原子力基本法と宇宙基本法と
軍事利用
小沼通二(こぬまみちじ)
名古屋大学理学部物理B5講義室にて 2012年7月25日18:30―21:00
自己紹介 • 1931年 東京生まれ • 1952年9月6日 東大理学部での伏見康治の原子 力研究開発構想についての伏見と物理の若手と の話し合い(“つるし上げ”)をのぞく • 1957年8月 第1回パグウォッシュ会議の翌月、第 3回原水爆禁止世界大会での朝永振一郎と ロー トブラットの再会に同席 • 1958年から日本学術会議原子核特別委員会幹 事として、坂田昌一委員長の下で、日本で初めて の原発導入問題と取り組む • 2004年から世界平和アピール七人委員会に参加 2
2012年6月14日から20日の間に
おきたこと
6月14日
• 午後7時 翌日の衆議院本会議の運営に関し て、政府の原子力規制庁案と自民・公明の原 子力規制委員会設置法案を取り下げ、3党案 を緊急上程することが、自民・公明・民主3党 以外に、初めて知らされた。 • 配布された資料は A4 1枚の未定稿の法案 要綱だけ6月15日金曜日(1)
• 午前9時―11時44分 衆議院環境委員会 吉井 英勝議員(共産)が原子力基本法について発言 • 10時に、午後2時からの参議院本会議での、み んなの党の発言者に、265ページの原子力規制 委員会設置法案が届く • 12時過ぎから議院運営委員会 • 議員全体への配布は、本会議直前 • 1時―1時間ほど 衆議院本会議 数分間で原子 力規制委員会設置法 原案通り可決6月15日金曜日(2)
• 12時 参議院環境委員会理事懇談会 衆議 院通過まえなのに、月曜日から連日環境委 員会開催を決定 • 午後2時 参議院本会議 首相も出席 衆議 院環境委員長(民主)が3党案提案、質疑(み んなの党)、環境委員会付託を決めた • 16日の“しんぶん赤旗” が、環境委員会で原 子力基本法に安全保障が入ることが討議さ れ、衆議院を通過したと報道6月17日日曜日―19日火曜日
• 17日 世界平和アピール七人委員会委員が、 原子力基本法に安全保障がはいる修正が衆 議院を通過したと、知らされる。 • 18日に予定されていた委員会で緊急討議 • 19日火曜日朝アピール「原子力基本法の基 本方針に「安全保障に資する」と加える改正 案の撤回を求める」を発表19日火曜日―20日水曜日
• 19日午後 参議院環境委員会 福島みずほ 議員(社民)が質問 • 20日午前 参議院環境委員会 谷岡郁子議 員(民主)、市田忠義議員(共産)が質問 附 帯決議をつけることになり 3党が賛成 他が 反対して可決 • 20日午後 参議院本会議 みんなの党が反 対討論 押しボタンで可決成立国会答弁と附帯決議と
原子力基本法の食い違い
• 国会答弁と附帯決議 安全保障とは「原子力安全規制、核セキュリ ティ及び核不拡散の保障措置の業務を一元 的に担うとの観点」でくわえた • 原子力基本法 「我が国の安全保障に資する目的で原子力 利用の安全確保を行う」2011年12月からの動き
• 政府 原子力規制庁設置案 2012年1月に国会 提出 • 自民 12月 プロジェクト・チーム • 原子力規制委員会設置法案(自民・公明) 国会 提出 2012年4月20日 この中に「我が国の安全 保障に資する」という目的が加わる。 関連して 附則で、原子力基本法の基本方針にも追加。 • 共産 2012年5月29日に衆議院本会議で質問 • 政府案も 2党案も たなざらしのまま宇宙開発・利用開始
• 1944-9 ドイツ 弾道ミサイルV-2号による英 国攻撃開始 (液体燃料ロケット) 報復兵器第2号 (Vergeltungswaffe 2) • 戦後 米・ソ・英国が ドイツの技術を押収 • 1955年 東大生産技術研究所 糸川研究室 がペンシル・ロケットに成功 • 1957年 ソ連 人工衛星打ち上げ 米国が続 く日本の偵察衛星
