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雑誌名 福井大学工学部研究報告

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(1)

ポーラスSiをターゲットとするレーザーアブレーシ ョン法を用いた薄膜の作成及び評価

著者 加藤 正幸, 愛場 喜孝, 大久保 貢, 山本 ?勇, 橋 本 明弘

雑誌名 福井大学工学部研究報告

巻 43

号 1

ページ 285‑294

発行年 1995‑09

URL http://hdl.handle.net/10098/3624

(2)

福井大学 工 学 部 研 究 報 告

42巻 第2号 19959月

ポーラス S i をターゲットとするレーザー アブレーション法を用いた薄膜の作成及び評価

加藤正幸' 愛場喜孝' 大久保貢帥 山本嵩勇帥 橋本明弘帥

Depositions and Characterizations on Thin Films  Formed by a New Laser Ablation from Porous Si Targets 

Masayuki KATO,Yoshitaka AIBA,Mitsugu OHKUBO  Akio YAMAMOTO,and Akihiro HASHIMOTO 

(Received Aug. 31, 1995) 

Porous Si films by electrochemical anodization in HF aqueous solution can be  easily ablated by a focused N21aser pulse with a relatively low power density.  We propose a new deposition method using the laser ablation phenomena to form  the films consisted of the nanostructures such as quantum dots. It is  reported  that  the  deposited  filmsomporous Si  targets  by the  new laser  ablation  technique consist of the Si micro particles with a diameter of 5ooA. The optical  properties and the structures of the deposited films are also discussed. 

1.序 論

半導体電子デバイスの基板材料として種々の優れた特性を有 している単結晶Siは,光学特性の観点からは1. leVのバ ンドギャップを持つ間接遷移型半導体であるため,発光デバイ ス材料としてはあまり注目されてこなかった。しかしながら,

フッ酸溶液中における陽極化成法により単結晶

S

iを図

1

のよ うに多孔質化することにより,室温において高効率可視発光を

‑大学院工学研究科電子工学専攻 電子工学科

争刀¥[

i基 板 図1

285 

(3)

示すことが1990年にCanhamにより報告さ れて以来1にその発光デバイス材料としての可能性 から大変注目を集め,盛んに研究されるようになっ た。多孔質Si 

( P o r o u s ‑ S  

i ;ポーラスSi )のこの ような室温高効率可視発光の発光機構に関しては,

2

に示すように,数nm程度の粒径の

S

i微粒子 によりポーラスSiの柱状構造が構成されているこ とによる量子効果の結果であるとする量子箱モデル2)

や,図3に示すように陽極化成によりSi原子が結 晶格子からランダムに抜き取られてスポンジ状にな っていることが発光機構に関与しているとする量子 スポンジモデル3)など、種々のモデルが提唱されて いるが,未だに定説を得るには至っていない。

いずれにしてもポーラス

S

iにおける高効率可視 発光が,量子箱モデルや量子スポンジモデル等,数 nm程度のSi微細構造からの発光であると考えら れるため,微細構造を有する量子サイズの個々の

S iクラスタについてその作製から特性評価まで含 めた総合的な研究がポーラスSiの発光機構を解明

一日引い S  i 基 板

2

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5

図3

する上で重要であると考えられる。そこで我々は,量子サイズのSi微細構造をポーラスSiから 得る方法として,可視発光するポーラスSiをターゲットとして用いた低エネルギー密度の励起光 によるレーザーアプレーション法を提案しこの新しいタイプのアプレーション法により作製され たSi微細構造の光学特性を研究することがポーラスSiの発光機構を解明する上で重要であると 考えた4)。我々が見い出した低エネルギー密度の励起光における新しいタイプのレーザーアプレー ション現象は,ターゲットとして用いたポーラスSi薄膜からスパーク音を伴いながらSi微細構 造がスプレー状に飛び出し,同時にターゲットとして用いたポーラス

S

i薄膜が削り取られる現象 である。また,このときターゲットより飛び出したSi微細構造は,ターゲットのポーラスSiと ほぼ一致した発光特性を示す。すなわち、このようなレーザーアプレーション法を用いることによ

