる可能 性が高いとみる必要がある。

b 野菜

野菜の場合は,様相が異なる

(第7表)

中国は圧倒的な輸出力を誇っており,日 本,韓国,ASEAN,さらにはそれ以外の地 域にも輸出している。

ASEANでは,タイの野菜輸出の規模が 大きく,その多くは中国向けである。ASEAN 全体でみても,その輸出の大宗は中国向け となっている。

05年から10年にかけてのASEAN+3域 内の動きをみると,日本と韓国の中国から の輸入,ASEANと中国の間での輸出入が大 きく増加している

(第8表)

c 果実

果実では,中国とともにASEANの輸出 規模が大きい

(第9表)

中国から日本・韓国への輸出は小規模で,

についてみていく。

a 米

ASEAN+3の米輸出をみると

(第6表)

世界の米輸出ランキング1位のタイと同2 位のベトナムの輸出が突出して多い。

中国は2010年で約62万トンを輸出してい るが,2000年から05年にかけて67万トン輸 出を増加させた後,05年から10年にかけて は5万トン減少してい (注10)る。10年時点でベト ナムから110万トン輸入するなど,輸出は 拡大傾向にあるとはいえない。

この背景としては,日本と韓国の米輸入 はミニマム・アクセス米の輸入がほとんど であること,中国では米の需要が増大して おり,農地・水の制約もあって積極的に米 輸出を伸張する状況にないことがあげられ る。

ただし,仮に日本や韓国のような高所得 国が米の関税を撤廃したとすれば,世界市 場でもっとも有利に販売できるこれらの国

日本 中国 韓国 日中韓計 タイ ベトナム その他 ASEAN計 ASEAN+3

輸出国地域

47 0 47 2840 0 284 331

輸入国・地域 日本

0

0 0 1,101292 10 1,403 1,403 中国

1820

182 585 0 63 245 韓国

2290 0 229 1,106634 10 1,750 1,979 日中韓計

131 0 14 1,038 3,276 55 4,369 4,383 ASEAN

2421 0 243 1,672 4,382 65 6,119 6,362

37737 4 418 7,268 3,719 67 11,054 11,472 その他

61938 4 661 8,940 8,101 132 17,173 17,834 ASEAN 世界計

3計 第6表 ASEAN+3の貿易2010年)

(単位 千トン)

資料  Global Trade Atlas から作成

(注) 輸出データを基本に集計。ただし,ブルネイ,ラオス,ミャンマーのデータはないので,相手国の輸入データを使用。その場合,輸入 金額に0.9を乗じて,CIF価格をFOB価格に補正した。また,これら3か国同士の貿易および,これら3か国とASEAN+3以外の国・地域 との貿易は含まない。以下同様。

( 米 )

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(15)

3と広範囲な地域に行われている。この違 いの背景には,中国の果実は温帯果実が中 心であり,ASEANの果実は熱帯果実と温帯 ASEANおよびASEAN+3以外の地域へ

多く輸出されている。一方ASEANの果実 輸出は,日本,中国,ASEAN域内,ASEAN+

日本 中国 韓国 日中韓計 タイ ベトナム その他 ASEAN計 ASEAN+3

輸出国地域

1,191 80 1,271 10213 39 154 1,425

輸入国・地域 日本

0 7 7 802200 84 1,086 1,093 中国

5470

548 130 13 26 574 韓国

1,7380 87 1,826 904226 136 1,266 3,092 日中韓計

2,2725 4 2,281 4335 299 377 2,658 ASEAN

4,0105 91 4,107 947261 435 1,643 5,750

3,46730 40 3,536 12335 44 202 3,738 その他

7,47735 131 7,643 1,070 296479 1,845 9,488 ASEAN 世界計

3計

(単位 百万ドル)

資料  第6表に同じ

第7表 ASEAN+3の貿易(2010年)

(野 菜)

日本 中国 韓国 日中韓計 タイ ベトナム その他 ASEAN計 ASEAN+3

輸出国地域

175

11 164

△813 6 11 175

輸入国・地域 日本

△3 6 3 506159 61 726 729 中国

3310

332

△40 5 1 333 韓国

△3506

5 499 519147 72 738 1,237 日中韓計

1,8015 4 1,810 2724 114 165 1,975 ASEAN

2,3072

1 2,309 546171 186 903 3,212

2,1189 31 2,157 97 15 31 2,188 その他

4,42511 30 4,466 555178 201 934 5,400 ASEAN 世界計

3

(単位 百万ドル)

