平成 26(2014)年 度 兵庫教育大学大学院学位論文 日本語 指導が必要な生徒 に対す る 内容重視 のアプローチ による短歌 の指 導 教育 内容 。方法 開発専攻 文化表現系 コース 言語系教育分野
M12179」
松本直子目 次 第1章 研究の背景 1.1日 本語教育が必要な児童生徒の増加 ………・・…。・…1
1.2文
部科学省 の施策 ¨¨¨¨¨¨‥0・¨¨‥‥‥………・◆‥‥‥……¨・・………・2 1.3教育現場の実態 ………¨¨‥…………¨…・・……‥‥‥…………¨¨“¨…6 第2章
研究の 目的と意義2.1研
究の 目的 ………112.2研
究の意義 ‥¨¨¨¨・・‥‥………112.3研
究の方法 ………・・………・・‥‥………11 第3章
日本語の指導における短歌指導の意義3.1言
語教 育としての意義 ……・・‥・・………・・………¨…・。・13 3.2日本の文化理解 としての意議 ………133.3指
導 計画上の利 点 ………14 第4章
先行研究・先行指導事例4.1学
習言語とは何か ………・・………¨………16 4。2内
容ベ ースの指導法 …・・………‥………・0¨…………17 4.3日 本 における「内容重視の 日本語教 育」の動き¨¨・・‥‥………・18 4.4「短歌Jの指導案事例 ……・・‥………20 第5章
生徒の実態 に即した「短歌」の指導I
一―アメリカ合衆 国 日本語補習学校 における場合一一 5。1生
徒の状況 ‥“・・‥・・………¨・・…………23 5。2指
導計画・・…・・‥‥‥………。・………245.3授
業実践 ………・・…………・・………265.4分
析 と考察 ¨00………‥………・・…・・………・26第
6章
生徒の実態 に即した「短歌」の指導 Ⅱ ―A公
立中等教育学校 における実践一一6.1生
徒 の状況 ………。・"…
………366.2指
導計画 ‥………・・………¨………376.3授
業実践 ¨¨………。・………416.4分
析 と考察 ………・・………・43 第7章
二つの実践からの考察7.1言
語教育としての側 面・・………‥‥‥………・・…………・・¨¨………577.2教
科教育(短歌の内容学習)としての側面¨¨¨¨‥………・・・・・・…57 7.3「学習集 団作り」としての側 面 ・・・……¨¨¨¨¨‥………‥‥‥…58 7.4スカーセラの主 張を基にした「学習言語」としての側面………¨¨¨‥…………59 7.5「内容重視のアプローチ」に必要なもの………・・………・・60 第8章
今後の課題 8.1「学習言語」の習得状況の把握 ………628.2言
語教育面での指導の工夫 ‥……・・…・・¨………¨………62 8.3「 内容重視のアプローチ」の指導法の他の教材への応用 ………・・・628.4-般
的な中学校 における実践の工夫 ◆・・・¨¨¨……・・………。62 付 録 資料1「君は『 最後の晩餐』を知つているか」授業プリント 資料2「
アメリカ・クリーブランド日本語補習学校」授業報告 資料3「
タイ慈 クープハンター『 スクナコトバの国』へ」授業プリント第 1章 研 究の背景 1.1 日本語教育が必要な児童生徒の増加 グローバル化の進展に伴つて世界的規模で人々の移動 が加速した結果、国際結婚をした 親から生まれて 日本 に在住する子ども、親 に伴われて異なる言語 圏 に移動 する年少者 が文 部科 学省(以下文科省)の「日本語指導が必要な児童生徒の受 け入れ状況等 に関する調査 (平成
24年
度)」によれば平成 15年から平成24年
までの9年
間で2倍
強増加 している。 この調査 によると、「日本 語指導 が必要な外 国人児童 生徒数(いわゆるJSL児
童 生徒)」 は、社会(政治経済)的な状況の変化 に伴つて、ここ数年は平成20年
度 28,575人 、平成 24 年度 27,013人 とほぼ横這い、またはやや減少気味である(表 1)。 なお 、JSLと は,Japanese as a Second Language(第 二言語としての 日本語)の略であり、JSL児
童生徒と呼ぶ場合 、その対 象は 日本語 非母語話者である。 しかし、これとは対照的 に、母語 が 日本語であつても「日本語指導」が必要な 日本国籍児 童生徒たちが年々増加 し、平成 15年度 2,886人 が平成24年
度 6,171人 と倍増 している(表 2)。 日本国籍児童生徒であっても、教育上特別な配慮が必要となってきている。特 に言語や 学習の基礎 を習得するべき小学校 での増加 が顕著である。 (表 1)外国人児童生徒数/公 立学校 「日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ状況等に関する調査(平成24年
度) 二― ●中学牧 i魯●学校 ヨ中●●冑撃崚 ●●H交 撮学校 (下から)押■
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I I l■瑯 │ 27,0嗜3 特別支援学校140 章キ “ 4■ ■フ→ ゆ “ ″ 一 ■ 一 25 ,4︲︲ “ ハ 菌 校 印 一 2 ハ 〓 ︼ 車 ︼ ︻ 一 一 ︲ ︲ ︲ 一 出 ︲ , 一 平慮■年度 平成16年 度 平成17年 度 平咸18準 菫 平成19年 度 平成m■魔 平虚2年度 平成Zキ魔(表 2)日 本国籍 の児童 生徒数/公 立学校 「日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ状況等 に関する調査(平成24年度) 中●●口,崚 ●綸用支■学校 〔下 か ら) 6,171 5,496 3,214 1: 3,868 「 193 797
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3,137 2,386 1● 「 fF ・ 95 663 盟 J l,7 ‐ =■ 3rI: ' 1,。 72 醸 一一 “ 4,609 3,593 3,956 3,318 2,860 2,12 2,277 0 ヽ 一 ―― ― ―― ―一―――― ― ― ― ― ――一 ― ―――――――― 一 ‐ ―― ― 一 一 ―― ‐ ―‐ ――――‐ ― ‐ ―――― ― ― ― ―― 一 ― ― ―――^― ― ― ―‐―― ― ― ‐一‐ ‐‐ ―一 一 ―一 ― ― 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成知年度 平成2年度 平成Z年度 日本ではこれらの子どもたちへの言語教育の重要性 が認識 され、大学などの教育機 関を はじめとする、第二言語 としての 日本語教育 。」SL教
育 に関わる調査・研 究も盛んに行われ 、 また指導者への研 究会も実施されてきた(石井他 2009)。 川 上(2006)は彼 らを「移動 する子ど もたち」と呼び 、彼 らに対す る日本語教 育を、成 人への 日本語教 育と区別 して「年少者 日本 語教 育」1と呼んでいる。1.2文
部科学省の施策 1.2.1平成 24(2012)年までの施策 1960年代後半から、文 部省(当時)は増加 する帰 国子女に対 して、その母語力伸張のため に帰国子女教育の充実を図る施策を始めた 2。 さらに1970年
代からの中国残留孤 児の帰 国、インドシナ難 民の受 け入れなどによる外 国籍 の児童生徒の増カロに伴つて、第 二言語 とし ての 日本語 教育の必要性も高まつてきた。そのため 1991年 度 に上記の「日本語指導が必要 な児 童生徒の受 け入れ状況等に関する調査」を開始 し、以来2008年度 までは毎年 、それ以 降は2年
ごとに受け入れ状況についての詳細な調査を実施 してきている。これによつて「日 本語指導が必要な児童生徒」の置かれている状況は、外 国籍 。日本籍 を問わず非常に多種 多様 であり、その受 け入れ状況も様 々であることがわかる。 2例えば下記の(表3)文科省調査(平成
24年
度)の「在籍人数別学校数」から分かるように、 校種を問わず 日本語指導が必要な生徒 は散在している。まず、① 日本語指導が必要な外 国人児童生徒の在籍人数別学校数を見ると、小学校 においては、1人
