米欧経済
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米国の企業景況感は三重苦から抜け出した
チーフマーケットエコノミスト 丸山 義正 [email protected] 日本のゴールデンウィーク中に米国の企業景況感データが出揃った。製造業は未だよちよ ち歩きと言わざるを得ないが、ドル高と原油安、そして金融市場の動乱の三重苦に苛まれた 2 月迄の落ち込みから企業景況感全体は明確に持ち直したと確認できる。 海外需要の回復が緩慢な情勢は変わらず、また原油及び天然ガス開発投資の(下げ止まり は予想されても)活性化は期待できないため、製造業が相対的に不冴えな情勢は続く。ISM 製造業指数(PMI)は中立水準の 50 を幾分超える 50~53 程度の推移がやっとだろう。 一方、雇用所得情勢の改善に支えられた個人消費や住宅投資の拡大が、非製造業の業況 改善を通じ再び雇用所得情勢にポジティブなフィードバックをもたらす好循環の下、ISM 非 製造業指数(NMI)は 50 台後半を中心とした推移が期待される。 当社経済分析チームが従来から指摘している通り、米国の企業景況感はデカップリング状 態が継続する下で拡大基調を維持する見込みである。米欧経済
米国の企業景況感は三重苦から抜け出した
チーフマーケットエコノミスト 丸山 義正 日本のゴールデンウィーク中に米国の企業景況感データが出揃った。製造業は未だよちよち歩きと言わ ざるを得ないが、ドル高と原油安、そして金融市場の動乱の三重苦に苛まれた 2 月迄の落ち込みから企 業景況感全体は明確に持ち直したと確認できる。製造業は減退期を抜けて緩やかな拡大基調へ復帰
まず、4 月の ISM 製造業指数のヘッドラインである PMI は 50.8 となり、3 月の 51.8 から低下したものの、 2 ヶ月連続で中立水準である 50 を超えた(図表 1 及び図表 2)。市場予想の 51.4 との対比では下振れ だが、当社モデルに基づき地区別の製造業データから試算した値は 50.6~51.1 であり、概ね想定通り の結果だったと言える。違和感は無い。米国の製造業活動は 2 月までの約半年にも及ぶ減退期を抜け て、漸く拡大基調へ復帰したと評価できるだろう。 図表1. 製造業景況感は 2 ヶ月連続で 50 超 ISM 製造業指数等の推移 注:中立水準がゼロの地区別指数は 50 を加えて、ISM 指数と比較しやすいように表示。PMI(除く在庫)は当社試算 出所:米 ISM、各地区連銀、SMBC日興証券 内訳指数では新規受注指数が 55.8(3 月 58.3)、生産指数は 54.2(3 月 55.3)といずれも 3 月データとの 対比では低下も 4 ヶ月連続で 50 超を確保し、明確な拡大基調を示している(図表 3)。ドル安などを映じ て新規輸出受注指数も 52.5(3 月 52.0)と 2 ヶ月連続の 50 超、かつ 2014 年 11 月以来の高い水準に達 した。 一方、雇用指数は 49.2(3 月 48.1)と引き続き 50 を下回っており、製造業活動の持ち直しが雇用者数の 拡大には未だ及んでいない旨を表している(図表 4)。ただ昨年 11 月以来の高水準であり、雇用削減圧 力は減退している模様である。 ISM 製造業指数におけるネガティブな動きとしては二つを指摘できよう。まず、在庫指数が 45.5(3 月 47.0)と再び大幅に低下した点が挙げられる。1~3 月期平均の 45.2 からほぼ横ばいであり、製造業には 在庫調整圧力がなお残存していると言える。 直近の 15Q2 15Q3 15Q4 16Q1 1507 1508 1509 1510 1511 1512 1601 1602 1603 1604 変化 PMI 52.6 51.0 48.6 49.8 51.9 51.0 50.0 49.4 48.4 48.0 48.2 49.5 51.8 50.8 ↓ 新規受注 54.9 51.7 49.5 53.8 53.6 51.7 49.8 50.8 49.0 48.8 51.5 51.5 58.3 55.8 ↓ ⽣産 54.4 53.5 50.7 52.8 55.0 54.0 51.4 52.5 49.8 49.9 50.2 52.8 55.3 54.2 ↓ 雇⽤ 52.0 50.9 48.8 47.5 51.9 50.5 50.2 47.7 50.8 48.0 