児童養護施設入所中高生の「攻撃的行為」に関する研究ー「友人関係」及び「対職員関係」からの検討ー [ PDF
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(2) 『対職員関係(4)』×『性別(2)』の二要因分散分析の結果、. 『攻撃タイプ』の特徴 (平均値との差). 交互作用が有意傾向であり(F(3,51)=2.59,p<.10)、「男子」及び. 行動化. 1.5. 「女子」において、 『対職員関係』の単純主効果が有意であっ. 反抗的態度. 緒不安定」カテゴリーが 高い傾向にあり「情緒不. 1. た(F(3,30)=4.78,p<.01;F(3,21)=9.24,p<.01)。. 安定群」とした。. 0.5. 男女共に施設職員へ被受容感や信頼感を強く抱く一方、. 1)-2カテゴリー平均. 0 - 0.5. 尊敬や憧れが低く、特に女子はその傾向が顕著であった。 【多重比較結果(Tukey の HSD 法,p<.05)】 「男子」:被受容・被理解=信頼・親和>尊敬・憧れ=支配・被支配感 「女子」:被受容・被理解=信頼・親和=支配・被支配感>尊敬・憧れ. 情緒不安定. 第3クラスターは、「情. の比較(二要因分散分. -1. 表. 出. 低. N= 群(. 8) 攻. 撃. = (N 群. 3). 情. ③『他者信頼感』の特徴(二要因分散分析). 不 緒. 安. 定. ) =8 (N 群. 析) 『攻撃タイプ(3)』 ×『対職員関係(4)』の 二要因分散分析の結果、. 『他者信頼感項目(8; 『友達と一緒にいる理由』と『対職員. 交互作用が有意で(F(6,48)=2.37,p<.05)、「表出低群」と「情緒不. 関係』の共通項目)』×『対象(3;施設内友人、施設外友人、. 安定群」において『対職員関係』の単純主効果が有意(傾向). 【多重比較結果(Tukeyの HSD 法,p<.05)】 施設内友人=施設外友人>施設職員. であった(F(3,21)=2.63,p<.10; F(3,21)=11.32,p<.01)。. 施設職員)』の二要 因分散分析の結果、. 『他者 『対象』の主効果が有意であった(F(2,32)=7.46,p<.01)。 信頼感』について、児童は施設職員を最も低く評価してお り、友人が思春期児童の拠り所であることが推察される。 4.第2研究結果:攻撃的行為の特徴【質問紙Ⅲ】 1)カテゴライズ(信頼性係数の検討) 先行研究等を参考に カテゴライズし、内容の妥当性を検討。信頼性はクロンバ ックのα係数を算出し(p<.05)、α=.90 以上のものを採用。 質問紙 攻撃的行為. カテゴリー名(項目数) 行動化(8). 情緒不安定(4) 反抗的態度(4). 代表的な項目 言い争い・つかみあい 暴力 暴言・卑猥な発言 いじめ 自傷行為・自殺企図 かんしゃく いうことをきかない 規則を破る. 2)『攻撃的行為』カテゴリーの性差(二要因分散分析) 『性別(2)』×『攻撃的行為(3)』の二要因分散分析の結果、 交互作用が有意傾向(F(2,34)=2.83,p<.10)で、男女共『攻撃的 行動』の単純主効果が有意(F(2,20)=14.88;F(2,14)=5.90,p<.05) であった。男女共「行動化」は最も現れにくいようであった。. 両群とも児童は施設職員に対し、受容され、信頼できる 【多重比較結果(Tukey の HSD 法,p<.05)】 「表出低群」 被受容・被理解=信頼・親和>支配・被支配感=尊敬・憧れ 「情緒不安定群」 被受容・被理解=信頼・親和=支配・被支配感>尊敬・憧れ. という感覚を抱きやすく、加えて「情緒不安定群」の児童は、 尊敬や憧れの念が著しく低いことがわかった。 1)-3カテゴリーの関連の検討(重回帰分析) 『攻撃性タイプ』ごとに、基準変数を『攻撃的行為』項目、 説明変数を『対人関係』カテゴリーとした重回帰分析(強制 投入法)を行った結果、「表出低群」と「情緒不安定群」で有意 な結果が得られた。 「表出低群」 基準変数 言い争い つかみ合い 暴言 卑猥な発言 かんしゃく よくわめく. 説明変数 (施設内)被受容・被理解 (施設内)信頼・親和 (施設内)利害 (職員)信頼・親和 (職員)尊敬・憧れ (職員)被受容・被理解 (職員)信頼・親和. 