金融革新とは何か*
片 山 貞 雄 1 はしがき 現在,金融革新(financial innovation)は金融に関する:專門分野の論文や論 説だけでなく,新聞やテレビなどのマスメディアでも広く使われる用語となっ ている。これに関する文献も内外の学術論文や金融誌の論説だけを取り上げて も枚挙にいとまがないといって過言ではない。 しかし,金融革新に関する問題の取上げ方は論者によって様々であり,金融 革新の概念についてもいまだ必ずしも見解の一致を見るに至っていないといっ てよいであろう。 本小稿は金融革新をいかに把握すれば良いかについての筆者の試論である。 II金融システムとその変化 金融革新とは最:近見られるように,種々の新しい金融商品が生みだされる状 況を指すという見解も少くないが,論者によって意見が異なるのが現状であり, 1) またその問題の取上げ方も様々である。 * 本小稿を吉田龍恵短期大学部名誉教授に捧げたい。本稿は同教授退官記念号に投稿の予 定であったが,本号に遅延したことについて寛容を乞うと共に,同窓であり長年の同僚で あった同教授の今後益々の健勝と活躍を祈念したい。 1)たとえば,W. L. Silber,“Towards a Theory of Financial lnnovation,”(Ch. 2)in W. L. Silber, ed., Financial lnnovation (P. C. Heath), 1975, pp.63一一一6, M. A. Akhtar, “Financial lnnovation and Monetary Policy : A Framework for Analysis,” in BIS, Financial lnnovation and Monetary Policy, 1984, pp.3n−14, E. J. Kane, “Mi− croeconornic and Macroeconomic Origins of Financial lnnovation,” in Federal Reserve Bank of St. Louis, Financial lnnovation ; Their lmPact on Moneta7 y Policy /本来,金融とは「かね」の融通を意味し,それを貸手側より見れば「かね」 の貸付取引ないし運用であり,借手側より見れば「かね」の借入取引ないし調 達である。 このように,金融は本来,個々の経済主体問で行われるミクロ経済的行動で あるが,この問題を多少とも体系的に展開するために,視点を広げて金融は次 の4つの要素から構成されるとしよう。つまり, 2) (1)取引行為者(最終の貸手と最終の借手および両者の金融仲介を行う銀行 とその他金融機関)。 (2)取引手段(銀行券,銀行預金,手形,公社債,株式等であり,これらは 債務証書(obligations)と呼ばれ,発行者から見れば負債であるが,保有者か ら見れば資産である)。 (3)取引方法(たとえば,直接金融と間接金融)。 (4)取引の場(たとえば,短期金融市場と長期金融〔資本〕市場)。 ところで,システム工学を社会現象に適用するシステム科学の立場に立って, システムとは,ある目的を達成するために上述のように相互に関連をもった複 数の要素から構成され,しかもそこに何らかの秩序ないし規律が存在するもの 3) であると定義すれば,金融を1つのシステムとして把握することができるであ x and Financial Markets (Kluwer−Nijhoff), 1984, pp.3−19, J. R. Zecher, “Financial Innovation in the 1980s,” ibid., pp. 151一一62, BIS, Recent lnnovation in Jnternational Banking, Apr.1986, esp. Part IV,館龍一郎『金融再編成の視点』(東洋経済新報社), 1985,2 一一 14ページ,蝋山昌一『金融自由化』(東大出版会),1986,4章参照。 2)周知のように,最終の貸手とは貯蓄が投資を越える単位または部門を意味し,黒字単位 (部門)ないし資金余剰単位(部門)と呼ばれ,一方最終の借手とは逆に投資が貯蓄を越 える赤字単位(部門)ないし資金不足単位(部門)であり,前者の余剰資金が後者に流れ るよう金融仲介するのが銀行を中心とする金融機関である。 