資料  第6表に同じ

第8表 ASEAN+3の貿易2010-2005年増減)

(野 菜)

日本 中国 韓国 日中韓計 タイ ベトナム その他 ASEAN計 ASEAN+3

輸出国地域

164 15 179 189 211 238 417

輸入国・地域 日本

10 17 27 205303 96 604 631 中国

330

33 53 39 47 80 韓国

19710 32 239 228315 346 889 1,128 日中韓計

1,1945 25 1,224 11777 211 405 1,629 ASEAN

1,39115 57 1,463 345392 557 1,294 2,757

1,28992 88 1,469 230918 567 1,715 3,184 その他

2,680107 145 2,932 1,575310 1,124 3,009 5,941 ASEAN 世界計

3計

(単位 百万ドル)

資料  第6表に同じ

第9表 ASEAN+3の貿易(2010年)

(果 実)

(16)

農林金融2012・12

14

 - 808

中国の輸出の3割近くを日本向けが占め,

ASEAN向けが1割弱で,ASEAN+3域外 にも大量に輸出が行われている。

ASEANの輸出は,タイがその半分弱を 占めており,日本への輸出が多い。その他,

ASEAN域内やASEAN+3域外への輸出 も大きな規模になっている。

05年 か ら10年 に か け て は, 中 国 か ら ASEAN

(+908百万ドル)

およびASEAN+

3域外

(+4,674百万ドル)

への輸出,ASEAN から各地域全般への輸出の伸びが堅調であ った。

(注10 Global  Trade  Atlasデータによる。以下,

とくに断りのないかぎり同じ。

3

) 中国の農産物貿易動態 a ACFTAと農産物貿易

以上,ASEAN+3地域の農産物貿易に ついてみてきた。ここでは,品目によって 様相は異なるが,中国およびタイ・ベトナ ムを中心とするASEANの輸出が大きな規 模になっており,また,近年急速に拡大し てきていることがみてとれる。

果実の双方があることがある。

中国の果実は品質の問題と植物検疫上の 制限から日本等への輸出には限界があり,

一方,ASEANの熱帯果実は,日本・中国を は じ め 世 界 市 場 へ の 輸 出 が 盛 ん で あ る。

ASEANからの果実輸出は,単一国として はベトナムの規模が大きい。

05年から10年にかけての変化をみると,

中国からASEANへの輸出

(+845百万ドル)

ASEANから中国への輸出

(+284百万ドル)

中国およびASEANからASEAN+3域外 への輸出が増加している。

d 加工食品

加工食品

(飲料を含む)

の輸出は,日本・

韓国とも約25億ドルと,かなりの規模にな っている

(2010年,第10表)

。しかしASEAN+

3全体でみると,中国およびタイの輸出が 大きい。

日本の輸出先はASEAN+3域外が多く,

韓国の輸出先は日本およびASEAN+3域 外が多い。

日本 中国 韓国 日中韓計 タイ ベトナム その他 ASEAN計 ASEAN+3

輸出国地域

4,414 812 5,226 2,169 275931 3,375 8,601

輸入国・地域 日本

165 384 549 10363 916 1,082 1,631 中国

196889

1,085 19799 211 507 1,592 韓国

5,361303 1,196 6,860 2,429 2,477058 4,964 11,824 日中韓計

1,233595 268 2,096 3,019 5,209172 8,400 10,496 ASEAN

6,594898 1,464 8,956 5,448 7,686230 13,364 22,320

1,897 9,503 1,010 12,410 7,484 1,048 5,752 14,284 26,694 その他

2,491 16,401 2,474 21,366 12,932 1,734 12,982 27,648 49,014 ASEAN 世界計

3

(単位 百万ドル)

資料  第6表に同じ

(注) HS16からHS22の品目の合計である。

第10表 ASEAN+3の貿易(2010年)

(加工食品)

農林中金総合研究所  http://www.nochuri.co.jp/

(17)

タイに対しては輸入超過幅が拡大している が,これはキャッサバの輸入が急増してい るためであり,キャッサバを除くとタイに 対する野菜の貿易収支は韓国等と同じ規模 の黒字に拡大している。

