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腎機能を正確に見積もるコツと理論 ~ 投与設計のすべてがここから始まる ~ 阿蘇の雲海 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理分野平田純生

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(1)

熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・ 臨床薬理分野 平田純生 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・ 臨床薬理分野 平田純生 阿蘇の雲海

腎機能を正確に

見積もるコツと理論

~投与設計のすべてがここから始まる~

腎機能を正確に

見積もるコツと理論

~投与設計のすべてがここから始まる~

(2)

単に添付文書通りのことをするのが薬剤師ではない 単に一覧表を見て投与量を確認するのが薬剤師ではない 日々変革する医療に対応できるだけの生涯学習意欲を 保ち続けるモチベーションを上げ、薬を好きになる、患者さん を好きになる。薬のこと、病態のことを詳しく知りたくなる人に 薬剤師になってもらいたい 本日のテーマ 初歩の初歩に戻って投与設計 腎機能低下患者の投与設計の第1歩が正しい薬の 尿中未変化体排泄率と患者の正確な腎機能の把握 特に後者の見極めが難しい

今後、期待される薬剤師像

(3)

薬物投与設計時に使う腎機能検査は?

①イヌリン投与による実測GFR(Cin)1日蓄尿による実測CCrCG式による推定CCreGFR(mL/min/1.73m2eGFR(mL/min) ⑥血清Cr値 ⑦血清シスタチンC値

(4)

4

ダビガトラン

の重い教訓

ダビガトラン

(5)

80歳代女性で、ワルファリンカリウムから切り替えを行い、1日 220mg/日を投与。投与開始から12日目で血痰、鼻出血を認め、 15日目(投与中止日)に血痰、呼吸困難を認め、救急外来に搬 送され、翌日に死亡している。発症した副作用は、肺胞出血、呼 吸不全、鼻出血、喀血、貧血、血尿、タール便。臨床検査値は、 血清Crが投与開始50日前に2.21mg/dL、投与中止日は 4.2mg/dL、BUNは投与中止日に53.8mg/dL。

ダビガトランによる中毒性副作用症例

Cockcroft & Gault 法

推算CCr(mL/min)= (140−年齢)×体重(kg)×0.85(女性) 72×血清Cr(mg/dL)

(6)

80歳代女性で、ワルファリンカリウムから切り替えを行い、1日 220mg/日を投与。投与開始から12日目で血痰、鼻出血を認め、 15日目(投与中止日)に血痰、呼吸困難を認め、救急外来に搬 送され、翌日に死亡している。発症した副作用は、肺胞出血、呼 吸不全、鼻出血、喀血、貧血、血尿、タール便。臨床検査値は、 血清Crが投与開始50日前に2.21mg/dL、投与中止日は 4.2mg/dL、BUNは投与中止日に53.8mg/dL。

ダビガトランによる中毒性副作用症例

ダビガトランの尿中未変化体排泄率は85%と高く、 70歳以上の患者では1回110mgを1日2回を考慮する。 血清Crが4.2mg/dLであればeGFRは8.2mL/min/1.73m2 eGFRを薬物投与設計にするには体表面積未補正値 を使うが、ダビガトランではCCrを用いる。

Cockcroft & Gault 法

推算CCr(mL/min)= (140−年齢)×体重(kg)×0.85(女性) 72×血清Cr(mg/dL)

(7)

CL: 110mL/min Vd: 1.0L/kg fe: 85% BA: 6.5% PBR: 35% t1/2: 11~13hr CYPによって代謝されないがP-糖タンパク質基質

プラザキサの添付文書からわかること

常用量は1回150mgを1日2回。ただし中等度の腎障害患者 ( CCr30-50 )、P-糖蛋白阻害薬併用患者、70歳以上の 患者、消化管出血の既往のある患者では1回110mgを1日 2回を考慮する。 透析患者を含む高度の腎障害(CCr<30)では腎排泄性 であり、出血の危険性が増大するため禁忌。

(8)

体 重(kg)

体重と

eCCr、eGFRの関係

85歳女性血清Cr値1.0mg/dL、身長150cmの場合 eCCrmL/min) 30 40 50 60 70 80 30 40 50 30 40 50 ダビガトラン 禁忌領域 eGFRmL/min/1.73m2 eGFRmL/min) 20

(9)

体 重(kg)

