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建築設計図書の著作権性と複製における同一性 利用統計を見る

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(1)

建築設計図書の著作権性と複製における同一性

著者

大森 文彦

著者別名

Fumihiko Omori

雑誌名

東洋法学

37

2

ページ

217-236

発行年

1994-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003497/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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建築設計図書の著作権性と複製における同一

はしがき

 著者はこれまで﹁建築学と法学の融合﹂をテーマに、建築家︵建築設計者及び工事監理者︶の法律問題のうち民法 を中心に論じてきた。これまでの論文では、とくに建築学的視点からのアプローチを試みてきたつもりであるが、今 回はこうした視点から建築関連の著作権に解析を加えてみようと思う。 二 著作権としての建築設計図書  1 建築設計図書の意義       ハユツ  およそ﹁設計図書﹂とは、建築士法上、建築物の建築工事実施のために必要な図面︵現寸図その他これに類する図          ヨご 面を除く︶及び仕様書をいう︵同法第二条五項︶とされているが、一般的にはもう少し広く、建物・工作物の製作や施

    東洋法学      

二一七

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    建築設計図書の著作権性と複製における同一性       二一八       ハ   工の実施のために必要な図面その他の書類の総称を指す。もっとも建築工事実施のために必要な設計は、大きく分け て﹁基本設計﹂と﹁実施設計﹂に区別されるため、設計図書にも基本設計に関する設計図書と実施設計に関する設計 図書が存在することになる。またこうした設計がさらに、それぞれが﹁建築設計﹂﹁構造設計﹂及び﹁設備設計﹂の       ハ ツ 三種類に区別できるため、それらについて種々の図面や書類が存在することになる。        ハるッ       ハち      アレ  広く設計図書を例示すれば、概要書、求積表、敷地案内図、仕上げ表、配置図、平面図、断面図、矩計図、詳細図、        ハシ  展開図、建具表、構造図、構造計算書、設備関係図、仕様書などである。  2 建築設計図書の著作物性  著作権法上、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属 するものをいう︵著作権法第二条一項一号︶。したがって、建築設計図書についても、その全てが著作物として保護を 受けるわけではなく、あくまで学術的あるいは美術的な創作的表現であると認められなければ著作物としての保護は 受けられない。  ところで、建築設計図面︵ここでは建築設計図書のうち主要な構成要素である図面を指す。以後単に﹁設計図面﹂ という。︶そのものは、一般に著作権法第一〇条一項六号の﹁学術的な性質を有する図面﹂として著作物にあたると       ハリツ 解されているようであるが、その根拠はあまりはっきりしない。また設計図面を含む設計図書全体としての考察もな い。そこで、ここでは設計図面を含めた﹁建築設計図書﹂の著作物性について考えてみたい。  およそ建築物を設計するためには、構造・材料・環境工学・防災などへの配慮がなされなければならないばかりか、

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一個の建築に関与する人々の異なる要求をまとめあげなければならない。このように、建築における設計は、当該建       ハお  築物に要求される多様な要求を総合調整するところにその特色があるといえる。また、こうした総合調整を行うため には、それぞれの要求を設計者なりに評価しなければならないばかりか、総合調整の方法には無限といえるほどの可 能性があり、そこには設計者の価値観・思想が入り込み、その結果として設計者の創造性が発揮される。しかも総合 調整するためには学問的な裏付けが要求される。建築物に対する要求の多様化、高度化、それに伴う建築技術の進展 が進む今日の状況下においては、ますます建築学的な裏付けが求められよう。つまり、設計者は様々な要求を設計者 なりに評価し、無限の選択可能性の中から自分の価値観・思想にもとづいて総合調整した成果としての構想を表現す る点に設計者の﹁思想・感情の創作的表現﹂性の根拠が、またこうした一連の作業に学問的裏付けを必要とする点に       ハの  ﹁学術﹂性の根拠があるといえる。  そうだとすると、設計図面が学術的な性質を有する図面として著作物たりうるか否かは、右のような設計活動がな されたか否かがその実質的な判断基準となろう。もっとも、設計資格︵たとえば一級建築士︶には、設計活動のべー スとなる建築学的知識や技術が要求されているため、こうした資格を備えた者の作成にかかる設計図面は、通常著作       ハおズね  物にあたると考えてよいと思う。  ところで設計図面には図形のほかに数値や言葉が記載されているほか、仕様書や仕上げ表なども図形ではなく言葉 を用いて表現されている。こうした数値や言葉は、設計図面とは別に﹁言語の著作物﹂︵著作権法第一〇条一項一号︶と して考えるべきであろうか。設計図書において、図形も数値も言葉も、設計構想を伝達する一表現方法であり、全体

