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そこで 本稿では 単独世帯に着目して217 年の賃金水準から年金額を算出し 高齢単独世帯の平均的な支出額と比較することにより 超高齢社会における所得基盤確保のあり方の課題を確認する 2. 単独世帯の年金額と支出額の比較 (1) 月額の年金額と支出額の比較厚生労働省 賃金構造基本統計調査 (217 年

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単独世帯の年金額の見通し

高齢期の収入確保に向けた課題

○ 単独世帯の割合は、1990年時点では全世帯の23.1%であったが、2015年には34.5%まで拡大した。 今後も拡大が続く見通しであり、2040年には39.3%となる見込みだ ○ 単独世帯の増加を踏まえ、現在の平均賃金から単独世帯の公的年金額を算出し、65歳以上の単独世 帯の支出額と比較した。地域により若干異なるものの、多くの地域で支出額が年金額を上回る ○ 特に、厚生年金の加入期間がないまたは短い場合には、将来の年金額が少ないため、高齢期の収入 の確保や、現役時代からの計画的な資産形成が課題になる

1.単独世帯が増加

2015年時点のわが国の世帯数1は5,333万世帯であるが、このうち単独世帯は1,842万世帯と全体の 34.5%を占める(図表1)。また、夫婦のみ世帯が1,076万世帯で全体の20.2%、夫婦と子の世帯が1,434 万世帯で同26.9%、ひとり親と子の世帯が477万世帯で同8.9%、その他の世帯が504万世帯で同9.5% であり、世帯類型別にみると単独世帯の割合が最も高い。25年前の1990年時点と比較すると、当時の 世帯数は4,067万世帯、家族類型別には夫婦と子の世帯の割合が37.3%と最大であり、単独世帯の割合 は23.1%にとどまっていた。また、国立社会保障・人口問題研究所による世帯数の将来推計(2018年1 月推計)によると、2040年の世帯数は5,076万世帯となり、このうち単独世帯の割合は39.3%とさらに 拡大する見通しである。なお、2040年の世帯主65歳以上の世帯における単独世帯の割合は40.0%、同 75歳以上の世帯で42.1%と、高齢単独世帯の割合は平均を上回ることが見込まれている。 図表 1 世帯の家族類型別割合の推移 (注)1990年は四捨五入の関係で合計が100%にならない。2040年は国立社会保障・人口問題研究所の推計。 (資料)総務省「国勢調査」(1990年、2015年)、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2018 年1月推計)より、みずほ総合研究所作成 39.3 34.5 23.1 21.1 20.2 15.5 23.3 26.9 37.3 9.7 8.9 6.8 6.6 9.5 17.4 0 20 40 60 80 100 2040年 2015年 1990年 (%) 単独 夫婦のみ 夫婦と子 ひとり親と子 その他 政策調査部上席主任研究員 堀江奈保子 03-3591-1308 naoko. horie@mizuho-ri.co.jp

政 策

2018 年 8 月 27 日

みずほインサイト

(2)

2 そこで、本稿では、単独世帯に着目して2017年の賃金水準から年金額を算出し、高齢単独世帯の平 均的な支出額と比較することにより、超高齢社会における所得基盤確保のあり方の課題を確認する。