標準回 帰係数 -1.01 .92 -.60 -1.78 1.30. 重決定 係数 .999. .820. F(4,3)=8.96 p<.10. 2.14 -1.71. .748. F(4,3)=6.21 p<.10. F値 F(6,1)=1010.75 p<.05. 「表出低群」児童のかんしゃくの背景には、施設職員に対. 3)『攻撃的行為』項目の性差 (t 検定) 【t 検定結果】 「男子」>「女子」の項目 「人をよくからかったり、おどしたりする」(t(17)=3.56,p<.01) 「他の子のじゃまをする」(t(17)=3.34,p<.01) 「女子」>「男子」の項目 「わざと自分を傷つけたり、死のうとしたりする」(t(17)=-1.95,p<.10). 他者への直接的な攻撃性は男子に多く、自傷のような自 己に向いた攻撃性は女子に多く見られる傾向にあった。 5.第3研究結果:攻撃的行為と対人関係の関連 【質問紙Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ】 1)-1『攻撃タイプ』の選出(クラスター分析) 『攻撃的行為』カテゴリーを変数としたクラスター分析 (Ward 法)の結果、3クラスターを選出した。第1クラスタ ーは全カテゴリー表出されにくく「表出低群」とした。第2 クラスターは、全カテゴリー表出され易く「攻撃群」とした。. する被受容感と不信感が関連し、暴言には施設職員への同 一化と不信感が関連していることが分かった。更に口論に は、施設内友人と利害関係によらない深い交流を持ち、信 頼している一方で、十分に受け容れられている感じが持て ないことが関係していた。 「情緒不安定群」 基準変数 自傷 自殺企図 いうことを きかない 決まりを 破る. 説明変数 (施設内)信頼・親和 (施設外)利害 (施設内)被受容・被理解 (施設内)虚勢 (施設内)内面共有 (施設内)配慮 (施設内)虚勢 (施設内)支配 (施設内)内面共有. 標準回 帰係数 1.39 -1.06 -.54 3.89 -2.76 1.69 5.86 -5.12 -2.75. 重決定 係数 .986. F値 F(6,1)=82.30 p<.10. .963. F(5,2)=37.07 p<.05. .919. F(5,2)=16.79 p<.05.
(3) (施設内)配慮. 1.75. 暴言 卑猥な発言 いじめ いじわる 自傷 自殺企図. は規則を破るのには、施設内他児を意識して、虚勢を張る ことや情緒的交流の希薄さが関連していた。また自傷行為 には、施設内友人を信頼したいのにわかってもらえない気 持ちや、施設外友人との間で情緒的関係を求めていること が関連していた。. ( 平均値との差) 施設内 信頼 施設外 信頼. (職員)支配・被支配. .94. .541. (施設内)利害. .54. .655. -1.54 1.36 1.00. .728. (施設内)被受容・被理解 (施設内)信頼・親和 (施設内)利害. F値 F(4,5)=3.65 p<.10 F(3,6)=6.69 p<.05 F(3,6)=9.05 p<.05. わりが関連していた。またいじめには施設内他児と利害関. 『友達と一緒に. 『 友達付き合いタイプ』 の特徴. 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -2.5. 重決定 係数. 説明変数. 「施設外親密群」児童の暴言には、施設職員との支配的関. 2)-1『友達付き合いタイプ』の選出(クラスター分析). 施設内 被受容 施設外 被受容. 標準回 帰係数. 基準変数. 「情緒不安定群」児童が職員のいうことをきかない、或い. 施設内 利害 施設外 利害. 係を持ちやすいことが関連しており、自傷には、施設内他. いる理由』カテ. 児を信頼するものの分かり合えず、利害関係にあることが. ゴリーを変数と. 関連していた。. したクラスター. 3)『攻撃的行為』と『対人関係』の関連(重回帰分析). 分析(Ward 法)の. 入所児童全体の傾向を探ることを目的とし、 『攻撃的行. 