著者 伊多波 良雄
雑誌名 經濟學論叢
巻 63
号 2
ページ 181‑198
発行年 2011‑09‑20
権利 同志社大學經濟學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013630
【論 説】
道州制と国と地方の役割分担
*伊多波 良 雄
は じ め に
平成22年12月1日に関西を中心とする7府県からなる関西広域連合が設 立されて,道州制への一歩が始まった.参加した都府県は,滋賀県,京都府,
大阪府,兵庫県,和歌山県,鳥取県および徳島県である.九州でも,国の出 先機関の受入機関として,「九州行政広域機構」の設置を模索している.江口
(2007),佐々木(2010)などは道州制を推進しているが,岡田(2010)などの ように道州制に批判的な主張もある.
道州制の議論をさらに進めるためには,道州制によってどのような効果が 期待されるのか,あるいは中央政府と地方の役割分担に関する政策と道州制 の関係などについて理解を深める必要がある.
本稿は,人々は道州制の実現と国と地方の役割分担のありかたの関係につ いてどのよう考えているのかを,アンケート調査の個票データを用いて探る ことを目的としている.
道州制のアンケート調査については,経済広報センター(2008),帝国デー タバンク(2009),野田(2010)などがある.
経済広報センター(2008)は,財団法人経済広報センターに登録しているe ネット社会広聴会員3,054名に対して同センターが行ったものである.これ によると,道州制の議論を進めることに「賛成」は男性が60%,女性が23%
* なお本稿の執筆にあたっては,平成22年度私立大学等経常費補助金特別補助高度化推進特別 経費大学院重点特別経費(研究科分)の助成を受けました.
であること,「どちらともいえない・分からない」は男性が31%,女性が62%
であること,道州制の導入で特に期待される効果は「独自の産業振興策が展開 され,雇用が創出される」(64%),「地域医療・介護の体制充実が図られる」(61%)
であること,道州制導入に向けて当面必要となる改革として「地方分権改革の 実現(国から地方への大幅な権限の移譲)」が71%であることなどが示されている.
企業を対象に調査した帝国データバンク(2009)では,企業の約6割が地方 分権は地方圏の活性化に「つながる」と考え,地方分権への期待として「中 央政府のコスト削減」と「地方特性に合わせた行政政策」が挙げられている.
また,地方分権の懸念として「地方間における格差拡大」が指摘されている.
野田(2008)は,兵庫県の政令指定都市,中核市,特例市などの住民を対 象に500サンプルを用いて分析している.その結果,県の政策に対する住民 の関心や認識が道州制による効果に影響を及ぼすと指摘している.たとえば,
県から市町村への権限・財源移譲意向や県の行政サービス・政策の認識が広 域的な課題への対応強化,効率的な行政体系強化および地域活性化,競争力 強化にプラスの影響を及ぼすと指摘している.
これらの先行研究との関係から述べると,例えば経済広報センター(2008)
では,国から地方への大幅な権限の移譲が必要であることが示されたが,そ の内容がどのようなものであるかを明らかにするのが本稿の目的である.
本稿で用いるデータは,「地域間格差生成の要因分析と格差縮小政策」(科学研 究費補助金[基盤研究A]研究代表・橘木俊詔)の下で実施されたアンケート調査(「地 域移動と生活環境に関するアンケート調査」調査期間,2008年2月24日(日)〜3月2 日(日))の個票データである.インターネット調査会社「gooリサーチ」に依頼し,
調査対象は満20歳以上の調査会社提携モニターである.調査票配信数は19,158 件,調査票回収数は8,890件で,回収率は約46.4%であった.
第1節では,「道州制」という言葉の認識度について簡単に述べる.第2節 では,後で行われる統計的分析で用いられる変数と道州制に関する意見との 関係について説明する.第3章で,道州制と国と地方の役割分担の関係につ
いて順序ロジットを用いて分析を試み,最後にまとめる.
1 「道州制」という言葉の認識度
アンケート調査では「道州制」という言葉の認識度について聞いている.
第 1 図に示されているように,言葉自体を知っている人は65%程であるが,
意味を知っている人は36%である.「道州制」という言葉は十分普及してい ないと言える.
