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数学指導における「エラー教材」の研究 ―「エラー教材」の本質とその分類 ―

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数学指導における「エラー教材」の研究

―「エラー教材」の本質とその分類 ―

高 澤 茂 樹

* アブストラクト邦訳 本稿では、算数・数学の学習上での子どもたちのエラーを彼らの探究の跳躍台と捉え、エラーを 子どもたちの学びを飛躍させる教材として位置づけた。その上で、それを「エラー教材」と名付け た。正解に対するエラーの否定性に着目し、数学的概念や手続きを弁証法的に理解させるための教 材として子どもたちのエラーを捉えたのである。ここでの数学的概念や手続きを弁証法的に理解す るとは、相対立する考えが互いを相互否定することによって、考えを調停し、それらを統合的に捉 え、学習内容の理解を深化・発展させることを意味する。そのように概念定義をした上で、「エラー 教材」の学習指導上の意義を「数学的概念・手続きの理解促進」「メタ認知能力の向上」「数学的に 考える力の育成」の 3 つの観点から検討した。最後に、算数・数学科の教科書分析を通して、教科 書の中の「エラー教材」を分類・整理した。その結果、「エラー教材」の提示場面には、選択場面・ 修正場面・途中場面・忘却場面・対立場面・改善場面の 6 つがあることを見出した。今後の課題は、 新しい「エラー教材」の開発を積極的に行うことであり、特に抽象化が進む中学校や高校での数学 の学びにおける「エラー教材」の有効性を示していきたい。

Research on the Error Materials in Mathematics Teaching

Character and Classifi cation in Error Materials

Shigeki TAKAZAWA

キーワード:数学指導、エラー教材、弁証法的理解 1.はじめに 数学学習において多様な考え方が生み出されることは自然な現象である。また、多様な考え方の中 にエラーが含まれることも避けることはできない。誰からもエラーが生み出されないことこそ不自然 であるとさえ言える。ところが、子どものエラーを学習上の障害とみて、その発生を教師も子どもも 回避しようとする傾向がある。たとえ一時的にそれを回避できても本質的な解決にはならず、また同 じエラーを繰り返すことになる。重要なのは、エラーを回避せず、正面からエラーに立ち向かい克服 することである。 エラーは、何らかの組織的なルールに起因する誤りであるが、明確な定義があるわけではない。以 前、エラーの捉え方を検討したとき、先行研究ではエラーを「治療の基礎」「探求の跳躍台」などと捉 えたものがあった。[1]それぞれが研究の目的に応じて、独自の定義を提案することが多い。本稿で は、エラーが正答でないという意味において、ある種の否定的な意味を持ち、その否定的な意味が正 答とは何かを追求する原動力となり、エラーの否定が正答の意味をより明確にすることに注目する。 常識的に考えると、エラーはあってはならないことである。そのあってはならないエラーを、学習 * 滋賀大学教育学部

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指導において持ち出すことは、どのような意義があるのだろう。エラーの学習指導上での利用に関し て、学習の治療を目的にエラーを利用するか、学習の飛躍を目的にエラーを利用するかなど利用の仕 方はさまざまである。以前、筆者も「エラーへの対処方法」として①回避、②克服、③受容の 3 つに 分け検討したことがある。[3]エラーは、子どもが自ら考えた結果生じるものであり、子どもが「考 えた証拠」であるとともに、エラーを学習に生かすことを考えれば「学びの宝庫」になると考える。 例えば、分数の学習上で生じるエラーを克服することを意図した試み[2]や、一次関数の学習におい て生じた誤ったグラフを仮に正しいものと考えることによって、一次関数の学習を深化・発展させる 試みもある。[3] そこで、本稿では、まず、エラーを学びの教材と捉え、エラーを基にした教材を「エラー教材」と 名付ける。次に、その概念定義をエラーの否定性に着目しながら明確にする。それを受けて、「エラー 教材」の学習指導上の意義を 3 つの観点から明らかにしたい。その上で、教科書分析によって、6 つ の場面の「エラー教材」があることを示し、「エラー教材」の今後の可能性について言及したい。 2.「エラー教材」とは何か (1)エラー教材の具体例 エラー教材とは、学習内容の理解を促進・発展するために、子どもの典型的なエラーを利用するも のである。ここでは、数学的概念と手続きの理解に分け、エラー教材を具体的に概観することにする。 まず、概念理解教材として、「割合とグラフ」の導入場面[4,5 年下 pp.82-83]に、次のような 3 人 の子どもたちがバスケットのシュートをしている写真が示されている。

