博 士 ( 薬 学 ) 阿 部 英 樹
学 位 論 文 題 名
Mechanisms of virus inactivation by photosensitization
(光 増感作用 によるウイルス不活化の機序)
学位 論文内容の要旨
光増感 作用に よるウ イルス 不活化 におい て,ウ イルス構 成成分 の傷害 の程度 と感染性低下と の 相関 関 係 を 定量 的 に 検 討し た . また ,メチ レンブ ルー(MB)に よるウ イルス 光不活 化におい て,光 増感作 用のタ イプI及 びタイ プn機構 の関与 を,主と して分 子状酸 素の必 要性の点から検 討 し , ま た ウ イ ル ス 不 活 化 効 率 に 影 響 を 及 ぼ す 因 子 に つ い て も 検 討 を 行 っ た . 親水性 の光増 感色素 としてMBとアル ミニウ ムフタ ロシア ニン四 硫酸塩(AIPcS4)を,疎水性色 素 とし て メ ロシア ニン540 (MC540)とアル ミニウ ムフタ ロシア ニン(AIPc)を 用い, 比較検 討し た ,M13フ ァ ージ懸濁 液に各 種色素 を添加 し光照 射した ところ ,MBとAIPcS4では照射 量依存 的 にM13が 不 活 化 され た . そ の時M13遺 伝 子一 本 鎖 環 状DNA (sc‑DNA)画分は 減少し,DNA鎖切 断 により 直鎖状(sl‑DNA)へと 転換し た,こ の転換は 熱ピペ リジン 処理に より促 進された.sc‑DNA の 残存 率 は ウイル ス生存 率と良 く相関 し,抽 出DNAを熟 ピペリ ジン処 理した場 合によ り1対1の 対 応に 近 づ ぃ た.MB及びAIPc S4光 処理 によるM13コート 蛋白質 の変化 は,SDS‑PAGEでは検 出 さ れな か っ た .一 方 , 疎 水性 色 素 で あるAIPcとMC540で は ノ ンエン ベロー プウイ ルスで ある M13は不活化されず,DNA及ぴタンパク質の変化はみられなかった.
エンベロープウイルスvesicular stomatitis virus (VSV)はMB,AIPcS4及びAIPcにより不活化さ れ,宿 主細胞Vero cellの細 胞膜と の融合 能も阻 害された .しかし,例えばMBの場合,融合能低 下の程度は43% (0.76 loglo)であり,そのときのウイルス不活化率99.998% (4.7 l09io)に比べて非 常 に小 さ か った. 一方,vsv感染は 宿主細 胞のエ ンドサ イトー シスに より起こ ること からこ の 融合能 をみた ところ ,いず れの色 素の光不 活化処 理にお いても 未処理 のもの とほとんど違いは みられ なかっ た.ま た,ウ イルス タンバク 質にも 際だっ た変化 は認め られな かった.これらの 結 果は , 親 水性及 び疎水 性いず れの色 素によ るVSV不活 化にお いても ,エンベ ロープ あるい は タンバク質以外の標的が重要であることを示唆する.
MB光増 感はタイ プII機 構により 一重項 酸素(102)を産 生する が,102がウイル ス不活化に直 接 関与 し て いるか 否か不 明な点 も多い .M13不活 化は102の 消去剤 であるN3‑により 阻害さ れ,
102の寿 命 を 延 長す るD20中 で促 進 さ れた. このこと はMBに よるM13光 不活化 に102が関 与して い るこ と を 示す. またウ イルス 懸濁液 からArバ ブリン グによ り溶存酸 素を除 去する とM13不活 化が抑 制され ,この 反応に は分子 状酸素が 必要で あるこ とが判 った. しかし ,脱酸素条件にお いても 不活化 が起こ ったこ とから ,酸素非 依存的 な不活 化機序 の存在 が示さ れた.即ち,MB光 増 感に よ るM13不活 化 に は タイ プI及 びタイ プIIの両 機構が 関与し ている 可能性 が示さ れた.
MB光 増感 に よるM13不 活化に 影響を 及ぼす 外的因子 として ,ウイ ルス懸 濁液のpH及び温 度の 効 果を 検 討 した.M13不活化 はpHの影 響を受 け,中 性に比 ぺ酸性 でより 遅く, 塩基性 でより速 く不活 化され た.こ のとき 不活化 曲線はシ グモイ ド型に なり, 変曲点 はpH 7.25であった.M13 は室温(24゜C)に 比ベ低温 (6°C)でより 遅く,高 温(38°C)でより速く不活化された.螢光色素 YOYO‑1を用 いてウ イルス 粒子内へ の色素 の浸入 を検討 したところ,4°C‑370Cの範囲では,色素 の 浸入 速 度 及 ぴDNAと の 結 合量 に 違 いは認 められ なかっ た.一 方,MB光 増感に よる102産 生の 温度依存性を2,2,6,6‑tetramethyl‑4‑piperidone (TMPD)をスピントラップ剤としたelectron spin resonance (ESR)で 検討し たとこ ろ,102産 生は温 度依存 性を示さないこと,しかし102とTMPDの
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反応は温度依存性を示すことが判った.これらの結果から,MB光増感によるMI3不活化の温度 依存性は,より高温において102とウイルス構成分子との反応性が高まった結果であると考えら れた.
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学位 論文審査の要旨
主査 副査 副査 副査
教 授
加 教 授
栗 助 教授
三 講 師
宮
茂 直 樹 原 堅 三 宅 教 尚 内 正 二
学 位 論 文 題 名
Mechanisms of virus inactivation by photosensitization
(光 増感作用 によるウイルス不活化の機序)
本 学 位 論 文 は 英 文 で 書 か れ て お り 、 序 論 、 第
1章 、 第
2章 、 第
3章 、結 語の
5つの 部分から なる論文 である. 序論では 、輸血にお けるウイ ル スの不活化 の重要性 が述べら れている .ウイルス感染血液を輸血すると い う事故は検 査法の改 良により 著しく減 少している.しかし、検査法が抗 体 検査である ので、感 染してい ても抗体 が出来るまでの間の献血であれば 検 査に合格す ることに なる.ま た、未知 のウイルスが存在している恐れも あ る. このよう な可能性 を少しで も小さく する方法 の1 っとして ウイルス の 不活 化がある .不活化 の
1つの方 法として 紫外線照 射や可視光 による光 増 感作用の利 用があり 、それに よるウイ ルスや血球細胞への効果に関する 過 去の研究が レピュウ されてい る.ウイ ルスの光不活化の過去の研究は、
遺 伝子の傷害 、夕ンバ クの変性 、またェ ンベロープウイルスにおいては脂 質 エンペロー プの傷害 が起こる こと等が 報告されているが、ただ傷害が起 こ ることを調 べたにす ぎないで 、それら の傷害の程度とウイルス不活化や 感 染性低下と の相関関 係を定量 的に考察 した論文はなかった.また、疎水 性 色素が脂質 膜をもつ エンベ口 ープウイ ルスしか不活化出来ないことの理 由 はよく分か っていな い.この ように、 問題点、解決すべき点が本章で述 べ られている .