航空機の基礎的操縦技能の獲得に関する研究
その他のタイトル A Study on Acquisition of the Basic Flight Skills
著者 初谷 友希
発行年 2019‑03‑31
学位授与機関 関西大学
学位授与番号 34416甲第734号
URL http://doi.org/10.32286/00018650
2019 年3 月期
関西大学審査学位論文
航空機の基礎的操縦技能の獲得に関する研究
A Study on Acquisition of the Basic Flight Skill s
関西大学大学院 社会安全研究科 防災・減災専攻 Graduate School of Societal Safety Sciences, Kansai University
14D7505 初谷 友希
Tomoki HATSUTANI
i
論 文 要 旨
論文題名 航空機の基礎的操縦技能の獲得に関する研究
氏 名 初谷友希
近年における航空機事故の70~80%にはヒューマンエラーが関与しているとされて お り[1],航 空機事故の防 止対策について検 討を 進めていく上で , ヒュ ーマンファクターの 観点からシステムの中心要素である人間 の行動特性についての知見を深めることは重要 な課題である.また,航空分野では,操縦士不足が深刻化しており ,その対策の一環と し て 新 た な パ イ ロ ッ ト 訓 練 ・ 審 査 制 度 で あ る CBTA(Competency-Based Training and Assessment Program)プ ログラムの導入が開始され た.従来の訓練では,一定の課目・時 間の訓練が網羅的に実施されていたが,同 プログラムに基づいた訓練では,個々の操縦 士の能力について,実運航の分析に基づき,習得すべき能力,訓練要件,審査課目等を 設定した上で,安全性が実証できれば,現行の基準で求められている訓練内容,審査基 準,機長の定期審査間 隔等について柔軟な対 応が可能となる[2].CBTA プログラムに適 応した訓練方式・審査要領に関する検討を進めるには, 操縦士が習得すべき能力を明ら かにする必要があるため,操縦士の操縦行動や操縦適性に関する知見を深めることが重 要となる.さらに,操縦士不足が深刻化するなか ,操縦士の養成機関にとって操縦適性 の高い訓練候補生の選抜と訓練の効率化は 重要課題である.しかし,操縦適性検査の予 測妥当性は未だ に低い 水準に留まって おり[3],相羽(2016)が行っ た操縦適性検査 の歴 史に関する調査では,予測精度を向上させるための研究は継続して実施されるべきであ ると指摘されている[4].
上記の検討を進める上で,操縦行動の基盤となる基礎的な操縦 技能に関する知見が必 要と考えられるが,小型航空機への簡易型飛行記録装置の導入に関しては未だ検討段階 にあり,未熟練者がいかにして 基礎的操縦技能を身に着けるかについては,それを裏付 ける客観的データが不足した状態にある. こうした状況を鑑み, 本研究では,操縦士の 基礎的操縦技能に焦点をあて ,未熟練者の基礎的操縦 技能獲得の実態と傾向の把握を目 的とした模擬飛行実験および認知課題実験が実施された. さらに本研究の結果を元に,
操縦士訓練における,フライトデータの教育的活用 の有効性についての考察を行った.
ii
我が国の技能証明制度は,「自家用操縦士」「事業用操縦士」「定期運送用操縦士」の資 格を順次取得する形式が取られており,航空従事者技能証明の種類によって操縦士が行 うことが出来る業務範囲が異なる.本研究では, 未熟練者の基礎的な操縦操作の獲得過 程である,自家用操縦士課程の初等訓練を想定した模擬飛行実験が実施された .認知課 題実験では,単純反応時間課題,N-back課題,心的回転課題,トラッキング課題,視覚 探索課題,有効視野課題の 6つの認知課題が実施され た.本研究を通して得られたフ ラ イトデータや認知課題成績,自己評価結 果の比較・分析の結果から,未熟練者の操縦行 動および操縦適性,自己評価の妥当性に関する検討が行われた.
本研究では,未熟練者の基礎的操縦技能獲得に係る 基礎的データを得ることができた.
本研究の成果には,多重課題的特性を有する操縦行動を理解する上で有用な知見が含ま れており,ヒューマンエラー防止対策について検討を行う上で,操縦負荷と操縦行動の 関連性を明らかにすることの重要性が示唆された.フライトデータと認知課題成績の比 較では,操縦適性検査において測定されるべき操縦適性項目の策定に係る 示唆が得られ,
今後の研究課題として,操縦行動に関する知見を広げるには,操縦者の 注視行動や情報 処理過程を明らかにする必要があると考察された.自己評価の妥当性に関する検討では,
操縦技能の習熟が必要な操縦者ほど,自身の操縦行動を適切に認識できていない傾向が 示され,そのような傾向が初等訓練において技能差が生じる要因になり得ると考察され た.本研究を通して,技能習熟評価や操縦行動の分析にフライトデータを用いることの 有効性が示された.本研 究で得られた成果は,訓練・教育の現場におけるフライトデー タの活用可能性を押し広げるた めの基礎的データに位置づけられるが ,本研究で行った ような技能習熟度評価や分析方法を実際の訓練に適用 するには,操縦者の操縦行動 や操 縦適性に係る知見の更なる蓄積が必要である.
参 考 文 献
[1] 井 上 紘 一 , 高 見 勲(1988). ヒ ュ ー マ ン ・ エ ラ ー と そ の 定 量 化 シ ス テ ム と 制 御 ,Vol.32 No.3, pp.152-159.
[2] 国 土 交 通 省 航 空 局(2017)「 最 近 の 運 航 基 準 の 改 正 状 況 等 」
http://www.mlit.go.jp/common/001180156.pdf(2018年11月22日 確 認 )
[3] Damons, D.L (1996). Pilot selection batteries: shortcomings and perspectives. Int. J. Aviation.
Psychology, 6 (2), pp.199-209.
[4] 相 羽 裕 子(2016). 操 縦 適 性 検 査 の 歴 史 、 そ し て 開 発 法 に つ い て 航 空 シ ス テ ム 研 究 会 会 誌 Vol.32, pp.39-48.
iii
目 次
頁
第1章 序論 1
1.1 背景 1
1.1.1 はじめに 1
1.1.2 技能継承問題 5
1.1.3 新たな訓練方式および審査様式 7
1.1.4 操縦適性 8
1.1.5 フライトデータの教育的活用 9
1.2 研究目的 11
第2章 模擬飛行実験 13
2.1 模擬飛行装置 13
2.1.1 シミュレーションソフト 13
2.1.2 操縦計器概要 14
(1) 対気速度計(Airspeed Indicator) 14 (2) 姿勢指示器(Attitude Indicator) 15
(3) 高度計(Altimeter) 16
(4) 旋回計(Turn Coordinator) 16
(5) 飛行方位計(Heading Indicator) 17
(6) 昇降計(Virtical Speed Indicator) 18
(7) 回転計(Tachometer) 18
2.1.3 操縦機材の配置 19
2.1.4 操縦機材の操縦操作法 19
(1) 操縦輪の操作法 19
(2) ラダーペダルの操作法 21
(3) スロットルレバーの操作法 21
2.1.5 映像提示用モニター 21
2.2 模擬飛行実験の手続き 23
2.2.1 実験参加者 23
2.2.2 模擬飛行実験の概要 24
2.2.3 自己評価の手続き 26
第3章 認知課題実験 27
3.1 実験参加者 27
iv
3.2 認知課題実験の手続き 27
3.2.1 単純反応時間課題 27
3.2.2 N-back課題 28
3.2.3 心的回転課題 29
3.2.4 トラッキング課題 31
3.2.5 視覚探索課題 33
3.2.6 有効視野課題 34
(1) 視覚情報処理速度課題 34
(2) 分割的注意課題 35
(3) 選択的注意課題 35
第4章 分析方法および結果 37
4.1 技能習熟度に関する評価・分析 37
4.1.1 技能習熟度の評価指標 37
4.1.2 技能習熟度に関する実験参加者ごとの比較 38
4.1.3 技能習熟度に関する実験進捗度ごとの比較 40
4.1.4 技能習熟度に関する群ごとの比較 41
4.2 飛行推移に関する分析 42
4.2.1 飛行推移の分析指標 42
4.2.2 飛行推移の分析指標値の比較 44
4.2.3 技能習熟度と飛行推移の関連性分析 45
4.2.4 飛行推移に関する実験参加者ごとの比較 46
4.2.5 飛行推移に関する実験進捗度ごとの比較 48
4.2.6 飛行推移に関する群ごとの比較 48
4.3 認知課題に関する分析 49
4.3 1 技能習熟度と認知課題成績との比較・分析 49
(1) 単純反応時間課題に関する分析 49
(2) N-back課題に関する分析 50
(3) 心的回転課題に関する分析 52
(4) トラッキング課題に関する分析 54
(5) 視覚探索課題に関する分析 55
(6) 有効視野課題に関する分析 57
4.3.2 認知課題成績と飛行推移の比較・分析 58
4.4 自己評価に関する分析 59
4.4.1 自己評価の妥当性評価 59
4.4.2技能習熟度と自己評価の関連性分析 60
(1) 高度に関する自己評価と技能習熟度の比較 60
v
(2) 速度に関する自己評価と技能習熟度の比較 61
(3) 機首方位に関する自己評価と技能習熟度の比較 61
4.4.3 自己評価に関する群ごとの比較 62
第5章 考察 64
5.1 技能習熟度に関する考察 64
5.1.1 実験参加者の技能習熟状況 64
5.1.2 実験参加者の技能習熟度差 65
5.2 飛行推移に関する考察 65
5.2.1 飛行推移の変化傾向 65
5.2.2 技能習熟度と飛行推移の比較 66
5.3 認知課題実験に関する考察 68
5.3.1 心的回転課題における回転角度差ごとの比較 68
5.3.2 技能習熟度と単純反応時間課題成績の比較 68
5.3.3技能習熟度と視覚探索課題成績および有効視野課題成績の比較 69
5.3.4 認知課題成績と飛行推移の比較 69
5.4 技能習熟度と自己評価の関連性 70
第6章 結言 71
6.1 操縦行動と操縦負荷の関連性 71
6.2 操縦適性に関する今後の課題 71