2.単独世帯の年金額と支出額の比較

(1)月額の年金額と支出額の比較 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)の男女別・年齢5歳階級別の平均賃金から、20歳か ら60歳になるまで40年間会社員で厚生年金に加入していた場合の公的年金額(老齢基礎年金と老齢厚 生年金の合計)を算出すると、男性は16.3万円(2018年度価格、月額、以下同じ)、女性は13.3万円 である(図表2)2。また、厚生年金に加入しておらず、老齢基礎年金のみの受給となる場合には、保 険料納付済期間が40年で男性、女性ともに6.5万円である。 一方、総務省「全国消費実態調査」(2014年)によると、65歳以上の高齢単独無職世帯の支出3は、 男性が17.0万円、女性が16.3万円である。年金額と支出額を比較すると、男女とも支出額が年金額を 上回り、40年間会社員の男性は0.7万円、女性は3.0万円、老齢基礎年金のみの男性は10.5万円、女性 は9.8万円、支出額が多い。 なお、夫が会社員で妻が専業主婦の世帯では、夫が先に死亡すると妻は老齢基礎年金と遺族厚生年 金を受給することができるが、前述の男性会社員の妻の例では夫死亡後の妻の年金額は13.9万円とな り、支出額の方が2.4万円多い。 実際には、賃金水準により老齢厚生年金の額が変わることや、厚生年金の加入期間が40年に満たな い人もいること、また、支出額についても個人のライフスタイル等により大きく異なることから、年 金額と支出額の差は個人により様々であるが、本試算は単独世帯の平均的な高齢期の家計の姿として ひとつの目安になると考えられる。 図表 2 単独世帯の年金額と支出額の比較(月額) (注)1.会社員は20歳から60歳になるまで40年間平均賃金で厚生年金に加入した場合の老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計。平均賃 金は男女別、年齢5歳階級別の平均賃金から算出。基礎のみは老齢基礎年金のみの受給の場合。 2.実支出額は消費支出と非消費支出の合計で、65歳以上の単独無職世帯のもの。 (資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)、総務省「全国消費実態調査」(2014年)より、みずほ総合研究所作成 16.3 13.3 6.5 6.5 17.0 16.3 17.0 16.3 -0.7 -3.0 -10.5 -9.8 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 男性 会社員 女性 会社員 男性 基礎の み 女性 基礎の み (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出額 (万円)

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3 (2)65 歳以降の年金額と支出額の総額の比較 (1)で算出した年金額と、2015年時点の65歳の男女別平均余命(男性19.46年、女性24.30年)か ら、65歳以降の年金受給総額を算出すると、40年間会社員で厚生年金に加入していた男性は約3,810 万円、女性は約3,880万円である(図表3)。また、老齢基礎年金のみの受給者については保険料納付 済期間が40年で男性が約1,520万円、女性が約1,890万円である。 同様に65歳以降の支出総額を算出すると、男性は約3,960万円、女性は約4,750万円である。年金受 給総額と支出総額を比較すると、支出総額の方が40年間会社員の男性は約150万円、女性は約870万円、 老齢基礎年金のみの男性は約2,440万円、女性は約2,860万円多い。 したがって、支出総額が年金受給総額を上回る分(不足額)については、現役時代に準備するか、 65歳以降も勤労所得等で年金以外の収入を確保することが必要になる。 40年間会社員であれば、不足額はそれほど大きくなく、現役時代から準備しておくことは比較的容 易である。しかし、現役時代に厚生年金に加入していない期間があったり、賃金水準が平均より低い 場合には、前述の年金額を確保できない。また、老齢基礎年金のみの受給者については、自営業者等 で定年がない働き方をする等により65歳以降も一定の収入を確保できるのであれば問題ないが、厚生 年金に加入していない被用者等は、65歳を超えても就業するか現役時代から高齢期に備えた計画的な 資産形成を行うことが必要となる。 2016年度の老齢基礎年金のみの受給者4の平均年金月額は5.1万円である。また、2015年度の国民年 金保険料の最終納付率は73.1%5にとどまっていることを考えれば、将来の老齢基礎年金のみの受給者 の年金額が満額の6.5万円(2018年度価格)に満たずに、図表2や図表3で示した額より不足額が大きい 高齢者は一定程度存在すると考えられる。 図表 3 単独世帯の年金額と支出額の比較(65 歳以降総額) (注)1.会社員は20歳から60歳になるまで40年間平均賃金で厚生年金に加入した場合の老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計。平均賃 金は男女別、年齢5歳階級別の平均賃金から算出。基礎のみは老齢基礎年金のみの受給の場合。 2.実支出額は65歳以上の単独無職世帯の消費支出と非消費支出の合計。65歳から2015年の男女別の65歳の平均余命まで生存し た場合の生涯の年金受給総額と支出総額を比較。 (資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)、総務省「全国消費実態調査」(2014年)、厚生労働省「第22回生命表(完 全生命表)」(2015年)より、みずほ総合研究所作成 3,810 3,880 1,520 1,890 3,960 4,750 3,960 4,750 -150 -870 -2,440 -2,860 -3,000 -2,000 -1,000 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 -3,000 -2,000 -1,000 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 男性 会社員 女性 会社員 男性 基礎 の み 女性 基礎 の み (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出額 (万円)

