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東洋医学雑誌

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Academic year: 2021

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標準的皮膚科治療に抵抗性の痤瘡に対する

漢方治療の有効性の検討

具志 明代

a

郡山 千早

b

吉永

c

矢野 博美

c

津曲 淳一

d

田原 英一

c a 医療法人具志ひふ科クリニック,鹿児島,〒 ‐ 薩摩川内市東大小路町 ‐ b 鹿児島大学医歯学総合研究科疫学・予防医学講座,鹿児島,〒 ‐ 鹿児島市桜ケ丘 ‐ ‐ c 株式会社麻生飯塚病院漢方診療科,福岡,〒 ‐ 飯塚市芳雄町 ‐ d 医療法人久倖会津曲胃腸科整形外科,鹿児島,〒 ‐ 曽於市大隅町鳴神町 ‐

Efficacy of Kampo Medicine for Acne of the Face

with Nonreactive Standard Dermatological Therapy

Akiyo GUSHIa Chihaya KORIYAMAb Ryo YOSHINAGAc Hiromi YANOc Junichi TSUMAGARId Eiichi TAHARAc

a Gushi Dermatological Clinic, 45-3 Higashiohsyoji, Satsumasendai city, Kagoshima 895-0075, Japan

b Department of Epidemiology and Preventive Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sci-ences, 8-35-1 Sakuragaoka, Kagoshima 890-8544, Japan

c Department of Japanese Oriental (Kampo) Medicine, Oriental Medical Center, Iizuka Hospital, 3-83 Yoshio-cho, Iizuka city, Fukuoka 820-8505, Japan

d Tsumagari Gastroenterological & Orthopedic Clinic, 93-1 Narukami-machi, Oosumi-cho, Soo-city, Kagoshima 899-8104, Japan

受付: 年 月 日,受理: 年 月 日 Abstract

[Objective] In this study, we retrospectively investigated the efficacy of Kampo medicine for refractory acne patients with standard therapy in Japan.

[Patients] Two hundred and thirty nine patients with inflammatory acne completed the study. Six Patients discontinued their systemic treatment because of adverse events. The patients included 193 females and 46 males, with a mean age of 26.5 years. They took Kampo medicine three times daily for 3 months, in a manner according to our protocol.

[Result] For females, 163 of 199 patients (82%) were in the KUOKETSUZAI Group taking medicines such as keisibukuryogankayokuinin, tokishakuyakusan, tokakujyokito, and kamishoyosan. Here, 124 of 163 pa-tients (76%) had a significant decrease in new and inflammatory eruptions after taking the Kampo medicines alone or in combinations with other KUOKETSUZAI medicines. Fourteen of 19 patients (74%) took seijobo-futo, of which 6 of 7 females (86%), and 1 of 3 males (33%) had decreased acne eruptions. Also in KUOKET-SUZAI group, significant efficacy was shown in females over 21 years of age on combinations. For males, 18 of 23 patients (78%) taking keigairengyoto and 14 of 20 patients (70%) taking seijobofuto, also had decreased inflammatory acne eruptions.

[Conclusion] Kampo medicines exhibit significant efficacy for the treatment of the refractory acne.

KUOKESTUZAI : category of oriental medicines that improve peripheral blood flow while concurrently facilitating wound healing, and that regulate hormone balance, and improve gastrointestinal motility ; e.g. keisibukuryogankayokuinin, tokishakuyakusan, tokakujyokito, kamishoyosan.