句,ターゲットのポーラスSiから飛び出してきた量子サイズのSi微細構造を,対向させた基板 に堆積させることができ,量子サイズ効果の現れる数nm...数十nmのサイズのSi微細構造から 成る新しい機能を有する堆積薄膜の作製が期待できる。この新しいレーザーアプレーション現象は 従来薄膜作製に用いられてきた真空中における高密度の励起光によるレーザーアプレーション法と は異なり,単結晶Siに対してはいかなるアプレーションも起こさない程度の低エネルギー密度の 励起光によりアプレーションを起こす事が大気中においてさえ可能であるため,従来法とは異なる 電気的,光学的特性を持つ堆積膜の形成が可能であると考えられる。

本報告では,以上述べたような低エネルギー密度の励起光によるレーザーアプレーション法を用 いて作製したポーラスSi堆積薄膜の作製プロセスおよびSi基板上への堆積薄膜の光学特性につ いて主に述べる。

(4)

287 

2.実験方法及び結果

2.  1 レーザーアプレーション法によるポーラスSi堆積堆積の作製

2.  1.  1 ターゲット用ポーラスSiの作製 ターゲットとして用いたポーラスS iは比抵抗6‑‑... 1 2 QcmのP型Si (111)ウエハーを陽極基板とした 陽極化成法5)を用いることにより作製した。 Si (111)  基板はトリクロロエチレン,アセトンを用いた超音波 洗浄により脂分を取り除き, H2S04: H202= 1  1の溶液および 10%HF水溶液により表面清浄化を 行った。また,

i基板裏面にはオーミック接触を形 成するために抵抗加熱法による金の真空蒸着を行ったロ

さらに, S i基板表面以外に電流が流れないようにす るため周りをエレクトロンワックスで覆うことにより 図4に示すような陽極化成ホルダーを作製した。 Si  基板の表面をエレクトロンワックスで十分に覆うのは,

S i基板表面以外に電流が流れる場合, S i表面にお ける化成反応が十分に起こらずポーラス化を妨げる要 因となるためである。このようにして作製したホルダ ーを陽極, P 

t

電極を陰極として,図5に示す陽極化 成装置を用いて,フッ酸溶液 (HF: C2H50H: H 

エレクトロン ワックス

アルミ板 i基板

プラスチック板 図4

iホルダー

/1 

20 = 1  1 )中で電流密度20mA/cm2,化 Pt電 極

│ 

i基 板

成時間2 0分の条件の下,陽極化成を行った。また、

陽極化成に必要な過剰正孔を十分にまた均一に供給す るためにタングステンランプにより光照射を行った。

2.  1.  2  レーザーアプレーション法

上に述べた陽極化成法により作製したポーラス

S

i  をターゲットとして用い,低エネルギー密度の励起光 によるレーザーアプレーション法により,ターゲット として対向して置かれた基板上への堆積薄膜の作製を 行った。レーザーアプレーションは大気中において,

波長337. 1 n m,ピーク波長500K W,パルス 幅5nsecのN2パjレスレーザーを励起光として,

図6に示すようにレンズを用いてターゲット表面上に

H F溶 液

5

ターグヴトP S

r ‑ ‑ l 大 気 中

ハ N 

I  f 一 一 一 一 哉 、

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N:パルス

1 R L

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レーザー Ul*H7‑1.11''''̲ 

kf I  S i基 板 5nut 

H

1

図6

集光し,ターゲットのポーラスSiから飛び出してくる粒子を対向して設置した基板上に堆積させ ることにより薄膜の作製を行った。なお,今回の実験に用いた基板の基叡温度はすべて室温である。

(5)

また、従来のレーザーアプレーション法における励起光のエネルギー密度数J

/cm

2に対して,

以上述べたような新しいレーザーアプレーション法における励起光エネルギー密度は約25mJ/

cm

2程度であった。

94082551.PRM 

引川

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1

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2.  2 ポーラスSi堆積薄膜の発光特性

前項で述べた低エネルギー密度の励起光によるレ

一一・ターゲットPS 一一ー堆積基甑

~ 1. 

