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(微) 生物にとって情報がなんであるかを考える前に,

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(1)

環境情報論3 井手慎司 10/11/00

4.(微)生物にとっての情報

(微)生物にとっての情報 (微)生物にとっての情報 (微)生物にとっての情報

4.1

シャノン シャノン シャノン シャノン・エントロピー ・エントロピー ・エントロピー ・エントロピー

(微) 生物にとって情報がなんであるかを考える前に,

先ず「情報」そのものの(情報理論)について見ておこ う.

「情報理論 情報理論 情報理論 情報理論 information theory

情報とは,日常用語としては ある事柄についての知 らせ をいうが,情報理論で取り扱う情報は,通信シ ステムや制御システム中を流れる科学や工学の対象と しての情報をいう.情報というものを自然科学ならび に工学の対象として研究すべきことを最初に提唱した

のは N.ウィーナーであった.ウィーナーは第 2 次世

界大戦中に高射砲の制御の問題を取り扱っている間に,

レーダーと高射砲から構成される制御システムの中に 情報の流れが重要な働きをしているのに気づき,さら に人間の神経系と運動に関しても類似の取扱いができ ることを見いだし,科学の対象としての情報の重要性 を指摘した

1

.しかしながら,具体的に情報理論を数 学を用いて体系化したのは,C.E.シャノンの功績であ る.1948 年に彼は《通信の数学的理論》という論文 をベル電話研究所の機関誌に発表して,その理論体系 のもつすばらしさで一躍脚光を浴びることになった.

シャノン自身は電気通信工学を専門とし,電気通信を 抽象化して,情報理論を体系化したのであるが,その モデルは人間と人間,あるいは人間と機械,機械と機 械などのあらゆるコミュニケーション過程に適用可能 である.このようにして電気通信工学だけでなく言語 学,社会学,生物学,医学,経済学などあらゆる学問 領域に大きな影響を与えている

2

. . .

シャノンは情報源から発生する情報量を確率論を用い て定量化した.すなわち,情報源から発生する記号の もっている情報量 I は,その記号の生起確率を

p

と すると,

で表されること

3

,またこの情報量の 定義から出発して,通信路のモデル化 を行うとともに通信路が運びうる情報量の限界,すな わち通信路容量を明らかにした.また情報源から発生 する情報を二元符号化する場合に,二元符号の平均符 号長には下限値があり,この下限値が情報源のエント ロピーに等しいこと(シャノンの第 1 基本定理),また 誤りのある通信路において,その通信路容量以下の伝 送速度では誤りのない符号化が存在すること(シャノ

1 サイバネティックス(Cybernetics)論の提唱――サイボー グという言葉も,サイバースペース,サイバーパンクもすべ てこの言葉から生まれた.

2 しかしシャノン自身は,彼の理論の応用がそんなに多くの 面で花開くかどうか疑問に思っていた.「どうやら,みんな はこの理論が多くのことの意味を説明すると考えているよう だが,それはできない相談だし,そんなつもりで考えた理論 ではないよ」(「科学の終焉」ジョン・ホーガン,徳間書店).

3 これを「情報エントロピー」と呼ぶ.たとえばコインを2 回なげて2回とも表がでる確率は1/4であるから,「2回と も表がでた」と知らせる情報(エントロピー)量は

2 4

log2 = ビットとなる.なおこの情報エントロピーにマイ ナスをつけたもの(-I)をネゲントロピーといい,その情報 量を得たことによって減少した「曖昧さ」と定義される.

ンの第 2 基本定理)などの重要な定理を証明した.シ ャノンの業績を記念して情報量の単位としては〈シャ ノン〉が採用されている(実際にはまだビットが用い られることも多い)」宮川洋,(c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved.

