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Academic year: 2021

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     博 士 ( 工 学 ) 稲 場 学 位 論 文 題 名    ー

エルビウム添加光ファイバレーザの周波数安定化と マイクロ波周波数へのりンクに関する研究

.学位論文内容の要旨

  J甜 波数(時間)はもっとも正確に決めることのできる物理量である。時刻の決定はもちろん のこと、多くの電子機器では周波 数を利用した制御が随所で行われており、今後ますます安定 で正確な周波数が必要になると予 想される。一方、長さ標準や光通信で必要とされる光の周波 数は極めて高く、その周波数の決 定や制御には、電気信号とレて扱えるマイク口波領域の周波 数とのりンク技術が必要である。 その困難さから、現状ではいくつかの安定化レーザが光周波 数領域における二次標準として認 められている。

  本研究の対象は、高品質な安定 化レーザとして光周波数を実現するためのエルピウム添加光 ファイバレーザを安定化する技術 および、フェムト秒モードロックレーザを用いてそれら安定 化レ ーザ の光周波数を計測、またはマ イク口波周波数に変換する技術に関するものである。

  具 体的 な 安定 化レ ーザ とし て代 表的なものに、波長633 nmよう 素安定化He‑Neレーザ、波 長532 nmよ う 素 安 定 化Nd:YAGレ ーザ 、お よび 波長1.5 ymア セチ レ ン安 定化 半導 体レ ーザ があ る。 その中で、波長1.5 ymは線幅 が太く、短期安定度の面で不利な半導体レーザが光源 とし て用 いられている。本研究の対象 であるェルビウム添加光ファイバレーザは波長1.5 ym 帯の光源であり、出カや発振スペクトル線幅から極めて有望なレーザである。しかしその反面、

単一周波数発振やモードホップフ リーと言った安定化レーザに必要な要件を満たしていないと いう難点がある。本研究では、こ のレーザの長所に着目し、短所を克服して、半導体レーザに 代わる短期安定度の優れた安定化 レーザのための光源を開発した。

  また、安定化レーザを、定義に 基づいた長さ標準または光周波数標準として利用するために は、光とマイク口波周波数をコヒ ーレン卜にっなぎ、光周波数を計測、あるいはマイク口波周 波数に変換する技術が必要である。光周波数は200 ‑ 700 THzという極めて高い周波数であり、

現在 、直 接電気的に周波数カウンタで 計測できる数10 GHzとは大きな隔たりがある。20世紀 末に、フウムト秒モード口ックレ ーザとフォトニック結晶ファイバを用いて発生させることの できる「光周波数コム」が出現し 、光とマイク□波周波数のりンク技術が現実的なものとなっ た。光周波数コムとは周波数軸上 で櫛のようにモードが並んだもので、その間隔がきわめて一 様であるため、光周波数のものさ しとして利用することができる。この技術により、定義に基 づいた長さの実現がこれまでより 容易になり、光周波数領域で周波数標準を実現する「光周波 数標準」も現実味を帯びてきた。 本研究では、光周波数コムを用いた光とマイク口波周波数の

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リンク技 術を利用 して、光周波数計測を行うとともに、光周波数標準時代の到来に備えた光周 波数分川 のための 位キ‖雑音の評価を行い、さらに光周波数合成技術について研究を行った。

  ホL論文は3つの章で構成されている。以下にその概要を述べる。

  第1章 では、本 研究の 背景や歴 史的経 緯について、時間標準と長さ標準について述べた後、

´安定化レーザについて述べる。そして、時間標準と長さ標準をつなく゛、光とマイク口波周波数 のりンク技術について述べる。

  講2章 では、発 振スペ クトル線 幅の極 めて細いエルビウム添加光ファイバレーザを、安定化 レーザとして利用するための研究につしゝて述べる。まず、エルビウム添加光ファイバレーザの 動作原理 と、他の レーザと比べてどのような性質を持っているか説明し、本章で最も大きなブ レークス ルーであ る、超狭帯域ファイバブラッググレーティングによる単一周波数発振につい て説明す る。そし て、単一周波数発振と同時に観察された二偏波モード発振についての意味を 理解し、 それをセ ンシングに応用できることを示す。さらに、当該レーザをアセチレン分子の 吸収線に 安定化す べく、レーザ周波数の微調及び粗調を可能にする方法を開発した。それを用 いたアセ チレン分 子の線形吸収の観察について述べる。最後に今後の課題と方針について述べ る。

