Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japanese Physioal Therapy Assooiation理
学療法
学第
37
巻 第4号243
〜
246頁 (201Q年 ) ベー
シ
ック
セ
ミナ
ー
大 脳 運 動 前 野
に よ る
随 意 運 動 制 御
*蔵
田
潔
* * は じ め に 脳に よる運 動 制 御 がどの よ うに行わ れて い るかにつ い て,
大 き く 三つ の基本構造 が存 在 する。
第.
一
・
に,
脳の階 層 構 造 (ヒエ ラ ルヒー
)
で あ る。一
例 とし て,
発 生学的
に古
い脊 髄
が制御
中枢
と し てもっ と も 下位に属し,
脊
髄より新しく発 生し た と さ れ る脳幹
,
さ ら に小脳
・
大脳
が こ れ らの順で より
上位
巾枢
と して機 能
し ている とす
るもので あ る。
また,
大 脳 皮 質の 中で は発 生 学 的に.
占いと さ れ る一
次運動 野な ど一
次 皮質
に対し,
そ れ 以外 の連合 野(
運動 前 野な ど)
は よ り 上 位 中枢と し て 機 能 し てい る と考え ら れて いる。
第二 に,
特に 大 脳皮 質に 存 在 し,
ブロー
ド マ ン の細 胞 構 築 分 類に対 応 する数 多 くの領 域 (例え ば一
次運動 野と運 動 前 野な ど)は.
そ れ ぞ れ が 運動 制 御に関して独 自の機 能 を有 してい る と考 え られ,
機 能 局 在 論 と して知 られている。
第三 に,
機 能独 自性 を 有 してい る 領 域 は そ れ ぞ れ別の領 域と機 能 結 合 を してお り,
脳にはそのよう な機 能結 合 が 並列に複 数 存 在し てい る。
これ は脳に お け る並 列 分 散 情 報 処理 に 関する基 本 構 造と考 えら れ てい る。
これ ら 三つ の基 本構 造は,
運 動制 御の み な らず,
感 覚 認 知や,
より高 次の機 能につ い て も共 通し た脳 の特 性であり,
そ れ ぞ れの構 造が対 立し て機 能し てい るので は なく
,
状 況
に応じ て使
い分
けたり
.
柑
互 に協
調し て機能す
るこ と に より,
多彩
かつ 正確
な 運動 制
御が 可能
に な るものと考
えら れ る。
本
稿で は,
こ の よう
な基本
的考
え を も とに,
具体
的な 運 動 制 御に関わ る脳 領 域 とそ れ ら が構 成 する神
経回路の機能
を 概 説し よう
とする。
運 動 を制 御 す る 複 数
の神 経 回 路
運 動を理 解 する に は
,
運動を構 成す る複 数の神 経回路の存
在 と そ れ ぞ れの機 能を 理解す るこ と が 重 要 で あ る。
運 動 に 関 わ る 神経
回路 を二つ に大別
すると,
そ れ ら は脊
髄内
の神
経 回路で構
成さ れ る脊 髄 反射の 回路 と,
脊
髄前核
の 運動ニ ュー
ロ ンを含
む 脊 髄 反 射 回 路 を支 配す
る上 位中枢
か ら の 下行 系
に よ る制御
回 路 である (図1
)。
主 要 な脊 髄 反射
とし て膝
蓋 腱反射
と して知
ら れてい る伸 張 反射 と皮 膚へ の 侵 害 刺 激に対す る 屈 曲 反射を あ げ る ことが できる。 これ らの脊 髄反射は完 全に自立 的 に 機 能 し て*
Control of Voluntary Move 皿 ents by thc Premotor Cortex * *
弘前大学大学 院 医 学研 究 科 統 合 機 能生理 学 講 座 (〒036
−
8562 青 森 県 弘 前 市 在 府 町5)Kiyoshi Kurata
.
MD,
PhD;Dcpartmcnt Df PhysioloLry.
HirosakiUniversity
SchDol
of
Medicine
キ
ー
ワー
ド;随 意運動,
到 達 運動.