    東洋法学      

一二九

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    建築設計図書の著作権性と複製における同一性       二二〇 としてみた場合、それぞれが設計者の創作的表現の一端を担っていることは確かである。しかし、設計図面は図形が 表現の中心的役割を果たしているものであり、設計図面中の数値、言葉は、それ単独では設計構想の表現として必ず しも十分とは言えず、図形と一体となって図形としての表現をより意味あるものにしている。そうだとすれば、設計 図面中の数字や言葉は、あえて独立した著作物とするより、これらを含めた設計図面全体として﹁学術的性質を有す る図面﹂と考えれば足りるのではないか。しかし仕様書などを﹁学術的図面﹂に含めて考えることには若干無理があ ると思われる。それ自体言語の表現としてそれなりに完結しているからである。かといって、それ自体を﹁言葉の著 作物﹂というには抵抗を感じる。仕様書などについて、直ちに表現としての創作性が認められるか疑問が残るからで ある。そこですでに述べたように、設計図書を全体としてみれば仕様書なども設計図面と相侯って一つの創作的表現 の一端を担っていることから、仕様書などは、少なくとも設計図面とともに設計図書全体としての著作物を構成する 一要素にすぎないと考える方がよいと思う。  以上からすると、設計図面は学術的図面として、また設計図面を含む設計図書全体は、編集物︵著作権法第一二条︶       ハおズ   に準じた著作物と考えられないだろうか。 ︵1︶現寸図︵建富一器憂③且お︶現寸で描いた図または図面。﹁現図﹂ともいう。︵彰国社﹁建築大辞典﹂四四七頁︶。 ︵2︶仕様書︵巷8田8江8︶工事に対する設計者の指示のうち、図面では表すことができない点を文章、数値などで表現す   るもので、品質・成分・性能・精度・製造や施工の方法、部品や材料のメーカー、施工業者などを指定するもの。︵同﹁建

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5婆3

︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ i2!i王0 築大辞典﹂七二︸頁︶。  周  ﹁建築大辞典﹂八二四頁  披稿﹁建築設計の法律空間﹂東洋法学三一巻一 “・二併合 一二三頁以下。  仕上げ表︵暁慧簿8箒含亙  建築各部の仕上げを︸まとめに示した表。普通、外部・内部の各室別に、床・幅木・腰 壁・天井その他のエレメント項目について記入してある。これにより、ある部分の仕上げを知るのに、多くの図面を照合す る手間が省かれ、また全般的にその建物の仕上げ程度を推察できる。更に、図面に漏れた仕上げ指定を補うこともできる。 ︵前掲﹁建築大辞典﹂六〇九頁︶。  配置図①一2象&鍔惹謎②℃ζ算窪①一般には、対象物の配置と相互的位置関係を指示する図面②建築で単に 配置図という場合は、建物と敷地の位置関係を示す図。普通、造園や道路の計画図と︸緒にすることが多い。︵前掲 ﹁建 築大辞典﹂ 一二〇五頁︶。  矩計図︵かなばかりず︶︵ωの&S鉱8琶乙還証粛︶ 矩計を描いた図。実用的には、平面図と矩計図が建物の建築設計 の代表的図面で、住宅などの簡易な建物の場合は、この二つの図面で建物が製作されることもある。︵前掲﹁建築大辞典﹂ 二七一頁︶。  展開図︵一糞蝕黛亀磐魯霞︶ 室内展開図の略。室を構成する壁面の、それと平行な投影面に対する投影図。一室ごとに まとめて、壁面の仕上げ、開鷺や設備器具の取付位置などを指示する。普通1/㎜、1/50で描く︵前掲﹁建築大辞典﹂一 〇四二、六四九頁︶。  構造図︵ω霞8櫛貰巴鋒袋欝αq︶ 構造に関する部分だけについて作成された図。たとえば、基礎伏せ、床伏せ、梁伏せ、 小屋伏せ、軸組などの一般図、各種の構造断面リスト、構造体の矩計や詳細図など。︵前掲﹁建築大辞典﹂四九〇頁︶。  文化庁﹁最新版著作権法ハンドブック、一九八九年版﹂一一頁、加戸守行﹁全訂著作権法逐条講義﹂八七頁。  彰国社・新建築学体系﹁建築計画﹂八∼九頁。  設計図面の多くは学術的性質を有する図面と考えられるが、だからといって美術の著作物たりえないとはいえない。設計

