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イケア グループ:自然エネルギー100% を2020年に達成

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◼ 先進企業の自然エネルギー利用計画 (第5回)

イケアグループ

自然エネルギー100%を2020年に達成

-太陽光・風力発電を世界29カ国で導入-

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1. 自然エネルギーの利用方針と導入計画

スウェーデンを拠点に世界29カ国に355の店舗を展開するイケアグループは、2020 年度までに全世 界で使用する電力と熱を自然エネルギー(renewable energy)100%で供給する計画だ。イケアグループ の事業は大型の店舗を建設して、家具やインテリア雑貨を手ごろな価格で提供し成長してきた。店舗の屋 上に太陽光発電を導入することがグループ全体の目標になっていて、日本国内でも 9 店舗すべてに太陽 光パネルが並ぶ。

表1.イケアグループの概要

2017年度(イケアグループの会計年度は前年9月~8月)には、全世界のエネルギー使用量のうち73%

を自然エネルギーに転換した(図1)。電力を供給する風力発電機は416基、太陽光パネルは75万枚に 達する。

図1.イケアグループの自然エネルギー導入状況(2017年度)

上から順に、自然エネルギーの割合、風力発電機の数、太陽光パネルの設置枚数 企業名 イケアグループ

(INGKA HOLDING B.V. とその関連会社)

拠点数 29カ国355店舗 (うち日本国内9店舗)など

電力使用量 33億キロワット時 (2017年度)

自然エネルギー 電力の利用率

実績:73% (2017年度)

目標:100% (2020年度)

売上高 341億ユーロ (2017年度)

社員数 14万9000人 (2017年年度末)

主要事業 ホームファニッシング製品の生産・販売

* イケアグループの会計年度は毎年8月末で終了

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2 風力発電は店舗に設置する方法ではなく、発電事業者とPPA(Power Purchase Agreement)を結んで 電力の供給を受ける。国別で見ると米国が最も多く、104 基の風力発電設備と契約を結んだ(写真1)。 このほかに欧州の11カ国で風力発電の電力を利用中だ。米国と合わせて合計の設備容量は94万7000kW

(キロワット)に達し、年間の発電量は一般家庭の62万世帯分を超える規模になっている。(図2)。

写真1.米国イケアが出資して電力供給

契約を結んだ風力発電所の例。「Hoopest

Wind」(イリノイ州)。出典:Apex Clean

Energy

図2.風力発電の利用状況。左から国名、発電機数、設備容量、

年間発電量、世帯数換算(年間3620キロワット時/世帯で換算)

MW:メガワット、GWh:ギガワット時

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3 日本国内では店舗に設置した太陽光発電の電力を自家消費するほか、小売電気事業者から自然エネル ギー100%の電力を購入する方法を組み合わせている。発電規模が最も大きい店舗は、2017年10月に愛 知県で開業した「IKEA長久手」である(写真2)。太陽光発電の設備容量は 1300kW で、年間に一般家 庭360世帯分の電力を供給できる。

写真2.「IKEA長久手」(愛知県長久手市)の外観(上)、屋上に設置した太陽光パネル(下)

IKEA 長久手で使用する電力の約 25%が太陽光発電による自家消費である。太陽光で発電した電力の 一部は、屋上の駐車場に設置した17台の充電器にも供給する。店舗の利用者は買い物のあいだに無料で 電気自動車に充電できて、帰る時にはCO2(二酸化炭素)を排出しない太陽光発電の電力で電気自動車 を走らせることができる。

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4 国内9つの店舗に設置した太陽光発電設備は合計で5090kWにのぼる。このうち3310kWが自家消費

用、1780kWが固定価格買取制度で売電している。新しい店舗に設置した太陽光発電設備はすべて自家消

費用である。「最近は太陽光発電の導入コストが低下して、自家消費でも初期投資を回収しやすくなった」

(イケア・ジャパンの高橋克行Country Facility Manager)。イケアでは太陽光発電の投資回収を原則10 年以内と決めている。投資回収後は運転維持費だけで電力を利用できるため、コスト削減にもつながる。