• 1998-8 北朝鮮 “人工衛星”発射 • 1998-11 閣議で情報収集衛星(偵察衛星)導入 を決定 • 2003-3 最初の情報収集衛星2個打ち上げ そ の後2011年までに10個、2012年中に2個(設計 寿命5年、分解能60~40cm) • 光学衛星 日中 晴天 高精度撮影 • レーダー衛星 夜間でも曇天でも電波で捕捉 • (米露仏は赤外線探知による早期警戒衛星も保 有 静止軌道)日本の宇宙研究開発体制
• 1955 総理府に航空技術研究所設置 • (1963 航空宇宙技術研究所と改称) • 1964 東大宇宙航空研究所 • 1969 科学技術庁 宇宙開発事業団設置 • 1969 国会決議 平和利用に限る 公開・民主・自主 • 1981 大学共同利用機関の宇宙科学研究所 • 2003 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (平和利用に限る)基本法とは
• 基本法とは、国政に重要なウェイトを占める 分野について国の制度、政策、対策に関する 基本方針・原則・準則・大綱を明示したもので あるといわれている • 憲法の理念を具体化する役割を果たしている といわれる • 小野寺理/「立法と調査」NO.209・1999年1月 • 参議院法制局 http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column023.htm基本法とその分野の個別法
• 基本法と同一の分野に属するものを対象とす る他の法律に対して優越する性格を有する。 • 具体的内容は「別に法律で定める」
原子力基本法
• 1947年 教育基本法 ← 教育改革 • 1954年 原子力予算 → • 1955年12月 原子力基本法 原子力委員会 設置法 (原子力局設置のための)総理府設 置法の一部改正宇宙基本法
• 宇宙基本法 2008年 法案審議の性急さ・異様さは今 回とまったく同じ 説明なし(宇宙の平和的利用) • 第二条 宇宙開発利用は、月その他の天体を含む宇 宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原 則に関する条約等の宇宙開発利用に関する条約その 他の国際約束の定めるところに従い、日本国憲法の 平和主義の理念にのっとり、行われるものとする。 • 第三条 宇宙開発利用は・・・我が国の安全保障に資 するように行われなければならない • (宇宙開発利用に関する情報の管理) 第二十三 条 国は、宇宙開発利用の特性にかんがみ、宇宙開 発利用に関する情報の適切な管理のために必要な施 策を講ずるものとする。軍事情報安全保障一般協定
ジーソミア(GSOMIA)協定
• 秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置 に関する日米協定 • それまでの日米相互防衛援助協定(MDA)に基 づく「特別防衛秘密(特防秘)」では不十分 • 2007年8月締結 • 米国が60数カ国と二国間協定 • 締約国が守るべき軍事秘密情報は、アメリカ政 府の国家安全保障上の利益のために指定され るもの • 協定国は、アメリカの防諜法(後述)と同等程度 の刑罰をもつ軍事秘密保護法をつくるおなじ2012年6月20日に
• 「内閣府設置法等の一部を改正する法律案」 可決成立。 その中で • 「独立行政法人宇宙航空研究開発機構法の 一部改正」がおこなわれ、 • 「平和の目的に限り」を削除し、「宇宙基本法 第二条の宇宙の平和利用に関する基本理念 にのっとり」とされた1952年の武谷三男
• 日本の原子力研究の方向 • 改造1952年11月増刊号 • 人を殺す原子力研究は一切日本人の手では絶 対に行わない。 • 日本でおこなう原子力研究の一切は公表すべき である。 • 外国の秘密の知識は一切教わらない。外国との 秘密な関係は一切結ばない。 • いかなる人の出入も拒否しない。いかなる人が そこで研究することを申し込んでも拒否しない。1952年の伏見康治
• 軍事目的の研究は一切行わない
• 研究結果はすべて定期的に公表する
• 研究者一般の厳重な監視ができる組織をつく る