3)高木結一「システム科学一学問総:合化の思想と方法』(筑摩書房),1972,1∼2章,渡 辺茂・須賀雅夫『システム工学とは何か』改定版(NHKブックス),1977年,1章参照。 なお,B. S. Frey, Modem Political Economy(M. Robertson),1978, pp.44∼48;加藤寛 監訳「新しい経済学一ポリテイコ・エコノミックス入門』(ダイヤモンド>1980,50∼56ペ ージも参照。筆者はこの視点を国際通貨制度の分析にも適用した。拙稿,「国際通貨システ ムに関する一考察」『国民経済雑誌』160巻3号(1989年9月),1∼21ページ参照。
金融革新とは何か 3 ろう。 4> 上述の金融システムは閉鎖体系として捉えられているので,政府や海外との 関係を考慮に入れた開放体系として考察することが必要であろう。しかし,わ れわれのモデルでは,政府や海外との関係をシステム外の要素として扱い,そ れらの行動やその変化がシステム内の要素とシステム自体にインパクトを与え ると考えよう。政府は従来,銀行を始めとする金融業に対して強い規制を加え てきたが,近年その緩和が世界的な状況となってきた。また対外経済取引が拡 大し,外国経済との相互依存関係が強まるにつれ,海外から受ける影響も増大 した。このように,一国の金融システム外の要素として次の4つを挙げること ができるであろう。 (1)自国政府の行動(行動の具体的内容は法的拘束力をもつ規制の変更一緩 和と強化一だけでなく行政指導の変更も含む)。 金融機関,特に銀行はマネーサプライの大きな割合を占める預金の創出者で あり,国民経済に対して大きな影響を与えるので,その設立の認可を含み政府 の強い規制を受けてきた。しかし,アメリカ,イギリスを始めとする先進主要 国ではこの分野の規制緩和により金融の自由化が促進され,わが国でも同様な 方向を歩んできたことは周知の事実である。 (2)技術進歩(コンピュータリゼーション)。 金融機関の業務や金融機関間のネットワークにコンピューターが広く使用さ れるようになり,キャッシュサービスや送金・振替および小切手の集計など決 済業務が飛躍的に迅速かつ便利になり,コンピュータリゼーションの結果,新 しい金融商品の開発が可能となった。 (3)海外要素:外国の金融システムの変化と外国政府の行動。 外国の金融システム,特にアメリカやイギリスなど主要国の金融システムの 4)もちろん,われわれと異なった形で金融システムを定義することは可能である。たとえ ば,蝋由昌一氏は「どのような金融手段が,誰にとって,どの程度まで利用可能であり, それぞれの金融手段の需要と供給がどのように調整されるか。これらの問題に関する社会 的規範の体系が金融システムにほかならない,」とする。蝋山前掲書,65ページ。
4 彦根論叢第272号 変化(自由化の進展)はわが国の金融システムに影響を与えるようになる。わ が国にとってはアメリカの金融システムの変化が経済のメカニズムを通じてわ が国の金融システムに影響を与える経路よりも,むしろアメリカ政府の行動(日 5> 6) 本の金融自由化や国際化の一層の進展を求める要請や圧力)という非経済的な 経路の方が大きく作用してきた。もちろん,アメリカ政府のこのような行動は アメリカ自身の金融自由化の進展が基礎にあるので,全く非経済的要因による ものではない。このようなアメリカ政府の行動が日本政府に対してインパクト を与え,日本の金融自由化・国際化が促進されることになる。いずれにせよ, アメリカ政府の行動様式は日本の金融自由化・国際化がアメリカに近づくまで 今後もあまり変わらないであろう。 (4)激しいインフレ予想一インフレ予想の変化一 世界的規模でのインフレーションが云々されだしたのは1960年代後半から70 年代の初めで,これを決定的にしたのは73一 4年に起った第1次石油ショック であった。このようにして発生した世界的なインフレーションは各国に激しい インフレ予想をもたらし,名目金利が上昇した。資本主義経済の下では,戦時 中などの特別の時期を除きすべての経済取引が規制ないし統制されることはあ りえない。