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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 科 学 ) 東 野 敏 及

    学 位 論 文 題 名

Studies on the endocrlneCOntrolmeChaniSm     OfearlyOOgeneSlSlnfiSh

    ( 魚 類 卵 形 成 初期 の 内分 泌 制御 機 構に 関 す る研 究 )

学位論文内容の要旨

  配偶子形成の制御機構の詳細を調べることは、有用生物資源の人工種苗生 産技術を開発、或いは改良する上で、非常に重要である。一般に、雌の配偶 子形成過程である卵形成では、始原生殖細胞が卵巣に入り卵原細胞となり、

体細胞分裂を繰り返した後、減数分裂を開始し卵母細胞となる。卵母細胞は 第一減数分裂前期で分裂を一時休止し、その間に卵黄を蓄積して成長し、減 数分裂を再開した後、最終成熟(卵成熟)を経て成熟卵へと分化する。そ の卵形成に関する内分泌制御機構は、第一減数分裂の再開から卵成熟までは 詳細に解明されているが、卵原細胞の増殖から周辺仁期の卵母細胞に至る初 期卵形成に関しては、一部の脊椎動物を除いてほとんど解明されていない。

その原因のーっとして、多くの生物種の卵形成が、発生の極初期に、直ちに 第一減数分裂の前期にまで達してしまうため、初期卵形成制御機構を解明す ることが困難であることが挙げられる。そこで本研究では、卵形成の進行が 比較的遅いと考えられるマツカワ(Verasper moseri)及びイトウ(Hucho perryi)を実験モデルとして選び、初期卵形成過程を組織学的に観察すると ともに、その制御機構を内分泌学的に解析した。

  先ず、マツカワの初期卵形成過程を、光学顕微鏡及び電子顕微鏡により観 察した。光顕観察の結果、全長3 cmでは、生殖腺、生殖細胞ともにその形 状は未分化であったが、全長4 cmでは、卵巣腔が形成され始め、形態的な 性分化が既 に始まって いた。また 、全長3 cmから10 cmまでは体成長に伴

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い、生殖細胞の発達段階が進行していた。包嚢は全長4 cmから形成され、

全長7 cmまで体成長に伴って、大きくなり、包嚢中の生殖細胞数も増加し た。一方、全長8 cm以降、包嚢は小さくなり、包嚢中の生殖細胞数は減少 した。さらに、全長7 cmでは、大きな包嚢内に、卵原細胞か卵母細胞かの 区別がはっきりしない核が凝縮した生殖細胞が観察された。電顕観察の結果、

それらの細胞は、核内にシナプ卜ネマ構造を持つ第一減数分裂前期の卵母細 胞であり、この時期に、卵原細胞は減数分裂へと移行し、卵母細胞となるこ とが明らかとなった。次に、マツカワの卵原細胞の増殖及び減数分裂開始時 期 をDNA合 成 を 指 標 と し て 詳 細 に 調 べ た 。 全 長3cmか らlcm間 隔 で12 cmまで のマツカワ のBrdUの腹腔内投 与実験並び に免疫組織学的解析を行 っ た とこ ろ 、全 長5 cmと7cmで多 数 の生 殖 細胞 がBrdUを取 り 込ん で い る の が観 察 され 、 盛ん にDNA合 成を 行 って いた。 また、DNA合成してい る生 殖細胞の核 の面積を計測し、各全長でのDNA合成している生殖細胞の 核の大きさとその割合をヒス卜グラムにして比較したところ、全長5 cmで は核 の面積が小 さい生殖細胞でDNA合成が盛んに行われていたが、体成長 が進 むにっれて 核の面積が大きな生殖細胞でDNA合成が盛んに行われてい た。卵原細胞の核が卵母細胞の核より小さいことから、マツカワの卵巣では、