O. ーザーアプレーション法を用いて作製したポーラス

i堆積薄膜の光学特性について調べるためフォト ルミネッセンス法により PLスペクトルを測定した。

その結果,堆積薄膜はターゲットに用いたポーラス S iと同様に可視光領域において高効率で発光した。

ポーラスSi堆積薄膜のPLスペクトルお そこで,

よび励起光照射によるPLピーク強度の発光ピーク

94082553.PRM  図7

ターゲットに用いたポー ラス

S

i基板の発光特性との比較を行った。ポーラ スSi堆積薄膜およびターゲットに用いたポーラス 強度の劣化特性について,

P‑Si 

6~12Qcm 20mA/cm 20Min. 

R.T. 

貯ーー

(坦掛併記制組h

lu MJ S喪 服 桝 S iのPLスペクトルをそれぞれ図7に示し,又,

双方のPLピーク強度の励起光照射時間に対する発 光ピーク強度の劣化特性をそれぞれ図

8

に示す。図 7より,ポーラスSi堆積薄膜のピークエネルギー はターゲットに用いたポーラスSi基板からのピー クエネルギーより低エネルギー側に 120meVシ

60  20  40 

低密度光励起時閣の}

フトしていることが分かる。また,ルミネッセンス 強度の劣化特性も,ターゲットのポーラスSi基板

が励起光時間とともに強く強度劣化するのに対して 図8

(制 }謝 艇出 ) 堆積薄膜は安定して発光する傾向にあることが分か

った。このような違いはアプレーション時に大気中 におけるレーザ一光照射がポーラスSiに与えた影 響によるものと考えられる。そこで,大気中におい てレンズを用いずに長時間,励起光を照射したポー ラスSi基板のPLスペクトルの変化を調べた。そ 図9に示すように励起光を照射し続けるこ

2  2.5  エネルギー (e'IJ

図9

1.

の結果,

とにより,発光ピークエネルギーは堆積膜と同じよ うに低エネルギー側にシフトし,また発光は減少す ることが分かった。この結果は,この現象は、アプ レーション中にターゲットから飛び出してくる量子

サイズSi微粒子表面がレーザー光照射の影響を受けて表面に何らかの変化を起こしていることを 示唆している。一方,酸素雰囲気中における急速酸化によるポーラスSi発光効率の増大と劣化特

(6)

289 

性の改善が報告されているが,以上の結果は,アプレーション時にポーラスSiターゲットおよび S i微粒子最表面における酸化が光学特性の変化すなわち,ピークエネルギーの赤方へのシフトと 強度の減少による劣化特性の安定化をもたらしていることを示唆している。

2.  3 ポーラスSiの発光特性の安定化

2.  3.  1 陽極酸化法

前節で述べたように,レーザーアプレーション法を 用いて作製したポーラス

S

i堆積薄膜は,ターゲット に用いたポーラスSiと異なる発光特性を示すことが 分かった。また,その原因はアプレーション時の表面 酸化によるものであることが明らかになった。そこで,

我々はさらにレーザーアプレーションによりポーラス S iの発光スペクトルがターゲット基板の発光スペク トルに対して変化せず,また同時に発光強度を減少き せずにを安定化する方法として,ターゲットのポーラ スSi基板の陽極酸化法邑)による表面急速酸化処理を 用いた。図10に示したような陽極酸化装置を用いて 5mol/lの塩酸水溶液中で,電流密度5mA/

cm2の条件の下で陽極酸化を行った。陽極酸化によ る表面酸化の状態変化を知るためにターゲットのポー ラスSi基板‑Pt電極間の電位差の通電時間に対す る変化を測定した結果を図11に示す。図 11に示す ように,陽極化成直後のポーラス SiをA点とし,電 位差が立ち上がる点をB点として, B点よりもさらに 酸化が進んだと思われる点をC点とした。このような 電位差曲線は、表面酸化の進行プロセスと関係づける ことができる。すなわち B点においてSi微粒子は 最表面の酸化が終了し,最表面における電子の授受プ

¥ ¥  

定 電 流 源

iホル,ダー i基 板

塩 酸 水 溶 液

図10 

94091454.PRM 

40 

20 

10 

時間 (Mi n. )  ロセスにかわって表面酸化膜を通した電子のやり取勺 図11 

による内部酸化が例えばトンネル過程等により進行するために電位差が上昇するものとして定性的 に説明できる。我々は,陽極酸化を行わなかったA点のポーラスS i基板,及びB点,

c

点それぞ れの点まで酸化を行ったポーラスSi基板をターゲットとして用いて前節と同じようにレーザーア プレーション法を用いてポーラスSi堆積薄膜の作製を行い、その発光特性を評価した。