Key words : acne vulgaris, KUOKETSUZAI, keigairengyoto, seijobofuto 要旨 年 月から 年間に受診した痤瘡患者 例(女性 例,男性 例)中, ヵ月以上(最長約 年)の標準 治療で改善がみられなかった難治例 例(平均年齢 .歳,女性 例,男性 例)に対し,漢方治療を行った。 本研究では,これらの症例について漢方治療の有効率を後方視的に検討した。女性 例中 例( %)が駆瘀血 剤(桂枝茯苓丸加薏苡仁・桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遥散・桃核承気湯)の適応であった。有効率は,駆瘀 血剤単剤使用群と複数使用群,または駆瘀血剤と他剤(清上防風湯,荊芥連翹湯他)併用群を合わせると %であっ

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緒言 日本皮膚科学会は尋常性痤瘡治療のガイドライ ン) 年に作成し,多くの皮膚科医はこれに沿っ た治療を行っている。しかし,この治療では症状の 改善がみられない痤瘡患者も多く,従来の皮膚科治 療に対する皮膚科医の満足度は高くない)。一方で, 難治性痤瘡に対して漢方治療が奏功した症例報告・ レビューも多くある)∼ )。本研究では,日本皮膚科 学会ガイドラインに準じた治療でも症状の改善を認 めなかった難治症例に対して漢方治療を行った症例 について,その有効性を後方視的に検討した。 対象・方法 年 月から 年 月の 年間に当施設を受 診した痤瘡患者は 例(女性 例,男性 例) であった。このうち, ヵ月以上の標準治療で改善 がみられなかった難治症例または抗生剤内服中止に より座瘡が再発した患者は 例であった。この 例に対して随証治療を行い, 週間後の有効率を処 方別,性別および年齢別に検討した。 標準的皮膚科治療に抵抗性の座瘡症例に対して, 当施設で行っている主な随証治療内容を表 に示す。 この基準では女性では月経周期に一致して症状が悪 化する症例は便通と瘀血の圧痛点を重視して駆瘀血 剤を選択した。男性の駆瘀血剤の選択としては,鼻 翼部や頭皮に紅斑や細絡(血管拡張)や難治性面皰 を認める群に桂枝茯苓丸を選択した。具体的には月 経前に便秘とともに下顎部や口周囲に炎症性丘疹, 紅色結節の新生を認め,月経開始とともに自然軽快 する症例(図 −a)や下顎部や頸部に難治性面皰, 非炎症性丘疹を認め,月経周期に一致して悪化する 症例の中で腹力が中程度で舌下静脈の怒張,腹候で 左臍傍圧痛を認める場合には,桂枝茯苓丸加薏苡仁 を選択した。同群中でエキス顆粒の内服が困難な症 例には桂枝茯苓丸錠剤を選択した。月経前に下顎部 周囲の炎症性丘疹,紅色結節の新生を認める例,ま たは下顎部,頸部の非炎症性丘疹の月経前悪化を認 め,月経周期に関係ない重度の便秘(便通が − 日に 回程度)および腹候で S 状結腸部の圧痛を 認める例に対して桃核承気湯を選択した。月経前に 顔面に比較的小さな炎症性丘疹,小膿疱の新生を認 め(図 −a),手足の冷えやめまい,月経開始後 に下痢傾向のある例に当帰芍薬散を選択した。また, 月経前に下顎部周囲の炎症性丘疹の新生を認め,顕 著な上熱下寒(足のみの冷え,口唇の乾燥),ホッ トフラッシュの自覚および腹候で軽度の胸脇苦満を 認める例には加味逍遥散を選択した。女性で便通が 正常で月経周期に一致しての症状変動がない症例や, 男性で比較的炎症の少ない丘疹が多発する例には十 味敗毒湯,症状の変動が少なく,膿疱が主体で顔面 に鮮紅色紅斑を伴う脂性肌の炎症性丘疹が多発する 例には清上防風湯,炎症性丘疹が比較的暗赤色で難 治性面皰を両頬に認め,ストレスにより悪化する傾 向があり,腹候で胸脇苦満を認める例に荊芥連翹湯 を選択した。また,投与開始時に炎症性丘疹の割合 が多い症例には,本治薬としての駆瘀血剤に加えて, 投与開始時から症状に応じて標治薬を次のように選 択し,症状の改善とともに漸減した。顔面紅潮を伴 い膿疱が多発する例には清上防風湯,ストレスで悪 化し皮膚暗赤色で胸脇苦満を伴う例には荊芥連翹湯, 紅色丘疹が主体で膿疱が少ない例には十味敗毒湯を 選択した。今回の研究においては荊芥連翹湯,清上 防風湯,十味敗毒湯を標治薬とし,桂枝茯苓丸・桂 枝茯苓丸加薏苡仁・当帰芍薬散・桃核承気湯・加味 逍遥散の 剤の駆瘀血薬を本治薬とした) 漢方治療開始 週間後に,炎症性丘疹の減少また は便通の改善,月経痛の改善などを認めた症例につ いては,さらに 週間の内服を継続し, 週後に患 者の自覚症状および他覚所見で治療の効果判定を 行った。炎症性丘疹および非炎症性丘疹の %以上 の症状改善を認めた症例を有効例と判定した。最初 の 週間の内服で,副作用による中止症例は効果判 定の対象から除外した。 週間内服後,丘疹,便通, および月経痛の改善がない症例,漢方薬処方以降再 診がなく判定不能な症例,および患者本人の都合で た。駆瘀血剤単剤使用群と比べ, 剤以上併用群が,又 歳以下群に比べ 歳以上群の有効率が有意に高かった。 男性は荊芥連翹湯と清上防風湯は有効率がそれぞれ %( / 例), %( / 例)とほぼ同等であった。以上の ことより難治性痤瘡に対して,女性で 歳以上は駆瘀血剤,男性は荊芥連翹湯又は清上防風湯が有効な例が多かっ た。 キーワード:痤瘡,駆瘀血剤,荊芥連翹湯,清上防風湯

