〔臨 床 実 験〕
(東京女医大誌第26巻第6号頁329−334昭和31年6月)堕胎致死鑑定の2例について
ヒラ :東京女子医科大学法医学教室(主任吉成京子教授) 瀬 セ 交 フミ子・阿
コ ア 部 べ 和 カズ 慶応義塾大学医学部法医学教室(主任中舘久平教授) 堀 ホリ ロ グチ 文 フE (i王乏、付 巨益禾031 年3 月 ]LO 卜1) 枝 路 緒 言 戦後優生保護法(.昭和23年公布)の適用をうけ すになされる堕胎!)が急激に増加し2)∼4),そのう ちには堕胎に失敗して母体を粗け,あるいは死に 至らしめる場合さ吏見られるようであるが,私達 は昭和23年から同28年迄の5年間に東京都監察医 務院において扱われた堕胎致死享件のうち2例に ついて,その死因(特に:施術者の燥作との関係), 堕胎の方法その他について詳細に観察し,特に堕 胎致死の防止という点に関して考察を試みたので こごに報告する今 症 例第1例
39才,9,妊娠6ケ月で生来健康であったが,家族 計画による流産を望み昭和27年6月都内の某産院に入 院,直ちに処置をうけ翌日注鼎(薬名不詳)をうけた後 発熱し悪感を訴えていた。入院3日目の午後2時頃, 人工妊娠中絶操作中に急激に母体の容態悪化し遂に死 亡したものであるが,同産院から附写真1の如き離断 された胎殖め死体が発見された。 倫解剖時における死後経過時間は約23時間である。 剖検所見 1。外景検査:体格大,栄養可良。死後変化高 度にしてそのためやや巨人様観を呈している。全 身の皮膚の色は一般に淡黄色乃至淡青藍色を呈 し,背部には紫赤色乃至暗紫赤色の屍斑を強く存 す。左右上腕外側には注射痕と覚しいものユ0個を 散在している。左右乳房は著しく膨隆し,乳輪の 直経は約4.Ocm,乳頭の直経は約1.1cm, v・すれ も色素沈着高度にして暗褐色を呈す。腹部は回し く膨隆し,硬度ぱ梢六一三い。三口は三四横指を通 じ,子宮頸部は三田鶏卵火の刊1に亘り露出してb る。 2.三景検査:諸臓器は…般に高度の貧通/を存 しているがいす:江も死後変化高度にして,各粘膜 下,漿膜下,被膜下及び臓器実質内における盗通L 点及び出血等の存否は全く不明である。並蔽は暗 赤色流動性であるが,左右心房,同心室内並びに 心臓剃囲の大血管はいすれも殆んど空虚である。 脳においては著変を認めない。心臓において著変 は認められないが心外膜下脂肪組織の発育は著し く可良にして更に大動脈起始部において内膜のア テローム変性及び軽度の石灰化が認められた。右 胸腔上葉前面において索状の癒着を認めたが,左 右肺は死後変化高度にしてその所見の詳細は不明 であるnその他O.諸臓器も略々同様にしてその所 見の詳細は不明である。胸腋は完全に脂肪織化し てV・る。 子宮の大きさは,高さ約22.2cm,ゆは底部に おいて*S 8. Ocm,子宮筋層の厚さは約1. Ocm,子Fumiko HgRASE, Kazue ABE (Dept. of Legal Medicine, Tol〈yo Women’s Med. Coll.) & Fumi HORIGUCKI (Dept. of Legal.Mediclne, Mediical School, Keio Univ.) : Two cases of medico−legal examinations on death caused by abortion.
