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摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の設計・施工方法に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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62-1

摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の設計・施工方法に関する研究

大久保 徳洋 1. 序 本研究は,コンクリートブロックを乾式工法で組積 した壁体を鉄骨ラーメン構造などの比較的剛性の低 い建築物の制振壁として利用する方法を開発するこ とを目的として行っている.この制振システムに用い るコンクリートブロック壁はモルタルなどの接着剤 を用いずに組積するため,分別解体が容易で,解体で 得られた材料をリユースやリサイクルすることが可 能である. 本修士論文の研究では,摩擦抵抗型乾式ブロック造 制振壁の適切な設計・施工手法をまとめることを目的 とし,設計・施工マニュアル試案を作成した.マニュ アルの使用により,合理的で経済的な設計・施工の普 遍化を図ると共に,建物制振性能の向上を図る.技術 に関する研究の進展や材料の進歩などに即応し,検討 を経て成果を得たものは,速やかにマニュアルに織り 込むものとする.本論文には,所属する研究室で今ま で行われてきた乾式工法を用いた摩擦制振システム の関発研究で得られた知見をまとめ,反映させた設 計・施工法試案を掲載した. 2. 乾式工法を用いた摩擦制振システム 所属する研究室ではこれまで,リユースやリサイク ルリサイクルなどの資源循環に寄与する建築構造体 として,摩擦抵抗型乾式組積構造(SRB-DUP 構造: Steel Reinforced Brick structure based on Distributed Unbond Prestress theory)を開発し,その力学特性の解 明や設計方法の検討を行ってきた 1).加えて,この SRB-DUP 構造の壁体やプレキャストコンクリートの 壁体を利用した摩擦制振システムの開発 2) を行って きた. SRB-DUP 制振壁と実大柱梁フレームを組み合わせ た試験体の水平載荷実験 3)(図 1)を行った結果,長 所として,滑り層の制御は可能(図 2)で摩擦ダンパ ーとして利用できる履歴特性を有すること,面外方向 への損傷が少なく面外方向に対する変形追随性能が 高いこと,また,壁体の施工が人力で可能であること が確認できた.短所としては,完全弾塑性型のモデル 化が難しいことや施工工数が多いことが挙げられた. 乾式取付によって PC 版を摩擦ダンパーの構成要素 として利用する工法の研究 4)では,面内剛性が比較的 大きく復元力特性が剛塑性型に比較的近いため,制振 要素として利用しやすいこと,また施工工数が少ない ことが長所として挙げられた.短所としては,面外曲 げによる壁脚部の破壊が生じやすいことや施工には 重機が必要であることが挙げられた. 3. 摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁を用いた制振 システム 3.1 摩擦抵抗型ブロック造制振壁の概要 前項で示した乾式工法を用いた摩擦制振システム の長所を融合し,構造性能,施工性,コスト面などの 観点からより優れた摩擦制振システムを提案するこ とを目的として実験や解析を行っている摩擦抵抗型 乾式ブロック造制振壁について以下に説明する. 乾式ブロック造制振壁の概要を図 3 に示す.この制 振壁は,水平方向に補強コンクリートブロック造壁体 の横筋量に相当する補強鋼板を配し,その付近で縦筋 に相当する鋼製のボルトを高ナットで締め付ける.そ の上部に次のボルトを接合し,コンクリートブロック にそれらのボルトを通しながらブロックを破れ目地 グラウト材 固定用孔 固定用鋼材 図 2 図 1 に示す試験体上層部(すべり層)の詳細 1 5 6 1 1 8 7 7 1540 2410 図 1 SRB-DUP 制振壁の実大柱梁フレーム試験体図

