Title
天然型エストロゲン及び抗エストロゲン剤トレミフェンに
よるマウス子宮内膜発癌に対する影響( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
橋本, 緑
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第440号
Issue Date
2000-03-24
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14687
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与目付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 橋 本 緑(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 440 号 平成12 年 3 月 24 日 学位規則第4条第1項該当 天然型エストロゲン及び抗エストロゲン剤トレミフェンによるマウス子宮内膜 発癌に対する影響 (主査)教授 玉 合 輝
彦
(副査)教授 森 秀 樹 教授 岡 野 幸 雄 論 文 内 容 の 要 旨 子宮内膜癌の発生,発育にはエストロゲンが深く関与しているが,その発生機序に関してはいまだ明らかにさ れていない。今風天然型エストロゲンであるエストロン(El)・エストラジオール(E2)・エストリオール(E), を用いて,C-fos,CjunmRNAとその蛋白発現の影響,さらに最近発癌において必須因子であるとの報告のあ る内因性サイトカインである,tumOrneCrOSisfactor(TNF)一a・interleukin(IL)-1aのmRNAとその蛋白 発現の影響に関して,マウス子宮内膜において検討した0さらに長期的に,それらEl・E2,E3によるマウス内膜 発癌に関しても検討し,発生した腺癌,内膜増殖症に関してc-fos,CjuTL TNF-a・IL-1αmRNAの発現につ いても検討した。また,子宮内膜病変に対する影響の乏しいとされる・抗エストロゲン作用を有する乳癌治療剤 である,トレミフェン(TOR)のマウス内膜発癌に対する影響も併せて検討した。 研究方法 10週齢雌ICRマウスに去勢2週間後より・El,E2・E3それぞれ25ppm,50ppmの混餌飼料を2週間経口投入し, その後子宮を摘出し子宮休部を長軸方向に半割し・一方は直ちに液体窒素にて凍結させた後-80℃にて保存し, c-fos,Cju仏TNF-a・IL-1amRNA発現レベルを検索するのに用いた0もう一方はホルマリン固定後通常の 方法で病理標本とし,病理学的診断に供した0子宮休部から抽出した総RNA3pgを用い,reVerSe transcriptasionを行い,POlymerasechainreaction(PCR)のテンプレートを得た0なお,各種遺伝子のPCR のためのプライマー(オリゴマー)の塩基配列は,すでに明らかにされた各々のcDNAの塩基配列によって設定 した。電気泳動で分離されたアガロース内のPCR産物をキャピラリー・トランスファーし,ビオチン化プロー ブとハイプリグイゼーションし,蛍光を発光させ,オートラディオブラムを行った0検出した特異的バンドの強 さをデンジトメータで測定し,半定量的に発現を比較した0 免疫染色は,ホルマリン固鼠パラフィン包埋ブロックを用いてLabelledStreptavidinBiotin法により行っ た。一次抗体は,ウサギポリクローナル抗マウス/os蛋白抗体,ウサギポリクローナル抗マウ袖遁白抗体,ヒ ツジポリクローナル抗マウスTNF-α蛋白抗凧ウサギポリクローナル抗マウスIL-1α蛋白抗体を用いた0 10週齢雌忙Rマウスに,短期実験と同様にEl,E2・E3それぞれ25ppm,50ppmの混餌飼料を28週間経口投与し, 子宮でのcjos,CjuTL TNF-a,Ⅰし1αmRNA発現レベルの検討と病理学的診断に供した。 10週齢雌ICRマウスに去勢2週間後より,E25ppmの混餌飼料を2週間経口投与0実験群は子宮摘出24時間前に, TORを皮下投与した。子宮でのcjos,CjunmRNA発現レベルの検討を行った0 10週齢雌ICRマウスにMNU溶液を左子宮腔内に注入0基礎食とE25ppmの混餌飼料を投与し・実験群には TORを4過ごとに計7回,皮下投与し,30週後に子宮内膜病変の発生頻度を比較した。 