九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
木造密集市街地の防災まちづくりの計画手法に関す る研究
村上, 正浩
九州大学人間環境学研究科都市共生デザイン専攻
https://doi.org/10.11501/3180803
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第4章
GISを用いた防災まちづくり支援システムの開発
第4章GISを用いた防災まちづくり支援システムの開発
4. 1 はじめに
第3章では, 市街地全体を対象として, 土地利用形態や地形が異なる木造密集市街地毎に,
地区レベノレの視点から地震火災の被害拡大に影響を与える要因を街区と道路について明らかにし,
地震火災の被害を軽減するための具体的なまちづくりの方向性を示した。 さらに, これらと住環境整 備を有機的に連携させていくことで, 効率的かつ合理的な防災まちづくりが可能になることを指摘し
た。本章では, 第3章と同様に, 市街地全体を対象として, 地震火災の被害を軽減するためのまち
づくりを考える。
序論で述べたように, 市民の生活の場である木造密集市街地で防災まちづくりを展開するには, 住 民の協力が不可欠である。 防災まちづくりでは, rまちが如何に危険かJ, rまちづくりで如何に安 全で快適になるか」といった防災まちづくりに関する様々な情報を住民に理解しやすい形で提供して いき,まちづくりに対する住民の理解を深めていくことが重要である。 住民がまちづくりの必要性を 正しく認識できてはじめて, 行政と住民の双方が協働で計画づくりに取り組むことができ, 十分な合 意形成に基づいてまちづくりを展開できる。 阪神・淡路大震災以前から,真野地区や野田北部地区等 に代表される地区では 行政と住民の双方が協働で計画づくりに取り組み, 十分な合意形成に基づい
てまちづくりが展開されてきた。 このような防災まちづくりは, 阪神・淡路大震災時に地震火災によ
る被害や犠牲者を最小限にとどめただけでなく, 震災後の復興プロセスにおいても大きな効果をあげ ており, その必要性はさらに高まっている1)2)。
高度情報化社会といわれる今日では, コンピューターの性能も向上し, ハード面では演算処理の高 速化,低廉化, 小型化が進み, ソフト面ではGUIの進化による操作性の飛躍的向上等, パソコンでも かなり高度な処理が可能となってきている。 そのうえ, 地図, 国土数値情報, 各種統計資料等の都市 計画関連データも充実してきたことから, 人に理解しやすい形で情報を提供するシステムとして, 地 理情報処理に特化した地理情報システム(以下,GIS)の活用が期待されている。 GISは地図情報と その属性情報からなるデータベースの作成, 管理機能と様々な空間解析機能を備えており, 大量かっ 多様な情報の効率的管理, 処理だけでなく, 可能な限り科学的, 客観的な分析, 評価を行い, その結
果を分かりやすく表現することができる3)。 このような機能をもっGISを計画策定過程に活用するこ
とで,計画者の負担を軽減し,計画の質的向上を図り,計画策定を体系的なものにすることもできる。
しかし,市販GISの諸機能は, 汎用性の高いものに限定されていることから,特定目的にGISを応用
する場合, 既存の機能だけでは十分とはいえない。 従って, GIS を活用したシステム開発では, 第l に,防災まちづくりを支援していくうえで必要となる独自の機能とGISを如何に統合させるか, 第2 にI GISのもつ既存の機能を如何に活用するか, 第3に, これらの諸機能をGUlを介して如何に使い 勝手のよいシステムとするか, が課題となる。
また,防災まちづくりの計画策定過程では, 地震火災に対する市街地の防災性を客観的, 科学的に 評価し, そして, それに基づいて計画案を作成し, さらに, その計画実施による地震火災の被害軽減 効果を検討しながら, 計画案を評価していくことが必要となる。 このような計画者の専門的で経験的 な知識と判断を支援する機能として, エキスパートシステム(以下, ES)の活用が有効とされている
本章では,以上の観点を踏まえ, 防災まちづくり に関する様々な情報を理解しやすい形で提供して,
住民がまちづくりの必要性を正しく認識できるように, そして行政と住民の双方が協働で効率良く計 画づくりを行い, 十分な合意形成のもとでまちづくりを円滑に展開できるように, 地震火災に対する 市街地の防災性の評価とそれに基づいた計画案の作成及びその計画実施による火災被害の軽減効果 の検討まで行えるESをGISに統合して, 容易な操作で高度な計画策定支援が可能な防災まちづくり 支援システムを開発することを目的としている。
本章に関連する既往の研究としては, 以下のものがあげられる。
GISを活用したシステム開発について論じた既往の研究をみると, その殆どがデータの管理や単純 な分析に留まっており, 高度な計画策定支援が行えるシステムにまで、は至っていない。 防災まちづく りの支援を目的としたGISシステムの開発について論じた既往の研究ではないが,関連する既往研究
として,自治体における計画業務支援をねらいとし, 計画者の経験的知識と判断による意思決定を支
援する機能としてES等を統合した土地利用計画策定支援ツールを開発した大員他の研究4), 地域防 災計画及び地震被害想定に関する課題を解消する手段として, 計画策定支援機能をもっ地震被害想定 システムを開発し, 被害状況に応じた計画づくりを可能にしたヤルコン ・ ユスフ他の研究5), 電子地 図をベースにして地区整備計画における計画支援システムを開発し, その中でパーソナルコンビュー ターを中心としたシステム構成を提案した吉川他の研究6)などがある。
また, ESについて論じた既往の研究をみると, 現状では, 地震火災に対する市街地の防災性の評 価とそれに基づいた計画案の作成及びその計画実施による火災被害の軽減効果の検討を可能にする ESの開発例はない。ESについて論じた既往の研究は,その多くが土地利用への適用に関するもので,
用途地域指定作業の作業効率の向上や, 指定済みの地域のチェックや今後の用途地域指定見直し作業 の支援を目的としたESの開発について論じた呉他の研究7), 国土計画策定支援システムのサブシス
テムとして, 土地利用構想図の立案作業の支援を目的としたESの開発について論じた大貝他の研究
)都市計画技術が乏しく データも不十分な開発途上国での土地利用構想図を描くことを目的とし た ESの 開発について論じた大島の研究9), 開発途上国における総合的な工業地開発計画策定のため の環境管理支援を目的としたESの開発について論じた渡辺他の研究10)などが代表的であり, これら の既往研究で、論じられているESの構築手法を参考にし, 地震火災に対する市街地の防災性の評価と Lれに基づいた計画案の作成及びその計画実施による火災被害の軽減効果の検討などを可能にする ESを構築していく。
本章の構成は, 4. 2では, 本支援システムの開発環境や GISとの統合方法を整理したうえで, 本
支援、ンステムの開発手法を示す。 4. 3では, 開発した本支援システムを第3章で取り上げた地区へ適