性別および年代で見てみると,第 2 図のとおりである.「道州制」という言
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
男性・20代 男性・30代 男性・40代 男性・50代 男性・60代 男性・70代…
女性・20代 女性・30代 女性・40代 女性・50代 女性・60代 女性・70代…
見聞きしており,意味もおおよそわかる
見聞きしているが,言葉の意味はわからない 知らない 第 2 図 「道州制」という言葉の認識度
0% 20% 40%
見聞きしており,
意味もおおよそわかる 見聞きしているが,
言葉の意味はわからない
知らない 36%
28%
36%
第 1 図 「道州制」という言葉の認識度
葉の認識度は男性が高く,年齢が上がるにつれて高くなる.年齢が上がるに つれて認識度が高くなる傾向は,女性の場合も同様である.道州制に関して 男性が女性よりも感心を持っていること,年齢が高くなるにつれて関心が高 くなる傾向は経済広報センター(2008)が行った結果と同じである.
道州制の実現に関する意見を見ると,第 3 図のようになる.道州制の実現 に賛成であるかどうかを聞くと,「どちらともいえない」が圧倒的に多い.賛 成(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」)の割合は,24.5%と多くない.
「道州制」という言葉の認識度と道州制の実現に関する意見の関係を見てみ ると,第 4 図で示されているように,「知らない」から意識が高くなるほど,
賛成の割合が高くなる.このことから,言葉の認識度の引き上げが道州制の
0% 20% 40% 60% 80% 100%
見聞きしており,意味もおおよそわかる 見聞きしているが,言葉の意味はわからない 知らない
そう思う どちらかといえばそう思う どちらともいえない どちらかといえばそう思わない そう思わない
第 4 図 「道州制」という言葉の認識度と道州制の実現に関する意見
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000(人)
そう思う どちらかといえばそう思う どちらともいえない どちらかといえばそう思わない
そう思わない 5.8%
7.2%
62.5%
16.9%
7.6%
第 3 図 道州制の実現に賛成である
導入に影響すると考えることができる.ちなみに,「見聞きしており,意味も おおよそわかる」回答者でかつ道州制に賛成である回答者は1,362人である.
総回答者数は8,890人なので約15%に相当する.
2 道州制の実現に関する意見を説明する変数
政府の政策に関する意見の道州制の実現に関する意見におよぼす影響を見 るため,次節で順序ロジットを用いる.ここではそこで用いられる説明変数 を取り上げる.政府の政策としてアンケート調査では次の5つの政策を挙げ,
「そう思う,どちらかといえばそう思う,どちらともいえない,どちらかとい えばそう思わない,そう思わない」の5段階で回答を求めている.これらの 政策は,国と地方の役割分担に関するもので,次のとおりである.
・ 国と地方の役割の明確化(地方のことは地方に任せ,国は外交や防衛などの役割 に専念するほうがよい)
・ 地域経済活性化(地域経済の活性化には国の支援が必要である)
・ 低所得者への補助(低所得者への補助は,国が責任を持つべきだ)
・ 地方政府の独自財源(国が中心になって財源[税金など]を調達するのではなく,
地方政府が独自に財源を調達する仕組みが望ましい)
・公共事業と地域雇用(公共事業には,地域の雇用環境を支える効果がある)
コントロール変数として,性別,年代,年収,最終学歴,金融資産,負債,
都市規模,日本8地域を取り上げる.道州制との実現との関係でこれらの変 数の記述統計量を示すと第 1 表のようになる.以下では,これらの変数と道 州制の実現との関係について述べる.5つの政府の政策については図を示し て詳しく説明する.
性 別
男性が賛成する(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」)比率が女性より大 きい.先に見たように,女性の道州制に関する認識度が低いことが影響して いるものと思われる.