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3.都道府県別の単独世帯の年金額と支出額の比較

(1)月額の年金額と支出額の比較 次に、都道府県別に単独世帯の年金額と支出額を比較する。年金額は男女別・年齢5歳階級別の都道 府県別の平均賃金から20歳から60歳になるまで40年間会社員で厚生年金に加入していた場合の年金額、 支出額は都道府県別の男女別の65歳以上単独無職世帯の支出額である。 計算結果をみると、賃金水準が高く年金額が高いと見込まれる都道府県の支出額が必ずしも多いと いうわけではなく、不足額は都道府県によりかなり差が生じる(図表4)。 図表 4 都道府県別の単独世帯の年金額と支出額の比較(会社員、月額) 【男性】 【女性】 (注)年金額は20歳から60歳になるまで会社員で厚生年金に加入した場合の老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計。実支出額は消費支出 と非消費支出の合計で、都道府県別の65歳以上2人以上無職世帯の支出と全国平均の65歳以上単独無職世帯の支出から算出。 (資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)、総務省「全国消費実態調査」(2014年)より、みずほ総合研究所作成 -10 -5 0 5 10 15 20 -10 -5 0 5 10 15 20 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島県 茨城 県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉 県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井 県 山梨県 長野県 岐阜 県 静岡 県 愛知県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌 山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島 県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎 県 熊本県 大分県 宮崎 県 鹿児島県 沖縄県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出 (万円) -10 -5 0 5 10 15 20 -10 -5 0 5 10 15 20 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島県 茨城 県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉 県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井 県 山梨県 長野県 岐阜 県 静岡 県 愛知県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌 山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島 県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎 県 熊本県 大分県 宮崎 県 鹿児島県 沖縄県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出 (万円)

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5 男性は、年金額の方が支出額よりも大きい府県(大阪府、山口県、福岡県、沖縄県)がある一方で、 3万円以上不足する県(山形県、新潟県、富山県、福井県)もある。女性は、いずれの都道府県も年金 額より支出額の方が大きいが、不足額が1万円以下の県(沖縄県)がある一方で、半数以上の都府県で 不足額が3万円以上となっている。この中には、不足額が5万円以上の県(山形県、富山県、福井県) もある。 また、国民年金のみに加入し保険料納付済期間が40年の場合の老齢基礎年金のみの受給者は、男女 ともに支出額が年金額を大きく上回る。不足額は、都道府県により差があるが、男性が7~11万円、女 性が6~12万円である(図表5)。 図表 5 都道府県別の単独世帯の年金額と支出額の比較(基礎年金のみ、月額) 【男性】 【女性】 (注)年金額は老齢基礎年金のみ。実支出額は消費支出と非消費支出の合計で、都道府県別の65歳以上2人以上無職世帯の支出と全国平 均の65歳以上単独無職世帯の支出から算出。 (資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)、総務省「全国消費実態調査」(2014年)より、みずほ総合研究所作成 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 北海道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田県 山形 県 福島 県 茨城 県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉 県 東京 都 神奈 川県 新潟 県 富山 県 石川 県 福井県 山梨 県 長野 県 岐阜 県 静岡 県 愛知県 三重 県 滋賀 県 京都府 大阪 府 兵庫県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根県 岡山県 広島 県 山口 県 徳島 県 香川 県 愛媛 県 高知 県 福岡 県 佐賀 県 長崎 県 熊本 県 大分 県 宮崎 県 鹿児 島県 沖縄 県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出 (万円) -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島県 茨城 県 栃木県 群馬 県 埼玉県 千葉 県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井 県 山梨県 長野県 岐阜 県 静岡 県 愛知県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌 山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島 県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎 県 熊本県 大分県 宮崎 県 鹿児島県 沖縄県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出 (万円)