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写真の下には 3 人のシュートの成績が表にまとめられている。ただし、シュートが成功したかどう かを○×で示したものであり、3 人の投げた回数が異なるところが重要である。この場面で、次の 2 つの言葉が吹き出しの形で示されている。 A.「入った数でくらべると・・・。」  B.「シュートした数がちがうのにいいのかな。」 この A の言葉は、入った数が多い方がうまいという考えを示したものであり、この場面で典型的に 出てくるエラーに結びつく考えである。これは、これまで量を比べる場合、差でくらべることが一般 的であったことから頷ける。しかし、本単元では「差で比べる」ことから「商で比べる」ことへ転換 することがねらいであり、B の言葉は A の考えを再考させることを意図している。本稿では、このよ うな教材を概念理解の促進を目的としたエラー教材と呼ぶことにする。 手続き理解教材として、エラー教材の典型的な形式は以下に示すようなものである。計算の意味や 手続きに関わる場面でエラーが利用されることが多い。 4 年生の教科書から具体例を挙げてみる。東京書籍の 4 年上の教科書に、「右の 筆算はまちがっています。そのわけを説明して、正しく計算しましょう。」[5,p.13] というものがある。この他にも、4 年上の教科書にだけでも「① 74 ÷ 3 = 23 余り 5 ② 94 ÷ 4 = 19 余り 18」[5,p.36]、「① 79 ÷ 6 = 12 余り 7 ② 627 ÷ 3 = 290  ③ 324 ÷ 4 = 801」[5,p.50]、「 ① 0.6 + 0.7 = 0.13 ② 2.65 + 11.9 = 3.84 ③ 7.2 − 1.89 = 5.49」[5,p.101]、「76 ÷ 18 = 3 余り 22」[5,p.109]、「① 97 ÷ 24 = 40 余り 17 ② 583 ÷ 19 = 29 余り 32 ③ 829 ÷ 27 = 3 余り 19」[5,p.121]といった手続き理解教材としての 「エラー教材」が掲載されている。 このように、数学的概念や手続きの理解をねらった教材に「エラー教材」の典型がある。次に、「エ ラー教材」の本質を捉えるために、文字式の証明問題を例に挙げて説明したい。 (2)エラー教材の本質 文字式の証明は、文部科学省が中学 3 年生を対象に実施する「全国学力・学習状況調査」[6]にお いても、平成 22 年度の B 問題 2(2)の「3 つの連続した奇数の和が奇数になる」ことの論証問題の 正答率が 26.4%であった。また、日本数学会「大学生数学基礎調査」に関する報告書[7]によると、 「偶数+奇数は奇数になることの論証」の正答率が、19.1%であった。調査結果によると、深刻な誤答 として「①いくつかの例を示すことで論証したと考えるタイプ」(「2 + 1 = 3,4 + 1 = 5 だから」「思 いつく偶数と奇数を足してみたらすべて奇数になったから」)「②奇数や偶数の定義が間違っているタ イプ」(「偶数を 2x、奇数を 1 とおくとその和は 2x + 1」)「③トートロジーを繰り返すタイプ」(「割 り切れないから」「奇数は奇数を足さないと偶数にならないから」「偶数は 2 で割り切れて、奇数は 2 で割ると 1 余るということから」)「④あいまいな言説への逃避や無関係な事柄から類推するタイプ」 (「どんなに数が大きくなろうとも、1 の位は同じ循環をし続けるから」「三角と三角を足したら四角に なるのと同じで、四角と三角では四角にならないから」)などがある。このように、大学生であっても 基本的な論証能力が身に付いておらず、ことは深刻と言わざるを得ない。 そこで、まず平成 24 年度版の中学校数学教科書の中の「奇数と奇数との和が偶数であることを、文 字を使って説明しよう。」[8,2 年 p.28]の記述をもとに、エラー教材とは何かを探りたい。 ① A さんと B さんは 2 つの奇数とその和をそれぞれ次のように表した。2 人の考えは正しいといえ ますか。 A さん 奇数は 2 n+ 1 と表せるので、奇数と奇数との和は、  (2 n+ 1)+(2 n+ 1) B さん 奇数は 2 n− 1、2 n+ 1 と表せるので、奇数と奇数との和は、  (2 n− 1)+(2 n+ 1)    481  × 703  1443  3367    35113