在籍校が全体の 41.6%、2人
在籍校が全体の 18.0%を 占めている。合計すると全体の59.6%の小学校であ る。中学校では、1人 在籍校が全体の50.8%、2人
在籍校が全体の 16.4%を 占めている。合 計すると全体の67.2%の中学校である。 (表 3)日本語指導が必要な児童生徒の在籍人数別学校数(小中のみ抽出) 「日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ状況等に関する調査(平成24年
度)」(文科省) (表 3)の① 日本語指導が必要な外国人児童生徒の在籍人数別学校数 小学校:
構成比∽ 中学校1
構成比∽ 1人 ( 1,597 1,451( 41.7
41.0 ) ( 1.064 ) ●30 ( 49.3 50.8 ) 2人( 713 )
127( 186
18.0 ) ( 403 ) 302( 187
10,4 ) 3人 ( 363 ) 303 ( 9.5 8.7 ) ( 184 ) 147 ( 5 0 8 8 ) 4人( 217
195 ) ( 5.7 5.6 ) ( 102 ) 89 ( 4.7 4.8 ) 5人以上 10人未満 ( 456 ) 448 ( 11.9 12_8 )( 215)
191 ( 10.0 10_4 ) 10人以上 20人未満 ( 297 ) 295 ( 7.8 8.5 ) 103 ) 112 ( 4.8 6.1 ) 20人以上 30人未満( 113
87 ) ( 9 5 2 2 ) ( 36 ) 35 ( 1.7 1.9 ) 30人以上 50人未満 ( 50 ) 11 ( ■3 ) 1.フ ( 35 ):( 1.6 )19 :
■0 50人以上 ( 25 ) 22 ( 0.7 0.6 ) (15)
13 ( 0.7 0.7 ) 合 計 ( 3,831 ) 3,489 ( 1000 1000 ) ( 2,157 ) 1,844 ( 100.0 1000 )*( )内
の数値 は、平成22年
9月 1日現在 である。また、② 日本語指導が必要な 日本 国籍の児童生徒の在籍人数別学校数からは、さらに その散在の状況が明らかである。小学校 においては、1人 在籍校 が全 体の52.3%、 2人在籍 校が全体の 20.5%を 占めている。合計すると全体の72.8%の小学校である。中学校では、1 人在籍校 が全 体の 65.0%、
2人
在籍校が全体の 16.2%を 占めている。合 計すると全 体の 81.2%の中学校である。 いずれにしても、日本語 指導が必要な児童生徒 はその在籍学校では少数であり、彼(女) らに対する適切な指導が実施しにくい状況であることが推測できる。 嚇 “ )の② 日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒の在籍人数別学校数 小学校:
構成比① 中学校:
構成比0
1人927 : 52.3
388
65.02人
303 i 20.5
97 10.23人
159
9.040
674人
88 5.0 22 375人
以上10人
未 満152
8,6 31 5。210人
以 上20人
未 満70
4.0 10 2.720人
以上30人
未 満 9 05 2 0.330人
以上50人
未満 3 : 0.10
0.050人
以上 0 0.01 : Q2
合 計 1,771 100.0 597 : 100.0 *日本国籍 の児童生徒 に関する調査 は24年
度からの実施である。 日本語指導が必要な児童生徒の多くは、これまで公立の小・中学校 に通い、多くの地域 に 散在することから、日本語 指導はそれぞれの在籍 する学校 の裁 量 に委 ねられていた。取り出 し授業 、放課後の補充授業 、また地域の「センター」3に通つての 日本語学習など、その学習 形態 は様 々である。 文科省 の受 け入れ推 進 地域 の指定を受 けた集住 地域 の先進的取 り組 みは研 修 会4等でも報 告されているが、散在 地域 の受 け入 れの学校 では 日本 語 指 導に十分な指導体制が整 備 されていない状況 にある。このため 日本語指導の享受 についての不 平等な状況も生まれ ている。石井(2009)はこの点 について、「我 々の社会全体の現実として認識 し」「すべての
JS
L生
徒 に教 育の機 会均等 を保障する取 り組 み」が「先送 りできない緊急の課題 である」と主張 している。 また埋橋0004)は 以下のような問題点を指摘 している (1)取り出し授業や補習 、またはセンターでの 日本語学習 は、在籍学級での学習 と異な り、他生徒との人間関係を結ボ機会が少なくなる。 ② 学習言語 としての 日本語 、つまり教科学習に必要な 日本語を学習する必要がある。 ③ 高等学校入試 に対応できる学力が不足している。 文科省 は1974年
から目 立大 学付 属 学 校 に帰 国子 女 教 育学級 の設 置 を開始 したが、 付 属 学 校 が 中 高 一 貫 であれ ば帰 国 生 の高 等 学 校 入 試 という課 題 も一 旦 は解 消 できる ことになる。しか し、外 国人 児 童 生徒 の場 合 の高等 学 校 入試 は依 然 として負 担 である。 2001年以降、文科省 は 日本語 の初期指導から教科指導につながる段階の「学校教育に おけ有S]以リ キュラム開発 」に取 り組み、2003年には小学校 、2007年には中学校のJSLカ リ キュラムをまとめて公表している。さらに「平成19、 20年度 JSLカリキュラム実践事業」として SLカリキュラムを活用した指導実践や指導力向上のための事例集をまとめる等の事業を展 開している。また2012年には、研修マニュアル及び 日本語能力測定方法①L鱒
5の開発を 行つている。しかしどのような施策であれ 、それを実践する教育現場の受 け入れ体制の整備 が重要である。 1.2.2日 本語指導のための「特別教育課程」 平成 250013)年 11月 27日「帰国・外国人児童生徒に対する文科省の施策 について」と 題 して、文科省 主催 の都 道府 県・市 区町村 等 日本語担 当者研修 が実施 された。内容は「日 本語指導の『 特別教育課程』の編成・実施」6についてである。この施策によつて、これまで各 自治体・学校ごとに任意で行われていた日本語指導が、今後は正式な教育課程に位置付け て実施できることになる。その 目的として「学校教育の一環として行う日本語指導の質の担保 を図る」と明記されている。これは以下の点において、実践に向けた新たな展開と言えるだろ う。 (1)これ まで 自治体や 学校 毎 に任意の形で実施 されていた 日本語指 導が、学校教育の 中に確実 に位置付 けられることになつたこと。 (2)今回の施 策では 町SL児
童 生徒」とともに「帰国児童生徒」も確 実 に 日本語指導の対 象となつていること。7この「特別の教育課程Jによる日本語指導には、①指導者 ②授業時間数 ③在籍校 にお ける「取り出し指導 」傷諷
1)⑤
指導計画の作成及び学習評価 の実施などの要件 が定められ ている。さらに「期待される効果と今後の展望」の項では、 (1)児童生徒一人一人の実態 に応 じた細かな指導の実現 (2)関係機 関の連携協力の必要性O日
本語指 導の全 国的な質の担保 ④ 就 学前から進学・就職までの進路保証のための一貫した支援 などが挙げられている。しかし、これらの実施 は一朝―夕には不可能であり、実効性あるもの にするための体制整備 が今後の一層 の課題 となつている。制度・施策を確実に実現するた めにも、各 自治体をはじめ、それぞれの教 育現場の更なる努 力・実践が必要である。 また、佐藤(2013)は内閣府 ヒヤリングで「学校教 育における外 国人児童生徒教 育の現状と 課題 」と題 して、「学校 内の指導 体制整備 」「教科学習 についていくための 日本語指導」「体 系的 な 日本 語指 導」「教員 の資質・能力 、スキル の明確化」「力量形成 」などを課題 としてい る。日常会話ができる段階から教科学習 に対応 できる日本語能カヘ 、さらに進路保 障に繁 がるためには、長期間の継続した「学習言語」としての 日本語教育が必要である。施策として の前進は、教育現場の一層の努力・工夫を要求することになる。1.3教