大 脳 運動 関 連 皮 質 い るの では なく,.
L
位 中枢
か らの制御
を受
けてい る。
その代 表
的 な例として,
大 脳の血管
障 害 時には,
正常であれ ば屈 曲 反射
を 生 じさせ る皮 膚へ の強い刺 激が,
逆に足 指の伸 展が 生 じ るバ ビン スキー
反 射 を あ げる こと ができる。
次に
,
脳 幹に よ る代
表 的 反 射 とし ては前 庭四肢 反 射 が あ げ ら れる。
これは頭へ の加 速 度 刺 激に より前 庭 系(
耳 石 器および半 規官)
が刺
激 され,
頭 が傾い た 側の.
ヒ下 肢 が と もに伸展
,
反 対 側の.
ヒ下肢が屈 曲 する反 射である。
脳 幹より.
ヒ位 中枢の傷 害 時 に は この反 射の増 強の みられ る ことがある が,
た とえ ばボー
ル を捕ら え る と き な ど 正常な 随 意 運動 遂行屮 に も機 能し てい るこ と が 知 ら れ てい る。
わ れ わ れ は この ような 反射を 随 意 運動と 協 調さ せ,
効 率よく使 うこ と で 目的と す る 運動を無理 なく実 行で き る もの と考え ら れ る。
第三に,
大脳 皮 質では,
特 に一
次 運動 野 に 脊髄へ 直 接 軸 索 を 投 射 する皮 質 脊 髄 路 細 胞 が 第V
層に存在 してい る。
さ らに,
こ のな かに は脊髄 前 核の α 運動ニ ュー
ロ ンに直 接シナプスするも のが存 在し ている。
これ ら は皮 質運動ニ ュー
ロ ンと呼ばit
D,
大 脳で生 成さ れ た運 動 指令が直 接 筋 活 動 を制 御 するものと考 え ら れ る が,
こ の ような系は霊 長 類でのみ特 異 的に発 達し てい る と と もに,一
次運動野のホム ンクル ス の体 部 位局在で 大 き な領 域 を占
め てい る指
の再現部位
に著 明
である た め,
霊長類
に おけ る手指
の発達と ともに そ れ ら を制御
する高次機 能
を有
し てい る もの と考
えら れ てい る。
最 近
,
皮 質 運動
ニ ュー
ロン がα 運動
ニ ュー
ロ ンに発
生 さ せ る興奮
性後
シナ プス 電位が学 習 依 存 的に 変化
すること が報 告さ れてお り2 ),
こ の系が運 動 学 習と ともに 強 化する機能 を有して いる と考え ら れて いる。
最 後に,
大 脳に は一
次運動 野以外に多 数の運 動 関連 領 野が存 在 する こ と が知ら れてお り,
その代 表 が一
次運 動 野の直 前の6
野 外 側部に 存在 する運 動 前 野 (図2)と内 側 部に存 在 する補 足 運 動 野である。
さ ら に運 動 前 野 は 少 な く と も腹 側 部 と背 側部
と の異 なる ふ たつ の領 域 か ら構 成 されてい る3)4).
これ らは一
次 運動 野 に対 する.
ヒ位 中 枢として役 割 分 担 をすると と もに,
皮 質 脊髄 路 細 胞 も有 して いるの で, .
・
次運動野 と 並列に 直 接の運 動 指令を 生成し て い るものと考 えら れてい る5)。
大 脳
・
小 脳 運 関 と大 脳
・
大
脳基 底
核
連 関
大脳 に お け るこれ らの複 数の皮 質 運 動 野は
,
それぞ れ小 脳 お よび大脳基 底 核と機能 的ルー
プ と呼ば れ る独立 し た複 数の神 絲 回 路 を 形 成 してい る(
図D
。
このう
ち 運 動 前 野は小 脳 と,
補 足 運 動 野は基 底 核と相 対 的に 強い 結合
を有し て お り,
それぞれ N工 工一
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Japanese Physioal Therapy Assooiation244
理 学 療 法 学第
37
巻第
4
号
大 脳皮 質 連合 野 大脳皮質 運 勤 関 連 領 野 補足 運 動野 : : 運 動 前 野F
「一
次運 動 野 7/
丶
大 脳 基 底 核 大脳 皮 質 連 合 野A
図1 運動
制御
を行う
主要な中枢領
域 と そ れ らの機 能 結 合 を 示 す.