45.9 48.5 48.1 49.2 ↑ ⼊荷遅延 50.4 49.9 49.7 50.0 49.3 50.4 49.9 49.7 49.6 49.8 50.0 49.7 50.2 49.1 ↓ 在庫 51.3 48.8 44.3 45.2 49.5 48.5 48.5 46.5 43.0 43.5 43.5 45.0 47.0 45.5 ↓ 顧客在庫 46.0 50.5 51.0 49.2 44.0 53.0 54.5 51.0 50.5 51.5 51.5 47.0 49.0 46.0 ↓ ⽀払価格 46.5 40.3 36.0 41.2 44.0 39.0 38.0 39.0 35.5 33.5 33.5 38.5 51.5 59.0 ↑ 受注残⾼ 50.0 43.5 42.2 47.5 42.5 46.5 41.5 42.5 43.0 41.0 43.0 48.5 51.0 50.5 ↓ 新規輸出受注 50.3 47.0 48.7 48.5 48.0 46.5 46.5 47.5 47.5 51.0 47.0 46.5 52.0 52.5 ↑ 輸⼊ 54.2 51.3 47.2 49.8 52.0 51.5 50.5 47.0 49.0 45.5 51.0 49.0 49.5 50.0 ↑ PMI(除く在庫) 52.9 51.5 49.7 51.0 52.5 51.7 50.3 50.2 49.8 49.1 49.4 50.6 53.0 52.1 ↓ NY連銀 50.2 41.8 40.8 38.2 50.9 37.2 37.1 38.6 39.9 43.8 30.6 33.4 50.6 59.6 ↑ フィラデルフィア連銀 59.0 50.2 42.7 52.0 50.7 53.4 46.4 44.1 44.3 39.8 46.5 47.2 62.4 48.4 ↓ リッチモンド連銀 53.0 52.7 50.7 56.7 63.0 50.0 45.0 49.0 47.0 56.0 52.0 46.0 72.0 64.0 ↓ カンザスシティ連銀 41.7 42.3 45.7 41.0 43.0 42.0 42.0 47.0 49.0 41.0 41.0 38.0 44.0 46.0 ↑ ダラス連銀 35.3 39.5 36.4 23.3 45.1 33.7 39.7 36.2 44.6 28.4 15.4 18.2 36.4 36.1 ↓ シカゴISM 50.4 51.5 47.7 52.3 53.7 52.9 47.8 52.6 47.7 42.9 55.6 47.6 53.6 50.4 ↓ ⽉次データ 製 造 業 地 区 別 製 造 業 (中⽴=50) 四半期平均 製造業景況感は 2 ヶ月連 続で 50 超 新規受注と生産が 4 ヶ月 連続の 50 超 雇用指数は 50 未満も減 退ペースは緩和 在庫調整圧力の残存次に、支払価格指数が 59.0(3 月 51.5)へ急上昇し、コスト圧力の増大を示している。これは、原油価格 の上昇を映じた動きと考えられる。ただ、原油価格の上昇はドル安に繋がり、また受注環境の改善にも 寄与している。PMI が最終的に 50 超を確保している点を踏まえれば、支払価格が製造業の活動を押し 下げるトリガーになるリスクは少なくとも当面は低そうである。過去の推移を見ても、支払価格の上昇局面 で、寧ろ PMI は堅調である(図表 5)。米国の製造業については支払価格上昇によるコスト増加よりも、 支払価格上昇をもたらす商品市況の騰勢の背後にある需要拡大がプラスと言えるだろう。これは、米国 企業がコストの販売価格への転嫁に自信を有するがためでもある。 図表2. 製造業景況感は 2 ヶ月連続で 50 超 図表3. 新規受注と生産が 4 ヶ月連続の 50 超
ISM 製造業景況感指数(PMI)の推移 ISM 製造業指数の内訳 (新規受注と生産)
出所:米 ISM、SMBC日興証券 出所:米 ISM、SMBC日興証券
図表4. 雇用指数は 50 未満も減退ペースは緩和 図表5. 支払価格の上昇は寧ろポジティブ
ISM 製造業指数の内訳(雇用) ISM 製造業指数の内訳(PMI と支払価格)
出所:米 ISM、SMBC日興証券 出所:米 ISM、SMBC日興証券
非製造業は金融市場の動乱による下押しを克服
