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キャリア教育としての実践コミュニティの変化に関する研究

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Academic year: 2021

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要旨  実践コミュニティの発展段階である潜在段階,結託段階,成熟段階,維持・向上段階において,実践コ ミュニティの 3 つの要素(①領域,②コミュニティ,③実践)はどのように変化し,どのような効果がある のかを明らかにした。具体的には,本事例のキャリア教育としての実践コミュニティは,必ずしも活力と認 知度レベルが高いとは言いにくいことを示した。また,実践コミュニティの参加者として,資格取得や就職 活動としてのキャリア教育を望む人より,生涯にわたる持続的就業力のキャリア教育を望む学生が実践コ ミュニティの活動に向いていることを明らかにした。 キーワード:キャリア,キャリア教育,実践コミュニティ

Ⅰ.はじめに

 Wenger et.al[2002]では,実践コミュニティを 「あるテーマに関する関心や問題,熱意などを共有し, その分野の知識や技能を,持続的な相互交流を通じて 深めていく人々の集団」と定義している。  また,実践コミュニティは新しい概念ではなく,太 古の昔から続く人類初の知識を核とした社会的枠組み であり,実践コミュニティはどこにでもあり誰もが職 場や学校,家庭や趣味を通じて,いくつかの実践コ ミュニティに属していると述べている。  このように実践コミュニティは必ずしも企業におい てのみ見られるものではなく,学校や家庭,趣味など においても見られるものである。  そこで本研究では,授業外における学びの活動を実 践コミュニティ(以下,実践コミュニティないしはコ ミュニティと略す)として捉え,授業外における学び のコミュニティに関する研究を行うことにする。その 背景には,大学において授業外における学びのコミュ ニティを「意図的に」生成・維持・向上することで, キャリア教育をベースに学生の成長を促すことができ るからである。

Ⅱ.先行研究と RQ

 Wenger et.al[2002]では,実践コミュニティは知 識を生み出し,共有する責任を担う社会的枠組みと捉 えている。この社会的枠組みという視点こそがキャリ ア教育を再考するには重要である。その理由は,キャ リア教育を大学の構造(キャリア教育の戦略的重要性, 授業科目の位置づけ等)から捉えるには限界があるか らである。キャリア教育そのものは単なる就職指導や ビジネスマナーではなく,学生個人が「社会的・職業 的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てる• • • • • • • • • • • • • • • • • (強調点筆者)ことを通して,キャリア発達を促す教 育」である。そして,この必要な基盤となる能力や態 度を育てるには,金森[2017]が述べているように, 各大学における「構造の違い」を踏まえキャリア教育 を行うだけではなく,知識を生み出す社会的枠組みで ある「実践コミュニティ」の観点からもキャリア教育 を行う必要があろう1)  Wenger et.al[2002]では,実践コミュニティを次 の 3 つの組み合わせで説明している。それは①一連の 問題を定義する知識の「領域」,②この領域に関心を もつ人々の「コミュニティ」,③領域内で効果的に仕 事をするために生み出す共通の「実践」である。そし

キャリア教育としての

実践コミュニティの変化に

関する研究

─学生参加に着目して─

The Journal of Economic Education No.38, September, 2019

A research on change of communities of practice as career education: Focusing on student participation.

KANAMORI, Satoshi

(2)