宮外征は約4,0cmを算す。本子宮の大きさを体格 を考慮した処の各妊娠月数におけるそれと比較す るに第一表に示す通りである。 第一表妊婦の体格と子宮の高さとの関係(単位cm) 諭一讐1[大(・・例)中(32・例)1小(…例)本門 賑・・月末i・5・・・…i・5・・…2・1・3・・・・…1一 珂・ケ脚・・・・…i・6・・…81・7…96・i・2・・ r一.一 一 一一L.. “ A h−Li L AA−1 同7ケ月末/24. 3±0,28「23.7土O. 23121.5士色36i 子宮において次に述べる創傷ユ個を存す(附写 真■参照)。 即ち子宮頸部後壁略ft中央において約4.0∼3.5 ∼2. Ocm大,略々楕円形の部に亘り粘膜及び筋層 を欠損している。創縁は不正鈍,粗縫にして著し く罪薄である。本創傷の周囲は堤防状に隆起して いる。本創傷周囲組織間における出1血の存否は全 く不明である。 子宮におV・ては本創傷の外,内子宮口の裂傷及 び穿孔等は全く見られす,更に子宮内遺残も認め られなかった。 腹腔内に1血液及び子宮内容と思われるもの等の 異物を認めなV・。 病理組織学的所見 本屍は死後変化高度にしてその所見の詳細は不 明であるが,ヘマトキシリン,エオジン染色並び に脂肪染色を施して検索するに,肺水腫及び心筋 の脂肪変性を認めた。 化学検査成績 薬名不詳の注射を受けた形跡が認められたの で,これは脳下垂体後葉ホルモンではなかろうか と考え,本四血液の抽出液を化学的に検索した 処,後葉ホルモンは証明されなかった。 胎児の剖検所見 本胎児は頭部,胴部,左右上肢,同下肢,戸出 及び胎盤の各部に離i断され,その離断面はいすれ, も著しく不正鈍であるが,死後変化高度にして出 .血の存否は全く不明である。頭部は略々完全に軟 部組織を欠損し,左右前頭骨,左頭頂骨,後頭鱗 及び襖状骨体の5骨を存するが頚骨はV・すれも欠 如している。椎骨は略ft完全に連結し原型を留め ている。胸椎には7本の肋骨を附着し他3本の肋 骨を遊離してV・る。左右上肢は大部分,骨を露出 し,僅かに残存せる軟部組織によって連結されて いる。左右下肢はそれぞれ:左右の腸骨を附帯し, 他部に較べ軟部組織の欠損が少V・ので梢々原形を 留めてV、る。これら小骨の大ぎさを本邦胎児骨体 の計測値5・6)と比較するにその成績は第工表に示 す通りである。 第二表 骨の計測値(単位mm) 骨
前頭骨=1
名体胎児魔・ケ月馳・・月1半巴定
左 34×30、 1右,5面27×27 i 42×4’i6ケ月 1頭頂骨147・・6137・3254・54巨
後頭釧38… 8・24 」 43…1・
剛套llli
困 351
上榊闘,r…
左 32 { 擁骨.一一7一一一.一一一一.右i 30
左i 34
尺骨
F墨黒
左142
大腿骨i…一.i一右1 43
uJN.L ! 左 34 16 [1 lg 11 ,, l l 38奄S3{5ケ月
i .32 1 39 1 e i 旨.㌔竺_L
37 40 「6ケ月 1 脛 骨圃3・
34 43 5ケ月腓骨㊧34
…右132
33 40 t/」一 [” i 1
頭髪遷糎卿・胆
里長概「2 × 4 1, (一) 1 (+) L 膀帯及び胎盤は汚礒淡褐色乃至汚臓淡赤褐色を 呈す。膀帯は著しく扁平化し,全長約40・Ocmに 第三表 隣帯及び胎盤 ×..一 [ \\ 添胎鼎 \刈 1胎生・ケ月胎生・・月1剃女痴女
