水晶基板を用いた横波型弾性表面波バイオセンサ応 答の数値解析による考察
著者 後藤 幹博
発行年 2014‑12
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00008782
(課程博士・様式9)
審 査 要 旨
専攻 光・ナノ物質機能 学籍番号 55245007 学生氏名 後藤 幹博
論文題目 水晶基板を用いた横波型弾性表面波バイオセンサ応答の数値解析による考察
横波型弾性表面波(SH-SAW)バイオセンサ研究は活発に行われている.しかし,その研究は 実験が主であり,解析による検討はほとんどされていない.本研究では, SH-SAWバイオセン サは抗原抗体反応の何を検出しているかについて数値解析により明らかにしている.また,数値 解析と実験により信頼性を取り入れたSH-SAWバイオセンサの設計最適化法を提案している.
第1章では本研究の背景について説明し,研究目的が SH-SAWバイオセンサの免疫反応に対 する応答を数値解析法により明確にすることであると述べている.
第 2 章では本論文で用いる理論解析法について詳細に述べている.第 3 章では研究に用いた SH-SAWバイオセンサならびに測定系・測定方法について説明している.
第4章ではSH-SAWバイオセンサの応答が質量負荷と仮定した数値解析を行っている. 2 pg の質量変化に対するSH-SAWバイオセンサの位相変化は約0.001度であることを明らかにした.
一方,同質量の抗原が吸着した免疫反応の実験では,約 2 度の変化が得られていることより,
SH-SAWバイオセンサは免疫反応を質量変化としてとらえていないことを明らかにした.
第5章ではSH-SAWバイオセンサに対する粘性変化の影響を数値解析と実験により検討して いる.グリセリン水溶液に対する数値解析と実験の結果は一致することを明らかにし,SH-SAW バイオセンサは粘性変化を支配的に捉えていることを示した.
第 6 章では SH-SAW バイオセンサに用いる金膜厚を変化させた場合の粘性変化に伴う SH-SAW の変化を数値解析と実験により調べている.実験における誤差要因は,製造における 金膜厚のばらつきとバルク波の影響であることを明らかにしている.
第7章ではSH-SAWバイオセンサの小型化を目的とした検討を行っている.小型化のために はセンサ周波数を高くする必要がある.250 MHzセンサでの位相感度を維持した状態での高周 波化について検討を行い,所望の性能を持つ380 MHzセンサの設計・製作に成功している.
第 8 章では,粘弾性層がセンサ上にあると仮定した数値解析,ならびに牛血清アルブミン
(BSA)を用いた実験と解析の比較を行っている.数値解析により,複素横弾性係数により粘弾 性層を表し,実部と虚部のセンサ応答に与える影響について検討している.また,厚さの異なる BSA 吸着膜をセンサ上に作成し,粘弾性層の膜厚依存性は,数値解析と実験結果のどちらも同 じ傾向を示すことを明らかにした.
第9章は結論であり,本論文で得られた成果ならびに今後の課題について述べている.
SH-SAW バイオセンサで得られた応答を数値解析により考察した本論文は,バイオセンサ発 展のために多くの新しい知見を得ている.また,高周波化により高感度化を目指す一般的な研究 方向に対し,センサの信頼性という観点を取り入れた新しい最適設計法を提案している.これら は今後の SH-SAW バイオセンサ研究・開発に大きく貢献すると期待され,学術的に有用な研究成 果である.よって,本論文は博士(工学)の学位を授与するに充分な内容を有すると認める.