用し,その適用結果について, 自治体の防災担当者と防災の専門家らにヒアリング調査を行い, 本支 援システムの有効性を検証する。4.4は, 以上の総括である。
4. 2システムの開発
4. 2. 1 GISとの統合
まず,システムの開発環境は,ハードウェアとして,CPUがPentium1lI600MHz, メモリが256MHz,
osがWindows98のPC を使用し, ソフトウェアとして,Infonnatix社のSpatial Infonnation Syst em(SIS) ver.5.02と, Mic roso仕社のVisualBasic 6.0を使用した。 また, コンビューターに精通していない人に も扱えるように, コ マンド入力等の煩雑な処理は少なくし, マウスによる容易な操作で処理ができる 対話形式のユーザーインターフェースを備える等, ユーザーが利用しやすい 使用環境を備えたシステ ムとした。
また,防災まちづくりを支援していくうえで必要となる独自の機能をGISと統合する方法は 多様であるが,マクロ言語を介して必要な機能を市 販GISに組み込む,Tight cou p1ing4)を採用す ることにした。そこで,市販GISのソフトウェアであるSISをベース に,カスタマイズ可能なGisLink という手法を用いて, プログラミング言語であるVisual Basic (以下,VB)でA p plication Program
Interface (以下,API)を活用しながら, 防災まちづくりを支援していくうえで必要となる独自の
機能をGISと統合する。
4. 2. 2 システムの構成
防災まちづくり支援システムは,Grsのデータベース機能, 空間検索機能, 空間解析機能, グラフ イツク表示機能といった様々な機能を活用しながら, 図4-1に示す よ うに, 防災まちづくりでの,現 況把握から, 地震火災に対する市街地の防災性評価, 計画立案までを支援するもので, 現況把握ツー ル,防災性評価ツール, 計画立案ツーノレの3つで構成される。 そこで, 以下に, 現況把握から, 地震 火災に対する市街地の防災性評価, 計画立案に至るまでの各段階で必要と考えられる機能を検討した。
(1 )現況把握ツール
防災まちづくりの第1段階となるのが, 市街地の評価項目の設定, 評価指標の選定,データ収集,
現況把握で、あり, 現況把握では, 選定 した評価指標に関する空間的な把握と数値による把握の双方が 求められる。 そこで, 現況把握ツールには, 評価指標に関して, 市街地の現況を表す主題図とその 数
評価項目の選定
過去の災害に基づいた評価指標の設定 データ収集〈現地調査, 既存続計情報等〉
防 災 上 の 効 :果 :の :検 :討
支援システム
J・・・...Ir...r日山以:日山:勺::::::::::
以:::以:
: 以現況把握
I�� ケ『 イ
,lilil
客観的かつ的確な市街地の防災性評価12
:::::宗宗台市宮吉宗宗ぢ吉宗宗宗宗ぢ宗吉台宗合京君事τヨ�ττ:;::ぢ吉宗す:::;::宗吉宗吉宗吉宗吉宗吉烹オ宗吉宗:::::
!
まちづくり目標の設定l
j������m��mm�m�mm�mmmmmmmmm塞mmmmmmm�m�mmmmmm��l�lmm�
j
改善を要する箇所の抽出l
i�l���mmmmH��言宗主主主�mmm�mヨ ��1�����1�1���1�1�1�1�1�1�1�1�1�1�1�1�1�1�1�1�������l�l��
|
改善方策の検討t
HHH�������;;����������;�����������;�;�;�;����;;��;;�;訂 正 室�� � � � � � � � � �� � � � �� � � �� � � � � � � � � � � � �
��
�� � � � � � � � � � �� � � � � � ��HH
i
計画案の作成III�
改善方策の導出
計画案の評価
本支援システムの構成 図4・1
109
値情報を項目選択のみで作図・表示する機能を組み込む。
(2)防災性評価ツール
現況把握の次の段階となるのが, 地震火災に対する市街地の防災性を 客観的, 科学的に評価す ることである。 また, その手法には, 計画案を 作成 するため, 市街地の防災性を低減させてい る箇所に対する具体的な改善方策を 導き出せること, さらに, 計画実施 による地震火災の被害
軽減効果を検討しな がら, 計画案を評価できることが求められる。 先に述べたように, これら
を支援する機能としてESを用いる。ESは, 第2章と第3章で得た知見や, 専門家の経験, 阪 神・淡路大震災での被災実態等 から得た知識を収集整理して, これらを知識ベースとしてまと め, モデ、ル化することにより構築する。 そこで, 防災性評価ツールには, 推論結果を地図の形で ユーザーに提供で、きる機能だけでなく, その数値情報も表示できる機能を組み込む。 さらに, ユーザ、
ーに推論過程を分かり易くするため, 推論段階毎に, 推論結果とその数値情報も作図・表示させる。
(3)計画立案ツール
計画策定現場では, まず, 市街地の防災性を的確に評価し, その結果を基に防災上悪影響を及ぼす 簡所を抽出する。次に, その防災上悪影響を及ぼす箇所に対して, 改善方策を検討し, 全体的な計画 案を作成してし1く。そして,その計画案をフィードバックさせて,計画実施による防災効果を検討し,
計画案の評価と修正を 行う6)。これらのことから, 計画立案ツールには, 第1に,ESの推論結果を基 に,市街地の防災性を低減させている箇所を抽出できる機能, 第2に, その改善を要する箇所に対す る嫌々な属性情報や ES により導き出した客観的かっ的確な改善方策等の数値・文字情報を提供で きる機能, 第3に, 計画案の作成と修正が行える機能を組み込む。
4. 2. 3現況把握ツールの開発
現況把握ツールは VBのパネル上で表示させたい指標のチェックボックスにチェックマーク を入れることで, 自動的にSISに接続している外部データベースの読み込みをはじめ, そして, 読 み込んだデータを基に, 主題図, 数値情報を自動的に新しし、lつのパネル上に出力, 表示させるよう にした。このようにチェックマークを入れた数だけ外部データベースを読み込み,幾つでも主題図,
数値情報を出力したパネノレを画面上に表示させる。
また, パネル上で、コマンドボタンをクリックすることで, 外部データセットのオーバーレイとして 読み込ませた, 航空写真があるレイヤーを, 表示または非表示できるようにした。 これにより, 主題 図と重ねて表示させることが可能になり ユーザーの空間的な認識を さらに深めることができる。
さらに,現況把握ツーノレは, 防災性評価ツールや計画立案ツールを起動中にも実行できるようにし た。 これにより, 現況把握だけでなく, 防災性評価ツールでの推論結果の検討や計画立案ツールでの 計画立案の際に, ユーザーに補助情報を与えることができる。
4. 2. 4 防災性評価ツールの開発
ここでは, VBで多機なAPIを活用しながら, ESを構築し, 防災性評価ツールを開発する。 また,
