厚生労働科学研究費補助金 医療技術実用化総合研究事業(臨床研究・治験推進研究事業)
「重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病を対象としたドネペジルの予後改善効果に関する研究」
分担研究報告書
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パーキンソン病での眼球運動障害
研究分担者:宇川義一1) 研究協力者:榎本博之1)
1)福島県立医科大学・医学部・神経内科学講座
A:研究目的
嗅覚障害によりpremotor period のパーキ ンソン病診断を試みる本研究の中で、同様に 早期診断に眼球運動が役立つか、眼球運動障 害の進行と他の症状が関連するかを検討する 意義は大きい。そこで、眼球運動障害に着目 して本年度は研究を施行した。
B:研究方法
今回は、パーキンソン病での眼球運動障害 に関する、これまでの我々の研究と他施設か らの論文をレビューする事により、パーキン ソン病患者での眼球運動障害の機序に迫った。
C:研究結果
一般的にsaccadeは、検査をおこなう測定方
法から、visually guided saccadeとmemory guided saccadeの2種類がある。前者は、タ ーゲットを見てすぐに運動を起こすタスクで、
後者は記憶に頼り運動を起こすものである。
研究要旨
パーキンソン病の早期診断のバイオマーカーとして嗅覚障害を本研究班では、取り上げて いる。同様な観点から、眼球運動障害が早期診断のバイオマーカーとならないかと言う研 究を施行した。我々のこれまでの論文とその他にパーキン病での眼球運動機能を解析した 論文をレビューして、以下の結論を得た。眼球運動障害に3つの要素がある。上丘からの 脱抑制により生じるvisually guided saccade, 前頭葉からのインプットで生じるmemory
guided saccade, もう一つとして上丘からの脳幹眼球運動中枢への抑制障害で生じる、意図
せず眼球が動いてしまうreflexive saccadeである。これら各々が、四肢の運動症状を対応 しており、上下肢・体幹などの症状出現前に、眼球運動障害が生じるかを検討する事、そ の症状と嗅覚障害の関連を見る事により、パーキンソン病のpremotor period の診断の精 度を上げることが出来る可能性がある。
- 15 - パーキンソン病患者では、早期患者では後者 は障害されるが、前者は保たれる傾向が見ら れた。
進行した患者では、両者とも障害される傾 向があった。一方、本来動いていけない時に、
ついsaccadeをしてしまうreflexive saccade の出現頻度が進行したパーキンソン患者では 増加していた。
D:考察
これらの結果から、眼球運動を四肢の運動
とのanalogy として以下の様に考える事が
理解しやすいと提案したい。
memory guided saccadeは、internally triggered movement の一つであり、大脳基 底核が運動発現に大きく寄与する運動であり、
パーキンソン病では早期から障害される。
visually guided saccadeは、externally triggered movementの一つであり、小脳をは じめとして大脳基底核以外のシステムの関与 もかなりあるタスクと考える。そこで、末期 になるまで障害をまぬがれる。この現象は、
四肢でのparadoxial gait の機序と類似して いる。歩行において、自分で歩き出すのは internally triggered movementであり、パー キンソン病では障害が強い。それに対して、
眼前の線をみて歩行を開始する運動は、線と いう外からの刺激を利用したexternally triggered movementである。そこで、眼前の 線をみるという外からの刺激を利用して、障 害の少ないシステムを使用して、歩行が改善 するという解釈が、paradoxial gaitの機序に 関する説明と考える。
一方、reflexive saccadeは本来抑制が効い ているはずの眼球運動が予期せず出現してし まう現象で、直接路の予期せぬ脱抑制と考え
る事ができる。この現象は、四肢で言えば、
ジスキネジアであり、やはりパーキンソン病 で出現する事がある。最適な運動の選択の障 害と考えるのが、適切であろう。
E:結論
memory guided saccadeタスクの検査によ り、パーキンソン病患者の早期診断ができる 可能性がある。また、眼球運動の障害パター ンの経過を追うことにより、疾患の進行状況 を定量的に判定出来る可能性もあり、治療経 過を追うバイオマーカーとして眼球運動を用 いる事ができるであろう。
F:健康危険情報 なし
G:研究発表 1:論文発表
1) Terao Y, Fukuda H, Shirota Y, Yugeta A, Yoshida M, Suzuki M, Hanajima R, Nomura Y, Segawa M, Tsuji S, Ugawa Y. Deterioration of horizontal saccades in progressive supranuclear palsy. Clin Neurophysiol 124: 354-363, 2013
2) Yasuo Terao, Hideki Fukuda,
Yoshikazu Ugawa, Okihide Hikosaka.
New perspectives on the
pathophysiology of Parkinson’s disease as assessed by saccade performance: A clinical review. Clinical
Neurophysiology, Volume 124, Issue 8, August 2013, Pages 1491-1506
3) Hanajima R, Terao Y, Shirota Y, Ohminami S, Tsutsumi R Shimizu T,
- 16 - Tanaka N, Okabe S, Tsuji S, Ugawa
YHanajima R, Terao Y, Shirota Y, Ohminami S, Tsutsumi R Shimizu T, Tanaka N, Okabe S, Tsuji S, Ugawa Y.
Triad-conditioning transcranial magnetic stimulation in Parkinson's disease. Brain Stimul. 7(1):74-9, 2014
2:学会発表 なし
H:知的所有権の取得状況(予定を含む)
1:特許取得 なし
2:実用新案登録 なし
3:その他 なし