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表 当施設で行われている痤瘡に対する主な随証治療 a b 図 歳女性 桂枝茯苓丸・桂枝茯苓丸加薏苡仁有効例 a:内服前 下顎部に月経前に圧痛を伴う紅色結節が出現し,月経開始と伴に徐々 に軽快し色素沈着のみとなるが次の月経で下顎部の他の部位に繰り返す。 b:内服 ヵ月後 紅色結節は認めない。小丘疹のみ認める。 a b 図 歳女性 当帰芍薬散有効例 a:内服前 両頬に比較的小さな紅色丘疹,小膿疱を認める。 b:内服 ヵ月後 丘疹,膿疱の減少を認める。

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漢方薬内服を中止した症例については無効とした。 効果判定および経過観察期間については,一般的に 抗生剤外用,内服治療についての炎症性丘疹の経過 観察は − 週間程度だが,アダパレン外用,ケミ カルピーリングによる非炎症性丘疹および面皰につ いては 週間程度である。駆瘀血剤は非炎症性丘疹, 面皰にも効果が期待できるため,本研究でも効果判 定は 週後とした。 尚,すべての症例で使用洗顔・化粧品をチェック し,皮膚科的に接触皮膚炎やその他の膿疱性疾患(マ ラセチア毛嚢炎,太藤病など)を除外した。 統計学的検討については,有効率の年齢別比較は χ二乗検定を,駆瘀血剤の単剤使用群と複数併用群 との比較は Fischer の直接確率計算法による検定を 用いた。 結果 漢方治療対象となった 例中,副作用による中 止例 名を除いた 名(女性 例,男性 例)を 治療有効率の解析対象者とした。年齢分布は,女性 − 歳(中央値 歳),男性 − 歳(中 央 値 歳)であった。 週間後の判定において,治療有効 例と判定された者は 例( %,女性 例,男性 例)であった。一方,症状の改善を認めなかった 者は 例,再受診がなかった者は 例,本人の都合 による中止は 例であった。改善を認めなかった 例中 例は補中益気湯, 例は半夏瀉心湯, 例は 排膿散及湯が有効であった。 女性症例に対する処方内容とその頻度: 単独使用薬剤頻度では,桂枝茯苓丸または桂枝茯 苓丸加薏苡仁の単独使用症例が最も多く, 例 ( %, / )であり,清上防風湯 例( %), 当帰芍薬散 例( %),桃核承気湯 例( %), 荊芥連翹湯 例( %),十味敗毒湯 例( %), 加味逍遥散 例( %)の順であった(表 )。 また 例は 剤併用しており,うち 例は駆瘀血 剤同士の併用(月経後 週間は当帰芍薬散, 週目 以降は桂枝茯苓丸または桂枝茯苓丸加薏苡仁,又は 桂枝茯苓丸加薏苡仁内服中便秘時のみ桃核承気湯併 用または更年期症状出現による桂枝茯苓丸から加味 逍遥散への移行), 例は駆瘀血剤と清上防風湯と の併用, 例は桂枝茯苓丸加薏苡仁と荊芥連翹湯, 又は他剤との併用, 例は清上防風湯と十味敗毒湯 の併用であった。 例のみ駆瘀血剤 剤と荊芥連翹 湯の 剤を併用していた。 剤併用したすべての症 例は効果判定時の 週後には駆瘀血剤のみの内服と なっていた。併用例も含めると駆瘀血剤適応群は 表 女性における使用方剤・有効率