大脳・
小 脳 連 関 お よび大 脳・
大 脳 基 底核
連関
と呼
ばれ,
異
な る 機 能 的 役 割 を 果 たしてい る と考 え られ る6)7)。
小 脳 は そ れ 自
身
,
直 接の下 行 性 制 御系
と なっ て お らず
,
その 主 要 な 出 力が小 脳 核か ら視 床 を経 由し て,
大脳皮質
運動
関 連 領 野か ら出力
に連携
して いるものと考
えら れて い る。
小 脳が傷 害 を受け る と指 鼻 試験に代 表さ れ る ように到 達運動に障 霄が 生 じ るこ とが知ら れて いる。
到 達 運 動につ い ては後に詳 し く述べる が,
小 脳と大 脳 皮 質で構 成さ れ る機 能ルー
プが 視 覚 空 間 的 な情
報を 運動へ と変 換 する こ と に より,
正確で速い到 達 運 動に代表
され る視 覚 誘 導 性 運 動 が 可 能 になっ ている と考 え られる。
一
方.
大 脳・
大脳 基 底 核 連 関 を構 成 する回路で は,
基 底 核 内 に存 在 す る直 接 路・
間接 路 と呼 ば れる経 路に黒 質 縦 密 部 細 胞か ら線 条 体に放 出さ れ る ドパ ミ ンが作 用し て お り,
ドパ ミン細 胞 の変 性に伴い パー
キン ソ ン病が生じ るこ と の 解 剖 的・
生 理学的 研 究が進んでい る8〕。
これ らの知 見 を もと に 近年の深 部 脳 刺 激 法に よ る治 療が確立 しつ つ あ ること は特筆
すべ き こ と で あ る。
さ ら に近年
のES
細 胞 やips
細 胞
に関 する研 究に より,
消 失 し た ドパ ミン細 胞の再生 が行 える よう
に な る可 能 性が出てきてい る。 こ こ で はそれ らの神 経 回路
に詳
しく言 及 する こ と は避 ける が.
パー
キン ソ ン病に代 表さ れ る大 脳・
大 脳基底 核 連 関の異 常 では.
強 直やふ るえ などの症 状以外に,
内 的 誘 導 運 動 が 障 害 さ れ ること を強 調しておきたい。
映 画 「レナー
ドの朝 」の 1シー
ン にあるように,
ほ とん ど自発 的 運 動をすることの でき ない患 者 さんが 動 くボー
ルに反 応 し提 えるこ とがで きる のは,
大 脳・
大 脳 基 底 核 連 関に関わる内 的 誘 導 運 動が障 害 されて い るた めに 自発 的 運 動の生 成 が 困 難であ る一
方で,
大 脳・
小 脳 連 関に関 わ る視 覚 誘 導 性 運 動が機 能 してい ることを示 す もの で あろう。
到 達 運
動 随 意 運 動は大 別して ふ たつ に分 類 する こ と ができ る。
第一
に は,
外 界の情 報を感 覚と して捉え そ れ を 運 動 に 変 換 す る もの で,
感覚 誘 導 性運動と呼ば れてい る。
第二 に は,
記 憶 な ど内的 情 報に 基づい て 運動に 変 換するもので,
内 的 あるい は記 憶 誘 導 性 運 動 と呼ば れ てい る。
感覚 誘 導 性運動のな か で特に よく知 ら れ てい るのが,
たと えば ボ タンを押 す 際 など に行 わ れる視 覚に よ る空 間 情報
を 手の運動 情 報に変 換 する のが 到 達 運 動である。
B
図2ヒト
(
A
)
と サル (B)の大脳 皮 質に存 在 する運 動 関 連領野 の う ち
,・
.