体重と

eCCr、eGFRの関係

85歳女性血清Cr値1.0mg/dL、身長150cmの場合 eCCrmL/min) 30 40 50 60 70 80 30 40 50 30 40 50 ダビガトラン 禁忌領域 eGFRmL/min/1.73m2 eGFRmL/min) 本症例の体重が30~40kgであればCG式によるCCrでは ダビガトランは禁忌のはずだが、50kg以上であれば投与 可能になるが、出血のリスクも増大する。 20

(10)

体 重(kg) 体重とeCCr、eGFRの関係 65歳女性血清Cr値2.0mg/dL、身長150cmの場合 CG式による eCCr (mL/min) 30 40 50 60 70 80 30 40 20 20 30 40 ダビガトラン 禁忌領域 eGFR (mL/min/1.73m2 eGFR (mL/min) 本症例の体重が30~60kgであればCG式によるCCrでは ダビガトランは禁忌のはずだが、70kg以上であれば投与 可能になるが、出血のリスクも増大する。CG式は肥満の 影響を受けやすいため、理想体重を用いる。 10

(11)

年 齢 年齢とeCCr、eGFRの関係 体重40kgの女性血清Cr値1.0mg/dL、身長150cmの場合 30 40 50 60 70 80 30 40 50 30 40 50 ダビガトラン 禁忌領域 eGFR (mL/min/1.73m2 eGFR (mL/min) CG式による eCCr (mL/min) 20

(12)

年 齢 年齢とeCCr、eGFRの関係 体重40kgの女性血清Cr値1.0mg/dL、身長150cmの場合 30 40 50 60 70 80 30 40 50 30 40 50 ダビガトラン 禁忌領域 eGFR (mL/min/1.73m2 eGFR (mL/min) CG式による eCCr (mL/min) 日本人向けGFR推算式:

eGFR (mL/min/1.73m2 =194×Cr-1.094×Age-0.287×0.739

(女性)

20

CG式によるCCrでは若年者の腎機能高値、

加齢による腎機能低下が顕著

(13)

eGFR (mL/min/1.732) 実測GFR (mL/min/1.73 2 ) CG式CLCr(mL/min/1.732 実測GFRとeCLCrの相関性 実測GFRとeGFRの相関性 CG式による推算CCrはGFRより高値になるので0.789倍し、 GFRとして評価する。実測CCrでは0.715倍して評価する。 堀尾勝:GFR推定法.腎機能(GFR)・尿蛋白測定の手引. P81-91, 日本腎臓学会編, 東京医学社, 2009

(14)
(15)

ダビガトラン

ダビガトランとワルファリンの違い

ワルファリン

INR測定不要 (APTT 2倍(60秒)以下?) 食事の影響がない 相互作用が少ない INR測定必須 納豆・クロレラ禁、緑黄色野菜要注意 相互作用多い 拮抗薬がない FFP、第Ⅸ因子、第Ⅶ因子の投与? VKで拮抗可能 透析で61~68%除去 可能(Vd:1.0L/kg, PBR: 35%) CL: 110mL/minなのでDHPも可? PBR99%のため透析除去は不可能だが 拮抗薬あるため透析不要 モニタリング困難 INRによりモニタリング可能 腎不全ではt1/2が延 長し、出血が持続 半減期長いが個人差 は顕著ではない ? ?

(16)

薬物種 薬物 血清ジゴキシン濃度 Ca拮抗薬 ベラパミル 約50% ニフェジピン ? ジルチアゼム ? β遮断薬 カルベジロール ? 抗不整脈薬 キニジン 約100% アミオダロン 約60% プロパフェノン 約100% 抗真菌薬 イトラコナゾール 約50% 抗生物質 クラリスロマイシン 約200% 免疫抑制剤 シクロスポリン 約200% 抗結核剤 リファンピシン 19〜80% St. John’s Wort 含有食品 26%

ジゴキシンとP-gpを介する相互作用

↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↓ ↓

(17)

臨床上、重要なP糖蛋白阻害薬は?

ベラパミル, クラリスロマイシン, エリスロマイシン, イトラコナゾール, シクロスポリン, プロパフェノン, キニジン, テリスロマイシン, リトナビル, ネルフィナビル

誘導薬は?

