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クラウド型教育学習支援情報環境の実現に向けて

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Academic year: 2021

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(1)Vol.2010-CLE-2 No.7 2010/9/2. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Academic Cloud! !""!! #""!! $""!!. CMS!. クラウド型教育学習支援情報環境の実現に向けて. Services!. 梶. 田. 将. Needs!. 司†1. Community!. 本報告では,教育学習支援情報システム (Collaboration and Learning Environment, CLE) が目指すべきクラウド型 CLE 環境に関する研究開発の方向性について 述べる.これにより,今後進展が想定される大学情報環境のクラウド化を前提に,教 育現場の多様なニーズに基づいたフレキシブルな CLE 環境の実現に向けた学術的成 果・実践的成果の積み上げを行うための学問分野の形成について議論する.. !"#$%&'()*#+,-#! 図1. Community! .#/0)*#+,-#!. CLE 進化のためのフィールド情報学. 的に導入し,平均で約 50%の講義やセミナーで利用するまでに至っている.しかしながら,. Toward Realizing A Cloud-type Teaching and Learning Environment for Higher Education Shoji Kajita. Services!. Needs!. CMS の普及が進むにつれて,様々な学問分野にまたがる教育現場から生じる多様なニーズ に応えることが求められるようになった結果, CMS を独自開発していたミシガン大学・. MIT・スタンフォード大学・インディアナ大学は,メロン財団から研究費を獲得し,大学間. †1. 連携の下で共同開発・利用可能なオープンソースソフトウェア Sakai の構築を 2004 年に開 始した2) .現在では, Sakai Foundation が設立され,世界の研究大学を中心に約 70 の大. This paper describes a process to realize a cloud-based teaching and learning environment to accumulate research results and practice accomplishments in order to support various discipline-specific educational experiences and realize flexible CLE environment.. 学 (日本からは,法政大学,名古屋大学,大阪大学が参加) が会員となり,コミュニティ全 体で共同開発する「コミュニティソース」として Sakai の構築が進められている.これに より,各大学は,限られた人的・財政的資源の中で,開発・保守コストを抑えつつ学内の独 自ニーズへの対応に集中できる環境が整備されつつある. このような流れは,大学の教育現場に関わる教員・学生・TA・学科/学部執行部・ソフト. 1. は じ め に. ウェア技術者・システム管理者・民間事業者等,様々なステークホルダで構成されるコミュ. 21 世紀を迎えた世界の高等教育機関は,情報技術の発展に伴う知識社会の進展やグロー. ニティから生ずる多様なニーズが CMS の機能として実装され,そのサービスを利用した教. バル化した経済活動の中で激しい競争にさらされ始めており,国際化や産学官連携,生涯. 育現場から新たなニーズが生まれるというサイクルを繰り返しながら,CMS 及びそれを利. 教育,地域貢献などの新たな課題に果敢に挑戦しなければならなくなっている1) .このよう. 用するコミュニティが拡大してきた過程でもある (図 1 左).つまり, 「大学の教育現場が イ. な状況の下,米国の大学では, WebCT に代表されるコース管理システム (CMS) が 1998. ノベーションを生み出すフィールドとなり,成果がイノベーション蓄積プラットフォームと. 年頃から急速に普及したことにより,教育の情報化が進み,約 90%の大学が CMS を全学. しての CMS に蓄積されていく」というフィールド情報学3) の一つの分野を形成してきた と言える. 現在,情報技術分野は,仮想化された大規模分散計算機資源を用いてシステムを構成・. †1 名古屋大学情報連携統括本部情報戦略室 Information Strategy Office, Information and Communications Headquarters, Nagoya University. 運用するクラウドコンピューティング時代に入りつつあり4) , 「アカデミッククラウド環境」. 1. c 2010 Information Processing Society of Japan ⃝.