店舗内にあるオフィスを含めて、日本国内で使用する電力は2020 年度までに自然エネルギー100%に 転換する計画だ。太陽光発電の自家消費で足りない分は、小売電気事業者が提供する自然エネルギー

100%の電力メニューを調達する。現在はJFEエンジニアリンググループのアーバンエナジーから「ゼロ

エミプラン」の電力を購入している。

このプランでは JFE エンジニアリングが運転する太陽光・風力・バイオマス発電所の電力を 100%供 給する。ただし発電所が固定価格買取制度の適用を受けているため、国の制度では自然エネルギーの電力 として認められず、CO2排出量もゼロとみなされない。イケア向けには住宅用の太陽光発電による電力 の自家消費分の環境価値(CO2を排出しないなどの効果)を集約した「J-クレジット(再エネ由来)」を 組み合わせて、CO2を排出しない自然エネルギー100%の電力として供給している。

さらに電力の購入に加えて、地中熱を利用した空調システムも一部の店舗に導入済みだ。福岡県にある

「IKEA福岡新宮」をはじめ3店舗で、地中熱を利用した空調システムが稼働している(図3)。地中熱は 年間を通して温度が安定しているため、夏の冷房と冬の暖房の効率を高めるうえで効果が大きい。

図3.「IKEA福岡新宮」(福岡県新宮町)に導入した地中熱による空調システムのイメージ

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5 自然エネルギー100%を実現するためには、省エネ対策が欠かせない。イケアの店舗は共通の仕様で造 ることになっていて、断熱に関しても明確な基準がある。屋根と壁それぞれで、建築物の断熱性能を示す

「U-Value(U値)」の基準が決められている(図4)。

図4.店舗の主な省エネ対策

断熱性能の高い店舗を建設して、空調に必要なエネルギー使用量を少なく抑えたうえで、さまざまな省 エネ対策を実施する。「店舗内の照明は2014年から LEDに切り替えた。LEDの省エネ効果が最も大き い」(高橋氏)。加えてBEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)を全店舗に導入して、空調 と照明のエネルギー使用量を最適に制御する。

このほかに夏の暑い時期には、夜間に空調を運転する。「夜のあいだに店舗内を冷やしておくと、1 日 のうちに空調に必要なエネルギーの消費量を 10%くらい削減できる」(同)。もともとは東日本大震災の 後に、昼間の電力需要を削減するために実施した対策だが(図 5)、省エネ効果が大きいことがわかり、

現在も夏の3カ月間は夜間冷房を続けている。

図5.夜間冷房による電力需要の削減効果。2011年の夏から夜間冷房を開始

各種の省エネ対策を組み合わせることにより、売場面積あたりの電力使用量は日本に最初の店舗をオ ープンした2006年当時と比べて2分の1程度まで低下した。これから新設する店舗では、地中熱を利用 した空調システムをはじめ、既存の店舗に導入した最新の省エネ技術をすべて投入してエネルギー効率 を高めていく。

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2. 期待する効果と今後の課題

イケアグループは事業運営の中心にサステナビリティを位置づけるために、「ピープル・アンド・プラ ネット・ポジティブ」と題した世界共通の戦略を2012年に発表した。顧客・従業員・取引先を含めて人々 と地域社会、その基盤になる地球環境に対してプラスになるように、事業を大胆に変革していくことを宣 言したものである。

具体的な方針の1つとして、事業で使用する電力と熱を2020年度までに自然エネルギー100%に切り 替える目標を掲げた。自然エネルギーの電力を 100%利用することを推進する国際イニシアチブの

「RE100」には、2014年に創設メンバーとして参画した。このほかに家具や梱包に使用する木材・紙・

段ボールを2020年度までに100%持続可能な調達先から仕入れることも決めた。

イケアグループのサステナビリティに対する取り組みを象徴するのが、ドイツ中西部のデュッセルド ルフ郊外で2017年10月に開業した“サステナブル・ストア”の第1号「IKEA Kaarst」である(写真3)。 この新型の店舗は最先端技術を駆使して環境性能を高めた設計になっていて、建築物の持続可能性を評 価する世界初の手法であるBREEAM(英国建築研究所建築物性能評価制度)で上位10%に入る高い評価 を受けた。