育現場の実態 1.3.1筆者 が勤務 するA公
立 中等教育学校の状況 2003年 4月 、兵庫 県立の中高一貫の中等教育学校が設置された。それまで帰国生を多く 受け入れて来た国際文化科をもつ兵庫 県立の高等学校が、全 県制・単位制の高等学校と中 等教 育学校 の2校
に分かれて設置された。双方ともに「21世
紀を展望 した兵庫の高等学校 教 育改革構想」に基づき、国際性豊かな教 育を目指 したものである。中等教 育学校 の特徴と して、学校便 覧には「6年
間を通じて、異なる言語環境や文化的背景のもとに育つた生徒が、 能力や適正 に応 じて弾力的に学ぶ」ことを挙げている。入学時 に外 国人枠30名
、帰 国生枠 30名、一般 生枠 20名 、計80名 2クラス編成 で全県から募集する。 「異なる言語環境」にある生徒への配慮として、日本語指導が必要な生徒に対する特別な 時間割を設 け、「国語」の時間には 日本語の取り出し指導をしている。この 日本語の取り出し 指導 は、入 学後 に実施されるプレイスメントテストとインタビューテストの結果を基 に、最終的 には本人 と保護者の意志確認を行って決定する。原則1、2年
生の2年間 、初級・中級 。上級 の3段
階があり、学期 末毎のテストによって昇級 し、上級が済めば「本体クラス」と呼ばれる在 籍学級 に随 時移動 して、「国語」の授業を受 けることになる。日本語の取り出し指導は、専門 の 日本語教 師が担 当する。他の数学・社会・理科も少人数クラスでの学習だが、その他 は在 6籍学級での学習や行事を、他の生徒と共に経験できる。通常の中学校にはない独特の措置 であり、毎年入学希望者が多い。 しかし、生徒にとつての課題は、ここでも教科の学習内容に充分対応できる学習言語とし ての 日本語能力をどのように獲得するかである。「国語」もその学習内容が日本語の授業とは 異なり、また特有の学習言語を使用する。また、高校入試がないとは言え、後期課程(高等学 櫛 での学習に対応できる学力も当然習得しなければならない。単語レベルでの 日常会話を 行う程度の 日本語力しかない生徒でも、僅か
2年
間の 日本語学習を経て、「国語」の授業に 臨むことになる。多様な背景をもつ生徒に対応できる、日本語指導を考慮した「国語」の授業 が必要となる。語彙や文法指導などの言語的指導も不可欠、教科としての学習言語の指導 も、さらに「国語」の学習内容の指導も必要である。学習者 自身の努力ももちろん必要である が、「国語」を担当する教師も、通常の「国語」の授業とは異なる配慮や指導の工夫が不可欠 となる。 1.3.2海外における義務教育段階の 日本語教育の状況 「管内在留邦人子女数調査」(平成25年
4月 外務省)によると、海外の義務教育段階の児 童生徒数は、年々上昇傾 向にあり、平成25年 4月 時点では約6万
人に及ぶ。特に北米とア ジア地域がそれぞれ約40%近
くを占めている。海外の義務教育段階の児童生徒の就学形 態は 日本人学校、日本語補習学校、私立在外教 育施設に分かれるが、なかには現地校や インターナショナルスクー/1/t国際学機 に通学する場合もある。 「海外子女教育の概要」(平成25年 文科省)によると、「日本人学校は、国内の小学校又は 中学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする全 日制の教育施設であり、文部科 学大臣から国内のイヽ学校又は中学校の課程と同等の課程を有する旨の認定を受けている。 一般 に現地の 日本人会等が設置主体となつて設立され、その運営は、日本人会や進出企 業の代表者、日本人学校校長、在外公館職員、保護者の代表等からなる学校運営委員会 によつて行われている。運営経費は、授業料などの保護者負担金、企業等の寄附金及び国 の種々の援助で賄われている。昭和31年 にバンコク日本人学校(タイ)が設置されて以来、平 成25年4月現在では、世界50カ国・地域に88校 設置されている。」とある。 また補習授業校については、下記のように説明されている。 「現地校、国際学校等に通学している日本人の子どもに対し、土曜 日や放課後等を利用 して年間35日以上、日本国内の小学校又は中学校の一部の教科について日本語で授業 を行う教育施設であり、高等部や幼稚部を併設するものもある。補習授業校の中には、少 数ではあるが、授業時数や授業科 目がほぼ 日本人学校に準じている(国語、算数(数学)、 理科及び社会を含め4科 日以上の授業を行い、週5日 、年間47日 以上の授業を行う)準全日制補習授業校もある。昭和33年 にワシントン補習授業校σ´メリカ合衆国)が設置 されて 以来、平成25年4月現在 では、世界54カ国に203校 が設置されている。J(平成25年4月 15 日現在) アジアでは 日本人学校 に在籍する児童生徒が全 体の約
80%を
占め、約7.2%が現地校 ま たは国際学校 に在籍 している。一方北米では 日本人学校4校
に対して補習学校が88校
に 達し、日本 人学校 に通学している児童生徒 は、北米在住 の児童 生徒 の 1.9%と いう少数であ る。現地校 や 国際学校 に在籍 しながら日本語補 習学校 に通学する児童 生徒 は全 体 の約 67.9%に及ボ。(平成25年
4月 文科省「海外子女教育の概要」調査)。 前述の文科省の説 明のように、日本 人学校 は 日本 国内と同様 の教 育が実施 されているた め、アジア在住の8割 の児童生徒 は、帰国後の就学 。学習 に関して問題 点は比較的少ない。 一方、北米 に在住 していた児童生徒 にとつて、帰国後の学習状況はそれまでとは大きく異な り、適応するために多くの時間と努 力を必要とする。 彼 らアジア北米以外 に在住する児 童生徒もそのほとんどが帰 国して 日本 の学校 に就学す るため、海外での学習状況は帰国後の学習に多大な影響を与えるものである。日本語指導 が必要な「日本国籍 」の児童生徒の増加 との関連性 は大きいものであり、日本国内の「国語」 の教師もこの実情 に無関心ではいられなくなる。 1.3.3学校教育にお ける課題 (1)学習 言語 としての 日本語 の教育の必要性 外国籍の児童生徒が 日本 に定住する場合 には、高等学校 、大学の進学 に際して相応 の学力が必要である。また、帰国生も帰国後の進学が大きな壁 となる。学校教育において 各教科学習 に必要な学習言語8としての 日本語をいかに習得させるかが、教 師の課題で ある。 (2)教育現場 の実態 に即 した授業の必要性 日本語指導が必要な児童生 に配慮した教 育を実践している一部の公立私 立の中等教 育学校などを除いて、多くの児童生徒 は各都 道府 県、市町村 にある通 常の学校 に散在し て在籍し、学習している9。「特別 の教育課程」のなかで基本的な 日本語力を習得しても、 在籍クラスに合流 した後 の学習 に対応 できる学習言語を習得することには困難 が予想 さ れる。教師がその担 当する各クラスの実情に合わせて、授業実践の工夫をすることが不可 欠となる。 ③ 年少者の発達段 階 に考慮 した 日本語の指導の必要性 石 井(同上)によると多様な背景をもつ 日本語指導の必要な児童生徒たちは、人間形成の 途上 にあり、認知面でも情意面でも不安定な状態 にある。彼 らには成人 に対する一般 的な、 8あるいは専門的な 日本語教育にはない配慮が必要であるとのことである。人間形成に不可 欠な言語面での発達は、学業における能力向上とは異なる重要な側面をもつ。学習活動の 中で、自己のアイデンティティの確立を図り、他者との協力関係を築くためのコミュニケーショ ン能力などを育成することが可能となる指導が必要である。 【注 】 1『年少者 日本語教育」 母語が 日本語でない児童生徒を対象 とした 日本語教 育を、一般 的 に成人 を対象 とした 日本語教 育と区男1して、「年少者 日本語教 育」と呼ぶ。
2文
部科学省:帰国生徒 に対する施策 1967年から公 立・私 立の小・中・高等学校対象「帰国子女教育研究協力校」を指定1974年
