九頭龍川水系の化学的研究 (第3報) 河水成分の流 程による変化
著者 米窪 達雄, 高瀬 巌
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 11
号 1.2
ページ 166‑172
発行年 1963‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/5069
九 頭 龍 川 水 系 の 化 学 的 研 究 ( 第 3 報) 河 水 成 分 の 流 程 に よ る 変 化
米 窪 達 雄 ・ 高 瀬 巌
Chemical Researches on the River Groups of the Kuzury
百
(111) Changes in the Arnount of Chernical Ingredients of the River Waters inthe Kuzuryii
,
Throughout its Streaming Course Tatsuo YONEKUBO,
Iwao TAKASEThe chemical ingredients, e. g., calcium, magnesium, iron, chlorine, silica, etc. in the river waters of the Kuzuryii, were measured at the various places in the streaming course. The changes of the ingredients pertaining to the streaming course were discussed.
The content of each ingredient generally increased from upper to lower stream
,
except iron, silica, and sulphate.The water quality was very good down to No. 7 place. But from No. 9 place it was fairly spoiled by the conflux of a big branch, the Hino, and at No. 11 place, it was much spoiled by the invation of sea water.
Calcium contents have a definite relation both to pH and to magnesium contents.
要 旨
九頭竜川本流の全流程中, 10個所について,その河水成分を調査測定し,流程による変 動の状態について考察した。pHは源流において7.1であるが,打波川,真名川の影響により 7.5に達するD 乙れが低pH値 をもっ日野川の合流lとより君、搬な変動を示した。多種多様の水質をもっ多くの支流が,本流lこ合流 しでも,各溶存成分量は一般に緩徐な増大を示すが,日野川の合流するまで,蒸発残分は1/ につ き64mg以下の少量で,その水質も極めて良好であった口なお硫酸分,ケイ酸,鉄については,流 下による規則的な増量はみられなかった。
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の合流により pHの低下以外に,過マシガシ酸消費量,マグネVワム,塩素,硫酸等が相当増大し,ある程度水質が低下していた。
ここからさらに河口に向かつて流下するとき,再び pHの上昇がみられるが,t可水の化学成分等 はほとんど変化しないで木部新保を通過するO ところが次の三国新保橋に到達するまでに多量の海 水 が 侵 入 す る ら し し 硫 酸 分 は10余倍,マグネνワム,塩素はともに60余倍に激増,その結果,蒸 発残分は約20倍,過マシガシ酸消費量も数倍に達し,工業用水として全く不適当である乙とを示し たロただし,鉄,ケイ酸,硝酸分にはほとんど変化がなかった。
以上により,九頭竜JJlの化学的特性を問題とするとき,日野川流入による小影響,海水侵入によ る大影響を考慮することが必要であるロ
本流の流程中の各所における pHとカノレ
ν
ヲム量との聞にも,正の相関度が大きいことが認めら れ1 h
また pHと塩素,硫酸分との聞には負の相関度が相当大きい2)とみられた。なお蒸発残分と各成分閣の関係についても検討したD
また各成分閣の関係については,カノレVワムとマグネVワムの聞の相関度も大きいことが認めら れたS】。
普 助 教 授 H 文部技官
九頭竜川水系の化学的研究 (第3報) 167
緒 畠企.E岡
九頭竜川水系の化学的特性の解明がその流域地方の産業上,生活上の高度発展のため必要である との見地から,先にその河水成分の季節的変化および主要支流の河水成分の特性等について検討し
た。これに引き続き,この河の本流の河 右
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水成分量がその流程中に変動してゆく状 r--ー~ 主沢
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況を知るため,全流程中10箇所を選んで LJ Á. ~ι f"
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研究し,その結果について考察した口
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略図A!こ示したように九頭竜川本流の 全流程中10箇所を選んで,河の表面下約 10 cm付近から採水し,前報ω同様の方 法によって,各項目について測定した。
採水は晴天が続いた後,濁水でなくなっ た時を選んで行ったD すなわち1954年8 月4日から6日までであるO
3 .