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62-2 状に組積して構成する.使用するコンクリートブロッ クはプレス成形によりブロック内に高ナットを収め るスペースを確保している.乾式組積の手順は基本的 に SRB-DUP 構造に準じたものである.壁体の各層に は締め付けによるプレストレスが導入されるが,壁体 最上層直下の層までは比較的大きなプレストレスを 導入する.想定される鉄骨柱梁フレームの H 形鋼梁に は接合用山形鋼を固定しておき,最上層及びその直下 の層のブロック間で,山形鋼とブロック壁体を摩擦接 合により一体化する.このとき最上層には比較的小さ なプレストレスを導入する.これにより,地震等の外 力作用時には,壁体と山形鋼の間に摩擦滑りが生じ, 壁体本体の損傷を制御しながら,外力エネルギーを吸 収することが可能となる.試験体の構成要素のうち, コンクリートブロックと水平補強鋼板の形状を図 4, 図 5,試験体の構成を図 6 に示す. 3.2 性状把握実験の結果と考察の概要 前項で述べた壁体に摺動材となる山形鋼を介して 接合部がピンの鋼製門型フレームを接合した試験体 へ水平載荷実験を行った結果,SRB-DUP 制振壁の実 大柱梁フレームの水平載荷実験と同様に,滑り層の制 御は可能で摩擦ダンパーとして利用できる履歴特性 を有することが確認された.また,壁体の上部と門型 フレームが一体となって変位し,ブロックに曲げ破壊 が生じるときの水平荷重は,既往の研究3)の算定式で 概算できることが確認された. また,同様の試験体 2 構面で構成される制振機構の 振動実験を行い,履歴応答より試験体の履歴特性を調 べ,履歴曲線のモデル化を行った結果,この制振機構 は制振効果の期待できるシステムであることが確認 された.また,この振動実験の入力波のうち,1995 年 に発生した兵庫県南部地震における JMA 神戸波の 120%の入力を行った結果,ブロック数個にひび割れが 生じたのみで壁体に目立った損傷がなかったことも 確認されている.しかし,材料寸法精度確保と壁体組 積精度を中心に施工管理が課題となった. さらに,施工面やコスト面を考慮して,摺動材にあ たる山形鋼の改良を行った試験体の水平載荷実験を 行った結果,前述の実験と同様に滑り層の制御は可能 で制振効果が期待できることが確認できた.しかし, 最上層ボルトの導入プレストレスを徐々に大きくし ていくと,あるところで壁体全体が破壊する前に,壁 体最上層のブロックに破壊が生じた.これは,最上層 とその直下層の固定が十分でないと小さなプレスト レスでも最上層に大きな変位が生じ,滑り以外の抵抗 が大きくなって,制振壁は概算される水平荷重に達す る前に破損したと考察される.この結果を踏まえ,壁 体の滑り層で 2 面摩擦滑りを生じさせるために取り付 ける固定用鋼板の固定方法が課題となった. 水平補強鋼板1 両側:水平補強鋼板3 中央:水平補強鋼板2 水平補強鋼板1 両側:水平補強鋼板3 中央:水平補強鋼板2 水平補強鋼板1 両側:水平補強鋼板3 中央:水平補強鋼板2 高ナット・ばね座金・丸座金 4.0kN/本 4.0kN/本 4.0kN/本 4.0kN/本 4.0kN/本 4.0kN/本 10.0kN/本 10.0kN/本 10.0kN/本 10.0kN/本 10.0kN/本 実験のパラメータ プレストレス 層数 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 六角ナット・ばね座金・丸座金 ブロック固定用鋼板1 ブロック固定用鋼板2 4.0kN/本 図 6 試験体の構成 55 120 120 120 120 120 120 60 50 50 100 φ15 835 50 50 100 1190 55 120 120 120 120 120 120 120 120 120 55 φ15 φ15 50 50 100 55 120 60 235 水平補強鋼板1 水平補強鋼板2 水平補強鋼板3 55 120 120 120 120 120 120 60 50 50 100 φ15 835 50 50 100 1190 55 120 120 120 120 120 120 120 120 120 55 φ15 φ15 50 50 100 55 120 60 235 水平補強鋼板1 水平補強鋼板2 水平補強鋼板3 55 120 120 120 120 120 120 60 50 50 100 φ15 835 50 50 100 1190 55 120 120 120 120 120 120 120 120 120 55 φ15 φ15 50 50 100 55 120 60 235 水平補強鋼板1 水平補強鋼板2 水平補強鋼板3 図 5 使用する水平補強鋼板(単位:mm) φ 16 φ 14 φ16 φ14 φ16 φ16 60 120 60 240 60 60 120 50 70 120 φ16 φ14 50 70 120 60 60 120 60 60 120 50 70 120 50 70 120 φ16 φ14 φ16 φ 16 φ 14 φ 16 φ 14 φ16 φ14 φ16 φ16 60 120 60 240 60 60 120 50 70 120 φ16 φ14 50 70 120 60 60 120 60 60 120 50 70 120 50 70 120 φ16 φ14 φ16 φ 16 φ 14 図 4 使用するコンクリートブロック(単位:mm) mmmm 図 3 乾式ブロック造制振壁の概要