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② C さんは、奇数と奇数との和は偶数であることを、次のように説明した。 2 つの奇数をそれぞれ 2m + 1、2 n+ 1 と表す。ただし、m、nは整数とする。  (2 m +1)+(2 n +1)= 2 m +1+2 n +1 = 2 m +2 n +2 = 2(m + n +1) m + n +1 は整数だから、2(m + n + 1)は偶数である。したがって、奇数と奇数との和は偶数 である。 上記の教科書の記述のうち、①はエラーであり、②が正解である。①のエラーは、「奇数と奇数との 和が偶数であることを文字を使って説明しよう」と問われたらよく出てくるエラーである。このよう にエラーと正解を併記することによって、「各解答の妥当性」「正解とエラーの境界線」を意識せざる をえなくなる。何が正解を決定づけ、なぜエラーなのかを子どもたちは意識することになる。その上 で、正解とエラーを統合的にみることができるようになるのである。 藤井は《A をその否定と対岐させることにより A の理解が十分であるか否かが顕在化されるので す。実際、A の外延をその外側に向けて拡張しようとすると、A の中で何が本質的な内容かが問題と なります。A を十分に理解していれば、そこでの判断は的確であるはずです。このことから A の理解 の実態が顕在化されるのです。》[9,p.124]と述べている。「A の外延をその外側に向けて拡張しようと すると・・・」という記述は、nonA の外延にも同様のことが言え、A と nonA の対岐を正解とエラー の対岐とみれば同様のことが言えるのである。これは「エラー認識」を利用した弁証法的理解とみる ことができる。 長谷川は《A がおのずと B になるのではなく、A が否定されて B が出てくる。そのように A と B とのあいだに対立があり、その対立が変化や運動の原動力となると考えるのが弁証法の基本なのであ る。》[10,p.19]と弁証法における対立の必要性を、栗原は《矛盾や限界を突破する考え方の展開こそ、 弁証法なのである。》[11,p.32]と矛盾や限界の重要性を述べている。弁証法的理解に置き換えて考え ると、エラー提示が引き起こす対立や矛盾・限界の突破こそが弁証法的理解の本質であることを示唆 していると言える。その上で、《制約を担った限界ある認識から、その限界を突破して、制約のない 自由な認識へと進展するためには、対立構造を否定しなければならなかった。そうした否定のなかか ら、本質的に含まれている肯定的な理念を実現して、自覚的な認識の成立へと導く論理が弁証法であ る。》[11,p.44]とし、否定の否定が肯定を生み出すこと、つまり、弁証法的に理解することが学習内 容の理解を深化・発展させる。 このように、相対立する考えの相違に着目し、それぞれの考えの妥当性を吟味しながら、正誤の境 界線を引くことによって考えを調停し、その上で、相対立する考えを統合的に捉えることを弁証法的 理解と呼ぶことにする。この弁証法的理解を促す教材として「エラー教材」を位置づける。先程の例 で言えば、三人の考えの相違に着目しながら、奇数と奇数の和を(2 n+ 1)+(2 n+ 1)や(2 n− 1)+(2 n+ 1)ではなく(2 m +1)+(2 n +1)と表現すべきことに気づき、最終的に 2(m + n +1) と展開することによって偶数になることが証明できることを理解する。それによって、正誤の境界線 を意識し、相対立する考えを統合的に理解する。つまり、A さんの考えは「同一の奇数の和」、B さん の考えは「連続する奇数の和」、C さんの考えは「2 つの奇数の和」のそれぞれが偶数になることを証 明するものであると意味づけ、それらを統合的に理解するのである。 3.「エラー教材」の意義 下村[12]は、エラー教材を用いる意義として数学的概念の理解の促進とメタ認知能力の向上の 2 点 を挙げている。上述したようにエラー教材が数学的概念及び手続きの理解を促進することは頷ける。 特に、「エラー教材」が数学的概念・手続き等の道具的理解と関係的理解を同時に実現することが注 目に値する。説明する場面では、意味を抜きには手続きは語れない。また、エラー教材をもとに学習