ESはデータを自動的に読み込んで推論を行うデータ駆動型の前向き推論を採用した。
(1 )知織ペースの作成
ESの構築では知識の収集整理が最も重要とされている10)0 ESの構築にあたっては, 地震火災に対 する市街地の防災性を地区レベルで、評価する際の評価の視点, 評価対象, 評価項目評価手順といっ
た評価全般に関する知識, そして, 評価対象毎の評価方法に関する知識を収集整理することが必要と 考える。 そこで, 自治体の防災担当者に行ったヒアリング調査, 阪神・淡路大震災での被災実態に関 する文献や報告書, 既往研究成果, 火災や消防活動全般に関する文献, さらに, 第2章と第3章で 得た知見等11ト27)から,まず, 評価全般に関する知識ベースを整理し, 評価の視点, 評価対象,評価 項目, 評価手)1偵を検討したうえで, 評価対象別に評価方法に関する知識ベースを整理する。
1 )評価全般に関する知機
まず, 評価全般に関する知識については 以下のように整理した。
知識し1:防火という観点から地区の改善計画をより実効性のあるものにするためには,地区の防火 構成要素である街区, 道路, 建物, 空地, 水利について評価していき, 詳細に問題点を把 握して, 防火的な根拠をもって具体的な計画を作成することが求められる。
知識1. 2:消防車で長時間にわたり無理のない放水を継続でき,かつ,消防ホースを延長する時間に おいて妥当な最高限を考慮すると,消防ホースの最大延長本数は10本(延長距離は200m)
となる。
知識ト3 :大規模な延焼火災を防ぐには, まず, 消防水利の基準が定める消防ホースの最大延長が 200mであることを踏まえ,街区のl辺を200m以下として,街区周囲の道路全てに消防ホ ースが行き届くようにし, そして, 街区内で火災が発生しても周囲の道路からの放水によ りすぐに消火でき 隣接する街区へ延焼させないことが必要である。
知識1. 4 :消火活動を開始するには まず, 消防水利を確保することが重要で, 次に, 消防車を現場
近くの消防水利まで到着させること, そして, 消防隊員が消防水利から火災現場まで消防 ホースを延長できることが必要である。 しかし, 地震時には, 消防水利が使用できなかっ たり, 消防車の通行や消防ホースの延長が倒壊物により阻害されたりするため, 消火活動 が行えず, 火災被害が拡大することがある。
知識]. 5:延焼を最小限に抑えるには火災発生から約15""'20分以内に放水を開始することが望まし く, 消防ホースの延長本数を最大10本とした場合 震度 5以下ならば消防署から水利ま
での距離は概ね1""'2km以内, 震度6以上ならば概ね0.3""'lkm以内である。
知識1. 6:火災規模が大きい現場では, 道路閉塞等により到着が遅れた場合, 消火に十分な水利があ ったとしても鎮火できないことがある。
知識卜7:火災現場では部署できる水利数の多少が消防活動に大きく影響するため, 部署できる水利 数は重要である。
知識]. 8:消防活動が有効に機能している街区でも, 街区の火災規模が大きい場合には消火活動に利 用できる水利数が延焼拡大の阻止に大きく影響する。
知識]. 9:傾斜地は平坦地に比べて道路勾配が大きいため, 消防車の走行速度が落ち, 迅速な消防活 動が困難となったり, また, 水利部署できても消防車が安定を欠き, 消防活動が困難とな ったりする。 地形が延焼拡大の危険性に与える影響は大きく, 傾斜地は消防防災上重要視 すべき所である。
知識1.10:一般的に, 防災性の評価では, メッシュ又は町丁目単位で相対的な危険性を幾つかのラ ンクに分け, マップ等で表現する。 計画担当者は, これを都市整備の指標として, 整備目 標の設定, 整備効果の検討に用いる。
2)評価対象別にみた評価手法に関する知識
まず, 知識1. 1から, 評価対象としては, データ作成等も考慮して, 街区, 道路, 水利の3つを 設定することにした。 そこで 評価の考え方としては 知識卜3""1. 10を総合して, まず, 街区は,
街区火災の危険性, 道路は, 消防車が駆けつけ, 消防活動を行う消防スペースとしての使用可能性,
水利は, 水利自体の使用可能性と 水利までの消防車の到達可能性, 水利からの消防ホースの延長可 能性を評価してして。 次に, 第2章で提案した地区レベノレで、の消防活動困難区域の評価方法を参考に
し,図4-2に示すように, 街区周囲の道路全てについて, 消防ホースの到達可能性を判定する。 そし て,消防活動の迅速性, 消火活動に使用できる水利数, 道路勾配も考慮しながら, 街区火災が隣接街 区へ延焼する危険性を判定し 相対的な危険性を街区単位で幾つかのランクに分ける。 なお, 本章で はJ I街区の消火活動に投入される消防隊員数, 消防車数, また火災規模に応じた水利の必要水量に ついては考慮、しない。 以下に, 街区, 道路, 水利のそれぞれの評価方法に関する知識ベースを整理し
①水利評価に関する知識
. 地震時有効水利
ー・消防水利から消防ホース が到達可能な道路
口
街区火災が隣接街区へ延焼する可能性が低い街区 (消防活動有効街区)
口
街区火災が隣接街区へ延焼する可能性が高い街区 (消防活動困難街区) 図4・2 概念図
知識2. 1 :地震時には水道の送配水施設が破損し, 消火栓が広域にわたって全部使用できないことが 多いが, 防火水槽, 耐震性貯水槽等の消火栓以外の地震時有効水利については地震時に活 用できる。
知識2. 2 :地震時には,地震時有効水利周辺にある木造建物の倒壊によって, 地震時有効水利が使用 できないことがある。
②道路評価に関する知識
知識3. 1 :幅員が狭く, 沿道に木造建物が存在する場合, 木造建物の倒壊により道路が完全閉塞する ため, 道路沿いに消防ホースを延長できない可能性がある。
知識3. 2:傾斜地に多くみられる, 階段が存在する道路は, 消防車等の車両は平常時, 地震時とも通 行できず, 消防活動の大きな障害となる。
知識3. 3 :消防車が通行できる道路の最低幅員は消防車両の種類によって異なるが, 一般的な普通ポ ンプ車の場合,幅員3m未満の道路は平常時・地震時とも通行できない。
知識3. 4:地震時には,幅員4m未満の道路はほぼ全て消防車等の車両の通行が不可能であり,幅員 8m超の道路はほぼ全て通行が可能である。
知識3. 5 :消防車の通行障害物としては木造建物が最も多く, 次に, 電線の垂れ下がり, ブロック塀 や石塀, 石垣,電柱等ポーノレ類が多く,逆に通行障害を防いだものとしては, 植裁や生け 垣, 街路樹が挙げられる。 消防車の通行可能性の評価においては, マイナス要素として木 造建物,ブロック塀,電柱を考慮し,プラス要素として植裁や生け垣,街路樹を考慮する。
知識3. 6 :地震時には, 沿道にある木造建物やブロック塀等の立地状況, 配置状況で瓦磯の発生状況 が異なる。 特に, 幅員4m以上8m 以下の道路では, 木造建物の立地状況, 配置状況が消 防車等の車両の通行可能性に大きく影響する。
知識3. 7:幅員4m以上8m以下の道路では, 道路に壁面が接する木造建物が道路両側に対面してい る箇所が1つでも存在すると, 消防車等の車両は通行できない可能性が高い。