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62-3

外力

部材の復元力特性

層せん断力ー層間変形角

各層の復元力特性

静的荷重増分解析

復元力特性の設定

時刻歴応答解析

4. 摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の設計方法 所属する研究室で今まで行われてきた乾式工法を 用いた摩擦制振システムの関連研究の成果をまとめ, 摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の設計方法につい て示す.種々の実験で得られた制振壁の力学特性の結 果を用いて,実際の建物への実用化を目指すものとす る. 4.1 解析方針 解析フローを図 7 に示す. (1) 静的荷重増分解析 実験で得られた制振壁の復元力特性を用いて静的 荷重増分解析を行い,地震力を外力として想定した各 階水平力を設定し,これを漸増させ部材レベルの非線 形復元力特性に基づき,層せん断力と層間変位の関係 を求める. (2) 復元力特性のモデル化 静的荷重増分解析で得られた結果から,建物の復元 力特性をバイリニア型のスケルトンカーブにモデル 化する. (3) 時刻歴応答解析 復元力特性の設定でモデル化した各層の復元力特 性に基づき,入力した地震波に対する建物の応答を調 べる. 4.2 部材の詳細設計方法 (1) 基本原理と構成・設置条件 摺動材に金属系摩擦材を用い,ボルト機構による平 面 2 面摩擦の現場施工により構成される摩擦ダンパ ーである. (2) 材料の品質 構成要素は,設計圧縮強度 40N/mm2のプレス成型さ れたコンクリートブロック,JISS G 3302 に規定され る溶融亜鉛メッキの水平補強鋼板(SGCC 材相当) とブロック固定用鋼板,強度区分 4T でユニクロメ ッキのボルト,ユニクロメッキの丸座金,ばね座金, ナット,高ナット,SS400 黒皮の山形鋼である. (3) 壁体周辺架構の設計 柱梁フレームと山形鋼は高力ボルト摩擦接合によ って接合するが,適切な摩擦力の確保のために,日 本建築学会高力ボルト接合設計施工ガイドブック5) に従って,適切な縁端距離を確保する.また,鋼材 の表面処理に基づく摩擦係数を考慮して適切な高 力ボルト張力を導入する必要がある. (4) 壁体構成要素の設計 制振壁の縦筋に相当する鉛直補強ボルトの長さと ねじ切り長さは,ボルトを高ナットで継ぐ位置の把 握と壁体積み上がり高さの施工誤差,界面影響値等 を考慮して高ナット内に適切なクリアランスを設 け,適切なはめ合い長さの検討が必要である.また, 2 層に渡って破れ目地状に挿入する,横筋に相当す る水平補強鋼板は,日本建築学会規準 6) に従って, 補強コンクリートブロック造耐力壁の横筋の配筋 量と重ね継手長さを確保する必要がある. 5. 摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の施工方法 既往の研究6)により,実施工においてボルト管理を 行うことで,コンクリートブロック組積工事の仕上 がり規定と同程度の水準まで管理できることが判 った.その方法に加え,適切な壁面管理を行うこと で,この摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁は理想と する性能を最大限に発揮することが可能となる.そ こでボルト管理と壁面管理の手法について図 8 に示 す.ボルト管理は,鉛直補強ボルトを挟むように水 糸を張り,その水糸をガイドにしてボルト位置を決 める方法である.壁面管理は,片側の壁面に沿って 水糸を張り,水糸をガイドにしてブロックを組積す る方法である.いずれも水糸はレーザーレベルで代 用可能である.この 2 つの精度管理手法を用いて, 壁体を組積することを前提とし,施工方法を示して いく.また,制振壁の施工手順を写真 1 に示す. 図 7 解析フロー 位置管理 水糸 位置管理 位置管理 位置管理 位置管理 水糸 位置管理 位置管理 図 8 組積体の精度管理手法 ボルト管理 壁面管理