ウィーナーは高射砲の制御の研究からサイバネティッ クス論にたどり着いたという.ちなみにフォン・ノイ マンがモンテカルロ法による最初のコンピュータ・シ ミュレーションを行ったのは,原子爆弾や水素爆弾の 開発計画のな かであった .世界初の コンピュー タ

( ENIAC

4

: Electronic Numerical Integrator and Computer)もまた,弾道計算のために開発された.ガ リレオも大砲の弾道研究のなかで,時間と速度,加速 度との関係を見出したと言う.偉大な研究には常に戦 争の影がつきまとう.戦争とは人類にとって増えすぎ たΔA(人口増)を一気に減少させる究極の知恵なの か. . .

「シャノン シャノン シャノン シャノン(Claude Elwood Shannon)1916-

アメリカの応用数学者.通信理論を一般化して情報理 論をつくり上げた.ミシガン州ゲーロードに生まれ,

ミシガン大学を卒業した.1940 年にマサチューセッ ツ工科大学で数学の博士号を取得し,翌年からベル電 話研究所に勤めた.57 年にマサチューセッツ工科大 学教授となった.1948 年に発表した論文《通信の数 学的理論》により情報理論を開いた.彼は,熱力学に おける無秩序の度合であるエントロピーを援用して,

情報源に存在する不確実さの度合をエントロピーと呼 んだ.情報を受けとることにより知識の不確実さの度 合の減少する量をエントロピー減少量

5

と定義し,そ の単位を〈ビット〉と名付けた.情報源の符号化と冗 長度の問題を取り扱うとともに,通信路の伝送容量に 上限が存在すること(シャノンの定理)を指摘した.画 像のような情報量の多い信号の伝送にあたっては,情 報理論に従って適正な符号化を行わないと,必要以上 の周波数帯域幅を占用したり,逆にひずみを生ずるこ とになる.このようにシャノンが始めた情報理論は,

今日の通信技術に不可欠である.情報理論は拡張され て,暗号法,言語学,コンピューター設計などに広く 応用されている.シャノンはまた,ブール代数による スイッチ回路の解析やオートマトンについても重要な 貢 献 を し た 」 高 橋 雄 造 , (c) 1998 Hitachi Digital Heibonsha, All rights reserved.

「ウィーナーおよびシャノンが考えた情報は,質量お よびエネルギーにつづく第 3 の物理量として考え出さ れたものである」 ( 「環境と情報の社会学」富永健一,

日科技連)

4 1946 年 2 月 15 日,ペンシルベニア大学ムーアスクールに おいて,アメリカ陸軍の依頼によって大砲の弾道計算用に開 発されていた ENIAC が完成,公開された.それは J.P.エッ カートと J.W.モークリーの努力,2 年間にわたる 20 万人時 を超える人たちの汗,そして総額 49 万ドルにおよぶ開発費 の結晶であった.1 万 8000 本のぼる真空管消費電力 140 KW,

重量 30 トン,計算速度は在来の機械よりも圧倒的に速く,

弾道微分方程式の数値解は 10 桁の計算を 3 秒で行うという ものであった.

5 「ネゲントロピー」と呼ぶ.

p I =

log

2

1

(2)

4.2

生物学へのシャノン 生物学へのシャノン 生物学へのシャノン 生物学へのシャノン・エントロピーの応用 ・エントロピーの応用 ・エントロピーの応用 ・エントロピーの応用 情報理論を生物に応用した例としては,例えば「エン トロピー進化率」がある.これは遺伝子の DNA 配列 を情報としてとらえ,その情報量をシャノン・エント ロピーを援用した測度で評価することによって,進化 論的系統樹の作成や遺伝的差異(遺伝距離)の推定に 役立てようとするものである.(

http://www.nig.ac.jp/labs/

AR96ja/e/H/Hd3.html エントロピー進化率の考案:宮崎智,

菅原秀明,大矢雅則1(1東京理科大学)

また,アミノ酸配列からタンパク質の機能に関する特 徴的情報を抽出するための手段として,次式のような 情報エントロピー(S)を提案している例もある. (

http:

//wwwsoc.nacsis.ac.jp/jacs/JJCS/v4/n2/p193_202/index.html#1

S = − å p

i

log

2

p

i

ここで, p

i

はあるポジションにおける

i

番目のアミ ノ酸の出現確率を表わしており, p

i

= n

i

/ N で定義 される. n

i

はそのポジションでの

i

番目のアミノ酸の 総数であり, N はそのポジションの長さを示してい る.また,タンパク質の一次元配列は 20 種類のアミ ノ酸で表わされるため,i は 1 から 20 までとなる.