  東洋法学      二二一

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︵B︶ ︵M︶ ︵!5︶ ︵弼︶ 建築設計図書の著作権性と複製における同一性 二二二 図そのものが審美的なものであることもありえよう。つまり、設計図はその実用性からして通常学術的な図面と考えられる が、芸術的表現としての可能性も持ち合わせているものである。  裁判例でははっきりしないが、資格ある建築士が自ら設計すれば、だいたい学術性及び創作性は認められるようである。 東京地判昭和五四年六月二〇日︵無体集二巻一号三二二頁︶は、﹁X︵原告︶設計図書三二葉は、いずれも、一級建築士 である亡Aが、昭和四八年五月頃から昭和四九年一月頃までの間︵基本設計の段階を含む︶に、その知識と技術を駆使し、 X事務所員で同じく一級建築士であるBをその補助者として使用して、独自に作成した建物の設計図書︵設計図、表︶であ ることが認められる。したがって、X設計図書三二葉は、いずれも著作権により保護される著作物であり、亡Aはその著作 権を取得したというべきである﹂としている。  東京地判昭和五二年一月二八日︵無体集九巻一号二九頁︶も﹁X設計図は、昭和四五年七月から同年一〇月までの間に、 Xの業務に従事する設計担当者が、その職務上、その感覚と技術を駆使して独自に製作したことが認められる。したがって、 X設計図は、著作権により保護される著作物であり、Xは、その著作者であり、著作権者であるというべきである﹂として いる。  久々湊伸一﹁著作権のノウハウ﹂八六頁は、﹁設計図書それ自体は、言語の著作物あるいは学術的な性質を有する図面と して複製から保護される﹂としているが、図面中の書葉や仕様書それ自体を言語の著作物と考えているのか趣旨は不明であ る。  建築設計図書には含まれないが、エスキス︵①超ε器の 設計構想のためのスケッチ、前掲﹁建築大辞典﹂一四㎜頁︶を作 成することがよくある。このエスキスは設計者の設計上の構想を平面図や立面図などとは異なる形で表現したものに他なら ず、創作性は認められよう。しかし、総合調整作業においてその程度は基本設計図や実施設計図と相当程度異なり、設計の 完成度合において基本設計図などと格段の違いがある。したがって、エスキスを直ちに学術的性質を有する図面に含めて考 えることには疑問を感じる。むしろ、エスキスは、美術的な色彩の方が強いと思われるため、その多くは、著作権法第一〇 条一項圏号の﹁美術の著作物﹂にあたると考えられるのではないか。

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 3 著作物として保護されるために必要な設計図書の完成度  通常、設計図書は何枚もの図面を含んでいる。この場合、設計図書は必要図面全てが完成しないと著作物となりえ ないのだろうか。また、たとえば四階建の建物のうち、一階分の平面図しか完成していない場合、一階分の平面図が それだけで著作物たりうるのか。設計図書として設計図面がどの程度完成すれば著作物たりうるか。これまでほとん ど意識されていなかった問題である。  なるほど設計図書がある建物を完成するために必要なものという点からすれば、平面図、立面図、断面図などの意 匠図面や構造図面、設備図面などの各図面が集合されてはじめて意味を有するともいえよう。この観点からすると、 設計図書は全体として揃わないと著作物たりえないと考えられないこともない。  しかし、設計図書は、すでに述べたように、種々の要求を設計者の価値観・思想にもとづいて総合調整したうえで きた構想を表現したものである。また細かく言えば、構造図面、設備図面はともかく、少くとも意匠図面は、その分        ハヨ  野における価値観・思想の反映である。こうした観点からすると、設計図書はたとえそれが中途半端なものであって も、設計者自らが創造性を発揮した結果の一部表現である以上、著作物といえるのではないか。もっとも、設計図書        ハ   は、設計者の構想を他人に伝達する一手段としての側面を有する。設計図書が伝達手段であるならば、そこに描かれ ている図形などの意味内容が他人に伝わる程度のものでなければならない。そのためには、設計構想の表現としてそ れなりに完結していることが必要となろう。たとえば、単に直線一本を描いただけでは設計者の構想は一部でも他人 には伝わらない。この意味で設計図は単に美術とは異なる。したがって、設計図が著作物として保護されるためには、

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二二三

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    建築設計図書の著作権性と複製における同︸性       二二四 設計者の構想が一部分でも他人に伝達できる程度の完成度、言葉をかえれば図形などの一表現として完結しているこ とが必要というべきである。したがって、たとえば一枚の図面で四階分の平面図を描く予定のところ一階分の平面図 しか描いていない場合でも、一階分の平面図としての表現は完結し、設計者の構想の一部が伝わるため、その図面は 著作物といえよう。  以上からすると、設計図書は全体として完成していなくとも一部でも表現として完結していればそれだけで著作物 たりうるし、設計図書が全部完成したと評価できる程度にまで達した場合には、各図面ごとに著作物性を認めること も、また全体として一つの著作物とみることも可能といえよう。 ︵1﹀ ︵2V 意匠図面はともかく、構造図面、設備図面が厳密な意味で価値観・思想の反映といえるかは非常に難しい問題であり、 の点に関する結論はとりあえず留保する。 彰国社 新建築学体系﹁建築計画﹂二縢二頁。 こ 三 建築設計図書における複製の判断基準  建築設計図書の著作者には著作権が認められるが、その中で特に問題となるのが複製の問題である。著作物の﹁複 製﹂とは、印刷、写真、複写、録音その他の方法により有形的に再生することをいう︵著作権法第二条一項一五号︶。し        ヘヱマ たがって、建築設計図書の複製は、建築設計図書そのものの複製︵コピ⋮やトレ⋮スが典型的な場合である︶を指す。