判定 騰帯の長さ (cm) 胎盤の重さ (gr) ・一2・ Ol 26・gl 31・61 3L OI6ケ月 oa 5 iso.o 1 246.o 5ケ月 一330一して胎盤附着部の上方約15.⑪cmの処において離 断されている。膀帯及び胎盤の大ぎさを本邦胎児 晒帯及び胎盤の計測値と比較するにその成績は第 三表に示す通りである。 第2例 21才,♀,昭和27年1月,突然おきX: Genitalblutung のため附近の医師の診察をうけた処,妊娠4カ月と診 断され,翌日:再び来院した時は破水していたので,パ ントポン。スコポラミン0.5cc,更に30分後同0.2cc注 射による麻酔の下に子宮内容除去術を行ったが,その 聞に全身状態悪化し痙攣を惹起して死亡したものであ る。平素から心臓は弱かったという。筒解剖時におけ る死後経過時間は約20時間である。 剖検所見 1. 外:景検査=体格並びに栄養は中等∩全身の 皮膚の色は…般に蒼白であるが,背部には暗紫赤 色の屍斑を強く存す。左上臆前部に:は注射痕と覚 しいもの8個を散在しているn前口は約三横指を 通づ㌔ 2.内需検査:脳には異常が7S Vx。右胸腔背面 並びに右肺葉間において繊維性癒着を営み,肺肋 膜下には約米粒大の出血斑小数を散在している。 左肺及び会厭部は忽々浮踵状である。胸腺は完全 に脂肪織化している。心臓の大きさは本屍の手直 の約一倍半大,重さ385、Ogr,心外膜下脂肪織の 発育は可良にして心外膜下に盗血点はない。左右 心房並びに右心室内には暗赤色流動性血液梢々多 量を容る。左心室は稽々肥大拡張している。各弁 膜装置,腱並等に異常はないが肉柱には約碗豆大 以下の出血斑少許を散在している。左右腎臓の星 芒静脈は7Sk’充盈し,腎孟粘膜下に約蚤刺大の盗 血点多数を散在している。胃内には紫赤色の瀕濁 内容約600.Occを容れる他異常がない。小腸,大 腸,膀胱,脾臓,肝臓及び膵臓等におV・て雨意が なV・。子宮の大きさは高さ約17.5cm,巾は底部 において約10.Ocm,子宮外口は約一横指を通 す。子宮外口は極めて柔軟にして一血様粘稠軽少許 を附着し,同周辺部には点状の出血巣数個を散在 している。子宮腔内には胎生約4カ月の女性胎児 並びに胎盤を容る。子宮粘膜は脱落膜で被われ, 一部分卵膜を附着している。右卵巣には妊娠黄体 を認める。 胎児は附写真Nに示せる如く,身長は約22.O cm,体重210.09にして略k一胎生4ヵ月であるが 左上肢は同肘関節部におV・て切断され,右下腹 部,同樗部並びに同大腿部に亘る約二倍掴指頭面 輔の軟部組織欠損それぞ・kL一一・個を存し,腿骨を露 出している。これら断端及び心知はV・すれも不正 鈍である。左股関節は脱臼している。膀帯は全長 14.6cmにして胎児側約3.6cmの処におV・て切断 され,断端は不正鈍である。 病理組織学的所見 ヘマトキシリン・エオジン染色並びに脂肪染色 を施して検索するに,脳,肝,脾及び腎において はうつ血,肺においてはうつ血及び水腫,肝及び 心筋においては脂肪変性が認められた。 化学検査成績 Stas−Otto氏法による.血液及び胃内容の抽出液 について,第一属毒物(酸,アルカの,第二属毒 物(青酸,黄燐等の揮雄性物質),第三属毒物(モ ルヒネ,睡眠剤等の植物塩基アルカロイド)及び 第四属毒物(水銀,砒素等の金属毒)の検出を試 みたがV・すれもその成績は陰性にしてこれらを証 明でぎなかった。 総括並びに考按 以上述べた二症例はいすれも堕胎致死事件とし て取扱われたものであるが,第1例は妊娠6ヵ月 の経産婦が人工妊娠中絶を受けた処,その操作終 了時に死亡したもので,全身著しく貧血性にして 子宮頸部には約4.0∼3.8∼2.Ocm大の創傷一個存 しているが子宮腔内及び腹腔内に胎児等の遺残無 く,殆んど血液の存在も認めなかった。第2例は 切迫流産(妊娠4ヵ月)の為子宮内容除去術を行う べくパントポン・スコポラミン0.7ccを二回転亘 り注射した処逐娩途上にて死亡した例であるが, 子宮においては著変を認めす,左心室の肥大,拡 張並びに肉柱の出一八等が認められた。 第1例:本職の生殖器はV・すれも妊娠の徴候を 具有し特に子宮は明らかに妊娠子宮の所見を呈し ている。而して子宮の大ぎさから判断して略々妊 娠6カ月であろうと推測され,る。次に同産院から 発見された胎児の各骨体,画面並びに胎盤等の計 測値はいすれも胎生5ヵ月乃至6ヵ月の平均値に 略・k’一5x’している処から考えてこの胎児は恐らく 本屍のものであろうと思われる。 本屍の死因は心臓内及び大垣管内に殆んど」血液 が入っていないこと及び内臓諸臓器は一般に高度 の貧血状態にあること等から予宮頸部後壁損傷に
