九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
PPARα/γデュアルアゴニストの創薬研究
柴田, 憲宏
https://doi.org/10.15017/1670415
出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(創薬科学), 論文博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
, ‑ ‑ ,
(棺拭
9‑3)
氏 名
柴 田 憲 宏
論 文 名
P P A R α
/γ
デ、ュアルアゴ、ニストの創薬研究 論文調査委員 主 査 九 州 大 学 薬 学 府 教 授 佐 々 木 茂 貴副 査 九 州 大 学 薬 学 府 教 授 大 嶋 孝 志 副 査 九 州 大 学 薬 学 府 教 授 王 子 田 彰 夫 副 査 九 州 大 学 薬 学 府 准 謝 受 谷 口 勝 右
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
2014
年、約490
万人が糖尿病を原因として亡くなった。現干主約3
億9000
万人がその疾患に苦し んでおり、そして2 0 3 5
年には約5
億9000
万人に遣すると予想されている。そのうち90%
以上はイ ンスリン抵抗性が尤進した2
型糖尿病患者である。インスリン抵抗性は心血管疾患リスクを有し、さらに最近では癌リスクの上昇に関係していることが明らかlこなってきていることからも、
2
型糖 尿病の予防や治療はQOL
の維持にますます重要になってきている。これまで多様な
2
型糖尿病薬が開発されてきているが、それらの中でインスリン抵抗性を改善オ る薬剤として核内受容体のPPARy
を標的分子とするピオグリタゾンやロシグリタゾン等が見出さ れた。これらの薬剤は、血糖低下作用については著明な薬効を示すものの、主薬理に基づく体重増 加や浮腫など副作用の面で問題を抱えており、必ずしも満足できる薬剤というわけではない。一方、そのサブタイプである
PPARα
は脂肪酸代謝の主調節因子であり、そのアゴニストは脂質低下作用 を示すとともに体重増加抑制作用を示すことが知られている。そこで柴田氏は
PPARy
アゴニストにPPARα
作用を付加することで、PPARy
アゴニストが有する 副作用を抑え、加えて脂質パラメーターの改善が期待できるという新たなコンセプトのもと創薬研 究を開始した。PPARa/y
デ、ユアルアゴニストの研究は既に世界中で行われていたが、各社どの化合物もα
活4性が 弱くy
作用による副作用を十分に抑えられずにいた。しかし唯一E l iL i l l y
社によって発表された化( 合物
1
はPPARα
に対して選択性が高く、柴田氏の目指す化合物像に合致していたので、これをリ ードに最適化研究を実施した。誘導体展開の方針として、これまで報告されている化合物の多くは 脂溶性の高い酸性化合物であり、それゆえインピボ作用が満足いくものではなかったことが考えら れたので、柴田氏はインピボにおいて優れた血糖効果作用と脂質低下作用を示す化合物を衝尋すベくリンカ一部分にアミノ基を配したツピッターイオン化合物を軸とした。
凶, L o O o i c o , H
Compound 1 PPAR日:ECso= 0.70 uM PPAF勺:EC50 = 2.1 uM
国ーーー
。ベ正直な
02HCompound 2 PPAR日:EC50= 1.7 nM PPARy: EC50 = 4.7 nM
log D: 2.9 Metabolic stability γ61 q也 CYP3A4 inhibitoin : 75 o/o
ー一一.....
d〜、 '
ハ 人 f ~~
M•-0-<~X:t位;丈2H
ーーーーー・−−引と e 品 ; j 了 2H
log D: 1.4 Metabolic stability : 86 % CYP3A4
Direct Inhibition : 32 % MBI Remaining : 101 %
PPARα
:
EC50 = 2.8 nM PPARy: EC50 = 26 nMlog D: 1.3 Metabolic stability : 98怖 CYP3A4
町rectInhibitoin : 19 % MBI Remaining : 8~ % JP1 solubility : 870 !Jg/ml
様々な誘導体展開から、 トリベンジルアミン型構造が
PPARα
活性に大きく寄与することを見出 し、また酸性部ベンゼン環上へのジメチル基の導入がPPARy
の活性向上に効果的である構造活性相 関を構築した。その結果、柴田氏はインピトロにおいてα
優位に活性を示す化合物2
を獲得した。この化合物はインピボ詐鵠設においてその強力な α活性により Y活性の副作用を抑制しつつ優れた血 糖低下作用と脂質低下作用を示した。
しかし化合物2は
CYP3A4
を強く阻害することが明らかとなり、併用する薬剤の血中コントロー ルを困難し重篤な副作用を引き起こす危険性を有していることが判明した。様々なパラメーターを 用いてその原因を調査した結果、その阻害作用は脂溶性の高さに関係していることが判明し、その 相関図から化合物の脂溶性はLogD
値が2
以下であることが望ましし叱考えられた。さらにフラン 環自身がMBI
の起因構造であることから、フラン環を他の低脂溶性複素環へと変換することで薬物 間相互作用のリスク低減を図った。その結果、l ム 4
ーオキサジアゾーノL
環がフラン環に代わること を見出し、CYP3A4
の直接阻害やh
担I
リスクを低減させることに成功したf
邸旨溶性化合物3
を獲得 した。ところが化合物
3
に代表されるオキサジアゾール誘導体の繍夜安定性を測定したところ、胃内を 想定した日本薬局方第l
液において1 ム 4
ーオキサジアゾーノL
環が経時的に分解していくことが確認 された。そのためオキサジアゾール環の生物学的に等価な側鎖の探索を実施じたところ、アミド基 に変換可能であることを見出した。アミド基上の置換基変換では、無置換のアミド化合物が活性と 物性に最もバランスの取れた側鎖で、あることを見出した。柴田氏は、
PPARα
/y
デ、ュアルアゴ、ニストの合成研究の集大成として、PPARα
優位に活性を示し、また物性にも優れた化合物
4
を獲得した。この化合物もこれまでの化合物同様、病態モデル動物を 用いたインピボ試験において副作用を抑制しつつ強い血糖低下作用と脂質低下作用を示した。さら に先行のPPARa/y
デ、ュアノレアゴ、ニストと比較試験を行った結果、PPARα
活性の弱川也社化合物はPPARy
による血糊底下作用を示すものの体重増加を抑えることがで、きなかった。一方、化合物4
は 全ての要件を満たす化合物であった。以上、本研究は優れた
PPARα
/y
デ、ユアルアゴ、ニストの開発に成功したもので、博士偵|鼠斜学)の学位に値すると認める。