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学位論文題名 STUDIES ON DNA―BASED GELS FORORAL DELIVERY OF PROBIOTIC BACTERIA

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Academic year: 2021

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博士 (地球環境 科学)   ベン ジャマート   ジョンアヌラックン

     学 位 論 文 題 名

    STUDIES ON DNA ― BASED GELS FOR ORAL DELIVERY OF PROBIOTIC BACTERIA

(プロバイオテイックバクテリアの経口投与に用いる     DNA 含有複合ゲルに関する研究)

学位論文内容の要旨

    日本 は四方を 海に囲ま れてい る海洋国 家であ るため、 魚類は 日本人に とって古くから 主要な食品であり、重要な蛋白質源であった。日本で食される大型魚の代表である鮭の多くは、

北日本で捕獲される。その肉や卵は一般的な食材であるが、精子を含む白子はほとんど食され る事は ない。 そのため 、鮭の捕獲量が増大(農林水産省報告書、2002年)する中、毎年莫大 な量の白子が産業廃棄物として捨てられてきた。しかし、水産物を加工する過程で食品として 利用されない部分より生ずる廃棄物については長い問あまり顧みられる事がなく、環境にも悪 影響を与えてきた。この白子を有効利用する事ができれば、環境問題軽減に役立っであろうし、

さらに、この白子を利用して人類や地球に優しい製品を生産できれぱ画期的な成果といえる。

DNAは 白 子中 の 主 要な 成 分 の ーっ で あ る。 サケ白子 より抽 出されたDNAは これまで 、例え ば、健康食品、伝承医学に基づく医薬品、化粧品、遺伝子産業用薬品の原料等に使われてきた。

ところ で、こ の天然バ イオ素 材であるDNAのよ り高度な利用法として地球環境改善や人類の 健康向上に役立てる事はできないだろうか。

    DNAの 化 学構 造 の 特 徴の ー っ は、 そ の 骨格 に 多 くの り ン 酸基 に よる マイナス 電荷を 持ち、 そのた め、分子 全体と してはポ リアニオ ンの性質を持つ。そのため、DNAは他のポリ カチオン性の生体高分子とイオン性架橋構造体を形成する。このようなポリイオンコンプレッ クスで機能性物質を包み込めば、この物質を厳しい破壊的な環境から保護できるかもしれない。

本研究ではプロバイオテックバクテリアを経口投与するためのDNA含有ゲルの調製を行った。

プロバ イオテ ックパク テリアは宿主の健康にとって良い効果を与える生きているバクテリア と定義される。たとえば、免疫系の刺激、体外より浸入するバクテリアやヴィールスよりの保 護、食物消化の促進等である。これらは通常、人間や動物の腸内に存在する微生物群である。

酪農業 におい て最も広 く用い られてい るプロバ イオテックバクテリアは乳酸菌(LAB)のグル ープである。,その他、ビフィドバクテリアや酵母も用いられている。これらは伝承的に発酵食 品や乳製品として、子供や大人の胃腸障害改善に用いられている。しかし、胃液が酸陛である ために 、生菌 数が減少 してし まう問題 がある。 プロバイオテックバクテリアをDNA含有ゲル で保護する事により腸に到達する生菌数を増やす事ができるようになるかもしれなぃ。それは、

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(2)

DNAが胃 で は ほと ん ど 分解 さ れ ず、腸に 届いて はじめて 膵臓か ら分泌さ れるDNA分解酵 素 で分解されるからである。結果として、バクテリアは胃酸より保護され腸内で酵素によりDNA 含 有 ゲ ル よ り 放 出 さ れ 腸 管 や 結 腸 中 で コ ロ ニ ー を 形 成 す る 事 に な る 。     こ の 論 文 は5章 よ り な る 。 第1章は 鮭 白 子DNAと その 応 用 につ い て 、プ ロ パ イオ テ ッ クバクテ リアとそ の応用 について 、及びこの研究の目的にっいて述べた。DNAが生物の遺 伝 因子であ るばかりでなく生体関連機能性素材であるとの認識に基づく研究は生物や地球環 境に優しい革新的な物質の開発を可能にするであろう。