2.  3.  2 堆積基桓の発光特性

A点, B点,

c

点のポーラスSi基板をターゲットとして用いて作製した各堆積薄膜の発光特性 についてPLスペクトル及びPLピーク強度の励起光照射時間に対する劣化特性を測定した。 A点 のポーラスSiをターゲットに用いて作製したポーラスSi堆積薄膜は2. 2で述べたようにター

(7)

ゲットとは異なる光学特性を示した。 B点におけるポーラスSiをターゲットに用いて作製したポ ーラスSi堆積薄膜とターゲットに用いた陽極酸化したポーラスSi基板のPLスペクトルを図1

2に,またPLピーク強度の劣化特性を図13に示す。図 12及び図 13より, B点においては堆 積薄膜はターゲットに用いた陽極酸化したポーラスSi基板とほぼ一致した発光特性を示しており,

陽極酸化によりターゲットとして用いたポーラスSi基板がレーザーアプレーションによる光酸化 に対して安定であることが分かる。しかしながら,

c

点まで陽極酸化したターゲットのポーラス

S i基板ではアプレーションは観測されたがすでに発光特性を示さなかった。これはC点における ポーラスSi基板の電位差の増加が飽和する傾向から考えると内部まで十分酸化が進んだために発 光を示さなかったためであると考えられる。このことは,ポーラスSiの発光機構が励起される領 域と発光領域とが空間的に分離していることを示唆している。すなわち,

i微細構造の内部で励 起された電子・正孔対が最表面近傍に存在する発光再結合中心を介して高効率に発光しているとい う描像を示唆しているものと思われる。ともあれ,以上のことから,陽極化成後にポーラス

S

i基 板をB点まで陽極酸化することにより,レーザーアプレーション時にターゲットとの比較において 光学特性の変化しないポーラスSi堆積薄膜を作製できることが分かった。

1. 

一一一ターゲット

PS

ト ー 堆 積 基 板

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PSi  6''120C  20mA/cm

20Min. 

R.T 

2.5  エネルギーCeV)

図 12 

% 却

40 60  低密度光励起時閉め}

図 13 

2.  4 堆積基桓の構造的評価

次に,

B

点まで陽極酸化を行ったポーラス

S

i基板をターゲットとして用いたレーザーアプレー ション法により作製した堆積薄膜の構造的評価を走査型電子顕微鏡 (SEM)及びSEMに比べて 高空間分解能を期待できる原子間力顕微鏡

( AFM)

を用いて行った。典型的なポーラス

S

i堆積 薄膜のSEM写真を図 14に示す。図14より,堆積薄膜は大小の微細なSiの破片から形成され ていることが分かり,必ずしも連続膜とはなっていない。特に,大きさが数μ m程度のものは均一 な連続膜を得るうえで障害になるものと考えられる。そこで,それらの大きなサイズの破片は取り 除く必要がある。大きなサイズの破片を取り除く方法として我々は,最も単純な方法であると考え

られる水洗処理を用いた。水洗処理を行った堆積基板のSEM像を図 15に示す。図 15より,水 洗処理を行うことによりサイズの大きなSiの破片が取り除かれ,サイズの小さな破片のみが基板 上に堆積することが分かる。このようにしてアプレーションと水洗処理を繰り返すことにより得ら れた堆積薄膜のSEM像を図 16,図 17,図18に示す。それぞれは繰り返しプロセスを lサイ

クル, 3サイクル, 6サイクル行った堆積薄膜のSEM像である。

(8)

図14 

図16  図17 

さらに堆積密度が十分に高く連続膜に近づいていると 思われる図 17の白濁しているエッジ部分を高倍率 A

F M像を図 19に示す。図 19より,この部分では後 述するように約50nmのサイズの微粒子の堆積し連 続膜になっていることが分かる。そこで,

SEM

写真 において,同様に白濁している部分の面積を測定する ことにより堆積膜の表面被覆率を調べた。レーザーア プレーション法により粒子を堆積させた後,水洗処理 行うプロセスのサイクル回数に対する表面被覆率を表

