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漫画研究への扉

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

漫画研究への扉

日下, 翠

九州大学大学院比較社会文化研究院

南雲, 大悟

國學院大学・二松学舎大学・日本大学非常勤講師

アンカナー, ジラジランチャイ

九州大学大学院比較社会文化学府博士課程

佐島, 顕子

福岡女学院大学人文学部現代文化学科

http://hdl.handle.net/2324/16791

出版情報:日下翠教授中国文学・漫画学著作集成, 2005-09-20. 梓書院 バージョン:

権利関係:

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おわりに

「なぜ日本ではいい大人でも漫画を読むのか」。軽蔑 と冷笑とともに幾度となくこの問いは発せられ、日本 人の精神的未熟さが原因であると日本人自身が嘆くよ うなことも珍しくなかった。日本の漫画やアニメが世 界的に評価されるようになった最近ではさすがにそう した論調は少なくなったが、「なぜ日本ではいい大人 でも読むような漫画ができたのか」「漫画のどこが面 白いのか」という問いにまだ十分に我々は答えていな

い。

 日本の漫画が単なる「わかりやすい絵解き物語」と いうような域を遥かに脱し、表現形式として独特の魅 力を持ち、内容的な深みを備えた文化として成熟した 背景には、日本の文学、絵画、舞台芸術、映像芸術な ど他の文化の蓄積があった。こうした事情を明らかに する研究が最近少しずつ表われてきているが、せっか くの「輸出超過文化」であるにしては、漫画について の研究はまだまだ立ち遅れていると言わざるを得ない。

文化としての発展過程だけでなく、作品研究、技法研 究、言語分析、応用方法の研究など、様々な方面から の研究が待たれる。漫画は、自己について語られるこ とを待っている寡黙な巨人のような存在であると言え

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よう。

 ある土地における文化のあり方は、その土地におけ る様々な他の営為の複合的影響のもとにある。本書に 収めた諸論文が述べるように、アジア、ヨーロッパの 国々における漫画文化は、日本漫画やアメリカンコミ ックなどの影響を受けながらも、その国その国の独特 の姿を見せている。このことは文化が生まれ育つダイ ナミズムを改めて感じさせてくれる。漫画という文化 が各国でどのように受容され、どのような方向に発展 し、どのように根付いていくかを観察することは、そ の国の文化の伝統と人々の心のあり方を深く知ること につながるだろう。

 漫画研究はまだ始まったばかりであるが、本書に収 められた諸論文がこの豊穣な分野へ切り込んでいこう という意欲を持つ人々にとって一つの道しるべとなる ことを心から祈っている。

2005年7月

執筆者を代表して、

     日下 翠

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