から国 立大 学 付 属 学校 に帰 国子 女教 育学 級 の設 置 開始1983年
度 帰 国 子 女 受 け入 れ推 進 地 域 の指 定 開 始 。3地
域 の「センター」 義務教 育 にお ける日本 語教 育の指 導形 態 の一 つで、センター校 方式 と呼 ばれるもの。 地域 によつては 日本語指導 のセンター校 を設 置し、周辺 の学校 に在籍 する日本語指導 が必要な児童生徒を、指導時間にその学校 に通わせる方式を取る。 4「外 国人児童生徒 等 に対する日本語指導のための指導者養成を目的とした研修 」 「帰国・外 国人児童生徒 と共 に勧める教 育の国際化推進地域 の 自治体の指導主事及び その児童生徒の教 育担 当者等を対象 にした「帰国・外 国人児童生徒教 育担 当指導 主事 等連絡協議会 」などを指す。 5日 本語能力測定方法(DLAl
文科省 が「外 国人児童 生徒 の総合 的な学習支援 事業」の 1つ として実施 したもの。学校 にお いて児童生徒の 日本語 の能力 を把握 し,そ
の後 の指導方針 を検討す る際 の参 考 とす るため、国立大学法人東京外 国語大学 に委託 して開発 した もので 、DLAは
「外 国 人 児 童 生 徒 の た め のJSL対
話 型 ア セ ス メ ン ト」 ①idoJc Language6「日本語指導の 『 特別教育課程』の編成。実施」 主な内容は、①学校教育における日本語指導の教育課程への位置付け―「特別の教 育課程」の編成 。実施が可能となる。②「指導内容・指導対象・指導者・授業時数 ◆指導 の形態及び場所・指導計画の作成。及び学習評価の実施」についての規定がある。 この施策の期待される効果として、①児童生徒一人ひとりに応じたきめ細かな指導の実 現。②指導を受 けた児童 生徒 が各教 科その他 の教 育活 動 に 日本語で参加 できる ようになること。③地域や学校 の 日本語指導 に携 わる関係 者の意識 の啓発及び指 導 力の向上がある。さらにその結 果 として、①学校 教 育の一環 として行 う日本 語指 導の全 国的な質の担保 。② 学校 において主体的 に学 び、希 望する進路を選択 で きる機 会 の保 障等があると説 明されている。 7日本語指導が必要な『日本国籍」児童生徒の増加 によつて、これまで文科省調査で外国 籍児童生徒のみ対象であった項 目に、日本国籍の児童生徒が対象として追カロされるよ うになつた。
8文
部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒」の定義の変更(平成 18(2000年 ) 従来「日常会話が十分にできない生徒」としていたが、それに加えて「日常会話ができて も、学年相当の学習言語が不足し、学習活動への参加 に支障が生じており、日本語指 導が必要な児童生徒」と拡大している。9文
部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒の受け入れ状況等に関する調査 (平成 24 年度)」 [参考]①-1「 日本語指導が必要な外国人児童生徒の学校種別在籍状況(都 道府県別)同じく②-1「日本語指導が必要な日本国籍児童生徒の学校種別在籍状況 榔 道府県別)」による。 10第2章 研 究 の 目的と意義及び研 究の方法
2.1研
究の 目的 本研 究の 目的は、日本語 指導が必要な外 国人生徒 と帰 国生徒が一般生徒 と混在する学 級 において、「内容重視のアプローチによる短歌の指導」の実践を通して「学習 に結びつい た言語能力」を育てていくために、教育現場 の実態 に即したどのような指導が必要であるか を明らかにすることである。2.2研
究の意義 第 1章「研 究の背景」で述べたように、筆者が勤務 するA公
立中等教 育学校の生徒数の3分
の2が
外 国籍または二重国籍の生徒と帰国生徒である。バトラー後藤0011)は 、外国か らの移住児 童生徒 に加 え、日本 生まれ 日本 育ちの外国児童生徒の 日本語及 び教科 学習の 問題 点を指摘 し、彼 らを『外 国 につ ながる」児童 生徒 と呼んでいる。さらにこれ と類似 するの が外 国生まれ外国育ちの 日本 国籍 の児童生徒である。筆者の勤務校 の実情からすると、彼 らも「外 国 につながる」児童 生徒 の範 疇 に加 えるべきだと考 える。この二種類 の「外 国 につな がる」1生徒 が、現在 の 日本 には数多く存在する。多様 な状況 にある生徒 たちだが、いずれ に しても日本語及び教科学習 において困難な状態 にあり、通常の母語話者に対する「国語」の 授業とは異なる指導の工夫が必要であることに変わりはない。本研究 は、勤務校 の生徒 の 日 本語 指導のみならず 、日本 各地 に散在する「 日本語指導の必要な生徒」の学習 に役立つこ とと考える。 また、昨今 一般の 中学校 における「国語 」の授業 においても「言語生活」の重要性 が指摘 さ れ 、学習指 導要領 の改訂も実施 されている。「外 国につながる」生徒の問題 を顕在化し、指 導の工夫をすることによつて、バ トラー後藤 の「母語話者を含 むすべての子どもたち」2に対す る学習言語の習得 に効果的な指導の工夫を具体化することができる。つまり、一般 の中学校 に在 籍する「外 国につながる」生徒だけでなく、母語話者 に対する「国語」の授 業 において も、この研 究が役 立つものであると考える。2.3研
究の方法 「短歌の指導」の研 究は、まず、アメリカの 日本語補習学校と国内のA中
等教 育学校 とに分 けて行う。2つ
の学校 の特性 に応 じた授 業案を作成 、実践 して、教 育現場の実態 に即 した 「内容重視」の指導の在り方 とは何かを検証する。 まず 、アメリカの 日本語補 習学校 では、① どのような条件の下に授 業 が行われているか、 その学習 環境 を明らかにする、② その状 況 に合わせた「国語 」の授業 における「内容重視 の 日本語 教育」の視 点 に立つ授業案 の作成 、③授業 の実施 、④ 生徒の学習状況の分析(振り返り用紙による学習者の自己評価、観察、生徒の創作短歌)から、非 日本語環境 における適 切な指導方法とは何かを考察する。 次に、国内の
A中
等教育学校では、① 日本語指導が必要な生徒を含む在籍クラスの実態 を把握、②「国語」の授業における「内容重視の 日本語教育」の視点に立った授業案を作成 、 ③授業の実施、④生徒の学習状況の分析(振り返り用紙による学習者の自己評価、観察、生 徒の創作短歌)から、日本語指導が必要な外国人生徒や帰国生徒が一般生徒と混在する学 級において、「学習に結びついた言語能力」を育てていくための適切な指導方法とは何かを 考察する。 【注】 1「外国につながる子ども」 バトラー後藤(2011)は『 学習言語とは何か』題 1章「学習言語の教育的背景一なぜ、学 習言語が大切なのか」p.21で
、日本語指導の必要な児童生徒の多様性を指摘し、と いう表現を使用する傾 向を紹介している。2『
母語話者を含むすべての子どもたち」 バトラー後藤(同上)は『 学習言語とは何か』の「はじめ」の項に『第二言語学習者が抱え る問題を顕在化することで、これを契機 に、母語話者含むすべての子どもたちにとつて 非常に重要な学習言語の解 明と、その習得に関する関心が、多くの人々の間で高まる ことを期待したい」と述べ、その著書の中で一貫して「第二言語習得」と「母語習得」の課 題の共通点について言及している。 12第3章 日本語の指導 における短 歌指導 の意義
3.1言