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6 (2)65 歳以降の年金額と支出額の総額の比較 続いて、都道府県別の生涯の年金受給総額と支出総額を比較する。まず、2015年の都道府県別・男 女別の65歳平均余命をみると、男性は18.1~20.3年、女性は23.6~25.2年であり、都道府県によりそ れぞれ2年前後の違いがある(図表6)。(1)で算出した年金額や支出額と、都道府県別の65歳平均 余命から年金受給総額と支出総額を算出したものが図表7である。 図表 6 都道府県別の 65 歳平均余命 (資料)厚生労働省「第22回生命表(完全生命表)」(2015年)より、みずほ総合研究所作成 図表 7 都道府県別の単独世帯の年金額と支出額の比較(会社員、65 歳以降総額) 【男性】 【女性】 (注)年金額は20歳から60歳になるまで会社員で厚生年金に加入した場合の老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計。実支出額は都道府 県別の65歳以上単独無職世帯の消費支出と非消費支出の合計。65歳から2015年の男女別の65歳の平均余命まで生存した場合の 生涯の年金受給総額と支出総額を比較。 (資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)、総務省「全国消費実態調査」(2014年)、厚生労働省「第22回生命表(完 全生命表)」(2015年)より、みずほ総合研究所作成 16 18 20 22 24 26 北海道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島 県 茨城 県 栃木県 群馬 県 埼玉 県 千葉 県 東京 都 神奈 川 県 新潟 県 富山県 石川 県 福井 県 山梨 県 長野 県 岐阜 県 静岡 県 愛知県 三重 県 滋賀 県 京都府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島 県 山口 県 徳島 県 香川 県 愛媛 県 高知 県 福岡 県 佐賀 県 長崎 県 熊本 県 大分 県 宮崎 県 鹿児島県 沖縄 県 (年) 男性 女性 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 北海 道 青森県 岩手県 宮城県 秋田 県 山形 県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟 県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡 県 愛知 県 三重県 滋賀県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根 県 岡山県 広島県 山口 県 徳島県 香川県 愛媛県 高知 県 福岡 県 佐賀県 長崎県 熊本 県 大分県 宮崎県 鹿児 島県 沖縄県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出額 (万円) -2,000 0 2,000 4,000 6,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 北海 道 青森県 岩手県 宮城県 秋田 県 山形 県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟 県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡 県 愛知 県 三重県 滋賀県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根 県 岡山県 広島県 山口 県 徳島県 香川県 愛媛県 高知 県 福岡 県 佐賀県 長崎県 熊本 県 大分県 宮崎県 鹿児 島県 沖縄県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出額 (万円)

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7 年金受給総額から支出総額を控除した額(不足額)をみると、男性は最大で1,000万円弱、女性は1,600 万円弱である。なお、これは、平均賃金で40年間厚生年金に加入していた場合の年金額であるため、 賃金水準が低く、厚生年金の加入期間が短ければそれに応じて年金額が減少し、不足額が拡大する。 厚生年金には全く加入せず、国民年金のみに加入し保険料納付済期間が40年の場合の老齢基礎年金の みの受給総額と支出総額を比較すると、不足額は男性が約1,700~2,900万円、女性が約2,000~3,400 万円である(図表8)。

4.高齢期の収入を確保に向けて

本稿では、増加し続けている単独世帯について、平均的な高齢期の年金額と支出額を比較した。前述 の通り、実際には世帯により年金額や支出額は大きく異なるものの、高齢期の支出額を上回る年金を受 給できる単独世帯は少ないとみられる。支出額が年金額を上回る場合の対策としては、支出を抑制する という方法があるものの、収入確保という観点からは、①年金額を増やす、②高齢期も就業等により稼 働所得を得る、③現役時代から計画的な資産形成を行う、の3つやその組み合わせが主なものとなる。 図表 8 都道府県別の単独世帯の年金額と支出額の比較(基礎年金のみ、65 歳以降総額) 【男性】 【女性】 (注)年金額は老齢基礎年金のみ。実支出額は都道府県別の65歳以上単独無職世帯の消費支出と非消費支出の合計。65歳から2015年 の男女別の65歳の平均余命まで生存した場合の生涯の年金受給総額と支出総額を比較。 (資料)厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2017年)、総務省「全国消費実態調査」(2014年)、厚生労働省「第22回生命表(完 全生命表)」(2015年)より、みずほ総合研究所作成 -4,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 -4,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 北海 道 青森県 岩手県 宮城県 秋田 県 山形 県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟 県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡 県 愛知 県 三重県 滋賀県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根 県 岡山県 広島県 山口 県 徳島県 香川県 愛媛県 高知 県 福岡 県 佐賀県 長崎県 熊本 県 大分県 宮崎県 鹿児 島県 沖縄県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出額 (万円) -4,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 -4,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 北海 道 青森県 岩手県 宮城県 秋田 県 山形 県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟 県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡 県 愛知 県 三重県 滋賀県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根 県 岡山県 広島県 山口 県 徳島県 香川県 愛媛県 高知 県 福岡 県 佐賀県 長崎県 熊本 県 大分県 宮崎県 鹿児 島県 沖縄県 (万円) 年金額 実支出額 年金額-実支出額 (万円)