この定義によれば,共通する機能をもつ複数のタンパ ク質のある特定のポジションに必ず同じアミノ酸が現 われるならば,出現確率 p

i

= 1 1 / となり,複雑度(S)

は 0 となる(つまりそのアミノ酸配列がそれらタンパ ク質の共通する機能を決定している部位である).そ して,アミノ酸配列を決定しているものもまた遺伝子 情報である

6

考えてみれば,生命の生命たる所以は,自己増殖(自 分自身を複製)するところにある.その際,もっとも 重要となるのが遺伝子という「情報」だろう.また,

自己複製という能力の獲得によって誕生した生命にと って,その後の進化とは,次に見ていくように,絶え 間ない遺伝子情報量の増加,すなわち情報エントロピ ーの減少(ネゲントロピーの増大)という歴史であっ た.

閑談

『◇エントロピーと情報量◇

物質のマクロとしての性質は,物質を構成する原子や 分子のミクロな配位によって決定されている. そして,

分子が乱雑に配置されているほど, 配位の組合せ数 (場 合の数)が多く,よりエントロピーが高いと考える.

例えば,ある閉じられた空間の中に

N

個の分子があ ったとすると,これらの分子が取りうる配位の組合せ

(場合の数 W )は約 N

N

となる.

そして,この場合の数 W とエントロピー

S

との間に 以下のような関係式が成り立つことをボルツマンが証 明している.

W k S = ⋅ log

e

64種類の DNA 中の塩基が 3 つ 1 組で一つのアミノ酸を決定 している.

ここで

k

はボルツマン定数.このように場合の組合せ の増加(かけ算)をエントロピーの増加(足し算)と して表すところから, エントロピーは対数表記となる.

また,このような「場合の数」として物質の状態を捉 えるエントロピーの概念から「情報」をながめると,

エントロピーが低いほど,場合の数が少ない,すなわ ち情報量がより多いことになる.

熱力学的エントロピーの持つ情報量は 1 bit = 0 . 693 k で表される. 』

「エントロピー入門」杉本大一郎,中公新書

補足 補足 補足

補足(エントロピーとは) (エントロピーとは) (エントロピーとは) (エントロピーとは)

女性のお化粧を例にとろう(お化粧とは文字通り「化 ける」ことであり,その意味ではまさに化学である) . この「化ける」は,お化粧を落とせば,もとのスッピ ンに戻るわけであるから,このような反応を「可逆的」

(元に戻れる)という.しかしよく考えてみると,こ の反応には,可逆といいながら,進みやすい方向とい うものが存在する.一般的に考えれば,化粧をするこ とに費やされるエネルギー(われわれ男性が驚嘆する しかない多大なエネルギー)は,化粧を落とすことに 必要なエネルギーよりもはるかに大きい.平たく言え ば,化粧するほうが落とすよりはるかに大変だ.

また「お化粧」を別の次元から眺めると,これは(顔 の)「秩序」の構築である.そして化粧を落とすとは つまり「秩序」の崩壊であり,無秩序への回帰である.

つまり,どうやら自然とは,秩序を構築するより,無 秩序に戻るほうが簡単な仕組みになっているらしい.

上記のような反応の方向性を説明するのが熱力学の第 二法則である.ただし,やっかいなことに,この進み やすさは,事物の置かれた状況によって変化する.た とえば,水は通常の温度範囲では液体の状態でいよう とするが,零下では凍ろうとするし,また,沸点を超 えれば気体に変わろうとする.いずれも水が置かれて いる状況(温度)によって,自発的に変化しようとす る方向性が定まっており,その方向性に逆行しようと すると,エネルギーの投入が必要となる(暑い夏,外 気より涼しい室温をさらに下げようとすれば,電気を 使ったエアコンが必要となるように) .