1に示す。

291 

図15 

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図18 

19 

(9)

表l サイクル回数と粒子の被覆率

回数 被覆率

1回 0.0104  3回 0.2353  6回 0.5797 

表 lに示したように,繰り返し回数を増やすに従い,堆積薄膜の基板表面被覆率が増加している 事が分かる。以上より, レーザーアプレーション法による堆積と,水洗処理による大きなサイズの S i破片を取り除くプロセスとを繰り返すことにより,量子サイズに近い小さな発光性のS 微細 構造物が堆積した連続薄膜を基板上の十分広い範囲にわたって得ることができるものと考えられる。

2.  5 従来のレーザーアプレーション法で作製した堆積薄膜との膜構造の比較

通常のレーザーアプレーション法による薄膜作製においては,真空中あるいは不活性ガス中にお いてエネルギー密度の高い励起光を用いて堆積薄膜が作製される。一般的には,このようなアプレ ーションはターゲット表面における局所的かっ急速な溶解によりクラスタービームが形成され,対 向基板上に堆積膜が形成されるものと考えられる。一方,本報告にあるレーザーアプレーション法 では,大気中において低エネルギー密度の励起光を用いて堆積薄膜の形成が可能である。そこで,

通常のアブレーション法を用いて単結晶Si基板をターゲットとして作製した堆積薄膜と陽極酸化 処理を施したポーラスS i基板をターゲットとした堆積薄膜の構造比較をSEMおよびA F Mを用 いて行った。

2.  5.  1  SEM観 察

まず,従来法により作製した単結晶S 基板をターゲットとする堆積薄膜のSEM写真を図20 に示す。図20は,従来法を用いて作製した堆積薄膜は我々の用いてSEMの分解能では分離でき ないほど小さなクラスタが一様に堆積した薄膜であることを示している。これに対して,ポーラス S i基板をターゲットとして今回作製した堆積薄膜は,図21にSEM像を示すように数十nmサ イズの微細構造が堆積した薄膜であることが分かる。

図20 図21 

(10)

293 

2.  5.  2  A F M観察

従来法を用いて作製した単結晶Siをターゲットとする堆積薄膜と新しいアプレーション法を用 いて作製したポーラスSiをターゲットとする堆積薄膜のSEMによる構造比較の結果,両者には 明らかな相違が観察された。しかしながら, S E Mではその分解能上の制約から微細な部分のより 微細な構造を観察することは難しい。そこで,次に,双方の薄膜についてSEMよりも高空間分解 能を有しているAFMを用いて構造の観察を行った。図20において従来法により作製した薄膜の 一様に堆積している部分のAFM像を図22に示す。図22より,単結晶S をターゲットとして 用いた通常のレーザーアプレーション法による堆積薄膜はかなり高分解能にしても一様平坦な構造 であることがわかる。これに対して,今回報告した新しいアプレーション法により堆積させた薄膜 の場合のSEM像である図21の領域をさらに拡大したA F M像を図23に示す。図23より,ポ ーラスS 堆積基板には約50nmのサイズのSi微粒子状のものが堆積していることが分かる。

図22 23

以上より,通常のアプレーション法により作製した堆積薄膜は平坦で均一な薄膜構造であるのに 対し,今回作製した陽極酸化を行ったポーラスSi基板をターゲットとして用いることにより作製 した堆積薄膜は約50nmサイズのS 微粒子状のものが堆積した膜構造を有していることが分か った。しかしながら,この堆積物がさらにnm‑+tイズのSi微粒子から構成されているのか,ある いは,量子スポンジであるのかについては,今回のAFM観測においても区別できなかった。

L

盆 益

バンドギャップが約1. leVで間接遷移型半導体である単結晶Si基板を多孔質化することに より得られる高効率可視発光性のポーラスSi基板をターゲットとして用いた場合,低エネルギー 密度の励起光による従来にないレーザーアブレーション現象が起きることを見いだし,さらにこの 新しいレーザーアブレーション法を用いることによりターゲットであるポーラスSi基板から粒径 50nm程度のターゲットと同じ発光特性を有するSi微粒子状のものからなる堆積薄膜を得るこ とができることを示した

(11)