よる失血死であろうと考えられる。而して腹腔内 には血液が全くなかったこと,損傷部位が子宮体 部でなく子・宮頸部であったこと及び穿孔の起って V・ないこと等がら考えて恐らく外出th1.死であろう と、思われ.る。 しかし死後変化高度のため損傷発生の機序に関 しては明らかではない。しかし離断された胎児の 状態から考えて,子宮内容除去術を行い,その際 用いた流産鉗子或は離断された際に露出した胎児 の骨等によって損傷されたものではなかろうかと 思われる。 次に入工妊娠中絶の場合その術式に関しては既 に成書にも記載されている7)8)通り,子宮内容除 去術を行うのは胎盤が完成される妊娠4ヵ月以前 であり,5ヵ月以後ではブジー或はメトロイリン テル挿入,卵膜穿刺等によって早産を開始させる のが通例である。家例におV・ては死亡前の状況が 判然としないのでよく判らないが,入院直後子宮 に何かを挿入したとの事であるので恐らく子宮内 容除去術を行うため子宮口を開大せしめんとして ラミナリや桿を挿入したか或は陣痛を起させて早 産を開始させるためにブジーを挿入したものと心 えられる。後者の揚合は妊娠6カ月における本屍 の処置として適当ではあるが5∼6ヵ月の揚合ぽ 子宮の感受性が少ないため充分な効果を期待出来 ぬ場合が多く本馬においても同様な結果を生じ, 引続き子宮内容除去術を行ったのではないかと推 測される。 子宮内容除去術の危険性に関しては安藤9)によ ると,妊娠の中期(4ヵ月)では同初期(2∼3 ヵ月)の約10倍,後期(5∼7ヵ月)では約145 倍の死亡者を出している。 又死亡した例に比べ死亡しなくとも手術の失敗 により重篤な症状を呈した例は前期では死亡例の 約10倍,中期では約7倍,後期では約1.25倍とな っており,子宮は月令の進むと共に容積を増すの みならす極めて柔軟となるために,僅かな外力に よっても容易に断裂し穿孔を来し易くなるので妊 娠の後期になる程危険であると考えねばならな V“o 本例におV・ても子宮内容除去術を行ったものと 考えられるが最初からラミナリや桿を挿入して本 術を行ったとすればその処置は全く不適当であ り,更に又早産させるべくブジe一’を挿入したとし ても引続き子宮内容除去術を行ったのではその判 断と処置に慎重を欠V・たものと考えねばならな Vie 又入院の翌日に注射を受けたようであったが, これは脳下垂体後葉ホルモンではなかろうかと思 われたので検索したが,血中からこれを証明する ことが出来なかったのでこの点に関しては全く不 明である。叉注射後に発生した発熱及び悪感は, 子宮口に挿入したと思われるラミナリや桿或はブ ジー一等よつて惹起されたものと考える。 手術時における出血の処置に関しては穿孔の大 なる揚合及び本曲の如く子宮損傷による大量の出 血により容易に止.治し難い揚合には直ちに開腹:術 を行って出一宿竈であるところの子宮を遠出するこ とが患者を救う唯一の手段と考えられる。然るに 本渡においてはその処置がとられてbない。虚名 血の治療として最も理想的と考えられる輸血さえ も行った形跡が見られないのは誠に遺憾であると いわねばならない。 これは全く術者の不手際によるものか或は設備 の不完全な漸漸であった為ではないかと謡えられ るが,術者が医師ではなく助産婦であっπ事が後 日判明し,かかる不適当な処置も有り亡べき事と 思われた。 第2例:本屍の子宮腔内には約4カ月の胎児を 容れ,胎児が数ヵ所に亘って損傷されてV・る処か ら恐らく子宮内容除去術を行ったものであろうと 考えられる。然るに子宮自体には何等死因となる ような変化を認めない上,病理解剖学的並びに病 理組織学的には殆んどの臓器において貧」血よりむ しろうつ血がみられる処からその死因は子宮内容 除去術による出Whとは考えられなV・。然るに心臓 においては左心室の肥大,拡張を認め,心臓重量 は385.Ogrにして本邦21才女子の標準である210・O gr5)にくらべ著しく重い。叉病理組織学的には心 筋の脂肪変性も認められるのでこれらの点を考え れば跳躍の心臓が病変を有することは明らかであ る。かかる揚合にパントポン・スコポラミン等の 麻酔剤を用いるには非常な注意を要しle) 一N 12),正 常人においては安全な量であっても危険を招く事 があり得るのではないかと考えられる。 又施行したと思われる子宮内容除去術は妊娠4 ヵ月の中絶法として不適当とは老えられないが2 乃至3ヵ月の揚合に較べ著しい危険性を有してVO 一832一