道州制に賛成か そう思うどちらか
といえばそう思う どちらとも
いえない どちらかといえば
そう思わない
思わないそう x二乗検定
性 別 男性 12.4% 22.1% 51.6% 7.3% 6.6% ***
女性 3.0% 11.8% 72.9% 7.0% 5.3%
年 代 20代 5.8% 16.6% 60.5% 9.6% 7.5% ***
30代 5.4% 15.3% 66.2% 7.1% 6.1%
40代 7.5% 16.2% 63.6% 6.8% 5.8%
50代 10.7% 19.0% 59.8% 5.9% 4.6%
60代 14.6% 21.7% 51.8% 6.0% 6.0%
70代以上 17.3% 25.9% 46.0% 8.6% 2.2%
年 収 なし 3.2% 12.2% 72.9% 6.7% 5.1% ***
50万円未満 5.5% 14.2% 66.6% 7.9% 5.7%
250〜450万円未満 9.1% 16.1% 61.1% 6.6% 7.0%
450〜750万円未満 10.4% 20.9% 55.4% 7.8% 5.5%
750万円以上 11.6% 26.9% 50.2% 6.2% 5.2%
わからない 3.7% 11.4% 70.0% 6.2% 8.8%
最終学歴 中学卒 5.9% 16.7% 64.7% 6.8% 5.9% ***
高校卒 7.8% 15.5% 64.9% 6.3% 5.6%
専修学校・短大・高専卒 4.8% 15.6% 66.9% 6.7% 6.0%
大学卒 9.4% 19.8% 56.2% 8.3% 6.3%
大学院卒 13.2% 21.0% 48.4% 11.2% 6.1%
その他 8.3% 16.7% 50.0% 8.3% 16.7%
金融資産 ない 7.3% 13.9% 65.0% 6.4% 7.4% ***
750万円未満 7.1% 17.1% 62.3% 7.9% 5.6%
750〜2,500万円未満 9.2% 20.2% 58.8% 6.4% 5.3%
2,500万円以上 13.4% 25.6% 48.8% 7.0% 5.1%
わからない 5.0% 11.7% 72.1% 5.7% 5.5%
負 債 ない 7.7% 16.4% 62.4% 7.1% 6.4% ***
750万円未満 8.4% 18.8% 59.8% 7.8% 5.2%
750〜2,500万円未満 7.6% 18.0% 62.1% 7.1% 5.2%
2,500万円以上 5.9% 17.3% 64.6% 6.9% 5.3%
わからない 6.0% 11.3% 71.2% 6.2% 5.3%
現在の居住地
域の都市規模 大都市(東京23区,政令指定都市,100万人以上の都市) 7.4% 18.0% 62.7% 5.9% 6.0% * 中都市(100万人未満の県庁所在都市) 7.1% 15.8% 63.7% 7.6% 5.7%