リファンピシン, St. John’s Wort

阻害強度をジゴキシンの血中

濃度上昇度から推察すると

キニジン100~200%>クラリスロマイシン100~150%> アミオダロン70~100% >ベラパミル40~80%> イトラコナゾール=プロパフェノン35~60%>シクロスポリン 10~80%>スピロノラクトン0~20%

(18)

ほがらかな心で 毎日をはつらつと ハーブの力で すこやかな気持ちに

コンビニでも入手可能なサプリメント

セントジョンズワート(西洋オトギリソウ)

ドイツ・オーストリアでは医療用医薬品で、標準的な抗うつ 薬と同等に効果があり、副作用が少ないとされている。

650mg/日

500mg/日

(19)

心移植 心移植 血中シ ク ロ ス ポ リ ン 濃 度 ng/mL 2n 2名とも心生検3週間前からうつ状態のためSt John’s Wortを自己判断で服用。 血中シクロスポリン濃度の低下とともに生検により拒絶反応が認められた。

Rushitzka F, et al: Lancet 355:548-549, 2000より引用

急性の移植心の拒絶反応を認めた

2症例

St John’s wort 900mg/日

(20)

経口抗凝固薬

直接トロンビン阻害薬 ダビガトラン(商品名プラザキサ) Ue: 85%、CCr<30mL/minでは出血リスク増大のため禁忌Xa因子阻害薬 リバーロキサバン(商品名イグザレルト) Ue: 不明だが35%以上 ;CCr30mL/min未満の患者では出血 リスクを生じる恐れがあるため禁忌 第Xa因子阻害薬 アピキサバン(商品名エリキュース) Ue: 27%:CCr15mL/min未満には使用経験がないため禁忌 ビタミンK依存性凝固因子合成阻害薬 ワルファリン Ue: 0%、重篤な腎障害では本剤の代謝・排泄の遅延で出血 することがあるため禁忌だが、80%以上の腎専門医が禁忌 であることを知らなかった。平田純生他:日病薬誌44: 32-34, 2008

(21)

ワルファリンは重篤な腎障害に禁忌に

なっていることを知っていたか?

はい

いいえ

(22)

22

腎機能と薬物の

尿中排泄率による

投与設計のコツ

腎機能と薬物の

尿中排泄率による

投与設計のコツ

(23)

日本では血清Cr濃度も尿中Cr濃度も正確な酵素法に よって測定

クレアチニン測定法の国際間の差

米国などではJaffe法によってCr濃度を測定。血清では アセトン体、ピルビン酸、ビタミンCなどとも反応し、1.2倍 程度高く測定されるが、尿中には反応陽性物質がない ため、真のCr濃度が測定される。 実測CCr = (尿中Cr値×尿量)/血清Cr値 で表される実測CCrは血清Cr値が高めに測定されるため、 結果としてJaffe法による実測CCrはGFRに近似する。 投与補正係数(R)= 1-尿中排泄率×(1-腎不全患者のCCr/100) 健常者の腎機能をCCrであるのに100mL/minとしている 日本でのみ臨床試験の行われた試験では腎機能の 正常値は正確にはCCr=120~130mLとすべきだが・・・・。 ただし腎機能の低下した人ほど厳密な減量が必要であり 日本でのCCrもGFRも腎機能が低下すればするほどゼロ に収束し、差がなくなるから実臨床では、あまり大きな 問題にはならない。ただし・・・・

(24)

臨床においては、GFRの測定が困難なため 、CCrで代入す る場合が多い。Crは尿細管で分泌されることから、CCrは GFRより1.2~1.3倍高い。そのためCalvertの式にGFRの代用 としてCCrを代入するとカルボプラチンの過剰投与になる危 険性がある。

Calvert式

Dose

(mg/body)

= AUC

(mg/mL・min)

×{

GFR

(mL/min)

+25}

この式はもともとJaffe法によって測定されたCCrによるため

Jaffe法による実測CCr≒GFR

ただしCrを酵素法で測定している日本では

実測

CCr = (尿中Cr値×尿量)/血清Cr値

尿細管分泌されるCrを反映してGFRの1.2~1.3倍になるため 腎機能を高く見積もりすぎてカルボプラチン中毒になりやすい カルボプラチンの尿中排泄率77%

(25)