この点は他の産業と比べ政府の規制を強く受けてきた金融の分野で も同様であり,規制を強く受ける分野とあまり受けない分野が併存することに なる。たとえば,アメリカでは,かつて銀行の預金金利はRegulation Qによっ て上限を付けられていたが,一方この規制を受けない証券会社の金融商品であ るMMF(Money Market Mutual Fund)は当時の激しいインフレ予想を反映 し高利回りの金融商品となって,銀行から証券会社へと資金がシフトした。ま たわが国では臨時金利調整法と日銀のガイドラインによって預金金利は規制さ れてきたが,既発国債の流通価格は市場取引で自由に形成され,その流通利回 りはインフレ予想を反映して上昇し,そのような国債を組み込んだ高金利商品 5)金融自由化の意味については,次節参照。 6)金融の国際化が完全に進むと,金融に関する内外遮断の障壁が完全に消失するので,外 国からの参入(退出を含む)も外国への進出(引上げを含む)も完全に自由となる。
金融革新とは何か 5 (その代表として,比較的流動的で利回りの高い中期国債ファンドー中国ファ ンドーが挙げられる)が証券会社によって販売され,資金の同様なシフトの発 7) 生したこともよく知られている。このようにインフレ予想が高まると自由金利 と規制金利の較差が拡大することになる。 このような状況に直面し,アメリカでは銀行は証券会社に対抗してMMC (Money Market Certificate)やMMDA(Money Market Deposit Account) を開発し販売した。日本でもMMCが販売され,その最低単位が徐々に引き下 げられ現在50万円になっている。MMCはまた郵便局によっても販売され,利回 りを含む条件は銀行のそれと全く同一である。もちろん,わが国では新しい金 融商品の販売は大蔵省の認可が必要であるので,規制の問題と結び付いている ことは事実であるが,激しいインフレ予想がシステム内の要素の変化,つまり 規制金利商品に比べて有利な自由金利商品を生みだす大きなインパクトを与え たという意味でそれを重要なシステム外の要素の1つに挙げることが適切であ ろう。特にアメリカでは1979年10月の金融政策の運営目標を金利の安定よりマ ネーサプライの安定へと変更したことが当時のインフレ予想の増大による名目 金利水準の上昇に加えて,その乱高下をもたらし,これらは貨幣保有コストを 増加させることになるので,経済主体(システム内の要素の1つである「取引 行為者」)に現金ないしそれに類似の低利の金融資産から高利回りの自由金利商 品にシフトさせる誘因を与えた。このような状況は資産の調達・運用面におい ても種々の新しい商品や方法を生みだすという意味でシステム内の他の要素で ある「金融取引手段」や「金融取引の方法」にもインパクトを与えることにな る。つまり,激しいインフレ予想は金融システム内の要素にインパクトを与え, 7)日本では,これ以外に銀行預金から郵便貯金への資金シフトが起った。つまり,1977年 ∼78年度に公定歩合の引下げに応じて銀行の定期預金金利は引き下げられたが,郵貯金利 の引下げが遅れたので,銀行預金から郵便局の定額貯金への資金シフトが発生し,当時問 題となったことは良く知られている。詳しくは,「資金シフトと預金金利の自由化をめぐっ て」,『DKB調査月報』,(1984年10月),6∼7ページ参照。なお,拙稿「預貯金金利一元 化の基本問題一弾力的・機動的運営のための「場」の確立が望まれる」,『銀行実務』Vol. 11,No.7(1981年5月),10∼11ページも参照。このいわゆる金利決定一元化の問題はその 後解決され,このようなシフトは起こらなくなった。
6 彦根論叢第272号 システム自体を変化させる可能性をもっているといえるであろう。 このように金融システムを捉えると,システム自体の変化はシステム内の要 素の自生的変化よりむしろシステム外の要素の変化によって誘発される方が多 いであろう。詳言すれば,システム外の要素の変化がシステム内の単一の,ま たは複数の要素にインパクトを与え,それがモメントになってシステム内の要 素間相互に作用,反作用が起こることになる。このような現象が発生している ばあい,金融システムが変化したということができるし,その変化が効率性を 生みだしているときに,金融革新が発生したといってよいであろう。