その他の都市 8.0% 17.2% 61.2% 7.8% 5.9%
町・村 7.5% 14.2% 65.1% 7.1% 6.1%
第 1 表 記述統計量
日本8地域 北海道 ・ 東北 9.0% 17.4% 61.8% 6.1% 5.7% ***
関東 7.1% 17.5% 63.2% 6.7% 5.5%
甲信越・北陸 7.0% 12.9% 63.1% 11.7% 5.3%
東海 5.9% 16.3% 65.0% 7.0% 5.8%
近畿 7.4% 16.7% 62.3% 7.3% 6.2%
中国 6.9% 16.7% 61.0% 8.1% 7.3%
四国 7.9% 18.4% 55.4% 9.7% 8.6%
九州 ・ 沖縄 11.3% 16.9% 60.2% 5.8% 5.8%
地方のことは地 方に任せ,国(中 央政府)は外交 や防衛などの役 割に専念するほ うがよい
そう思わない 5.1% 11.0% 53.7% 7.3% 22.9% ***
どちらかといえばそう思わない 2.1% 10.4% 68.2% 11.8% 7.6%
どちらともいえない 1.6% 8.8% 79.0% 6.4% 4.2%
どちらかといえばそう思う 3.9% 26.5% 59.0% 7.1% 3.4%
そう思う 31.7% 22.5% 34.9% 4.7% 6.2%
地域経済の活 性 化 に は 国
( 中 央 政 府 ) の支援が必要 である
そう思わない 35.2% 14.6% 28.2% 4.7% 17.4% ***
どちらかといえばそう思わない 18.1% 25.8% 39.1% 9.7% 7.3%
どちらともいえない 4.6% 13.8% 73.7% 4.7% 3.2%
どちらかといえばそう思う 4.2% 19.0% 63.9% 8.6% 4.4%
そう思う 12.3% 13.8% 56.6% 6.6% 10.7%
低所得者への 補助は,国(中 央政府)が責 任を持つべき だ
そう思わない 23.3% 12.8% 35.8% 7.8% 20.3% ***
どちらかといえばそう思わない 11.2% 21.5% 49.6% 10.9% 6.8%
どちらともいえない 3.8% 13.5% 73.0% 6.0% 3.6%
どちらかといえばそう思う 4.7% 21.3% 62.3% 7.8% 3.8%
そう思う 13.4% 13.8% 56.7% 6.5% 9.7%
国(中央政府)が中心 になって財源(税金な ど)を調達するのでは なく,地方政府が独自 に財源を調達する仕 組みが望ましい
そう思わない 9.7% 8.3% 40.3% 6.2% 35.5% ***
どちらかといえばそう思わない 5.7% 14.6% 56.2% 14.0% 9.4%
どちらともいえない 2.1% 9.9% 77.2% 6.7% 4.1%
どちらかといえばそう思う 7.3% 29.2% 52.7% 6.8% 3.9%
そう思う 34.9% 15.8% 37.4% 4.2% 7.8%
公共事業には,
地域の雇用環 境を支える効 果がある
そう思わない 18.6% 16.8% 36.9% 6.7% 21.0% ***
どちらかといえばそう思わない 6.8% 18.8% 54.3% 11.4% 8.7%
どちらともいえない 4.2% 10.9% 75.3% 6.0% 3.7%
どちらかといえばそう思う 5.5% 22.6% 60.1% 7.5% 4.3%
そう思う 21.2% 15.0% 48.6% 6.2% 9.0%
***: 「道州制に賛成か」とそれぞれの変数の間には関連性はないという帰無仮説は1%で棄却される.
*: 「道州制に賛成か」とそれぞれの変数の間には関連性はないという帰無仮説は5%で棄却できない.
年 代
傾向としては,年代が上がるにつれて賛成する(「そう思う」・「どちらかとい えばそう思う)比率が増加し,反対する(「どちらかといえばそう思わない」・「そう 思わない」)比率が低下している.
年 収
所得と道州制の実現に関する意見の関係を見てみると,所得が高くなるに したがって道州制に賛成(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」)の割合が高 くなる.道州制に反対(「どちらかといえばそう思わない」・「そう思わない」)の割 合は,「なし」と「750万円以上」でやや低くなっているが,ほとんど変らない.
最終学歴
自身の最終学歴と道州制の実現に関する意見の関係を見てみると,傾向と して中学卒から高学歴になるほど,賛成(「そう思う」・「どちらかといえばそう思 う」)の割合が高くなっているが,専修学校・短大・高専卒で少し低下している.
他方,反対(「どちらかといえばそう思わない」・「そう思わない」)の割合はわずか ながら増えている.
金融資産
ここで金融資産は預貯金や株式などの債権を意味している.金融資産が多 くなるにしたがって,道州制に賛成(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」)
の割合が増加している.他方,反対(「どちらかといえばそう思わない」・「そう思 わない」)の割合は,やや低下しているように思われる.
負 債
住宅や車などのローンからなる負債と道州制の実現に関する意見の関係を 見ると次のようになる.賛成(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」)の割合は,
「ない」と2,500万円以上で低く,750万円未満と750〜2,500万円未満でや や高い.「どちらかといえばそう思わない」と「そう思わない」の合計の割合 は,負債の増加につれてやや低下している.
1) 野田(2008)86ページを参照せよ.
現在の居住地域の都市規模
都市規模は大都市,中都市,その他の都市と町・村に分けている.都市規 模別に道州制の実現に関する意見の差は賛成と反対とも見られない.野田
(2008)でも,自治体の規模と道州制を導入した場合の効果の間には関係がな いことが指摘されている1).
道州制の実現に関する意見の地域間の差
日本を8つの地域に分け,これらと地域ごとの道州制の実現に関する意見 を見てみる.九州・沖縄,北海道・東北でやや賛成の割合が高く,甲信越・
北陸でやや低くなっている.甲信越・北陸では,反対の意見(「どちらかといえ ばそう思わない」・「そう思わない」)の割合も高くなっている.賛成(「そう思う」・
「どちらかといえばそう思う」)の割合は地域間での差はあまり見られない.
政府の政策
第 5 図に見られるように,「地方のことは地方に任せ,国(中央政府)は外 交や防衛などの役割に専念するほうがよい」について賛成(「そう思う」・「どち らかといえばそう思う」)と思う回答者は,道州制の実現について賛成する割合 が高くなる.同時に,反対(「どちらかといえばそう思わない」・「そう思わない」)
する回答者の割合も低下している.