25 100 50 mL/min 腎機能(GFR) 全身ク リ ア ラ ン ス CLtotal

腎機能の変化と薬物排泄における腎の寄与

100 50 % GFRが50mL/minの症例の場合 100%→50%に減 80%→60%に減 60%→70%に減

残腎機能が

50%あれば尿中排泄率が

40%以下のものは厳密な減量の必要はない

40%→80%に減20%→90%に減

(26)

正常 腎機能 軽度 腎障害 中等度 腎障害 重度 腎障害 末期 腎障害 血中濃度 ≧90 60-89 30-59 15-29

GFR

15>

腎機能と腎排泄型薬物の血中濃度の関係

尿中排泄率80~88%の場合 尿中排泄率50~56%の場合 0 1 2 3 4 5 G1 Stage G2 G3 G4 G5 尿中排泄率80~90%の薬物では軽度腎障害でも1/2~ 1/3に減量する必要があるが、尿中排泄率50~60%の 薬物では中等度腎障害でも厳密な減量は必要ない。

(27)

100 50 mL/min 腎機能(GFR) 全身ク リ ア ラ ン ス CLtotal

腎機能の変化と薬物排泄における腎の寄与

100 50 % GFRが10mL/min(末期腎不全)の症例の場合 Ue→減量法 100%→10%に減 80%→28%に減 60%→46%に減 40%→64%に減 20%→82%に減

(28)

100 50 mL/min 腎機能(GFR) 全身ク リ ア ラ ン ス CLtotal

腎機能の変化と薬物排泄における腎の寄与

100 50 % GFRが10mL/min(末期腎不全)の症例の場合 Ue→減量法 100%→10%に減 80%→28%に減 60%→46%に減 40%→64%に減 20%→82%に減 末期腎不全であれば尿中排泄率40%であっても厳密 な減量が必要だが、20%以下なら常用量でも構わない

(29)

投与補正係数(R)= 1-尿中排泄率×(1-腎不全患者のGFR/100)

腎機能による投与設計は

Giusti-Hayton法

投与補正係数(R)= 1-尿中排泄率×(1-腎不全患者のCCr/120) ただしクレアチニンは尿細管分泌されるため 添付文書のCCrの正常値は100mL/minになっていること が多いのはなぜ?

Q1

(30)

現在の添付文書ではCCr別の投与基準が収載されているが ほとんどの治験データは海外で血清Cr値はJaffe法によって 測定されており、20~30%高めの値になっており、CCrの 正常値は100mL/minが用いられている。したがって (ガスターOD錠)

添付文書の表の

CCr≒GFRと考えてよい。

(最近の日本での治験データは酵素法で測定されているため除く)

(31)

31

薬物の尿中排泄率と

血清クレアチニン値

から至適用量を決める

薬物の尿中排泄率と

血清クレアチニン値

から至適用量を決める

(32)

腎機能の予測

患者は80歳、女性で身長150cm、体重40kgである。腎不全 のため、血清クレアチニン値は4.5mg/dLである。ファモチジ ンの投与設計を如何にすべきか?ファモチジンの尿中未変 化体排泄率は80%とする。CLCrを推定はCockcroftとGault 法の式を用いよ。 = (140 – 80) ×40×0.85 72×4.5 = 6.30 mL/min 推定女性のCCr

(33)

患者の腎機能を正確に予測するには?

日本人向け

GFR推算式:

eGFR =194×

Cr

-1.094

×

Age

-0.287

×

0.739 (女性)

=7.9mL/min/1.73m

2

体表面積を求めるための

Du Boisの式:

BSA(m2= 体重(kg)0.425 × 身長(cm)0.725 ×0.007184 =400.425×1500.725×0.007184 =1.303m2 を用いて補正すると5.9mL/min

Cockcroft & Gault 法 6.30 mL/min

(34)

非腎CL 100 50 mL/min 腎機能(GFR) 全身ク リ ア ラ ン ス CLtotal

腎機能の変化と薬物排泄における腎の寄与

100 50 % (尿中未変化体排泄率80%の薬物の適正投与量) 腎CL 無尿患者では 常用量の20% 適正投与量 eGFR5.9mL/min では常用量の25%

(35)

非腎CL 100 50 mL/min 腎機能(GFR) 全身ク リ ア ラ ン ス CLtotal

腎機能の変化と薬物排泄における腎の寄与

100 50 % (尿中未変化体排泄率80%の薬物の適正投与量) 腎CL 無尿患者では 常用量の20% 適正投与量 eGFR5.9mL/min では常用量の25% 尿中排泄率の高い薬物、腎機能の低下した症例では 薬物の投与量の減量または投与間隔の延長が必要

(36)

36

CKDの診断指標には

eGFR(mL/min/1.73m

2

投与設計には

mL/min

なぜ使い分けるのか?