知識3. 8:幅員4m以上6m未満の道路では, 沿道にある木造建物に加えて, ブロック塀や石塀, 石 垣も消防車等の車両の通行に与える影響が大きい。
知識3. 9:消防車は梯子を積載しているために, 電柱は倒壊に至らなくても少しの電線の垂れ下がり から感電する危険性が高く,消防車の通行可能性を評価する際 電柱の存在を重要視する。
③街区評価に関する知識
知識4. 1 :街区の防災性能は, 建物密度, 建物種別, 築年数, また, 木造建物の規模, 接道不良建物 の割合, 住商・住工の混在率, 危険物施設数等と関連性が高い。 特に, 築年数が古い老朽 木造建物は街区の防災性能に大きく影響する。
(2)データの収集整理
整理した知識をコンビューターシステムに移植するため 知識の中から推論に必要と考えられるキ }ワードを抽出していき,評価対象毎に推論に用いるデータを検討した。データ項目を表4-1に示す。
そして, 第3章で取り上げた地区を対象にデータを収集した。 第3章で示したデータと重なる部分が あるが, 再度, 表4・2に示す。
「沿道状況Jについては, 第2章での「通行障害誘発要因」と同様の考え方で,知識3.5"""3. 8
を参考にし, 市街地の道路沿道にある, ①木造建物, ②ブロック塀, 石塀, 石垣, ③生け垣, 植裁,
樹木,④非木造建物について, それらの立地状況, 配列状況等を道路毎に調査したもので, 表 4-3,
図4・3に示すように, 消防車の通行障害の度合も考慮に入れ, 7つに分類した。 実際の市街地ではこ れらの幾つかのPattemが混在した道路, または1つのPattemのみで構成される道路といったように 様々な道路が存在する。
そこで, ゼンリン住宅地図をベースに,分岐点, 屈曲点の他に消防水利の設置場所, 消防署の場所 もノードとして, トポロジー構造を持つ道路ネットワークデータを作成し, 複数のリンクからなる閉 じた領域をポリゴンとして認識させ ノードには水利, 消防署に関する属性情報, リンクには道路に 関する属性情報, ポリゴンには街区に関する属性情報をリンクさせた。 対象地区のノード数は695,
リンク数は863,ポリゴン数は192である。 また,トポロジー構造のデータとすることで, ノード,
リンク, ポリゴンはそれぞれ隣接するノード, リンク, ポリゴンの情報を参照できるだけでなく, ノ ードはノードに接続するリンクの情報を, リンクはリンクを境界にして隣接するポリゴンの情報を,
表4・1 推論に用いるデータ
区分 推論に用いるデータ 対応する知識 使用した資料 データ型 消防水利数
消火栓数 2.1 消防水利図
水利データ 地震時有効水利数
ベクタ型(点) 地震時有効水利周辺の木造棟数 2.2 現地調査結果
消防署の有無 1.5 ゼンリン住宅地図‘98北 九州市門司区
道路幅員 3.1, 3.3, 3.4, 3.6, 3.7, ゼンリン住宅地図‘98北
3.8 九州市門司区 沿道木造棟数 3.1, 3.5 現地調査結果
道路データ 平成7年度都市基礎調査 ベクタ型(線)
電柱本数 3.5, 3.9
階段設置状況 3.2 現地調査結果
沿道状況(PatternI-Pattern7) 3.5, 3.6, 3.7, 3.8 建蔽率
木造建蔽率 老朽木造建蔽率
街区データ 接道不良棟数率 4.1 平成7年度都市基礎調査
ベクタ型(面) 住商工混在率
延床600rd以上の木造棟数
隣接街路の最大傾斜角 1.9 1/2500北九州市基本図
_".ー�
表4・2 推論に用いるデータの単純集計結果
データ区分 データ項目 カテゴリー サンプル数 構成比
消防水利数 110基 486 69.9%
211基以上 209 30.1%
消火栓数 110基 498 71.7%
道路 211基以上 197 28.3%
(ノード) 地震時有効水利数 110基 678 97.6%
211基以上 17 2.4%
地震時有効水利周辺の木造棟数 110棟 8 58.8%
211棟以上 9 41.2%
道路幅員 113m未満 398 46.1%
213m以上4m未満 41 4.8%
314m以上6m未満 148 17.1%
416m以上8m以下 98 11.4%
518m超 178 20.6%
沿道木造棟数 110棟 114 13.2%
211棟以上 749 86.8%
電柱本数 110本 234 27.1%
211本以上 629 72.9%
階段設置状況 l設置されていない 779 90.7%
2設置されている 84 9.3%
道路 沿道状況(Pattern1) l存在しない 510 59.1%
(リンク) 2存在する 353 40.9%
沿道状況(Pattern2) l存在しない 429 49.7%
2存在する 434 50.3%
沿道状況(Pattern3) l存在しない 642 74.4%
2存在する 221 25.6%
沿道状況(Pattern4) l存在しない 701 81.2%
2存在する 162 18.8%
沿道状況(Pattern5) l存在しない 665 77.1%
2存在する 198 22.9%
沿道状況(Pattern6) l存在しない 808 93.6%
2存在する 55 6.4%
沿道状況(Pattern7) l存在しない 786 91.1%
2存在する 77 8.9%
表4・2 推論に用いるデータの単純集計結果
データ区分 データ項目 カテゴリー サンプル数 構成比
建蔽率 110% 。 0.0%
210%超20%以下 23 12.0%
3120%超40%以下 76 39.6%
4140%超60%以下 73 38.0%
5160%超100%以下 20 10.4%
木造建蔽率 110% 4 2.1%
210%超20%以下 77 40.1%
3120%超40%以下 72 37.5%
4140%超60%以下 30 15.6%
5160%超100%以下 9 4.7%
老朽木造建蔽率 110% 76 39.6%
210%超20%以下 84 43.8%
3120%超40%以下 25 13.0%
街区 4140%超100%以下 7 3.6%
(ポリゴン) 接道不良棟数率 110% 32 16.7%
210%超20%以下 39 20.3%
3120%超40%以下 38 19.8%
4140%超60%以下 25 13.0%
5160%超100%以下 58 30.2%
住商工混在率 110%以下20%以下 72 37.5%
文は80%超100%以下
2120%超40%以下 84 43.8%
又は60%超80%以下
3140%超60%以下 36 18.8%
延床600 rrí以上の木造棟数 110棟 187 97.4%
211棟以上 5 2.6%
隣接街路の最大傾斜角 115度以下 121 63.0%
215度超 71 37.0%
表4・3 沿道状況の分類毎の肉容と通行障害の度合
沿道状況 内容 通行障害の度合
Pattern 1 庭等のオープンスペースがなく,壁面が道路に接する木造建
物が, 道路を挟んで両側に対面している箇所 大
Pattern2 庭等のオープンスペースがなく,壁面が道路に接する木造建
物が, 片側もしくは交互に並んでいる箇所
沿道木造棟数 庭等のオープンスペースがなく,壁面が道路に接する木造建
0棟超 Pattern3 物と, プロック塀等が, 道路を挟んで両側に対面している箇
