教員と教育改革を結ぶ道を検証する
学校教育専攻 学校改善コース 藤 森 弘 子 1 先行研究の概要と本研究の課題 従来の我が国における、教育行政の政策形 成・実施過程に関する実証研究では、地方レベ ルで、の形成実施過程における教育委員や教育長 の役割を明らかにしたものが大部分である。近 年、議会・議員・教育利益団体について、教育 政策形成・実施過程におけるアクターとして、 その位置・役割の検証が試みられてきているが、 未だ教員はアクターとして検証されていない。 また、従来、中央レベルにおける教育政策形成 過程においては、個々の教員の意見を取り入れ つつ進めるべきだとの考えが必ずしも広く共有 されてこなかった。例えば、特定の組合、団体 の背景がない教員が、審議会等の委員に選任さ れ、その意見が参考にされるようになったのは、 最近のことであり、かっ未だ、極めて少数で、あるO しかし、教育改革の一端を担うのは学校である のだから、子どもたちと向き'合っている教員の 声を重視し、活かさなければ、実りが少ないこ とは明確である。教育政策レベルでも、近代学 校を乗り越えてし、く道筋(学びたいことを、学 びたい時に、学びたい人から、学びたいところ で学ぶ)を作るためには、教育政策と教員が断 絶するのではなく、教員が日常的に教育政策を 考えるシステムやルートがあっていいと考えら れる。ここに、教育政策形成過程の動態を実証 的に明らかにしてし1く課題が存する。 以上から本稿では、我が国の教育政策形成過 指 導 教 員 石 村 雅 雄 程において、教員がし1かにして、どの程度関与 したのかを、審議会等の政策形成過程に影響を 与えたと考えられるものに関与した教員へのイ ンタビューを通じて明らかにする。より具体的 には、個々の教員が中央における政策形成過程 に関わるようになった 1984年以降を中心に、 これまでの中央教育審議会、臨時教育審議会、 教育改革国民会議、総合規制改革会議に委員と して関わった教員等の関わりの意味、働きを主 として検証することから探る。 こうした作業は、教育改革とそれを実際に担 う教員の距離を縮めてし、く前提として、かつ、 教員が希望を持って教育改革を考えることの前 提として、教員と教育改革を結ぶ道を築く前提 を明らかにするものである。 2 研究方法 本稿では、教員として、実際に教育政策形成 のプロセス等に何らかのかたちで、関わられた方 の言説を、教員である私自身がインタビューに よって収集し分析するとし、う質的方法を採る。 より具体的には、彼らが何を行い、どのように 考えていたのか。学校や教員の芦がどのように 反映され、どのように生かされ、あるいは、ど のように疎外されようとしたのか、を中心に考 察を行う。 3 調査分析結果 聞き取り調査の分析から、教員の教育政策を 考える力・教育政策に関わる力は弱く、「普通の -34-教員には難しし¥Jと教育改革を捉えていること、 教員が教育改革を考える時間を r531Jの時間j、つ まり、日々の教育実践の日常の時間ではなく、 非日常的な時間と捉えてーいること、教員が教育 政策形成過程に関わることにおいて、教員の視 野の狭さ、「竪さJとしづ問題点があること、教 員が審議会等の教育政策形成過程に関わってい く中で、「教員ではない者」に変わってしまうと いうこと(教員という立場から教育政策形成者 としての立場に移動してしまうこと)があるこ と、審議会等において、教員の発する現場の意 見が教育改革への抵抗と受け取られること、教 員が「できないことはできなしリ、「できていな いことはできていなしリと、現状やその問題性 を外に向かつて、より積極的に発することが大 事なこと、教員をその役割期待として政策から 遠ざけてしまい、あるいは、政策決定システム に入っても、あまり期待された発言ができない こと等が明らかになった。 4 本論文の到達点 聞き取り調査の結果から、教員として教育改 革に関わる在り方を、「教員アクター型J、「スー ノミー教員アクター型J、「教育関係団体アクター 型Jの3つの型に分類を試みたが、現状では、 重視したいと考えるのは教員アクターである。 一教員として教育政策形成の場に関わり、その ことにより苦悩を抱えつつも、その任務を引き 受けようとする姿勢は重要であり、このような 存在に教員と教育改革を結ぶ道の可能性が存在 すると考えられるからである。但し、全ての教 員が一律に教員アクターになることを目指すこ とを求めるのではなく、教員アクターとして教 育改革に関わっていけるルートが存在すること がよく、そのことを望むということである。 また、現状としては教育政策に関わっていな い教員を含めて、教員と教育政策形成過程との 関わり方の類型を、