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π電子物質の光学応答に関する研究

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Academic year: 2021

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Title π電子物質の光学応答に関する研究( Abstract_要旨 )

Author(s) 田中, 駿介

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2017-11-24

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k20751

Right 学位規則第9条第2項により要約公開

Type Thesis or Dissertation

Textversion none

Kyoto University

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( 続紙 1 ) 京都大学 博 士( 理 学 ) 氏 名 田 中 駿 介 論文題目 π 電子物質の光学応答に関する研究 (論文内容の要旨) 芳香族分子に代表される炭素骨格からなる物質は,炭素原子の2pz軌道が共役し た π 電 子 軌 道 を 有 し , そ の 光 学 応 答 や 電 子 物 性 は π 電 子 系 に よ り 特 徴 づ け ら れ る.このような物質群を本論文ではπ電子物質と総称する.𝜋電子物質は炭素を主 構 成 成 分 と し て い る た め 軽 量 で あ り , そ の 多 く は 伸 縮 性 に 富 む と い う 特 徴 を 有 し,特に,光との相互作用を活用した発光素子や光検出器,太陽電池等の光デバ イスとしての応用が期待されている.孤立分子における𝜋電子の光学応答は,一電 子近似描像による𝜋-𝜋∗遷移がよく知られているが,実際は多数の電子間の相互作 用を考えなければならない.その多体効果により,分子集合体では電子励起状態 は非局在化し励起子となり,単分子においても異なる𝜋-𝜋∗遷移が協同的に励起さ れることで電子の集団運動(プラズモン)が起きうる.これらの光学応答は,静 的な分子の集合構造や動的な分子内・分子間振動によって変調されるため単純で は な い が , 無 機 材 料 に は な い 新 奇 で 多 様 な 光 物 性 を 示 す 可 能 性 も 秘 め て い る . 従って,𝜋電子物質の光学応答を分子論的な観点から理解し,その光学特性を制御 することは重要な課題である. 本研究では𝜋電子物質の光学応答として(1)分子集合体における励起子と(2)グラ フェンプラズモンに注目した.以下に各章の内容を総括する. 第一章では序論としてπ電子物質の光学応答についての背景と本研究の目的・ 意義を述べている. 第二章では本論文で注目した二種類の𝜋電子の光学応答(励起子とプラズモン)に ついて概説している.前半で分子集合体中の励起子について,その電子状態の理 論的取扱いを論じ,特に励起子コヒーレンスサイズと吸収・発光の振動子強度や 励起子緩和ダイナミクスの関係について論じている.後半で,グラフェン中に誘 起されるプラズモンについて,理論的取扱いや減衰機構の先行研究について述べ ている. 第三章では本研究で用いる実験手法の原理について述べている.まず,時間分 解計測の光源として用いたチタンサファイアレーザーについて述べ,第四章で用 いる光カーゲート法による時間分解発光測定について説明している.その後,第 五章で用いる非同軸光学パラメトリック増幅による超短パルス光の発生とそれを 用いたポンプ-プローブ分光について説明したのち,第五章で試料評価に用いる低 速電子線回折の原理について論じている. 第四章ではアルキ鎖修飾による励起子コヒーレンスサイズの増大についてジナ フ ト チ エ ノ チ オ フ ェ ン (DNTT)分 子 の 蒸 着 膜 を 対 象 と し た 研 究 に つ い て 述 べ て い る.DNTTおよびそのアルキル誘導体薄膜の過渡発光スペクトルに観測される振電 構造を解析することで,アルキル鎖修飾がもたらす微視的な集合構造変化が励起 子コヒーレンスサイズの増大を引き起こすことを示している.さらに,振電相互 作用を取り込んだ励起子理論に基づいて,コヒーレンスサイズの温度依存性は励 起子バンド内の熱分布で説明できると結論した. 第五章では可視光領域に観測されるグラフェンプラズモンの光学応答と超高速 ダイナミクスについて述べている.Ir(111)上のグラフェンへアルカリ原子を曝露 すると,アルカリ原子がIrとグラフェンの間にインターカレートされアルカリ原

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子からグラフェンに電子供与が起きることが知られている.超高真空装置内でア ルカリ原子(CsおよびLi)がインターカレートされたIr(111)上のグラフェンを作 製し,その光学応答を定常状態と時間分解反射率変化測定を用いて調べた.両ア ルカリ原子インターカレーションに伴って定常状態反射率変化スペクトルに共鳴 吸収帯が観測された.グラフェンプラズモンの分散関係の計算から共鳴吸収帯の ピークエネルギーを説明することができ,この共鳴吸収帯の起源を,Ir上のグラ フェンが有するモアレ構造が運動量の不一致を解消することで光学活性となった グラフェンプラズモンであると結論している. また,時間分解反射率変化から共鳴吸収帯を超短パルス光によって励起するこ とで表面のコヒーレントな振動が誘起されることを示し,そのコヒーレントな振 動は共鳴吸収帯をエネルギー軸で変調していると結論した.表面振動によってグ ラフェン中の電荷密度が変調されることで共鳴吸収帯のエネルギー変調が起きて いると提案している. 第六章では本論文の総括が記されている.

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(続紙 2 ) (論文審査の結果の要旨) 本論文は,π電子がその光物性を特徴づける系として,DNTT分子集合体とグラ フェンの2つを取り上げ,前者についてはその励起子ダイナミクスの置換基効果 について,後者については電荷ドープによる電子の集団運動(プラズモン)の変 調というテーマに焦点を当て研究したものである. 分子集合体の励起子については,置換基としてアルキル鎖を導入することによ り,励起子波動関数の空間的広がり(コヒーレンスサイズ)がどのように変調を 受けるかという点について調べた.広い温度範囲での時間分解発光測定結果を振 電相互作用を取り入れた励起子理論を用いて解析した結果,アルキル鎖導入によ り集合体内での分子の長距離秩序が増大し,その結果コヒーレンスサイズの増大 が起きると結論した.化学修飾による分子集合体の電子物性や光物性の変調は古 くからおこなわれているが,分光学的にその効果を検証し微視的起源に立ち入っ た議論が行われた例は少なく,本研究の成果は意義深い. また,Ir(111)上でアルカリ原子をインターカレートしたグラフェンについて は,化学ドープにより可視域で20%程度という巨大な吸収帯が現れることを発 見した点に大きな意義がある.またその微視的起源について,超高真空下での光 学測定の結果をグラフェンにおけるプラズモンポラリトンの微視的理論を用いた 解析により考察した.その結果,アルカリ原子からの高レベルの電荷注入と,こ の系で発現するモアレ構造が運動量補償を担うことで,可視光領域のグラフェン プラズモンが励起されるという新しい機構を提案した.グラフェンにおけるプラ ズモンポラリトンの研究は近年急速に進展しているが,過去の研究ではその共鳴 エネルギーが赤外光の光子エネルギー領域にある例が知られているのみであり, 可視域でのプラズモン励起の可能性とその励起機構を明らかにした点は非常に意 義深いものである. よ っ て , 本 論 文 は 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る . ま た,平成29年9月26日,論文内容とそれに関連した事項について試問を行っ た結果,合格と認めた. 要旨公表可能日: 年 月 日以降

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