所, 及び, 片側もしくは交互に並んでいる箇所
Pattern4 ブロック塀, 石塀が道路を挟んで両側に対面している箇所,
及び, 片側もしくは交互に並んでいる箇所
Pattern5 生け垣,植裁,樹木が道路を挟んで両側に対面している箇所,
及び, 片側もしくは交互に並んでいる箇所
沿道木造棟数 Pattern6 ブロック塀, 石塀が道路を挟んで両側に対面している箇所,
0棟 及び, 片側もしくは交互に並んでいる箇所
Pattern7 生け垣,植裁,樹木が道路を挟んで両側に対面している箇所,
及び, 片側もしくは交互に並んでいる箇所
qpq同判口同q�日q� ��
Patternl Patte口12 Pattern3
��o日�� DI�o 00日日o日��
Pattern4 Pattern5
門川u l--目日 め
目岡崎lll (
門HU 7
ni」闘回目ll
)旬 ld自国laCM
門HU
P
IRU| り |刊は! (
円HU ll---・
り
・・・・・『,EBB- /1、
門川U 尚 ILE--Fl )旬 1・・Rl 包抗 門什U
P-uu! υ |司リi (
木造建物 ・・・ブロック塀,石塀,石垣 道路 c::コ非木造建物 f H_I生け垣, 植裁, 樹木
図4・3 沿道状況の分類事例
118
またその逆も参照できるので, ネットワーク解析や隣接解析等を目的とする場合には非常に有効であ る。
(3)防災性評価ツールの内容
1)ESの概要
整理した知識を基に, GIS上でESを構築してし、く。 ESは, 図4-4に示すように,5つの推論段階 を経て,隣接街区へ街区火災が延焼拡大する相対的な危険性を街区毎に10ランクで判定する。また,
システムフローを数理的に決定するのが推論ルールで、あり,ルールは評価指標を用い知識を定量化す ることによって構築した7)。 推論ルールの一覧を表4-4に示す。 また, 第5段階の推論結果の内容を 以下に示す。 第3章では, 土地利用形態や地形によって, 防災性が異なることを指摘したが, ここで は, 木造住宅傾斜密集型の防災性が特に低かったことから, 地形のみを考慮、している。
危険ランク1:地震時に街区火災の危険性が低く, さらに, 消防活動有効街区である。
危険ランク2:地震時に街区火災の危険性が低いが, 消防活動困難街区である。
危険ランク3:地震時に街区火災の危険性が高いが, 消防活動有効街区である。 3個以上の地震時有 効水利を用いて迅速な消火活動が期待できる。
危険ランク4:地震時に街区火災の危険性が高いが, 消防活動有効街区である。 迅速な消火活動が期 待できないものの,3個以上の地震時有効水利が使用できる。
危険ランク5:地震時に街区火災の危険性が高いが, 消防活動有効街区である。 2個の地震時有効水 利を用いて迅速な消火活動が期待できる。
危険ランク6:地震時に街区火災の危険性が高いが, 消防活動有効街区である。 迅速な消火活動が期 待できないものの 2個の地震時有効水利が使用できる。
危険ランク7:地震時に街区火災の危険性が高いが 消防活動有効街区である。 l個の地震時有効水 利を用いて迅速な消火活動が期待できる。
危険ランク8 :地震時に街区火災の危険性が高いが, 消防活動有効街区である。 迅速な消火活動が期 待できないものの, t個の地震時有効水利が使用できる。
危険ランク9:地震時に街区火災の危険性が高く, かつ, 消防活動困難街区であるが, 平坦地に属す る。
危険ランク10:地震時に街区火災の危険性が高く,かっ,消防活動困難街区であり,傾斜地に属する。
2)第1段階の推論
ここでは,Nodejから200m以内の経路上にある全ノード (Nodejを含む)を対象に順次推論を行つ
11 闘
12 m
14 "
崎15
-コ‘、...,E可.、4・ー-eh・・・・・・・・・・e...ー...d..・ー・・ーー...�・‘b..a'‘・ ....a...・・・・・・'・・・・・・..,.....a....". .•. ...
|時1(峨3.2) 階段の存在
{
l 存在する I 存在しない
F h3(蜘4)
2(繍3.3)3m来演 道開削員1 3nI以上v v E t相未満 l 4m以上伽以下 1 8m週 目 ド6叩健3.5.3.6) 腕の存在可' l
存在する l 存在しない I
,...."
5-5 ( 繍3.5)存在する 蹴沿道の木造酬の存在l 存在しないv E E�|I�問 H
HPh寵t悦6t旬tre r掴rnrn川a1♂na が君3 - 翠6 T 狩 在ag7J 副i ) 4
道路P E玖 a抵沿主t比t道e姐r
の叫 を
I
ト同 F 実6現鰐
Tでt品. t 戚z常杭1
I
詰釘J孟副夜4 i
|E玖剖
対 | I
E災時消防車走行vl不H可H能・V道路・...圏・M平AS・ 常時・-- 震災時共l消防車走行可能事l 道路E 1平常時-EE災時共消防車走行不可能道路E
‘�...・・・4・・・・....... 、. ... ... ...・・・・・・・・・・・ー・・・・・・
図4・4 ESの推論の流れ
推論 和-N 準拠する
段階 知識
1 .2
2 1.4
3 2.1
4 2.2
第l 1.2 l目4
6 1.4
1.5
8 1.7
第2 9 1.3 1.7
第3 10 4.1
11 1.3
12 1 .6 第4
13 1.8
14 1.9
一
第515 1.9
~
表4-4 知識ペースに基づく推論ルールの内容〈メインプログラム〉
使用データ 推論対象
消防水利数
地震時有効水利数
地震時有効水利周辺NODE i:から の木造棟数 200m以内の
全 / ート ルール5・3の結果 (NODE i を
含む)
消防署の有無 ルール6・9の結果
水利 から消防署まで の距離
fトル7の結果 NODEi
ルール8の結果 LINK i
建蔽率, 木造建蔽率,
老朽木造建蔽率,接道 不良棟数率,住商工混 在率,延床600 rrf以上 の木造棟数
lトル9の結果
POLYGON i ルール9の結果
ルール8の結果
隣接街路の最大傾斜
危険ランク9 ルー川4の結果 のポリゴン
推論ルールの内容
NODE iから, 消防ホースの最大延長である200m以内の経路上の全/ー ド(NODEiを含む)を抽出する。
①消防水利が存在する場合はルール3へ進む。
②それ以外はí200mNODE RESULTl Jとする。
①地震時有効水利が存在する場合はルール4へ進む。
②それ以外はí200mNODE RESULT2Jとする。
①地震時有効水利の周辺に木造建物が存在しない場合はlトル5に進む。
②それ以外はí200mNODE RESULT3Jとする。
①震災時に消防ホースが延長可能なリンク沿いに,地震時有効水利からNODE lまで消防ホースが200m以内で到達できる場合はルール6に進む。
②それ以外はí200mNODE RESULT4Jとする。
①震災時に消防車が通行可能なリンクを通って, 消防署から地震時有効水 利まで消防車が到達できる場合はルール7に進む。
②それ以外はí200mNODE RESULT5Jとする。
①消防署から地震時有効水利までIkm以内で消防車が到達できない場 合はí200mNODE RESULT6Jとする。
②それ以外はí200mNODE RESULT7 Jとする。
