態と語順が日本語の文産出時の処理負荷に与える影
響について: 母語話者と学習者との比較
著者
孫 猛, 小泉 政利
雑誌名
東北大学言語学論集
号
24
ページ
15-30
発行年
2016-03-12
URL
http://hdl.handle.net/10097/00130452
東 北 大 学 言 語 学 論 集 第24号 (2016年)
態と語順が日本語の文産出時の処理負荷に与える
影響について:母語話者と学習者との比較
孫猛・小泉政利
キーワード:発話潜時,発話長,眼球運動,注視時間, thinking for speaking hypothesis1
.はじめに 態(能動態 vs.受動態)と語順(基本語順 vs.かき混ぜ語順)が日本語の文理解時の処理 負荷に影響を与えることは良く知られている。他の条件が同じならば,能動文よりも受動文 の方が処理負荷が高く,基本語)1頂(主語・目的語または斜格・動員司,s
o
v
)
文よりもかき混 ぜ語順(目的語または斜格・主語・動詞,OSV)文のほうが処理負荷が高い(中篠 1983,Mazuka, Itoh and Kondo 2002, Miyamoto and Takahashi 2002, Tamaoka et al.2005, Kinno et al.2008)。この 一般化は日本語母語話者だけでなく,外国語として日本語を学ぶ学習者にも当てはまること が報告されている(玉岡 2005,金 2012,など)。 一方,日本語の文産出においては,態(能動態 vs.受動態)と語順(基本語順 vs.かき混 ぜ語順)によって産出頻度が異なることが観察されている。一般に,受動文よりも能動文の ほうが,また,かき混ぜ文よりも基本語順文のほうが産出頻度が高い(Yamashita2002, Imamura and Koizumi 2011)。能動態と基本語順が文産出時に好まれることは,実験でも示されている。 例えば,文記憶再生課題(実験参加者に文を記憶させて,後からそれを思い出して言っても らう課題)を用いた実験では,記憶した受動文を能動文として「再生」する割合のほうが, 能動文を受動文として「再生」する割合よりも高い。同様に,かき混ぜ文を基本語順文とし て思い出す率のほうが,基本語順文をかき混ぜ文として思い出す率よりも高い (Ferreira and Yoshita 2003, Tanaka et al.2011)。 このように,文理解においても文産出においても,r
能動態の基本語順の文が好まれる」と いう共通の性質がみられる。しかし,文理解研究と文産出研究とでは,何が「好まれる」か を認定する際の基準が異なっている。文理解研究では反応時間や脳活動などの「処理負荷」 に着目しているのに対して,文産出研究ではどの文型がよく使われるかという「産出頻度」 を指標としている。文理解と文産出を共通の土俵で研究するためには,両者に共通の指標, あるいはそれが無理でもできるだけ性質の近い指標を用いるのが望ましい。そこで,本研究 では,日本語母語話者と中国語を母語とする日本語学習者(以下,中国人日本語学習者と表 記する)を対象に,発話時間と眼球運動を手掛かりにして,文産出の際の「処理負荷」を調 べる実験を行った。その結果,文理解時と同様に文産出時においても,能動文よりも受動文 の方が,また,基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが処理負荷が高いことが判明した。ただ し,日本語母語話者と中国人日本語学習者とでは態や語順の影響が出るタイミングが異なっ ていた。東 北 大 学 言 語 学 論 集 第24号 (2016年)
2
.
