臨床報告
〔書鷹構86第鷺、甕言〕
Cervical Island Skin Flap変法による口腔癌切除後の即時再建
東京女子医科大学 歯科口腔外科(主任:扇内秀樹教授) オギウチ ヒデキ ロクカワ ケン クワザワ タカホ ァンドウ トモヒロ扇内 秀樹・六川 健・桑澤 隆補・安藤 智博
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はじめに (受付 平成4年1月17日) 近年,再建外科の発展は目覚しく,マイクロサー ジャリーの普及と皮弁の開発に伴い,口腔癌に対 する根治的切除範囲の拡大を可能にし,切除に よって生ずる欠損の部位や大きさによって種々の 再建法が行われ,治癒率も向上している.今日で は,腫瘍切除と同時に術後の咀噛や嚥下,発音な どの口腔諸機能の保存や顎顔面形態の維持などを 考慮し,即時再建を施行するのが一般的である. 1969年Farrら1)によって報告されたcervical island skin Hapに関し本邦では水越ら2),高木 ら3),田代ら4)の報告が散見されるが,あまり用い られていないようである.しかし,縫縮が困難で 比較的小範囲の口腔粘膜欠損に対しては,同一術 野であり,手術侵襲が少なく,一時的に再建の可 能な本法は優れた術式であると考えられる. 我々は口腔癌切除に,原法およびその改良法で 即時再建を行った2症例を経験したので報告す る. 手術術式 Farrら1>の報告したcervical island skin flap の藩法は図1に示すごとく,下顎下縁に幅約6cm の茎を有する紡錘状の皮弁で,茎部の表皮を剥離 切除後,皮弁を翻転,口腔内に移動させ,頚部の一≦螢
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図1 Farrら1)のcervical island skin flapの原著より引用 Hideki OGIUCHI, K:en ROKUKAWA, Takaho KUWAZAWA, Tomohiro ANI)0, Toshiro HIDAKA, Hiromasa KAWASAKI, Yoshikuni SANGU〔Department of Oral and Maxillofacial Surgery(Director: Prof. Hideki OGIUCHI)Tokyo Women’s Medical College〕:Immediate reconstruction using a modi丘ed cervical island skin且ap in resection for oral cancer組織欠損部を一時的に縫縮する方法である.一時 的に縫縮することはskin islandの幅径が制限さ れるという欠点と,頚部郭清術を同時に行う症例 では比較的よいが,頚部郭清術を必要としない症 例では,縫縮により頚部皮膚に強い緊張をきたす. さらに原法では下口唇まで切開を行っているが, その必要もない.我々の方法は,茎部皮膚を切除 せずに後方から前方に表皮を剥離保存し,皮弁を 口腔内に移動後,元に戻して創部閉鎖に用いた. 縫縮は下方の一部で頚部郭清術を併用しない場合 でも皮膚の緊張はほとんどなく,術後の外見も良 好である. 皮弁の作製 1.原発巣切除後に生ずる欠損部の大きさを計 測し,skin islandの大きさを決定する. 2.頚部は下顎下縁より1.5∼2cm下方で幅は 血行確保に安全な約6cm(a)とし,長さ(b)は 口腔内の切除部に十分達する必要があるが8∼10 cm1
ナABCDがskin圭slandとなりEFBAが皮
弁茎部となるが,a:b=2:1, c:d=1:1を 原則とする(図2一①). 3.皮膚切開は,下顎下縁より1.5∼2cm下で EFとABは表皮のみとし,AD, FCの深さは広頚 筋を越え,有心皮膚弁に広頚筋が含まれるように する.表皮剥離部内側はその有茎部内側において 広頚筋に切開を加える.下口唇からの皮膚切開は 必要ない. 4.茎部の皮膚(EFBA)は表皮をできるだけ薄 く剥離しEAを茎として内側に翻転させ,皮膚縫 合の際に使用する(図2一②).皮弁の先端を紡錘状 に鎖骨上まで延長し,不必要な部分を切除して一 次縫合をしゃすくしておく. ?。姻
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a;6cm, b=8∼10cm c≒d=4∼5cm ①皮弁の設計 skinへ
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flap ②皮弁茎部の皮膚剥離2
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③皮弁の口腔内移動 ④頸部の縫合\ _