て,これら 3 つの要素がうまくかみ合って実践コミュ ニティは知識を生み出し,共有する責任を担うことが できる社会的枠組みとなる2)  また Wenger et.al[2002]では,実践コミュニティ は持続的に発展していくものの,コミュニティの発展 には 5 つの段階があると述べている。第 1 段階は潜在, 第 2 段階は結託,第 3 段階は成熟,第 4 段階は維持・ 向上,第 5 段階は変容である。  そして,実践コミュニティの 3 つの要素(①領域, ②コミュニティ,③実践)と実践コミュニティの発展 段階(潜在,結託,成熟,維持・向上3))を整理した のが図 1 である。  金森・東渕[2017]では,Wenger et.al[2002]の 実践コミュニティの理論を用いながら,実践コミュニ ティがどのようにして潜在・結託・成熟されるのか, また,学生がどのように成長するのかを明らかにした。 しかしながら,次の 3 点が十分に研究なされてはいな かった。それは,①実践コミュニティの「維持・向 上」と「変容」に関する研究,②大学として正課外の 活動を正課の授業にどうつなげていくか,かつ,組織 の文脈にどう位置付けていくかの研究,③学生個人が 授業外での学びを授業内における学びにどのようにつ なげていくかといった学習ダイナミクスの研究である。  そこで,本研究では,潜在段階~維持・向上段階に おいて実践コミュニティはどのように発展するのかを 明らかにする。具体的には,Wenger et.al[2002]の コミュニティの発展段階の 4 段階(潜在,結託,成熟, 維持・向上)において「領域,コミュニティ,実践」 の要素がどのように変化するかを明らかにする。  なお,実践コミュニティの段階区分は学生が活動へ 参加した時点から辞めた時点とする。その理由は,実 践コミュニティの活動レベルは,参加者の活動量に比 例するので,学生参加者の変化が目安になるからであ る。  これらのことを踏まえ,次の 2 つの RQ を立て明ら かにする。 RQ1: 潜在段階,結託段階,成熟段階,維持・向上段 階において,実践コミュニティの 3 つの要素 (領域,コミュニティ,実践)と実践コミュニ ティはどのように変化し,どのような効果(+ または−)があるのか。 RQ2: 実践コミュニティを辞める学生は,どのような キャリア教育志向なのか。

Ⅲ.調査方法

 2019 年 2 月,現在も行われている活動が研究対象な ので,研究方法として参与観察とヒアリングを用いた。 その理由は,調査研究者が立ち上げの段階からコミュ ニティに関与し,コミュニティの内実を把握していた からである。

Ⅳ.事例の選択と紹介

1.事例の選択  授業外での学びのコミュニティとして,家政系の私 立女子大学の事例(名称をキャリアバームという)を 取り上げる。その理由は,衣・食・住への関心がメイ ンである家政系の女子大学でありながら,経営系の キャリアについて関心を示し,学生自ら主体的に学ぶ 活動を行っているからである。実際,キャリアバーム は正課の授業ではなく,大学から公式に認定されてい るサークルとも異なっている。 2.事例の紹介  キャリアバームは,木(ドイツ語でバーム)の年輪 のように外部の人との繋がりを大切にし,学生自身が キャリアについて深く考える自主ゼミ活動である。 2016 年 10 月,当時 2 年生が中心となり,キャリア 図 1 実践コミュニティの 3 つの要素と発展段階について 潜在 結託 成熟 維持・向上 領域 メンバーの関心を引き出し範囲を定義する 知識共有が役立つことを立証する 組織で果たす役割や他の領域との関係を示す 領域の有用性を保ち,組織での影響力を高める コミュニ ティ 知識共有を進める意義を気づかせる 信頼関係を構築する 中核的な目的から関心が逸れないように気を付ける コミュニティの雰囲気と知 的焦点を,活気に満ちた魅 力的なものにする 実践 必要な知識を割り出す どの知識をどのように共有すべきかを具体的に特 定する コミュニティの知識を体系 化する コミュニティを常に最先端の状態にとどめておく Wenger et al.(2002)をもとに筆者作成