実験方法 日本語母語話者を対象にした実験1と中国人日本語学習者を対象にした実験 2とで共通の 実験方法を用いた。 2. 1 参加者 実験lには,日本語を母語とする学部生と大学院生20人(男性11人,女性9人,平均年 齢22歳1カ月, SD=4歳6カ月)が参加した。 実験2には,中国語を母語とする日本語学習者40名(男性4人,女性36人,平均年齢24 歳8カ月, SD=3歳8カ月)が参加した。そのうちの半数(男性2人,女性18人)は滞日日 本語学習者で,もう半数(男性2人,女性18人)は在中日本語学習者で、あった。滞日日本語 学習者は全員中国の大学の日本語学科出身で,実験に参加した時点で研究生や大学院生とし て日本の大学に留学中で、あった。なお,全員日本語能力試験の l級に合格している。在中日 本語学習者は中国の大学の日本語学科の3年生で,実験に参加した時点で3年次修了間際で, 基礎段階の日本語の勉強を一通り終えていた。 2. 2 刺 激 実験刺激に用いられた絵はPivotというフリーソフトを使って作成した。絵には動作主とし ての棒人形および被動者としての棒人形による簡単な動作が描かれている(図 1)0 2つの棒 人形はサイズが同じで,絵の中央から均等な距離で左右に配置されている。絵の背景はグレ ーで,棒人形の色は赤・青・黒・自の4色のいずれかである。一つの絵の中の動作主と被動 者の色は常に異なる。絵に描かれている動作は全部で 8種類(追う,叩く,呼ぶ,蹴る,引 く,押す,叱る,襲う)で,各動作ごとに動作主と被動者の配置(左・右)ならびに色(赤・ 青・黒・白)のカウンタバランスが取れた絵を8枚用意した。したがって,刺激は合計64枚 の絵によって構成されている。 図1 実験に使用した絵の例 (1赤が青を押す」。実際の絵はカラーである。) 2. 3 装 置 被験者の眼球運動はトピー社製の非接触型眼球運動計測装置 TobiiTX300 (作動周波数 300Hz)を用いて記録した。眼球運動計測装置をコントロールするパソコンには,パナソニッ-16-東北大学言語学論集 第24号 (2016年) ク社製の CF-S9 モデル(インテル⑧ Core™i5VPro™ プロセッサー,作動周波数 2 .40GHz) を 使用した。刺激は TobiiTX300のスクリーン (23インチ)に呈示し,被験者の音声はオーデ ィオテクニカ社製の AT810マイクロホンを用いて,パソコンに内蔵されている HD Audio Codecのデジタルレコーダに録音した。
2
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4
手 順 まず,眼球運動計測装置のモニターの中央に,実験参加者が使用すべき文型を指示する画 面が呈示される(図 2)。実験参加者が指示を確認してボタンを押すと,注視点I+J
の画面 に切り替わり. 1秒後に上で説明した刺激の絵の1枚が呈示される(絵の呈示順序はランダ ム)。実験参加者には,呈示された絵を,直前の画面で指定された文型を用いて,できるだけ はやく正確に描写するように指示した(絵画描写課題)。絵が呈示されてから発話が終了する までの眼球運動を記録するとともに,発話を録音した。実験参加者への説明で、は.1態」や「基 本語順」などという文法用語は一切用いず.1--が--を--Jなどのように助詞の配列で 文型を表現した。実験で用いられた文型は(1 )の4種類であった。 図 2 絵画描写課題: 文型指示画面と黒画面は実験参加者がボタンを押すまで呈示され続 ける(被験者ペース)。注視点i+J
の提示時間と刺激の提示時間はそれぞれ1秒と 5秒の固 定値に設定された(実験者ペース)。矢印の方向は時間の流れを示す。東 北 大 学 言 語 学 論 集 第24号 (20日年) ( 1 ) 実験で使用された4つの文型 a. 能動態・基本語順 指示画面の表示: 1--が--を--J 期待される発話の例: 赤が青を押す。 b. 能動態・かき混ぜ語順 指示画面の表示: 1--を--が--J 期待される発話の例: 青を赤が押す。 C. 受動態・基本語順 指示画面の表示: 1--が--に--J 期待される発話の例: 青が赤に押される。 d. 受動態・かき混ぜ語順 指示画面の表示: 1--に--が--J 期待される発話の例: 赤に青が押される。 実験に先立ち, 8種類の動作が描かれた絵を実験参加者に示し,それぞれの絵を描写する 際に使用する動詞を確認した。その後,参加者が絵と動詞の対応関係を正確に覚えたかどう かを確認するためのペーパーテストを行った。テストでは 8種類の動作のいずれかが描かれ た絵がランダムな順序で呈示され,それを見てその内容を上記の 4種類の文型の文で表現す る(書く)というものであった。例えば,図 lの絵を 1--が--を--J文型で描写する 場合, 1赤が青を押す」が正解である。動詞の間違いや語形変化の間違いがあった場合は,そ の場で訂正し,もう一度絵を描写する際に使用する動調を確認してもらった。ペーパーテス ト終了後に,実験手順の説明と実験を行った。 3.実験1(日本語母語話者)の結果
3
.
1 正答率
本研究(実験1と実験2の双方)では,発話潜時や眼球運動の分析を行うため, 1指示通り の文型で絵の内容に合致し,かつ言いよどみなどのない流暢な発話」のみを「正答」とみな し分析の対象とした。実験1の平均正答率は86.2%であった(表1)。 表1 母語話者の発話の正答率(%)。カッコ内は標準偏差。 態 能 動 受 動 (n=20) 基 本 88.6 (5.6) 83.3 (12.1) 語 順 かき混ぜ 86.3 (8.7) 86.6 (8. 1)-18-東北大学言語学論集第24号 (2016年) 文の態および語順が発話の正答率に与える影響を検討するために,発話の正答率について 態(能動態・受動態)
x
語順(基本語順・かき混ぜ語順)の 2要因の分散分析を行った。そ の結果,態の主効果[尺1,60)=0.790,p=.378, n.s.]も語順の主効果 [F(I,60)=O.006,p=.939, n.s.] も有意ではなかった。両要因の交互作用 [F(I,60)=1.089,p=.301,n.s.]も有意ではなかった。つ まり,能動文と受動文の聞にも,基本語順文とかき混ぜ語順文の聞にも,統計的に有意な正 答率の差はなく,文の態および語順は発話の正答率に影響しなかった。3
.