(2) Vol.2010-CLE-2 No.7 2010/9/2. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 研究 フィールド . 図2. レイヤ9. 政治層. レイヤ8!. ビジネス層. レイヤ7. アプリケーション層. レイヤ6. プレゼンテーション層. レイヤ5. セッション層. レイヤ4. トランスポート層. レイヤ3. ネットワーク層. レイヤ2. リンク層. レイヤ1. 物理層. 研究フィールド=大学 . 大学 教育 研究者育成 教員 . 学生 . 教育 . 目標  . 研究 . 先端的   教育研究支援環境 の探究 ニーズ・課題 高度IT人材  . センター スタッフ . CLE が対象とする研究フィールドとしての 7・8・9 層. 研究者 (学生) . 先端的   情報技術教育 . 実践的成果 臨床現場 . (Collaboration and Learning Environment) ツール群の研究開発が求められている.特に,. 知見 . 益々拡大する多様なニーズに容易に対応可能で,厳しい人的・財政的資源の中で開発・運用. オープンソース ソフトウェア コミュニティ . 可能な CMS を含む CLE の研究開発が必要である (図 1 右).. センター スタッフ . 学術的成果 . 育成 . 先端的   情報サービス . ソース . という高等教育分野に特化したクラウド環境における新たなコラボレーション・学習環境. 研究者 (教員・ポスドク) . 業務 . 業績 Sakai, Jasig 等 . 学生 センター スタッフ . 論文 . 知見 . 研究者 . 論文 電子情報通信学会, 情報処理学会, IEEE, ACM 等 . 業績 . 学会 . そこで,本報告では,本 CLE 研究会が取り組むべきクラウド型 CLE 環境に関する研究 開発の一つの方向性について述べる.これにより,今後進展が想定される大学情報環境のク. 図3. 大学教育を事例としたインフィールド情報学の開拓. ラウド化を前提に,教育現場の多様なニーズに基づいたフレキシブルな CLE 環境の実現に 向けた学術的成果・実践的成果の積み上げを行う学問分野としてインフィールド情報学に関. や情報教育系センターに所属する教員として教育支援業務を分担することも多い.その意. する議論を行う.. 味で,単なる研究活動に留まらず,教育・研究・業務を強く関連づけながら,それぞれのプ ロセスに関わる学生・センタースタッフとともに先端的 CLE 環境の探究を進める必要があ. 2. 研究フィールドにどっぷり浸かる「インフィールド」情報学. る.このような「研究フィールドに深く根ざしながら情報技術と社会のバランスのよい発展. 情報システムとしての CLE 環境は,ISO 参照モデルでは第 7 層に関する技術であるが,. を目指す学問」を「インフィールド情報学」として再定義し,大学を事例として開拓するこ. 対象とする大学教育は,各大学の主要事業であり,各大学の経営方針にも依存するものであ. とが我々の責務であろう (図 3 参照).そして,研究成果のうち,学術的成果についてはこ. ⋆1. る.そのため,第 7 層よりも上の第 8 層および第 9 層 まで包含した領域が研究フィール. れまでどおり学会でのパブリケーションを通じて成果を蓄積するとともに,その検証や改善. ドとなり (図 2 参照),単なる技術研究に留まらず,実際に情報技術を大学教育現場で使う. をどの教育現場においても自由にできるようにするため,実践的な成果はオープンソースソ. 中で改善を行っていく必要がある.このため,インパクトのある研究を行うための「フィー. フトウェアとして蓄積することを意識する必要がある (図 3 参照).. ルドに根ざした研究の大切さ」を実感している研究者は多いのではないかと思う.しかも,. 3. クラウド型 CLE 環境. 研究者自身が教員として教育現場に立つ立場にあり,またその一方で,情報基盤系センター. これをクラウド環境において先端的 CLE 環境の実現を目指して具体的かつ客観的に進め るために,まず,大学における物理世界および仮想世界双方での教育学習活動の相互作用に. ⋆1 ISO 参照モデルとして標準化されているものではない.. 2. c 2010 Information Processing Society of Japan ⃝.