システム 外の要素が単独でなく複合的に作用し合ってシステム内の各要素にインパクト を与え,それに応じてシステム内の要素間にも複合的な作用・反作用が起って システム自体を変化させることになるであろう。たとえば,激しいインフレ予 想が規制を受けていない自由金融市場(短期,長期)の名目金利を引き上げ, そのような金融取引手段を組み込んだ金融商品は有利になり,一方伝統的な規 制金利の預貯金は不利となり,後者から前者への資金シフトが生じたので後者 の規制緩和をもたらすことになる。またコンピューター技術の発展はこれら一 連の魅力的な金融商品の開発など有利な資金運用だけでなく,借手にとって安 価な資金調達の方法の開発も可能にした。その結果,借手と貸手や両者を仲介 8) する金融機関の範囲が拡大され(種々のノンバンクの参入),これはまた既存の 金融市場の拡大だけでなく,新しい金融市場の創設をもたらすことになるであ ろう。こういつた状態は金融システム自体の変化を意味し,当然効率性が伴わ れているので金融革新が発生したといえるであろう。この効率性の意味とグラ フでの表示は分節で検討したい。 以上の関係は図1のようなシューマで示すことができよう。 8)アメリカでは,要求払預金業務および商業貸付業務を行う金融機関が銀行と定義(銀行 持株会社法)されているが,そのいずれか一方の業務を放棄して各種規制を回避しつつ事 実上の銀行業務を行う金融機関をnon−bank bankという。わが国では,ノンバンクとは銀 行や証券会社,保険会社のような免許事業の金融機関を除く金融関連会社(信販,り一ス, クレジットカード会社,消費者金融会社など)を指すことが多い。
金融革新とは何か 図1 金融システムとインパクトの作用・反作用の経路 金融システム
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○・要素・システム内・外の) ;=≧:作用(反作用)の方向 一一一ィ:弱い作用の方向!./@x“
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海外要素: 外国の金融システム︷
外国政府 III金融革新と金融自由化 金融システム内の要素: ①取引行為者︷
②取引手段 ③取引方法 ④取引の場 以上のように,金融システムの効率的な変化を金融革新と定義し,次にこの 効率性の問題を考察するが,その前に金融革新と共に広く使用されている用語 である金融自由化について若干言及しておきたい。 金融自由化とはそれに対応する英語の“financial deregulation”または “financial decontrol”からも明らかなように,「金融の規制緩和」ないし「廃 9) 止」を意味するが,それはシステム外の要素である「自国政府の行動」の変化 であり,それがシステム内の要素にインパクトを与え,その結果システム自体 の変化が効率性をもたらすばあい,既述のようにこれを金融革新と呼ぶのであ る。わが国では,良く2つの「コクサイ化」が金融自由化を促進させたといわ 9)日本の金融自由化を指して,Financial Liberalizationとレ・う用語を使用しているアメ リカの学者もいる。See T. F. Cargill,“Japan’s Financial Reform,”FRBSF PVeekly Letter, May 10, 1985.れている。その1つは,巨額の国債発行残高の累積が既発国債の利回りを市場 の実勢に近付けたことである。つまり,昭和50年代の低成長期に入り,国債の 大量発行と巨額の累積および銀行等金融機関の保有国債売却制限の緩和が国債 の流通市場の拡大を促し,その結果国債価格(利回り)は市場の実勢を反映す るようになり,これがまた新規発行債の利回りに影響を与えることになった。 このような既発国債を組み込んだ自由金利商品(既述の中国ファンドに代表さ れる)が預金金利規制の枠外にある証券会社によって販売され,その利回りは 対応する規制金利商品(銀行定期預金等)より有利となって銀行預金からの資 金シフトが発生し,これが銀行による対抗商品である既述のMMCを生み出す 原因となった。もちろん,中国ファンドにせよMMCにせよ,その発売は大蔵 省の認可を必要とするが,そのような認可を得ること自体規制緩和,つまり自 由化に向けての一歩前進といえるであろう。