語教 育としての意義 日本語を言語として学習する上で、音韻・文字・語彙・文法などに加 えて、上級 になるに従 つて、文章読解 においては内容理解のためにより多くの背景的知識 を必要とし、文脈を読み 取る処理能 力も必 要 となる。特 に小学校 高学年から中学校 にかけては、教科 書の内容もそ の複雑性 が増加 し、用語としては抽象語 、文の構 成 としては複 文 、それぞれの割合 が圧倒 的 に多くなる1。 さらに中学校では論理 的な関連性 を追求 した評論文も導入される。母語話 者の生徒でも、教科書記載の文章に対 して「難解だ」と拒否反応 を起こす者も多くなる。 だが、短歌は五七五七七 とい う、わずか二十一音の短詩型 表現 である。 日本語の特徴 であ る 「モ ー ラ言語(一音一音節)」 が顕著 に表れてお り、単語数 も少 な く、文法的な 難解 さもない。叙 景 に託 した心情表現 が多いた め、評論 の よ うに生徒が論理性 の追求 に困難 を感 じるこ とはない。散文 と比較 して文章読解 上の複雑 さ、難解 さは少 ないた めに、この意 味での学習者 の負担が減少 され る。 また、創 作す る場合 にも、その短 さ ゆえの心理 的 な取 り組 みやす さもあ る。 もちろん難易度 が低い だ けではない。 逆 に、学習者 は 日本語独特 の省 略表現 の難解 さに も遭遇す る。 日本語 の表現では主語や 目的語 な どは もちろん、省略 して も理解 可 能で あ る と考 える場合 には、書 き手・ 話 し手 は説明 を省 略す る。短詩型 表現 の場合 に はそ の傾 向が さらに強化 され る。省略 された部分 を推測す るとい う、高度 の言語能力 を育成す る学びの機会 に もな る と考 える。3.2日
本 の文化理解 としての意義 短歌は 日本独 自の伝 統 的な言 語文化 の1つ
で、五音七音 とい う奇数の音数 を基調 と して、五七五七七 とい うわずか二十一音 の定型短詩型表現 の中に作者の思い を込める もので あ る。五音 七音 とい う音数 が 日本語独特 の リズム を生み出す もので あ り、「定型 」 『短詩」の制限があ るか らこそ様 々な修辞法 も工夫 されてきた。国語 の学習 において、 この修辞法 は重要 な学習 内容であ り、その用語・用法 を習得す るこ とは不可欠 である。 またそ の叙情的な表現 内容 も、いわゆ る 「思春期」にある生徒たちの感性 に訴 えるこ とがで きるもので あ り、興味関心 を引 き出す学習 内容 と言 える。 さらに短 歌 の学習 では、日本語 の凝縮表現 、省 略表現 とい う特徴 を学ぶ こ とにな る。 すべて を明確 に表 現せず 、相手 の知識や理解 力 を前提 と した 「曖味 さ」「不 明瞭 さ」の なか にあ る 「奥深 さ」 を短時間で理解す るこ とは困難 では あ る。 しか し、 この短歌 の 学習 は 日本人 の伝 統 的な表現方法の一部 に触れ る貴重 な機 会 にな る。言語 と結 びつい た 日本の文化的特徴 、感性や ものの見方に触れ る機 会 となる。また、短 歌に表現 された情景描写や心情表現 を味わ うこ とによつて、 日本 の風 土に 親 しみ 、季節感 を知 る機 会 ともな る。 時 に外 国か ら来 日した生徒 たちには、 日常生活 では看過 してきた 日本 の 自然や行事な どを見つ める機会 ともな るだろ う。 現在 も小 中高校 を通 して 「百人一首大会」 が催 され 、それ を題材 とした漫画 も出版 され て現代人 、特 に若者 に親 しまれ る工大 もな され てい る2。 海 外 で も俳句や短歌 は 日本独特 の短詩型 の文学表現 と して学習 され てい る3。 しか し一方では、外 国籍生徒 だけでな く現代 の子 どもた ちに とつて、短歌 を含 めて 詩や俳句 な どの短詩型 は 日常的 には51染 み の薄 く、教材 として も中心 とはな りに くい とい う側 面 もある4。 だか らこそ、学校教 育の国語教材 と して、 日本語学習 の教材 と して、 日本人の表現方法 、ものの見方 、感 じ方 に親 しむ こ とができる短歌 の学習は、 大 きな意味 をもつ と考 える。
3.3授
業計 画上の利点 国語教 育では 「読む・ 書 く・ 話す 。聞 く」の4領
域 、 日本語教 育では受容(読解・ 鑑 賞)と産出俵 現 。発表)の指導が短時間で可能 とな る。生徒 たちは短歌の基礎 知識 を学 び、担 当す る短歌 の調べ学習 を含 めた鑑賞 を行い、その成果 を発表す る。 さらにそれ ぞれ が 自分 の思い を短歌 に膚1る。 これ ら一連 の作業 を一 単元 として計画す るこ とがで きる とい う意味で、表現 のジャ ンル と しての短 歌は適切 で あ る。 なお教材 は、光村 図書「国語 2」中学校 国語科用所収 の『 豊かな言葉一新 しい短 歌のた めに』(馬場あき子著)と、同じく『 短 歌十二首』を使用 した。 【注】1バ
トラー 後藤C2011)「 学習 言語 とは何 か」第3章
『教科 学習 に必 要な語彙 」p.99、 pp.106-120に 日本語の語彙使用についての研究報告が記載されている。第4章
「教科学 習に必要な語彙の習得」pp.148-167で は 日本語の語彙習得と学習について記載、第 5章 「学習言語としての書きことば」pp.174-177で は、日本の小中学生向けの教科書の文章の 特徴についての分析がある。2短
歌に関する漫画、親しみやすさを重視した書籍 漫画『 まんが百人一首』 平凡社 :東京 2009.H.10 『 ちはやぶる』N01∼
25末
次由紀 講談社 :東京 14『 まんが読破 百人一首』 イースト・プレス :東京 『 まんが読破 万葉集』 イースト・プレス :東京 2013.1.10 小説『 小説ちはやぶる』中学生編 1∼
3原
作・イラスト:末次由紀 文:時海結以 講談社 :東京 その他、短歌投稿ブログ「かんたん短歌blog」などもある。3海
外の実践 「日本語学習者のための 日本文学:θF句と短歌を教材とした日本語読解活動の実践報告」 カリフォルニア州立大学フラトン校:柴田節枝 同ロサンゼルス校:横田淑子4町
田守弘(2007)「国語科の教材開発に向けて一一中等教育現場へのアンケート調査に即 して」(掲載誌『 解釈』解釈学会編53巻
掲載号5号
pp.2∼102007年
調査)に、中高 生が「ほとんど読まない」として答えたものの打ち分けに、①古文、漢文 …094.2%
② 詩・短歌・俳句・0090。1%と
ある。第
4章
先行研 究・ 先行指導事例 4。1
学習 言語 とは何 か バ トラー後藤0011)は
そ の著書『 学習言語 とは何か』の副題 を 「教科学習 に必要な 言語能力」 として 、学習 の基礎 を築 く重要 な時期 で あ る小 中学校 にお け る学習言語 に つ いて考察 してい る。バ トラー後藤(同Dは
アメ リカの「第 二言語 としての英語教育」 の研 究・ 実践の成果 を参考 に挙 げなが ら、 日本語 にお ける学習言語の解 明、その学習 言語 を習得す るた めの指導法及び評価等 の諸 問題 を論 じてい る。 なお、バ トラー後藤 (同上)はそ の著書 の随所 で 「第二言語 学習者 が抱 える学習言語 の問題 を顕在化す るこ とは、母語話者に とつて も非常に重要 である」 こ とを強調 してい る。 日本語教 育の視 点か らの学習言語 につ いての考察で あ るが、そ の結果 として、母語話者 にも有効 な指 導法 の解 明 に も繁 が るので あ る。411学
習 言語 の必要性 第1章
で見た よ うに、 日本語指導が必要な児童生徒数 は、外国籍児童生徒・ 帰国の 児童生徒 を問わず増加傾 向 にあ る。バ トラー後藤(同上)は、文科省調 査 に浮上 して こ ない 、言わば 「潜在す る」 日本語指導が必要 な児童生徒 の存在 に言及 してい る。 さら に、その 日本語習得状況・ 学校 での学習状況 に大 きな個人差があることも、また、会 話力が母語話者 に匹敵す る レベ ル にあ る児童 生徒 で あって も、教科学習 のた めに必要 な語学 力が習得 で きてい る と判 断す るこ との誤 りに も言及 してい る。 学習言語 の基礎 は小学校 の低 学年 にあ り、その時点で 日本語力 の不足 に よつて遅れ た教科 の学習は、中学生 になつて も埋 め られず 、 さらに大 きな学力差 を生 じる危険性 が あ るこ とをバ トラー後藤(同上)は指摘 す る。 国立 国語研 究所 の教科 書 調査報 告(近 藤・ 田中、2008;田