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すると、自らがエラーをし得る存在で あることを認識し、エラーをしないよ うに日頃から注意しなければならない ことを自覚する。これがまさに、子ど ものメタ認知的な成長を意味する。そ の上、エラーの可 性や正答の妥当性 を論理的に説明するために、数学的に 考える力を自然と獲得させることがで きるのが「エラー教材」である。した がって、エラー教材とは、子どもの典 型的なエラーを用いた、「数学的概念・ 手続きの理解促進」「メタ認知能力の向 上」「数学的に考える力の育成」を達成 させる教材であると言えよう。 エラー教材の学習指導上の 3 つの意 義 を、 2 + 3 = 5 と い う 平 方 根の計算上のエラーを例に具体的に検 討する。このエラーは教科書のなかで は左のような形で取り扱われている。 [13,3 年 p.58] ①数学的概念・手続きの理解促進 単に計算の手続きのエラーであって も、それを指摘したり訂正したりするためには、その手続きの道具的理解だけでなく、同時にその手 続きの関係的理解をも意識しなければならない。つまり、エラー教材は 2 つの理解(道具的理解と関 係的理解)を同時的に達成することができる。吹き出しをもとに「乗法のときと同じように考えてい いのかな?」等と自問しながら、「 2 × 3 = 6 だったから 2 + 3 = 5 」あるいは「2 × 3 = 6、2 + 3 = 5 だったから 2 + 3 = 5 」と既習事項を関連づけ計算手続きを意味づける。また、 「a+b が簡単にできないのと同じだね。」といった吹き出しをもとに「3a + 4a =(3+4)a」から「3 2

+ 4 2 =(3+4) 2 」を類推することもあるであろう。また、エラーを指摘するために「数直線上 で考えてみると、・・・」といった吹き出しをもとにそれを実行し、平方根の概念理解を促す。 ① メタ認知能力の向上 自己モニタリング能力を高めることは算数・数学の学習において重要である。エラー教材を利用す ることにより、他者のエラーの原因や改善策を考えることを通して、自らもエラーし得る存在であるこ とを認識し、日頃から自己モニタリングする習慣が身に付く。 2 + 3 = 5 というエラーを自分 でもやりそうであると認識できれば、「自分が誤り得る存在であること」を認識でき、「どこがエラー なのかを考えること」や「なぜこんな誤りをしてしまうのかを考えること」に繋がる。その上で、「ど んなことに気を付けて平方根の計算をするべきかを考えること」へと導かれる。つまり、エラーを意 識することによって、自己モニタリングや自己コントロールといったメタ認知能力を機能させること につながる。 ② 数学的に考える力の育成 エラーを指摘したり、エラーを訂正したり、正解の意味を考えることを通して、既知の知識・技能 や考え方と照合しながら、見通しをもち筋道を立てて論理的に考えることを自然と行う。つまり、こ の「照合活動」が数学的に考える力を育むのである。 2 + 3 = 5 と計算してはいけない理由を 考えながら、「数直線上に 2 と 3 を表してみるとその和が 5 にならないこと」や「両辺を 2 乗し

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て、左辺の結果と右辺の結果が異なること」を確認する。このようにエラーをエラーとして認識し、 それのどこが誤りなのかを説明することを通して、数学的に考えることが如何なることなのかを認識 しそれを実行できるようになる。 このように、エラー教材の学習指導上の意義は 3 つの観点で捉えることができる。ただ、これら 3 つだけがエラー教材の意義ではないかもしれない。今後、エラー教材の意義について、より一層の検 討が必要である。また、エラー教材をもとにした、エラーと正答を対比させる学習、エラーを指摘・ 修正する学習、エラーの原因や改善策を考える学習などは、学習内容の理解をより深化・発展させる。 正答が何かを理解できるだけではなく、正答とエラーの境界線やそれぞれの根拠も同時に理解するこ とになる。その結果、エラー教材を活用することは、学習内容の「理解の様相」と「理解の過程」を 同時に具現化することなるように思われる。 4.教科書の中の「エラー教材」 ここでは、まず教科書の中にエラー教材がどの程度導入されているかを見ていくことにする。次表 は、東京書籍の算数科教科書の中のエラー教材の問題数を表したものである。 表 1 小学校算数の領域別「エラー教材」[5] 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 合計 数と計算 1 5 10 10 7 2 35 量と測定 0 0 0 1 2 1 4 図  形 0 3 1 2 3 4 13 数量関係 1 0 2 3 0 2 8 合計 2 8 13 16 12 9 60 上記の表から、小学校 6 年間で 60 の「エラー教材」があり、「中学年が多い。特に 4 年生が多い」 「数と計算領域が多い」ことが分かる。下村によると、旧学習指導要領時代の教科書と比較すると、平 成 23 年度用の教科書の中のエラー教材は増加していることが確認されている。[12]学年別にみると、 エラー教材は 3,4,5 年に集中していることがわかる。これは、ある程度学習が進んだ時点でエラー 教材が導入されていると思われる。また、子どもの反省的思考やメタ認知能力が機能しだす発達段階 とも関係があるのかもしれない。 一方、大日本図書の中学校数学の教科書にはどの程度エラー教材が導入されているかを調べてみた 結果が以下の表である。中学校の教科書にも 42 もの「エラー教材」があることが分かる。 表 2 中学校数学の領域別「エラー教材」[8] 数と式 図形 関数 資料の活用 合計 1 年 5 0 5 0 10 2 年 3 4 2 2 11 3 年 14 1 4 2 21 合計 22 5 11 4 42 上記の表から読み取れることは、まず、「中学 3 年生が最も多い」ということである。学年が進み、 学習内容が充実してきた時点でエラー教材の効果がより発揮されると考えられる。また、「数と式領