陽極化成直後のポーラス

S

基板をターゲットとした低密度レーザ一光照射によるアプレーショ ンにより作製した堆積薄膜のPLスペクトル及びPLピーク強度の励起光照射時間に対する劣化特 性について測定を行った結果,作製した堆積薄膜はターゲットとして用いたポーラス

S

基板とは 異なる発光特性を示すことが分かった。また,レーザー光照射によるポーラス

S

i基板のスペクト ル変化および劣化特性の変化より,レーザーアプレーション時に生じるSi微粒子構造の最表面酸 化がターゲットと異なる発光特性を示す原因であることが分かった。ポーラスSi堆積薄膜の発光 スペクトルと発光効率の安定化を図るためにターゲットとなるポーラスSi基板の発光特性の安定 化について検討した。制御性良く発光特性を安定化させる方法として陽極化成後の陽極酸化法を用 いた結果,通電時に電位差の立ち上がる点 (B点)まで陽極酸化を行うことにより発光が高効率で 安定となり,アプレーションによる堆積薄膜の光学特性がターゲットと一致した発光を示すという ことが明らかになった。次に,このようにして作製した堆積薄膜の膜構造をSEMを用いて評価し た結果,堆積薄膜は大小さまざまなSi破片が堆積したものであることがわかった。さらに,水洗 処理を行うことによりμ mサイズの大きなサイズの破片を取り除くことができ,数十n mサイズの S i微粒子の堆積が可能であることが分かった。また, レーザーアプレーション法にる堆積と水洗 処理を繰り返し行うことにより数十nmサイズのS 微粒子からなる堆積膜の基板表面の被覆率を 増加させることができ,連続薄膜を作製することが可能であることも分かった。

従来のレーザーアプレーション法により作製した単結晶S をターゲットとする堆積薄膜との膜 構造の比較をSEM及びAFMを用いて行った結果,従来の方法を用いて作製した単結晶Si基板 をターゲットとする堆積薄膜は平坦かつ均一に連続膜が堆積しているのに対して,ポーラスSi基 板をターゲットとして用いた低密度励起の新しいレーザーアプレーション法により作製した堆積薄 膜は量子サイズに近い粒径約50nmのSi微粒子状のものが堆積した薄膜であることが分かった。

以上より,陽極酸化したポーラスSi基板微細構造をターゲットとして用いた低エネルギー密度の 励起光によるレーザーアプレーション法により従来の高エネルギー密度レーザーアプレーション法 による薄膜作製では得られなかった量子効果を有する数十n mサイズのSi微細構造よりなる可視 発光性の新しい薄膜の形成の可能を示すことができた。

誼査

本研究において, SEM観察を行うにあたって御指導,御討論頂いた本学機械工学科岡田庸敬教 授,前川紀英技官, AFM観察を行うにあたって御指導,御討論頂いた本学材料工学科高島正之助 教授,米沢晋助手に心から厚く御礼申し上げます。

委主玄自主

1) 

A .   G .   C u l l  i s   a n d   L .   T .   C a n h a m ;   N a t u r e .  3 5 3

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越田信義; 固体物理.

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J. 

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(1

9 9 2 )  

図 14  図 1 6  図 17  さらに堆積密度が十分に高く連続膜に近づいていると 思われる図 17の白濁しているエッジ部分を高倍率 A F M像を図 19に示す。図 1 9より,この部分では後 述するように約 50nmのサイズの微粒子の堆積し連 続膜にな っていることが分かる 。 そこで, SEM 写真 において,同様に白濁している部分の面積を測定する ことにより堆積膜の表面被覆率を調べた。 レーザーア プレーション法により粒子を堆積させた後,水洗処理 行うプロセスのサイクル回数に対する表面被覆率を表
表 l サイクル回数と粒子の被覆率 回数 被覆率 1 回 0.0104  3 回 0.2353  6 回 0.5797  表 lに示したように,繰り返し回数を増やすに従い,堆積薄膜の基板表面被覆率が増加している 事が分かる。以上より, レーザーアプレーション法による堆積と,水洗処理による大きなサイズの S  i 破片を取り除くプロセスとを繰り返すことにより,量子サイズに近い小さな発光性の S 微細 構造物が堆積した連続薄膜を基板上の十分広い範囲にわたって得ることができるものと考えられる。 2

参照

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