全長5 cmで卵原細胞 が体細胞分裂により活発に増殖しており、全長7cmで 卵原 細胞は減数 分裂を開始 し、卵母細 胞となるこ とが明らかとなった。

  このような初期卵形成過程での卵原細胞増殖時の体細胞分裂や卵母細胞へ 分化 する際の減 数分裂は、生殖腺刺激ホルモン(GTH)等の内分泌制御因 子が関与していることが示唆されているが、直接的な証明は無く、その詳細 は明 らかではな い。そこでまず、GTHが初期卵形成制御に与える影響及び GTHの作用がス テ口イドホルモンの産生を介しているか否かをイトウの生 体外 卵巣器官培 養法により調べた。GTHが含まれるサケ脳下垂体糖夕ンバ ク画分(SPG)単独添加群、3D・水酸基脱水素酵素の阻害剤であるトリ口ス タ ン (Tri) 単独添加 群、SPGとTriの複 合添加群及 び対照群を 設け、生 殖細 胞のBrdUの取り 込みを調べ たところ、SPG 0.1、1、10 ng/ml添加群     ‑ 1514−

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で は 、 対 照 群 に 比 べDNA合 成 を 行 っ て い る 生 殖 細 胞 の 割 合 は 有 意 に 増 加 し て い た 。 ま た 、 Tri単 独 添 加 群 、SPGとTriの 複 合 添 加 群 で のDNA合 成 を行 って いる 生殖 細胞 の割 合は 、対 照群 と比 較し有 意に 減少 して いた。以上 の 結 果 、GTHが 卵 巣 に作 用 し 、 卵 巣 で 合 成 さ れ た ス テ ロ イ ド ホ ル モ ン が 初 期卵形成を制御していることが示唆された。

  次 に 、 初 期 卵 形 成 過 程 でGTHの 作 用 に よ り 産 生 さ れ る と 考 え ら れ る 内 分 泌 制 御 因 子 と し て 、 性 ス テ 口 イ ド ホ ル モ ン で あ る ェ ス ト ラ ジ オ ー ル ― 17p(E2)、17a, 20p‑ジハイド口キシ‑4‑プレグネン一3―オン(17a,20p‑DHP) 及 び11‑ケ 卜 テ ス ト ス テ 口 ン (11‑KT) が 初 期 卵 形 成 の制御 に与 える 影響 を 生 体 外 器 官 培 養 法 に よ り調 べ た 。E2及 び ア 口 マ テ ー スの阻 害剤 であ るフ ァ ド ロ ゾ ー ル (Fad) 単 独 添 加 群 、 E2とFadの 複 合 添 加 群 、E2とSPGの 複 合 添 加 群 、17a, 20f3‑DHP及 びTri単 独 添 加 群 、170r., 20p‑DHPとTriの 複 合 添 加 群 、11‑KT単 独 添 加 群 、 及 び 対 照 群 を 設 け 、 生 殖 細 胞 のBrdUの 取 り 込 み を 調 べ た と こ ろ 、DNA合 成 を 行 っ て い る 生 殖 細 胞 の 割 合 はE2 0.1 ng/ml添 加 群 及 び17cc, 20p‑DHPlng/ml添 加 群 で 、 対 照群に 比ベ 有意 に高 値 を 示 し た 。 ま た 、Fad単 独 添 加 群 及 びT・d単 独 添 加 群 で は 、 対 照 群 に 比 ベ 有 意 に 低 値 を 示 し た 。 一 方 、 E2とFadの 複 合 添 加 群 、E2と SPGの 複 合 添 加 群 及 び17弧20D−DHPとTdの 複 合 添 加 群 で は 、 対 照 群 、Fad単 独 添 加 群 及 びTd単 独 添 加 群 に 比 ベDNA合 成 を 行 っ て い る 生 殖 細 胞 の 割 合 は 有 意 に 高 値 を 示 し た 。 さ ら に 、 全 て の11‐KT添加 群 で の 生 殖 細 胞 のDNA 合 成 の 割 合 は 対 照 群 と 同程 度 で あ っ た 。 こ れ ら の こ とから 、11ーKTは初 期 卵 形 成 に 作 用 せ ず 、E2及 び17弧20p‐DHPが 初 期 卵 形 成 を 制 御 し て い る と 考えられた。