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もっとも、ある建築設計図書に多少の変更、修正を加えた場合でも、変更・修正前の図書と変更・修正後の図書が同       ハ   一であると評価できる場合には、一般に複製と考えられている。しかし、同一性の判断基準については必ずしも明ら かではない。そこでここでは、建築設計図書における同一性の判断基準について考察してみたい。  璽 与条件との相対性  建築設計は、ごく特殊な場合を除き、建築を依頼されてはじめてなされるものであり、その意味におけてはどのよ うな形であれ、建築を依頼した者の意向を無視することはできず、建築主から与えられた条件︵与条件︶の範囲内で          ハ い 行わなければならない。したがって、一般的には建築主から与えられる条件が具体的かつ詳細であればあるほど、建 築設計における設計の自由度は減少し、設計者の創造性は少なくなる。たとえば、デザインを単に﹁洋風﹂に指定さ れた場合と﹁洋風、しかも躯体は鉄筋、しかも外壁の仕上げは石﹂と指定された場合とを比較すれば、設計者の創造 性発揮の場に相違があることは容易に想像できよう。すなわち建築設計の創造性は、こうした与条件と相対性を有す るといえる。そうだとすると、建築設計図書の同一性の判断においては、与条件との相対性を考慮すべきである。  たとえば、与条件として建物の用途が事務所用ビルであったとする。投下資本の回収という観点が強調されがちな 事務所用ビルのような建物では、敷地を目一杯利用し、かつ単純な平面形︵例えば矩形﹀であることが多い。また、 平面プランにおいては、できるだけ広い空間を確保しようとするため問仕切などはほとんど設けないことも多い。し たがって、平面図における創造性発揮の場は、ときにエレベータ⋮や便所、湯沸室、階段などのコア部分程度になっ てしまうことに注意を要する。これに対し、劇場や病院など特殊な建物ではそのようなことはほとんど考えにくい。

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    建築設計図書の著作権性と複製における同一性       二二六  2 各図面の設計における重要度の違い  建築設計を平面計画、断面・構造計画、立面計画、設備計画と細分化した場合において、その中核として考えられ        ハヰいつこ るのは平面計画といってもよい。それゆえ同一性の判断においては、まず平面計画の成果ともいうべき平面図に重き を置いた比較検討をなすべきである。  ただし、たとえ平面図を第一に比較検討する場合でも、平面図に記載されている数値をあまり過大評価してはなら ない。たとえば、与えられた敷地を目一杯利用して建物を設計して欲しいと依頼された場合︵たとえば間口六メート ル、奥行き二〇メートルの敷地内で建築できる建物の間口最大寸法が五メ⋮トル、奥行き最大寸法が一八メートルだ ったとする︶、建物の間口寸法を五メートル、奥行き寸法を一八メートルとする設計者も多いであろう。この場合、 建物の外形の数値はいわば与条件の一つと考えることも可能であり、そうであればこの数値がたとえ同じであったと してもそれを同一性の重要な一要素として考慮することは妥当ではない。すなわち、前述の与条件との関連性がここ でも問われるのである。  3 各図面における設計の自由度の違い  設計の自由度が減少すれば設計者の創造性も少なくなり、その結果各図面における表現としての自由度も減少する。  ところで設計の自由度という点からすれば、構造や設備に比べ、いわゆる﹁意匠﹂に関する設計が最も広く、無限 の可能性があると思われる。それゆえ、たとえば比較対照図面のうち、平面図における数値の違いと同一の違いが構 造図に存在したとしても、両者における数値の違いが有する意味合いは異なり、同一性の判断に際しては、前者の方