一
次 運動 野 (ブロー
ドマ ン4野,
4
で示 す )と運 動
前
野(
ブロー
ドマ ン6
野,
6
で示 す ).
こ の うち外 側の6
野は運 動 前 野 腹 側 部 を,
内側に近い6
野は運 動 前 野 背 側 部を示 す.
ヒトの運 動 前 野 腹 側 部は6
野 と と もに44
野 (44
で示 す ) も含 まれるとされて いる.
到達 運動の脳 内 での生 成 は少な くとも以下の4つ の段 階か ら 構成 さ れ る もの と 思 わ れ る。
第一
に,
手のみならず,
足や頭,
そ れ に 眼球も含め,
到 達 すべ き身 体 部 位を行 動 要 求に基づい て 選 択 する こ とであ る。
第二に,
視 覚空間上に存 在 する到 達 目標 点 を 認 知 し,
そ れ を効 果 器の運 動 座 標 に変 換 す ることであ る。
第三に,
到 達 運 動の時 系 列 的 遂行である。
そ して第四 に,
到 達 運 動 に 誤 差 が生 じ た場 合,
必 要 に応 じて誤 差信 号 に基づく運 動 指 令の変 更を行い,
結 果として運 動 学 習 (適応 ) を行 うことで ある。
口常の動 作におい て は第一
と第二 の過 程は,
第三 の実 行 過 程と同 時並列 的に行わ れて い る と思わ れる。
到 達 運 動には大 脳 小 脳 連 関が重 要 な役 割 を 果たして い るが,
手に よる到 達 運 動の遂 行のみならず,
その学 習に小 脳 が 関 与し て い る と考え ら れて いる。
意 図ど おりの運 動が行わ れ な かっ た と き,
その誤 差 を示 す 信号
が 脳 幹 延 髄の下 オ リー
ブ核 を経て小 脳 皮 質のプルキンエ 細 胞に伝 えられ,
こ の信 号 が 小 脳 皮 質 内で プル キンエ 細 胞と並行線
維で構成
さ れ る神
経 回路に保持
さ れ る 運動の様々 なパター
ン を 「教 師信
号 」と し て書 き換 える ことに より運動
学習 が成 立 するとさ れ てい る9)。
正 常の被 験 者では 左 右い ず れ かへ の シフ トプ リ ズムを装 着させ てダー
ツ投 擲による 到 達 運 動 をさせる と,
数回の試 行でプ リ ズム適応 が 起こり,
正 確に目標を捕 捉で きるようになるが,
下 オ リー
ブ核に傷 害の あ る患 者では プリズム適 応が起こら ないとする極めて興 味 深い報 告 が 行われて いる10)。
さ ら に プ リ ズ ム を 用いた 実 験 で 下 オ リー
ブ核の入 力が誤差 信 号 を 示 すこ と が 明 ら か に なっ てい る 11)。
N工 工一
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Japanese Physioal Therapy Assooiation大 脳 運 動 前 野による随 意 運 動 制 御
245
この よ う に運 動 学 習に必 要 な運動情 報
の変 更は小脳
で 生 じると しても,
学 習に必 要 な入 力 と書
き換 え
ら れた情 報
をも
とに運動
を 実 行する システム は大 脳・
小 脳 連 関のなかにある といえ よう
。
サ
ル の運 動 前 野
運
動 前
野(
特
に腹 側部)
は 小 脳 と相 互に極めて密 接 な連 関 を脊
し てい ること が解
剖 学 的に知 ら れてい る ことか ら,
運 動 制御 と学 習に おける大脳
・
小 脳 連 関の機 能 を 論 じる上で極 めて重 要 な位置
にある とい える。
さ ら に運 動 前 野 腹 側 部 は 頭 頂 連 合 野 か らの視覚