6.3 フライトデータの活用可能性について 73
参考文献 76
謝辞 巻末資料
vi
図 表 一 覧
図 1-1 世 界 の 商 業 用 ジ ェ ッ ト 機 の 事 故 率 と 機 内 致 死 率 2
表 1-1 ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー に 起 因 す る 事 故 災 害 の 比 率 2
図 1-2 SHE Lモ デ ル 3
表 1-2 SHE Lモ デ ル の 構 成 要 素 4
図 1-3 年 齢 3 区 分 別 人 口 の 推 移 5
図 1-4 旅 客 需 要 の 見 通 し 6
図 1-5 主 要 航 空 会 社 パ イ ロ ッ ト の 年 齢 構 成 7
図 2-1 模 擬 飛 行 装 置 13
図 2-2 操 縦 計 器 (Cessna C172 Skyhawk) 14
図 2-3 対 気 速 度 計 の 表 示 例 15
図 2-4 飛 行 姿 勢 15
図 2-5 姿 勢 指 示 器 の 表 示 例 16
図 2-6 高 度 計 の 表 示 例 16
図 2-7 旋 回 計 の 表 示 例 17
図 2-8 飛 行 方 位 計 の 表 示 例 17
図 2-9 昇 降 計 の 表 示 例 18
図 2-10 回 転 計 の 表 示 例 18
図 2-11 座 席 調 整 基 準 19
図 2-12 操 縦 操 作 と 機 体 姿 勢 の 関 連 性 20
図 2-13 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー 配 置(1) 22
図 2-14 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー 配 置(2) 22
図 2-15 計 器 提 示 用 モ ニ タ ー ( カ バ ー 装 着 時 ) 23
図 2-16 計 器 提 示 領 域 23
図 2-17 飛 行 課 題 お よ び 飛 行 諸 元 値 25
表 2-1 自 己 評 価 項 目 お よ び 選 択 肢 26
図 3-1 単 純 反 応 時 間 課 題 に お け る 目 標 刺 激 の 提 示 例 27
図 3-2 単 純 反 応 時 間 課 題 の 概 要 28
vii
図 3-3 N-back 課 題 に お け る 目 標 刺 激 の 提 示 例 29
図 3-4 N-back 課 題 に お け る 入 力 例 (2 -back) 29
図 3-5 N-back 課 題 の 概 要 29
図 3-6 心 的 回 転 課 題 に お け る 目 標 刺 激 提 示 例 30
図 3-7 心 的 回 転 課 題 の 概 要 31
図 3-8 目 標 刺 激 提 間 の 回 転 角 度 差 の 例 31
図 3-9 ト ラ ッ キ ン グ 課 題 の 目 標 刺 激 お よ び マ ウ ス カ ー ソ ル 32
図 3-10 ト ラ ッ キ ン グ 課 題 に お け る 目 標 刺 激 の 移 動 軌 跡 32
図 3-11 視 覚 探 索 課 題 に お け る 目 標 刺 激 提 示 場 面 ( 妨 害 刺 激 な し 条 件 ) 33 図 3-12 視 覚 探 索 課 題 に お け る 目 標 刺 激 提 示 場 面 ( 妨 害 刺 激 あ り 条 件 ) 33 図 3-13 視 覚 情 報 処 理 速 度 課 題 に お け る 目 標 刺 激 の 提 示 場 面 34
図 3-14 有 効 視 野 課 題 に お け る 目 標 刺 激 1 の 提 示 例 35
図 3-15 分 割 的 注 意 課 題 に お け る 目 標 刺 激 の 提 示 場 面 35
図 3-16 分 割 的 注 意 課 題 に お け る 回 答 選 択 肢 35
図 3-17 選 択 的 注 意 課 題 に お け る 目 標 刺 激 お よ び 妨 害 刺 激 の 提 示 場 面 36
図 4-1 航 空 機 操 縦 要 素 の 関 連 性 37
図 4-2 技 能 習 熟 度 評 価 に お け る 評 価 指 標 38
図 4-3 高 度 逸 脱 傾 向 値 お よ び 高 度 最 大 逸 脱 量 の 平 均 比 較 39
図 4-4 速 度 逸 脱 傾 向 値 お よ び 速 度 最 大 逸 脱 量 の 平 均 比 較 39
図 4-5 機 首 方 位 逸 脱 傾 向 値 お よ び 機 首 方 位 最 大 逸 脱 量 の 平 均 比 較 39
表 4-1 技 能 習 熟 度 評 価 指 標 値 の 多 重 比 較 40
表 4-2 技 能 習 熟 度 評 価 指 標 値 の 試 行 間 平 均 の 比 較 41
表 4-3 技 能 習 熟 度 評 価 指 標 値 の 実 験 進 捗 度 ご と の 平 均 比 較 41 表 4-4 実 験 進 捗 度 前 半 に お け る 技 能 習 熟 度 評 価 指 標 値 の 群 平 均 の 比 較 42 表 4-5 実 験 進 捗 度 後 半 に お け る 技 能 習 熟 度 評 価 指 標 値 の 群 平 均 の 比 較 43
図 4-6 飛 行 推 移 分 析 に お け る 分 析 指 標 43
図 4-7 実 験 参 加 者 ご と の 増 減 傾 向 の 転 換 回 数 44
表 4-6 飛 行 推 移 に お け る 増 減 傾 向 の 転 換 回 数 44
図 4-8 実 験 参 加 者 ご と の 変 動 時 間 平 均 の 比 較 45
表 4-7 飛 行 推 移 に お け る 変 動 時 間 の 比 較 45
viii
表 4-8 技 能 習 熟 度 と 飛 行 推 移 に 関 す る 相 関 係 数 46
図 4-9 高 度 推 移 に お け る 変 動 量 平 均 の 実 験 参 加 者 ご と の 比 較 47 図 4-10 速 度 推 移 に お け る 変 動 量 平 均 の 実 験 参 加 者 ご と の 比 較 47
表 4-9 飛 行 推 移 分 析 指 標 値 の 多 重 比 較 47
表 4-10 飛 行 推 移 分 析 指 標 値 の 試 行 間 平 均 の 比 較 48
表 4-11 飛 行 推 移 分 析 指 標 値 の 実 験 進 捗 度 ご と 平 均 の 比 較 49
表 4-12 実 験 進 捗 度 前 半 に お け る 飛 行 推 移 分 析 指 標 値 の 群 平 均 比 較 49
図 4-11 単 純 反 応 時 間 課 題 に お け る 反 応 時 間 の 比 較 50
図 4-12 N-back 課 題 に お け る 正 答 率 の 比 較 51
図 4-13 N-back 課 題 に お け る 反 応 時 間 の 比 較 51
図 4-14 心 的 回 転 課 題 に お け る 正 答 率 の 比 較 52
図 4-15 心 的 回 転 課 題 に お け る 反 応 時 間 の 比 較 52
表 4-13 回 転 角 度 差 ご と の 反 応 時 間 平 均 の 多 重 比 較 53
表 4-14 回 転 角 度 差 ご と の 正 答 率 平 均 の 多 重 比 較 53
図 4-16 追 跡 誤 差 54
図 4-17 ト ラ ッ キ ン グ 課 題 に お け る 追 跡 誤 差 平 均 の 比 較 55
図 4-18 ト ラ ッ キ ン グ 課 題 に お け る 正 答 率 平 均 の 比 較 55
図 4-19 視 覚 探 索 課 題 に お け る 課 題 遂 行 時 間 の 比 較 56
図 4-20 選 択 的 注 意 課 題 に お け る 知 覚 閾 値 の 比 較 57
表 4-15 認 知 課 題 成 績 と 飛 行 推 移 分 析 指 標 値 の 相 関 関 係 58
図 4-21 自 己 評 価 の 妥 当 性 評 価 59
図 4-22 妥 当 性 評 価 の 該 当 件 数 割 合 60
表 4-16 自 己 評 価 の 妥 当 性 評 価 と 技 能 習 熟 度 の 相 関 関 係 61
表 4-17 高 度 に 関 す る 自 己 評 価 の 群 ご と の 比 較 62
表 4-18 速 度 に 関 す る 自 己 評 価 の 群 ご と の 比 較 62
表 4-19 機 首 方 位 に 関 す る 自 己 評 価 の 群 ご と の 比 較 63
表 5-1 基 本 操 作 に 関 す る 実 地 試 験 細 則 ( 自 家 用 操 縦 士 ) 65
1
第 1 章 序 論
1.1 背 景 1.1.1 は じ め に
航 空 産 業 の 黎 明 期 に は , 機 械 技 術 や 気 象 予 測 技 術 な ど が 未 熟 で あ っ た た め , 航 空 機 事 故 が 多 発 し て い た .第 二 次 世 界 大 戦 末 期 の 1944 年 に は ,国 際 民 間 航 空 が 安 全 か つ 整 然 と 発 達 す る よ う に , ま た , 国 際 航 空 運 送 業 務 が 機 会 均 等 主 義 に 基 づ い て 健 全 か つ 経 済 的 に 運 営 さ れ る よ う に 各 国 の 協 力 を 図 る こ と を 目 的 と し て ,国 際 民 間 航 空 条 約 が 採 択 さ れ( 1 ),1947 年 に 国 際 民 間 航 空 機 関(International Civil Aviation Organization)1が 発 足 し た . 国 際 民 間 航 空 機 関 が 作 成 す る 国 際 標 準 お よ び 勧 告 方 式 は ,19 項 目 の 付 属 書 と し て ま と め ら れ て お り ,そ れ ぞ れ の 項 目 に お い て 国 際 的 に 統 一 さ れ た 規 定 等 が 詳 細 に 明 記 さ れ て い る . 国 際 民 間 航 空 条 約 第 13 付 属 書 で は ,航 空 機 事 故 及 び イ ン シ デ ン ト 調 査 に 関 す る 国 際 標 準 及 び 勧 告 方 式 が 定 め ら れ て お り , 国 際 民 間 航 空 機 関 は そ れ に 従 っ て 調 査 ・ 報 告 を 行 う 責 務 を 有 し て い る( 2 ). 同 付 属 書 の 規 定 に よ り , 事 故 ・ イ ン シ デ ン ト 調 査 の 結 果 が 国 際 的 に 共 有 さ れ , 事 故 防 止 対 策 な ど の 取 り 組 み が 活 発 に 行 わ れ る よ う に な っ た .