2
発話時開 発話潜時ならびに各文節の発話に要する時間(表 2)について,態(能動態・受動態)x
語順(基本語順・かき混ぜ語順)の2要因の分散分析を行った。まず,発話潜時(絵が呈示 されてから発話が開始されるまでの時間)に対しては,態の主効果 [F(l,60)=16.574,pく.001] と語順の主効果 [F(I,60)=10.503,pく.01]が共に有意であった。交互作用は有意でなかった [F(l,60)=0.697,p=.407, n.s.]。すなわち,発話潜時は能動文よりも受動文のほうが長く,基本語 順文よりもかき混ぜ文のほうが長かった。 表2 母語話者の発話潜時(絵が呈示されてから発話開始までの時間), Nl発話長 (Nlのオ ンセットとN2のオンセットの聞の経過時間), N2発話長 (N2のオンセットとv
のオンセッ トの聞の経過時間),v
発話長(
v
のオンセットと文末の間の経過時間)0M
=平均 (ms), SD=標準偏差 態 語 順 文 発 話 潜 時N1
発 話 長N2
発 話 長 V発 話 長 MSD
MSD
MSD
MSD
能 動 態 基 本 語 順1
7
6
7
1
1
6
652
99
567
54
349
能 動 態 かき混ぜ語順1
9
1
4
1
2
7
657
86
606
90
3
4
1
7
3
受 動 態 基 本 語 順1
9
4
4
1
7
9
6
5
8
67
616
1
2
6
504
89
受 動 態 かき混ぜ語順2
0
3
1
1
4
8
6
4
3
50
615
1
0
6
506
1
1
4
(n=20) 1番目の名調句 (Nl)の発話に要する時間 (Nl発話長 =Nlのオンセットと N2のオンセッ トの聞の経過時間)は,態 [F(1,60)=0.046, p=.830, n.s.]と語順 [F(I,60)=0.054,p=.816,n.s.]の 主効果も交E
作用 [F(I,60)=0.697,p=.407,n.s.]も有意で、はなかった。 2番目の名詞句 (N2)の 発話に要する時間(N2発話長 =N2のオンセットとv(動調)のオンセットの閣の経過時間) も,態 [F(1,60)=1.366, p=.247, nふ]と語順 [F(I,60)=0.589,p=.446,n.s.]の主効果ならびに交互 作用 [F(I,60)=0.658,p=.420, n.s.]のいずれも有意ではなかった。すなわち, Nl発話長と N2 発話長には態の影響も語順の影響もみられなかった。動調の発話に要する時間(
v
発話長=v
のオンセットと文末の聞の経過時間)は,態の主効果 [F(1,60)=54.562, pく.001]が有意であり,東北大学言語学論集第24号 (2016年) 能動態よりも受動態のほうが動詞を発音するのに要した時聞が長かった。語順の主効果 [F(1 ,60)=0.018, p=.892, n.s.]と交互作用 [F(1 ,60)=0.056, p=.814, n.s.]は有意ではなかった。
3
.
3
眼球運動 刺激の絵が呈示されてから 5秒以内に動詞の発話が開始された正答発話について,絵呈示 後100ミリ秒ごとにNlに対応するキャラクター(以後,キャラクター 1)への注視時間割合 とN2に対応するキャラクター(以後,キャラクター2)への注視時間割合を算出し,比較し た。 4種類の文型すべてをーまとめにして見ると,刺激が呈示されてから 30か400ミリ秒後 までは,キャラクター1を注視する時間とキャラクター2を注視する時間の割合に差がなか った(図的。刺激呈示後400-500ミリ秒後にキャラクター lへの注視時間割合がキャラクタ ー2への注視時間割合を有意に上まわった [F(I,126)=12.537,Pく.01]後,キャラクター1への 注視時間割合が増加し続け,刺激呈示後 800-900ミリ秒後に両キャラクターの注視時間割合 の差が最大になった。その後キャラクター1への注視時間割合は減少に転じ,刺激呈示後 1500-1600ミリ秒後にキャラクター2の注視時間割合を下まわった [F(I,126)=36.742,pく.001]。 2100-2200ミリ秒後に両者の差がピークになった後, 3600-3700ミリ秒後に差がなくなった [F(l,126)=1.088,p=.299, n.s.]。発話が開始されたのは,キャラクター lへの注視時聞がキャラ クター2への注視時間を下まわってからで、あった。 9 8 7 A υ n U A U 順 伊Nlベー.N2 0.2 i 01 1 o -_- ー ーー,-_-.._...一 一--._.-一一一ーーーー←一 一一 1 3 5 7 9 11 131517 19 21 23 25 272931 II 35 37 3941 43 4547 49 図3 母語話者が絵画描写課題で文を産出する際のN1が表すキャラクターとN2が表すキャ ラクターへの注視時間割合の時間経過。縦軸は 100ミリ秒ごとに算出した注視時間の比率, 横軸は時間 (100ms単位)である。棒線は文の発話開始時聞を示す。 4種類の文型を別々にみると,能動態・基本語順文を産出する場合は,刺激が呈示されて から 300ミリ秒まではキャラクター1とキャラクター2の注視時間割合に差がなかったが, 刺激呈示後300-400ミリ秒の区間でキャラクター1への注視時間割合がキャラクター2への 注視時間割合を有意に上まわった [F(I,30)=12.932,pく.01](図4A)。能動態・かき混ぜ語順文 の場合は刺激呈示後500-600ミリ秒の区間で [F(I,30)=4.480,pく.05](図4B),受動態・基本東 北 大 学 言 語 学 論 集 第24号 (2016年) 語順文の場合は刺激呈示後600ー700ミリ秒の区間で [F(1,30)=27.426,pく001]