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8 まず、年金額を増やすには、厚生年金の加入期間を長期化すること、年金の繰下げ受給を選択する ことが挙げられる。前述の通り、厚生年金の適用の有無で年金額は大きく異なる。本稿では20歳から 60歳になるまで厚生年金に加入する場合の年金額を算出したが、厚生年金の適用対象は70歳未満であ ることから60歳以降も加入することが可能である。また、短時間労働者であっても週労働時間が20時 間以上で勤務期間が1年以上等の条件を満たせば厚生年金の適用対象となる6。もっとも、厚生年金に ついては今後政策的にさらに適用を拡大する必要があろう。 繰下げ受給については、65歳からの支給開始を66歳以降に繰下げることで、繰下げ1カ月につき年金 額は0.7%増額され、70歳以降の受給開始で年金額は42.0%増額される7。60歳代においても就業等に より稼働所得を得ることができれば繰下げ受給を選択し、その後の年金増額が可能である。また、高 齢期の支出に備えて現役時代から計画的な私的年金の加入や投資等による資産形成が重要である。な お、私的年金としては、掛金拠出時等の税制優遇措置が設けられているiDeCo(個人型確定拠出年金) の加入者が急増しており、注目されている。これは、2017年1月の改正により加入対象者が拡大された 影響で、2018年6月末時点の加入者数は94.6万人と、改正前2016年12月末の30.6万人の3倍を超えた。 しかし、国民年金の被保険者数約6,500万人8からみればまだ普及拡大の余地はある。iDeCoの拠出限度 額の引き上げや、加入可能年齢の引き上げが今後の検討課題となろう9 1 一般世帯数。総務省の「国勢調査」では、世帯の種類が「一般世帯」と「施設等の世帯」に区分されている。「施設 等の世帯」は、寮・寄宿舎の学生・生徒(世帯の単位は棟ごと)、病院・療養所の 3 カ月以上の入院者(同)、老人ホー ムや児童保護施設等の社会施設の入所者(同)等。 2 2016 年度末の 65 歳以上の厚生年金受給者の平均年金月額(基礎年金を含む)は、男性は 17.7 万円、女性は 10.9 万 円である。受給者の年金額は年々減少傾向にある。男女の年金差が大きいのは、女性の方が賃金水準が低いことに加え、 平均被保険者期間が短いことによる。本稿では、男女ともに被保険者期間を 40 年として算出しているため、現在の受 給者より男女差が小さい。 3 いわゆる生活費である「消費支出」と、税金や社会保険料等の「非消費支出」の合計である実支出。 4 旧国民年金の受給者を含む。 5 保険料の未納分は遡って過去 2 年分納付できる。2015 年度分の現年度納付率は 63.4%であったが、過年度 2 年目の 最終納付率は 73.1%となった。2017 年度分の現年度納付率は 66.3%である。 6 厚生年金の強制適用事業所となるのは、法人の事業所と従業員が常時 5 人以上いる個人の事業所(農林漁業、サービ ス業等を除く)で、その他は任意適用事業所。適用事業所に常時雇用される 70 歳未満の者は厚生年金の被保険者とな る。短時間労働者であっても、1 週の所定労働時間及び 1 月の所定労働日数が常時雇用者の 4 分の 3 以上であれば被保 険者となるほか、4 分の 3 未満であっても、a.週所定労働時間が 20 時間以上、b.勤務期間が 1 年以上見込まれること、 c.月額賃金が 8.8 万円以上、d.学生以外、e.従業員 501 人以上の事業所に勤務していること、の 5 つの要件を全て満た すと被保険者になる。なお、e.については従業員が 500 人以下の事業所であっても、労使合意により申出をした事業所 と国・地方公共団体に属する事業所は対象となる。 7 詳細は、堀江奈保子「年金繰下げ受給の効果~70 歳超の繰下げ拡大で高齢者の就業促進期待」『みずほインサイト』 2018 年 6 月 8 日、みずほ総合研究所)を参照。 8 2016 年度末の国民年金第 1~3 号被保険者の合計。 9 詳細は、みずほ総合研究所「高齢社会と金融~高齢社会と多様化するニーズに金融機関はどう対応するか」『緊急リ ポート』2018 年 1 月 31 日)を参照。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基 づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。 また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。なお、当社は本情報を無償でのみ提供しております。当社からの無償の情報提供をお望みにな らない場合には、配信停止を希望する旨をお知らせ願います。

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