1960 年 代 に は ,機 械 技 術 や 気 象 予 測 技 術 の 進 歩 に 伴 っ て ,事 故 発 生 率 は 大 幅 に 減 少 す る こ と と な っ た が ,1970 年 頃 を 境 に ,事 故 発 生 率 の 減 少 傾 向 は 停 滞 し , 横 ば い 傾 向 が 続 く よ う に な っ た( 図 1-1)( 3 ).航 空 機 事 故 調 査 お よ び イ ン シ デ ン ト 調 査 か ら は , 多 く の 航 空 機 事 故 発 生 の 要 因 に は ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が 深 く 関 与 し て い る と 認 識 さ れ る よ う に な っ た . 井 上 ・ 高 見 (1988) の 調 査 で は , 航 空 機 事 故 の 70~80%は ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が 関 与 し て い る と さ れ て お り , 航 空 産 業 以 外 の 分 野 に お い て も , 事 故 の 40~90%は ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が 関 与 し て い る と さ れ て い る ( 表 1-1)( 4 ).
人 間 工 学 ・ 心 理 学 な ど の 分 野 に お い て , ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 定 義 が な さ れ て
1 1944 年 に 採 択 さ れ た 国 際 民 間 航 空 条 約 に 基 づ き 設 置 さ れ た 国 連 専 門 機 関 を い う . 我 が 国 は 1953 年 に 国 際 民 間 航 空 機 関 と し て 加 盟 し て お り ,2018 年 に は 192 カ 国 が 加 盟 し て い る .
2
図 1-1 世 界 の 商 業 用 ジ ェ ッ ト 機 の 事 故 率 と 機 内 致 死 率
出 典 :B OE I NG ( 201 7 ).St at i sti ca l S u mma ry of Co m m erci al Jet A i rp la n e A ccid en t s –Worldwide Operations 1959-2017-( 筆 者 一 部 改 変 )
表 1-1 ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー に 起 因 す る 事 故 災 害 の 比 率
出 典:井 上 紘 一 ,高 見 勲(1 988 ).ヒ ュ ー マ ン・エ ラ ー と そ の 定 量 化 シ ス テ ム と 制 御 Vo l .32,
No .3 p p. 15 2 - 159 .( 筆 者 一 部 改 変 )
3
い る .Swain(1983)は ,ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー を「 シ ス テ ム に よ っ て 定 義 さ れ た 許 容 限 界 を 超 え る 一 連 の 人 間 行 動 」 と し( 5 ),Reason(1990) は 「 計 画 し た 一 連 の 心 理 的 活 動 ま た は 身 体 的 活 動 が 意 図 し た 結 果 を 達 成 す る こ と が で き ず , か つ こ れ ら の 失 敗 を 何 ら か 偶 然 の 作 用 の 介 入 に 帰 す る こ と が で き な い 場 合 を 包 括 す る 総 称 的 な 用 語 」と 定 義 し て い る( 6 ).ま た ,黒 田(2001)は ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー を ,
「 達 成 し よ う と し た 目 標 か ら , 意 図 せ ず に 逸 脱 す る こ と に な っ た , 期 待 に 反 し た 人 間 の 行 動 」 と 定 義 づ け て い る( 7 ).
ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 防 止 対 策 に つ い て 検 討 を 進 め て い く 上 で , 人 間 の 行 動 特 性 に 関 す る 知 見 を 深 め る こ と は 極 め て 重 要 で あ り , 航 空 分 野 や 原 子 力 分 野 に お い て ヒ ュ ー マ ン フ ァ ク タ ー に 関 す る 研 究 が 活 発 に 行 わ れ る よ う に な っ た . Hawkins(1987)は ,ヒ ュ ー マ ン フ ァ ク タ ー の 範 囲 を 明 確 に 示 す SHEL モ デ ル を 提 唱 し て い る( 8 ).SHEL モ デ ル は , シ ス テ ム の 中 心 要 素 で あ る シ ス テ ム の 使 用 者 (Liveware) と 境 界 要 素 で あ る ソ フ ト ウ エ ア (Software), ハ ー ド ウ エ ア
(Hardware), 環 境 (Environment), 人 間 (Liveware) に よ っ て 構 成 さ れ お り , 各 要 素 の 境 界 面 は 非 直 線 的 に 表 さ れ て い る ( 図 1-2, 表 1 -2). シ ス テ ム の 利 用 者 で あ る 人 間 と 各 境 界 要 素 が 整 合 し て い る 場 合 に は , シ ス テ ム の 調 和 を 表 し て お り , 反 対 に そ れ ら が 整 合 し て い な い 場 合 に は , シ ス テ ム に お い て 不 具 合 が 生 じ る 可 能 性 が あ る こ と を 示 し て い る .
SHEL モ デ ル に 示 さ れ て い る よ う に , ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が 起 こ る 背 景 に は , 様 々 な 要 素 が 多 面 的 に 人 間 と 関 わ り 合 っ て い る . ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 防 止 対 策 で は , シ ス テ ム の 中 心 要 素 で あ る 人 間 と 他 の 構 成 要 素 の 適 合 ・ 調 和 に つ い て 十 分 に 検 討 さ れ る 必 要 が あ り , ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が 発 生 し た 背 後 要 因 の 追 求 が 重 要 と な る .
図 1-2 SHE L モ デ ル
境 界 が 整 合 し て い な い 場 合 は ,シ ス テ ム に 不 具 合 が 生 じ る 可 能 性 が あ る こ と を 示 し て い る .( 図 は , 人 間・環 境 要 素 の 境 界 に 不 整 合 が 生 じ て お り ,そ れ ら の 不 調 和 に 起 因 す る ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が 発 生 し や す い 状 態 を 示 し て い る .)
4
表 1-2 SHE L モ デ ル の 構 成 要 素
石 橋(2007)に よ る と ,1970 年 代 前 後 は 世 界 と 国 内 で 多 く の 航 空 機 事 故 が 発 生 し , 各 航 空 会 社 は 些 細 な ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が ト リ ガ ー と な っ て 大 事 故 が 発 生 し た こ と を 重 く 見 て , 安 全 推 進 体 制 を 固 め る 取 り 組 み が 活 発 と な っ た( 9 ). そ の 取 り 組 み の 一 環 と し て ,CRM(Crew Resource Management)を 取 り 入 れ た 訓 練 ・ 教 育 が 行 わ れ る よ う に な っ た .CRM と は ,コ ッ ク ピ ッ ト ク ル ー が 利 用 可 能 な リ ソ ー ス( 情 報・技 術 な ど を 含 む 資 源 )を 効 果 的 に 活 用 し よ う と す る 概 念 で ,1977 年 に NTSB(National Transportation Safety Board) と FAA(Federal Aviation Administration) が 共 同 開 発 に 着 手 し , そ の 成 果 を 基 に 1979 年 に ユ ナ イ テ ッ ド 航 空 と SMI社 が プ ロ グ ラ ム を 作 成 し た の が 始 ま り で あ る( 1 0 ).小 林(2016)に よ る と ,CRMは 当 初 ,Cockpit Resource Management と し て 運 航 乗 務 員 に 対 す る リ ソ ー ス マ ネ ジ メ ン ト の 教 育・訓 練 と し て 導 入 さ れ る よ う に な り ,そ の 後 に CRM は Crew Resource Management に 名 称 が 変 更 さ れ ,運 航 乗 務 員 の み な ら ず , 客 室 乗 務 員 , 整 備 士 , 運 航 管 理 者 , 管 制 官 の 教 育 ・ 訓 練 に も 導 入 さ れ る こ と と な っ
た( 11 ).CRM が 誕 生 し て か ら 現 在 に 至 る ま で に , そ の 概 念 は 第 一 世 代 か ら 第 六
世 代 ま で 変 遷 を た ど り , 現 在 で は エ ラ ー を 誘 発 す る 様 々 な 要 因 で あ る 「 脅 威
(Threat)」を 適 切 に マ ネ ジ メ ン ト す る こ と で ,事 故 や イ ン シ デ ン ト を 防 止 す る TEM(Threat And Error Management) の 概 念 が 加 わ っ て い る( 1 2 ).2006 年 に は 国 際 民 間 航 空 機 関 の 付 属 書 の 改 定 に よ り ,TEM が 乗 員 の ラ イ セ ン ス の 要 件 に 追 加 さ れ た .2011 年 か ら は 整 備 部 門 に も 適 用 さ れ , 乗 員 以 外 で も TEM が 業 務 上 の 要 件 と な っ た( 1 3 ). 近 年 で は , 原 子 力 や 医 療 な ど の 分 野 で も CRM の 概 念 は 取 り 入 れ ら れ て お り , 各 分 野 で CRM・TEM を 応 用 し た 安 全 へ の 取 り 組 み が 広 く 行
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わ れ て い る . 石 橋 ら (2010) に よ る と , 一 般 社 団 法 人 ・ 日 本 原 子 力 技 術 協 会 で は , 全 国 原 子 力 発 電 所 等 の 会 員 各 社 の 管 理 者 研 修 を 企 画 運 営 し て お り , そ の 一 環 と し て , 知 識 教 育 や 技 能 訓 練 以 外 の チ ー ム と し て の Conceptual Skill( 問 題 の 本 質 を 見 抜 き 論 理 的 に 解 決 す る 能 力 )( 1 4 )を 養 成 す る マ ネ ジ メ ン ト 訓 練 の 必 要 性 を 認 め ,CRM 訓 練 の 一 部 を 実 施 し て い る( 1 5 ).CRM 訓 練 は , ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー 防 止 対 策 と し て 期 待 さ れ , 各 分 野 に お い て 様 々 な 形 で 実 施 さ れ て い る が , 未 だ 確 立 さ れ た 手 法 は 存 在 し な い .CRM訓 練 を 含 め る ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー 防 止 対 策 に つ い て 検 討 を 進 め て い く 上 で , 操 縦 者 の 操 縦 行 動 に 関 す る 知 見 を 深 め る こ と は 極 め て 重 要 で あ り , 今 後 も ヒ ュ ー マ ン フ ァ ク タ ー の 観 点 か ら 調 査 ・ 研 究 が 実 施 さ れ る 必 要 が あ る と 言 え る だ ろ う .