中、200Dの
中か ら、語種別 異 な り字数 、品詞別異 な り字数 を例 に挙げて、 日本語 の場合 は、学年が上が るにつれて語彙 が急速 に増加 し、特 に和語・ 漢語・ 外来語 。混種語 の5種
のなかで も、中学校では漢語 が圧倒 的な比率 を占めるよ うになつてい るこ とを指摘 してい る。 また教科書 な どの書 き言葉 には、明治時代 以降 に西洋語の訳語 として作 られた多 くの和製漢語 の頻度が高い こ とに も言及 してい る。 さらに学年 が進む に従 つて、抽象語 の増加 、複 文 の多用 が顕著 にな るこ とも明 らか に してい る(中尾 1999。 バ トラー後藤(同上)は日常生活 の中での言語使用 と学習言語 に お ける言語使用 の違 いを、教科書 に使用 され てい る語彙や文 、文章の分析 によつて詳 細 に述べてい る。 さ らに、学習 言語 にお け る言語使 用 は教科書 にあ る書 き言葉 だ けで はな く、教室談話 にもおいて もその中に特有 の学習言語 が存在 してお り、 日常生活言 語 とは異 な る問題 点が あ る と指摘 して い る。 16学年 に相応 した学習言語能力 の習得 は、その都度 の教科学習 に不 可欠で あ り、学年 の経過 に従 つて難 易度が増 してい く。 日常生活言語 に安住せず 、できるだけ早期 に学 習言語 としての 日本語 を習得す る必要性 が あ るこ とが 、バ トラー後藤(同上)の主張に よつて明 らかに された。学習言語 の習得 は教科学習上必要不可欠 であ り、全般的な「学 力」 向上の基礎 とな る。 さらに結果 として、 日本社会で生 きてい く上での通過儀礼 と なつてい る 「受験 」1を克服 し、進路 を切 り開いてい くこ とがで き るので あ る。 4.1.2学 習言語の とらえ方 バ トラー後藤(同上)は、 カ ミンズ
(Cumminoが
提 唱 した 「伝 達言語能力」BICS2と
「認知学習言語能力 」CALP3と
ぃ ぅ三分類 を紹介 し、 さらに 「認知力必要度」「場 面 依存度 」 とい う2つ
の連続軸 を基 に して言語活動 を特徴づ けた修正モデル を紹介 して い る。カ ミンズは この修 正モデルでは、「会話 的言語力Jと
Fァヵデ ミック言語力」と い う用語 を使用 してい る。 バ トラー後藤(同⊃ は これ らのカ ミンズの理論 が様 々な批 判 の対象 とな つた と述 べてい る4が、第二言語学習 の実践 的指導 法 の1つ
と して有名 な 「認知アカデ ミック言語学習 アプ ローチ」CALLA5は
、 このカ ミンズの 「アカデ ミック言語力」に基づいた ものである(Cha‐
ot&σ
Maney,199oと
言 う。 このCALLA
は 「内容ベ ー スの指導法」6 content‐based lnstructlon(CBDの1つ
で あ る。バ トラー後藤はカ ミンズの三分化論を批判 し、スカーセラ(ScaFCe■
Dの
主張に基づ いて学習言語の構成要素を概観す る。学習言語は(D言語的側面 としての①音韻 ②語 彙 ③文法 ④社会言語的側面 ⑤談話、② 認知的側面 としての①知識 ②高次の思 考 ③ス トラテジー7、 ④ メタ言語認識8、(9社
会文化・ 心理的側面に分類 され ると している。学習言語 とい う場合にはまず言語的側面が注 目され るが、認知的、社会文 化・ 心理的側面 もあるとい うスカーセ ラの主張によつて、第二言語教育が言語指導以 外の部分に拡大 され、またその指導法 も語彙や文法事項に留まるものではないことが 指摘 されたのである。 この観点か ら、学習言語の指導法は内容ベースの指導法に大き く関連 していくと考えられ る。学習言語をどのよ うなもの と考えるかは、指導法にも 大きな影響 を与えるものである。4.2
内容ベースの指導法Content‐based lnstruction(CBDこれは、第二言語・ 外国語スキルの習得 と教科内容 の習得 を同時に行 うことを目的 とした指導法
CBrinton,snow,&Wesche,2009で
ある。バ トラー後藤(同上)によれば、対象学習者の学習 目的やニーズ、指導環境によつて様々な形態があるとされ、その中 のアメ リカで広 く使われてい る方法が幾つか紹介 されてい る。
まず、「保護型指導観察プロ トコル」
SIOP9で
ある。 これは保護型モデル と呼ばれ る、第二言語学習者を対象に特男1に設定 された教科 クラスの教師のために作成 された チェック リス トである。 この リス トには (1)教科内容 と言語 目的 とを児童生徒 に明確 に説明 してい るか。 ② 重要な語彙が どのよ うに提示、表記、反復、強調 されているか。 ③ 教師の話 し方が学習者 に見合つたものであるか。 など、詳細に項 目化 され、評価す るよ うになつているとい う。また、言語上の 目標 を 提示す る基準 として、(1)重要語彙("言
語機能(9言
語スキル ④ 文法・ 言語構造O指
導タスク(0言
語学習法略 の6点
が紹介 されている。 次に、前述 した 「認知アカデ ミック言語学習アプローチ」CALLAで
ある。教科内 容の習得、学習言語の習得、学習方略の習得の3つ
の柱か らな り、特に学習者が教科 内容 と言語学習を同時に習得す るために、メタ認知方略 とタスク・ ベースの方略の指 導に力を入れてい る。 これ も学習者の習得状況を測 るためのチェックリス トを使用す るとい う。4.3
日本 における 「内容重視の 日本語教育」の動 き 4.3.1内 容重視のアプローチ 岡崎眸(199の は、前述 した内容ベースの指導法(CBDを
「内容重視の第二言語教育」 1°と呼び、内容重視の定義 として「言語教育を言語以外の諸教育のカ リキュラム と相 互交流 させ ることによつて、言語の学習以外の学習つま り内容に関わる学習 と言語学 習 との統合的学習 を成立 させ ることを目指す ものである」 と述べている。岡崎(同上) は大学において、「内容重視の言語教育が どのよ うな現実化の展望を持 ち うるか」を考 察 し、『学習者が内容を第二言語 を媒介 として理解 `学 習 し、その過程で専攻の学問・ 研究に耐えられ るだけの第二言語の能力 を獲得 してい く」ことを目指 している。 これ は 「専攻の学問・ 研究」を「各教科内容」 と置き換 えれば 「年少者教育」での学習に も十分応用できるものである。 また岡崎000"は
言語によつて扱われ る「内容」を優 先 し、その実現のための言語的手当として言語項 目を考 えると述べてい る。 この 「内 容」 とは学び手の要望によつて決定 され るものであるとしてい る。 児童に対す る内容重視の 日本語教育 としては、中国帰国者定着促進センターにおけ る斉藤 の実践(199&199のがある。これ らは、算数 。理科 。社会の教科 における実践で、 「教科 と日本語 との統合教育を指 して内容重視の 日本語教育」 と呼んでいる(1999。 筆者が 目的 とす る「国語」における内容重視の研究 としては、清 田0001,2000
がある。清 田は「国語」 とい う教科の特性上の問題点を考察 し、研究 目的を 「教科 と 18日本語力の統合は、単に 日本語力の向上や教科理解だけでなく、思考力・ 自己表現力・ 想像力等の育成にも貢献す ることができるか どうか検証す る。」としている。この視点 はスカーセ ラの主張す る「認知的側面 としての①知識 ②高次の思考 ③ス トラテジ ー ④ メタ言語認識」 と通 じるものである。ただ、清 田はその実践(2001)で 「母語 の活用に着 日し、教科学習の場面での母語の活用方法やその有効性 について探 る」 と している。母語の活用が力]算的効果を上げることは、岡崎
000"も
指摘 してお り、 「母語活用は年少者の母語保持・ 発達にも役立ち、アイデ ンティティの確立にも意義 がある」 と評価 している。母語の活用は学習者が1人