結果、4クラス. ) ) ) ) =5 =2 =2 10 (N (N (N N= ( 群 群 群 群 密 心 視 親 親密 無関 害重 外 設内 利 設 施 施. 為』項目を基準変数、 『対人関係』カテゴリーを説明変数と. ターを選出した。. した重回帰分析(強制投入法)を行った。. 第1クラスター 基準変数. 説明変数. 2クラスターは、「利害」が高く「利害重視群」とした。第3. 言い争い つかみ合 い. クラスターは、施設外友人に対し肯定的な感情が高く「施設. 暴力行為. (施設外)内面共有 (施設外)虚勢 (施設外)支配 (施設外)享楽 (施設外)被受容・被理解 (施設外)利害 (施設外)内面共有 (施設外)支配. は、施設内友人. に対し「被受容」や「信頼」が高く「施設内親密群」とした。第. 外親密群」とした。第4クラスターは、全てのカテゴリーに. 自傷 自殺企図. おいて得点の低さが顕著で「無関心群」とした。. 標準回 帰係数. 重決定 係数. 1.28 1.17 -.72 -.75 -.69 .54 -1.00 1.00. .407. F(5,13)=3.47 p<.05. .295. F(6,13)=3.51 p<.05 F(3,10)=3.43 p<.05. .519. F値. 言い争いには、施設外友人に対し、内面を開示しつつも、. 2)-2カテゴリー平均の比較(二要因分散分析) 因分散分析の結果、交互作用が有意傾向であり. 虚勢を張って強がり、気楽に付き合えないことが関係し、 . 暴力行為には、施設外友人からの非受容感や、利害関係に. 『攻撃的行為』 の全カテゴリーにおいて、 (F(6,30)=2.03,p<.10)、. 基づく友人関係が関連していた。更に自傷行為も同様に施. 『友達付き合いタイプ』の単純主効果が有意であった. 設外友人との情緒的交流の希薄さが関連していた。. (F(3,15)=13.98;F(3,15)=5.50;F(3,15)=4.52,p<.05)。攻撃的行為. 6.総合考察. 『友達付き合いタイプ(4)』×『攻撃的行為(3)』の二要. は「利害重視群」と「無関心群」によく見られるようである。. 以下、それぞれの攻撃的行為について、対人関係との関. 【多重比較結果(Tukey の HSD 法,p<.05)】 利害重視群=無関心群>施設内親密群=施設外親密群. 連を整理し全体的な考察及び援助の可能性を探る。 1)行動化 行動化の方向に性差があり、男子は外向的、女. 2)-3カテゴリーの関連の検討(重回帰分析). 子は内向的であることが窺えた。第1研究で男子は施設内. 『友達付き合いタイプ』ごとに、基準変数を『攻撃的行為』. 友人の前で虚勢を張る様子が窺え、自らの力強さを他児に. 項目、説明変数を『対人関係』カテゴリーとした重回帰分. アピールしていると推測される。また男子は行動化して外. 析(強制投入法)を行ったところ、「施設内親密群」と「施設外. に出すことで、自傷のような自己へ向いた表出が抑えられ. 親密群」で有意な結果が得られた。. ているとも考えられる(Coleman & Hendry,2003)。. 「施設内親密群」 基準変数. 説明変数. 決まりを 破る. (施設外)被受容・被理解 (施設外)信頼・親和 (施設外)利害. 標準回 帰係数. 重決定 係数. -.70 -.55 -.16. 1.00. 1)-1言い争い・つかみ合い 児童全体では、施設外の友 F値. 人と仲良くしたいのに虚勢を張って強がってしまい、気楽. F(3,1)=4040.2 p<.05. に付き合えないことが関係していた。また外の友人との支 配しない関わりも関連しているようで、「支配」カテゴリー. 「施設内親密群」の児童が規則を破るのには、学校等での. に「言うことを聞かせる」等の項目が含まれていることから、. 友人と分かり合えず、信頼できないが、利害に依らない関. 自己主張がうまくできないことが施設内での行動に影響し. 係を持とうとすることが関連していた。. ていると考えられる。またあまり攻撃的でない児童では、. 「施設外親密群」. 施設内友人との関係が影響しているようであり、相手と深 く関わりたくても、十分に受け止めてもらえず、しかしそ. 3.