次に、ISM 非製造業指数のヘッドラインである NMI は 3 月の 54.5 が 4 月は 55.7 へ上昇した(図表 6)。 市場予想では 54.8 と横ばい近傍が想定されており、大幅な上振れである。55.7 は昨年 12 月の 55.8 に ほぼ並ぶ水準である。金融市場の動乱に伴い NMI は 1 月に 53.5、2 月に 53.4 と低空飛行を余儀なくさ れたが、金融市場の安定を受けて 3 月 54.5、4 月 55.7 と順調な持ち直しを示した。 製造業の PMI と非製造業の NMI を付加価値生産に占める比率で合成したコンポジット指数は 4 月に 55.1(3 月 54.2)へ上昇し、昨年 11 月の 55.6 以来の高水準を確保した(図表 6 及び図表 7)。2014 年平 均の 56.2 や 2015 年平均の 56.4 には届かずも、米国の企業景況感は順調な業況拡大を示唆する領域 へ復帰したと評価できるだろう。 4 月の NMI 構成項目を見ると、マインドを示す景況指数が 58.8(3 月 59.8)へ小幅低下も、新規受注指 数は 59.9(3 月 56.7)へ、雇用指数は 53.0(3 月 50.3)へ改善し、NMI を押し上げている(図表 8)。入荷 遅延指数は 51.0 で前月から変わらずだった。新規受注指数の改善は言うまでもなく、先行きに対してポ 30 35 40 45 50 55 60 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (中⽴=50) (年、⽉次) 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 新規輸出受注 ⽣産 新規受注 (中⽴=50) (年、⽉次) 25 30 35 40 45 50 55 60 65 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 雇⽤ (中⽴=50) (年、⽉次) 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 PMI ⽀払価格 (中⽴=50) (年、⽉次) 支払価格の上昇は寧ろポ ジティブ NMI は昨年 12 月と概ね同 水準を回復 企業景況感は順調な業況 拡大を示す 新規受注と雇用が大幅に 改善米欧経済 ジティブである。また、伝統的に雇用統計の非農業部門雇用者数と相関性の強い ISM 非製造業指数の 雇用指数の改善は、4 月の ADP 統計が示唆した弱含みを中和する効果を有する1。 図表6. NMI は昨年 12 月と概ね同水準を回復 ISM 非製造業指数の推移 注:NMI(除く入荷遅延)は当社試算。コンポジット指数は HAVER 試算 出所:米 ISM、HAVER、SMBC日興証券 図表7. 企業景況感は順調な業況拡大を示す 図表8. 新規受注と雇用が大幅に改善 ISM 合成指数の推移 ISM 非製造業指数の内訳 注:コンポジット指数は HAVER 試算 出所:米 ISM、HAVER、SMBC日興証券 出所:米 ISM、SMBC日興証券 図表9. 仕入価格の上昇は NMI にもネガティブではない 図表10. 非製造業では在庫調整圧力が緩和
ISM 非製造業指数の内訳(NMI と仕入価格) ISM 非製造業指数の内訳(在庫関連)
出所:米 ISM、SMBC日興証券 出所:米 ISM、SMBC日興証券 直近の 15Q2 15Q3 15Q4 16Q1 1507 1508 1509 1510 1511 1512 1601 1602 1603 1604 変化 コンポジット指数 56.1 57.3 55.9 53.3 58.7 57.4 55.9 57.2 55.6 54.9 52.9 52.9 54.2 55.1 ↑ 製造業PMI 52.6 51.0 48.6 49.8 51.9 51.0 50.0 49.4 48.4 48.0 48.2 49.5 51.8 50.8 ↓ NMI 56.5 58.2 56.9 53.8 59.6 58.3 56.7 58.3 56.6 55.8 53.5 53.4 54.5 55.7 ↑ 景況 60.9 61.9 60.2 57.2 63.4 62.3 60.1 61.8 59.4 59.5 53.9 57.8 59.8 58.8 ↓ 新規受注 58.6 60.4 59.2 56.2 62.6 62.1 56.4 60.8 57.9 58.9 56.5 55.5 56.7 59.9 ↑ 雇⽤ 55.0 57.8 