もっとも,このような高利回りの 金融商品の生まれる背景には,70年半以降のインフレ予想の増大や金融資産保 有の増加と共に人々がポートフォリオの多様性を求め,金利差に敏感となった ことも重要な要因として存在するのである。 もう1つの「コクサイ化」は金融の国際化であるが,金融市場の開放や円の 国際化の促進はわが国自身の積極的な行動よりむしろアメリカ政府の要請や圧 力,われわれのいうシステム外の要素(「外国政府の行動」)からのインパクト によって促進されてきたことは周知の事実である。 このように,わが国特有の2つの「コクサイ化」はシステム外の要素がシス テム内の要素にインパクトを与え,その結果既存の金融システムを変化させた のである。既述のように,このシステムの変化が効率性をもたらしたばあい, それを金融革新と呼ぶことができる。 ところで,効率性とは経済の構成メンバーの経済的厚生を極大にする(いわ ゆるパレート最適の達成)ことを意味し,そこでは資源の有効配分が達成され ている。このような有効配分は市場の価格メカニズムにより完全競争の下にお いて得られる。いま,経済の構成メンバーが消費者と生産者から構成されると すれば,完全競争下で消費者余剰と生産者余剰が極大になることは良く知られ
金融:革新とは何か 9 10) ている。これを金融革新や金融自由化に適用すれば,図2−Aの示すように,資 金の供給者(最終の貸手)と資金の需要者(最終の借手)の利益(生産者余剰 と消費者余剰)は完全競争の場合に最大(図2−Aのaebに囲まれた面積一以下 略記)となり,競争が制限されているばあいにはそれ以下(図2−Aのacbd)に なってしまう。いま,利子率が資金の需要(D曲線)と供給(S曲線)によっ て決定されるとすれば,わが国が戦後とってきた低金利政策は完全競争の下に おけるより低い利子率(r’)の維持を意味し,生産者余剰と消費者余剰の概念を 11) 適用して論ずれば,資金の貸手(新規発行証券の購入者または預金者)の余剰 は借手へと大きく移行する(図2−Aのrr’df)ことになる(借手の余剰はar’dc, 貸手の余剰はr’bd)が,全体としての余剰(図2−Aのabdc)は完全競争の場合 (図2−Aのaeb)に比べて小さい。また資金の需要者と供給者を仲介する金融機 関(銀行)の存在する間接金融方式では,金融機関の利鞘(r”一r’:仲介手数 12) 料,図2−B)は完全競争に近か付けば近か付くほど小さくなり,資金の需要者, つまり最:終の借手の借入利率は下落し,一方資金の供給者,つまり最終の貸手 の貸出利率ないし預金者の預金金利は上昇するので,金融自由化ないし金融革 新は借手と貸手双方に利益をもたらすことは図2−Aと図2−Bから明らかであろ う。したがって,金融自由化ないし金融革新は最終の貸手(家計)と最終の借 13) 手(企業と政府)の厚生を高めることになる。 10)館氏は金融革新を金融技術上の革新と定義し,本文のグラフと類似のグラフで説明する。 館前掲書,4∼7ページ参照。同書より示唆を得たことに謝意を表したい。ただし,生産 者余剰,消費者余剰を使っての説明は筆者によるものである。 11)貸手は資金の供給者であるので,その余剰は生産者余剰,借手は資金の需要者であるの で,その余剰は消費者余剰となる。消費者余剰および生産者余剰と効率性との関係やグラ フによる説明については,e.g., G.D. Filzpatrick, Microeconomics,New Theon’es and Old(Oxford Univ. Press),1986, pp.2∼5参照。 12)完全競争の下では,利鞘はゼロとなるが,これは静態のばあいであって,現実は与件の 常に変化する動態の世界であり,このような条件は達成されない。わが国では従来厳格な 規制が存在し,新規参入も厳しく制限されてきたが,本文にも記したように,金融自由化 の促進によって,より競争的な方向に向っていることは事実である。 13>周知のような,アメリカの政府部門は依然巨額の赤字が続いているが,わが国の政府部 門は旧国鉄等の民営化や赤字国債の圧縮のため,昭和63年度より黒字となった。
図2−A 完全競争下と不完全競争(低金 利政策)下における資金の需要 ・供給と利子率