A)1)天然型エストロゲンによる去勢マウス子宮におけるcjosmRNA発現レベルは対照群よりもE225ppm, E250ppm,E350ppm投与群の方が高く,E250ppmでは著明に発現が増加していた。CjunmRNA発現レベル はE2,El/E。投与群の順で高く,El,E2,Eこiそれぞれにおいて用量依存的に増加傾向を示したoエストロゲン投 与群のTNF-amRNA発現レベルは対照群よりもE2>E3>El投与群の順で高く,また,El,E2,E3投与群それぞ一43-れにおいて用量依存的に増加傾向を示したoエストロゲン投与群のIL-1a mRNA発現レベルは対照群よりも高 く,E2>El>E3投与群の順で高く,El,E2,E3それぞれにおいて用量依存的に増加傾向を示した0 2)天然型エストロゲンによるマウス子宮内膜におけるcjo頗自発現に関してはE2>E3>El投与群の順でt発現 が高い傾向にあった。しかし,明らかな用量依存性は認められなかったoTNF-α・IL-1αの蛋白発現に関して は,E2>E3>El投与群の順で発現が高い傾向にあったoE2による発現は用量依存性が推察された。 B)1)天然型エストロゲンの長期投与によって発生したマウス子宮腺癌・内膜増殖症におけるcjosmRNA発 現レベルは対照群に比べて癌の方が高く・続計学的有意差を認めたocjunmRNA発現レベルは統計学的有意差 は認めなかったものの,腺癌>増殖症>対照群の順に高い傾向にあったo TNトαmRNA発現レベルはt腺癌 >増殖症>対照群の順に高く,腺癌の発生レベルは増殖症,対照群と統計学的有意差を認めた0Ⅰし1αmRNA 発現レベルも,腺癌>増殖症,対照群の順に高い傾向にあったが有意差は認められなかった0 2)エストロゲン投与群の子宮内膜に腺癌・内膜増殖症を認めた0マウス子宮内膜病変発生頻度はE2>El>E3の 傾向を示し,各El,E2,E3投与群でほぼ用量依存性を示した0単純型・複雑型内膜増殖症はE2投与群でほぼ100 %に認められた。 c)1)TOR投与による去勢マウス子宮内膜における各mRNA発現レベルに関して,E2+TOR投与群におけるc-fosrnRNA発現レベルはE摺独投与群に比して有意に低く・TOR投与によりこのE2作用を抑制したoE2+TOR 投与群のcjunmRNA発現レベルはE2単独投与群に比して軽度滅弱傾向を示したが,変化は乏しかった0 2)MNU投与側には各群とも,腺癌,内膜増殖症が多数発生したoMNU+E2+TOR投与群の腺癌発生頻度は対 照であるNUM+E2投与群に比して有意に低く・MNU+TOR投与群の腺癌発生頻度も対照であるMNU単独投与 群に比して有意に低かった0また,MNU+E2+TOR投与群の異型内膜増殖症発生頻度も・対照であるMNU+T OR投与群に比して有意に低かった。
1)去勢マウス子宮において,Cjos,CjuTh TNF-a・Ⅰし1a mRNAおよびその蛋白発現(特に腺管細胞)はt 特にE2投与により最も発現元進した。 2)El,E2,E3の28週間長期投与により子宮内膜に腺癌,内膜増殖症の発生を認め・C-fos・C-jun・TNF-α, IL_1a mRNA発現は腺癌で強く,内膜増殖症,正常内膜の順であった0 3)去勢マウス子宮において.TOR投与により特にE2投与により誘発されたcjosmRNA発現は有意に抑制され た。 4)長期的に,MNUおよびE誘発マウス子宮内膜発癌に対してTORは抑制的に作用した0 以上マウス内膜発癌系において,エストロゲン・特にE2により誘導されるcイos,CJ㍑花ばかりでなくt内因 性サイトカインである,TNF-α,Ⅰし1αが関与していることが示唆された0そしてt抗エストロゲン剤である TORが乳癌治療中でも子宮内膜癌発生を予防し,さらに子宮内膜癌に対して抑制的に作用し,その治療薬とし ての可能性も示唆された。 論文審査の結果の要旨 申請者 橋本 緑は,マウス内膜発癌系において,エストロゲン,特にE2により誘導されるcイos・CJ㍑几ばか りでなく,内因性サイトカインである.TNF-α,IL-1αが関与している可能性を示した0抗エストロゲン剤で ぁるTORが乳癌治療中でも子宮内膜癌発生を予防し・さらに子宮内膜癌に対して抑制的に作用し・治療薬とし ての可能性を示した。本研究の成果は子宮内膜癌の発生メカニズムの解明およびその予防に少なからず寄与でき るものと思われる。 [主論文公表誌] 天然型エストロゲン及び抗エストロゲン剤トレミフェンによるマウス子宮内膜発癌に対する影響 平成12年3月発行予定 岐阜大医紀 48(2)