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域にエラー教材が最も多い」のが分かる。これは小学校算数の数と計算領域に多かったことに類似す る。 5.「エラー教材」の分類 次に、先程の小学校 60 教材、中学校 42 教材をエラーの提示場面によって分類してみる。このエラー の提示場面による分類は、授業でのエラーの利用に大きく関わる。下村は、エラー教材の問いの形式 をもとに「修正問題」「選択問題」「未完成問題」などに分類し、「修正問題」の多さを明らかにしてい る。[12]本稿ではエラーをどのような場面で利用するかをもとに、次の 6 つの場面のエラー教材に分 類する。 ① 選択場面 この場面を利用する「エラー教材」は、正答と誤答が混在する中で正答を見付けたり、エラーを見 付けたりすることを通して、選択する理由や根拠を考えさせる。例えば、5 年の『合同』の単元にお いて「左の㋐と、形も大きさも同じ図形はどれかな。」[5,5 年上 p.60]「左の㋖と、形も大きさも同じ 図形はどれかな。」[5,5 年上 p.61]と合同である図形と合同でない図形を識別させる。また、6 年では、 「ロケットが、秒速 8㎞の速さで 5 分間飛んだときの道のりが何㎞か求めます。正しい式は①∼⑤のど れですか。また、ロケットが飛んだ道のりを求めましょう。① 8 × 5 ② 8 ×(60 ÷ 5) ③ 8 ×(60 × 5) ④ 8 ÷(60 × 5) ⑤ 8 ÷(60 ÷ 5) 」[5,6 年上 p.119]という、式を選択する問題が用意され ているが、選択肢の中には適切でない式、つまり誤った式が挙げられている。 ② 修正場面 この場面を利用する「エラー教材」は、エラーの箇所を指摘するとともに、正しいものに修正する ことを要求する。例えば、4 年下の教科書には「(計算の)まちがいを見つけて、正しく計算しましょ う。」という問いが 3 か所ある。その問いに続いて、① 16 + 4 × 8 = 20 × 8 = 160 ② 12 ÷ 4 + 9 − 2 = 3 + 9 = 12 − 2 = 10[5,p.17]、① 4/5+2/5 = 6/10 ② 21/7 − 5/7 = 24/7[5,p.49]、① 1.25 × 18 = 2.25 ② 0.042 × 17=7.14 ③ 6 ÷ 5=12 ④ 4.5 ÷ 6=7.5[5,p.92]といった誤った計算式や筆算形式が 提示されている。 ③ 途中場面 この場面を利用する「エラー教材」は、問題の解決の途中まで示し、それ以後を子どもに任せるス タイルをとる。このエラーの提示方法は、下村が「未完成問題」と呼ぶものである。[12]例えば、4800 ÷ 500 の筆算を示し、答えを 9 余り 3 とするか 9 余り 300 するかを子どもに問う教材がある。[14,4 年上 p.21]また、「4 人ずついすにすわります。35 人がすわるには、いすは何こあればいいでしょう。」と いう問題[14,3 年上 p.75]をもとに、35 ÷ 4 の答えを 8 余り 3 とするか 9 とするかの判断をさせる教 材もある。 また、5 年の「小数のかけ算」では、1.7 × 2.3 を筆算し、391 という答えが出たところで、「正しい 積になるように、小数点をうちましょう。」[5,5 年上 p.35]と問う。これは、小数の乗法も整数のとき と同じように計算し、小数点をどう打つのかだけを子どもに任せている。 ④ 忘却場面 この場面を利用する「エラー教材」は、法則や公式を忘れてしまったときに、それを想起する方法 について考えることを通して、その法則や公式の理解を豊かなものにする。例えば、2 年下「13 九 九をつくろう」という単元の中に、「九九の答えをわすれたときも、きまりをつかうと答えがもとめ られそうだね。」という吹き出しがある。[5,p.39]この吹き出しは、「九九を忘れた」という好ましく ない、しかし、よくある事態を想定したものである。ここでの「きまり」とは「かける数が 1 ふえる と、答えはかけられる数だけふえます。」「かけられる数と、かける数を入れかえて計算しても、答え は同じになります。」というものである。また、3 年上「1 九九を見なおそう」という単元でも、ひ