  第3章 では、光 周波数 コムを用 いた光 とマイク口波周波数のりンクに関して述べる。まず、

光周波数 計測の歴 史的経緯について述べた後、光周波数コムを用いた光周波数計測について概 観す る 。 次に 、 当 所で 保 有 する 波 長532 nmよ う 素 安定 化Nd:YAGレ ー ザ と波 長780 nmル ビ ジウム安 定化半導 体レーザの光周波数計測について述べる。次に、光周波数コムを用いた光周 波数計測 システム において、どの部分が安定度の制限要因になっているか調べる。光周波数領 域ではキ ャリア周 波数が高く、周波数雑音の評価で十分だが、マイク口波領域ではキャリア周 波数が低く、周波数雑音の評価では感度が十分ではない。そこで位相雑音による評価を行った。

その概要 と実際の 測定法について説明するとともに、実際に光周波数計測システムの各要素を 評価する 。一方、 光周波数コムはそれ自体光周波数シンセサイザと呼べるものであるが、光周 波数コム から実際 に単一周波数を抜き出して使うことは難しい。そこで、単一周波数かつ、極 めて広い 発振可能 領域を持つ光バラメトリック発振器を局部発振光源として導入し、その発振 周波数を 光コムに 位相同期させた。その方法と結果について説明する。また、今後の課題と方 針についても述べる。

  第4章では本研究の結論を述べる。

  最後に、 本研究 で新たに明らかになった、もしくは新たに実現した結果のうち主なものは以 下の通り である。 (1)エルビウム添加光ファイバレーザを帯域6 GHz程度のファイバブラッグ グレーテ ィングを 用いて単一周波数発振させた。また、そのモード競合はエルビウムの不均一 広がりと 均一広が りの組 み合わせ により 起こるというモデルで現象を矛盾無く説明した。(2) エルビウム添加光ファイバレーザを用い、,アセチレン分子の吸収線を観察した。(3)光バラメ卜 リック発 振器をフ ウムト秒モード口ックレーザとフォトニック結晶フんイバにより発生する光 周 波 数 コ ム の 1周 波 数 に 位 相 同 期 さ せ 、 光 周 波 数 シ ン セ サ イ ザ を 実 現 し た 。

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学位論文審査の要旨

主 査   教 授   馬 場 直 志 副 査   教 授   大 場 良 次 副 査   教 授   山 下 幹 雄

学 位 論 文 題 名

エルビウム添加光フんイバレーザの周波数安定化と マイクロ波周波数へのりンクに関する研究

  物理量の中で、周波数(時間)は最も正確に決めることができる。時刻の決定はもちろ んのこと、多くの電子機器では周波数を利用した制御が随所で行われており、今後ますま す安定で正確な周波数が必要となる。一方、長さ標準や光通信で必要とされる光の周波数 は極めて高く、その周波数の決定や制御には、電気信号として扱えるマイク口波領域の周 波数とのりンク技術が必須である。しかし、その困難さから、現状ではいくつかの安定化 レ ー ザ が 光 周 波 数 領 域 に お け る 二 次 標 準 と し て 認 め ら れ て い る に す ぎ な い 。   本論文では、高品質な安定化レーザとして光周波数を実現するためのエルビウム添加光 ファイバレーザを安定化する技術、および、フウムト秒モード口ックレーザを用いてそれ ら安定化レーザの光周波数を計測またはマイク口波周波数に変換する技術に関し研究し、

これらの研究成果について述べている。

  代表 的 な 安定 化 レ ーザ と し て、 波長633 nm沃素 安定化He‑Neレー ザ、波 長532 nm沃 素安 定化Nd:YAGレ ーザ、お よび波 長1.5 ymアセチレン安定化半導体レーザがある。これ らの中で、波長1.5 Vmは線幅が太く、短期安定度の面で不利な半導体レーザが光源として 用いられている。本研究の対象であるェルビウム添加光ファイバレーザは波長1.5 ym帯の 光源であり、出カや発振スペクトル線幅から極めて有望なレーザである。しかし、その反 面、単一周波数発振やモードホップフリーというような安定化レーザの要件を満たしてい ないという短所がある。本研究では、このレーザの長所に着目し、短所を克服して、半導 体 レ ーザ に 代 わる 短 期 安定 度 の 優れ た 安 定 化レ ー ザ のた めの 光源を開 発して いる。