1.1.2 技 能 継 承 問 題
近 年 , 日 本 の あ ら ゆ る 産 業 で 団 塊 の 世 代 が 定 年 退 職 を 迎 え た こ と に よ り , 労 働 者 不 足 が 深 刻 化 し て い る .国 立 社 会 保 障・人 口 問 題 研 究 所 が 2017 年 に 公 表 し た 「 日 本 の 将 来 推 計 人 口 」 に よ る と , 労 働 力 の 中 核 を な す 生 産 年 齢 人 口 (15~
64 歳 の 人 口 ) は ,1995 年 に 8,726 万 人 に 達 し て 以 来 減 少 傾 向 に あ り ,2065 年 に は 4,529 万 人 と な る と 推 計 さ れ て い る ( 図 1-3)( 1 6 ).
図 1-3 年 齢 3 区 分 別 人 口 の 推 移
出 典 : 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所( 201 7 ).「 日 本 の 将 来 推 計 人 口 201 6年 ~20 65年 」
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航 空 分 野 で は , 民 間 航 空 会 社 の 旅 客 需 要 が 急 増 し て お り , 国 際 航 空 運 送 協 会
(International Air Transport Association) は ,2036 年 に は 航 空 旅 行 者 が 2017 年 の 約 2倍 に 相 当 す る 78億 人 に 到 達 す る と の 見 通 し を 発 表 し て い る( 図 1-4)( 1 7 ). 旅 客 需 要 が 急 増 す る 一 方 で , 操 縦 士 の 高 齢 化 が 進 行 し て お り , 国 土 交 通 省 航 空 局 の 就 労 実 態 調 査 に よ る と ,主 要 航 空 会 社 の 操 縦 士 の 年 齢 構 成 が 40歳 代 に 偏 っ て い る た め ,2030 年 頃 に は 操 縦 士 の 高 齢 化 が 進 む と と も に 大 量 退 職 時 期 が 到 来 す る こ と が 予 想 さ れ て い る ( 図 1 -5)( 1 8 ).2013 年 に は 乗 員 政 策 等 検 討 合 同 小 委 員 会 が 設 置 さ れ , 増 大 す る 航 空 需 要 や 航 空 関 連 産 業 の 発 展 の 一 方 で 操 縦 士 , 整 備 士 , 製 造 技 術 者 が 不 足 す る と い う 問 題 に 対 し て , 乗 員 政 策 等 の 基 本 的 方 向 性 や 具 体 的 方 策 の 検 討 に 関 す る 調 査 審 議 が 行 わ れ て い る .2014 年 に 報 告 さ れ た 乗 員 政 策 等 検 討 合 同 小 委 員 会 中 間 取 り ま と め で は , 操 縦 士 の 養 成 ・ 確 保 を 促 進 す る た め , 我 が 国 全 体 の 供 給 能 力 拡 充 等 を 図 る こ と が 重 要 課 題 で あ り , 長 期 間 の 訓 練 ・ 多 額 の 投 資 を 要 す る 操 縦 士 養 成 は 民 間 企 業 に と っ て リ ス ク が 高 い こ と , 我 が 国 に お い て は 欧 米 と 比 べ て 民 間 養 成 機 関 等 に よ る 操 縦 士 の 市 場 へ の 供 給 量
図 1-4 旅 客 需 要 の 見 通 し
出 典 :B OE I NG( 20 17 ) . C URR E NT MA RK ET OUTL OO K 20 17 -2 036( 筆 者 一 部 改 編 )
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図 1-5 主 要 航 空 会 社 パ イ ロ ッ ト の 年 齢 構 成
出 典 : 国 土 交 通 省 航 空 局( 2013 ).「 乗 員 政 策 等 に 係 る 検 討 に つ い て 」
が 未 だ 十 分 に 拡 大 し て い な い こ と 等 か ら , 民 間 養 成 機 関 に よ る 供 給 の 裾 野 を 広 げ る た め の 環 境 整 備 等 を 行 う 必 要 が あ る と 指 摘 さ れ て い る( 1 9 ). 国 土 交 通 省 は , 2018 年 よ り 私 立 大 学 等 民 間 養 成 機 関 の パ イ ロ ッ ト 養 成 課 程 の 学 生 に 対 す る 無 利 子 貸 与 型 奨 学 金 を 創 設 す る な ど , 産 学 官 連 携 の も と 操 縦 士 を 目 指 す 学 生 の 裾 野 を 広 げ る た め の 各 種 取 組 を 進 め て い る( 2 0 ).
1.1.3 新 た な 訓 練 方 式 お よ び 審 査 様 式
2017 年 4月 に ,CBTA プ ロ グ ラ ム(Competency-Based Training and Assessment Program,能 力 目 標 型 教 育 / 訓 練・審 査 )の 審 査 要 領 細 則 が ,国 土 交 通 省 航 空 局 安 全 部 に よ っ て 告 示・通 達 さ れ( 国 空 航 第 11576号 ),我 が 国 に お け る 新 た な パ イ ロ ッ ト 訓 練 ・ 審 査 制 度 と し て ,CBTA プ ロ グ ラ ム の 導 入 が 開 始 さ れ た . 従 来 の 訓 練 で は , 一 定 の 課 目 ・ 時 間 の 訓 練 が 網 羅 的 に 実 施 さ れ て い た が , 同 制 度 に 基 づ い た 訓 練 で は , 個 々 の 操 縦 士 の 能 力 に つ い て , 実 運 航 の 分 析 に 基 づ き , 習 得 す べ き 能 力 ,訓 練 要 件 ,審 査 課 目 等 を 設 定 し た 上 で ,安 全 性 が 実 証 で き れ ば ,
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現 行 の 基 準 で 求 め ら れ て い る 訓 練 内 容 , 審 査 基 準 , 機 長 の 定 期 審 査 間 隔 等 に つ い て 柔 軟 な 対 応 が 可 能 と な る( 2 1 ).実 運 航 の 分 析 を 踏 ま え ,航 空 機 乗 組 員 と し て 求 め ら れ る コ ン ピ テ ン シ ー2を 特 定 し ,こ れ を 訓 練 の 目 標 に 設 定 し 計 画 す る こ と で , 継 続 的 に コ ン ピ テ ン シ ー や 必 要 な 訓 練 課 目 等 を 評 価 し 改 善 し て い く こ と が 今 後 の 課 題 と な る( 2 2 ).
航 空 運 送 事 業 者 に お け る 操 縦 士 の 教 育 ,訓 練 及 び 審 査 に つ い て ,諸 外 国 で は , 国 が 定 め た 最 低 基 準 を 満 た す カ リ キ ュ ラ ム で は な く , 航 空 運 送 事 業 者 自 ら が 航 空 機 の 運 航 実 態 や 教 育 , 訓 練 及 び 審 査 の 実 態 に 応 じ て , 定 期 審 査 の 間 隔 も 含 め て 教 育 , 訓 練 及 び 審 査 に 係 る 要 件 を 柔 軟 に 設 定 可 能 な AQP(Advanced Qualification P rogram)や ,航 空 機 の 世 代 別 に 航 空 機 乗 組 員 が 習 得 す べ き 能 力 を 明 ら か に し , 当 該 能 力 の 習 得 に 重 点 を 置 い た EBT(Evidence Based Training)と 呼 ば れ る 手 法 が 導 入 さ れ て い る( 2 3 ).我 が 国 に お い て も CBTAプ ロ グ ラ ム の 導 入 に 伴 っ て 新 た な 訓 練 方 式 の 採 択 に 関 す る 検 討 が 進 め ら れ て い る . 先 進 的 な 取 り 組 み と し て , 日 本 航 空 で は ,CBTA プ ロ グ ラ ム に 適 応 し た EBT(Evidence-based Training)の 導 入 を 進 め て お り ,世 界 中 の 航 空 会 社 の 実 際 の 運 航 や 訓 練 な ど で 得 ら れ た 様 々 な デ ー タ を 分 析 す る こ と で , 航 空 会 社 全 体 お よ び パ イ ロ ッ ト 個 人 の 課 題 を 抽 出 し , そ れ ら に 対 処 す る た め の 効 果 的 な 訓 練 ・ 審 査 を , 航 空 会 社 が 主 体 と な っ て 開 発 ・ 実 施 ・ 改 善 を 進 め て い る( 2 4 ).CBTA プ ロ グ ラ ム に 適 応 し た 訓 練 方 式 ・ 審 査 要 領 を 含 め た , 訓 練 の 効 率 化 ・ 効 果 向 上 に つ い て 検 討 す る に は , 前 述 の よ う に 操 縦 士 が 習 得 す べ き 能 力 を 明 ら か に す る 必 要 が あ り , 操 縦 士 の 操 縦 行 動 や 操 縦 適 性 に 関 す る 知 見 を 深 め る こ と が 重 要 で あ る と 考 え ら れ る .
1.1.4 操 縦 適 性
民 間 航 空 会 社 や 航 空 自 衛 隊 の 操 縦 士 を 養 成 す る 過 程 に お い て は , 実 機 や シ ミ ュ レ ー タ を 用 い た 訓 練 を 段 階 的 に 行 う こ と で , 乗 務 に 必 要 な 各 種 資 格 を 取 得 し て い く 形 式 が 取 ら れ て い る . 操 縦 士 養 成 の た め の 訓 練 に は , 多 く の 費 用 と 時 間 を 要 す る た め , 養 成 機 関 に と っ て 操 縦 適 性 の 高 い 訓 練 候 補 生 の 選 抜 と 訓 練 の 効 率 化 は 重 要 課 題 で あ る .
相 羽 (2016) が 行 っ た 操 縦 適 性 検 査 の 歴 史 に 関 す る 調 査 で は , 操 縦 適 性 検 査
2 業 務 の 遂 行 に 必 要 な 技 能 ・ 知 識 ・ 姿 勢 な ど
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の 予 測 妥 当 性 は 未 だ に 低 い 水 準 に 留 ま っ て お り( 2 5 ),予 測 精 度 を 向 上 さ せ る た め の 研 究 は 継 続 し て 実 施 さ れ る べ き で あ る と 指 摘 さ れ て い る( 2 6 ).