C
図4C),受動 態・かき混ぜ語順文の場合は刺激呈示後800-900ミリ秒後の区間で[
F
(l,30)=6.161, pく05]C図 4D),それぞぞれキャラクター 1への注視時間割合がキャラクター 2への注視時間割合老有意 に上まわった。いずれの場合も,キャラクター1
への注視時間割合がピークを越えて減少に 転じ,キャラクタ-2
への注視時間割合を下まわってから発話が開始された。 A B 0.9 0' -伊柑joDoN2 O,j '争.NIYN2。
13 5 7!!ll)ßl'~21232S27~11J3B31~41434SU6 1 35 19UUßU~UUð"~Ull.ßÐUU “ 47:9
C 0.9 D OSl ‘;-ONl吋a・Nl e ι 0.3 01 Ol' 0.2) 0.1i 11 S 791113ß17~11232527~31311Sn~41UßU~ 1] S 7 911U15V1921212S17~31ßHß~41434S41 的 図4 母語話者が絵画描写課題で各文型の文をを産出する際のNlが表すキャラクターと N2 が表すキャラクターへの注視時間割合の時間経過。縦軸は 100ミリ秒ごとに算出した注視時 間の比率,横軸は時間 (100ms単位)である。棒線は文の発話開始時聞を示す。 A能動態・ 基本語順, B能動態・かき混ぜ語順, C受動態・基本語順, D受動態・かき混ぜ語順。
3
.
4
考 察 文産出時の処理負荷に与える態と語順の影響を調べるために,日本語母語話者を対象に絵 画描写課題を用いた文産出実験を行い,発話時間と眼球運動を計測した。その結果,課題の 正答率には態と語順の影響は見られなかった。つまり,本実験に参加した日本語話者は4種 類の文型(能動文基本語順,能動文かき混ぜ語順,受動文基本語順,受動文かき混ぜ語1)国) をどれも同程度に正確に産出できた。 発話潜時は,能動文よりも受動文のほうが長く,基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが長 かった。 4つの文型の中では,能動態・基本語順文の発話潜時が一番短く,受動態・かき混 ぜ語順文の発話潜時が一番長かった。態と語順の交E
作用は見られなかった。これは,態と 語順が独立に発話潜時に影響を与えることを示している。発話潜時は文産出時の処理負荷を 反映していると考えられるので CLindsley1975, Smith and Wheeldon 1999),この結果は,態と 語順が文産出時の処理負荷に影響を与えることを示している。具体的には,能動文よりも受東北大学言語学論集第24号 (2016年) 動文のほうが,また基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが,文産出時の処理負荷が高い。英 語を対象にした先行研究で能動文よりも受動文のほうが発話潜時が長いとの報告があるが (Gleitman et a.l2007),本研究の結果は類型的に大きく異なる日本語でも同様に態の違いが発 話潜時に影響を与えること示している。また,基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが発話潜 時が長いことが実証されたのはこれが初めてである。これらの結果は,先行研究で報告され ている文理解時の処理負荷の関係と並行的である。すなわち,文理解時の処理負荷が高い文 型が文産出時の処理負荷も高いことが確認された。本実験の基本語順文とかき混ぜ文の発話 潜時の差は平均117msであるが,これは文正誤判断課題を用いた文理解研究で報告されてい る基本語順文とかき混ぜ文との反応時間の差 (100ms ~ 200 ms)と同程度である。 一方, Nl発話長と N2発話長には態と語順の影響が見られなかった。また, V発話長にも 語}I頃の影響はなかった。これは,発話潜時と異なり,実際に文を発音する時間の長さには態 や語順の違いによる文レベルの処理の負荷の違いが影響を与えなかったことを示している。 能動文よりも受動文のV発話長が長かったが,これは受動文の動詞には受動形態素が含まれ ているため能動文の動詞よりも形態・音韻的に長いことに起因するもので,文レベルの処理 負荷の反映とは言えない。 以上のように,態と語順の違いは発話開始までの発話潜時には影響したが発話開始後の発 話時聞には影響しなかった。また文型間で正答率に有意差がないことから分かるように,言 いよどみ言い間違いなどの発生率にも態と語順の影響は見られなかった。このことから,少 なくとも本研究の実験のような条件の下では,日本語母語話者は文レベルの文法処理(統語 処理)のかなりの部分を発話開始前に終えていることが示唆される。 態と語順が文産出時の処理負荷に影響を与えるとする上記の結論は,眼球運動のデータか らも支持される。絵が呈示されてからキャラクター1とキャラクター2の注視時間割合に差 が出るまでの時聞は能動態・基本語順文が一番短く,能動態・かき混ぜ語順文,受動態・基 本語順文,受動態・かき混ぜ語順文の順に長くなった。これは,態と語順の主効果が見られ た発話潜時の長さの順番と同じであり,文産出時の眼球運動に態と語順が影響を与えること を示している。
4
.