エントロピーという概念の便利なところは,それらの 状況による現象をすべてひっくるめて「エントロピー が増大する方向へ向かっている」という一言で片づけ られる点にある.

ただし,「エントロピーがなぜ増大するのか」という 質問に簡単に答えることは難しい.この授業では,自 然の状態で,自発的に増大するものをエントロピーと 定義しているのだ,とくらいに考えてほしい.

4.3

生命の起源と進化 生命の起源と進化 生命の起源と進化 生命の起源と進化 以下,

「 http://mtlab.biol.tsukuba.ac.jp/WWW/evolution/stage1a.

(3)

html」に一部修正加筆.授業中に見せた生命進化の概 念図はすべて左記のサイトのものを利用させてもらい ました.

生命の起源 生命の起源 生命の起源 生命の起源

(ニュートン,1998 年 11 月号)

「生命のみなもとは今から約 40 億年前に原始の海で 誕生したと考えられている.その当時の原始の地球に は,アンモニア,メタン,水素からなる原始の大気と,

液体の水からなる原始の海が存在していた.

大気中での雷の放電や強い紫外線,宇宙線,火山や熱 水噴出孔などの熱によって,原始の海でアミノ酸やモ ノヌクレオチドなどの有機物が合成された.原始地球 に降り注ぐ隕石や彗星中にもアミノ酸などの有機物が 含まれていただろう.アミノ酸はつながってタンパク 質を形成する.モノヌクレオチドは集合して遺伝情報

を担う RNA(リボ核酸)を形成する

7

.タンパク質と

RNA が,脂質やタンパク質などの膜に包まれて誕生 したのが,原始生命である.」これが現在考えられて いる生命誕生のおおまかなシナリオである.

原始の地球上において,アミノ酸などの有機物が上述 のシナリオによって合成されたことを最初に実証した

(実験室内で再現してみせた)のは,スタンリー・ミ ラーだった.1953 年,当時,彼はまだ 23 歳の大学院 生だった.

ミラーは,封印したガラスの容器に,数リッターのメ タンとアンモニアと水素(つまり原始大気) ,そして,

いくらかの水(原始海)を満たし,充填したガスに放 電装置で電気の火花を通してやるとともに(稲妻),

電熱コイルで水を沸騰させ続けた(火山).すると数 日後,容器内に,多くのアミノ酸を含む赤いネバネバ した物体が現れたのだった.

原始の地球において,このような非生命過程を経て合 成された有機物リッチの液体を「原始のスープ」

8

と 呼んでいる.したがって,初期の生命はその栄養分を この「原始のスープ」に依存する「従属栄養」型の単 純なものだったはずである.

ただし,「原始のスープ」からいかに最初の生命(原 分子)が誕生したかは未だ闇の中である.上述の RNA を原分子とするシナリオも一つの有力な仮説にすぎな い.この議論が決着するときとは,つまり人間がその 手によって「生命」を創り出した瞬間である――しか し,それが意味するものは. . .

資源の枯渇と従属栄養の多様化 資源の枯渇と従属栄養の多様化 資源の枯渇と従属栄養の多様化 資源の枯渇と従属栄養の多様化

生命の誕生からまもなく,蓄えられていた「原始のス ープ」が枯渇しはじめた.これによって,一部の細胞 は「独立栄養」(自らが栄養を作りだす道)へと歩み 始める.また一方,一部の細胞は,他の細胞を餌(栄 養 源 ) と す る 「 食 細 胞 運 動 能 ( pinocytosis,

7 この最初の生命(?)体を「原(ウル)分子(ur‑molecules)」 と呼ぶ.

8 「原始のスープprimitive soup/primordial soup」J.B.S.

ホールデンの命名による.

phagocytosis) 」を獲得することになる.この食細胞運

動能によって,細胞が大型化する道が開かれた.