CKDの診断指標には

eGFR(mL/min/1.73m

2

投与設計には

mL/min

なぜ使い分けるのか?

(37)

eGFR: 71mL/min/1.73m

2

eGFR: 127mL/min

eGFR: 79.8mL/min/1.73m

2

eGFR: 59.9mL/min

Aさんは巨大な格闘家の男性

218cm, 160kg, 33歳, S-Cr:1.0mg/dL

Bさんは小柄な歌手。

145cm,42kg?, 30歳, S-Cr: 0.7mg/dL

歌手の

BさんはCKDでしょうか?

(38)

歌手の

Bさん

格闘家のAさん

eGFR: 71mL/min/1.73m

eGFR: 127mL/min

2

eGFR: 79.8mL/min/1.73m

2

eGFR: 59.9mL/min

Bさんは小柄な大人であるため、腎機能が 60mL/min未満であっても体格なりの機能はあるため、 病気とは考えられない。 ただし薬物の排泄機能は低いため、体が小さい分、 腎排泄性薬物の投与量は減量する必要がある。 だから診断指標としてはeGFR(mL/min/1.73m2)を用いる

(39)

39

血清

Cr値を基に

した腎機能推算式

の問題点

血清

Cr値を基に

した腎機能推算式

の問題点

(40)

小柄な高齢者には

eGFRは要注意

症例 90歳の長期入院男性、体重37.7kg、身長150cm、血清Cr 0.34mg/dL、BUN 15.1mg/dL、血清アルブミン 1.7g/dLのMRSA 敗血症患者に対し、バンコマイシンの投与設計を行った場合、 ①日本人向けGFR推算式によると

eGFR (mL/min/1.73m2)=194×Cr-1.094×Age-0.287

173.6mL/min/1.73m2 のような高値が算出されるが、上記eGFRの値の単位は mL/min/1.73m2であり、体表面積補正されているため Du Boisの式を用いて体表面積補正を外すと BSA(m2= 体重(kg)0.425 × 身長(cm)0.725 ×0.007184=1.27m2 となり、173.6mL/min/1.73m21.27m2で割ると127.4mL/min となり、これによって算出された実測血清バンコマイシン濃度 との予測誤差は-13μg/mLと大きかった。 目標トラフ値15μg/mLに設定しても実測値は28μg/mLに

(41)

小柄な高齢者は eGFRが高く推算 されることがある MRSA感染症に罹患 しやすい症例は長期臥床 の筋肉量が少ない高齢者 が多い。バンコマイシン の投与設計ではこのよう な症例では過量投与に なる危険性がある

(42)

バンコマイシン腎症の悪循環

介入可能

トラフ値を10μg/mL未満を目標に

MRSA低感受性株の増加

トラフ値を10~20μg/mLを目標に

VCMの投与量増加

腎障害が増加?

腎機能の低下

VCM濃度がさらに上昇

腎機能の過大評価

(43)

GFRおよびCCr推算式の問題点

血清クレアチニン値0.6mg/dL未満の高齢者ではeGFR または推算CCrが大きな値になりがちである。 もともとeGFRまたは推算CCrともに高齢者や小児には 適応しにくい式であり、 腎機能がよくて血清クレアチニン値が低いのか? 栄養状態が悪くて血清クレアチニン値が低いのか? 上記の見極めは数値のみでは困難であり、症例ごとに対応して いくしかない。血清Cr値が0.6mg/dL未満であり、明らかに筋肉量 の減少した症例では血清Cr値 0.6を代入して補正するとほとんど の場合、予測精度が向上する。

(44)

44 例; 85歳、女性、148cm、45kg 血清Cr値 推定ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス 及び推算G F R (mL/min) このように、小柄な高齢女性の患 者において、SCrが低い値の際、 腎機能の推算は、eGFR式が高く 推算されることがある。 薬物投与設計には、体表面積補正値は使え ない。 (1.73m2補正) (未補正) Crベースの腎機能 推算式に、適してい ない領域