(4)

62-4 (1) ベースプレートの設置 下階梁上部にベースプレートまたは同等の鋼材を 設置し,高力ボルト摩擦接合によって接合する. (2) 鉛直補強ボルトの立て込みとブロックの組積 設計されたボルト端部のねじがベースプレート,高 ナットにそれぞれ入るところまでねじ込んだ上で, ブロックを組積していく. (3) 水平補強鋼板の挿入 設計された水平補強鋼板を適切な層に挿入してい く.2 層にわたり水平補強鋼板を破れ目地状に配置 する. (4) 高ナット締め付け層でのプレストレス導入 デジタルトルクレンチ等を用いたトルク管理を行 い,各層のボルトに適切な導入プレストレスを与え る. (5) 壁体と上部構造の接合 上階梁下面と等辺山形鋼を高力ボルトにより摩擦 接合した後,その等辺山形鋼と不等辺山形鋼を接合 する際は,不等辺山形鋼の長孔に滑り層を締め付け るボルトが収まっているか確認しながら,滑り層に 山形鋼の重量を任せる形で接合する. (6) 最上層ブロックの設置 梁と山形鋼の仕様上,最上層ブロックを設置する際 は,最上層鉛直補強ボルトとブロック固定用鋼板を 留めるための六角ボルトをブロックに通した状態 で設置する. (7) 固定用鋼板の取り付け 固定用鋼板の孔径とボルトのクリアランスを上下 左右均一となるような適切な位置で固定する.その 際,ナットの締め付けも適切なトルク値で行う. 6. まとめ 本研究で得られた成果を以下に示す. (1) 所属する研究室で行われてきた乾式工法による摩 擦制振システムの関発研究で得られた知見をまと め,摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の概要を整 理した. (2) 提案した摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の力学 性状把握を目的として行った実験に関する研究で 得られた成果をまとめ,各実験で得られた要求事 項を整理した. (3) (1)(2)に示す研究成果に基づいて,摩擦抵抗型 乾式ブロック造制振壁の設計方法,解析方針,部 材の詳細設計方法等の検討を行い,設計・施工マ ニュアル試案を作成した. 謝辞 本研究の遂行にあたり,文部科学省科学研究費補助金(基盤 研究(B),課題番号:23360249,研究者代表:山口謙太郎)の 助成を受けた.末尾ながら記して謝意を示す. 参考文献 1) 山口謙太郎,松藤泰典,小山智幸,小山田英弘:摩擦抵抗型 乾式組積造壁体のせん断耐力評価,日本建築学会構造系論文 集,第 589 号,pp.173-180,2005 年 3 月. 2) 山口謙太郎,小山智幸:リユースに対応できる建築工法・構 造システムの日本に適した展開と開発,科学研究費助成事業 データベース,2010 年度研究成果報告書,2011 年 5 月 3) 黒田亮太郎:摩擦抵抗型乾式組積構造を利用した制振壁の開 発に関する研究,九州大学修士論文,2011 年 3 月. 4)牧野起八:コンクリート系非構造壁の取り付け部に介在させ る摺動材を用いた摩擦制振システムの開発研究,九州大学修 士論文,2011 年 3 月 5)日本建築学会:高力ボルト接合設計施工ガイドブック,2003 年 12 月 6)日本建築学会:壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソン リー編),pp.25-28, 2006 年 3 月 7)陶山裕樹:SRB-DUP 工法に関する研究,九州大学修士論文, 2005 年 3 月 写真 1 摩擦抵抗型乾式ブロック造制振壁の施工手順 (1)ベースプレートの設置 (2)鉛直補強ボルト (3)水平補強鋼板の挿入 (4)プレストレス導入 (5)壁体と上部構造の接合 (6)最上層ブロックの設置 (7)固定用鋼板の取り付け

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