56.9 50.7 59.2 56.2 57.9 58.4 56.0 56.3 52.1 49.7 50.3 53.0 ↑ ⼊荷遅延 51.7 52.7 51.2 51.0 53.0 52.5 52.5 52.0 53.0 48.5 51.5 50.5 51.0 51.0 → 在庫変化 52.3 54.2 53.3 52.2 57.0 54.5 51.0 52.5 54.5 53.0 51.5 52.5 52.5 54.0 ↑ 仕⼊価格 52.1 50.7 50.1 47.0 52.3 50.7 49.1 49.4 50.0 51.0 46.4 45.5 49.1 53.4 ↑ 受注残⾼ 51.2 55.0 52.0 52.0 54.0 56.5 54.5 54.5 51.5 50.0 52.0 52.0 52.0 51.5 ↓ 新規輸出受注 51.8 53.7 52.5 52.5 56.5 52.0 52.5 54.5 49.5 53.5 45.5 53.5 58.5 56.5 ↓ 輸⼊ 51.0 51.7 51.5 51.5 50.5 51.5 53.0 54.5 51.0 49.0 46.0 55.5 53.0 54.0 ↑ 在庫景況感 61.2 65.8 63.7 62.0 63.5 69.0 65.0 63.0 63.5 64.5 61.5 62.0 62.5 61.0 ↓ NMI(除く⼊荷遅延) 58.2 60.0 58.8 54.7 61.7 60.2 58.1 60.3 57.8 58.2 54.2 54.3 55.6 57.2 ↑ (中⽴=50) 四半期平均 ⽉次データ ⾮ 製 造 業 30 35 40 45 50 55 60 65 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 製造業指数(PMI) ⾮製造業指数(NMI) コンポジット指数 (中⽴=50) (年、⽉次) 30 35 40 45 50 55 60 65 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 景況 新規受注 雇⽤ (中⽴=50) (年、⽉次) 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 NMI 仕⼊価格 (中⽴=50) (年、⽉次) 35 40 45 50 55 60 65 70 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 在庫変化 在庫景況感 (中⽴=50) (年、⽉次)
NMI 構成項目以外も総じてポジティブな動きを示しているが、ISM 製造業指数と同様に、原油価格の上 昇を映じて仕入価格指数が 4 月に 53.4(3 月 49.1)へ上昇した点が注目される(図表 9)。但し、やはり PMI と同様に、過去を見る限り、仕入価格指数の上昇は NMI の低下に繋がっていない。従って、経済 情勢を無視した異常な上昇へ達しない限り、仕入価格指数の上昇を過度に懸念する必要はないだろ う。 一方、在庫関連データである在庫変化指数と在庫景況感指数は、緩やかな改善を示しており、製造業 と異なり、非製造業段階では在庫調整圧力が和らいでいる模様である(図表 10)。
米国の企業景況感は拡大基調を維持へ
海外需要の回復が緩慢な情勢は変わらず、また原油及び天然ガス開発投資の(下げ止まりは予想され ても)活性化は期待できないため、製造業が相対的に不冴えな情勢は続く。ISM 製造業指数(PMI)は 中立水準の 50 を幾分超える 50~53 程度の推移がやっとだろう。 一方、雇用所得情勢の改善に支えられた個人消費や住宅投資の拡大が、非製造業の業況改善を通じ 再び雇用所得情勢にポジティブなフィードバックをもたらす好循環の下、ISM 非製造業指数(NMI)は 50 台後半を中心とした推移が期待される。 当社経済分析チームが従来から指摘している通り、米国の企業景況感はデカップリング状態が継続す る下で拡大基調を維持する見込みである。 仕入価格の上昇は NMI に もネガティブではない 非製造業では在庫調整圧 力が緩和 製造業は相対的に不冴え なまま 非製造業は好循環を維持 デカップリング継続の下 で拡大基調米欧経済
補 足
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