操 縦 士 の 操 縦 適 性 を 扱 っ た 先 行 研 究 と し て Hunter ら の 研 究 が 代 表 的 で あ る . Hunter & Burke(1994)は ,1940 年 か ら 1990 年 の 期 間 に 公 表 さ れ た 適 性 検 査 と 操 縦 成 績 に 関 す る 68 の 先 行 研 究 を メ タ 分 析 し ,操 縦 成 績 の 予 測 に 有 効 で あ る と 考 え ら れ る 適 性 検 査 項 目 と し て , 数 的 能 力 , 空 間 能 力 , 力 学 的 能 力 , 知 識 , 知 覚 速 度 ,反 応 時 間 ,全 体 的 な 身 体 の 器 用 さ 及 び ワ ー ク サ ン プ ル を 挙 げ て い る( 2 7 ). し か し , 上 記 に 挙 げ ら れ た よ う な 適 性 検 査 項 目 に 関 わ る 認 知 処 理 能 力 の 高 低 が 操 縦 行 動 や 技 能 習 熟 に い か に 反 映 さ れ る か を 示 し た 先 行 研 究 は 無 く , 認 知 処 理 能 力 と 操 縦 行 動 お よ び 技 能 習 熟 の 関 連 性 に つ い て は 不 明 な 点 が 多 く 存 在 す る . し た が っ て , 操 縦 適 性 に つ い て よ り 明 ら か に す る た め に は , そ れ ら の 関 連 性 に 着 目 し た 研 究 が 進 め ら れ る 必 要 が あ る . ま た , 今 後 よ り 深 刻 化 す る 操 縦 士 不 足 へ の 対 策 と し て , 操 縦 適 性 検 査 の 予 測 妥 当 性 を よ り 高 め て い く こ と が 重 要 で あ る . し か し , 操 縦 適 性 の 低 い 者 を 訓 練 候 補 生 の 選 抜 対 象 か ら 除 外 す る こ と の み を 目 的 と す る の で は な く , 訓 練 生 の 操 縦 適 性 を 適 切 に 把 握 し , 操 縦 適 性 を 向 上 さ せ る た め に は , い か な る 働 き か け が 有 効 で あ る か を 検 討 す る こ と で , 将 来 , 操 縦 士 と な る 訓 練 候 補 生 の 確 保 や 訓 練 効 果 の 向 上 に 資 す る 研 究 に 発 展 し て い く べ き で あ る .
1.1.5 フ ラ イ ト デ ー タ の 教 育 的 活 用
航 空 法 第 六 十 一 条 で は , 国 土 交 通 省 令 で 定 め る 航 空 機 に 対 し て , 飛 行 記 録 装 置 (Flight Data Recorder) の 搭 載 と そ の 使 用 が 義 務 付 け ら れ て い る . ま た , 飛 行 記 録 装 置 に よ っ て 記 録 さ れ る べ き 事 項 に つ い て は , 航 空 法 第 百 四 十 九 条 で 定 め ら れ て い る . 記 録 さ れ た フ ラ イ ト デ ー タ は , 気 象 条 件 ・ 操 縦 操 作 ・ 航 空 機 の 状 態 な ど 運 航 状 況 の 再 現 に 必 要 な 情 報 が 含 ま れ て お り , 主 に 事 故 調 査 時 に 活 用 さ れ て い る . 近 年 で は , 航 空 機 の 飛 行 中 の デ ー タ や コ ッ ク ピ ッ ト の 状 況 を 動 画 と し て 保 存 し , こ れ を 解 析 す る こ と に よ り 運 航 中 の 不 安 全 要 素 を 見 つ け 出 し , 事 故 が 発 生 す る 前 に 対 策 を 講 じ る こ と で , 事 故 が 発 生 し た 後 で 解 析 を 行 う だ け で は な く ,日 常 の 運 航 も モ ニ タ ー し て 改 善・安 全 に 繋 げ て い く と い う Flight Data Monitoringが 航 空 分 野 で 広 く 取 り 入 れ ら れ る よ う に な っ た( 2 8 ). し か し ,小 型 航
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空 機 に 関 し て は , 費 用 面 や 制 度 面 な ど の 課 題 が 解 決 さ れ て お ら ず , 未 だ Flight Data Monitoring の 導 入 が 検 討 さ れ て い る 段 階 に 留 ま っ て い る . 国 土 交 通 省 は 2018 年 に , 小 型 航 空 機 に 係 る 総 合 的 な 安 全 対 策 の 推 進 を 目 的 と し て , 訓 練 機 , 小 型 事 業 機 , 救 難 救 助 機 等 を 対 象 と し て 簡 易 型 飛 行 記 録 装 置 (Flight Data Monitoring 機 器 ) の 実 証 実 験 を 実 施 す る 方 針 を 示 し て お り , 実 証 実 験 の 収 集 デ ー タ 解 析 か ら フ ラ イ ト デ ー タ の 事 故 調 査 や 訓 練 ・ 審 査 , リ ス ク 分 析 な ど へ の 活 用 可 能 性 , 費 用 対 効 果 な ど 効 果 と 課 題 に つ い て 検 証 し て い く 見 通 し で あ る( 2 9 ). 今 後 は , 訓 練 現 場 に お け る フ ラ イ ト デ ー タ の 実 践 的 な 活 用 法 を 見 つ け 出 す こ と が 簡 易 型 飛 行 記 録 装 置 の 普 及 促 進 の 重 要 な 鍵 と な る . こ れ ま で , フ ラ イ ト デ ー タ の 活 用 範 囲 は 局 所 的 な も の に 留 ま っ て お り , 特 に 訓 練 の フ ィ ー ド バ ッ ク な ど リ ア ル タ イ ム な 活 用 は 困 難 で あ っ た . 簡 易 型 飛 行 記 録 装 置 の 普 及 が 進 み , フ ラ イ ト デ ー タ の 収 集 や 解 析 を 容 易 に 行 う こ と が 出 来 る よ う に な れ ば , 訓 練 現 場 に お け る フ ラ イ ト デ ー タ の 教 育 的 活 用 の 範 囲 が 大 き く 広 が る 可 能 性 が あ る . し た が っ て , 本 研 究 で は , 訓 練 の 効 率 化 ・ 効 果 向 上 に 繋 が る 可 能 性 の あ る 課 題 と し て , フ ラ イ ト デ ー タ の 教 育 的 な 活 用 法 や そ の 有 効 性 に つ い て 着 目 す る こ と と し た . 初 谷 ・ 中 村 (2014) が 行 っ た フ ラ イ ト デ ー タ の 教 育 的 活 用 に 関 す る 研 究 で は , 航 空 機 操 縦 の 未 熟 練 者 を 対 象 と し た 模 擬 飛 行 実 験 が 実 施 さ れ , 同 実 験 の 結 果 か ら フ ラ イ ト デ ー タ を 用 い た フ ィ ー ド バ ッ ク が , 基 礎 的 な 操 縦 技 能 の 習 熟 過 程 に ポ ジ テ ィ ブ な 影 響 を 与 え て い た こ と が 示 唆 さ れ て い る( 3 0 ).同 研 究 で は ,教 示 内 容 を 裏 付 け る フ ラ イ ト デ ー タ を 用 い た 資 料 を 実 験 参 加 者 に 提 示 す る こ と で , 実 験 参 加 者 が 自 身 の 行 っ た 操 縦 行 動 を よ り 客 観 的 に 理 解 す る こ と が で き , 訓 練 効 果 の 向 上 に 繋 が っ た の で は な い か と 考 察 さ れ て い る .
航 空 機 の 操 縦 で は , ス キ ャ ニ ン グ (Scanning) と 呼 ば れ る 能 動 的 な 巡 視 を 行 う こ と で , 複 数 の 操 縦 計 器 や 外 部 状 況 か ら 必 要 な 情 報 を 取 得 し 操 縦 操 作 に 反 映 し な け れ ば な ら な い . し か し , 航 空 機 の 飛 行 特 性 に つ い て は , 複 数 の 操 縦 要 素 が 複 雑 に 関 連 し 合 っ て い る た め , そ れ ら を 十 分 に 理 解 し て い な け れ ば , 各 種 情 報 の 中 か ら 必 要 な 情 報 を 取 捨 選 択 す る こ と が 困 難 と な る . し た が っ て , 未 熟 練 者 に と っ て , 必 要 な 情 報 を 適 切 な タ イ ミ ン グ で 取 得 す る こ と は 容 易 で は な く , 熟 練 者 と 比 較 し て 状 況 認 識 不 足 に 起 因 す る エ ラ ー を 起 こ し 易 い . 操 縦 士 訓 練 で は , 訓 練 の 前 後 に ブ リ ー フ ィ ン グ の 時 間 が 設 け ら れ , 訓 練 教 官 と 共 に 訓 練 内 容
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の 事 前 確 認 や 振 り 返 り が 入 念 に 行 わ れ る が , 訓 練 教 官 か ら 状 況 認 識 不 足 に 起 因 す る エ ラ ー を 指 摘 さ れ て も , 指 摘 内 容 を 的 確 に 把 握 す る こ と が 困 難 と な る こ と が 推 測 さ れ る . 黒 田 ・ 石 橋 (2003) が 「 人 間 は 失 敗 の 実 態 と そ の 背 後 要 因 を 正 確 に 突 き 止 め る こ と に よ っ て , は じ め て そ こ か ら 対 策 を 学 ぶ こ と が で き る 」 と 述 べ て い る よ う に( 3 1 ),訓 練 生 自 身 が 行 っ た 操 縦 操 作 や 失 敗 の 実 態 を 十 分 に 認 識 す る こ と は , 適 切 な 課 題 分 析 や 目 標 設 定 に 繋 が り 得 る . し た が っ て , 訓 練 生 が 行 う 自 己 評 価 の 妥 当 性 が 訓 練 効 果 に 影 響 を 与 え る 可 能 性 は 否 定 で き な い が , こ れ ま で の 先 行 研 究 で は 技 能 習 熟 度 と 自 己 評 価 の 妥 当 性 の 関 連 性 に つ い て は 明 ら か に さ れ て い な い . 技 能 習 熟 度 と 自 己 評 価 の 妥 当 性 の 関 連 性 に 関 す る 知 見 は , 訓 練 生 の 自 己 評 価 と 実 態 と の 齟 齬 の 解 消 に 努 め る こ と の 重 要 性 を 示 す 客 観 的 な 根 拠 と な り , 自 身 が 行 っ た 操 縦 行 動 を よ り 客 観 的 に 理 解 す る 資 料 と し て フ ラ イ ト デ ー タ を 用 い る な ど , フ ラ イ ト デ ー タ の 教 育 的 活 用 可 能 性 を 押 し 広 げ る た め の 基 礎 的 デ ー タ と な る . 本 研 究 で は 訓 練 の 効 率 化 ・ 効 果 向 上 の 観 点 か ら , 未 熟 練 者 の 技 能 習 熟 度 と 自 己 評 価 の 妥 当 性 と の 間 に い か な る 関 連 性 が 見 ら れ る か を 検 証 し ,そ の 結 果 を 元 に フ ラ イ ト デ ー タ の 教 育 的 活 用 に つ い て の 考 察 を 行 っ た .