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バームを立ち上げた。主な活動は次の 3 つである。1 つ目は社会人ゲストからキャリアについて学ぶ交流会 である。2 つ目は「良い会社」に関する調査・研究, 企業視察などを行うことである。なお,活動の一環と して学生が「女子学生の視点から見た良い会社研究」 の学会発表を行った。3 つ目は就職やキャリアなどに 関する役立つ情報を提供することである。  なお,キャリアバームが立ち上がった背景として, キャリアデザインを受講していた学生から教員が相談 を受けたことが始まりである。なお付言しておくと, 当時担当教員は着任して 3 ヶ月目であった。  この大学に入って 1 年が経ち,大学生活にも慣れ た頃「キャリアデザイン」の授業を受ける中で,自 分のキャリアについて考えるようになりました。自 分が学んでいる勉強や今の自分がどのように将来に つながっていくのか。就職活動や企業というものに 対して,あまりにも私は無知でした。受け身な自分 から自発的な自分に,また今の環境を変えていきた いと密かに思っていました。そのような折に,先生 に相談をしたところ,自主的な活動をしようという 話になりました。(設立メンバーの発言より)

Ⅴ.事例の記述・考察

 事例の記述と考察の前に,2016 年 9 月~ 2018 年 6 月までにおける各段階(潜在段階,結託段階,成熟段 階,維持・向上段階)とキャリアバームの参加人数の 変化を示す(図 2)。 1.潜在段階  潜在段階の中心テーマは共通点を見つけることであ る。活動期間は 2016 年 9 月~ 2016 年 12 月までであり, 参加人数は 8 人から 4 人に減少した時期である。 (1)記述  活動内容として,社会人ゲストを 5 回招き,企業視 察を 2 回行った。また,キャリアバームを立ち上げた 学生 2 人がキャリアバームのメンバー募集の説明会を 自ら行った。説明会には 6 人の学生が参加した。その 結果,教員と参加意思を示した学生 8 名で 1 回目の活 動を行ったものの,8 名で始めた活動も 2 ヶ月後には 4 名になった。その背景には,8 名全員が授業コース や必修などが異なっていたからである。なお,活動を 辞めた学生は教員志望の学生であった。 (2)考察  ①領域(メンバーの関心を引き出し範囲を定義す る)では,木の年輪のように外部の人や先輩・後輩と の繋がりを大切にし, 学生自身がキャリアについて深 く考える範囲を設定した。その結果,メンバーの関心 を引き出すことができた。②コミュニティ(知識共有 を進める意義を気づかせる)では,活動の意義に気付 いた学生 2 人がキャリアバームのメンバー募集の説明 会を行った。しかしながら,8 名で始めた活動も 2 ヶ 月後には 4 名になった。その背景として,キャリア教 育という知識共有の意義を共有できなかったからであ ろう。実際,活動を辞めた人は教員資格を目指してお り,資格のためのキャリア教育(川嶋[2013])を望 む人達であったと考えられる。③実践(必要な知識を 割り出す)では,知識活動として,キャリア教育を学 ぶコミュニティが学生に必要であった。その理由とし 図 2 各段階と参加人数の変化