(3) Vol.2010-CLE-2 No.7 2010/9/2. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 教育目標   フィールド指向の   研究者・技術者の育成  . プロト   タイプ . 演繹的 . 5 . 実際の利用現場 への展開 . 実際の利用現場 への展開 . 理解基盤技術 . So#ware-­‐as-­‐a-­‐Service   (SaaS) . 研究テーマ   先端的CLE環境の構築  . 研究フィールド=大学 . サービス   Z  . サービス   B  . 3 . ミドルウェア基盤  . Pla2orm-­‐as-­‐a-­‐Service   (PaaS) . クラウド型情報基盤技術 サービスコンピューティング . エージェントベースシミュレーション . サービス   A  . コンピューティング基盤  . データストレージ基盤  . 相互作用 研究者 (教員・ポスドク) 研究者 (学生) . 学生 . 教員 センター スタッフ . 4 . 解析基盤技術 パターン認識・統計的手法. . 1 . 2 集積基盤技術 . . ディジタル信号処理 大規模SW開発 DB技術. 参加型情報基盤技術 オープンコンピューティング . 図5. ニーズ . 帰納的 . 他機関   プライベート   クラウド基盤  . パブリック   クラウド   サービス . クラウド型 CLE 環境のアーキテクチャ. 充実してきており,研究開発の焦点は,PaaS・SaaS レベルに絞られる.そして,まず,必. 教育学習活動の大規模観測データベース 図4. 自機関   プライベート   クラウド基盤  . Infrastructure-­‐as-­‐a-­‐ Service  (IaaS) . センター スタッフ . 要なのは共通プラットフォームとしての PaaS レベルの構築である.基本的機能としては, 教育学習に関わる様々な大規模観測データを格納する「データストレージ基盤」とそれを利. 先端的教育研究情報環境の探究. 用して CLE 機能を運用・提供する「コンピューティング基盤」,および,これらを利用して. CLE 機能を実装するための「ミドルウェア基盤」であろう.これらの実装に必要なオープ. 着目しながら,教育学習活動の大規模観測データベースを構築する必要がある.. ンソースソフトウェアとしては,Apache VCL8) ,DuraCloud9) , CAS10) , Shibboleth11) ,. そして,研究活動に際しては,大規模観測データベースから見いだせるニーズやシーズに. uPortal12) , Sakai13) , Kuali14) が利用可能である.. 基づき,プロトタイプシステムを構築し,実際に実験サービスを提供しながら,参加型情報 技術基盤やクラウド型情報基盤技術をデータセットリック科学の中で研究開発する (図 4 参. 3.2 コンソーシアムでの利用. 照).また,教育活動に際しては,大規模観測データベースの解析や理解に必要な技術を駆. 教育学習支援のためのコンポーネントとなる基本システムは, 「eポートフォリオ」 「コース. 使しながら,データに基づいた帰納的な思考およびモデルに基づいた演繹的な思考ができ. 管理システム (Course Management System, CMS)」 「教務システム (Student Information. る人材を育成する.その際,学生だけでなく,センターの他の教員やスタッフも巻き込み,. System, SIS)」であり,それぞれ「学生」「教員」「大学」という教育学習活動におけるス. フィールド指向の研究者・技術者を育成する (図 4 参照).. テークホルダを支援する.大学でのクラウド環境は,それぞれの大学が有するプライベート. 3.1 アーキテクチャ. クラウド環境と大学間で共通的に利用することができるコミュニティクラウド環境の両方を. この CLE 環境をアーキテクチャの観点から整理すると,図 5 のようになる.. 各大学の戦略や実情に応じて形成していくことになると考えられるため, 「eポートフォリ. クラウド環境は,一般的に言って IaaS (Infrastructure-as-a-Service)・PaaS (Platform-. オ」 「コース管理システム」 「教務システム」の単位でこれらを選択的に利用できることが必. as-a-Service)・SaaS (Software-as-a-Service) の 3 つのレイヤで整理されるが (図 5 参照),. 要になる.. IaaS レベルは,現在,パブリッククラウド・プライベートクラウド双方とも民間サービスが. これにより,教室等の実世界における教員・学生・教材間のインタラクションだけでなく,. 3. c 2010 Information Processing Society of Japan ⃝.