1.2 研 究 目 的
航 空 分 野 に お け る 安 全 性 の 向 上 を 実 現 す る に は , 航 空 機 事 故 の 多 く に 関 与 す る ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 防 止 対 策 を 強 化 し て い く 必 要 が あ り , そ の た め に は ヒ ュ ー マ ン フ ァ ク タ ー の 観 点 か ら , 人 間 の 行 動 特 性 に 関 す る 知 見 を 深 め る こ と は 極 め て 重 要 な 課 題 で あ る . ま た , 航 空 分 野 で は , 操 縦 士 不 足 が 深 刻 化 し て お り , 操 縦 適 性 検 査 の 予 測 精 度 の 向 上 お よ び 訓 練 の 効 率 化 は 重 要 課 題 で あ る . こ れ ま で , 適 性 検 査 項 目 に 関 わ る 認 知 処 理 能 力 の 高 低 が 操 縦 行 動 や 技 能 習 熟 に い か に 反 映 さ れ る か を 示 し た 先 行 研 究 は 無 く , 認 知 処 理 能 力 と 操 縦 行 動 お よ び 技 能 習 熟 の 関 連 性 に つ い て は 不 明 な 点 が 多 く 存 在 す る . し た が っ て , 操 縦 適 性 に つ い て よ り 明 ら か に す る た め に は , そ れ ら の 関 連 性 に 着 目 し た 研 究 が 進 め ら れ る 必 要 が あ る . 上 記 の 検 討 を 進 め る 上 で , 操 縦 行 動 の 基 盤 と な る 基 礎 的 な 操 縦 技 能 に 関 す る 知 見 が 必 要 で あ る が , 前 述 の よ う に 小 型 航 空 機 へ の Flight Data Monitoring の 導 入 は 未 だ 検 討 段 階 に あ り , 未 熟 練 者 が い か に し て 基 礎 的 操 縦 技 能 を 身 に 着 け る か に つ い て は , そ れ を 裏 付 け る 客 観 的 デ ー タ が 不 足 し た 状 態 に
12 あ る .
こ う し た 状 況 を 鑑 み , 本 研 究 で は , 操 縦 士 の 基 礎 的 操 縦 技 能 に 焦 点 を あ て , 未 熟 練 者 の 基 礎 的 操 縦 技 能 獲 得 の 実 態 と 傾 向 の 把 握 を 目 的 と し た , 模 擬 飛 行 実 験 お よ び 認 知 課 題 実 験 を 実 施 し た . 本 研 究 を 通 し て 得 ら れ た , フ ラ イ ト デ ー タ や 認 知 課 題 成 績 , 自 己 評 価 結 果 の 比 較 ・ 分 析 を 行 う こ と で , 未 熟 練 者 の 操 縦 行 動 お よ び 操 縦 適 性 , 自 己 評 価 の 妥 当 性 に 関 す る 検 討 を 行 っ た . さ ら に 本 研 究 の 結 果 を 元 に , 操 縦 士 訓 練 に お け る , フ ラ イ ト デ ー タ の 教 育 的 活 用 に つ い て の 考 察 を 行 っ た .
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第 2 章 模 擬 飛 行 実 験
2.1 模 擬 飛 行 装 置
本 研 究 で 使 用 す る 模 擬 飛 行 装 置 は , 関 西 大 学 高 槻 ミ ュ ー ズ キ ャ ン パ ス の 一 室 に 設 置 さ れ た ( 図 2 -1). 同 装 置 は , 暗 幕 内 ( 幅 :2,300mm, 奥 行 :3,000mm,
高 さ :2,000mm) に 設 置 さ れ , 模 擬 飛 行 実 験 中 は , 部 屋 の 照 明 を す べ て 落 と し た 状 態 と す る こ と で , 視 環 境 を 統 制 し た . 使 用 機 材 や 機 材 配 置 な ど の 模 擬 飛 行 装 置 の 概 要 に つ い て は 下 記 の 通 り で あ る .
図 2-1 模 擬 飛 行 装 置
2.1.1 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ソ フ ト
本 研 究 の 模 擬 飛 行 実 験 で 使 用 す る フ ラ イ ト シ ミ ュ レ ー タ ソ フ ト に は , Microsoft社 製 の 「Microsoft Flight Simulator 2004」 を 採 用 し , フ ラ イ ト デ ー タ の 記 録 に は ,「FS Recorder for 2004」を 用 い た .「FS Recorder for 2004」に よ る , フ ラ イ ト デ ー タ の 記 録 間 隔 は 約 27msec で あ っ た .
模 擬 飛 行 実 験 で 使 用 す る 機 種 に は , 訓 練 機 と し て 用 い ら れ る こ と の 多 い , Cessna C172 Sk yhawk を 採 用 し た .同 機 種 は ,4 人 乗 り の 小 型 機( 単 発 プ ロ ペ ラ 推 進 , 高 翼 式 ) で あ っ た .
14 2.1.2 操 縦 計 器 概 要
本 研 究 に お け る 模 擬 飛 行 実 験 で 使 用 す る 操 縦 計 器 の 概 要 に つ い て は 下 記 の 通 り で あ る ( 図 2-2).
図 2-2 操 縦 計 器 (Cessna C172 Sk yhawk)
(1) 対 気 速 度 計 (Airspeed Indicator)
対 気 速 度 計( 速 度 計 )は ,飛 行 中 の 気 流 に 対 す る 航 空 機 の 速 度 を ノ ッ ト(kt)
単 位 で 表 示 す る 操 縦 計 器 で あ り , 操 縦 者 は 速 度 を 指 標 と し た 操 縦 操 作 を 行 う 際 に 同 計 器 を 使 用 す る ( 図 2-3).
水 平 飛 行 や 旋 回 飛 行 で は , 操 縦 者 は 速 度 計 か ら エ ン ジ ン 出 力 の 過 不 足 を 判 断 し , 一 定 の 速 度 と な る よ う に エ ン ジ ン 出 力 の 調 整 操 作 を 行 う . 上 昇 飛 行 の 際 に は ,速 度 計 か ら ピ ッ チ 角3の 過 不 足 を 判 断 し ,目 標 の 上 昇 速 度 と な る よ う に ,ピ ッ チ 角 の 調 整 操 作 を 行 う . ま た , 降 下 飛 行 で は , 速 度 計 か ら エ ン ジ ン 出 力 の 過 不 足 を 把 握 し , 一 定 の 速 度 ・ 降 下 率 と な る よ う に , エ ン ジ ン 出 力 の 調 整 操 作 を 行 う .
3 航 空 機 の 前 後 軸 と 地 面 の な す 角 を い う . ピ ッ チ 角 は , 機 首 の 上 下 の 度 合 い を 測 る 指 標 と し て 用 い ら れ る .
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図 2-3 対 気 速 度 計 の 表 示 例
(2) 姿 勢 指 示 器 (Attitude Indicator)
姿 勢 指 示 器 は , 航 空 機 の 飛 行 姿 勢 に 関 す る 情 報 を 表 示 す る 操 縦 計 器 で あ り , 操 縦 者 は ,飛 行 姿 勢( ピ ッ チ 角 ,バ ン ク 角4)を 中 心 と し た 操 縦 操 作 を 行 う 際 に 同 計 器 を 使 用 す る ( 図 2-4, 図 2-5).
姿 勢 指 示 器 に は 水 平 線 が 描 写 さ れ て お り , 同 水 平 線 は 水 平 位 置 を 保 持 す る 機 構 と な っ て い る . 姿 勢 指 示 器 の 前 面 部 に は , ミ ニ チ ュ ア ・ エ ア プ レ ー ン と 呼 ば れ る 飛 行 機 の 形 状 を 模 し た 表 示 針 が 設 置 さ れ て い る . 操 縦 者 は , ミ ニ チ ュ ア ・ エ ア プ レ ー ン と 水 平 線 の 相 対 関 係 か ら 飛 行 機 の 姿 勢 を 把 握 す る こ と が 可 能 と な る . ミ ニ チ ュ ア ・ エ ア プ レ ー ン の 中 心 に 位 置 す る 点 状 の 表 示 針 は ピ ッ チ 角 を 表 示 し , ミ ニ チ ュ ア ・ エ ア プ レ ー ン 上 部 あ る 三 角 状 の 表 示 針 は バ ン ク 角 を 表 示 し て い る .
図 2-4 飛 行 姿 勢
4 航 空 機 の 機 体 の 左 右 軸 と 水 平 軸 の な す 角 を い う .
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図 2-5 姿 勢 指 示 器 の 表 示 例
(3) 高 度 計 (Altimeter)
高 度 計 は , 機 体 の 海 面 か ら の 高 さ を フ ィ ー ト (feet) 単 位 で 表 示 す る 操 縦 計 器 で あ り ,操 縦 者 は 高 度 を 指 標 と し た 操 縦 操 作 を 行 う 際 に 同 計 器 を 使 用 す る( 図 2-5). 高 度 計 は , 短 針 と 長 針 に よ っ て 高 度 が 表 示 さ れ よ う に な っ て お り , 長 針 の 最 小 単 位 は 20 フ ィ ー ト , 短 針 の 最 小 単 位 は 200 フ ィ ー ト で あ る .