空 間情 報
を得
てい る こと,一
次 運 動 野に出 力 し上 位 中 枢と し て機 能し てい る と考え ら れ る こ と か ら,
到 達運 動の視 覚 運 動 変 換 系と し て機 能して いるのみ な らず,
この系
が 運動学 習 に重 要な役 割を果た し ている こ と が考え ら れ る。
こ の仮 説を検 証 する た め、
筆 者は まず,
第一
の運 動 課 題 は 到 達 運 動 を すべ き 身 体 部 位の選 択と,
到 達 運 動の誤差 適
応 学 習 に,
これ らの領 域 がどのよう な役 割 を果た し ている か を調べ よ う と し た。
そのため プリズム存
在 下で の到 達 運 動 を行 う
ようサ ルを訓 練 した。 手 元のキー
スイッチを押し続 けて いる と,
眼前 のタッ チセ ンサー
付ディ スプレイに到 達 すべ き 目標 点 が 示 さ れ,
そ れに応 答 して5ee ミリ秒以内に到 達 運 動が開 始さ れ,
目 標 点に到 達 すると報 酬 が 与 えられた。
サル の眼 前に はシ フ トプ リ ズム を 着 脱 し,
同一
視 覚 目 標に対 し,
プ リズム適 応に より 正確
な 目標の補 足 が 行わ れる ように した。
こ の課 題 遂 行 中に ニ ュP一
ロ ン活動
を 記 録 した ところ,
感覚
運 動 変 換が生 じている 期 間 (反 応 時 間) 中に活 動の変 化 するものに は,
視 覚の与 え ら れた位 置に依 存 して活 動 するもの.
どこに運 動 するかに依 存し て活 動 するもの,
その中間 に属 する活動 とが あ り,
こ の領域 が プ リ ズム適 応に 必要な変 換 系 とし て機 能してい ることが 示唆さ れ た12)。
さ ら にこ の領 域に抑 制 性 伝 達 物 質GABA
の作 動 薬で あるム シ モ ルを微 小 注入 し,
脳 局 所の一
時 的 機 能不全を起こ さ せ たところ,
ヒ ト下オ リー
ブ核
患者
で み られ た よう
なプ リズム 適 応の 喪 失が観察
さ れ た 13>。
このこと は運動前
野腹
側 部と小 脳の形
成す
る神 経
回 路が到 達
運動
の変換
なら び に誤 差に基づ く 学 習に重 要 な役割
を 果た してい る ことが明ら か と なっ た。
視 覚 運 動 座 標 変 換の動 的 変 更が 運
動前
野腹側部でどのよう
に 行わ れ る かを明 ら か にする た め,
以 下の ような 実 験 を 行っ た。
た とえ ばマ イ クロ サー
ジェ リー
の と き に は.
同一
の視 覚 座標を 有 する到 達 点 と行 うべ き運 動 空 間のオフ セ ッ ト と倍率 (
利 得 あ る いは ゲイン) を 乖 離し た条 件一
ドで 到 達 運 動 を す ること が 要求 さ れ,
ヒトは それを短 時闘
に学習
し適
応す
る こ と が で きる。 サ ル に コ ンピュー
タマ ウス を操作
さ せ到 達 運動
を課 題 を課し,
手 の位 置 を示 すコ ンピュー
タ上の カー
ソ ル位置
の利得
を変
化 させ た ところ,
運動 前 野 腹 側 部で記 録さ れ た運動
関連活動
では,
利 得 を 変 更 しても一
定の視 覚 座 標に対して の活動 を示 すものと,
利 得の変 更に伴いニ ュー
u ン の活 動が変 化 する もの の2
種類 に 大別 さ れ,
こ の領 域が視 覚 運 動 座 標 変 換の動 的 変更 に重要 な役 割を 果 た し てい る こ と が 示唆さ れ た。
さ らに.