実験2
(中国人日本語学習者)の結果4
.
1 正答率
中国人日本語学習者を対象とした絵画描写課題を用いた実験では,指示通りの文型で絵の 内容に合致した流暢な発話(正答)が全体の 66.州占めた(表 3)。態および語順が発話の正 答率に与える影響を検討するために,発話の正答率に対し,態(能動文・受動文)x
語順(基 本語順・かき混ぜ語順)の2要因の分散分析を行った。その結果,態の主効果 [F(l,124)=3.796, pく1]は有意傾向であり,語順の主効果[
F
(l,124)=17.120, pく.001]は有意であった。なお,態 と語順の交互作用 [F(l,124)=.153,p=.696,n.s.]は有意ではなかった。つまり,能動文の正答率 (Mニ69.4%, SD=15.7%)が受動文の正答率 (M=64.4%, SD=17.3%)よりも高く,基本語順文 の正答率 (M=72.7%,SD=13.1%)がかき混ぜ文の正答率 (M=61.1%, SD=17.9%)よりも高か東 北 大 学 言 語 学 論 集 第24号 (2016年) った。 表3 学習者の発話の正答率(%)。カッコ内は標準偏差。 態 能 動 受 動 (n=40)
4
.
2
発話時間 基 本7
5
.
4
(
1
2
.
4
)
7
0
.
0
(
1
3
.
4
)
語 順 かき混ぜ6
3
.
4
(
1
6
.
5
)
5
8
.
8
(
1
9
.
1
)
発話潜時ならびに各文節の発話に要する時間(表 4) について 態(能動態・受動態)x
語順(基本語順・かき混ぜ語順)の 2要因の分散分析を行った。まず,発話潜時(絵が呈示 されてから発話の開始までの時間)は,態の主効果 [F(1,60)=5.601,p<.05]が有意であり,能 動文よりも受動文のほうが長かった。語順の主効果 [F(1,60)=0.479,p=.491, n.s.]と交E
作用 [F(1,60)=1.894,p=.174, nふ]は有意でなかった。 表 4 学習者の発話潜時(絵が呈示されてから発話開始までの時間), Nl発話長 (Nlのオン セットと N2のオンセットの聞の経過時間), N2発話長 (N2のオンセットとv
のオンセット の聞の経過時間),v
発話長(
v
のオンセットと文来の聞の経過時間)0M =平均 (ms),SD = 標準偏差 態 語I1蹟 文発話潜時N1
発話長N2
発話長V
発話長 MSD
MSD
MSD
MSD
能動態 基本語順2069 200
976
1
2
8
896
1
7
3
410
8
2
能動態 かき混ぜ語順1
9
7
3
1
6
1
1
0
2
4
1
4
2
1
1
1
6
1
7
0
446
1
2
2
受動態 基本語順2115 203
9
5
3
1
2
9
1
0
0
3
217
762
235
受動態 かき混ぜ語順2147 1
7
7
872
1
2
1
1
0
4
1
1
6
3
642
1
0
0
(n=40) 1番目の名詞句 (N1)の発話に要する時間 (N1発話長 =N1のオンセットと N2のオンセッ トの聞の経過時間)は,態の主効果 [F(1,60)=7.277,p<.Ol)が有意であり,能動態のほうが受 動態よりも長かった。語順の主効果 [F(1,60)=O.263,p=.61O, n.s.]と交互作用 [F(1,60)=3.923, p.052, n.s.]は有意ではなかった。 2番目の名詞句 (N2)の発話に要する時間 (N2発話長 =N2 のオンセットとv
(動詞)のオンセットの閣の経過時間)は語順 [F(1,60)=8.045, pく.01]の主 効 果 が 有 意 で あ り , 基 本 語 順 の ほ う が か き 混 ぜ 語 順 よ り も 短 か っ た 。 態 の 主 効 果東北大学言語 学 論 集 第24号 (2016年) [F(1,60)=0.126, p=.724,n.s.]と交互作用 [F(1,60)=0.658, p=.420, n.s.]は有意で、はなかった。動詞 の発話に要する時間
(
v
発話長=v
のオンセットと文末の閣の経過時間)は,態の主効果 [F(I,60)=55.509, pく.001]が有意であり,能動態よりも受動態のほうが長かった。 語順の主効 果 [F(I,60)=1.305,p=.258, n.s.]は有意でなかった。交互作用 [F(l,60)=4.439,Pく.05]が有意で あった。これは,能動態では基本語順よりもかき混ぜ語順のほうがV発話長が(数値的に) 長かった(有意差なし)のに対して,受動態では逆に基本語順よりもかき混ぜ語順のほうが V発話長が(数値的に)短かった(有意差なし)ためであろう。 4. 3 眼球運動 刺激の絵が呈示されてから 5秒以内に動調の発話が開始された正答発話について,絵呈示 後100ミリ秒ごとにNlに対応するキャラクター(キャラクター1)への注視時間割合と N2 に対応するキャラクター(キャラクター 2) への注視時間割合を算出し,比較した。