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が後者より同一性を認め易いと考えられる。なぜならば、一般に設計自由度の大きい場合の方が小さい場合より類似 した形、数値になりにくいと考えられるからである。つまり、同一性の判断は、設計の自由度とも関連するのである。 こうした点からすると、設計図面を比較する場合には、設計自由度の大きいものに重点を置くべきである。したがっ て比較対照の重点は意匠図中心となる。多くの裁判例が意匠図中心の比較検討となっているように思われるのは、こ の意味においてはじめて理解できる。  ただ、設計の自由度という観点からすれば、意匠図のうち、とくに重点とされる平面図だけでなく立面図などにも 十分配慮する必要がある。たとえば、立面計画を見た場合、今日これだけ多くの建物が存在するが、ファサードが同 一である建物は皆無といってよいほどである。こうした事実からも立面計画における設計の自由度の大きさも認識で きるであろう。 ︵1︶設計図に従って建物を建てる行為は、﹁建築の著作物﹂の複製である︵著作権法第二条一項一五号ロ︶。その理由について   は、建築の著作物というものの創作性は、設計図の中に予定されている︵文化庁・前掲・一二頁︶、設計図に従って建築物   を完成することは、形式的には設計図の複製とも建築物の複製ともいえないが、それでは建築物の著作物については実質的   には保護がないのと同様の結果になってしまう︵同二九頁︶、建築の著作物は有体物たる建築物の建築という形式によって   も、建築設計図の作成という形式にょっても表現されうる︵秋吉稔弘ほか﹁著作権関係事件の研究﹂八五頁︶、できあがっ   ていない建築物をできあがったものと同様に評価をした︵加戸守行・前掲・四〇頁︶などと説明されるが、この点について   の考察は後日の機会に譲る。 東 洋 法 学 二二七

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︵5︶ 建築設計図書の著作権性と複製における同一性 二二八  大判昭和一〇年五月二照日刑集一四巻五六〇頁、東京地判昭和五二年一月二八日無体集九巻一号二九頁、東京地判昭和 五四年六月二〇日無体集一一巻一号三二二頁、東京地判昭和六〇年四月二六日判タ五六六号二六七頁なども同一性を前提に 複製を考えている。  拙稿﹁建築設計の法律空間﹂東洋法学第三一巻第一・二合併号一二七二二八頁。  彰国社・新建築学体系﹁建築計画﹂二〇九頁は、﹁平面計画は、建築の使用上の機能に最も影響を与える計画であり、建 築空間の各種モデルによって得られた検討結果をここに盛り込むことになる﹂とし、因みに、断面・構造計画においては、 ﹁平面計画と同じように使用上の機能について特に鉛直方向の広がりについて検討される。﹂、立面計画においては、﹁建築 は最終的に形をもって実現するわけであるから、そこには表現上の主張がなされ、建築の質を左右するため、ここに総合的 検討の結果が集約される。﹂、設備計画においては、﹁他の計画が主として建築の空間的広がりを問題にしているのに対して、 ここではそれをメカニカルに維持する機能が要求される﹂と説明する。  オーム社・社団法人全国建築士事務所協会連合会編﹁建築士事務所ハンドブック﹂二ー三三において、﹁平面計画は、そ のもののみを考えると、あたかも平面図を計画する操作だけのようにとられるが、実は、この平面図を作る操作は、建築家 の頭の中で同時に断面や立面の計画はもちろん、構造、付帯設備の計画に至るまで、その建物に内在するあらゆる問題を見 通すことができ、計画を進める過程で相互のバランスをとりながら修正される。特に要素の複雑な近代建築においてはそう であり、平面図を見れば専門家は、その建物が使い良いかどうか、その作り出される空間の雰囲気はどうかなど建物の性格 の大体のことはわかるのである﹂とまで述べている。 四 同︸性に関する裁判例 では、右判断基準を考慮しつつ、同一性の判断に関する裁判例を検討してみよう。

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 1 東京地判昭和五二年一月二八日︵無体集九巻一号二九頁︶は、﹁X設計図とY設計図を対比すると、前者では地 下室︵暖冷房室︶の設置を前提として煙突、パイプスペースの記載がされているのに対し、後者では地下室の廃止に ともなって煙突、パイプスペースの記載も存しないこと、建物西側の二、三、四階の階段脇の窓が、前者では外壁か ら切れ込んだ形で、これを直角に設けられているのに対し、後者では単に外壁と平行に設けられているにすぎないこ と、建物南側のベランダが、前者では一一、五、六階に設けられているのに対し、後者では右のほか四階及び屋上にも 設けられていること等の差異があるが、建物の基本的構造、間取り等に関しては両者は殆ど同一であり、全体的に見 る限り、両者は極めて類似していることが認められ⋮﹂るとして両設計図の同一性を認めている。  ところで本事案における与条件を判決理由から拾ってみると、X設計は地上六階建て、工費は約六〇〇〇万円、地 下室及び空調設備の設置であり、Y設計は、地上六階建て、工費は七一〇〇万円とエレベーター設置費用の合計額程 度、地下室なし、自動ドア及び屋外階段の設置なし、窓枠及びガラスの材質指定、外装仕上げの指定である。  これを前提に考えると、XY両設計図の同一性の判断に際し、︵⋮︶XY両設計がともに地上六階建てであること は、同一性を認める要素にはならない、︵β︶Y設計において地下室が存在しないこと自体は、X設計との違いを違 いを認める要素にならない、また地下室がないことによって煙突、パイプスペーズもなくなるらしいので煙突、パイ プスペ⋮スが存在しないこともX設計との違いを認める要素にはならない、︵辮︶Y設計において自動ドア及び屋外 階段が設置されていないこと自体は、X設計との違いを認める要素にならない、︵梓︶Y設計における窓枠、ガラス の材質及び外装の仕上げが、仮にX設計と同じであったとしても、そのことは同一性を認める要素にならない、とい