    続 く3つ の 章 は 、 実 験 で 得 ら れ た結 果 に っき 述 べ た 。第2章 は、DNA、 ゼ ラ チン 、 カラギナンよりなる複合体形成にっき述べた。この複合体は酸性条件下で機能性物質を保持で きる。 ハイドロゲル と コンプレックスゲル と呼んでいる2種類のゲルを調製した。ハ イドロゲルは、DNA、ゼラチン及びカラギナンの温かい混合溶液を冷却する事により容易に調 製できる。この実験ではバクテリア源として乳酸菌を含む市販ヨーグル卜を用いた。温かい混 合溶液をある程度冷却したところに乳酸菌を含むヨーグルトを直接的に混合した。一方、コン プ レックス ゲルの場 合はDNA、ゼラ チン、 カラギナンよりなるゲル溶液中にヨーグル卜とカ カオオイルよりなる乳濁液を加える事により調製した。固化させた乳濁液を混合する事により 調製したコンプレックス中では乳酸菌はオイル粒子中に存在している。このコンプレツIクスゲ ルの利用にっき詳しく研究した。それは、このコンプレックスゲルが人工胃液中で効率よく乳 酸菌を保護したからである。一方、ハイドロゲル中の乳酸菌は保護なしの乳酸菌と同様人工胃 液処理後は全く検出されなかった。ゲルの形態は走査型電子顕微鏡で観察した。酸性条件下に お けるコン プレックスゲルの生きた乳酸菌に対する保護能カを高めるためにゲル調製の最適 条 件を調べ た。乳酸 菌含量 が2.58x10 7CFU/gの最適化ゲルを人工胃液中で2時間処理すると 乳 酸 菌 含量 はi.soX 10CFU/gにな り 、 さら に こ れ を人 工 腸 液中で6時間処 理する と2.53x 107CFU/gになるという好結果が得られた。

    第3章で は、ヨー グルト ではなく 、いく っかのプ ロバイ オテック 種にっい ての研 究を 行った結果にっき述べた。この研究では、応用面からみてより重要な結果が得られた。この系 ではコンプレックスゲルは、ハイドロゲルに比べ一桁高い保護効果があったが、ヨーグル卜中 の乳酸菌と異なルハイドロゲルでも充分高い保護作用を示した。さらに、4℃で冷却保存した 場合、ハイドロゲル中のプロバイオテックの方が、コンプレックスゲル中よりも安定であった。

ハイドロゲル中のLactobaciUusとLactococcusは、Bifidobacterirnnよりも酸に対して安定で あ った。さ らに、健 康食品 として実 際に使用するために食品用のDNA、ゼラチン、カラギナ ンを用いて、上記と同様の方法でゲル調製の最適化を行った。

    第4章 では 、Lactobacillus helveticusを含 むDNAゲルを人 間に経 口投与し た結果 に っき述べた。ゲルを投与する前、投与中、投与後における便中の生菌の有無をReal‑Time PCR、 Nested RT‑PCR等の分子生物学的手法により調べた。

    最 後 の 第5章 で は、 結 論 とし てDNA含 有 ゲル の プ ロ バイ オ テ ック バ ク テリ ア 保 護能 カ や 、 サ ケ 白 子DNAを 用 い る 革 新 的 な 健 康 食 品 を 生 み 出 す 可 能 性 に っ き 述 べ た 。     本 研究によ り、乳 酸菌、ビ フィド バクテリ ア等のプ ロパイ オテックバクテリアのみな ら ず、胃の 酸陸に弱 い薬効 物質を、DNA含 有ゲルで保護する事により活性を保ったまま腸に 到達させる方法が確立された。

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学位論文審査の要旨

主 査    教 授    坂 入信 夫 副 査    教 授    荒 木義 雄 副 査    教 授    森 川正 章

副 査    教 授    西    則 雄( 北 海 道大 学 工学 研 究科)

     学 位 論 文 題 名

    STUDIES ON DNA ー BASED GELS FOR ORAL DELIVERY OF‑ PROBIOTIC BACTERIA

(プロバイオテイックバクテリアの経口投与に用いる     DNA 含有複合ゲルに関する研究)

  日本は四方を海に囲まれている海洋国家であるため、魚類は日本人にとって古くから主要な 食品であり、重要な蛋白質源であった。日本で食される大型魚の代表である鮭の多くは、北日 本で捕獲される。その肉や卵は一般的な食材であるが、精子を含む白子はほとんど食される事 はなく、毎年莫大な量の白子が産業廃棄物とされてきた。しかし、水産物を加工する過程で食 品として利用されなぃ部分より生ずる廃棄物については長い間あまり顧みられる事がなく、環 境にも悪影響を与えてきた。この白子を有効利用する事ができれば、環境問題軽減に役立っで あろうし、さらに、この白子を利用して人類や地球に優しい製品を生産できれば画期的な成果 となりうる。

  DNAはサケ白子中の主要な成分のーっであり、そこから抽出されたDNAはこれまで、例えば、

健康食品、伝承医学に基づく医薬品、化粧品、遺伝子産業用薬品の原料等ごく限られた分野で 使われてきた。本研究は、この天然バイオ素材であるサケ白子DNAのより高度な利用法を開発 して 、 地 球環 境 改 善 や人 類 の 健康 向 上 に貢 献 す る事 を 最 終的 な 目 的と し て 行 われ た 。   DNA化学構造上の注目すべき特徴は、その骨格に多くのりン酸基によるマイナス電荷を持ち、

そのため、分子全体としてはポリアニオンの性質を持つ。そのため、DNAは他のポリカチオン 性生体高分子とイオン性架橋構造体を形成する。このようなポリイオンコンプレックスで機能 性物質を包み込めば、この物質を厳しい破壊的な環境から保護できることが期待される。本研 究ではプロバイオテックバクテリアの経口投与を可能としうる、DNA含有ゲルの調製を詳細に 調べた。