4種類 の文型すべてをーまとめにして見ると,刺激が呈示されてから 300-400ミリ秒後までは,キ ャラクター lを注視する時間とキャラクター 2を注視する時間の割合に差がなかった(図 5)。 刺激呈示後400-500ミリ秒後にキャラクター1への注視時間割合がキャラクター2への注視 時間割合を有意に上まわった [F(I,254)=22.066,pく001]後,キャラクターlへの注視時間割 合が増加し続け,刺激呈示後 1100-1200ミリ秒後に両キャラクターの注視時間割合の差が最 大になった。その後キャラクターlへの注視時間割合は減少に転じ,刺激呈示後 1900-2000 ミリ秒後にキャラクター2の注視時間割合を下まわった [F(I,254)=9.803,pく.001]02600-2700 ミ リ 秒 後 に 両 者 の 差 が ピ ー ク に な っ た 後 , 3600-3700ミ リ 秒 後 に 差 が な く な っ た [F(1 ,254)=0.573, p=.564, n.s.]。発話が開始されたのは,キャラクターlへの注視時間がキャラ クター2への注視時聞を下まわってからであった。 0.9 0.8 . . ; , ・Nl・a・N2 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 1 0←~ー.‘
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1 ー『ー 1 3 S 7 9 1113IS 17 192113 2S 27 29 31 3l 3S 37 39 41 434547 49 図5 学習者が絵画描写課題で文を産出する際のNlが表すキャラクターとN2が表すキャラ クターへの注視時間割合の時間経過。縦軸は 100ミリ秒ごとに算出した注視時間の比率,横 軸は時間 (100ms単位)である。棒線は文の発話開始時聞を示す。 24東北大学言語学論集 第24号 (2016年) 4種類の文型を別々にみると,能動態・基本語順文を産出する場合は,刺激が呈示されて から 400ミリ秒まではキャラクター1とキャラクタ- 2の注視時間割合に差がなかったが, 刺激呈示後400-500ミリ秒の区間で、キャラクター1への注視時間割合がキャラクター2への 注視時間割合を有意に上まわった [F(l,62)=35.492, p<.OOl] (図6A)。能動態・かき混ぜ語順 文の場合は刺激呈示後500--600ミリ秒の区間で [F(l,62)=21.734,pく.001] (図6B),受動態・ 基本語順文の場合は刺激呈示後 500--600ミリ秒の区間で [F(l,62)=27.282,pく.05] (図6C), それぞれキャラクター lへの注視時間割合がキャラクター 2への注視時間割合を有意に上ま わった。受動態・かき混ぜ語順文の場合は,刺激呈示後400--500ミリ秒後の区間で、いったん キャラクター lへの注視時間割合がキャラクター 2への注視時間割合を有意に上まわったが [F(l,62)=7.686, pく.01],その後ふたび有意差がなくなり,キャラクターlへの注視時間割合が キャラクター2への注視時間割合を安定して上まわり始めたのは刺激呈示後 800・900ミリ秒 後の区間であった [F(1,62)=20.687,p<.OOl] (図6D)。いずれの場合も,キャラクター1への 注視時間割合がピークを越えて減少に転じ,キャラクタ- 2への注視時間割合を下まわって から発話が開始された。 A 0.'1 B 0> IUI 011 叫初制l叫2・Nl 叫'川...Nl
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0'. -例制1.許 叫 1 j ~ 1 9 11B IS 1119212325271931 n 15 3119・
14)45474.9 図6 学習者が絵画描写課題で各文型の文をを産出する際のN1が表すキャラクターとN2が 表すキャラクターへの注視時間割合の時間経過。縦軸は 100ミリ秒ごとに算出した注視時間 の比率,横軸は時間 (100ms単位)である。棒線は文の発話開始時聞を示す。 A能動態・基 本語順, B能動態・かき混ぜ語順, C受動態・基本語順, D受動態かき混ぜ語順。4
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考 察 中国人日本語学習者を対象にした実験2