地域経済の活性化には国(中央政府)の支援が必要であるとする考えに反対 0% 10%20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%
どちらかといえばそう思うどちらともいえないそう思う どちらかといえばそう思わないそう思わない
そう思う
道州制の実現について
どちらかといえばそう思う どちらともいえない どちらかといえばそう思わない そう思わない
第 5 図 地方のことは地方に任せ,国(中央政府)は外交や防衛などの役割に専念す るほうがよい
する回答者(「どちらかといえばそう思わない」・「そう思わない」)は,第 6 図で示 されているように,道州制の実現に賛成する割合(「そう思う」・「どちらかといえ ばそう思う」)が高くなっている.国の支援策について「どちらともいえない」
と考える回答者は,道州制の実現に関しても「どちらともいえない」と回答し ている割合が高い.
低所得者への補助は,国(中央政府)が責任を持つべきだという考えについ ては,第 7 図に示されている.この考えに「どちらともいえない」としてい る回答者は,道州制の実現に関して「どちらともいえない」と回答している 割合が高い.国には低所得者補助の責任があるという考えに賛成する回答者
(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」)と反対する回答者(「どちらかといえば 第 6 図 地域経済の活性化には国(中央政府)の支援が必要である
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
どちらかといえばそう思うどちらともいえないそう思う どちらかといえばそう思わないそう思わない
そう思う
道州制の実現について
どちらかといえばそう思う どちらともいえない どちらかといえばそう思わない そう思わない
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%
どちらかといえばそう思うどちらともいえないそう思う どちらかといえばそう思わないそう思わない
そう思う
道州制の実現について
どちらかといえばそう思う どちらともいえない どちらかといえばそう思わない そう思わない
第 7 図 低所得者への補助は,国(中央政府)が責任を持つべきだ
そう思わない」・「そう思わない」)を比較すると,賛成する回答者が道州制に賛 成する割合がやや低下している.
国(中央政府)が中心になって財源(税金など)を調達するのではなく,地方 政府が独自に財源を調達する仕組みが望ましいかという問いについては,第 8 図に見られるように,賛成する回答者(「そう思う」・「どちらかといえばそう思 う」)は,道州制の実現に賛成する回答(「そう思う」・「どちらかといえばそう思う」)
の割合がかなり高い.
公共事業には,地域の雇用環境を支える効果があるという考えについてみ てみると,第 9 図に示されているように,この考えに「どちらともいえない」
としている回答者は,道州制の実現に関して「どちらともいえない」と回答 第 8 図 国(中央政府)が中心になって財源(税金など)を調達するのではなく,地
方政府が独自に財源を調達する仕組みが望ましい
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%
どちらかといえばそう思うどちらともいえないそう思う どちらかといえばそう思わないそう思わない
そう思う
道州制の実現について
どちらかといえばそう思う どちらともいえない どちらかといえばそう思わない そう思わない
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%
どちらかといえばそう思うどちらともいえないそう思う どちらかといえばそう思わないそう思わない
そう思う(道州制)
道州制の実現について
どちらかといえばそう思う どちらともいえない どちらかといえばそう思わない そう思わない
第 9 図 公共事業には,地域の雇用環境を支える効果がある
している割合が高い.また,公共事業のこの考えに賛成する回答者(「そう思う」・
「どちらかといえばそう思う」)と反対する回答者(「どちらかといえばそう思わない」・
「そう思わない」)を比較すると,両方の回答者が回答者が道州制に賛成する割 合はほぼ同じであるが,道州制に反対する割合はこの考えに賛成する回答者 でやや少なくなっている.
以上のクロス表で,「道州制に賛成か」とそれぞれの変数の間には関連性は ないという帰無仮説は,現在の居住地域の都市規模を除いて1%で棄却される.
3 順序ロジット分析
これまで,グラフを用いて,道州制の実現に関する意見とさまざまな属性 との関係について見てきた.ここでは,順序ロジット分析を用いて,統計的 に分析を試みる.被説明変数は「道州制の実現に賛成であるか」の質問に対 して答えられた,〔そう思わない,どちらかと言えばそう思わない,どちらで もない,どちらかと言えばそう思う,そう思う〕である.
推定結果は第 2 表に示されている.女性の場合,係数の符号はマイナス,1%
水準で有意である.参照集合は男性なので,女性は男性に比べて道州制の実 現に賛成する傾向が小さい.
年代の場合,係数の符号はプラス,1%水準で有意となっている.年代が高 くなるほど道州制の実現に賛成する傾向は大きい.
年収の係数は,有意ではないが,年収の高い人ほど道州制の実現に賛成す る傾向にある.
