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Academic year: 2021

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(1)

3.1.8 伸張場におけるひずみ集中メカニズムに関する研究 業務の目的 日 本 海 拡 大 に よ る 伸 張 と そ の 後 の 圧 縮 に よ っ て 形 成 さ れ た ひ ず み 集 中 帯 の 機 構 を 解 明 す る た め に は 、圧 縮 場 の み な ら ず 伸 張 場 に お け る 応 力 の 境 界 条 件 と こ れ に 対 す る 地 殻 の 応 答 を 比 較 す る こ と が 重 要 で あ る た め 、現 在 日 本 列 島 の 中 で も 顕 著 な 伸 張 場 を 形 成 し て い る 別 府 島 原 地 溝 帯 を 含 む 九 州 地 域 に お い て 、地 殻 の 挙 動 を 正 確 に 把 握 す る 検 知 シ ス テ ム 、及 び 局 所 的 な 構 造 を 調 べ る た め の 観 測 シ ス テ ム を 整 備 し 、 詳 細 な 地 殻 変 動 観 測 及 び 地 震 観 測 を 行 う こ と で 、 地 殻 活 動 の 物 理 的 メ カ ニ ズ ム を 考 察 し 、 ひ ず み 集 中 機 構 の 解 明 を 図 る 。 ・平成24年度業務目的 平 成 2 0 ~ 2 1 年 度 に 別 府 島 原 地 溝 帯 地 域 に 設 置 し た 伸 張 場 地 殻 活 動 検 出 装 置 か ら 地 表 変 形 の 状 態 ( 地 殻 変 動 ) を 把 握 す る デ ー タ の 蓄 積 を 行 う と と も に こ れ ら の デ ー タ 解 析 を 進 め る 。 特 に 時 空 間 分 解 能 の 高 い 地 表 変 形 を 推 定 す る 。 伸 張 場 地 震 観 測 装 置 に よ る 2 観 測 点 で の 観 測 を 継 続 し 、詳 細 な 地 震 活 動 デ ー タ を 得 る 。ま た 、 平 成 2 1 ~ 2 2 年 度 に 阿 蘇 地 域 を 中 心 と す る 別 府 島 原 地 溝 帯 に 設 置 し た 1 5 台 の 伸 張 場 機 動 地 震 活 動 観 測 装 置 の 一 部 に 新 規 地 震 計 1 0 台 を 配 備 し て 安 定 し た 観 測 デ ー タ 取 得 を 行 う 。 こ れ ら の デ ー タ を 用 い て 構 造 解 明 の た め の 解 析 を 行 う と と も に 、 近 年 活 動 が 活 発 化 し て い る 状 況 を 鑑 み て 、観 測 を 継 続 し デ ー タ を 取 得 す る こ と で 精 度 向 上 を 図 る 。 ・平成24年度の成果 (a) 業務の要約 平成 24 年度は、別府島原地溝帯に設置した GPS 受信機(伸張場地殻変動検出装置)、機 動的地震観測装置および福岡県西方沖地震断層近傍の伸張場地震観測装置による観測を継 続し、得られたデータを処理解析した。特に、配備した地震計 10 台を展開して安定したデ ータを取得できた。 取得したデータよって、別府島原地溝帯を中心として九州地域の、ひずみ速度分布、応 力分布、地震発生層の厚さ分布、平均的間隙水圧分布を求めた。GPS 観測によって別府地 域に大きなひずみが集中しており、そこでは微小地震活動が高いことが明らかになった。 この地域は地震発生層の厚さが他の地域と比べて薄く、このためにひずみ速度が大きくこ とが示された。この結果は応力比の空間変化からも支持され、ひずみ集中メカニズムが定 性的であるが明らかになった。さらに、間隙水圧は断層地域で高い結果が得られ、地震発 生特性との関連が示唆された。 (b) 業務の実施方法 1) 地殻変動観測

(2)