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て,キャリアデザインは 1 単位で 5 限目の授業であり, 受講生も少なく,キャリア教育の大切さが学生に伝 わっていなかったからである。この点については, キャリア教育を学ぶコミュニティが立ち上がったこと で必要な知識の割り振りを行うことができた。 2.結託段階  結託段階の中心テーマは共通の関心や認識を高める ことである。活動期間は 2016 年 12 月~ 2017 年 5 月で あり,参加人数は 4 人から 3 人に減少した時期である。 (1)記述  活動内容として,社会人ゲストを 10 回招き,企業 視察を 1 回行った。具体的には,社会人ゲストから資 格としての簿記の必要性を学んだ。また良い会社視察 において,良い会社とは何か,働きやすさと働き甲斐 について考えた。そして,良い会社について学会発表 をすることになったものの,一人の学生が辞めること になった。理由は,学会発表は自分がやりたいことと は違うということであった。なお,この学生は就職を 強く意識していた学生であった。この出来事から参加 メンバーとして加入条件を共有した。その際,正式な 文書にはしなかったものの,HP 上にメンバー加入条 件として,「アルバイトは要相談」を加えた。また, 社会人ゲスト,訪問先企業への感謝が見られなかった ので,「他者に感謝ができる人」の条件も加えた。 (2)考察  ①領域(知識共有が役立つことを立証する)では, 社会人ゲストから資格としての簿記の必要性を学んだ。 また訪問先企業から良い会社とは何か,働きやすさと 働き甲斐について考える機会を得た。その結果,キャ リア教育としての知識の共有が役立つことを示せた。 ②コミュニティ(信頼関係の構築)では,学会発表は 自分が考えていた活動とは違うということで,学生 1 人が辞めた。辞めた学生は就職活動を強く意識してい たため,学会活動など就職活動とは関係しない活動に は興味をもてなかったのであろう。これは就職のため のキャリア教育(川嶋[2013]) を希望していたため と考えられる。そして参加人数が 4 人から 3 人に減っ たこともあり,信頼関係の構築には至らなかった。③ 実践(どの知識をどのように共有すべきかを具体的に 特定する)では,参加メンバーとして加入条件に関す る知識の共有を行った。HP 上にメンバー加入条件と して,「アルバイトは要相談」「他者に感謝ができる 人」の条件を加えた。 3.成熟段階  成熟段階の中心テーマはコミュニティの境界を明瞭 にすることである。活動期間は 2017 年 5 月~ 2017 年 12 月までであり,参加人数は 3 人から 7 人に増加した 時期である。 (1)記述  活動内容として,社会人ゲストを 5 回招き,企業視 察を 1 回行った。また,学会発表,ラジオ収録,社会 人基礎力の発表を行った。2017 年 5 月,コアメンバー が 3 人に減り,メンバーを増やすことが課題となった。 そこでイベントにおいて,興味がある人に来てもらう 「この指」とまれ方式で募集をかけた。2017 年 6 月, 大学の正式活動ではないものの学生イベントとして オープンキャンパス(OC)の活動を行った。評判が 非常によく,OC 向けのプロジェクトが立ちあがった。 そして,新しいメンバーを受け入れ,脱会者を減らす 意味で「入会・退会案内マニュアル(2017 年 8 月)」 を文章としてまとめた。さらに,マニュアルにはキャ リアバームのビジョンや目的なども改めて書き加えた。 一例としては,キャリアバームは入社がゴールではな く,働き続けることに力点を置く活動であることを記 述した。そのため 3 年生で就活のために加入したい人 は志望理由を書いてもらうことにした。 (2)考察  ①領域(組織で果たす役割や,他の領域との関係を 明らかにする)では,大学の正式活動ではないものの, 学生イベントとして OC 活動を行った。評判が非常に よく,OC 向けに学生を鍛えるプロジェクトが立ちあ がった。これらのことからも分かるように,大学とコ ミュニティ活動の 1 部がつながったと考えられる。② コミュニティ(コミュニティの中核的な目的から関心 が逸れないこと)では,コアメンバーが 3 人に減った こともあり,イベントにおいては,興味がある人に来 てもらう「この指」とまれ方式で募集をかけた。メン バー数,活動内容も「良い意味で」限られていたので コミュニティの中核目的から逸れることはなかった。 ③実践(コミュニティの知識を体系化する)では,脱 会者を減らすために「入会・退会案内マニュアル」を 作成した。さらに,マニュアルにはキャリアバームの ビジョンや目的なども改めて書き加えた。その結果, コミュニティとして知識の体系化を行えた。 4.維持・向上段階  維持・向上段階の中心テーマは勢いの持続を行うこ とである。活動期間は 2017 年 12 月~ 2018 年 6 月まで