学歴の場合,係数は有意でない.高校卒を参照カテゴリーとするとき,専 修学校・短大・高専卒,大学院卒で係数の値がプラスになっているので,こ れらの学歴で高校卒に比べて道州制の実現に賛成する傾向が大きくなってい る.
預貯金や株式などの金融資産の場合,2500万円以上において1%水準で有 意になっている.750万円〜2500万円未満でも係数の符号はプラスなので,
被説明変数(道州制の実現に賛成である)
〔 そう思わない=1,どちらかと言えばそう思わない=2, どちらとも言えない=3,ど ちらかと言えばそう思う=4,そう思う=5〕
係数[t値]
性 別 男性(参照集合)
女性 -0.43019
[-7.65]
年 代 年代 0.05800
[2.81]
年 収 なし 0.07041
[1.02]
50万円未満(参照集合)
250〜450万円未満 0.03388
[0.51]
450〜750万円未満 0.05094
[0.72]
750万円以上 0.12058
[1.18]
分からない -0.19763
[-1.45]
学 歴 中学卒 -0.17012
[-1.20]
高校卒(参照集合)
専修学校・短大・高専卒 0.03898
[0.71]
大学卒 -0.01772
[-0.31]
大学院卒 0.09375
[0.85]
その他 -0.04182
[-0.10]
金融資産 なし -0.06534
[-1.16]
750万未満(参照集合)
750万円〜2500万円未満 0.10087
[1.45]
2500万円以上 0.30403
[2.90]
分からない -0.05038
[-0.52]
第 2 表 順序ロジット分析の結果
負 債 なし -0.11322
[-1.88]
750万未満(参照集合)
750万円〜2500万円未満 -0.09031
[-1.17]
2500万円以上 -0.16499
[-1.54]
分からない -0.05374
[-0.42]
都市規模 大都市(東京23区,政令指定都市,100万人以上の都市) 0.07237
[0.90]
中都市(100万人未満の県庁所在都市) 0.06710
[0.79]
その他の都市 0.07299
[0.96]
町・村(参照集合)
地 域 北海道 ・ 東北(参照集合)
関東 -0.18088
[-2.48]
甲信越・北陸 -0.41557
[-3.67]
東海 -0.36015
[-4.10]
近畿 -0.23053
[-2.88]
中国 -0.32654
[-2.97]
四国 -0.35922
[-2.51]
九州 ・ 沖縄 0.05209
[0.52]
政府の政策 地方のことは地方に任せ,国(中央政府)は外交や防衛
などの役割に専念するほうがよい 0.44596
[18.40]
地域経済の活性化には国(中央政府)の支援が必要である -0.08360
[-3.03]
低所得者への補助は,国(中央政府)が責任を持つべきだ 0.05913
[2.44]
国(中央政府)が中心になって財源(税金など)を調達するの
ではなく,地方政府が独自に財源を調達する仕組みが望ましい 0.46649
[16.48]
公共事業には,地域の雇用環境を支える効果がある 0.20408
[8.38]
cut(そう思わない=1) 0.3311365
[1.63]
金融資産の所有が大きくなると道州制の実現に賛成する傾向が強くなってい る.
負債の場合,「なし」において10%で有意である.符号はマイナスなので 750万円未満に比べて賛成する傾向は低下している.
都市規模の場合,有意ではない.参照集合を町・村とするとき,都市規模 の係数はプラスで,その他の都市を除いて,都市規模が大きくなるほど値が 大きくなっているので,都市規模が大きくなるほど,道州制の実現に賛成す る傾向がある.
日本を8つの地域に分けた場合,すべての地域において係数はマイナスで あり,1%あるいは5%で有意になっている.参照カテゴリーは北海道 ・ 東北 なので,係数の符号から,九州 ・ 沖縄で道州制の実現に賛成する傾向が一番 高い.ついで,北海道・東北で道州制の実現に賛成する傾向が強い.甲信越・
北陸,東海では,道州制の実現に賛成する傾向は小さい.
国と地方の役割分担に関する5つの政策について,回答者は選択肢〔1そ う思わない,2どちらかといえばそう思わない,3どちらともいえない,4ど ちらかといえばそう思う,5そう思う〕の中から1つ選択している.順序デー タなので共変量として分析した.いずれの変数も1%水準で有意となっている.