  最 後 に 、 上 記 のE2及 び17呱20p゜DHPの 初 期 卵 形 成 で の 制 御 機 構 の 違 い を調 べた 。先 ず、 卵原 細胞 が活 発に 増殖 して いる時 期、 減数 分裂 に移行する 時期 、ほ ぼ全 ての 生殖 細胞 が減 数分 裂を 開始 してい る時 期及 び排 卵時のイト ウ の 血 中17a,20p‐DHP量 を測 定し たと ころ 、卵 原細 胞が活 発に 増殖 して い る時 期や ほぼ 全て の生 殖細 胞が 減数 分裂 を開 始して いる 時期 に比 ベ、減数分     ―1515―

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裂に移行する時期での血中17a, 20p‑DHP量は有意に高値を示した。このこ とから、17a, 20p‑DHPは減数分裂への移行に深く関与していると考えられ た。次に、生体外器官培養実験での対照群、E2添加群及び17a,20p―DHP添 加群のDNA合成を 行っている生殖細胞の核の面積並びにシナプトネマ構造 を有す る卵母細胞 の割合を計測し、それらを比較したところ、DNA合成を 行っている生殖細胞の核の面積は、E2添加群では対照群と比較して変化は 見られ なかったが 、170c, 20p‑DHP添加群では、対照群、E2添加群と比較 し、有意に高値を示した。また、シナプトネマ構造を有する卵母細胞の割合 は、E2添加群では対照群に比ベ有意に低値を示したのに対し、17a,,20p―DHP 添加群では、対照群、E2添加群に比ベ有意に高値を示した。これらのこと か ら、E2添加 群では、増 殖中の卵原 細胞がDNA合成を行っ ていて、17a, 20p‑DHP添 加群では、 減数分裂に 突入した染 色仁期の卵母細胞がDNA合成 を行っ ていること が推察され、E2と17a,2013‑DHPは初期卵形成過程で異 なる制御機構を示すと考えられた。

  以上の 結果より、GTHがステロイドホルモンの産生を介して魚類初期卵 形成制御に作用すると考えられた。また、E2は卵原細胞の増殖を誘導し、

17a, 20p‑DHPは卵原細胞から染色仁期の卵母細胞へと分化する際の減数分裂 を誘導していることが明らかとなり、これらの性ステロイドホルモンが魚類 初期卵形成を制御することが示された。

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学位論文審査の要旨

主査    教授    山内晧平

副査    教授    三浦    猛(愛媛大学)

副査    教授    原   彰彦 副査    助教授    足立伸次

     学位論文題名

Studies on the endocrlneCOntr01nleChaniSm     OfearlyOOgeneSlSlnfiSh

     (魚類卵形成初期の内分泌制御機構に関する研究)

  配偶子形成の制御機構の詳細を調べることは、有用生物資源の人工種苗生産技術を 開発、或いは改良する上で、非常に重要である。雌の配偶子形成過程である卵形成に 関する内分泌制御機構は、第ー滅数分裂の再開から卵成熟までは詳細に解明されてい るが、卵原細胞の増殖から周辺仁期の卵母細胞に至る初期卵形成に関しては、一部の 脊椎動物を除いてほとんど解明されていない。その原因のーっとして、多くの生物種 の卵形成が、発生の極初期に、直ちに第ー滅数分裂の前期にまで違してしまうため、

初期卵形成制御機構を解明することが困難であることが挙げられる。そこで本研究で は、卵形成の進行が比較的遅いと考えられるマツカワ( Verasper moseri)及びイ卜 ウ( Hucho perryi)を実験モデルとして選び、初期卵形成過程を組織学的に観察する とともに、その制御機構を内分泌学的に解析した。

  先ず、マツカワの初期卵形成過程を、光学顕徽鏡及び電子顕徹鏡により観察した。

光顕観察の結果、全長7 cmでは、卵原細胞加卵母細胞かの区別がはっきりしない核 が凝縮した生殖細胞が観察され、電顛観察の結果、それらの細胞は、核内にシナブ卜 ネマ構造を持つ第ー滅数分裂前期の卵母細胞であり、この時期に、卵原細胞は減数分 裂へと移行し、卵母細胞となることが明らかとなった。また、マツカワの卵原細胞の 増殖 及び 滅数 分裂開始時期をDNA合成を指標として詳細に翻べたところ、全長Scm と7cmで多数 の生殖細胞がBrdUを取り込んでおり、盛んにDNA合成を行っていた。