混~1 安結果および考察 測定の結果を表1および図 11乙示した が,これを基にして各項について検討す るD/
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から, pH7.45の九頭竜川本流に合流するとき pHはもっと上るはずであるのに,そうならなかっ たのは,採水地点がまだ日野川の強い影響から外れていなかったためであろうo さてこれからさら に流下して日本海への注 ぎ口である河口に近ずく につれ, 7.1→7.2→7.4 と上昇するととは,海水 の影響も一応考えられる が,本流l乙次第に混流し てゆくことによると考え る方が妥当であろうO
蒸発残分 No.11の 地点は河口から約2.2km で,乙の辺までは満汐時
日本海の海水が相当湖上
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Mg 分は他の地点に比し,け 7こ外れに多量であった。
(1,385mgjl)その他の
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制 で 一mgjlの
0.05 Fe 範囲で,源流に最も少く,
A 流下するにつれて河底,
河岸の可溶成分を次第に 溶解してゆくことがうか がわれるO
過マンガン酸消費量:
3.7‑‑19.0 mgjl
,
r=5.40
Tこだしrは最多量と最 少量との比を示す。 (以 下同様)口 打波川が源流 へ合流後,過マyガy酸 消費量はーたん下るが,
乙れは打波川が相当大き な支流であって,その過 マyガy酸消費量が少いことから理解できるo なおその後乙の価は次第に増大し,中角橋へ到達す るが,それ以後はほとんど変動をみせないで流下するけれども,やはり No.11では急上昇してい るD 海水混入によると考えられるo
鉄 No.9を除いた全流程にわたって,著しい差はほとんど認められない。 No.9で急上昇した のは,日野川上流の人為的条件5)の影響によるものかどうかについては,まだ確認できなかった口
カノレVワム:6.0‑‑16.0 ppm
,
r=2. 70源流付近で最少であるが,NO.3で急増したロ乙れは打波川がカノレVクムを多く含有するととか ら理解できるoその後はほぼ一定値のまま流下するが, No.llで急増した。海水の侵入によるもの
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九頭竜川水系の化学的研究 (第3報) 169 と思われる。
マグネVヲ ム 1 .0‑65. 4 ppm, r=650
やはり源流で最少であるが, 打波川の合流により急増し, そのまま No.8付近まで流下するo
NO.8では生活の影響が強くあらわれていると思われる日野川の河水成分が示されているoNo. 11 で急増するのは,やはり海水の影響であろうo ここでのクグネVクムの変動はカノレVクムζ比しl 2
より激しいものであった。とれは海水におけるマグネVヲム対カノレ
ν
ワムの比が大きいことに由来 するのであろうo一般に生活上および海水の影響を除けばマグネνワム,カノレ
ν
ヲムの増減は全流程にわた。て,ほぽ平行的におとっているととが分かるD
硝酸分:源流で最も少し流下するに従い緩やかに上昇してNo.11 ~乙到っている D 真名川の合 流後No.4で急増しまた減少するのは打波打],真名川の影響が考えられるD その後援やかな増大を 示すが, No.11でもあまり多くなってはいない。
塩 素 2.9‑‑558 ppm
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図2 CaとpHとの関係
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(ppm) )
pH 図4 ClとpHとの関係
図3 Ca十MgとpHとの関係
源流で最少,石徹白Jl]の合流後のNo.2で約2 倍となり,その後緩やかに増大してNo.7 ~乙到る が,次の NO.9では, 日野}1]の合流lとより急増す るO 乙れは人為的条件の影響を強く受けた日野川 が食塩等を多く溶解しているためであろうか。こ れが本流によって希釈される結果, No.9, No.
10と次第に減少してゆくがNO.11では海水の影 響により急増,一躍60倍余に達しているo
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源流へ石撤白川が合流後かえって減少しているがとれはこの支流の硫酸含有量が比較的少い乙と から理解できるo 打波川合流後のNo.3で一時急増する理由は不明であるが, No.4以後かなり急 増する理由は生活あるいは施肥等の人為的条件の影響であろうo No.11ではやはり海水の影響を 受けて著しい急増を示している口
ケイ酸 9.1‑‑12.1ppm, r=1. 30
源流ではやや少いが,比較的多く含む石徹白川,真名川の合流後はやはり急増してそのままNo.