水 平 飛 行 や 旋 回 飛 行 の 際 に は , 操 縦 者 は 高 度 計 か ら , ピ ッ チ 角 の 過 不 足 を 把 握 し , 目 標 の 高 度 と な る よ う に ピ ッ チ 角 の 調 整 操 作 を 行 う .
図 2-6 高 度 計 の 表 示 例
(4) 旋 回 計 (Turn Coordinator)
旋 回 計 は , 主 に 旋 回 飛 行 を 行 う 際 に 用 い る 操 縦 計 器 で , 操 縦 者 は 同 計 器 か ら 下 記 の 2種 類 の 情 報 を 取 得 す る こ と が で き る ( 図 2-7). 旋 回 計 の 中 心 に あ る 飛 行 機 の 形 状 を し た 旋 回 指 針 は , 旋 回 の 大 き さ を 表 示 す る . 同 計 器 の 下 部 に は ,
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図 2-7 旋 回 計 の 表 示 例
す べ り 計 が 設 置 さ れ て お り , 操 縦 者 は す べ り 計 内 部 に あ る 球 の 位 置 か ら , 調 和 の と れ た 旋 回 が 行 わ れ て い る か 否 か を 判 断 す る こ と が 可 能 と な る . 操 縦 者 は 旋 回 指 針 と す べ り 計 か ら 旋 回 の 状 態 を 把 握 し , エ ル ロ ン お よ び ラ ダ ー ペ ダ ル の 調 整 操 作 を 行 う . 旋 回 指 針 が L( 左 旋 回 飛 行 時 ) あ る い は R( 右 旋 回 飛 行 時 ) を 指 し て お り ,す べ り 計 の 球 が 中 央 に あ る 場 合 に は ,機 体 が 標 準 率(2 分 間 で 360 度 の 旋 回 率 ) で 旋 回 し て い る こ と を 示 し て い る .
(5) 飛 行 方 位 計 (Heading Indicator)
飛 行 方 位 計 は , 航 空 機 の 機 首 が 向 い て い る 方 位 を 表 示 す る 操 縦 計 器 で あ り . 操 縦 者 は 機 首 方 位 を 指 標 と し た 操 縦 操 作 を 行 う 際 に 同 計 器 を 使 用 す る( 図2-8).
水 平 直 線 飛 行 で は , 飛 行 方 位 計 か ら 機 首 方 位 が 目 標 の 方 位 か ら 逸 脱 し て い な い か を 判 断 し , バ ン ク 角 の 調 整 操 作 を 行 う .
図 2-8 飛 行 方 位 計 の 表 示 例
18 (6) 昇 降 計 (Virtical Speed Indicator)
昇 降 計 は , 機 体 が 垂 直 方 向 に 移 動 す る 速 度 を 表 示 す る 操 縦 計 器 で あ る . 同 計 器 の 指 針 が ,0feet/min を 表 示 し て い る 場 合 は ,機 体 が 水 平 飛 行 を し て い る 状 態 を 示 し て い る . ま た , 同 計 器 の 指 針 が 0 よ り 下 の 目 盛 を 示 す 場 合 は 機 体 が 降 下 傾 向 に あ り , 指 針 が 0 よ り 上 の 目 盛 を 示 す 場 合 は 上 昇 傾 向 に あ る こ と を 示 し て い る ( 図 2-9). 水 平 飛 行 お よ び 上 昇 飛 行 を し て い る 場 合 に は , 同 計 器 か ら 高 度 の 変 化 傾 向 を 把 握 し , ピ ッ チ 角 の 調 整 操 作 を 行 う . ま た , 降 下 飛 行 の 際 に は , 同 計 器 か ら 昇 降 率 を 読 み 取 り ,エ ン ジ ン 出 力 お よ び ピ ッ チ 角 の 調 整 操 作 を 行 う .
図 2-9 昇 降 計 の 表 示 例
(7) 回 転 計 (Tachometer)
回 転 計 は , エ ン ジ ン の 回 転 数 を RPM(Revolutions Per Minute: 回 転 毎 分 ) 単 位 で 表 示 す る 操 縦 計 器 で あ る ( 図 2 -10). 操 縦 者 は , 回 転 計 か ら エ ン ジ ン の 回 転 数 を 把 握 し , 速 度 や 昇 降 率 の 調 整 操 作 を 行 う .
図 2-10 回 転 計 の 表 示 例
19 2.1.3 操 縦 機 材 の 配 置
模 擬 飛 行 実 験 で 使 用 す る 操 縦 機 材 と し て , 以 下 の 機 材 を 選 定 し た . 昇 降 舵 と 補 助 翼 ( エ ル ロ ン ) の 操 作 を 行 う 操 縦 輪 , お よ び エ ン ジ ン 出 力 を 調 整 す る ス ロ ッ ト ル レ バ ー に は ,Saitek社 の「Saitek YOKE SYSTEM」を 用 い た .方 向 舵 を 操 作 す る ラ ダ ー ペ ダ ル に は ,Saitek 社 の「Saitek RUDDER PEDALS」を 使 用 し た . 操 縦 機 材 の 配 置 は 以 下 の 通 り に 行 っ た . 機 材 配 置 の 際 の 基 準 と し て , 身 長 が 約 170cm の 男 性 が 操 縦 席 に 着 座 し て い る 際 の 眼 球 位 置( 高 さ 1,200mm)を 座 席 基 準 位 置 と し た . ま ず は , ラ ダ ー ペ ダ ル (Saitek RUDDER PEDALS) を 操 縦 席 正 面 の 足 元 に 配 置 し た . そ の 際 , ラ ダ ー ペ ダ ル の 中 心 か ら 座 席 基 準 位 置 ま で の 水 平 距 離 が 700mm と な る よ う に 配 置 し た .
次 に ,操 縦 輪(Saitek YOKE SYSTEM)を 床 面 か ら の 垂 直 距 離 が 700mm か つ , 操 縦 輪 の 中 心 が 座 席 基 準 位 置 の 前 方 500mm,左 方 50mm の 位 置 に な る よ う に 設 置 し た . ス ロ ッ ト ル レ バ ー (Saitek YOKE SYSTEM) は , ス ロ ッ ト ル レ バ ー の 中 心 が 座 席 基 準 位 置 の 前 方400mm,右 方 300mmの 位 置 に な る よ う に 配 置 し た . 模 擬 飛 行 実 験 の 際 に は , 操 縦 輪 を 握 っ た 際 の 腕 関 節 の 角 度 が 約 90~100 °か つ , ラ ダ ー ペ ダ ル に 足 を 置 い た 際 の 足 関 節 の 角 度 が 約 100~110 °と な る よ う に 座 席 調 整 を 行 っ た ( 図 2 -11).
図 2-11 座 席 調 整 基 準
2.1.4 操 縦 機 材 の 操 縦 操 作 法 (1) 操 縦 輪 の 操 作 法
操 縦 輪 に よ る 操 縦 操 作 は 主 に エ レ ベ ー タ( 昇 降 舵 )操 作・エ ル ロ ン( 補 助 翼 )
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操 作 ・ エ レ ベ ー タ ト リ ム 操 作 の 3 つ に 分 類 さ れ る . 操 縦 輪 を 前 後 に 操 作 す る こ と で , 機 体 後 部 に 位 置 す る 水 平 安 定 板 上 に 設 置 さ れ た 可 動 式 の 昇 降 舵 が 動 き , 機 体 の 水 平 軸 を 中 心 と し た 回 転 運 動 の 制 御 を す る こ と が で き る ( 図 2-12). 操 縦 者 が , 操 縦 輪 を 手 前 に 引 く と 機 首 が 上 が り , 操 縦 輪 を 奥 に 押 す と 機 首 が 下 が る . 同 操 作 に よ っ て ピ ッ チ 角 お よ び 昇 降 率 の 制 御 を 行 う .
操 縦 輪 を 左 右 に 切 る こ と で , 主 翼 後 縁 に 設 置 さ れ た 可 動 式 の 補 助 翼 が 動 き , 機 体 の 前 後 軸 を 中 心 と し た 回 転 運 動 を 制 御 す る こ と が で き る . 操 縦 輪 を 左 に 切 る と 機 体 が 左 に 傾 き , 右 に 切 る と 右 に 傾 く . 同 操 作 に よ っ て 主 に バ ン ク 角 お よ び 旋 回 率 の 調 節 を 行 う .
本 研 究 で 用 い た 操 縦 輪 (Saitek YOKE SYSTEM) の 左 側 の 持 ち 手 の 先 に は , エ レ ベ ー タ ( 昇 降 舵 ) ト リ ム の 操 作 ボ タ ン が 設 置 さ れ て い る . エ レ ベ ー タ ト リ ム は , 操 縦 士 の 操 縦 負 担 を 軽 減 さ せ る こ と を 目 的 と し て , 機 首 の 上 げ 下 げ の 釣 り 合 い を 保 つ 際 に 用 い ら れ る 操 縦 装 置 を い う . 例 え ば , 上 昇 を 行 う 際 は , エ ン ジ ン 出 力 を 上 げ た 後 , 操 縦 輪 を 手 前 に 引 い て ピ ッ チ 角 を 上 げ る 必 要 が あ る . そ の 際 , 上 昇 に 適 切 な ピ ッ チ 角 を 維 持 し 続 け る た め に は , 操 縦 輪 を 引 き 続 け な け れ ば な ら な い . 操 縦 輪 を 引 い て い る 手 を 弱 め て し ま う と , 操 縦 輪 が ニ ュ ー ト ラ ル の 位 置 に 戻 ろ う と す る た め ,ピ ッ チ 角 が 下 が っ て し ま う .こ の よ う な 場 合 に , 一 定 の ピ ッ チ 角 を 維 持 す る た め に , エ レ ベ ー タ ト リ ム の 調 節 を 行 う . 操 縦 輪 を 引 い て い る 状 態 で , そ の ピ ッ チ 角 を 維 持 し た い 時 に は , エ レ ベ ー タ ト リ ム の 操 作 ボ タ ン を 手 前 に 押 し , 操 縦 輪 を 奥 に 押 し て い る 状 態 で , そ の ピ ッ チ 角 を 維 持
図 2-12 操 縦 操 作 と 機 体 姿 勢 の 関 連 性
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し た い 時 に は , エ レ ベ ー タ ト リ ム の 操 作 ボ タ ン を 奥 に 押 す こ と で , 機 首 の 釣 り 合 い を 保 つ よ う に 使 用 す る .