さらに、DNA合成している生殖細胞の核の面積を計測し、各全長での核の大きさとそ の割合をヒス卜グラムにして比較したとこる、全長S cmでは核の面積が小さい生殖 細胞でDNA合成が盛んに行われていたが、体成長が進むにっれて核の面積が大きな生

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殖細胞でDNA合成が盛んに行われていた。以上の結果から、マツカワの卵巣では、全 長S cmで卵 原細 胞が 体細 胞分裂 により活発に増殖しており、全長7 cmで卵原細胞 は 減 数 分 裂 を 開 始 し 、 卵 母 細 胞 と な る こ と が 明 ら か と な っ た 。   初期卵形成過程での卵原細胞増殖時の体細胞分裂や卵母細胞へ分化する際の滅数分 裂は、生殖腺刺激ホルモン(GTH)等の内分泌制御因子が関与していることが示唆さ れているが、その詳細は明らかではない。そこでまず、GTHが初期卵形成制御に与え る影奮及びGTHの作用がステロイドホルモンの産生を介しているか否かをイ卜ウの生 体外卵巣器官培養法により翻べたところ、GTHが含まれるサケ脳下垂体糖タンパク面 分(SPG)添加群では、対照群に比べDNA合成を行っている生殖細胞の割合は有意に 増加していた。一方、3b‑水酸基脱水素酵素の阻害剤である卜リ口スタン(Tri)単独 添加群、SPGとTriの複合添加群でのその割合は、対照群と比較し有意に滅少してい た。以上の結果、GTHが卵巣に作用し、卵巣で合成されたステロイドホルモンが初期 卵形成を制御していることが示唆された。次に、初期卵形成過程でGTHの作用により 産生されると考えられる内分泌制御因子として、性ステロイドホルモンであるエス卜 ラジ オール‑17b(E2)、17a,20b‑ジハイドロキシ‑4‑ブレグネン‑3‑オン(17a, 20b‑DHP)及び11‑ケ卜テス卜ステロン(11‑KT)が初期卵形成の制御に与える影響 を生体外器官培養法により翻べた。その結果、11‑KTは初期卵形成に作用せず、E2 及び17a,20b‑DHPが初期卵形成でのDNA合成を制御していた。

  最 後に、 上記 のE2及び17a,20b‑DHPの初期卵形成での制御機構の質的な運いを 調べた。先ず イトウの血中17a,20b‑DHPIを測定したところ、卵原細胞が活発に 増殖している時期やほぼ全ての生殖細胞が減数分裂を開始している時期に比ぺ、滅数 分裂に移行する時期での血中17a,20b‑DHPIは有憲に高位を示した。また、生体外 器 官 培養 実 験 で の 対 照 群 、E2添 加 群及 び17a,20b‑DHP添 加群 のDNA合 成を 行っ ている生殖細胞の核の面積並びにシナプ卜ネマ構造を有する卵母細胞の剖合を計測し、

それらを比較したとこる、前者は、17a,20b‑DHP添加群で、他の群と比較し、有意 に高値を示した。また、後者は、E2添加群では対照群に比べ有意に低位を示したの に対し、17a; 20b‑DHP添加群では、他の群に比べ有憲に高値を示した。これらのこ とか ら、E2添加 群で は、 増殖中 の卵原細胞が、17a,20b‑DHP添加群では、滅数分 裂に 突入し た染 色仁 期の 卵母細 胞が それ ぞれ 盛んにDNA合成 を行 っており、E2と 17a,20b‑DHPは 初期 卵形 成過程 で異なる制御機構を示すことが明らかとなった。

  上 記のよ うに 、本 研究 では、E2が卵原細胞の増殖を誘導し、17a,20b‑DHPが卵 原細胞から染色仁期の卵母細胞べと分化する際の減数分裂を綉導していること等、魚 類卵形成初期の内分泌制御機構に関する新たな知見が数多く得られた。これらの結果 は、今後、魚類の早期成熟等、新しい人工種苗生産技術を確立するために極めて童要

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な知見を提供したものとして高く評価され、本諭文が博士(水産科学)の学位を授与 される資格のあるものと判定した。

参照

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