では,正答率に態と語順の影響がみられた。すな東北大学言語学論集第24号 (2016年) わち,能動文よりも受動文のほうが,また基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが正答率が低 かった。これは,中国人日本語学習者の日本語文産出時の処理負荷に態と語順が影響を与え ることを示唆している。 この結論は,発話時間のデータからも支持される。発話潜時は能動文よりも受動文のほう が長く,受動文のほうが処理負荷が高いことを示している。また, N2発話長は基本語順文よ りもかき混ぜ文のほうが長く,かき混ぜ文のほうが処理負荷が高いことを示している。 V発 話長は,能動文よりも受動文のほうが長かったが,これは受動文の動調のほうが形態・音韻 的に複雑であることによるものであろう。 眼球運動では,キャラクター1の注視時間割合がキャラクター2の注視時間割合を初めて 安定的に上まわる時間帯が,能動文よりも受動文のほうが遅く,また,基本語順文よりもか き混ぜ文のほうが遅かった。この結果からも,態と語順が中国人日本語学習者の文産出時の 処理負荷に影響を与えるとする仮説が支持される。
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総合考察 実験lによって,日本語母語話者が日本語の文を産出する際には,能動文よりも受動文の ほうが処理負荷が高く,基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが処理負荷が高いことが実証さ れた。同様に,実験2
によって,中国人日本語学習者が日本語の文を産出する際にも,能動 文よりも受動文のほうが処理負荷が高く,基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが処理負荷が 高いことが判明した。 ただし,実験1の日本語母語話者の文産出と実験2の中国人日本語学習者の文産出とでは, 実験方法が同一であったにも関わらず,態と語順の文処理負荷への影響の出方に違いがみら れた。まず,正答率に関して,実験1では,態と語順の正答率への影響が観察されなかった のに対して,実験2では,これらの要因が正答率に影響を与えた。日本語の処理に熟達して いる日本語母語話者は,本実験で用いた4つの文型を同程度に正確に処理することができた が,中国人日本語学習者は日本語の処理にまだそれほど慣れていないため全体的に正答率が 低く,特に処理経験の少ない受動文とかき混ぜ文はあまり正確に産出できなかったものと思 われる。 実験lの結果と実験2の結果との聞にみられるもう一つの注目すべき相違点は,態と語順 の影響の出るタイミングに関する遣いである。実験1では態と語順両方の影響が発話潜時に 観察されたが,実験2では態の影響が発話潜時とNl発話長に現れ,語順の影響はもっと遅い 時間帯のN2発話長に反映された。このことから, 3.4節でも述べたように日本語母語話者の 文産出においては態と語順の処理のかなりの部分が発話開始前に行われているのに対して, 中国人日本語学習者の場合は発話開始前だけでなく発話開始後にも引き続き態の処理が続い ており,特に語順の処理はN2の発話時に処理負荷が最大になるようなタイミングで行われて いるものと思われる。文理解の処理負荷に関する先行研究では,かき混ぜ文でN2の格助詞が 出た直後に処理負荷が増加することが繰り返し報告されており この処理負荷の増加は痕跡 (空所)の処理に起因するものと考えられている (Nakanoet al.2002, Ueno阻dKluender2003, n o東 北 大 学 言 語 学 論 集 第24号 (2016年) 柴田ほか 2006)。もし文産出の際の語順による処理負荷の違いも主に痕跡処理によるものだ とすれば, (本実験で用いた単純な他動詞文の場合には)日本語母語話者は痕跡の処理のかな りの部分を発話開始前に済ませているか,あるいは痕跡処理による処理負荷の増加が Nlや N2の発話長に影響するほど大きなものではないという可能性が考えられる。一方, N2発話 長に語順の効果が現れた中国人日本語学習者は, N2の発話と並行して痕跡の処理をしている ものと推定される。 このように,日本語母語話者にくらべて中国人日本語学習者の場合は,態や語順の影響が 発話潜時や発話長に反映されるタイミングが遅い。それにも関わらず,眼球運動では,絵呈 示後 1秒以内という,発話開始よりもかなり早いタイミングで,態と語順の影響が日本語母 語話者にも中国人日本語学習者にも共通して現れた。すなわち,日本語母語話者でも中国人 日本語学習者でも,キャラクター1の注視時間割合がキャラクター2の注視時間割合を初め て安定的に上まわる時間帯は,能動文よりも受動文のほうが遅く,また,基本語順文よりも かき混ぜ文のほうが遅かった。英語の能動文と受動文の産出時の眼球運動を絵画描写課題を 用いて調べた Griffinand Bock (2000)の研究では,絵呈示直後の 2つのキャラクターへの注 視時間割合に差がない時間帯は非言語的に事象を把握するための時間帯で言語処理は行われ ていないと主張されている。一方, Gleitman et al.