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    建築設計図書の著作権性と複製における同一性       二三〇 ったことを前提に考察すべきではなかろうか。そうだとすると、本判決において、地下室の有無に伴う差異である煙 突、パイプスペースの記載の有無は両設計図の違いとはならない︵平たくいえば、X設計図においてこれらの記載が ないものとして両設計図を比較すればよい︶のであるから、本判決中、XY両設計図の差異として挙げられている事 項が一つ減ることになる。したがって、私見からすれば、XY両設計図の同一性はより認められ易いことになろう。  また、XY両図面の比較対照図面は、主として平面図のように思われるが、これは平面図の重要性からすれば当然 である。さらに、平面図の設計自由度の大きさからすれば、建物西側の二、三、四階の階段脇の設置形態及び建物南 側のベランダの設置階の違いだけでは、Y設計図に設計者の創造性を認めることは困難のように思われる。  以上私見からすると、判決内容を見る限り、本判決以上にXY両図面の同一性を認定できそうであるが、建物の用 途、設計の自由度といった観点をも加味すれば、より正確な判断がなしえると思う。  なお、判決からは定かではないが、もし平面図だけしか比較していないのであればそれは妥当ではなく、平面図以 外の図面についても、比較検討すべきである。その結果、平面図以外の図面については著作権侵害は認められないこ ともありえよう。また、判決は﹁建物の基本的構造﹂を同一としているが、基本的構造とは具体的に何を意味するか はっきりしない。  2 東京地判昭和五四年六月二〇日︵無体集一一巻一号三一三頁︶は、X設計図︵一階∼屋上階平面図︶とY設計図 ︵一階∼R階平面図︶とを対比すると、﹁躯体構造の材料が、X設計図では鉄骨であるのに対し、Y設計図では鉄筋 コンクリートであること、住宅二階の台所、食堂兼居間の台所と居間の間仕切壁について、X設計図ではこれがない

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のに対し、Y設計図ではこれが存すること、住宅三階の二間続きの和室の一番奥の部分について、Y設計図では仏壇 と飾棚になっているのに対し、Y設計図では押入れと床の間になっていること、住宅二階、三階の正面の窓のうち、 右から一番めと三番めのスパンの窓が、X設計図では他の窓と同様スパン中央の物入れ、ファンコイルユニットを挟 んだ外開きの窓になっているのに対し、Y設計図ではスパンの幅いっぱいの引違い窓になっていることの相違点が存 すること、これらの相違点を除き、外形を形作っている線、各室の間仕切線及び各窓の位置、形が同一であること、 一階裏の住宅用入口のドア、一階︵三ヵ所︶二階︵二ヵ所︶三階︵一ヵ所︶の各便所のドアニ階右側の事務室の倉庫 のドアの開く方向が前者と後者とでは左右反対であること、三階左右両側事務室の倉庫のドアの数が前者では各二で あるのに対し、後者では各一であること等の相違点が存することが認められるけれども、これらの相違点は、右争い のない相違点も含めいずれも僅少部分の修正増減にとどまるのであって、全体として優に前者と後者の同一性を肯認 できる﹂とする。また、X設計図の立面図︵東西南北︶4LINE断面図とこれに対応するY設計図の立面図︵東西 南︶、断面図︵住宅部分、事務室部分︶とを対比するに、﹁住宅二階、三階の正面の窓のうち、右から一番めと三番め のスパンの窓に︵前述のとおりの︶相違点が存すること、この相違点を除き、外形を形作っている線、各窓の位置、 形が同一であること、その他﹁く﹂の字形の建物の設計図書であるため、描き方に若干の差異があり、また前者の4 LINE断面図とこれに対応する後者の事務室部分断面図の各部位の数値等に若干の差異があるものの、全体として 優にそれぞれの同一性を肯認できるし、さらのX設計図の矩計図、詳細図とY設計図の矩計図とを対比するに、前者 と後者とでは工法や各部位の数値の示し方等に若干の差異があるものの、全体として優に同一性を肯認できる﹂とす