写真3.サステナブル・ストア「IKEA Kaarst」(ドイツ)の外観

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7 エネルギーに関しては従来の店舗と同様に屋上全体に太陽光パネルを設置したほか、太陽熱集熱器やバイオ ガスを利用した空調システムを導入した。エネルギー以外のユニークな試みとしては、雨水や店舗内の排水を 集めて屋外の施設やトイレで利用できるシステムがある。さらに店舗で発生する廃棄物は20種類に分類して リサイクルできるようになっていて、利用客にも最適な分別を心がけてもらうように働きかける。

サステナブル・ストアはドイツのIKEA Kaarstに続いて英国でも2019年の初めに開業する予定だ。2つの 店舗をパイロットプロジェクトに位置づけて、そこで得られた効果を検証しながら、世界各地の店舗のサステ ナビリティを高める対策に生かしていく。

イケアグループでは事業活動の拠点である店舗の温室効果ガス排出量を削減するのと合わせて、取引先や商 品の購入者を含むサプライチェーン全体でも温室効果ガスの削減に取り組む。イケアグループの事業活動に伴 う温室効果ガス排出量の内訳を見ると、最も多くを占めるのが製品の原材料である(図6)。サステナブル・ス トアで徹底したリサイクルを実施することも対策の1つだが、何と言っても原材料を供給するサプライヤーの 活動が排出量を大きく左右する。

図6.イケアグループのサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量の内訳(2016年度)

左から順に、原材料、食材、生産、商品輸送、店舗、顧客の移動、顧客の商品利用、商品廃棄

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8 イケアグループでは「IWAY」と呼ぶ行動規範を定めて、環境・労働条件・児童労働に関して守るべきこと を具体的に規定している。この行動規範では、サプライヤーに対する要求事項を示すとともに、サプライヤー がイケアに期待できることも提示する。環境面ではサプライヤーがどのような省エネ対策を実行しているかな どの報告を求める。イケア社内の監査担当者が報告の内容を確認して、不十分な場合にはイケアからのアドバ イスを含めて対策を実施するように依頼する。サプライヤーが誠実に対応しない場合には、取引を中止するこ ともある。

原材料のほかにも温室効果ガスを排出する大きな要因が2つある。店舗に来る利用客の交通手段と、利用客 が購入した製品の使用に伴う排出だ。大都市の郊外に大型店舗を展開するイケアでは、自動車で来店する利用 客が多い。このため世界各地の店舗で敷地内に充電器を設置して、電気自動車で来店することを促進している

(写真4)。太陽光や風力で発電した電力を電気自動車に供給することで、利用客の来店による温室効果ガスの 排出量を大幅に削減できる。

写真4.店舗の敷地内に設置した電気自動車用の充電器。中国(左)、ノルウェイ(右)

製品の使用時に排出する温室効果ガスを削減する対策としては、消費電 力の少ない製品をより多く販売していく。代表的な例がLED電球である。

スウェーデンのIKEA of Sweden が開発した低価格のLED電球を全世界 の店舗で1ユーロ(約130円)以下で販売している。

日本では1個99円で販売中だ。一般に売られているLED電球と比べて 破格の安さである(写真5)。手ごろな価格でLED電球を販売して、数多 くの家庭がLED電球に切り替えることを促す。

写真5.日本でも販売中の低価格LED電球

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9 イケアグループが全世界で販売したLED電球は2016年度の1年間に7900万個にのぼった。今後もエネル ギー消費量を削減するための投資を積極的に実行していく計画だ。イケアグループが掲げる「ピープル・アン ド・プラネット・ポジティブ」はさらに加速する。

*本レポートの内容はヒアリング実施日(下記)の時点の情報です。

*図と写真はイケア・ジャパンの提供によるものです(表1と写真1を除く)。

ヒアリング実施日:2018年10月9日

レポート作成者:石田雅也(自然エネルギー財団 自然エネルギービジネスグループマネージャー)

©自然エネルギー財団 Renewable Energy Institute 2018

参照

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