ウェブアクセシビリティ向上のためのフレームワークの設計と実装
Design and Implementation of a frameworkfor websites to improve web accessibility
1W100279-7
鈴木 穂高 指導教員 菅野 由弘 教授
SUZUKI Hodaka Prof. KANNO Yoshihiro概要:近年のめざましいウェブの発達により、ビデオ通話、銀行決済、選挙運動など様々なことがウェブを通じ て手軽に行えるようになった。しかし、その一方で、人によって得られる情報に差ができてしまういわゆるディ ジタル・ディバイドが併発問題として鮮明化してきており、例えば、満足にブラウズすることが難しい高齢者や 視覚障害者などがこれに該当する。こうした背景から、高いウェブアクセシビリティを維持したウェブページ制 作を促す声が広まってきたが、現状、それを達成できているウェブページはあまりにも少ない。本論文では、こ の問題の解決を図るため、効率よくウェブアクセシビリティの高いページを制作するためのフレームワークを設 計・実装し、同時に今後の課題や展望に関する考察を行った。
キーワード:ウェブ、アクセシビリティ、フレームワーク、ディジタル・ディバイド Keywords:web, accessibility, framework, Digital Divide
1. はじめに
日本国民の約10人に8人近くの人たちがイン ターネットを利用している現在、娯楽から生活に 必要な事務手続きまでほとんどがウェブ上で解 決できるようになっており、今後もインターネッ トが私たちの生活に及ぼす影響は大きいと考え られる。しかし、すべての人が同等にインターネ ットを利用できるかというとそうではない。人に よって得られる情報量に格差が生じてしまう、い わゆるディジタル・ディバイドが問題となってい る。その原因のひとつに、加齢や障害の有無など 個人間の格差が挙げられる。新しい情報技術の受 け入れが難しい高齢者や、身体部位の欠損や損傷、
あるいは視覚障害によって情報端末・機器の使用 が困難になった障害者は、音声ブラウザのような 支援ツールがなければウェブから情報を取得す ることは難しい。
支援ツールを使って高齢者や視覚障害者が安 定的にブラウズできるようにするためには、ウェ ブ制作者側の配慮が必要不可欠なのだが、実際に 高齢者や障害者に配慮した形になっているウェ ブページはあまりにも少ない。国の省庁や介護施
設のウェブページなど、高齢者や障害者が訪れる 可能性の高いページでさえも対応できていない のが現状だ。この原因として、ウェブ制作者が高 齢者、障害者に配慮したウェブページを制作する ための必要な要素を知識として理解していない こと、ページを障害者に対応させることが多大な 労力コストにつながりかねないことなどが考え られる。この問題を解消すべく、高いアクセシビ リティを維持したウェブページを誰でも効率よ く制作するためのフレームワークbfreeを設計、
実装した。
2. 設計
フレームワークを制作するに当たって、今回は
WCAG2.0を参照することにする。WCAG2.0は、
W3Cにより策定されたウェブコンテンツをより アクセシブルにするためのガイドラインで、バリ アフリーに関して特別な知識を持たない人であ っても、達成基準が導入されていることにより、
ウェブアクセシビリティを客観的に評価できる ようになっている。bfreeでは、非コンテンツ要 素への代替テキストの付与といったコーディン
グ段階で対応することのできる問題点を残さな いことを目標に開発し、これと評価ツールを併用 することで、効率的にウェブアクセシビリティの 向上を狙う。
3. 実装
WCAG2.0で定められた12のガイドラインと
その達成基準に照らし合わせながら、対応するコ ンポーネントを実装していく。現代のトレンドも 考慮して、簡単にレスポンシブウェブデザインを 実現できる、12グリッドシステムも併せて導入 した。
4. 評価
ウェブ制作経験者にbfreeを使って実際にウェ ブページを制作してもらった。制作したウェブペ ージをアクセシビリティ評価ツールaDesignerで 検証することにより、bfreeで達成すべき目標は クリアできているのかをテストした。また、SUS
(System Usability Scale)を用いてbfreeの使いや すさ、わかりやすさ等のユーザビリティを評価し た。
図1 bfreeを使って制作したウェブページ(一部
抜粋)
ユーザーテストにより、通常のウェブページを 制作する感覚でアクセシビリティの高いページ を制作することができた、ひとつひとつのコンポ
ーネントがWCAG2.0に対応しているため安心し て制作できたなどの評価が得られた。より簡単に アクセシビリティの高い制作を実現できたとい う意味では、bfreeの目標にも沿うので長所とし て受け止めても良いだろう。しかし一方で、サイ トの外観が似通ってしまい個性が損なわれる傾 向にある、コンポーネントの種類をもう少し増や してほしいといったような改善点も聞かれた。
5. おわりに
インターネットとは切っても切れない関係に ある現代の若者が高齢者になっていく将来を想 像すれば、ウェブアクセシビリティを考慮したコ ーディングは、今のレスポンシブデザインのよう にウェブ制作者にとって必ず身につけなければ ならない技術のひとつになるだろう。今回はその 足がかりとしてbfreeを設計したが、デザインと ウェブアクセシビリティの両立、より効率的な制 作フローの確立など、まだまだ解決しなければな らないことは多い。浮かび上がる問題をひとつひ とつ克服しながら将来のウェブ世界をより便利 なものにしていくことが求められている。
参考
[1] Webアクセシビリティ -標準準拠でアクセシ
ブルなサイトを構築/管理するための考え方と実 践, Shawn Lawton Henry 著(渡辺隆行 訳)
[2] WAIC, WCAG2.0解説書,
http://waic.jp/docs/UNDERSTANDING-WCAG20/O verview.html
[3] 総務省, ホームページのバリアフリー化の推 進に関する調査結果報告書(HTML版、本編)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/hyouka _kansi_n/ketsuka/houkoku/33207_02_01.html