独立栄養 独立栄養 独立栄養

独立栄養・核の進化 ・核の進化 ・核の進化 ・核の進化

「原始のスープ」(=資源)の枯渇は最初に化学合成 により栄養物を自ら合成する系統を誕生させた. 一方,

大型化への道を歩み始めた系統は多量の遺伝情報を蓄 えることができる「核」を発明し,さらなる大型化へ の足場を確保したのだった.

光合成の誕生と酸素公害 光合成の誕生と酸素公害 光合成の誕生と酸素公害 光合成の誕生と酸素公害

化学合成生物の一部は,さらにその機能を進化させ,

地上に豊富にある水を水素源とし,太陽光線をそのエ ネルギー源とする新しい炭酸同化システム,すなわち

「光合成回路」を産み出した(シアノバクテリア).

これによって生物界のバイオマスが飛躍的に増大した.

また,より多くの「光」を求めて生命はやがて地上へ と進出していくことになる.

しかし,一方で光合成の誕生は他の生物に深刻な影響 を与えた.光合成では,水から水素を取り出した後に 残った酸素が気体分子として放出されるが,この酸素 が嫌気的な(酸素のない)環境で生まれた初期の生命 体には有害な「環境汚染」として作用したのだ.その 結果,多くの生物がここで死滅した.しかし,一部の 生物は嫌気的環境へ逃れることでこの難を避け,また あるものは酸素環境に適応した新しい機能,「酸素呼 吸能」を獲得したのだった.(未だに人間にとって酸 素は必要悪である.もちろん酸素なしには生きられな いが,酸素の強力な酸化力は同時に,動脈硬化や老化 などを引き起こす原因でもある. )

三界の成立 三界の成立 三界の成立 三界の成立

光合成の誕生が契機となり,生物界は昔ながらの生活 を営む嫌気性の古細菌と,資源枯渇に適応した新型タ イプの真正細菌(好気性・光合成細菌を含む) ,そし て, それらの細菌類を食物とする大型細胞の真核生物,

という3つのタイプに分化していった.

この後,真核細胞は,その食作用を通じて(もしくは 細菌類の,より積極的なアプローチである寄生によっ て),真正細菌類を細胞内に共存させる共生進化への 道を歩み始めた.

一次共生による多様化 一次共生による多様化 一次共生による多様化 一次共生による多様化

原始真核細胞と,真正細菌類との細胞内共生は,様々 な形で起きたと想像される.その一つのパターンが酸 素呼吸を行う好気性真正細菌を取り込んで,それを消 化してしまうのではなく,細胞内に留めて,その高度 なエネルギー生産システムを利用させてもらう方法で ある.これが後にミトコンドリアとなる.

一方,一部の真核細胞は,光合成真正細菌を取り込ん で自身が光合成生物へと変身した. 多くの真核細胞は,

ミトコンドリアタイプの共生と前後して光合成細菌を

二重に共生させている.このとき共生した光合成細菌

が後に葉緑体となる.また,一部の真核細胞はミトコ

ンドリアや葉緑体を共生させることなしに今日に至っ

ている(アーケゾア) .

(4)

ここでは,これらの共生進化が「利他」の萌芽であっ たとだけ指摘しておこう.

Basal eukaryotes

の登場 の登場 の登場 の登場

ミトコンドリア,葉緑体についで(もしくは相前後し て),運動性の高いスピロヘータなどの細菌を内部共 生させるものが現れた. このスピロヘータ様の細菌は,

やがて,鞭毛・繊毛・細胞分裂装置などの重要な細胞 運動性の器官へと進化していく.

好気性細菌,光合成細菌,そして運動性細菌の共生に よって,真核生物界は,それらの様々な組み合わせか らなる多様な生物群を産み出していった(この頃登場 し,後の真核生物のさらなる多様化の祖先となったも のを Basal Eukaryotes と呼ぶ) .