る。即ち胎生4カ月に入ると胎児は再成り発育し ており,短時間胎児が通過し得るだけに頸管を開 大させることは困難である。しかし本例において は既に出血もas lp流産が始まっていたので(切迫 流産),医師は取急ぎ子宮内容除去術を行ったも のであろうと思われたが,局所の治療のみを考 え,心臓の機能に対して全く考慮を払わなかった ので麻酔剤の注射及び手術の侵襲等が誘因となっ て急性心臓死を惹起せしめ飽のではないかと考え られる。而して急性心臓死とは死因と認むべき病 変の認められない内因死において心室の肥大,拡 張並びに心臓におけるその他の変化を有する場合 をいうのであって,旧例においてもまさしくこれ に該当するものと老えられる。このような事故は 適正な診断を行うことによって未然に防ぎ得るも のと思われるが本四においては胸部の診断に慎重 を欠いた為このような不幸な転機をとったもの であろう。 結 語 以上私達は昭和23年から同28年迄の5年間に東 京都監察医務院において扱われた堕胎致死事件の うちの:二例について報告した。 即ち第1例は妊娠6ヵ月にして子宮内容除去術 を行い子』宮を損傷し,これにより大出血を惹起し て死亡したものと推測される。而して妊娠6ヵ月 の場合に子宮内容除去術を行うのは全く危険であ り,たとえ早産をさせるのが最:初の目的であった としても予想通りにならなかったといって引続き 子宮内容除去術を行ったのは全く正しい処置とは 老えられない。而も出血に対する正しい処置が何 等為されていないのは誠に遺憾で,術者が助産婦 でしかも設備不充分な処で行われたと老えると, かかる事態の発生する可能性が誠められるのであ る。このようだ法律上許されない人k’の施術を厳 重に取締ると共に,又家族計画を望む人達にも種 k・の観点に立っての自覚が望まれる。 第2例は妊娠4ヵ月にて発生せる切追流産のた め子宮内容除去術を行い,逐娩途上にて死亡した ものである。而してその死因ぽ急性心臓死にして 麻酔剤及び手術の侵襲等が誘因となったものと考 えられる。それ故慎重な態度で臨めば,このよう な事故は未然に防止できたのではなかろうかと考 えられる。 戦後急激に堕胎が増加し,その為母体を傷つけ るだけでなく不幸な転機をとるものも多数発生し てVoる様であるが,それらの中には本二例の如く 当評者が少しく注意すれば避けられたであろうと 思われる揚合もあり,この点に関しては充分に反 省し,自覚しなければならなV・ものと考え,以上 報告した次第である。 (本論文の要旨は東京女子医科大学々会第七十三回例 会及び本学導入科の諸先生において発表した。) 稿を終るにのぞみ,御校閲を賜った吉成教授ならび に御助言をいただいた東京都監察医務院監察医の諸先 生及び本学婦人科の先諸生に深謝する。 交 鰍 ユ)橋爪一男:東西医学,6,565(昭24) 2)古屋芳雄:日本医科大学雑誌,18,649(昭26) 3)厚生省公衆衛生局:公衆衛生,9,72(昭26) 4)白木正傅1治療,53,912(昭26) 5)松倉豊治編;法医学計数(昭22) 6)藤原叡岳見1新法医学(曜5) 7)柚木祥三郎:小産科手術学(昭25) 8)久慈直大郎=産科手術学(昭27) 9)安藤画一,小島信夫:産科手術書下巻(昭25) 10)山口 寿:臨床の薬理(昭27) 11)西]1:義方:内科診療の実際(昭19) 12)森島庫太:i薬理学(昭23)
附写真1 離断された胎児(第一例)