  プロバイオテックバクテリアは、たとえば、免疫系の刺激、体外より浸入するバクテリアや ウイルスよりの保護、食物消化の促進等、宿主の人や動物の健康に良い影響を与えるバクテリ アと定義される。これらは通常、人間や動物の腸内に存在する微生物群である。酪農業におい て最も 広く用い られてい るプロ バイオテ ックバクテリアは乳酸菌(LAB)のグループである。

そのほかにビフィドバクテリアや酵母も有用微生物である。これらは、伝承的に、発酵食品や

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乳製品として子供や大人の胃腸障害改善に用いられている。しかし、胃液が酸性であるために、

食物として摂取した場合、生菌数が大幅に減少してしまう問題がある。そこで、本研究では、

プロバイオテックバクテリアを保護し腸に到達する生菌数を増加させるために、菌体を保護す るDNA含有ゲ ルの開発 を目指し て検討した。それは、DNAが胃ではほとんど分解されず、腸に 届いて はじめ て膵臓か ら分泌さ れるDNA分解酵 素で分 解されるからである。結果として、バ クテリ アは胃 酸より保 護され腸 内で酵 素によりDNA含 有ゲルより放出され腸管や結腸中でコ ロニーを形成する事になる。

  本研究 では、まず、DNA、ゼラチン、カラギナンよりなる ハイドロゲル と コンプレッ クスゲ ル と呼んでいる2種類のゲルを調製し、この複合体は酸性条件下で機能性物質の保持 能カを 調べた。ハイドロゲルは、DNA、ゼラチン及ぴカラギナンを含む温かい混合溶液を冷却 する事により容易に調製できる。この実験ではバクテリア源として乳酸菌を含む市販ヨーグル トを用いた。温かい混合溶液をある程度冷却したところに乳酸菌を含むヨーグルトを直接的に 混合し、ハイドロゲルを調製した。しかし、ゲルを人工胃液で処理するとハイドロゲル中の乳 酸菌は、保護なしの乳酸菌と同様に全く検出されなかった。一方、コンプレックスゲルの場合 はDNA、ゼラ チン、カ ラギナン よりな るゲル溶 液中に ヨーグルトとカカオオイルよりなる乳 濁液を加える事により調製した。固化させた乳濁液を混合する事により調製したコンプレック ス中では乳酸菌はオイル粒子中に存在していることが判明した。このコンプレックスゲルの利 用にっき詳しく研究した。それは、このコンプレックスゲルが人工胃液中で効率よく乳酸菌を 保護したからである。さらに、ゲルの形態を走査型電子顕微鏡で観察し、酸性条件下における コンプ レック スゲルの 生きた乳 酸菌に対する保護能カを高めるためにゲル調製の最適条件を 調べた 。その 結果、乳 酸菌含量 が2.58Xl07CFU/gの最適 化ゲルを 人工胃 液中で2時間 処理す ると乳 酸菌含 量はi.soxl06CFU/gになり 、さら にこれを 人工腸液 中で6時間処 理する と2.53 x i07 CFU/gになるという好結果が得られた。

  ついで、ヨーグルトではなく、いくっかのプロバイオテック種についての研究を行った結果 について述べた。この系ではコンプレックスゲルは、ハイドロゲルに比べ一桁高い保護効果が あったが、ヨーグルト中の乳酸菌と異なルハイドロゲルでも充分高い保護作用を示した。さら に、4℃で冷却保存した場合、ハイドロゲル中のプロバイオテックの方が、コンプレックスゲ ル中よりも安定であった。ハイドロゲル中のLactobacillusとLactococcusは、丑rfidobacterium よりも酸に対して安定であった。さらに、健康食品として実際に使用するために食品用のDNA、 ゼラチン、カラギナンを用いて、上記と同様の方法でゲル調製の最適化を行った。この研究で は、応用面からみてより重要な知見が得られた。

  さらに 、Lactobac洫s五8′卵白を恥を含むDNAゲルを人間に経口投与した結果について調べ た。ゲ ルを投与する前、投与中、投与後における便中の生菌の有無をReal.TimePCR、Nested RでPCR等の 分子生 物学的手 法で検 討し、バクテリアの腸管への輸送が可能であることを確認 した。

  以上の 研究に よって、DNA複 合材料が バクテリ アを固 定化し安定に利用できることが明ら かとな り、DNAが生物 の遺伝因 子であ るばかり でなく 生体関連機能性素材であるとの認識に 基づく 研究は 生物や地 球環境に 優しい革新的な物質の開発を可能にすることが示唆された。

  審査員一同は、これらの結果を高く評価しまた研究者として誠実かつ熱心であり、大学院課 程における研鑽や取得単位なども併せ、申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるのに十 分な資格を有するものと判断する。

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参照

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