二次共生と多細胞化への道 二次共生と多細胞化への道 二次共生と多細胞化への道 二次共生と多細胞化への道

真核生物の多様化は,当然のことながら「真核生物を 食べる真核生物」を登場させた.したがって,真核生 物と真正細菌との時と同様に,真核生物どうしの細胞 内共生も促された.その結果,ミトコンドリアや葉緑 体として真正細菌を共生させた光合成真核生物をさら に共生させた二次共生生物が誕生している(クロミス タ界) .

また,この頃,細胞の大型化とは別の方法で大型化を 計ったグループがいた.多細胞生物の登場である.そ れらはやがて動物・菌類・植物界という世界を誕生さ せることになる.

ちなみに米科学誌「サイエンス」(10/02/98 発行)に よると,最近,インドにおいて,地球最古の多細胞生 物のはった痕跡(化石)が発見されたそうである(上 写真) .化石は約 11 億年前の地層から見つかっている.

これまででもっとも古い多細胞生物の化石はカンブリ ア紀直前の 5.8 億年前のもので,今回の発見によって 一挙に 5 億年以上古くなったことになる.

生命の進化の歴史をたどることは,ここまでにしてお くが,見落としてはならない重要な点がある.それは 進化とは「結果」にすぎないということだ.生物たち が合目的に進化していったわけではない.あくまでも われわれが進化と呼ぶ形質を獲得した生物たちが,結 果としてその子孫を残してきたのだ.

4.4

ミトコンドリア ミトコンドリア ミトコンドリア ミトコンドリア

ミトコンドリアとは,われわれ高等生物の細胞(細胞 質)中に存在する小器官であり,その役割は,細胞が 吸収した栄養分を酸素によって酸化分解し,それによ って生じたエネルギーを細胞に供給することである.

呼吸反応全体のなかでは「クエン酸回路」と「電子伝 達系」を担っており,ミトコンドリアによって産出さ れるエネルギー量は,グルコース 1 分子あたり 36 分

子の ATP,これに対して,外部の解糖系で生み出さ

れる ATP はわずか 2 分子にすぎない.

形としてはソーセージによく似ている.先にも述べた ように, このミトコンドリアはわれわれの遠い祖先が,

光合成によった生まれた新たな好気的(酸素)環境に 適応するために,細胞内に共生させた真正細菌だと言 われている.今から 15 億年前のことである.

もともと別個の生命体であったため,ミトコンドリア はわれわれの細胞内にありながら独自の DNA をもっ ている.さらにこのミトコンドリア DNA は,不思議 なことに,父親からではなく,母親からのみ子どもへ と受け継がれていく.

この特徴を利用して,現在の人類のミトコンドリア DNA をさかのぼっていくと 10-30 万年前のアフリカ の女性にたどり着くと言う.この仮説を「ミトコンド リア・イブ仮説」と呼び,すべての人類の祖先である この猿人をミトコンドリア・イブと呼んでいる

9

. 霊長類の進化の過程では, 少なくとも 2 回にわたって,

ミトコンドリア DNA の一部が核へ移動する事件がお こっているそうである.このためミトコンドリア自体 をつくる DNA はわれわれの核内にある.ミトコンド リア DNA がなくても,ミトコンドリアは細胞内に作 られるのである.しかし,肝心の呼吸機能をつかさど るタンパク質だけは,ミトコンドリア DNA でないと つくられないようである. (葉緑体はその DNA がす べて核へ移動した. )

ミトコンドリア DNA が母系遺伝(非メンデル遺伝)

する理由がまたおもしろい.一つには,精子というも のが元々,ほとんどが遺伝情報のみでできあがってい る細胞体であるからだ.ところがいくら精子と言って も,運動能のためにいくらからのミトコンドリアは抱 え込んでいる.確かにその総数としては,卵子中のミ トコンドリアに比べ, わずか1 万分の1にすぎないが. . . しかし,卵子に入ってきたこれら父系のミトコンドリ

9 1987年,米カリフォルニア大のアラン・ウイルソンと同

僚レベッカ・キャン,マーク・ストーンキングは「人間のミ トコンドリアDNAの遺伝子配列の違いを世界の様々な人種 間で比較し計算した結果,現代人は約20万年前アフリカの たった1人の女性から生まれた」とする学説を発表した.ミ トコンドリアDNAが母系遺伝しかしない事実と,mtDNA の突然変異の速度を「分子時計」として利用することによっ て人類の共通の祖先を推定したものだ.

