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農業産業における効果的な ブランデイングに関する事例研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 国 際 広 報 メ デ イ ア ) 徐    在 完

学 位 論 文 題 名

農業産業における効果的な ブランデイングに関する事例研究

―ブランド化のプロセスとアクターの役割―

学位論文内容の要旨

  一 般製 品のプラ ンド化ではその企業がプラン ド・アクターであり、その 企業単位でブランド化が行わ れてい る 。 そし て、ブラ ンドの価値をいかに形成し、 誰がどのように管理し、い かに強化するのかという戦略 がブラ ン デ ィン グの発展 段階別に研究され、具体的ブ ランド・マネジメントまで 構築されている。これに対し 、農業 に お いて は生産者 と生産者団体などのミクロ・ アクターと、中央行政、都 道府県たどマクロ・アクター と地方 自 治 団体 、ホクレ ンのようなセミ・マクロ・ア クターが共存しているため 、ブランド化を行うこれらの 主体の 役 割 が不 明確にな りがちである。さらに、これ らのアクターが共通の目標 を持っていなかったため、ー 体感を 伴 っ たブ ランディ ングが行われてこなかったの である。その三つのアクタ ーが混在しながらブランド化 が進ん で い る農 産物ブラ ンド化において、発展段階別 の明確なアクターの役割分 担と具体的な戦略の設定は効 果的な 農 産物ブランディング形成に おいて非常に重要な課題のひ とつである。

  本 研究 は4つの 具体 的な 事例 を 分析すること によって、農産物ブランド 化においてはどのようなプロ セスで 展 開 され るべきで あるかを明らかにすることを 基本的な目的とする。その プロセスとはブランド化の対 象の選 択 、 ブラ ンド 化の 目 的、 具体 的な 戦略である 。まず、本研究で取り上げて いる4つの農産物がなぜその 地域で ブ ラ ンド 化対象に 選択されたのかを@その地域 が置かれている環境と◎そ の農産物が持っている性格を 中心と し て 明ら かにする 。そして、選択された農産物 に対し、ミクロ・アクター とマクロ・アクターは、どの ような 目 的 を構 築し、ど の段階で、どのアクターが、 具体的にどのような戦略を 展開すべきかを明らかにする 。さら に 、 農産 物のブラ ンド化を通じて地域ブランド の形成や地域活性化を図ろ うとしている地域にとっては どのよ う な 性格 を持って いる農産物を選択すべきか、 それによって、どのような アクターが中核的な役割を果 たしな が ら 展開 すべきか を明らかにする。そのため、 本研究ではまず、農産物ブ ランド化のプロセスにおいて 各アク タ ー の役 割や関与 度を明らかにすることによっ て、より具体化された戦略 とその展開の方向性を提供す ること を 試みした。

  本研究では4つのケースを商 品の性格によってさらに「 コモディティ」と「セレプレ ティ」農産物に分類し、

各 々 のケ ースをブ ランド開発期、成長期、成熟 期という発展段ステージに 分けて分析を行っている。分 析の結 果 からみると各発展ステージ 別にブランド・アクターの役割や関与度が異をっていることが分かった。まず、「コ モ ディティ」農産物である「 きらら397」「ほしのゆめ」 と「鉄原米」はブランドの開 発期においてマクロ・ア ク タ ーは ブランド 開発の核心でもある品種の開 発や導入の役割を果たして いるのがわかった。これは当 然であ

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りな がら 、 自然 的な 不利 な条件、歴史や消費者の 認識度の欠如、既存市場の参 入障壁、代替作物の不在な ど、

様々 な要 因 によ って ミク ロ・アクターが展開する には困難性が多く、また、マ クロ・アクターは安定的な 食料 の供 給や 地 域維 持、 農業 産業の多様強機能の維持 及び発展のためブランド化を 展開する必要性が高いため であ る。しかし、「セレブ レティ」商品ではブランド開 発期からミクロ・アクター による品種の改良や導入が見られ てい る。 こ れは ミク ロ・ アクターがブランド化の 開発段階から品種の差別化戦 略が最も核心な要素である こと を認 識し な がら 展開 して いるためである。っまり 、セレブレティ商品の場合に は消費者の健康や環境に対 する 意識 変化 に よっ て価 格よ りはブランド化された農 産物が求められており、その ニーズを明確に分析し、品 質差 別化 によ っ ては 十分 な競 争カを持つことが可能で あるというブランド化に対し てのモチベーションが高い ため である。