この中で,国と地方の役割の明確化,低所得者への補助,地方政府の独自財源,
p<0.1, p<0.05, p<0.01.[ ]内はt値である.
cutは,( )内の値よりも大きい値になる確率を示すロジスティック分布のしきい値である.
cut(どちらかと言えばそう思わない=2) 1.24684
[6.16]
cut(どちらとも言えない=3) 4.677446
[22.39]
cut(どちらかと言えばそう思う=4) 6.233281
[29.08]
サンプル数 8,890
対数尤度 -9423.123
Pseudo R2 0.0748
LR test LR x(35)=1,522.82
Prob>x2=0.000
公共事業と地域雇用は国と地方の役割の明確化の場合,係数の符号はプラス なので,地方のことは地方に任せ,国は外交や防衛などの役割に専念するほ うがよいと思う人ほど,低所得者への補助は国が責任を持つべきだと思う人 ほど,道州制の実現に賛成する傾向がある.
地方政府の独自財源の場合,係数の符号がプラスなので,国が中心になっ て財源を調達するのではなく,地方政府が独自に財源を調達する仕組みが望 ましいと思う人ほど道州制の実現に賛成する傾向がある.
公共事業と地域雇用の場合も,係数の符号がプラスなので,公共事業には,
地域の雇用環境を支える効果があると思う人ほど,道州制の実現に賛成する 傾向がある.
地域経済活性化(地域経済の活性化には国の支援が必要である)の場合,係数の 符号はマイナスになっているので,地域経済の活性化には国の支援が必要で あると思う人ほど,道州制の実現に反対する傾向がある.
このように,外交,防衛および所得再分配は国に任せ,地方政府の独自財 源を充実させ,地域活性化など地方のことは地方にまかせると思う人ほど道 州制の実現に賛成する傾向があると言える.
お わ り に
本稿では,国と地方の役割の明確化に関する認識,地域活性化に関する認識,
低所得者への補助のあり方に関する認識,および地方の財源調達のあり方に 関する認識など,国と地方のあり方に関する認識が道州制の実現に関する意 見と統計的に関係していることが明らかにされた.
その具体的内容は,外交,防衛および所得再分配は国に任せ,地方政府の 独自財源を充実させ,地域活性化など地方のことは地方にまかせると思う人 ほど道州制の実現に賛成する傾向があるというものである.こういったこと は,全国知事会(2007)やビジョン懇談会(2008)で主張されてきたことに通 じている.今回分かったことは,このような国と地方の役割分担について国
民に理解を求めていくことが,道州制を実現していくための1つの方法であ るということである.
本稿で見たように,道州制という言葉の認識度は高くない.とりわけ,女 性の認識度は男性に比べてかなり低い.今後,どのようにして認識度を高め ていくのかということも重要な課題である.
【参考文献】
江口克彦(2007)『地域主権型道州制―日本の新しい「国のかたち」―』PHP新書.
岡田知弘(2010)『道州制で日本の未来はひらけるか』自治体研究社.
経済広報センター(2008)『道州制に関するアンケート調査結果』(http://www.kkc.
or.jp/).
佐々木信夫(2010)『道州制』ちくま新書.
全国知事会『 道 州 制 に 関 す る 基 本 的 考 え 方 』2007年1月(http://www.nga.gr.jp/
news/20070118_05.pdf).
帝国データバンク(2009)『地方分権に関する企業意識調査』(http://www.tdb.co.jp/
report/watching/press/keiki_w0908.html).
道州制ビジョン懇談会(2008)『道州制ビジョン懇談会中間報告』(http://www.cas.go.jp/
jp/seisaku/doushuu/080324honbun.pdf).
野田遊(2008)「住民から見た道州制」『同志社政策科学研究』第10巻第2号,77-91ページ.
(いたば よしお・同志社大学経済学部)
The Doshisha University Economic Review Vol. 63 No. 2 Abstract
Yoshio ITABA, The “Doshu” (Wider-Area Local Government) System and the Division of Roles between State and Local Governments
In order to advance further the argument for the Doshu system, it is necessary to have a deeper understanding of both the effects of the Doshu system on the economy and the relationship between the Doshu system and the policy on the division of roles. The purpose of this paper is to analyze the division of roles between central government and local governments using a questionnaire.
The results show that those who think that the system leaves local matters to local governments after clarifying the roles of central government and local governments tend to approve of the Doshu system.