(2) ラ ダ ー ペ ダ ル の 操 作 法
機 体 後 部 に 位 置 す る 垂 直 尾 翼 後 部 に 設 置 さ れ た 可 動 式 の 陀 面 で , ラ ダ ー ペ ダ ル の 操 作 に よ っ て 陀 面 が 動 き , 機 体 の 垂 直 軸 を 中 心 と し た 回 転 運 動 を 制 御 す る こ と が で き る . 飛 行 中 に , ラ ダ ー ペ ダ ル を ス ラ イ ド 操 作 す る こ と で , 機 体 の 垂 直 軸 を 中 心 と し た 回 転 運 動 を 制 御 す る こ と が で き る . 左 の ラ ダ ー ペ ダ ル を 奥 に ス ラ イ ド さ せ る と , 機 体 が 左 の 方 向 を 向 き , 右 を 奥 に 操 作 す る と 右 の 方 向 を 向 く よ う に な っ て い る . 同 操 作 は , 主 と し て 飛 行 針 路 を 修 正 ・ 変 更 す る 際 に 行 わ れ る .
(3) ス ロ ッ ト ル レ バ ー の 操 作 法
ス ロ ッ ト ル レ バ ー は , 前 後 に 操 作 を 行 う こ と で , エ ン ジ ン 出 力 を 調 整 す る こ と が で き る . ス ロ ッ ト ル レ バ ー を 手 前 に 操 作 す る と , エ ン ジ ン 出 力 が 弱 ま り , 奥 に 操 作 す る と エ ン ジ ン 出 力 が 強 ま る . 同 操 作 は , 基 本 的 に 高 度 ・ 速 度 の 調 整 の 際 に 行 わ れ る .
2.1.5 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー
模 擬 飛 行 装 置 に 用 い た 4台 の 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー を ,以 下 の 通 り に 配 置 し た . ま ず , 航 空 機 の 外 部 映 像 を 提 示 す る 外 部 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー (NEC/MultiS ync LCD-V321, 有 効 表 示 領 域 :697.7(H) x 392.3(V)mm) を , 操 縦 席 正 面 の 机 上 に 3 台 設 置 し た . 中 央 の 外 部 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー は , 画 面 中 心 が 基 準 視 点 位 置 か ら 左 方 100mm, 水 平 距 離 が 1,000mmと な る よ う に 配 置 し た ( 図 2 -13). 同 モ ニ タ ー の 画 面 左 端 か ら 画 面 右 端 ま で の 視 角 は お よ そ 38.6°,画 面 上 端 ま で の 迎 角 は お よ そ 2.3°, 画 面 下 端 ま で の 俯 角 は お よ そ 20.4°で あ っ た . 次 に , 前 側 方 ( 左 右 ) の 外 部 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー は ,中 央 の モ ニ タ ー と の 内 角 が 120°に な る よ う に 配 置 し た ( 図 2 -14). 左 右 い ず れ の モ ニ タ ー も , 画 面 左 端 か ら 画 面 右 端 ま で の 視 角 が お よ そ 38.6°で あ っ た .基 準 視 点 位 置 の 高 さ(1,200mm)か ら 画 面 上 端 ま で の 迎 角 は 2.3°, 画 面 下 端 ま で の 俯 角 は お よ そ 20.4°で あ っ た .
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図 2-13 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー 配 置(1)
図 2-14 映 像 提 示 用 モ ニ タ ー 配 置(2)
計 器 提 示 用 モ ニ タ ー(FUJITSU/ESPRIMO DH50/GN,有 効 表 示 領 域:442.8(H) x 249.1(V)mm) を 操 縦 席 の 正 面 に 1 台 設 置 し た . 計 器 提 示 用 モ ニ タ ー は , 画 面 中 心 が 基 準 視 点 位 置 の 正 面 か ら 右 方 10度 の 直 線 上 か つ ,画 面 中 心 お よ び 基 準 視 点 位 置 の 水 平 距 離 が 750mm の 位 置 に 配 置 し た ( 図 2-14). 操 縦 計 器 が 提 示 さ れ て い る 範 囲 の み が 実 験 参 加 者 の 視 界 に 入 る よ う に , 計 器 提 示 用 モ ニ タ ー の 上 か ら カ バ ー を 装 着 し た( 計 器 提 示 領 域:430.0(H) x 140.0(V)mm,図 2-1 5,図 2-16).
同 モ ニ タ ー の 計 器 提 示 領 域 の 視 角 は , 画 面 左 端 か ら 画 面 右 端 ま で お よ そ 32°で あ っ た . 基 準 視 点 位 置 の 高 さ か ら 画 面 上 端 ま で の 俯 角 は お よ そ 2.3°, 画 面 上 端 か ら 画 面 下 端 ま で の 俯 角 は お よ そ 23.9°で あ っ た .
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図 2-15 計 器 提 示 用 モ ニ タ ー ( カ バ ー 装 着 時 )
図 2-16 計 器 提 示 領 域
2.2 模 擬 飛 行 実 験 の 手 続 き 2.2.1 実 験 参 加 者
本 研 究 で は , 航 空 機 操 縦 の 未 熟 練 者 を 対 象 と し た 模 擬 飛 行 実 験 が 行 わ れ た . 過 去 に 操 縦 適 性 検 査 ,お よ び 模 擬 飛 行 を 含 め る 飛 行 経 験 が 無 い 一 般 の 大 学 生 10
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名 を 模 擬 飛 行 実 験 の 対 象 と し た (21.9±2.2歳 , 男 性 :7 名 , 女 性 :3 名 ).
2.2.2 模 擬 飛 行 実 験 の 概 要
操 縦 士 と し て 航 空 業 務 を 行 う に は , 国 土 交 通 大 臣 の 航 空 従 事 者 技 能 証 明 を 取 得 す る 必 要 が あ る .我 が 国 の 技 能 証 明 制 度 は ,「 自 家 用 操 縦 士 」「 事 業 用 操 縦 士 」
「 定 期 運 送 用 操 縦 士 」 の 資 格 を 順 次 取 得 す る 形 式 が 取 ら れ て お り , 航 空 従 事 者 技 能 証 明 の 種 類 に よ っ て 操 縦 士 が 行 う こ と が 出 来 る 業 務 範 囲 が 異 な る . 本 研 究 で は , 未 熟 練 者 の 基 礎 的 な 操 縦 操 作 の 獲 得 過 程 に 焦 点 を 当 て , 自 家 用 操 縦 士 課 程 の 初 等 訓 練 を 想 定 し た 模 擬 飛 行 実 験 を 行 っ た .
自 家 用 操 縦 士 課 程 の 初 等 訓 練 で は , 訓 練 生 は 基 礎 的 な 飛 行 課 題 ( 水 平 直 線 飛 行 ,上 昇 飛 行 ,降 下 飛 行 ,旋 回 飛 行 な ど )を 繰 り 返 し 行 う こ と で ,飛 行 諸 元5か ら 逸 脱 し な い よ う に 機 体 制 御 す る た め の 操 縦 技 能 を 獲 得 す る 必 要 が あ る . 例 え ば ,自 家 用 操 縦 士 の 実 地 試 験 細 則6で は ,水 平 飛 行 時 の 飛 行 諸 元 を 高 度±100feet, 速 度±10kt, 針 路±10deg 以 内 に 維 持 す る こ と が 合 否 判 定 基 準 に 含 ま れ て お り , 訓 練 生 は 定 め ら れ た 飛 行 諸 元 の 維 持 ・ 修 正 操 作 を 行 う た め の 操 縦 技 能 を 訓 練 の 中 で 身 に 着 け る 必 要 が あ る . 本 研 究 で は , 航 空 機 の 基 礎 的 な 操 縦 技 能 と し て , 未 熟 練 者 の 飛 行 諸 元 の 維 持 ・ 修 正 に 関 す る 操 縦 技 能 を 評 価 対 象 と し た 模 擬 飛 行 実 験 が 4回 の 試 行 に 分 け て 実 施 さ れ た .
初 回 試 行 で は , 模 擬 飛 行 実 験 前 に 操 縦 機 材 お よ び 操 縦 操 作 法 , 飛 行 特 性 な ど 航 空 機 の 基 本 操 縦 に 関 す る 基 礎 教 育 が 行 わ れ た . 基 礎 教 育 が 実 施 さ れ た 後 に , 操 縦 席 へ 移 動 し , 実 際 に 操 縦 機 材 を 操 作 し な が ら , 操 縦 練 習 が 実 施 さ れ た . 操 縦 練 習 で は ,水 平 飛 行 お よ び 水 平 直 線 飛 行7を 実 施 し な が ら ,高 度 ・ 速 度 ・機 首 方 位 の 維 持 ・ 修 正 操 作 に 関 す る 教 示 が 行 わ れ た . 模 擬 飛 行 実 験 で は ,4 種 類 の 飛 行 課 題 ( 水 平 直 線 飛 行 , 上 昇 飛 行 , 降 下 飛 行 , 旋 回 飛 行 ) が 実 施 さ れ た ( 図 2-17).実 験 参 加 者 は ,飛 行 課 題 ご と に 設 け ら れ た 飛 行 諸 元 値( 高 度 ,速 度 ,機 首 方 位 ) か ら 逸 脱 せ ず に 飛 行 す る よ う に 教 示 さ れ , 模 擬 飛 行 中 に 飛 行 諸 元 値 か
5 航 空 機 の 位 置 や 機 体 状 態 を い う .
6 航 空 法 の 第 29 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づ く 操 縦 士 に 係 る 実 地 試 験 は ,操 縦 士 実 地 試 験 実 施 細 則 に 従 っ て 実 施 さ れ る . 操 縦 士 実 地 試 験 実 施 細 則 に は , 実 施 課 目 お よ び 実 施 要 領 , 判 定 基 準 な ど が 明 記 さ れ て い る .
7 特 定 の 高 度 を 維 持 し な が ら , 特 定 の 針 路 上 を 真 っ す ぐ に 進 む 飛 行 を い う .