(2007)は,実験参加者に気づかれない方法 で特定のキャラクターに注意が向くように操作した実験で,注意を向けるように仕向けられ たキャラクターへの注視時間割合がもう一方のキャラクターへの注視時間割合を絵呈示後 200ms以内に上まわり,そのキャラクター名で始まる文の産出の割合が増加したことなどか ら,絵呈示後の最初期から語曇レベルの言語処理(具体的にはレンマ (lemma)へのアクセス) が始まっていると主張している。いずれにしても, Griffin and Bock (2000)と Gleitmanet al. (2007)は,絵呈示直後の 2つのキャラクターへの注視時間割合に差がない時間帯には文レベ ルの文法処理には至っていないという点で見解が一致している。もしそうだとすれば, 2つ のキャラクターの注視時間割合に差がない時間帯の長さが態と語順の影響を受けることを示 した本研究の実験結果は,この時間帯の非言語的に事象を把握する処理が,後に行われるで あろう言語処理にある程度配慮した形で進められている可能性を示唆してる (cf.“Thinking for Speaking Hypothesis", Slobin 1996)0 1例えば,人間は他動的事象を動作主の視点に立って 捉えようとする傾向があり,また,自分の視点により近い指示対象から文を始める傾向があ る(MacWhinney1977)。能動態基本語順文はこのような無標の事象把握方法と整合的である。 それに対して,被動者から始まる能動態かき混ぜ文や受動態基本語順文を産出するためには, 前言語的事象把握の段階で視点の変換が必要になる。さらに,受動態かき混ぜ文の産出には より複雑な視点変換が要求されるのかもしれない。いずれにしても,絵呈示直後の時間帯に, 文型に合わせた何らかの前言語的認知処理(例えば視点変換)が行われ,その処理負荷が 2 つのキャラクターの注視時間割合に差がない時間帯の長さの違いに反映されているものと考 えられる。
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おわりに 絵画描写課題を用いた文産出実験によって,文理解時の処理負荷と同様に,文産出時の処 理負荷にも態と語順が影響を与えることが実証された。すなわち,日本語母語話者であるか 中国人日本語学習者であるかに関わらず,能動文よりも受動文のほうが,また基本語順文よ りもかき混ぜ文のほうが処理負荷が高かった。ただし,態と語順の影響の出るタイミングは 日本語母語話者よりも中国人日本語学習者のほうが遅かった。 さらに,眼球運動において,絵呈示後に動作主と被動者への注視時間割合に差がない時閣 の長さが態と語順に影響を受けることから,この時間帯に非言語的に事象を把握する際,後 に使用する文の性質に合わせた処理が行われている可能性が示唆された。ただし,この結果 は,発話に用いる文型を絵呈示前に指定するという本研究の実験手法に強く影響されたもの である可能性が排除しきれない。文型を指定しない,より自然な状況で本実験の結果が再現 されるかどうかを確認することは将来の重要な研究課題の一つであろう。 註 l “Thinking for Speaking Hypothesis"とは,以下のような仮説である。‘Inthe evanescent time frames of constructing utterances in discourse one fits one's thoughts into available linguistic frames. “Thinking for speaking" involves picking those characteristics of objects and events that (a)白tsome conceptualization ofthe event, and (b) are readily encodable in the language.' (Slobin 1996:76) 参照文献 中陳和光 (1983).I
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東 北 大 学 言 語 学 論 集 第24号 (2016年) 文のほうが,また基本語順文よりもかき混ぜ文のほうが処理負荷が高いことが判明した。た だし,態と語順の影響の出るタイミングは母語話者よりも学習者のほうが遅かった。さらに, 眼球運動のデータから,発話開始前に非言語的に事象を把握する際,使用する文型に合わせ て事象の把握の仕方を変えている可能性が示唆された。 Effects ofvoice and word order on the processing load in Japanese sentence production: Comparison of L 1 and L2 Meng Sun and Masatoshi Koizumi (孫猛 j折江外国語学院東方言語文化学院 講師) (小泉政利東北大学大学院文学研究科准教授) -30