図2 我々の考案したcervical island skin flap変法5.下顎部を有茎として皮弁を口腔内欠損部に 移動させ,できるだけ緊張の加わらないよう,ま た死腔形成に注意し周囲組織と縫合する(図 2一③). 6.皮膚縫合は茎部表皮を戻し,下方は一部縫縮 するが緊張もなく容易に縫合ができる(図2一④). 鍵盤の死腔形成の予防に,持続吸引チューブを留 置する. 症 例 症例1.36歳,男性. 初診:1987年10月13日 局所所見:左舌側縁から正中部にかけ,ほぼ舌 半側に硬結を触れ,表面粘膜は滑沢で内向性の増 殖を疑わせた.また,舌患側では口底に固着して おり,運動障害が著しく嚥下,発音障害を認めた. 臨床診断:舌癌(T3NOMO) 病理組織診断:扁平上皮癌(高分化型) 処置および経過:1987年10月19日入院.当院放 射線科で60Co外照射40Gy施行.その間,左浅側頭
動脈にカニュレーションを行いCDDP総量228
mg(動注), MMC総量48mg(動注), IL2総量 1,000V(動注)とOK・432総量9.7KE(筋注)の化 学療法を併用した.腫瘍の縮小効果はあったが, 舌根部に残存するため手術適応となった(図3). 手術:12月17日全麻下にて,舌,口底半側切除 を行い,欠損部の大きさを計測しcervical island skin napの原法に準じて4×5cmの回状三三を形 成した(図4).次いで左頚部郭清術を行い舌口底 部の腫瘍とともに一塊として摘出した.下顎下縁 図4 cervical island skin napの形成 蕪 ’還綴画Σ遡 三 国鈴臥1一 無職懲騰麟羅
図5 napを口腔内に移動し舌・口底の再建術中 1薮 欝麟
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図3 放射線・化学療法後の術前口腔内所見灘、
図6 頚部皮膚縫合の術後所見 鍵…図7 舌側口腔内所見 図10 腫瘍摘出物所見
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図8 唇側口腔内所見 聡 雪 囲9 術前X線所見 部より離弁を口底部に移動させ舌,口底部を即時 再建した(図5).頚部皮膚は頚部郭清術を同時に 行ったために縫縮できた.死腔形成予防のために 口底部と頚部に持続吸収チューブを留置した(図 6).術後4年経過,現在再発もなく機能的にも満 足している. 図11顎骨部分切除部に腸骨移植 症例2.55歳,男性. 初診:1990年9月25日 局所所見:右舌側は下顎前歯部より第一大臼歯 部歯肉,口底部に2.8×1.8cm,唇側は犬歯,小臼 歯部歯肉に1.7×1.Ocmの比較的境界明瞭な潰瘍 を伴った腫瘤(図7,8)を認める.X線像では て=11部歯槽骨吸収像が認められ同部の歯の動揺 は著明であった(図9). 臨床診断:下顎歯肉癌(T2NOMO) 病理組織診断:扁平上皮癌(高分化型) 処置および経過:1990年9月25日入院.術前化 学療法としてPEP 70mg皮下注後, ADM 40mg図12 皮弁の設計
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図13我々の変法による皮弁の形成 六出魎編蕪’;叢
,/ 図14 皮弁を移動させ口腔内を再建 図15 変法による頚部皮膚縫合 静注を行った. 手術:10月16日全麻下にて腫瘍を含め下顎骨 (画)部分切除を行い(図10),骨欠損部に腸骨 移植を行い,チタン金属プレートで固定した(図 11).歯肉,口底粘膜はcervical island skin Hap にて再建した. 皮弁の設計は図12のごとく,離弁は5×3cmの 島状皮弁で頚部の切開は真皮内にとどめ表皮は後 縁より剥離し前方に翻転(図13),可及的に皮下の 血管網を保存し広頚筋を付けて皮弁を形成し,口 腔内に移動させ,歯肉口底部を再建した(図14). 頚部皮膚縫合時下方部は延長切開を施し縫縮した が茎部は緊張が強く縫縮は困難であり剥離表皮を 利用し閉鎖縫合した(図15).術後約6ヵ月で義歯 を装着し,1年3ヵ月現在形態的にも機能的にも 問題なく頚部リンパ節転移も認められず良好であ る. 考 察 口腔癌切除後の再建術は咀囑,嚥下,発音など の口腔の機能や顎顔面形態の早期回復を図る目的 から腫瘍摘出と同時に再建が行われることが多 い. 近年,各種筋離弁移植法ならびに微小血管吻合 技術の開発は口腔癌の拡大手術と術後再建を可能 にし治癒率の向上にも貢献している. しかし,腫瘍摘出後の組織欠損に対し,今だ普遍的な手術方法は確立されていないため,各施設 で各種の皮弁が適宜試みられている.microsur・ geryの普及と皮弁の開発は再建に供する組織を 遠隔部位に求めることが多く,手術侵襲も大きい ものである.口腔の欠損がある程度以上になると 一次縫合や口腔粘膜のrotation flap,遊離植皮で