  ブランド化の成長期 には「コモディティ」の場合はミクロ・アクターの役割は大きくなり、「セレブレティ」の 場合 はマ ク ロ・ アク ター の関与度が増えているこ とがわかった。マクロ・アク ターによって品種の開発や 市場 への 参入 が でき てき た「 コモディティ」農産物は 成長期においては品質の向上 が求められており、生産農 家や 農協 を中 心 とし たミ クロ ・アクターは栽培マニュ アルの導入による均等な品質 生産、生産された商品を差 別化 された保管方式や流通 システムによって積極的に品 質向上戦略を行っている。 「セレブレティ」商品の場合は今 まで なか っ た新 しい 商品 のため、市場導入が難し くミクロ・アクターのみの戦 略では限界が生じるため、 マク ロ・アクターの支援を 受け入れながら展開する必要 がある。「夕張メロン」の ようにホクレン、北海道が支援し てい る物 産 展や 東京 市場 に参加する際に行った中 核的なコーディネーターの役 割をマクロ・アクターが行 わな ければならないのであ る。

  ブランド化の成熟期 には「コモディティ」と「セレブレティ」共にミクロとマクロ・アクターが有機的なシステ ムを 形成 し なけ れば なら ない。そのなか、マクロ ・アクターの役割として持続 的な高い品質向上のため、 品種 の改 良や の 土壌 改良 、低 農薬システムの開発など ハートウェア的な面に集中す るのが効果的であり、ミク ロ・

アク ター は 安定 的な 販売 先の開発、安定的な生産 と供給といったソフトウェア 的な面に集中する必要があ ると 考え られ る 。こ のよ うに 農産物のブランディング は発展ステージによってブラ ンド・マネジメントの内容 が変 わり、アクターの役割 も異なって行わなければなら なぃ。っまり、「コモディ ティ」の場合はマクロ→ミク ロ‑

マクロ十ミクロの形態 で、「セレブレティ」の場合 はミクロ‑マクロ→ミクロ十マクロのようにプランディングの アクターの中心が変化 しながら発展していると考え られる。

  さ らに 、 本研 究で は4つの ケー スか ら 得ら れた 示唆点のなかで、ある地域が 農産物を中核のプロダクト とし て地 域ブ ラ ンド を展 開す る場 合 、行 わな けれ ぱな らない戦略を提示している 。もし、ある地域の特性が第4章 のよ うな 性 格を 持っ てい れぱ、コモディティ農産 物を中核商品としたブランド 化を展開するのが有効的で ある だろ う。 そ の際 、初 期段 階ではその農産物の性格 上、マクロやセミ゜マクロ・ アクターが主なブランド・ アク ター とし て の役 割を 果た すべきであり、セレブレ ティ農産物を中核商品として 選択した場合は、ブランド 化を 展開 する 際 、ミ クロ ・ア クターが主なアクターと して初期展開されるのが効果 的であるといえるだろう。 しか し、ブランド化の初期 段階においてミクロとマクロ それぞれのアクターが、「 地域ブランド形成」という形で同 じビジョンを共有する ことができれぱ、農産物の品 種や品目の垣根を越え、3つ のアクターの信頼関係がよ り早 く構 築さ れ 、ひ とつ の組 織のように連携しながら ブランド化を展開することが できる。その意味で農産物 をめ ぐる 地域 ブ ラン ド戦 略は 、地域産品のポートフォ リオを構想するカギであると 言えるだろう。また、地域 ブラ ンドを利用する場合は(1)対象商品に対する地域ブ ランドが形成されてない場合 は、別の商品のブランド・ イメ ージ や地 域 イメ ージ を最 大に利用する戦略を展開 しなけれぱならない。また、 ほとんど地域ブランドが形 成さ