別府島原地溝帯を横切る測線とひずみ速度が大きいと予想される位置を選定し、国土地 理院が展開する GEONET 観測点を補完し、別府島原地溝帯の地殻変動をより詳細に明らかに するため、平成 20 年度に 21 点の連続観測点とキャンペーン観測点を増設し、伸張場地殻 変動検出装置(GPS 受信機)を設置し観測を継続した。 GPS 受信機を設置するに当たっては、設置場所は堅牢な建物の屋上等とし、公共の建築 物を重点的に選定した。設置地点を図 1 に示す。設置位置と関連する GPS 観測地点も図中 に示した。 図 1 九州における GPS 観測点。●:GEONET 観測点、赤丸:伸張場地殻変動検出装置設置 点。設置した観測点においては、連続データ収録を開始し、現在システムを運用中である。 2) 地震観測 a) ボアホール地震観測点 19 年度に整備した装置は、ひずみ集中メカニズムを解明する上で重要な要素である、地 震活動を高い精度で観測する装置である。特に、地震後のひずみ集中を検出するために福 岡県西方沖地震震源域南東部、警固断層周辺に設置することが適切であると判断した。こ れらは地震断層と警固断層の境界近傍に位置する西戸崎および警固断層沿いの高宮地域・ 高宮浄水場内にある、既設の地震観測地点に導入した。これらの観測地点からのデータを 蓄積し、精度のよい震源、発震機構解を得た。 b) 機動地震観測装置 別府島原地溝帯を横断するように機動観測装置 15 点の臨時地震観測を開始した。22 年 度は当センターの観測装置も投入し、10 月からさらに増強し、現在 35 点の臨時観測点の 展開を行っている。これらの分布を図 2 に示す。これらの観測により、蓄積され始めたデ ータによって、より精度の高い震源およびメカニズム解が得られることになった。とくに、 24 年度に整備した地震計 10 台をこの臨時観測点に投入することで、安定した観測データ を取得できた。

(3)

図 2 九州内陸に展開されている地震観測点(九州大,京都大,鹿児島大,防災科学技術 研究所,気象庁)(左図)および展開された臨時観測点(右図)。

3) データ処理

GPS による地殻変動データ解析は本研究の観測点と GEONET 観測点のデータを合わせて、 Bernese GPS Software Ver. 5.0 を用い、IGS 精密暦、IGS の地球回転パラメタを使用した。 大気伝搬遅延量は GMF マッピング関数を Bernese に組み込み、1 時間毎に、また大気伝搬 遅延勾配は 6 時間毎に推定した。 地震データについては 3 次元速度構造を用いて、精度の高い震源決定を行った。そのデ ータから微小地震活動の下限(D90)や発震機構解、ストレステンソルインバージョン等に よる応力場を推定した。 (c) 業務の成果 GPS データを用い,国土地理院が展開する GEONET 観測点の F3 座標解を使って九州地域 のひずみ変化を求めた。別府湾から阿蘇カルデラにかけて最大せん断ひずみが大きい領域 が求められた。また、南北ひずみを見ても別府島原地溝帯地域では南北伸長帯が存在する ことが分かった。この結果を微小地震深さ分布の下限(D90)と比較すると、地震発生層が 薄い部分でひずみが大きいことが見出された。一方、最大水平主圧縮軸方向の延長線上に ある熊本地方と比較すると、地震発生層が厚くひずみが小さい。これは、発生層が別府で 薄くなることによって九州の外部からの圧縮力(ほぼ東西)を小さい面積で支えることに なり、相対的に応力が大きくなったと考えられる。その結果として、ひずみが大きくなる と解釈できる。熊本側で応力が低下することは、ストレステンソルインバージョンで得ら れた応力比[(σ2-σ3)/(σ1-σ3)]が別府より大きい、すなわち最大水平主圧縮力が 低下している結果が得られていることからも支持される。これらのひずみ、応力、地震発

(4)