    東洋法学      二三一

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建築設計図書の著作権性ど複製における岡一性 二三二 る。  ところで本事案における与条件を判決理由から拾ってみると、X設計は、床面積延約二〇〇坪、鉄骨造、三階建て、 店舗、住宅兼貸事務所、坪当たり二二万円ないし二三万円︵当事者間での合意にはいたっていない︶であり、Y設計 は、床面積延約一〇〇坪、鉄筋コンクリート造、三階建て、店舗兼住宅、坪当たり三一万円である。  これを前提に考えた場合、両設計図の同一性の判断に際し、︵ー︶三階建て、店舗、住宅兼貸事務所であることは 同一性を認める要素にはならない、︵“︶躯体の構造︵鉄骨造か鉄筋造か︶の違いそれ自体は、両設計の違いを認め る要素にはならない、︵菌︶坪単価の違いがどういう形で両設計に反映されているか︵本事案では構造の違いがその 主たるものかもしれない︶、︵短︶延床面積の違いがどういう形で両設計の違いとなって表われているかなどをできる だけ確定したうえで、同一性を判定すべきである。  ところで本事案は意匠図の同一性が問題になっているように思われるので、意匠図に焦点を当てて考えてみる。本 事案では平面図において平面計画の重要ファクターともいえる外部空間との境を形成する外形が同一である。ただし、 与条件の一つである敷地の形状を見たうえで、仮にその多くが同じような外形をデザインすると考えられる場合、た とえば、すでに述べたように事務所ビルなどもっぱら投下資本回収に主眼があり、目一杯敷地を有効活用したいと考 えられるような建物の設計では、敷地に沿った外形を形成することは多々考えられるので、そのような場合には外形 が同じであることが必ずしも同一性認定の要素にはならないこともありうるが、本事案がこうしたケ⋮スにあてはま るかどうかは不明であるため、ここでは一応考えないこととする。また内部空間を構成する間仕切及び開口たる窓の

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位置、形が同一である。また、立面図において外形、開口部︵窓︶の位置・形が同一であること、断面図において各 部位の数値などに若干の差異︵どの程度の差異か明らかではないが︶があるだけで他が同一であることからすると、 平面図の図面としての重要性及び各図面における設計の自由度を考慮に入れた場合、それぞれの図面における同一性 は認められそうである。  3 東京地判昭和六〇年四月二六日︵判タ五六六号二六七頁︶は、﹁X設計図とY設計図とを対比すると、一階平面 図では、内玄関、住宅専用階段、浴室及び湯沸所の形状が異なること、二階平面図では、前者には食堂に窓が設置さ れていないのに対し、後者では食堂に窓が設置されており、また、南側階段と押入部分、厨房の流し台ガスレンジの 位置が相違すること、三、四階平面図では、前者では物置、洗濯所及び浴室・便所をそれぞれ別個に設置したのに対 し、後者では物置、洗面所、便所兼用の一室にして浴室用バランス型ガスボイラーを設置したと、厨房東側窓の位置 が移動したこと及び前者では和室西側に窓が設置されているのに対し、後者では窓が設置されていないこと、立面図 においては、後者の北側立面図の三、四階厨房の高窓は前者より下方に設置されていること及び後者では屋上手すり の大部分が立上りコンクリ⋮トとなっていること等の差異があるが、他方、被告設計図の案内図では、原告設計図A −3図︵旦と道路の書き始め及び終わりの部分が同じであり、隣家各詳細図も同一であること、被告設計図の配置 図の周囲の寸法が北側一七三ミリメートル、西側二三六・三ミリメートル、東側三〇〇メ⋮トル、南側一七二・四 メートルとコンマ以下のミリメートル単位で同一であること、被告設計図D−4図の基準通り芯の位置は原告設計図 A−4図、Af5図の①、②の南北の通り芯、④、⑪の東西通り芯の位置が壁の中心線にあること、⑧、◎の東西の