NODE iから200m以内のノードの推論結果を基に. NODE iをíNODE RESULTI J ...__, íNODE RESULT8Jの8タイプに分ける。
L附Kiを構成する両端/ート♂の推論結果を基に. LINK íを í UNK RESULT1 J ...__, íUNK RESULT7 Jの7タイプに分ける。
1 )老朽木造建物の密度. 2)木造建物の密度. 3) 接道不良建物の割合. 4) 住居系・商工業系用途の建物の混在割合. 5)建物の密度. 6)大規模な木 造建物の存在, の6つの評価項目を用いて. POLYGON iを「街区火災 の危険性が高しリと「街区火災の危険性が低しリの2つに分け, それ ぞれルール10に進む。
①「街区火災の危険性が高し、JPOLYGON i を構成するリンクの推論結果 の中にíLINKRESULTI Jが1 つでも存在する場合はlトル13へ進む。
それ以外はfトル12に進む。
②「街区火災の危険性が低しリPOLYGON i を構成するリンクの推論結果 の中にíUNKRESULT1 Jがlつでも存在する場合は「危険ランク2Jに 設定する。 それ以外は「危険?ンクI Jに設定する。
POLYGON íを構成するリンクの推論結果 の中に íLTNK RESULT5J ...__,
íUNK RESULT7 Jが混在する場合と, それ以外の場合の2つに分け,
それぞれトル13に進む。
①íLINK RESULT5J "'-' íUNK RESULT7 Jが混在するPOLYGON íに 対する消火活動に使用できる水利がi個の場合は「危険7ンク3J• 2個 の場合は「危険ランク5J. 3個以上の場合は「危険うンク7Jとする。
②íLlNK RESULT5J ...__, íLINK RESULT7 Jが混在しないPOLYGON í に対する消火活動に使用できる水利がl個の場合は「危険7ンク4J• 2 個の場合は「危険ランク6J• 3個以上の場合は「危険うンク8Jとする。
POLYGON iを構成するリンクの最大傾斜角が5度以下の場合は「危険ラ ンク9J . それ以外は「危険ランク10Jとする。
①「危険ランク9Jのポリゴンの周囲に, 「危険ランク9Jのポリゴン がO個文は!個しか存在しない場合は「危険ランクに調整する。
②それ以外は「危険ランク9Jとする。
�ー‘
表4・4 知織ペースに基づく推論ルールの内容〈サブプログラム)
推論和ー和 準拠する 使用データ 推論対象 推論ルーノレの内容
段階 知識
5-1 3.1 道路幅員 ①幅員4m未満の場合はルール5-2に進む。
②それ以外は 「震災時消防ホース延長可能リンクJとする。
5-2 3.1 沿道木造棟数 ①沿道に木造建物が存在する場合はルール5・3に進む。
②それ以外は「震災時消防ホース延長可能リンクJとする。
①沿道状況Pattem 1ム3が混在している場合は「震災時消防ホース延長 5-3 3.6 沿道状況 不可能リンクJとする。
③それ以外は「震災時消防ホース延長可能リンクJとする。
6・l 3.2 階段設置状況 ①道路上に階段が存在しない場合はトル6-2に進む。
②それ以外は「平常時・震災時共消防車通行不可能リンクjとする。
6-2 3.3 道路幅員 ①幅員が3m以上の場合はルール6・3に進む。
②それ以外は「平常時・震災時共消防車通行不可能リンクJとする。
6-3 3.4 道路幅員 ①幅員が4m以上の場合はIトル6-4に進む。
②それ以外は「震災時消防車通行不可能りンクJとする。
第| 6-4 3.4 道路幅員 UNKi ①幅員が8m以下の場合はlレール6-5に進む。
②それ以外は「平常時・震災時共消防車通行可能リンクJとする。
3.6
電柱本数 ①電柱が存在しない場合はルール6-6に進む。
6-5
3.9 ②それ以外は「震災時消防車通行不可能リンク」とする。
6-6 3.6 沿道木造棟数 ①沿道に木造建物が存在する場合は/トル6・7に進む。
②沿道に木造建物が存在しない場合にはルール6-9に進む。
3.6 ①沿道状況Patteml が混在している場合は「震災時消防車通行不可能リ
6-7 沿道状況 ンクjとする。
3.7
②それ以外はトル6・8に進む。
3.6 道路幅員 ①幅員4m以上6m未満で,かつ沿道状況Pattem2ム4が混在している場
6-8 合は「震災時消防車通行不可能リンクJとする。
3.8 沿道状況
②それ以外は「震災時消防車通行可能リンクJとする。
道路幅員 ①幅員4m以上6m未満で, かっ, 沿道状況Pattem6が混在している場 6-9 3.8 合は「震災時消防車通行不可能リンクJとする。
沿道状況 ②それ以外は「震災時消防車通行可能リンクJとする。
てしそ, 表4-5に示すように, それらの推論結果を基にNodejをNode Resultl "'Node Result8の8つの タイプに分ける。
まず, ノレールl により抽出された Nodejから200m以内の経路上の全ノード、をルール2'"ルーノレ7 で,表4-6に示すように, 200mNode Resultl '""200m Node Resu1t7の7タイプに分ける。 この結果は Nodejから200m以内のノードの属性データとして保存される。 ここで, ルール5では, サブプログラ ムで判定した, 震災時消防ホース延長可能道路を使って, 使用できる地震時有効水利からNodejまで 200m以内で消防ホースが到達できるか否かを判定する。 ルーノレ6では, 平常時・震災時共消防車走 行可能道路を通って, 消防署から使用できる地震時有効水利まで消防車が到達できるか否かを判定す る。サブプログラムで、の消防車走行道路の通行可能性の評価については, 第2章で構築した, 水利配 置に基づいた消防車走行道路の通行可能性の評価手法を参考にしている。
また, ルール8では, 属性データとして格納したNodejから200m以内の全ノードの推論結果を抽 出し, 表4-7に示すように, それらの構成によりNodejを判定する。 例えば, Nodejから200m以内の 全ノードの推論結果が全て200mNode Resu1tlならば, NodejはNodeResu1tlに判定される。 この結果 はNodejの属性データとして格納される。 このように各段階の推論結果を属性データとして格納して いくことで, それを基に推論を行ったり, 主題図を作成したりできる。
3)第2段階の推論
ここでは, トポロジー構造をもっデータの利点を生かし, まず, Linkjを構成する両端ノードNodej,
Nodejを抽出し, 次に, ルール 9で, それらの属性データとして格納されている第l段階での推論結 果を参照しながら, 表4-8に示すように,LinkjをLink Result 1'"" Li出Result7の7つのタイプに判定す る。そこで, ノレーノレ9では, 対象地区に出動する消防署数をlっと仮定し, ①Nodej , Nodejまで消防 ホースが到達している地震時有効水利が同一水利であること, ②その水利からの同一の200m以内の 経路上にNodej,Nodejが存在すること, の2つの条件で、行う。 これは, Nodej, Nodejに到達する水利数 がl個, 2個, 3個以上のいずれの場合も同様である。 表4-9に両端ノードの推論結果とLinkjの推論 結果の対応関係、を示す。 表4-9中の網掛け部分は, 上述した条件により, Li出Iがそのいずれかに判定 されることを表している。 今回は消防署数を l っと仮定しているため, 表4-9 に示す推論結果となる