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であり,参加人数は 7 人から 4 人に減少した時期であ る。 (1)記述  活動内容として,社会人ゲストを 5 回招き,企業視 察を 1 回行った。また,次年度の学会発表に向けた活 動やラジオ収録,次年度の社会人基礎力発表に向けた 活動を行った。新たな活動として,企業との産学連携 が立ち上がった。2017 年 12 月,コアメンバー 3 人と 新たに加入したメンバー 4 人が引き継ぎの話し合いを 行った。その際,コアメンバーは現状を超える拡大活 動をして欲しいと伝えたものの,社会人ゲスト,学会 活動など,全ての活動が縮小活動になってしまった。 実際,新たに加入した学生は,皆で話し合って決めた 内容を実行できていなかった。そのためコアメンバー が,どのような思いでキャリアバームを立ち上げたの か,どのような思いで 2 年近く活動してきたのかを伝 えた。しかしながら,活動の思いが伝わらなかったの で,3 人の学生には活動を辞めてもらった。 (2)考察  ①領域(有用性を保ち,組織での影響力を高める) では,OC 向けプロジェクトが立ちあがったものの, 大学で中核となる活動にはつながらなかった。そのた め組織での影響力を高めることはできなかった。②コ ミュニティ(コミュニティの雰囲気と知的焦点を,活 気に満ちた魅力的なものにする)では,現状維持では なく,コミュニティの拡大活動を目指していた。しか しながら何も行動することがなかったので,加入した 3 人には辞めてもらった。コミュニティが縮小活動に なったことで,コミュニティの雰囲気と知的焦点を, 活気に満ちた魅力的なものにすることはできなかった。 なお,辞めた学生 3 名のうち 2 名は教職の資格を目指 しており,1 名は就職活動を強く意識していた。③実 践(コミュニティを常に最先端の状態にとどめてお く)では,これまでの活動すらできず,最先端の状態 には至らなかった。結果,活動が縮小したことで,コ ミュニティを最先端の状態にできなかった。 5.全体考察  潜在段階では,中心テーマとして共通点を見つける ことはできなかった。結託段階では,共通の関心や必 要性に対する認識を高めることはできなかった。さら に維持・向上段階では,勢いを持続させることはでき なかった。一方で,成熟段階では,コミュニティの焦 点,役割,境界をはっきりさせることができた(図 3 参照)。  これらのことを踏まえると本事例で取り上げたキャ リア教育としての実践コミュニティの効果は,潜在段 階でマイナス,結託段階でマイナス,成熟段階でプラ ス,維持・向上段階でマイナスであり,必ずしも活性 化4)しているとはいいにくいと考えられる。  また,実践コミュニティを辞めた学生は,資格取得 や就職活動を意識していた学生が多かった。言い換え れば,実践コミュニティの参加者として,資格取得や 就職活動としてのキャリア教育を望む人より,生涯に わたる持続的就業力のキャリア教育(川嶋[2013]) を望む学生がコミュニティの活動に向いていると考え られる。その理由は,コミュニティにおける活動は時 間がかかり,すぐには成果として結びつかないからで ある。したがって,短い期間でキャリアを学ぼうとす る学生にはコミュニティにおけるキャリア教育5)での 学びは上手く機能しないのかもしれない。 6.発見的事実  各段階における効果として,3 つの要素(①領域, ②コミュニティ,③実践)が関係しているものの,特 に,②コミュニティが実践コミュニティに影響を与え 図 3 発展段階における実践コミュニティと 3 つの要素の効果 潜在段階:共通点を見つけ ること(−) 結託段階:共通の関心や認識を高める(−) 成熟段階:コミュニティの 境界を明瞭にすること (+) 維持・向上段階:勢いの時 持続を行うこと(−) 領域 メンバーの関心を引き出し範囲を定義(+) 知識共有が役立つことを立証する(+) 組織で果たす役割や他の領域との関係を示す(+) 領域の有用性を保ち,組織での影響力を高める(−) コミ ュニ ティ 知識共有を進める意義を気 づかせる(−) 信頼関係の構築(−) 中核的な目的から関心が逸 れないように気を付ける (+) コミュニティの雰囲気と知 的焦点を,活気に満ちた魅 力的なものにする(−) 実践 必要な知識を割り出す(+) どの知識をどのように共有すべきかを具体的に特定 (+) コミュニティの知識を体系 化(+) コミュニティを常に最先端 の状態にとどめておく (−) (+)は効果が見られたもの,(-)は効果が見られなかったもの