か、また同 じ母語話者の場合に 限られてお り、 さらには指導者が学習者の母語に熟達 している必要がある。母語を活 用 した教授法は、通常の中学校の 「混在 した」学級には適切な指導法 とは言えない。 4.3.2「年少者のための 日本語教育」における内容重視 川上000分
は 「年少者」 を初等 e中 等教育の児童生徒 とし、言語発達や人格形成 の時期にある日本語教育の重要性を主張している。さらに一般的には、日本における「第二 言語としての 日本語教育」と海外 における「外国語としての 日本語教育」とが別個に論じられ る傾向があるとした上で、「年少者に対する言語教育のあり方」においては両者がもつ共通の 課題があるとしている。双方ともに学校教 育における日本語指導である以上、取り出しの初 期 日本語指導だけでなく、教科内容を教えながら日本語教育をすることが必要となること、学 習言語能力の指導に焦点を移すべきこと、つまり「日本語と教科指導の統合」が必要であり、 そのための「内容重視のアプローチによる日本語教育」が有効であるとり│1上 (同上)は指摘し ている。そして、学習者が興味関心のある内容を学習するときにこそ、言語の学習に意欲が もて、習得が進むことを考察し、「内容」を習得すべき日本語ではなく、「学習者が学びたいこ とJとしている。これは牲りII(200'の 「学習者主体」に通じるものである。川上(同上)が注 目す るのは、まず 中国帰国者定着センターにおける斉藤(2001)たちの実践である。これらはいわ ゆる「取り出し」指導の範疇であり、新たに課題となるのは、斉藤たちの実践を一般の教育現 場での実践にどのよ 'こ 応用するかという、方法の開発などである。さらに川上(同上)は、在 籍学ilkでの「学び」の交流や『学び」の集団づくりを経て「ことばの習得」を実現していくことが 必要である、としている。 また、川上(同上)は、海外での初等・中等教育レベルにおける日本語教育の課題として、 異なる多様な環境に「接触」した際の①とまどいや誤解を理解する能力、②問題解決能力、 ③他者との関係を創造していく能力、の育成を挙げている。これらの能力を育てることによつ て、「ことばの教育」は「考える力」や「生きる力」を育成していくことにつながり、これが年少者 の 日本語教育の共通の目的だと述べている。「考える力」「生きる力」の育成は、現在の 日本の学校教育においても大きな課題 である。 4.3.3「個の表現」を 目指す総合活 動型 日本語教 育 細川(2002)は、言 語 習得 をコミュニケー ションという活 動 を通 して体得 す ることであると述 べ、思考と伝達ということばの二面性を「聞く・話す 。読む・書く」の総合的な言語活動によつて 習得 するものであるとしている。学習活動 は語彙 や 文法を学 習者 に形 式的 に注入 するバー チャル・リアリティの言語学習ではなく、学習者の主体的な意思 によつて行われるものであり、 そのために学習 内容への興 味関心を重視するという、これも「内容重視 」につながる考え方 である。さらに、この
4つ
の領域は具体的な対象と目標を前提として機能するものであり、教 授する側 は学習者 に具体的な言語使用場 面を提供する必要があると述べている。つまり、担 当者 にとつて重要 なことは、学習 者 が達 成感 のある言語活 動 を行い、学習 者一人 ひ とりの 「個の表現」が可能となるような「環境 」を設定することが重要であると言う。細川(同上)はこの 考え方 に立って「総合活動 型 日本 語教 育」の方 法を提 唱し、早稲 田大学 にお ける実践 を紹 介している。 日本語 による自己実現は人間としての生きる力を育成することであるとする考え方 は、特 に 人間形成途 上にある年少者 を対象 とした場合 には重 要なことであり、川 上(同上)と通 じるも ので ある。細川(同上)が重視したことは、「私をくぐらせる」こと、つまり内発的な自己表現であ る。その過程では 自己の相対化も必要であり、思考のあり方を認識すること、どのように外言 化 してクラスという共 同体 に向けて発信するかという課題b出
てくる。 4ヽ・中・高の学校教 育では、従来の読解 中心の国語教 育から、表現活動 、コミュニケーシ ョン能力の育成を重視 した指導へと転換 してきている。問題解決能力、生きる力の育成も課 題 とされている。「読む 。書く。話す 。聞く」の4領
域を別個 に指導するのではなく、限られた時 間内でそれ らをどのように関連 させて指 導していくかということも大きな課題 であると考える。 この視 点は細川(同上)の総合活動 型 日本 語教 育 、問題発 見解 決学習 に共通 するものであ る。また、IT機
器 の普及などによつて消化 しきれないほどの多くの情報 の渦 に巻き込まれる 現代 では、逆 に「ことば」がその実 体を失い、ことばを悪戯 に弄ぶ傾 向さえある。日本 語教 育 だけでなく、教 育全般 に亘つて「ことば」の教育は重要な局面を迎えていると言える。 4.4「 短歌」の指導案事例 4.4_1文科省 の「学校教育 におけ奇SIカリキュラム(中学校編卜 国語科― 」 本研 究は、学校 教 育現場 における実践が対象である。文科省 のJSLカリキュラム、特 にそ の「I JSLカ
リキュラムの基本的考え方 」「Ⅱ 日本語支援 の考え方 とその方 法」、さらに「中 学校編一 国語― 」を参 考とした。 20その【指導案 20】に『歌物語 作家になろう一短 歌学習― 」が記載 されている。個 々の実態 に合わせた読み方をして「親 しむ」という点では、
JSL生
徒への配慮である。また「完成 した物 語を読み合 う」が在 籍 クラスで実施 することになつているのは、学習集 団作 りを考慮 したもの である。一見「取り組 みやすい」実践案であるが、これは短歌 自体の学習 とは言い難い。「日 本独 自の言 語文化 としての短 歌 に親 しみ 、解釈する力を身 に付 ける」(指導案 前文)としては 不十分であり、今後検 討していくべき点もあると考える。 4.4.2「兵庫 県ドLカ リキュラム実践事例集 」(2009) 兵庫 県のJSLカリキュラム実践 支援事 業推 進校 の 中等教 育 学校 前期 課程事例 として、1 年の物語文「オツベルと象 」(対象2人
)、 日本語リーダー養成研修 会の指導事例として同じく3年
の評論文「ヒートアイランド」(対象4人
)の実践が紹介されている。これらは共 に国語という 教科名 であるが、実質 は「取 り出し」の 日本語クラスでの実践である。「取 り出し」の 日本語少 人数クラスであるため、多様 な背景 をもつ生徒個 々に配慮 した実践が可能である。 しかし、日本語クラスを独 立して設定できない通常の中学校では、そのまま適用できない 部分もある。1学
校 、1学
級 に在籍す有SL生
徒が少ない場合 には、一般 生徒 と混在した状 態での授 業をせ ぎるをえない。そのため、日本語 力 の差違 を考慮した言語 指 導 、背 景的知 識の有無 に配慮した授 業展 開が必要とされる。 4.4.3そ の他の実践事例 埋橋(2000な ど、内容 重視の視 点からの「日本 語と国語との統合 」の実践事例 はあるが、 「短歌」の指導事例 は見受けられない。 前述 の指導案l却SL生
徒 に対する「取 り出し」クラスの指導案である。今後増加 すると予測 される日本語指導の必要な生徒たちに対 して、日本語取り出しクラスではなく、一般生徒と混 在する在籍学級での授業を実施する場合の指導法が必要である。さらに高校入試 というハ ードルを乗り越 えられる学力保 障 にもつながる、一定の水準を確保した短歌の指導実践を検 討していくことが課題 である。短歌の学習としての量的質的なレベル 向上が求められる。 【注】 1「 受験」 高校受験のみではなく、大学受験、さらには就職に際しても必要となつている。文科省「学 校教育におけ有SLカリキュラム(中学校編卜 国語科―」の「2学
習指導案の構成」2「伝達言語能力」
BICS
Basic hterpersOllal Colnmumcative Skinsの 略 日常生活 にお ける基礎 的な伝達 を行 う言語能力.