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%( / 例)であった。その中で桂枝茯苓丸 ・桂枝茯苓丸加薏苡仁を含む症例が最も多く,単剤 使用例と併用例をあわせると 例( %)であっ た(表 )。 週後の最終有効率は,副作用で脱落した 名を 除く 名について検討した。単剤使用では桂枝茯 苓丸および桂枝茯苓丸加薏苡仁は %( / 例), 清上防風湯は %( / 例),当帰芍薬散は %( / 例),桃核承気湯は %( / 例),荊芥連翹湯 は %( / 例),加味逍遥散は有効率 %( / 例),十味敗毒湯は有効率 %( / 例)であっ た。駆瘀血剤との併用使用例においては,桃核承気 湯と清上防風湯の併用例 例以外はすべて有効で あった。また,駆瘀血剤適応群について併用群と単 独使用群を合わせると有効率は %( / 例) であった(表 )。 年齢別に駆瘀血剤の有効率をみると, 歳以下で は有効率は %( / 例), 歳以上で %( / 例)であり, 歳以上について有効率が有意に 高かった(P < . ,表 ,図 )。さらに,駆瘀 血剤の単剤使用群と駆瘀血剤どうしの併用群の有効 率は,単剤群 .%( / 例),併用群 %( / 例)であり,併用群の方が有意に有効率は高かっ た(P < . ,表 ,図 )。一方,清上防風湯, 荊芥連翹湯については,年齢による有効率の差は認 表 駆瘀血剤投与者(併用も含む)における有効率 図 駆瘀血剤投与者(併用も含む)における有効率 歳以上群が 歳以下群に比べ有意に有効率が高 かった。 表 駆瘀血剤単剤群と併用群の有効率 図 駆瘀血剤の単剤群と併用群の有効率 併用群が単剤群に比べ有意に有効率が高かった。

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めなかった。 男性症例に対する処方内容とその頻度: 男性は荊芥連翹湯の適応患者が 例( %, / ),清上防風湯の適応患者が 例( %)であっ た。いずれの治療群とも有効率は %以上であった (荊芥連翹湯 %,清上防風湯 %)(表 )。年齢 分布では若年層( − 歳代)で清上防風湯の適応 者が多い傾向があったが,荊芥連翹湯は症例数が少 ないながらすべての年齢層で適応者があった(表 , 図 )。 副作用: 観察期間中に副作用を認めた症例は 例中 例 ( %)であり,いずれも女性であった。薬疹の診 断は,臨床症状及び十分なインフォームドコンセン トのもとに行われた被疑薬少量内服試験にて診断し た。 例は清上防風湯投与例で,すべて紅斑丘疹型 の薬疹であった。 例は十味敗毒湯投与例で,紅斑 丘疹型の薬疹( 名)と下痢( 名)を認めた。桂 枝茯苓丸加薏苡仁は 例のみで気分不良を認めた。 副作用を認めた症例については内服中止を指示し, すべての副作用は薬剤中止で速やかに軽快した。 表 男性における有効率と副作用 表 男性における荊芥連翹湯と清上防風湯の有効例の年齢分布 図 男性における荊芥連翹湯と清上防風湯の有効例の年齢分布 清上防風湯は − 歳代で適応者が多く,荊芥連翹湯はすべての 年齢層で適応者があった。