  安定化レ←ザを、定義に基づいた長さ標準または光周波数標準として利用するためには、

光とマイク口波周波数をコヒーレントにっなぎ、光周波数を計測、あるいはマイク口波周 波数に変換する技術が必要である。光周波数は200 ‑ 700 THzという極めて高い周波数であ り、現在、直接電気的に周波数カウンタで計測できる数10 GHzとは大きな隔たりがある。

20世紀末に、フウムト秒モード口ックレーザとフエトニック結晶ファイバを用いて発生さ せることのできる「光周波数コム」が出現し、光とマイク口波周波数のりンク技術が現実 的となっ・た。光周波数コムとは周波数軸上で櫛のようにモードが並んだことで、その間隔 がきわめて一様であるため、光周波数の物差しとして利用することができる。この技術に より、定義に基づいた長さ測定がこれまでより容易になり、光周波数領域で周波数標準を 尖現する「光周波数標準」も現実味を帯びてきた。本研究では、光周波数コムを用いた光

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とマイク□波周波数のりンク技術を利用して光周波数計測を行うとともに、光周波数標準 時代の釧来に備えた光周波数分周のための位相雑音の評価を行い、さらに光周波数合成技 術の開発を行っている。

  ホ論文は3つの章で構成されている。

  第1章 では、本 研究の背景や歴史的経緯について、時間標準と長さ標準に関し概述した 後、安定化レーザについて述べている。そして、時間標準と長さ標準をっなぐ、光とマイ ク□波周波数のりンク技術について述べている。

  第2章 では、発 振スペク卜ル線幅の極めて狭いエルビウム添加光ファイバレーザを、安 定化レーザとして利用するための研究について述べている。まず、エルビウム添加光ファ イバレーザの動作原理と、他のレーザと比べてどのような性質を持っているかを説明した 後、大きなブレークスルーとなった、超狭帯域ファイバブラッググレーティングによる単 一J司波数発振にぃ丶て説明している。そして、単一周波数発振と同時に観察された二偏波 モード発振について考察し、それをセンシングに応用できることが示されている。さらに、

当該レーザをアセチレン分子の吸収線に安定化すべく、レーザ周波数の微調及び粗調を可 能にする方法を開発している。これを用いたアセチレン分子の線形吸収の観察について述 べ、今後の課題と方針についても触れている。

  第3章では、光周波数コムを用いた光とマイク口波周波数のりンクに関して述べている。

まず、光周波数計測の歴史的経緯について概観した後、光周波数コムを用いた光周波数計 測に つ いて 述べてい る。次 に、産総 研で保 有する波 長532 nm沃素 安定化Nd:YAGレーザ と波長780 nmルビジウム安定化半導体レーザの光周波数計測について述べている。そして、

光周波数コムを用いた光周波数計測システムにおいて、どの部分が安定度の制限要因にな っているか調べている。光周波数領域ではキャリア周波数が高いため、周波数雑音の評価 で十分であるが、マイク□波領域ではキャリア周波数が低く、周波数雑音の評価では感度 が十分ではない。このために、位相雑音による評価を行っている。その要点と実際の測定 法について説明するとともに、実際に光周波数計測システムの各要素を評価している。一 方、光周波数コムはそれ自体光周波数シンセサイザと呼べるものであるが、光周波数コム から実際に単一周波数を抜き出して使うことは難しい。このため、単一周波数かつ、極め て広い発振可能領域を持つ光バラヌトI」ック発振器を局部発振光源として導入し、その発 振周波数を光コムに位相同期させている。その方法と結果について説明している。また、

今後の課題と方針についても述べてある。

  第4章は本研究の結論となっている。

  これを要するに、著者はェルビウム添加光ファイバレーザを帯域6 GHz程度のファイバ ブラッググレーティングを用いて単一周波数発振させ、当該レーザを用いてアセチレン分 子の吸収線を観察し、さらに光バラヌトリック発振器をフェムト秒モード□ックレーザと フォトニック結晶ファイバにより発生する光周波数コムの1周波数に位相同期させて光周 波数シンセサイザを実現した。本研究によって得た知見は量子工レクト□ニクス、応用物 理学の発展に寄与するところ大なるものがある。よって著者は、北海道大学博士(工学)

の学位を授与される資格あるものと認める。

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参照

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