(4) れでも親しくなろうと自己主張を続けるため、結果として. 態の予測因になりうる」と述べており、思春期児童におけ. 言い争いとなることが多いと考えられた。. る安定した友人関係の重要さが窺える。. 1)-2暴力行為 全体的に学校等での友人との情緒的関係. 2)-1かんしゃく あまり攻撃的でない児童では、施設職員. の希薄さが関連しているようであり、外での緊張を施設内. からの十分な受容を感じつつも、それでも心から信頼する. で発散させてしまっていると考えられる。更に利害関係に. ことができないもどかしさ等が誘因となっていることが推. 基づく友人関係も関連しており、その中で暴力行為が誘発. 測された。或いは彼らは元々施設職員との信頼関係は良好. されることが推測された。対応としては利害関係に基づい. であるという結果から、施設職員に対しては感情をそのま. た友人関係を修正し、そして安定した友人関係の中で、外. まぶつけても、受け容れてもらえるであろうという、一種. から持ち帰ってきたストレスを低減させてあげることとい. の安心感も影響していると考えられる。. うような、全体的対応と個別的対応の両方が必要であろう。. 3)反抗的態度 反抗的態度は、利害重視の関わりをしやす. 1)-3暴言・卑猥な発言 あまり攻撃的でない児童では、施. い児童と他児と深く付き合えない児童において特に頻繁に. 設職員への憧れと不信感が関連していた。子どもたちは、. 見られた。他者との情緒的交流が少なく、他者を信頼でき. 施設職員の持つある種の権力に憧れ、真似ることで、周囲. ないがために、職員の言葉も素直に受け止められず反発し. を統制しようとしていると考えられる。また施設外の友人. てしまうのではないかと予測される。. と親しい児童では、施設職員の腕力や権力で統制したりさ. 3)-1いうことをきかない・規則を破る 一見職員への反発. れたりするような関わりが影響しているようである。. のようであるが、情緒不安定気味の児童の場合、施設内他. 1)-4いじめ 施設外の友人と親しい児童の場合、施設内児. 児を気にして、自分を強く見せようとすることや情緒的交. 童と利害関係を持ちやすいことが関連していた。いじめの. 流が希薄であることが関連していた。施設内の多くのライ. 加害者の「多くが以前に、自分の家族や仲間集団のなかで、. バルの中で自分の立場を獲得していくことが、入所児童に. 嫌がらせの犠牲者となってきた可能性」 (Coleman &. とっての重要な関心事であり、それを達成するため職員に. Hendry,2003)があり、それまでは被害者として苦しんで. 反発しているのかもしれない。更に他児との情緒的交流の. きた児童が後に加害者へ豹変することとも関連していると. 少なさが、そうした行動を強めているのかもしれない。こ. 考えられる。. の場合、児童は特に他児の評価を非常に気にしていること. 1)-5自傷行為・自殺企図 全体では、施設外友人との情緒. が予測され、児童には権力や腕力を誇示しなくてもいいこ. 的交流の希薄さと、自己主張するものの十分に受け容れて. とを伝えていく必要があるであろう。更に周囲の児童への. もらえず「どうせ人に言っても無駄だ」と感じてしまい、い. アピールである可能性を考えると、他児のいない場所で個. ざ困ったときに周囲に助けを求められないのではないかと. 別に対応することも有効かもしれない。. 推察された。また情緒不安定傾向の児童では、施設内友人. 7.今後の課題. を信頼したいのにわかってもらえないという葛藤を施設外. 本論では、児童の攻撃的行為の背景に潜むものとして『対. で発散させたいと感じてはいるものの、施設外の友達とも. 人関係』を想定した上での研究を行ったが、今後はより多. 情緒的に繋がりたいという思いからうまく発散できず、抱. 角的で総合的な解釈が必要となってくるであろう。更に今. え込んでしまうではないかと考えられる。更に自傷行為は. 回は質問紙を通して、数量的なデータを扱ったが、個別の. 他の攻撃的行為とは異なり、男子よりも女子に多く見られ. 事例や投映的手法等を通した詳細な検討を行う必要がある. る傾向にあり、先行研究等における見解とも一致している。. と考えられる。. 更に施設外の友人と親しい児童では、施設内の他児を信頼. 8.主要引用文献 1)Coleman & Hendry 著・白井利明他訳(2003)、青年期の本質、 ミネルヴァ書房 2)藤野京子(2002)、男子非行少年の交友関係の分析、教育心理学 研究、50、403-411 3)国分美希(2001)、被虐待体験からの再生と成長を支えるもの― フォローアップ調査をもとに、臨床心理学、1(6)、 757-763 4)松井洋(2002)、日本の中学生の親子関係と非行的態度、川崎学 園女子大学研究紀要、13(1)、105-119 5)森田喜治(2006)、児童養護施設と被虐待児―施設内心理療法家 からの提言―、創元社 6)田嶌誠一(2006)、児童養護施設における児童間暴力問題の解決 に向けて その1.児童間暴力の実態とその連鎖、心理臨床 研究会. してはいるものの、「どうせ分かってもらえない」とか「弱み を見せると自分が不利になる」という思いから、悩みや葛藤 を抱えていても、他者への表現を諦め、自己帰結してしま うのかもしれない。 2)情緒不安定 施設内外の友人と親しい児童は、比較的情 緒が安定しているようである。自身の情緒を統制できる力 があるからこそ安定した友人関係が築けると考えられ、ま たその逆も考えられる。Parler & Asher(1987)も「仲間か ら受け入れられるのか拒絶されるのかは、精神的な健康状. 4.
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