著 明 な運 動 関 連 活 動が記 録さ れ た 領 域 に 皮質 内微 小 電気 刺激 お よ びム シ モ ル微 小 注 入 を行っ た ところ,
手運動のパ ラ メー
ター
の うち,
反 応 時 間の延 長,
運 動 方 向の変 化 そ し て 到 達 目 標 に 至 る ま での実 行 中の運 動にお ける最 大 速 度の減 少と最 大 速 度に 達する まで の時間
の延長
な どが認
め られ たe これ らの結 果 は,
運 動 前 野 腹 側 部 が,
視覚
空 間 情 報か ら運動 指 令 情 報へ の動 的変 換 系 と して機 能 し ていることを示す
ものである。
ヒ トの運 動 前 野
マイ クロサ
ー
ジェ リー
に相 当 する動的視 覚運 動変換 を 必要と する到 達 運 動 遂 行に,
ヒ トの運動 前野 は どのよう
な役割 を 果 た してい るのだろうか ? この疑 問 に答 える た め,
筆
者ら は前
項 で示 した サル の実 験で用いた システム と同様の実 験 系を作 成 し,
ゲ イン変 更 を 伴 う到 達 運 動 遂 行 中の ヒ ト脳の活 動を脳磁 図 計によっ て活 動 を 計 測した。 脳 磁 図はニ ュ・
一
ロ ン の電 気 的 活 動 に伴 う脳 局 所の磁 界の微 細 な 変 化 を捉 えようとするもの であ り,
高 時間・
空 間 解 像 度で脳 活 動 を測 定 するこ と が可 能であ る。
た だ し,
運動が 生 じ るとそ の 逓動そ のもの に よ る メ カニ カ ル ノ イズ や筋 電
図混
入の た め,
運動遂 行申
の微細
な磁 界変化
を 捉え
る こ と は極め て困難で あ る。
そこで,
こ の実
験で は行 う
べ き到達
運動
の目標
を運動遂行前
の準備 期
間 中に指
示信号
と し て 与え
た。
被 験者
に はマ ウ ス を操 作させ,
その位 置で運動をモニ ター
し た。
視 野の中心に固 視 点を 呈示し,
そこを固 視し た ま ま マ ウスを固 視 点 周辺に マ ウス の位 置を保っ て いる と,
固視 点の 左 右いず れ かに到 達 すべ き 目標 点 を指 示 信.
号と して与 えた。
指 示 信 号 呈 示 後のランダムな 準 備 期 聞 を経て,
固視 点 が 消 灯 する ことを契 機に して到 達 運 動 を 開 始 する ように し た。
その結 果,
視 覚 中 枢 経 路の解 剖に対 応 して,
右 視 野に指 示信
号 を与
え た と きには左 後 頭 皮 質に,
左 視 野で は右 後 頭 皮 質に活 動の 中心であ る双 極 子が存 在 する こと を確 認し た。
その直 後に,
頭 頂皮 質
に は著明 な活動 が観 察さ れ ない ま ま,
前頭皮質の運 動前野 に相当 す る領域 で 運動す る手と 反 対 側の大脳半球に 双極子 が存 在し て い た。
さ ら に後頭皮 質の活 動は 運 動 の ゲ イン に は 依存し ない が,
運動 前野 の活動 は 運 動のゲ インに 依 存 して変 化 する こ と が 明ら か となっ た。 これ らは,
運 動 前 野 がヒ トとサルに 共 通 して 動 的な変 換 系と し て機 能 してい る こ とを示 す 重 要 な知 見であ る と考
えら れ る。 さら に,
解 剖 学 的 に視 覚 皮 質 か ら前 頭 皮 質 間の 情 報を中 継 する頭 頂 皮 質で は,
情 報 処 理のため の特 別 な 賦 活が 行わ ないか,
ある い は複 数の経 路に分 散し て情 報が送ら れ るこ と が 示 唆 さ れ る。
近年,
遺 伝 子 操 作に よる脳 活 動 を光 学 的に操 作 する新た な手 法 14)が可 能に な りつ つ あ り,
運 動 前野を中心 と し た到 達 運動シス テム の全 体 像の解 明へ の重 要 な展 開材料
と な る こ と が大いに期 待さ れ る。
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