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考察 日本皮膚科学会による痤瘡治療ガイドライン) 推奨度 A として強く推奨されている治療はアダパ レン外用・抗生剤外用,抗生剤内服である。漢方薬 は面皰・炎症性皮疹のみに記載があり,推奨度 C (選択肢の一つとして推奨する)とされているもの が十味敗毒湯・清上防風湯・荊芥連翹湯だが,黄連 解毒湯,温清飲,桂枝茯苓丸は C (推奨しない) とされている。その理由としては,十味敗毒湯・清 上防風湯・荊芥連翹湯は抗生剤と同等の抗菌作用を 持つという in vitro の実験報告)∼ )や,これらの薬 剤が抗生剤の代用になるという臨床試験報告 )∼ ) が数多く存在するが,黄連解毒湯・温清飲・桂枝茯 苓丸にはそのような報告が少ないことも一因だと思 われる。 しかし, 代以降の女性で月経周期に一致して悪 化する痤瘡は瘀血が病態の主体であるため,標治薬 である清上防風湯,荊芥連翹湯や抗生剤内服の効果 が乏しい患者も多い。そこで当院では,西洋医学的 に難治な症例に対しては,本治薬としての駆瘀血剤 を含めた随証治療に基づく選択基準に沿って漢方薬 を投与している。駆瘀血剤の選択は大塚敬節が「実 証の者で清上防風湯・荊芥連翹湯が効なく,上衝し てうっ血傾向があり,口唇,舌等が黒紫色を呈し, 左下腹部に圧痛・抵抗があり,瘀血による面疱には 桂枝茯苓丸加薏苡仁,便秘して更に実証のものには 桃核承気湯を用いる。桂枝茯苓丸を用いる一番大切 な目標は瘀血の腹証である」)と述べていることを 参考にし,腹候と便秘を重視して作成した。標治薬 としての十味敗毒湯・清上防風湯,荊芥連翹湯の選 択は夏秋らの報告 )を参考にして行った。その結果, 女性については駆瘀血剤の適応が多く( %)有効 率も高かった( %)。 剤以上を併用した 例の うち 例は抗菌効果・抗炎症効果を追加するため清 上防風湯または荊芥連翹湯又は黄連解毒湯を駆瘀血 剤に併用し,症状軽快とともにそれらを漸減し,駆 瘀血剤のみにした。 例は月経前に便秘,月経後に 下痢をきたす点に注目して生理前 週間は桂枝茯苓 丸,生理後 週間は当帰芍薬散を投与した。残りの 例は経過中にホットフラッシュなど更年期症状が 出現したため,桂枝茯苓丸から加味逍遥散へ転方し た。駆瘀血剤を有効に使うためにはこのような配慮 も必要と思われる。又今回の検討では十味敗毒湯の 有効率が低かったが竹村は治療開始時からの十味敗 毒湯 .倍量の増量投与が著効する )と報告してお り,今回は通常量でのみ内服を行った点で結果が異 なった可能性があると思われる。この報告と今回の 我々の統計から,月経周期に一致して悪化する症例 の中でも 歳以下群,または便通異常がない群が十 味敗毒湯の .倍量適応群になる可能性もあり,今 後の検討課題と考える。 男性についてはストレスで悪化し瘀血を呈する症 例に荊芥連翹湯, − 歳代のホルモンバランスに よる皮脂の増加が関与し,顔面紅潮が強い尋常性痤 瘡例に清上防風湯を選択したため,この 剤の適応 者が多く合計で %( / )を占めたと思われる。 男性の若年層の痤瘡患者は顔面に紅斑・紅潮を伴う ことが多く,清上防風湯適応患者が多い傾向となっ た。ストレスで悪化し,瘀血を伴った痤瘡・毛包炎 患者は荊芥連翹湯の適応としたが全年齢層( − 歳)で適応患者は存在し,有効であった。荊芥連翹 湯の患者の多くは,蓄膿や頭部多発性毛嚢炎,臀部 慢性膿皮症など慢性炎症性疾患を伴っていたので, その一症状としての顔面毛嚢炎に有効であったと考 える。清上防風湯については数が少ないながら男女 ともにやや若年層に適応者および有効率が高い傾向 にあるが,副作用比率もやや高い点(女性では 例 中 例の %)が使用上考慮を要すると思われた。 川島ら)は皮膚科専門の多施設医療機関における 痤瘡患者 例の実態調査を行っているが,痤瘡の 悪化時期および誘因は女性では月経前が圧倒的に多 く,寝不足,多忙の順であり,男性は寝不足が多く, 食事が不規則,多忙の順であった。この結果は今回 の我々の漢方選択の結果,女性は月経周期に一致し て悪化する症例が多いため駆瘀血剤の適応者および 有効率が高く,男性は寝不足などストレスが関与す る症例が多いため荊芥連翹湯の適応者および有効率 が高いという結果と一致するものである。またこの 報告は男女比および平均年齢ともに我々の報告とほ ぼ同様であり,我々の症例が多施設で行った実態調 査と同じ平均的な患者背景であったと思われた。今 回の我々の漢方選択基準は腹候と問診のみでも方剤 の選択が可能であり今後は多施設での臨床検討が望 まれる。 結語 難治性痤瘡に対して,女性で 歳以上は駆瘀血剤,

