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p53のDNA探索と認識過程のマルチスケールシミュレーションによる研究

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Academic year: 2021

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Title

p53 search and recognition dynamics on DNA studied by

multi-scale simulations( Digest_要約 )

Author(s)

Terakawa, Tsuyoshi

Citation

Kyoto University (京都大学)

Issue Date

2014-03-24

URL

http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k18117

Right

学位規則第9条第2項により要約公開

Type

Thesis or Dissertation

Textversion

none

(2)

京都大学大学院理学研究科生物科学専攻生物物理系 博士学位論文要約

p53 search and recognition dynamics on DNA studied by multi-scale simulations

0560-23-7203 Tsuyoshi Terakawa (寺川 剛) 1. Introduction 癌抑制性転写因子p53 は DNA 上の特異的結合サイトに結合することで、アポトーシス、細胞周期停止、DNA 修復 に関わる様々なタンパク質の転写を活性化する。この機能によりp53 はゲノムの完全性を保ち、癌化を抑制する。癌 化した細胞の半数以上でp53 遺伝子に変異があることから、変異して失活した p53 を再び活性化することができれ ば、癌治療につながるのではないかと、様々な研究が行われてきた。 p53 は生理的条件下で 4 量体を形成する。それぞれの単量体は 4 つのドメイン (N 末端ドメイン、コアドメイン、4 量体形成ドメイン、C 末端ドメイン) で構成される。N 末端ドメイン、C 末端ドメイン、およびコアドメインと 4 量 体形成ドメインをつなぐリンカー領域は天然変性領域であり、静的な構造情報を用いた機能解析を困難にしている。 p53 が DNA 配列から特異的結合サイトを探索・認識するメカニズムについても、分子レベルでの理解が不十分であっ た。本研究の目的は、全原子の構造アンサンブルから構築したマルチスケールモデルを用いたマルチスケール分子動 力学シミュレーションを行い、その動的な構造情報からp53 の機能に重要な特異的 DNA 配列の探索・認識の分子メ カニズムを明らかにすることである。

2. Specific DNA sequence search mechanism of p53 on non-specific DNA

p53 が転写を活性化するためには、まず、p53 がその特異的結合サイトを探索する必要がある。しかし、p53 が非 特異的DNA 上で特異的結合サイトを探索する分子メカニズムは明らかになっていない。また、p53 は 2 つの DNA 結 合ドメインを持つ。1 つは特異的結合サイトを認識するコアドメインであり、もう 1 つは DNA と非特異的に結合する C 末端ドメインである。p53 が特異的結合サイトを探索する際に、これら2つの DNA 結合ドメインがどのように協調 するかは明らかになっていない。これらを明らかにするために、本研究では、非特異的DNA 上の p53 のマルチスケ ール分子動力学シミュレーションを行った。その結果、p53 が特異的結合サイトを探索する時に、C 末端ドメインは DNA 上を溝に沿わずにスライディングして、コアドメインは DNA に対し結合・解離を繰り返すという分子メカニズ ムが示唆された。

3. Multi-scale ensemble modeling of p53 linker region

第2 章において、p53 が特異的結合サイトを探索する際に、C 末端ドメインは DNA 上を溝に沿わずにスライディ ングして、コアドメインはDNA に対し結合・解離を繰り返すという分子メカニズムを明らかにした。この分子メカ ニズムにおいて、C 末端ドメインとコアドメインをつなぐリンカーが、特異的結合サイトの探索や認識に重要な役割 を果たすと考えられる。本章の研究の目的は、従来のモデルより精度の高いリンカーの新規マルチスケールモデルを 構築することである。そのためにまず、40 残基長のリンカーの全原子分子動力学シミュレーションを行った。次に、 全原子分子動力学シミュレーションによって得られたコンタクトマップをマルチスケール分子動力学シミュレーショ ンで再現できるように、マルチスケールモデルの長距離相互作用のパラメータを調節した。次に、その新規マルチス ケールモデルを用いて、p53 から N 末端ドメインと C 末端ドメインを欠失したコンストラクト (CTetD) のマルチス ケール分子動力学シミュレーションを行った。その結果得られた構造アンサンブルからX 線小角散乱 のプロファイ ルを理論的に計算した。そのプロファイルは以前の実験で得られたCTetD の 4 量体の X 線小角散乱のプロファイル