(4) Vol.2010-CLE-2 No.7 2010/9/2. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report ログイン . 各大学の 教職員・学生 . SIS  . CM   eP. SIS. S  . . 学. A大. CM. 大学 . eP  . SIS . 教務システム.  . S. IS  . S  . ニティの形成」(研究代表者: 山田恒夫 (放送大学教授),課題番号: 20240072),文部科学. S   CM Z大.   eP Y大. . . 教員 . CMS . コース管理システム. 学. ウド環境におけるソーシャルコンピューティングアーキテクチャの構築」 (研究代表者: 松 HPC計算結果 . 課題レポート 自宅学習 . の共同研究「学術クラウド基盤の利用に関する研究開発」の研究助成を受けて実施されてい. 学生 . る.ここに記して感謝の意を表したい.. ACL . オンデマンド型仮想端末. 大規模仮想化   計算機リソース   基盤 . ユーザ認証 権限認証 . 尾啓志 (名古屋工業大学教授)),および,NTT サービスインテグレーション基盤研究所と. 学. シミュレーションアプリ データ可視化アプリ . 学蔵 . 省学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点平成 22 年度公募型研究「アカデミッククラ. . CM. 学. データストレージ. 同基盤研究 (A)「学習コンテンツの世界的共有再利用を促進する情報システムと学習コミュ. ペタコン . SIS.  . S  . B大. ラウド型専門教育実習環境とその応用」(研究代表者: 梶田将司,課題番号: 22300288) ,. 大学ポータル . 参. スパ   コン . 学習履歴管理システム. N大学 . 文. 献. 1) J. J. Duderstadt, “A University for the 21st Century”, University of Michigan Press, 2000.8 2) A. M. Berg and M. Korcuska, “Sakai Courseware Management: The Official Guide”, Packt Pub., 2009.6 3) 京都大学フィールド情報学研究会,“フィールド情報学入門”,共立出版,2009 年 3 月 4) Richard N. Katz (Ed.), “The Tower and The Cloud - Higher Education in the Age of Cloud Computing”, EDUCAUSE, 2008 5) エミットジャパン編, “WebCT: 大学を変える e ラーニングコミュニティ”, 東京電機 大学出版局, 2005 年 7 月 6) リチャード・N・カッツ編,梶田将司訳, 「ウェブポータルを活用した大学改革 — 経 営と情報の連携」, 東京電機大学出版局, 2010 年 3 月 7) 梶田将司,“仮想コンピューティング実験室によるクラウド型教育学習支援環境の構 築”,電子情報通信学会サービスコンピューティング時限研究専門委員会第 3 回研究会, 2010 年 8 月 (発表予定) 8) The Apache VCL Incubator Project, http://cwiki.apache.org/VCL/ 9) DuraSpace, http://duraspace.org/ 10) Jasig CAS, http://www.jasig.org/cas 11) Shibboleth, http://shibboleth.internet2.edu/ 12) Jasig uPortal, http://www.jasig.org/uportal 13) Sakai Foundation, http://www.sakaiproject.org/ 14) Kuali Foundation, http://www.kuali.org/. e-Portfolio . SIS: Student Information System CMS: Course Management System . 考. ※  関連オープンソースプロジェクト . 図 6 コンソーシアムワイドで利用可能なクラウド型 CLE 環境. コース管理システム,eポートフォリオシステム,教務システム上でなされるインタラク ションの大規模な観測を通じて,教育学習空間を可視化・評価・改善・蓄積できる手法とそ の情報基盤を研究開発する必要がある.. 4. ま と め 本稿では,CLE 研究会が目指すべきクラウド時代の教育学習支援環境の研究開発に関す る一つの方向性を示した.この研究分野に参画する一人ひとりの研究者が, 「やりっぱなし」 型の研究が横行しないよう,学術的成果と実践的成果の積み上げを明確に意識することがま ず必要である.そして,学問的価値と実践的価値の双方が,大学教育をターゲットにしたイ ンフィールド情報学の分野形成につながるように強く意識して研究および実践を進める必要 がある.. 謝. 辞. 本研究は,文部科学省科学研究費基盤研究 (B)「仮想コンピューティング実験室によるク. 4. c 2010 Information Processing Society of Japan ⃝.

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