血清Cr値をもとにした腎機能予測式の限界

(45)

45 例; 85歳、女性、148cm、45kg 血清Cr値 推定ク レ ア チ ニ ン ク リ ア ラ ン ス 及び推算G F R (mL/min) このように、小柄な高齢女性の患 者において、SCrが低い値の際、 腎機能の推算は、eGFR式が高く 推算されることがある。 薬物投与設計には、体表面積補正値は使え ない。 (1.73m2補正) (未補正) Crベースの腎機能 推算式に、適してい ない領域

血清Cr値をもとにした腎機能予測式の限界

血清Cr低値はバンコマイシン予測誤差を有意に大きく させる独立した影響因子 新留将吾ら: TDM研究 、2011

(46)

血清シスタチン

Cと血清クレアチニン値の反応性

0 2 4 6 8 10 0 20 40 60 80 GFR(mL/min) 血 清 濃 度 血清Cr値のブラインド領域 血清クレアチニン値(mg/dL) 血清シスタチンC濃度(mg/L)

(47)

血清シスタチン

Cと血清クレアチニン値の反応性

0 2 4 6 8 10 0 20 40 60 80 GFR(mL/min) 血 清 濃 度 血清Cr値のブラインド領域 血清クレアチニン値(mg/dL) 血清シスタチンC濃度(mg/L) Cystatin Cによる新しい日本人向けGFR推算式:

eGFR (mL/min/1.73m2 ={104×CysC-1.019×0.996Age ×0.929(女性)-8 日本腎臓病薬物療法学会HPで計算可能

(48)

薬物投与設計時に使う腎機能検査は?

①イヌリン投与による実測GFR1日蓄尿による実測CCrCG式による推定CCreGFR(mL/min/1.73m2eGFR(mL/min) ⑥血清Cr値 ⑦血清シスタチンC値 煩雑なため実際的でない 正確な蓄尿ができて いれば非常に有用 体重・年齢の影響を受けることに配慮 痩せた患者や院内感染時には有用? CKDの診断指標に用いる 薬物投与設計では用いない 痩せた患者では過大評価? CKDステージ3~4では有用 CKDステージ4~5で有用

(49)

NSAIDs グリコペプチド アミノグリコシド シスプラチン 造影剤 ARB アシクロビル アルファカルシドール セフェム系 DMARD H2-blocker 和泉智, 他: 日病薬誌46: 17-21, 2010より引用

薬剤性腎障害の発現を経験した薬剤

(n=158) 腎毒性薬物 腎虚血誘引薬物 その他 0 5 10 15 20 25 30 35

(50)

オキサロール

軟膏

による急性腎不全

オキサロール

軟膏

(51)

軽度の腎機能低下(CCr: 66mL/min)のあった60歳代男性 に尋常性乾癬のため、チガソンⓇ内服とオキサロール

軟膏を併用していたが、全身倦怠感を訴え、血清

Cr値11.16mgに上昇し、BUN 158.2mg/dL、血清K値8.1 mEq/L、Ca濃度12.4mg/dLと急上昇し、FENa(尿中Na分画

排泄率)が8%と急性腎性腎不全が疑われ、緊急血液透析 を必要とする重篤な急性腎不全に至った。

軟膏による急性腎障害?

平山 尚, 他: 透析会誌45: 63-68, 2012.より引用 健康成人男子5例にマキサカルシトール3.3μg/回を1回 静注投与時のAUCは354±135pg・h/mL 尋常性乾癬患者4 例にマキサカルシトール軟膏4g を 1 日1 回3 日間塗擦1日目のAUCは4177±2369 pg・h/mL

(52)

VD軟膏による高Ca血症とAKI併発例

(53)

VD軟膏による高Ca血症とAKI併発例

平山 尚, 他: 透析会誌45: 63-68, 2012.より引用 たとえ皮膚科であってもビタミンD軟膏投与時には血清Ca 濃度および血清Cr濃度の定期的測定が必要。 腎機能の低下した症例にはビタミンD軟膏を投与すべき ではない。 Ca製剤の服用やCa含有サプリメント摂取を避けるよう指導 することも大切。

(54)

薬剤師として

できること

今やるべきこと

~腎臓病薬物療法学会の必要性~

薬剤師として

できること

今やるべきこと

~腎臓病薬物療法学会の必要性~

(55)