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ろき君の「8 × 6 の答えをわすれた・・・」という吹き出しをもとに、たくみ君とみほさんが九九を 忘れたときに使える「かけ算では、かけられる数を分けて計算しても、答えは同じになります。」「か け算では、かける数を分けて計算しても、答えは同じになります。」ということをもとに、「8 × 6=5 × 6+3 × 6」「8 × 6=8 × 2+8 × 4」と計算したらよいことを示している。[5,p.8] ⑤ 対立場面 この場面を利用する「エラー教材」は、典型的に生まれるエラーと正答を比較・検討しながら、当 該の概念の理解を促すものである。例えば、3 年下「間の数に目をつけて」では「道にそって、12m ごとに木が植えてあります。かずみさんと兄さんは、1 本めから 8 本めまで走ります。2 人は、何 m 走ることになりますか。」という植木算が取り上げてある。この問題の解答として、二人の子どもの対 立する 2 つの考えが提示されている。[5,pp.98-99] しんじ:木の数が 8 本だから、12 × 8=96 答え 96m ゆ み:木と木の間の数は 7 つだから、12 × 7=84 答え 84 m また、5 年上の「分数と小数、整数の関係を調べよう」という単元でも「2 mのテープを 3 等分した 1 こ分の長さは、何 m ですか。」という問いに対して、「2 ÷ 3 で、答えは 2/3m かな。」「3 等分してい るから、1/3m かな。」という対立する二つの考えを吹き出しの形で提示している。[5,p.109] ⑥ 改善場面 この場面は、「なぜエラーをしてしまったのか」「どうすればエラーをせずに済むのか」など、エラー の原因や改善策を考えることを通して、学習活動の改善を目指すものである。例えば、中 3 の「平方 根」の学習で、「a > 0、b > 0 のとき、 a b = ab であるが、 a + b = a+bとしてはいけま せん。それはなぜでしょうか。」[8,3 年 p.63]や「K さんは、2 次方程式x2 = 2xを[x2 = 2x 両 辺をxでわると、x= 2 よって、解はx= 2 である]と解きました。この K さんの解き方について 話し合いましょう。」[8,3 年 p.85]といった問題提示を行い、エラーの原因やエラーを回避するような 改善策について考えさせる。 以上 6 つの場面を用いた「エラー教材」が算数・数学科の教科書には掲載されている。次に、それ ぞれの場面がどの程度教科書の中に取り上げられているかを調べてみることにする。 表 3 エラーの提示場面別「エラー教材」[5] 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 合計 対立場面 0 0 1 3 2 1 7 忘却場面 0 1 3 0 0 0 4 選択場面 0 6 2 1 3 6 18 修正場面 0 0 4 10 4 2 20 途中場面 2 1 3 2 3 0 11 改善場面 0 0 0 0 0 0 0 上記の表から、小学校算数教科書における「エラー教材」は「選択場面」「修正場面」を通して用い られることが多いことが分かる。前述したように、数と計算領域に集中していることを考えると、ま だ「エラー教材」を開発することは可能であるように思われる。 また、中学校数学の教科書に掲載されている「エラー教材」が、それぞれどんな場面をもとに取り 上げられているかを、算数同様に 6 つの場面別にみると、次の表のようになる。