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れてない場合はひとつの農産物に集中し、生産・ブランド化することによって、地域プランドを形成しながら さらに、形成されつっある地域ブランドを利用する必要があると考えられる。そして、(2)地域プランドや商品 イメージが形成されている場合は、そのイメージを維持するのが重要であり、そのためには、さらに高度化さ れ た差別化 戦略を 考え、そ のイメー ジを生 かした「ブランド拡張」などを展開しなけれぱなら詮い。

  本研究は農産物のプランド化を展開しようとしている地域やアクターには具体的な戦略とプロセスを提供し ており、農産物ブランド論を研究している研究者にも新しい視点を提供することができ、その面では大きな意 義があると考えられる。今後の課題としては地域ブランドの視点から様々な類型の事例を研究することで、よ り 具 体 的な ブ ラ ンデ ィ ン グ戦 略 と 農産 物 ブ ラン ド と 地 域ブラ ンドの相 互関係 を明らか にした い。

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l

.本論文の概要

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査    教 授    小早 川    護 副査    助 教授    伊 藤直 哉 副査   客員教授   北村倫夫

     学 位 論 文 題 名

農 業 産 業 に お け る 効 果 的 な ブ ラ ン デ イ ン グ に 関 す る 事 例 研 究

― ブ ラン ド 化 のプ ロ セス と ア クタ ー の役 割一

  

本論 文は、日 本と韓国の 農業産業 において 、比較事 例分析に より、農 産物ブラン ディ ング の手法、 ブランド化 プロセス における アクター の役割分 担明確化 、地域の作 物選択 とそ の地域振 興戦略の方 向性を明 らかにし 、これま で十分に 研究が行 われてこな かった 農業 産業にお けるブラン ド理論を 進展させ ることが 狙いであ る。企業 がブランド 化のた めの 主たるア クターであ る一般製 品の場合 と異なり 、農業に おけるブ ランド化の アクタ ーは 、生産者 と生産者団 体、流通 業者、企 業ぬどの ミクロ的 主体と、 行政、自治 体など マク ロ的主体 とが共存し ているた め、ブラ ンド化の 実行主体 が不明確 になりがち であっ た。また 、これら 農業をとり まくアクター間では、共通のビジョンを持つことも難しく、

実践 の場面に おいても明 確な目標 と役割分 担、及ぴ 各アクタ ーの行動 指針が必要 とされ てい た。本論 文は、農業 を取り巻 くマクロ 環境が類 似してい る日本と 韓国のケー スを取 り 上 げ 、 両 国 へ 向 け た イ ン プ リ ケ ー シ ョ ン を 提 出 し よ う と し て い る 。

  

論文の構 成は以下 の通りであ る。

1

章は 序 論と し 、 研究 の 背景 と 問 題意 識 、 研究 の 目的 に っ いて明示 している。 第

2

章 では 農業産業 の必要性と 消費者の ニーズを 取り入れ た農産物 ブランド 化の現状が 明らか にさ れ る。 第

3

章 で は、 先 行研 究 の分析に よって一 般産業の ブランデ ィングと農 業産業 のブ ラ ンデ ィ ン グの 異 な る点 や 特徴 が 明 らか に され る 。 第

4

章と第

5

章 では、農産 物ブ ラン ディング にあたって 、各アク ターがど のような 戦略を持 って展開 すべきかを 明らか にす べ く、 農 産 物を

4

つ の カテ ゴ リーにわ け、各カ の代表的 なケース を選定した 上で、

発展 段 階別 に 応 じた ア ク ター 分 析を行っ ている。 第

6

章では 、農産物 を通じた地 域活性

化を 図 るた め の 方策 が ま とめ ら れている 。第

7

章で は、研究 全体を総 括し、論文 の要約

と課題が 述べられ る。

(5)