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ていた。実際,潜在段階,結託段階において,①領域, ③実践はプラスの効果であったものの,②コミュニ ティはマイナスの効果であった。そのため潜在段階, 結託段階の活動内容はマイナスとなった。これらのこ とを踏まえると,実践コミュニティにおいては 3 つの 要素の中でも②コミュニティを優先して活動を行う必 要があるのかもしれない。

Ⅵ . おわりに

 貢献として,Wenger et.al[2002]のコミュニティ 理論を用いながら,潜在段階~維持・向上段階におい て実践コミュニティと実践コミュニティの 3 要素がど のように変化するのか,また,どのような効果がある のかを明らかにした。具体的には,キャリアバームの 活動を対象に「実践コミュニティ」と「キャリア教 育」を接続して考えることを示すことができた。  一方で,今後の課題として,Wenger et.al[2002] のコミュニティの「変容」に関する研究を行う必要が ある。また,コミュニティにおけるキャリア教育の学 びと大学の構造としてのキャリア教育の学びをどのよ うに補完するかを明らかにすることである。具体的に は,キャリア教育としてどのような正課の授業が学生 の成長につながるのか。また,コミュニティとして, どのようなキャリア教育が学生の成長につながるのか。 そして,それらをどのように接続することで,学生の 成長につながるのかを明らかにする次第である。 註 1) 例えば,大阪大学では,正課授業での学びと正課授業外 での学びの接続を試みている。具体的には,教育支援機 能及びキャリア開発機能の強化による教育方法の改善支 援とキャリア形成支援とが有機的な学びのスパイラルを 紡ぎ,教育の高度化を目指している。大阪大学全学教育 推 進 機 構 HP よ り( 参 照 日 2017.8.14。http://www.tlsc. osaka-u.ac.jp/org-ja-ja)。 2) なお,実践コミュニティには直接触れてはいないものの, 授業外におけるコミュニティと学生の学びに関する研究 として溝上[2009]や河井[2012]の研究がある。 3) なお,変容段階については本研究の対象外なので触れな い。 4) ここで述べている活性化とは,Wenger et.al[2002]の活 力と認知度レベルのことを指している。 5) なお,本来,キャリアとは長期的な意味をもつものであ る。そのため時間をかけてゆっくり作っていく実践コ ミュニティとは相性がいいと考えられる。 参考文献

[1] Etienne Wenger,Richard A.McDermott,William Snyder (2002), Cultivating Communities of Practice: A Guide to

Managing Knowledge, Harvard Business School.(監修野 村恭彦(2002),『コミュニティ・オブ・プラクティス』, 翔泳社)。 [2] 金森敏(2017)「2 年後のプロジェクト型インターンシッ プにおける参加学生と教員の振り返り:今後のキャリア 教育の方向性を踏まえて」,岐阜大学教育推進・学生支援 機構年報第 3 号。 [3] 金森敏・東渕則之(2017)「授業外における学びのコミュ ニティの生成・維持に関する研究:キャリア教育の学び を中心として」,『キャリアデザイン大会予稿集(2017)』。 [4] 川嶋太津夫(2013),「大学のキャリア教育を考える」, 『初年次教育学会第 6 回大会発表要旨集録』,pp.3-4。 [5] 溝上慎一(2009),「大学生活の過ごし方」から見た学生 の学びと成長の検討:正課・正課外のバランスの取れた 活動が高い成長を示す」,『京都大学高等教育研究』,15, pp107-118。 [6] 河井亨(2012),「学生の学習と成長に対する授業外実践 コミュニティへの参加とラーニングブリッジの役割」, 『日本教育工学会論文誌』35(4),pp297-308。

参照

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