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表 4 エラーの提示場面別「エラー教材」[8] 対立場面 忘却場面 選択場面 修正場面 途中場面 改善場面 1 年 0 0 5 5 0 0 2 年 3 0 7 1 0 0 3 年 2 1 14 1 1 2 合計 5 1 26 7 1 2 上記の表から読み取れることは、「選択場面」のエラー教材が多いが、「修正場面」のエラー教材は 小学校算数ほど多くなく、全体的にかなりの偏りがあることが分かる。ただ、証明の穴埋め問題を「途 中場面」に入れたら、かなりエラー教材の数が増えることになるように思われる。 6.おわりに 本稿では、まず「エラー教材」とは数学的概念や手続きを弁証法的に理解することを促すものと捉 えた。数学的概念や手続きを弁証法的に理解するとは、相対立する考えが互いを相互否定することに よって、考えを調停し、それらを統合的に捉え、学習内容の理解を深化・発展させることを意味する。 次に、「エラー教材」の意義を「数学的概念・手続きの理解促進」「メタ認知能力の向上」「数学的に 考える力の育成」の 3 つの観点から検討した。その上で、算数・数学科の教科書分析を通して「エラー 教材」を分類・整理した。その結果、「エラー教材」の提示場面には、「選択場面」「修正場面」「途中 場面」「忘却場面」「対立場面」「改善場面」の 6 つがあることを見出した。 今後の課題は、新しい「エラー教材」の開発を積極的に行うことである。「数と計算」「数と式」領 域以外の領域や 6 つの場面以外の場面へも拡大していければと考えている。特に、抽象化が進む中学 校や高校の数学では、エラー教材がより一層有効であると思われる。また、本来であれば、ここで指 摘したような「エラー教材」は算数・数学科の授業の中で当たり前のように生じる状況であろう。そ れを敢えて教科書に掲載しその数も増加している点を考慮しながら、「エラー教材」の教科書掲載の意 義も考えたい。子どもにとっては自分のエラーより第三者のエラーの方が客観視できる点や、教師に とっては指導の手掛かりになると思われる点などに注目しながら検討したい。 引用及び参考文献 [1] 高澤茂樹(2008)算数・数学教育におけるつまずきの意味とその研究の変遷 奈良セミナー発表資料 [2] 高澤茂樹他(2009)つまずきを生かす算数指導のあり方 奈良セミナー発表資料 [3] 高澤茂樹(2012)数学教師の「エラー実践」に関する研究 奈良セミナー発表資料 [4] 一松信他(2011)みんなと学ぶ小学校算数 学校図書 [5] 藤井斉亮他(2011)新しい算数 東京書籍 [6] 国立教育政策研究所(2010)全国学力・学習状況調査平成 22 年度中学校数学 B 問題(中学校 3 年生) [7] 日本数学会(2011)「大学生数学基礎調査」問題 [8] 吉田稔他(2012)数学の世界 大日本図書 [9] 藤井斉亮(1997)数学学習と認知的コンフリクト 日本数学教育学会編「学校数学の授業構成を問い直す」産 業図書 pp.122-131 [10] 長谷川宏(2001)新しいヘーゲル 講談社現代新書 [11] 栗原隆(2009)ヘーゲル―生きてゆく力としての弁証法 NHK 出版 [12] 下村友里(2012)算数教育における子どもの考えの多様性についての研究―子どもの誤った考えに焦点をあ てて― 滋賀大学教育学部卒業論文 [13] 澤田利夫他(2012)中学数学 教育出版

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[14] 橋本吉彦他(2011)たのしい算数 大日本図書

表 4 エラーの提示場面別「エラー教材」[8] 対立場面 忘却場面 選択場面 修正場面 途中場面 改善場面 1 年 0 0 5 5 0 0 2 年 3 0 7 1 0 0 3 年 2 1 14 1 1 2 合計 5 1 26 7 1 2 上記の表から読み取れることは、「選択場面」のエラー教材が多いが、「修正場面」のエラー教材は 小学校算数ほど多くなく、全体的にかなりの偏りがあることが分かる。ただ、証明の穴埋め問題を「途 中場面」に入れたら、かなりエラー教材の数が増えることになるように思われる。 6.おわりに

参照

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