薬剤師のできること、

今やるべきこと

腎機能低下患者への 薬物適正使用・中毒性 副作用の未然防止 適切な服薬指導に よる腎機能悪化防止・ 心血管合併症の予防 腎毒性薬物・腎虚血誘引薬物 による薬剤性腎障害の防止 透析患者の合併症に対する 最適な薬物治療の提供 免疫抑制薬のTDM含めた適正使用 による腎機能の悪化および副作用の防止 腎疾患患者に適切な薬物 療法推進のための教育・研究・指導 有効かつ安全で、目の前の患者さんに 配慮した最高の薬物療法を責任もって提供

(56)

薬剤師のできること、

今やるべきこと

腎機能低下患者への 薬物適正使用・中毒性 副作用の未然防止 適切な服薬指導に よる腎機能悪化防止・ 心血管合併症の予防 腎毒性薬物・腎虚血誘引薬物 による薬剤性腎障害の防止 透析患者の合併症に対する 最適な薬物治療の提供 免疫抑制薬のTDMも含めた適正使用 による腎機能の悪化および副作用の防止 腎疾患患者に適切な薬物 療法推進のための教育・研究・指導

研修修了者・腎臓病療養指導師

認定薬剤師

専門薬剤師

有効かつ安全で、目の前の患者さんに 配慮した最高の薬物療法を責任もって提供

(57)

①1999 関西 ⑤2006 中部 ④2006 広島 ⑦2006 熊本 ③2005 北海道 ⑧2006 香川 ⑨2007 徳島 ⑩2009 長崎 ⑪2010 愛媛 ⑫2011 宮城 ⑬2011 福岡 ②2002 北部九州 ⑥2006 東京 2 3 4 1 5 6 7 8 9 11 13 10 12 各地の「腎と薬剤研究会」の分布 (山口のみ腎臓病薬物療法学会) 日 本 腎と 薬 剤 研 究 会 14 ⑭2012 群馬 14 17 日本腎臓病 薬物療法学 会 15 16 ⑮2013 山口 ⑯2013 神奈川 ⑰2013 広島備北 ⑱2013 三泗鈴 18

(58)

①1999 関西 ⑤2006 中部 ④2006 広島 ⑦2006 熊本 ③2005 北海道 ⑧2006 香川 ⑨2007 徳島 ⑩2009 長崎 ⑪2010 愛媛 ⑫2011 宮城 ⑬2011 福岡 ②2002 北部九州 ⑥2006 東京 2 3 4 1 5 6 7 8 9 11 13 10 12 各地の「腎と薬剤研究会」の分布 (山口のみ腎臓病薬物療法学会) 日 本 腎と 薬 剤 研 究 会 14 ⑭2012 群馬 14 17 日本腎臓病 薬物療法学 会 15 16 ⑮2013 山口 ⑯2013 神奈川 ⑰2013 広島備北 ⑱2013 三泗鈴 18 医原病である腎排泄性薬物による中毒 性副作用、薬剤性腎障害をなくすために CKD患者の心血管病変を防ぐために 透析患者を減らすために・・・・・・・・・

(59)

1300以上の「腎機能低下時の主な薬剤投与量一覧」

(60)

1300以上の「腎機能低下時の主な薬剤投与量一覧」

(61)

理想的な薬剤師像って何?

患者を待たせない迅速な調剤、正確な調剤、薬歴管理、 適切な薬剤の供給・・・・・・・・ 専門的な情報は必ず 添付文書を間違えずチェック、 これだけでいい・・・・・・・?

有効かつ安全で、目の前の

患者さんに配慮した最高の

薬物療法を責任もって提供

するのが薬剤師の職務

(62)

監事 専門薬剤師認定 制度試験委員会 専門薬剤師認定 制度認定委員会 教育研修委員会 事務局 総会 広報委員会 ホームページ小委員会 理事長 副理事長 総務委員長 会則委員会 理事会 学術大会 地域連絡協議会 地域関連研究会 学術委員会 腎機能低下時の 薬剤投与量一覧 表作成委員会 学会雑誌編集委員会 CKD対策委員会 国際交流委員会 日本腎臓病薬物療法学会組織図 専門薬剤師認定 制度対策委員会 統計・調査委員会 評議員会 専門薬剤師テキスト 編集委員会 新規委員会

(63)

参照

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