(3)

を再現した。この結果は、新規マルチスケールモデルが従来のモデルより精度よくp53 の構造アンサンブルを再現す ることができることを示唆している。

4. Specific DNA sequence recognition mechanism of p53

第3 章において、私は、従来のモデルより精度よく p53 の構造アンサンブルを再現することができる新規マルチス ケールモデルを構築した。本章の研究の目的は、この新規マルチスケールモデルを用いたマルチスケール分子動力学 シミュレーションにより、p53 が DNA 上の特異的結合サイトを認識する分子メカニズムを明らかにすることである。 そのために本研究では、特異的結合サイトを含むDNA 上の p53 のマルチスケール分子動力学シミュレーションを行 った。その結果、p53 が DNA に結合していない構造から、特異的結合サイトに結合した構造までのトラジェクトリを 得ることができた。特異的結合サイトに結合した構造は、過去に電子顕微鏡観察によって得られたモデル構造と整合 性があった。また、p53 は C 末端がアセチル化されていない状態では DNA 上をスライディングすることによって特 異的結合サイトを探索するが、C 末端ドメインがアセチル化されていると DNA への結合・解離を繰り返すことによ って特異的結合サイトを探索することが示唆された。また、過去にC 末端ドメインが特異的結合サイトに非特異的に 結合することによりコアドメインの特異的結合サイトへの結合を阻害するというモデルが提唱されたが、本研究の結 果から、そのような影響は非常に小さいことが示唆された。さらに、これまでのX-線結晶構造解析で得ることができ なかった、スペーサーを含む特異的結合サイトに結合したp53 のモデル構造を提唱することができた。

5. Specific DNA sequence search mechanism of p53 on nucleosomal DNA

In vivo の環境下では、DNA は1群のヒストンタンパク質の周りに巻きつき、ヌクレオソームを形成している。その ような環境下におけるp53 の特異的結合サイト探索メカニズムを探求するために、p53 とヌクレオソームを含む系の マルチスケール分子動力学シミュレーションを行った。その結果、p53 はヒストンタンパク質の周辺をあまり探索せ ず、リンカーDNA を主に探索することが示唆された。 6. Conclusion 本研究において、私は、マルチスケール分子動力学シミュレーションによって得られる動的な構造情報から、p53 の機能に重要な探索・認識の分子メカニズムを明らかにした。まず、p53 が特異的結合サイトを探索する際に、C 末 端ドメインはDNA 上を溝に沿わずにスライディングして、コアドメインは DNA に対し結合・解離を繰り返すという 分子メカニズムを明らかにした。また、C 末端ドメインをアセチル化すると、p53 は DNA 上をスライディングせずに、 DNA に対し結合・解離を繰り返しながら特異的結合サイトを探索することを明らかにした。さらに、ヌクレオソーム 上で、p53 はヒストンタンパク質の周辺をあまり探索せず、リンカーDNA を主に探索することを明らかにした。今後、 よりIn vivo の環境に近いポリヌクレオソーム中の p53 の特異的結合サイト探索メカニズムの解明が期待される。 また本研究において、全原子分子動力学シミュレーションの結果を用いて、マルチスケール分子動力学シミュレー ションのパラメータを調節する新規手法を提唱した。このような天然変性領域のマルチスケールモデリング手法は、 これまでの静的な構造情報を用いた機能解析が困難であった天然変性領域を多く含むタンパク質の分子メカニズムの 解明に広く用いられていくことが期待される。

参照

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