が,現実には複数の消防署からの応援体制を考慮、した判定が必要である。 これについては今後の課題
としたい。
4)第3段階の推論
第3段階では, 街区火災の危険性を高い, 低いの2つに分ける。 街区火災の危険性の判定に大きく 関わる要素は様々考えられるが, 第3章で明らかにした街区の防災性能に影響する要因も含め, 知識
4. 1を参考にして 表4-10に示す6つの要素を用いることにした。 そこで, ここでは, AHp8) 28)によ
表4・5 第1段階の推論結果の内容
推論結果 内容
NODE RESULTl 平常時・地震時共に, 消防水利からNODEiまで消防ホースが到達しない
ー
NODE RESULT2 地震時に地震時有効水利からNODEiまで消防ホースが到達しない
NODE RESULT3 迅速な消防活動は期待できないが, 地震時にl個の地震時有効水利からNODE iまで消
防ホースが到達する
NODE RESULT4 迅速な消防活動は期待できないが 地震時に2個の地震時有効水利からNODE iまで消
防ホースが到達する
NODE RESULT5 迅速な消防活動は期待できないが, 地震時に3個以上の地震時有効水利からNODE iま
で消防ホースが到達する
NODE RESULT6 迅速な消防活動は期待でき, かつ, 地震時にl個の地震時有効水利からNODE iまで消
防ホースが到達する
NODE RESULT7 迅速な消防活動は期待でき, かつ, 地震時に2個の地震時有効水利からNODE iまで消
防ホースが到達する
NODE RESULT8 迅速な消防活動は期待でき, かつ, 地震時に3個以上の地震時有効水利からNODE iま
で消防ホースが到達する
表4・6 第1段階の中間仮説の内容
推論結果 内容
200m NODE RESULTl 消防水利が存在しないノード
200m NODE RESULT2 消火栓が存在するノード
200m NODE RESULT3 地震時有効水利が存在するが, 周辺に木造建物があるため使用できないノード
200m NODE RESULT4 地震時有効水利周辺に木造建物は存在しないが, NODEiまで消防ホースを延長すること
ができないノード
200m NODE RESULT5 地震時有効水利周辺に木造家屋が存在せず, NODEiまで消防ホースを延長することがで
ー きるが, 消防署から水利まで消防車が到達できないノード
200m NODE RESULT6 地震時有効水利周辺に木造家屋が存在せず, NODEiまで消防ホースを延長でき, かつ,
一 消防署から水利までlkm超で消防車が到達できるノード
200m NODE RE 地震時有効水利周辺に木造家屋が存在せず, NODE i まで消防ホースを延長でき,かつ,
SULT7
消防署から水利までlkm以内で消防車が到達できるノード
124
a・・h
表4・7 2(励n以内の全ノードの推論結果とNodelの推論結果の対応関係
Node iの Node iから200m以内の全ノードの推論結果
推論結果 200m 200m 200m 200m 200m 200m 200m
Node Result 1 Node Result 2 Node Result 3 Node Result 4 Node Result 5 Node Result 6 Node Result 7
Node Resultl •
•
•
•
•
• •
• •
• •
• •
• •
• •
• •
• •
• •
Node Result 2 • •
• • •
• • •
• • •
• • •
• • •
• • •
• • •
• • •
• • •
• • •
• • • •
• • • •
• • • •
• • • •
__t-Jode Result 3・5 •
Node Result 6・8 •
• •
一
ここで, 網掛け部分は200mNode Result 1 '"'"'5が混在している可能性がある
125
-
表4・8第2段階の推論結果の内容
ー 推論結果 内容
LlNK RESULTl 地震時に地震時有効水利からLINKiに消防ホースが到達しない
LlNK RESULT2 迅速な消防活動は期待できないが, 地震時にl個の地震時有効水利からLINKiに消防ホ
ースが到達する
LlNK RESULT3 迅速な消防活動は期待できないが, 地震時に2個の地震時有効水利からLINKiに消防ホ
ースが到達する
LlNK RESULT4 迅速な消防活動は期待できないが, 地震時に3個以上の地震時有効水利からLINKiに消
防ホースが到達する
LlNK RESULT5 迅速な消防活動は期待でき かっ 地震時にl個の地震時有効水利からLINKiに消防ホ
ースが到達する
LlNK RESULT6 迅速な消防活動は期待でき, かつ, 地震時に2個の地震時有効水利からLINKiに消防ホ
ースが到達する
LlNK RESULT7 迅速な消防活動は期待でき, かつ, 地震時に3個以上の地震時有効水利からLINKiに消
防ホースが到達する
表4・9 両端ノードNodel, Nodejの推論結果とLinkjの推論結果の対応関係
NodejのNode Result
2 3 4 5 6 7 8
Ll Ll Ll Ll しi Ll Ll Ll
ヲ しl しl Ll Ll Ll Ll Ll Ll
��
しl Ll Ll or L2 LI or L2 Ll or L2 Ll LI or L2 LI or L2_. I 4 Ll しl Ll or L2 Ll or L2 or L3 LI or L2 or L3 Ll Ll or L2 Ll or L2 or L3
の
50
。• 5
Ll or L2 or L3
Ll Ll Ll or L2 Ll or L2 or L3 Ll Ll or L2 or L3 Ll or L2 or L3
orL4
拍
i�
Ll しl Ll Ll Ll Ll or L5 Ll or L5 L1 or L5;; I 7 Ll Ll L1 or L2 LI or L2 Ll or L2 or L3 L1 or L5 Ll or L5 or L6 LI or L5 or L6
Ll or L5 or L6 Ll しl し1 or L2 Ll or L2 or L3 Ll or L2 or L3 Ll or L5 Ll or L5 or l必
or L7 ここで, しはLink Resultの略
126
』圃・h
り/レーノレ10を構築し, 判定を行う。
まず, 表4・10 に示すように, 評価項目毎に0, 1, 2, 3, 4の評価得点を与えた。 次に, 防災の専 門家に対する一対比較で得られた内容を解析し, 表4-11に示すように, 各評価項目のウェイトを求 めた。 ここで, 建物の密度, 大規模な木造建物の存在については算出したウェイトが極めて低かった ことから, 評価項目から外し, 修正ウェイトを算出している。
そして, 下式によりPolygonjの総合評価得点Zjを算出し, ある判別値で街区火災の危険性を高い,