3「認知学 習言語能力」
CALP
Cognitive Academic Language PFOtCiencyの 略。
学習を行うにあたつて必要な言語能力 、言語使用 のバ リエーション。
4
スヵ_セ
ラは「カミンズは複雑 な習得 過程 を単純化 して固定的 にとらえすぎている。」と批判している。
5「認 知 アカデ ミック言語 学習 アプ ローチ」
CALLA
Cognitive Academic Language AppFOaChの略。
6「 内容ベースの指導法」
CBI
Content‐based lnstructionの 略。
7ス
トラテジー この場合 は学習 に関わる方略・方策を指す。自らの学習 について考え管理するメタ認知 ストラテジー、学習課題 を解決するための認知ストラテジー、学習上に起こり得る情意的 な障害を取り除くための情意ストラテジーの働 きが重要である。8メ
タ言語認識 自らの言語使用 について意識 的に考えることのできる能力。 短歌の創 作の際 にもこのメタ言語認識の能力を必要とする。 9「保護型指導観察 プ ロ トコル 」SIOP
The Sheltered lnstruction Observation PFOtOCdの 略。
10「 内容重視の第二言語教育」
岡崎眸(1994Nは 「内容 ベ ー スの指導法」
CBIを
Content based Second Language hstructionと 呼んでい る。第
5章
生徒の実態 に即した「短歌」の指導I
-7メ
リカ合衆 国 日本語補習学校 の場合一一 5。1生
徒の状況 第 1章 で述べたように、アメリカ・カナダの北米 では 日本から来た子どもたちは英語 圏という 条件 を活か して、毎 週 月曜 日から金曜 日まで現 地校 に通学 して英語 で学 習する。彼 らはま ず、英語学習を含 めて現地校 に適応することに多くの時間とエネルギーを払つている。さらに 帰 国後 を視 野 に入れて、その多くは毎週 土曜 日に 日本語補 習学校 に通い、日本 語で学習 する。日本 語を維持・強化 し、アメリカでは学習できない社会科 の学習 にも励 んでいる。なか には往復2時間以上掛 けて通学する子どももいる。アメリカ合衆 国の 日本語補 習学校 におい ては、まず 日本への帰 国予 定生徒への母語維持・補 強教育であり、定住生徒 にとつては非 日本語 圏における外 国語 としての 日本語学習OFL)に
なる。しかし、定住生徒のほとんどは 両親 あるいはどちらかの親 が 日本 語を母語 としている場合が多く、定住在米 の 日本 人との交 流の機 会もある。そのため、日本 語を完全 な外 国語と受 け止 めているわけではなく、第二言 語としての 日本語学習OSり
に近い意識をもつ生徒もいる。帰国予定生徒も定住生徒も双方 共 に「日本 につながる」1生徒 たちであり、非 日本語圏 における第二言語教 育という要素を併 せもつている。その意 味で、学習者のアイデ″ ィティに関わる問題も包含しているだろう。 筆 者 が勤務校で指 導する生徒 の 中には、欧米 の 日本語補 習学校 で学んでいた帰 国生徒 がいる。また海外 に定住する予定であつたが、事情 によつて帰 国したという日本 人生徒もい る。彼 らが海外の 日本語補習学校でどのように学んできたのか、その実情を知ることも、指導 のために大きく役 立つことと考え、知人の紹介でアメリカ合衆 国オハイオ州 にある日本語補 習学校の見学及び授 業実践の機 会を得た。 5.1。1オ
ハイオ州クリーブランド補習学校の授業 日程 授業 日程 は、次の通りである。 (1)毎週土曜 日45分
間の6時
限授 業 体 み時間5分
昼休 み30分
(2)年間授 業 日数 43日 鮪 業式 。文化祭などすべての行事も含 む) この 日程のなかで、帰国予定の生徒たちは、帰 国後も日本の学校 に適応できるように、定 住 生徒 と共 に国語 を中心 に算数(数学)、 社会(日本 史)の授 業を受 ける。他 の補 習学校も概 ね同様 である。日本からきた帰国予定の生徒たちの母語維 持・補強教 育としての 日本語学 習 は、いわゆる「国語学習 」である。テキストも日本から取 り寄せ た「国語」の教科書を使用 し ている。5.1.2担当学年の生徒の状況 クリーブランド補習学校は非常に小規模校で、幼稚部から高校まで全
56人
であつたが、 人数は常に流動的である。担当した中学2年
生の生徒は次のような構成である。 (1)定住生徒4名
(日本語を外国語または第二言語に近い意識で学習) ① アメリカ生まれアメリカ育ち、母親のみが 日本人 3名 (男子1、 女子2) ② アメリカ育ち 両親が日本人1名
(女子)(a帰
国予定生徒2名
(日本語を母語維持または母語補強として学習) ① 月ヽ学校3年
生からアメリカ在住1名
(女
子) ② 来米後 1年 1名 (男子) 彼(女)らは全員 、月曜 日から金曜 日までは現地校 、土曜 日は 日本語補 習学校 に通う。それ だけでも多忙な 日程であるが、さらにそれぞれスポーツや 音楽などの練習や試合などをこな している。授業を実施 した 2日 間にも、わずか 6名 の中でサッカーの試合 出場 、サマーキャン プヘ の参カロ、ピアノのリサイタル 出場などの理 由で欠席や遅刻をした生徒もいた。 クリーブランド補習校の教師によれば、彼(女)らにとつて学習言語としての 日本語の必要性 が少なく、学齢が上がるにつれて学習の負担が重くなるために、小学部までで辞める児童も いるという。特 に小学校 にお ける漢字学習がかなり負 担であると、補習学校教師や保護者か ら聞く。授業後の相談 会の発言から、親の心理的・時間的負担も非常 に大きいことが如実 に 伝わつてくる。 中学部まで継続 する生徒 たちは、日本 語学習または補習学校での生活 にかなり魅 力を感 じて通学してきており、その学習態度は真 面 日で熱心であるということである。補習学校全体 の時間的制約のなかで、帰 国予定生徒と定住生徒が混在する学級 において、それぞれの状 況 に配慮 しつつ、学習への興味 関心を湧かせる授業 とはどのようにあるべきか。言語教 育と 「国語」という教科指導とを統合 した、「内容重視 のアプローチ」による授業方法を実践するこ とにした。5.2指
導計 画 5.2.1授業 日程 授 業 に際して、最も大きな現実 面での制約 が授 業 可能な 日程 と時 間数であつた。幸いに も寒冷地であるために、クリーブランド補習学校 の二学期 は、本研 究者 の夏季体 業 中である 8月 17日 から始まる。短歌の学習を一単元として設定して最大限の時間数を確保 した。 全5時
間(8月 17日 "・2時
間24日
…・3時
間)の内訳 は、 第1次
『 豊かな言葉一新 しい短歌のために,馬
場あき子著』の読解3時
間 正 岡子規・与謝野晶子・寺山修 司・俵万智の歌に関する部分24
第