 「植物にもイブがいた」:米国,日本,英国など12カ国 の科学者約200人が参加した「緑色植物系統研究チーム」

によると,草木や花,シダ,コケ類などの陸上のすべての植 物は,約4億5000万年前に淡水に生息していた,たった一 種類の原始植物から分化したらしいことを発表した

(8/4/99).

(5)

ア DNA は,受精卵の発生初期に何らかの排除機能が 働いて,消失してしまう.ミトコンドリアの宿主とし てのわれわれの細胞が,寄生させているミトコンドリ ア同士の DNA 交配(進化)を恐れての戦略だとの説 もある.

このミトコンドリアが宿主であるわれわれ人類につい に反乱を起こしたとするのが,小説「パラサイト・イ ヴ」である(瀬名秀明著,角川書店,第 2 回日本ホラ ー小説大賞受賞作) .映画化もされている(葉月里緒 菜,三上博史主演). ..でも,どうして葉月さんの胸 には乳首がなかったのでしょうか?

このミトコンドリア DNA が有名になったのがニコラ イ二世一家の遺体鑑定の事件である.

ロマノフ家最後の皇帝ニコライ二世

10

は,1918 年 7 月 17 日未明,シベリアのエカテリンブルグで革命政権 の手によって,その妻と皇太子,それに四人の皇女と ともに暗殺された. (皇后アレクサンドラ,皇太子ア レクセイ,皇女オルガ,タチアナ,マリア,アナスタ シア)

ソビエト時代の資料によると「遺体は焼かれ,森に埋 められた」そうである.しかし,真相は闇の中であり,

やっとソ連崩壊後の 1991 年になって「ニコライ二世 一家の遺体とみられる骨がみつかった」との発表があ った.

この骨の鑑定に決定的な役割を担ったのがミトコンド リア DNA である.アレクサンドラ皇后が英国のビク トリア女王の孫娘であったことから,ビクトリア女王 の玄孫(やしゃご)にあたるエジバラ公フィリップ殿 下(現エリザベス女王の旦那)からミトコンドリア DNA の提供を受け,それらの比較を行ったそうであ る.その結果,発見された遺体は 99.99%の確率でニ コライ二世一家のものだと鑑定された.

ところが,四女アナスタシアと末っ子で血友病だった 皇太子アレクセイの骨だけは発見されていない.暗殺 者たちの供述によれば,二人は火葬され,骨はロシア の大地に戻ったというが. . .

しかし同時に,四女アナスタシアは実は暗殺を逃れて 西側へ脱出したという伝説が囁かれていた.事実,皇 女アナスタシアを自称する女性がアメリカで現れてい る( 「アナスタシア」20 世紀フォックス) .

ちなみにニコライ二世は日本との関わりがとても深い.

皇太子時代,日本を訪れているが,そのとき起こった のが「大津事件」

11

である.ニコライ二世はまた日露

10 ロシア正教会はニコライ二世とその家族を受難者として

「聖人」に認定することをきめた(8/14/00).

11 「大津事件」:1891 年 5 月 11 日,ロシア皇太子ニコライ とギリシャ皇子ジョージの一行は,琉水取水口と琵琶湖を見 物し,県庁で昼食ののち小唐崎町から大工町にさしかかって いる.このとき,警備にあたっていた巡査津田三蔵が突然ロ シア皇太子に斬りつけた.時刻は午後1時50分頃.これが のちに日本全体を揺がすことになった大津事件(湖南事変)

の発である.

戦争時のロシア皇帝でもある.しかし,1917 年のロ

シア革命によって退位させられ,シベリアのエカテリ

ンブルクに幽閉されていたときに上述の悲劇は起こっ

た.

参照

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