生層の厚さの結果から、別府から阿蘇にかけてのひずみ集中帯は外部からの力を支える地 震発生層の空間的違いによって生み出されていると結論付けることができる。 さらに、本研究で得られた発震機構解を用いて、間隙水圧分布推定を試みた。断層の破 壊はクーロン・ナビエの破壊基準によると仮定し、地殻の強度を低下させる間隙水圧の空 間分布について検討した。ここでは Terakawa et al. (2010)1) の方法を用い、グリッド ごとの間隙水圧の推定を行った。彼らの方法は、ある応力場の中での発震機構解の違いが 間隙水圧の変化であると見なして、間隙水圧を推定する。ここでは、グリッドごとに発震 機構解を集め、平均的な間隙水圧比(間隙水圧と静岩圧の比)を求めた。このとき、応力 場は横ずれ場であると仮定することで、σ2 の大きさ(静岩圧)を与え、応力テンソルイ ンバージョンによって求めた応力比を使ってモール円を決め、摩擦係数μ=0.6 を仮定す ることで求めた。大局的傾向として、別府島原地溝帯西部の熊本地域では小さく、福岡西 方沖地震や日奈久断層周辺では大きくなっている。すなわち、地震活動の活発な活断層地 域では高間隙水圧であることを示している。また、地震が 3 次元的に起こっている熊本地 方では低間隙水圧であった。これらは地震活動の空間的様式と間隙水圧が関連しているこ とを示唆するものである。 図 3 に上記で得られた結果の模式図を示す。別府島原地溝帯では東部で地震発生層が薄 く、最大主圧縮応力が西部よりも高い。そのため、ひずみが集中している。また、地溝帯 内部では地震活動が活発で、これらは火山もしくは下部地殻からの流体供給による強度低 下によって励起している可能性がある。また、断層帯では局所的に間隙水圧が高く、地震 活動が活発であるが、断層帯の他では必ずしも活発でない。これは流体供給源もしくはそ の供給路が存在していないと解釈することが可能である。 図 3 九州における地震発生の模式図。上段が別府島原地溝帯、下段が断層帯と地震活動 のない地域を模式的に示している。地震発生層の厚さ変化やモール円による応力―強度の

(5)

関係図を示す。地溝帯では流体の供給があるために地震活動が活発で、地震のない地域で は流体による強度低下が起こらず、地震発生に至らない可能性を表している。 (d) 結論ならびに今後の課題 九州におけるひずみ集中メカニズムは、別府島原地溝帯において明らかにされた。地震 発生層との関係が重要であることを示し、他地域での考察に寄与することができる。一方 では現在の結果は定性的な解釈であり、これを定量化するために有限要素法などの数値モ デリングが必要である。ただし、現在のところ外部境界条件や下部地殻の粘性特性などが ほとんど分かっていないことから、地震波速度不均質や減衰・散乱、電磁気学的観測によ る比抵抗構造などと GPS による地殻応答を比較することで、媒質情報をモデル化する試み が必要である。また、本研究によって地震活動様式と間隙水圧との関連が示唆された。こ れは極めて重要であり、地震発生場の特徴を理解する上での意義は大きい。しかしながら、 これら強度についても発震機構解を精度よく推定することが間隙水圧の推定法の検証(破 壊基準の仮定の検討)や高精度推定が可能になることから、機動的な観測研究を進めるこ とが必須である。一方では、観測データが増加することによってその処理を迅速に行うべ く、効率的な処理プロセスの設計と処理のマンパワーの充実することが極めて重要である。 (e) 引用文献

1) Terakawa, T., A. Zoporowski, B. Galvan, and S. A. Miller (2010), High pressure fluid at hypocentral depths in the L’Aquila region inferred from earthquake focal mechanisms, Geology, 38 (11), 995–998, doi:10.1130/G31457.1.

図 2  九州内陸に展開されている地震観測点(九州大,京都大,鹿児島大,防災科学技術 研究所,気象庁)(左図)および展開された臨時観測点(右図)。

参照

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