    東洋法学      

二三三

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    建築設計図書の著作権性と複製における同︸性       工三四 通り芯の位置が柱の表面にある点でそれぞれ同じであること、一階平面図において、被告設計図の間口の壁芯間四・ 五メートル、奥行一二・四メ⋮トル、柱面より南と北のはね出しの二・七メ⋮トルの寸法、内廊下の幅、作業所等の 寸法が原告設計図A14図、A15図のそれと一致していること、二階平面図において、被告設計図の子供室の斜入 口、服入れ及び共用階段の寸法が原告設計図のそれと同一であること、三、四階平面図において、被告設計図の階段 室の廊下状部分と二段昇りの九〇度廻り階段、五段昇りまた二廻昇りの九〇度廻り階段があり、最後に二段昇って上 階へ行く部分の踏面と階段幅、パイプスペ;ス及びメ⋮ターボックスは原告設計図のそれと一致していること、被告 設計図D−5図及びD−6図の北側立面図の一、二階は玄関出入口、作業所出入口、クーラ⋮取付、子供室連窓とす べて原告設計図と同一であること、被告設計図東側と西側は南及び北からの折り返し部分○センチメ⋮トル仕上げと して図示されており、原告設計図と同様のデザインがとられていること、被告設計図D−M図の左に一、二階立面詳 細図、中央左に一、二階そして中央に三、四階矩形図がそれぞれ作図されており、原告設計図A−8図と同一である こと、被告設計図DI驚図の二、三及び四階の各階段は踏面の数も昇り方も階段幅も原告設計図A−H図と同一であ ること等、細部において多数の一致点があるほか、建物の基本的構造、間取り等に関しては両者殆ど同一であり、全 体的として両者は極めて類似していることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。右⋮⋮の確定事実によれば、 被告は被告設計図の作成に当たって原告設計図を参照したことが明らかであり、しかも、被告設計図は、原告設計図 と全く同一ではなく、一部差異はあるが、著作物の同一性を損なうほどのものとは到底認められないから、被告は、 被告設計図の作成に際し、原告設計図に依拠し、これを複製したものと認めるのが相当である﹂とする。

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 本事案におけるX設計の与条件は、作業場兼共同住宅、鉄筋コンクリート三階建て、工事費総額三〇〇〇万円、食 堂は二階、居間、浴槽は一階であり、Y設計の与条件は、作業場兼共同住宅、工事費三三〇〇万円の範囲内である。 この与条件からすると、後で作ったとされるY設計の方が設計の自由度が高い。にもかかわらず、重要度が高く、か つ設計自由度の高い平面図において前述のような類似点があることからすれば、全体として同一といえそうである。 また、比較対照の図面を明確にし、その中でも重要度の高い平面図を中心に検討していることは妥当である。しかし ここでも判決は建物の﹁基本的構造﹂を同一としているが、基本的構造とは何を意味するのか不明である。 五 建築設計図における複製と翻案  ある設計図書に多少の変更・修正をした場合、すでに述べたように一般には複製の問題とされるが、複製というよ りむしろ翻案と考えられる余地もあるので、ここに若干の検討を加えることとする。  たとえば、A設計図書︵平面図、立面図、断面図、構造図、電気設備図、給排水衛生設備図など︶をもとに他人が B設計図書︵A設計図書の平面図に記載されている﹁厨房﹂を削除し、厨房を削除したことに伴う変更・修正を必要 な限度で行い、それ以外は全てA設計図書と同じとする︶を作成したとしよう。この場合、多くの裁判例は、複製の 問題としてAB両設計図書の同一性を論じるように思われるが、﹁厨房を削除する﹂という行為の設計上有する意味 合いを考えてみる必要がある。  そもそも建築の設計は、当該建物に要求される多様な要求を総合調整するところにその特色、創造性、学術性があ

    東洋法学      

二三五

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    建築設計図書の著作権性と複製における同一性      二”・二六 ることは前述のとおりである。そして設計者によって表現されるものは千差万別といってよい。なぜなら、設計にお ける総合調整の方法はほぼ無限にある生言っても過言ではないからである。そうしたなかで、設問のように厨房の有 無のみが違っており、その他は全て同じというような平面計画は、設計者として創作性を発揮としたとは通常考えに くい。そうだとすれば、平面図に関してはやはり翻案ではなく、複製の問題として考えることが多いと思われる。  しかし、設備図などでは若干様相が異なる。すなわち、平面デザインはともかくとしても、厨房を削除することに よって少なくとも給排水設備に変化をきたすため、給排水設備設計に特別の配慮をめぐらせる必要がでる場面も生じ うる。つまり、給排水設備設計は、単に厨房部分を削除するだけでなく、場合によっては全体を見直す必要もありうる。  そうだとすると、﹁厨房を削除する﹂という一見単純な行為が、給排水設備の変更設計において変更する設計者の 学術的創造性を要求することにもなる。このように考えてくると、たとえ平面図で複製と評価される場合でも、設備 図あるいは構造図、さらにときには平面図以外の意匠図において、翻案と解する余地もありうることは今後注意すべ き問題点である。 六 おわりに 建築設計図に関する著作権については、多くの問題が存在するが、本稿はとりあえず、建築学的視点からの一アプ ローチとして、建築設計図書の著作権性と複製における同一性の判断基準などについて論じたが、本稿が諸問題解明 の一助になれば幸いである。残された多くの問題点については、後日、機会を見て論じてみたい。

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