低いの2つに判定する。 その結果はPolygonjの属性データとして格納される。 判別値は適用する市街 地の特性等により異なると考えられるため, やや専門的ではあるが, 計画者が市街地の現況や特性を 険討したうえで設定するものとした。
5)第4段階の推論
Zjニエ(Wj
XSCj)
Zi:総合評価得点
Wi:評価指標のウェイト SCj:評価指標の得点
ここでは, 第3段階の推論結果と,Polygoni を構成するリンクの属性データとして格納されている 第2段階の推論結果, 外部データベースに格納されている属性情報を用いて, Polygonjの延焼拡大の 危険性を]0ランクで判定する。
そこで,街区火災の危険性が高いPolygoniについては,ルール] 1によりPolygoni周囲の道路全てに 消防ホースが到達可能と判定された場合, つまり, 消防活動有効街区と判定された場合, 街区内での 延焼阻止が期待できることから, ノレール]2, 13 で消防活動の迅速性, 消火活動に使用できる水利数 を検討し, 延焼阻止の信頼性を6つに分けた。 それ以外の場合は, 消防活動困難街区であり, 現状で も延焼阻止は期待できないが, さらに, 道路傾斜が消防活動に与える影響が大きいことから, ルール 14で,隣接街路の最大傾斜を検討し, 延焼拡大の危険性をさらに2 つに分けた。 ここで, 第3章での 木造住宅傾斜密集型の数量化H類分析の結果から, 道路の防災性能に影響する要因として, I道路傾 斜J 5度以上のカテゴリースコアが大きな値を示している。 これを踏まえ,ルール14では, 5度以上 が消防活動に与える影響が大きいと判断し, 延焼拡大の危険性を2 つに分けている。 これらの結果は Po1ygoniの属性データとして格納される。
6)第5段階の推論
第4段階のルーノレ14では,Polygonjの危険ランク判定を, それに隣接するポリゴンの危険ランクを
表4・10 評価項目の内容と得点
一
評価項目 内容
ωl 老朽木造建物の密度 非常に高い 1.老朽木造建蔽率40%超 高い 2.老朽木造建蔽率20%超40%以下 低い 3.老朽木造建蔽率0%超20%以下 上記以外 4 老朽木造建蔽率0%
ω2木造建物の密度 非常に高い l木造建蔽率60%超
高い 2.木造建蔽率40%超60%以下
やや高い 3.木造建蔽率20%超40%以下 低い 4 木造建蔽率0%超20%以下 上記以外 5木造建蔽率0%
ω3接道不良建物の 割合 非常に多い l.接道不良棟数率60%超 多い 2.接道不良棟数率40%超60%以下 やや多い 3.接道不良棟数率20%超40%以下
少ない 4.接道不良棟数率0%超20%以下
上記以外 5 接道不良棟数率0%
ω4住居系・商工業系用途の建物の混在割合混在し ている 1.住商 工混在率40%超60%以下
やや混在している 2 住商工混在率20%超40%以下又は60%超80%以下 上記以外 3.住商工混在率0%以上 20%以下文は80%超100%以下 ω5 建物の密度 非常に高い 1.建蔽率60%超
高い 2.建蔽率40%超60%以下 やや高い 3.建蔽率20%超40%以下
低い 4.建蔽率0%超20%以下
上記以外 5.建蔽率0%
ω6大規模な木造建物の桐生 存在する 1.延床600 rrf以上の木造建物棟数O 棟超 存在しない 2.延床600 rrf以上の木造建物棟数0 棟
表4・11 一対比較法で求めた評価項目のウェイト
評価項目 l 老朽木造建物の密度 2. 木造建物の密度 3. 接道不良建物の害lJ合
4. 住居系・商工業系用途の建物の混在 5. 建物の密度
6. 大規模な木造建物の存在
整合度(C.1.)=0.0611 整合比(C.R.)=0.0493
ウェイト 修正ウェイト
0.4133 0.4444
0.1018 0.1095
0.2342 0.2518
0.1809 0.1945
0.0448 0.0251
評価得点 4点 3点 2点 0点 4点 3点 2点 l点 0点 4点 3点 2点 l点 0点 4点 3点 0点 4点 3点 2点 l点 O点 4点 O点
量圃・ー
考慮せずに行った。 傾斜地の上部等では道路勾配が緩いため, 危険ランク10の中に危険ランク9が孤 立している可能性がある。 危険ランク9のPolygonjに至るまでの道路の勾配がきついことから, 危険ラ ンク10のPolygonjと同様に迅速な消火活動が期待できないことや消火活動が困難となること等を考慮 すると, これをチェックし, 危険ランク10に調整する必要があると考える。 ルール15は, ルール14 で危険度ランク9に判定されたPolygonjに対して, トポロジーデータの利点を生かし, 隣接するポリ ゴンとの調整を行うものである。
そこで, 危険度ランク9に判定されたPolygonjまでの消防車のアクセスの仕方やその方向等を考慮 して調整することが望ましいが, これらについては考慮せず, 危険度ランク9に判定されたPolygonj に隣接する全てのポリゴンが危険ランク10に判定されている場合のみ危険ランク10に調整すること にした。 これにより, 全ての推論が終え, 最終的な危険度ランクが決定される。
このように, 5つの推論段階で構成される ES を支援機能とした防災性評価ツールは, パネノレ上の コマンドボタンをクリックすることで, 外部データベースや, ノード, リンク, ポリゴンに属性デー タとして格納した各推論段階の結果を自動的に読み込み, 各段階の推論を行うだけでなく, 各段階で の推論結果も作図・表示できるようにしている。
4. 2. 5計画立案ツールの開発
4. 2. 2で述べたように, 計画立案ツーノレには, ①ESの推論結果を基に, 市街地の防災性を低減さ せている箇所を抽出できる機能, ②その改善を要する箇所に対する様々な属性情報や, ES により導 き出した客観的かっ的確な改善方策等の数値・文字情報を提供できる機能, ③計画案の作成, 修正が 行える機能を組み込む。
そこで, ①については, パネル上のコマンドボタンをクリックすることで, ES の推論過程でノー ド, リンク, ポリゴンに格納した属性データを自動的に読み込むようにし, そして, それらの情報を 基に, 改善を要する箇所を水利, 道路, 街区という単位でベンやブラシの属性を変えて表示できるよ
っにしfこ。
水利は, 第l段階の推論過程でノードに属性データとして格納した結果を読み込み, その情報を基 に周辺の木造家屋の倒壊, 消防車のアクセス不能により使用できない水利を表示させる。
道路は, 迅速に消防活動を行うという観点から, また, 効率良くまちづくりを進めるという観点か ら, まず, 地震時有効水利からí200m以内の経路Jと, 消防署から地震時有効水利までの「最短経 路jを抽出させる。 そして, 第l段階の推論過程でリンクに属性データとして格納した結果を読み込 み,それらの経路の中で, 消防ホースが延長できない道路と消防車が通行できない道路を表示させる ようにした。
街区は, 第3段階の推論結果を基に, 街区火災の危険性が高い街区を表示させる。
②については, ①でペンやブラシの属性を変えて表示されている箇所をクリックすることで, 外部
129