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男性は荊芥連翹湯または清上防風湯が有効な例が多 かった。 附記 桂枝茯苓丸加薏苡仁,当帰芍薬散,桃核承気 湯,加味逍遥散,清上防風湯,荊芥連翹湯,十味敗毒 湯はツムラエキス製剤 . g 分 ,桂枝茯苓丸はクラ シエエキス錠剤 錠分 を用いた。 この発表は第 回日本東洋医学会学術総会(京都) で発表した。 利益相反(COI)に関して開示すべきものなし。 文献 )林伸和,赤松浩彦,岩月啓氏,他.日本皮膚科学会ガ イドライン・尋常性痤瘡治療ガイドライン.日本皮膚 科学会雑誌 ; : ‐ . )川島眞,赤松浩彦,林伸和,他.皮膚科専門医医療機 関における痤瘡患者実態調査.臨床皮膚科 ; : ‐ . )坂東正造.病名漢方治療の実際.第 版,各論応用編, 皮膚科疾患 痤瘡(にきび).メディカルユーコン, 京都 . ‐ . )坂東正造,福富稔明.山本巌の臨床漢方(下), 章 尋常性痤瘡.メディカルユーコン,京都 . ‐ . )高山宏世.弁証図解漢方の基礎と臨床.第 版,皮膚 疾患にきび(尋常性痤瘡).日本漢方振興会漢方三考 塾,東京 . ‐ . )二宮文乃.皮膚疾患漢方治療マニュアル,第Ⅱ章尋常 性痤瘡.現代出版プランニング,東京 . ‐ . )諸橋正昭.産婦人科の世界(増),新・産婦人科の漢 方 ,尋常性痤瘡.医学の世界社,東京 . ‐ . )桧垣修一,長谷川義典,諸橋正昭,他.痤瘡の和漢療 法に関する基礎的研究(第 報).和漢医学雑誌 ; : ‐ .

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表 当施設で行われている痤瘡に対する主な随証治療 a b 図 歳女性 桂枝茯苓丸・桂枝茯苓丸加薏苡仁有効例 a:内服前 下顎部に月経前に圧痛を伴う紅色結節が出現し,月経開始と伴に徐々 に軽快し色素沈着のみとなるが次の月経で下顎部の他の部位に繰り返す。 b:内服 ヵ月後 紅色結節は認めない。小丘疹のみ認める。 a b 図 歳女性 当帰芍薬散有効例 a:内服前 両頬に比較的小さな紅色丘疹,小膿疱を認める。 b:内服 ヵ月後 丘疹,膿疱の減少を認める。

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