中国では工業原料,飼料原料,バイオ燃 料の原料としても使われるキャッサバの輸 入が急増しており,11年には14億ドルに達 した。その輸入先はほとんどがタイ,ベト ナムなどASEAN諸国である。

その背景としては,一般的には,これら 地域の経済発展により農産物への需要が高 まってきていることがあげられようが,さ らに,中国とASEANの間で発効している FT (注11)Aの影響もあると考えられる。

中国とASEANのFTA

(以下「ACFTA」

という)

は物品貿易協定が05年7月に発効 した。物品貿易についてはセンシティブ品 目・高度センシティブ品目が設けられるが,

その他のノーマルトラック品目は,先行加 盟6か国は10年までに関税撤廃を完了,残 りの4か国は2015年までに関税を撤廃す る。また,アーリーハーベスト

(先行引下 げ)

措置として,04年1月に農産品

(HS01

〜HS08)

の関税引下げを開始し,先行加盟 6か国は06年まで,残りの4か国は10年ま でに関税を撤廃した。

このような動向を踏まえ,以下では2000 年以降の中国のASEANおよび日本・韓国 との品目別貿易推移をみていく。

b 野菜

中国の野菜貿易は,2000年から11年まで の11年間で,輸出は5.6倍,輸入は22.2倍に 拡大し,野菜の貿易収支の黒字は4.7倍にな った

(第4図)

。この動きは,2000年代後半 に入って急激に加速している。

これを国別にみると

(第5図)

,最大の輸 出先日本に対する黒字が大きく増加してい る。また,2000年代前半には貿易収支の大 きなプラス・マイナスがなかった韓国,イ ンドネシア,マレーシアなどに対しても,

大幅な輸出超過が定着するようになった。

輸入(△)計 貿易収支 輸出計 100

80 60 40 20 0

20

(億ドル)

0001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 資料  第6表に同じ

第4図 中国の野菜貿易

14 12 10 8 6 4 2 0

△2

4

6

(億ドル)

00年01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 第5図 中国の野菜貿易収支(国別)

資料  第6表に同じ

対日本

対インドネシア 対マレーシア

対タイ

対タイ(除くキャッサバ)

対ベトナム 対韓国

(18)

農林金融2012・12

16

 - 810

方,フィリピン,タイ,ベトナムとの間で は,赤字が急速に拡大した。このような動 きの背景には,経済成長に伴う熱帯果実へ の需要の増加と,ACFTAの影響が出てい るものとみられる。

d 加工食品

中国の加工食品貿易は,輸出の伸びが旺 盛で,近年は輸入も増加しているものの,貿 易収支の黒字が大きくなっている

(第8図)

国別には,日本に対する黒字が大きく,

全体の黒字の約半分を占める

(第9図)

。日 本に対する黒字は,冷凍餃子事件の影響で 08年から09年にかけて減少したが,10年以 降再び拡大している。

e 中国と油糧種子輸入

中国では所得の向上に伴い,食用油など の油脂類への需要が飛躍的に高まり,油糧 種子の輸入が増加している。

大豆の輸入については「2−(1)日中韓 c 果実

中国の果実貿易は,野菜とは異なる動き をしている

(第6,7図)

2000年代後半に貿易の拡大が加速してい るのは野菜と同様であるが,輸出とともに 輸入も増加し,果実の貿易収支の黒字は,

2000年代後半に入り一時拡大したものの,

最近では黒字幅は極めて小さくなっている。

国別には,日本に対する黒字は安定して 続いているが,マレーシア,インドネシア に対する黒字が大きく拡大しており,一

6 4 2 0

2

△4

6

(億ドル)

0001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 第7図 中国の果実貿易収支(国別)

資料  第6表に同じ

対日本 対インドネシア

対マレーシア

対タイ 対フィリピン

対ベトナム 対韓国 輸入(△)

貿易収支 輸出計 40

30 20 10 0

△10

20

△30

40

(億ドル)

0001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 資料  第6表に同じ

第6図 中国の果実貿易

輸入(△)計 貿易収支 輸出計 250

200 150 100 50 0

50

△100

(億ドル)

00年01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 資料  第6表に同じ

(注) HS16-22の合計である。

第8図 中国の加工食品貿易

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参照

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