2. 本 論 文 の 評 価す べき 点と 問題 点

  審 査 委 員 会 に よ る 質 疑 応 答 を 通 し 、 本 論 文 に は 以 下 の 評 価 す べ き 点 が 指 摘 さ れ た 。 第 一 の 点 は 、 「 コ モ デ ィ テ ィ 」 と 「 セ レ ブ レ テ ィ 」 に 農 産 物 を 分 類 し 、 各 々 の ケ ー ス を ブ ラ ン ド 開 発 期 、 成 長 期 、 成 熟 期 と い う 発 展 段 階 ス テ ー ジ に 分 け た 分 析 を 行 っ た こ と で 、 各 段 階 に お け る ア ク タ ー 関 与 の モ デ ル 化 及 ぴ そ の 汎 用 性 を 示 す こ と が 可 能 に た っ た 点 で あ る 。 本 論 文 の 分 析 結 果 に よ る と 、 各 ス テ ー ジ 別 に ブ ラ ン ド ・ ア ク タ ー の 役 割 や 関 与 度 が 異 な り 、 さ ら に コ モ デ ィ テ ィ と セ レ ブ レ テ ィ と で は 、 メ イ ン の ア ク タ ー の 役 割 の 比 重 に 大 き な 違 い が あ る こ と が わ か っ た 。

  第 二 に 評 価 す べ き 点 は 、 地 域 が 農 産 物 を 通 じ て 活 性 化 を 図 ろ う と す る 時 、 地 域 は ど の よ う な 農 産 物 を 選 択 し 、 ど の よ う な 戦 略 に よ っ て 発 展 の 方 向 性 を 定 め る か 、 一 定 の モ デ ル 化 を 提 示 で き た 点 で あ る 。 農 産 物 ブラ ンド 化に おい て、 各ア クタ ーが 持っ てい る「 強 み」

を 生 か し つ つ 、 発 展 プ ロ セ ス ご と に ブ ラ ン デ ィ ン グ 戦 略 を ど の よ う に 展 開 す る の が 最 も

「 効 果 的 」 で あ る か に っ い て 、 地 域 の 環 境 と 結 ぴ っ け た ガ イ ド ラ イ ン を 提 出 し た こ と は 、 農 業 経 済 論 や 農 産 物 に よ る 地 域 振 興 論 に 新 た な 研 究 パ ラ ダ イ ム を 提 供 し た と 言 い 得 る 。   し か し 、 そ の 一 方 で 、 本 論 文 に は 以 下 の ニ っ の 問 題 点 が 存 在 す る こ と も 指 摘 さ れ て い る 。 一 点 目 は 、 農 産 物 を ブ ラ ン ド 化 す る ア ク タ ー と し て 、 大 手 流 通 業 者 や 食 品 関 連 の 大 企 業 の 影 響 を 考 慮 し た か っ た 点 。 第 二 は 、 農 産 物 ブ ラ ン ド 化 に よ る 地 域 振 興 戦 略 の 方 向 性 は 描 か れ た も の の 、 具 体 的 な 戦 術 レ ベ ル の ア ク シ ョ ン ま で 導 き 出 せ て い な い 点 で あ る 。 と は い え 、 戦 略 の 方 向 性 と ア ク タ ー の 役 割 分 担 を 描 く と い う 、 本 論 文 の 当 初 の 目 的 は 達 成 さ れ て お り 、 こ れ ら の 問 題 点 は 、 著 者 の 今 後 の 継 続 的 た 研 究 に よ っ て 達 成 さ れ る べ き 点 と し て 確 認 さ れ 、 審 査 委 員 会 に よ り 了 承 さ れ た 。 ま た 、 審 査 段 階 に お い て 、 論 文 に 使 用 さ れ た 専 門 用 語 に 曖 味 さ が や や 残 っ て い る 旨 指 摘 さ れ た が 、 こ の 問 題 の 一 部 は 、 農 業 マ ー ケ テ ィ ン グ 及 び 地 域 ブ ラ ン デ ィ ン グ の 理 論 が 未 だ 成 熟 し て い ナ ょ い こ と に も 起 因 す る も の と 判 断 さ れ 、 著 者 が 可 能 な 限 り 用 語 の 定 義 に 一 貫 性 を 持 た せ る よ う 、 今 後 の 研 究 継 続 に 関 す る 注 意 事 項 と し て 指 摘 さ れ た 。 こ の よ う た 著 者 の 努 カ に よ り 、 今 後 、 こ れ ら の 学 問 領 域 に お け る 、 よ り 緻 密 栓 学 問 成 果 と し て 結 実 す る こ と が 期 待 さ れ る 。

3.結論

  よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 国 際 広 報 メ デ ィ ア ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

参照

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