7まで続き,日野川の合流によりさらに増大してNo.11 ~ζ 到っている口日野川が比較的との成分 を多く含有することについては先に述べたへなお海水の混入するNo.11でもケイ素量にはほとん で変化がみえない。
pHと各成分との関係:
本流の全流程にわたっての pHとカノレVクム量との聞に,やはり正の相関関係のある乙とが分か る。(図2)ただし日野川の合流後は,乙の関係が乱れて pH値は急減した口
pHとカノレ
ν
ワム, マグネν
ワム合計量との聞にも日野川l合流までは,やはり正の相関関係がみ られた口日野川はマグネVクムを多く含むが, pHは7.0と低く,これが九頭竜川本流へ漸次合流S04
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S04 (ppm) 図7 蒸発残分とS04との関係 してゆくため, pHもそれに伴って変化するので あろう口 (図3)
pHと塩素量との聞には負の相関関係がみられ る。ただし源流では塩素量が少なすぎるためあて はまらない。(図4)
pHと硫酸分との聞にも,硫酸分過少の場合を 除き負の相関関係のある傾向がみられたロ(図5)
九頭竜川水系の化学的研究 (第3報) pHとケイ酸との聞にははっきりした関係はみられない口
蒸発残分と各成分との関係: ζれについては次のような傾向が相当みられた。
蒸発残分とカノレVワム聞に正の相関関係口 蒸発残分とマグネVウム聞に正の相関関係。
蒸発残分と,塩素または硫酸分聞に正の相関関
係口すなわち本流の各流程におけるこれらの成分 Mg は蒸発残分とほぼ平行して増大するわけで,第2 ,̲̲̲ ̲̲̲'¥ 8
(ppm) B
報の各支流の場合には,みられなかったことであ る口 (図6,図7)
ただし NO.11では海水の影響によって上記各 関係はあてはまらないロ
各成分間の関係:
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マグネνワムとカノレVワム量の聞には,やはり 6 品 川
相当正の相関関係がみられた。(図8) Ca ~pm) カノレνワム対塩素,カノレVワム対硫酸分につい 図8 MgとCaとの関係
14 ロ o o
171
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16
ては第2報の各支流の場合同様,明確な関係はみられなかった口ただ本流流程中の各位置について 比較した場合,変動の巾の狭い点が異っていた。これは本流が,種々の水質をもっ支流を順次合流 させながら流下するとき,上記両成分の比はそれほど急激には変化しないことを示しているわけで あるo
カノレνワムとケイ酸聞には,第2報におけるような相関関係はみられないが,両成分の比は流程 の各位置によってあまり差がなかったD
4 .
総 括九頭竜川本流の全流程中p 次の10箇所について河水成分を調査し,流程による変動状況について 考察した。 (No.1)下半原,朝日,西勝原, 下荒井,鳴鹿橋,舟橋,中角7 No. 8)原楢原, 江 上,木部新保, (No. 11)三国新保橋。ただしNo.8だけは日野川の区域にあるo
pHは源流で7.1であるが,大支流である打波打¥.真名川lの影響を強く受け 7.5に達するO これ が低pH値7.0をもっ日野川の合流により急搬な変動を示した。
第2報で述べたような各種各様の水質をもっ多くの支流が,本流に合流するわけであるが,日野 }1¥合流点 (No.8)付近に到達するまで, 本流中の各溶存成分量は一般的に緩徐な増大を示すが,
No.8付近以前までは蒸発残分
11
につき僅かに64mg以下で,各成分の量について考慮するとき,極めて良好な水質であることが分かるo各成分のうち硫酸分は上流の方にかえって多量である場 合があり,鉄,ケイ酸については上下流による差のあらわれ方は不規則であり,また硫酸分の流程
による増量は僅小であった口
ところが日野川!の合流lとより上記pHの他に,マグネVワム,塩素,硫酸分が相当増大し,過マ シガシ酸消費量も増大し,ある程度水質が劣化したことを物語っているO しかし,なお工業用水と しては使用に耐えるo なお鉄とケイ酸については多少増大がみられたD
乙こからさらに流下するとき,木部新保まではpHの変化を除き,そとんどそのままであるが,
三国新保橋 (No.11)に到達したときは,すでに多量の海水の侵入を受け石ため,硫酸分は11倍, マグネVワム,塩素はともに60余倍に激増し,その結果蒸発残分は18倍に達し,過マyガシ酸消費 量も数倍になり,工業用水としては全く不適当であることを示していた口なお鉄,ケイ酸について
はほとんど変化なし硝酸分については僅かな増量がみられた。
上のような状況であるから,九頭竜川の水質を問題とするとき,日野川流入による小影響,海水 侵入による大影響を特に考慮することが必要になってくるわけであるO
pHとカノレ
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ワム量との関係はこの測定においてもみられた。すなわち本流の各流程における河 水成分のpHはカルVクム量と密接な関係をもち,ほぽ正の相関関係を示した。pHと塩素1 pHと硫酸分との聞には, おおむね負の相関関係の存在する傾向がうかがわれた。
ただし上記各成分が少量すぎる場合を除く口
なお,蒸発残分と各成分聞の関係についても検討したが,蒸発残分と硫酸分聞に正の相関度の大 きい傾向がある等,第 2報の各支流の場合についてはみられなかったような関係も認められた。
各成分閣の関係としてはカノレVワム,マグネ
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ワム間l乙,やはり正の相関関係がみられた。なおカJレミワムと塩素,カJレVワムと硫酸分との聞には特別な関係は認められないが,各両成分 の比は各流程においてあまり大きな変動を示していなかった。
文 献 1) 杉原:日化 73, 229 (1952) 2) 杉原:日化 72, 239 (1951) 3) 岩崎,新田:日化 75, 1123 (1954)
4) 米窪:福井大,工学部研究報告集 1,2 (1963) 5) 岩崎,新田:日化 75, 548 (1954)
6) 米窪:福井大,工学部研究報告集 1 (1953)
(受理年月日 昭和37年11月15日)