事例番号 01
北見木材株式会社
第1章
事例の紹介
【製造業】
北見木材株式会社【 製造業 】
事例番号 01ポイント
・多能工の育成を目指し、加工作業については、スキルマップによる従業員の技能レベルチェックと配置
転換を実施。処遇は技能レベルに基づいて行い、従業員の技能習得に対するモチベーションの向上を図る。
・長年の経験によらないと習得できない中核技能については、ベテラン従業員の下に若手を配置して人
から人への伝承を行い、若手従業員の中核技能継承者としての自覚を高めようとしている。
・現場での技能の習得、伝承と並行して、各種研修を積極的に実施。
・入社半年後の新入社員を対象として、「新入社員フォローアップ懇談会」を実施し、社員の定着を図っ
ている。
業務・組織・人間
業務・組織・人間関係管理人材育成
人材育成に関する取組評価・処遇
評 価・処 遇 制 度その他
そ の 他取組み内容
事業所の基礎データ
企 業 名 北見木材株式会社 代 表 者 名 山田 道彦 所 在 地 北海道紋別郡 会 社 H P http://www.kitamimokuzai.co.jp/ 業 種 製造業(成長産業) 資 本 金 50 百万円 売 上 高 (過去3年間) 平成 24(2012)年度 平成 23(2011)年度 平成 22(2010)年度 1,838 百万円 2,181 百万円 1,052 百万円 従 業 員 数 総数 うち、常用労働者数 うち、正社員数 132 人 132 人 125 人 常用労働者の 採 用 数 (過去3年間) 平成 24(2012)年度 平成 23(2011)年度 平成 22(2010)年度 16 人 11 人 6 人 常用労働者の 平均勤続年数 15.7 年 常用労働者の平 均 年 齢 42.5 歳1.企業概要
①企業の概要 1950 年創業。当初はピアノを製造するために用いられる、北海道産アカエゾマツ原 木の供給を目的としていたが、1960 年からピアノ鍵盤のための製材を開始。現在はピ アノ用の響版、鍵盤板、その他部品で使われる板を中心に、住宅用の柱や木工芸品、ス キー板芯材などの製造を手がけている。2012 年よりヤマハ株式会社の 100%子会社とな り、ヤマハグループの傘下に入る。2012 年度の売上高は 18 億 3800 億円。うち 83%が ピアノで使われる楽器材の売上、10%が建材の売上で占められている。最近では中国、 インドネシア向けの楽器材の売上が伸びてきている。 現在は「地域に根ざし、木を見極めさばく技術を競争力の源泉とし、業界でも常に一 歩先を行くメーカーを目指す」という中長期ミッションを掲げ、「価値の流れ」に基づく 改善、属人的業務スタイルからの脱却などといった基本方針のもと、経営を進めている。 ②従業員の概要 2013 年 10 月現在の常用雇用者数は関連会社 2 社も含めて 132 人で、うち 125 人は正 社員である。132 人中、北見木材に勤務している常用雇用者は 108 人(男性 88 人、女 性 20 人)で、年齢階層別内訳は、29 歳以下が 24 人、30 代 19 人、40 代 24 人、50 代 34 人、 60 代以上 7 人と、50 代以上が 4 割近くを占めている(2013 年 10 月現在)。北見木材に は木材部、加工部、建材営業部、建築部、製造戦略室、総務経理部という部門が設けら れており、大半の常用雇用者(100 人近く)は、製品の製造に主に関わる木材部(材料 である木材の調達と、加工できるような状態に木材を整える作業を担当)と、加工部に 所属している。 近年の常用雇用者の採用数は、2010 年度・6 人、2011 年度・11 人、2012 年度 16 人 で推移しており、主に木材部、加工部での作業を担当する若手(20 代~ 30 代前半)の 従業員を採用している。新卒(高校卒)の採用者は 2011 ~ 2012 年度の 2 年間で 7 人で ある。これまでは退職者の補充を中心に採用は年間 5 ~ 6 人であったが、海外向けの生 産を増やすため近年は採用を増やしている。2.「働きがい」・「働きやすさ」につながる取組み
(1)評価・処遇に関わる取組み
会社としては多能工を育成することを基本方針としており、加工作業についてはスキル マップを作成し、従業員の技能レベルのチェックを行っている。処遇は技能レベルに基づい てなされている。第1章
事例の紹介
【製造業】
評価・処遇(2)人材育成に関わる取組み
ピアノで使われる楽器材の製造は、原木や板の購入→製材→乾燥→加工という過程を経て 行われる。製材は丸太の状態で購入された原木から、帯のこぎりによって、鍵盤や響版といっ た生産される製品用に材料を切り出していく(「製材」とよばれる)工程で、乾燥は切り出 した材料を加工できるようにするために、天日のもと(天然乾燥)、または釜の中で(人工 乾燥)で、乾燥させて木材の含水率を落としていく工程である。加工は、「木取り」(材料か ら加工に使うための木材のみを切り出す作業)、「組み合せ」(響板などの製品になるように 木材を組み合わせる作業)、「接着」、「切り回し」(のこぎりを使って製品の形への切り出し を行う作業)、「サンディング」(製品の表面・裏面の凹凸をなくすために行うやすりがけ作業)、 「修正・仕上げ」といった作業から構成される。 北見木材の製品に用いる木材は板の1枚1枚で性質が異なり、その木材を用いて高品質の 製品を常に製造し続けなければならない。そのため、いずれの工程も自動化、省力化、マニュ アル化が難しく、現場で働く従業員の経験や技能に依存する度合いが高い。特に製品にとっ て材料の見極めを行う原木や板の購入や、製材などの上流工程はその傾向が強い。 上述のように、会社としては多能工の養成をめざしており、ある作業を担当する従業員の 作業レベルが一定水準に達すると、別の作業を担当させるようにしている。また、2012 年 までは同一工場内での配置転換にとどまっていたが、2013 年に入ってからマネージャー層 を中心に、4つある工場の間での配置転換も実施し始めている。 もっとも製造に関わる工程・作業の中には、会社で認められる水準の仕事ができるように なるのに、かなりの長期間かかるものもある。例えば、製材の機械、帯鋸盤の鋸の目立作業 などはそうした作業にあたり、材料となる原木の種類や製品の用途によって、のこぎりの使 い分けなどを瞬時に判断しなければならない。この作業について会社では、現在担当してい る 70 代の従業員の下で、2 人の若手従業員に作業を経験させ、技能伝承を進めている。会 社としては、同じグループ会社の支援を受けながら、マニュアル化できる工程・作業と、マ ニュアル化できない工程・作業の区別を試みている。その上で、後者の工程・作業をこなす ための技能を、会社の中核として維持していくべき技能として、「人から人へ」という形で の伝承を図っている。また、材料の見極めを行う原木、板の購入を担当する人材も、長期間 かけて育成しようとしており、30 年の経験のあるベテラン従業員の下、2 人の若手従業員を 配置している。 こうした現場での技能の習得、伝承に向けた取り組みと並行して、北見木材では従業員を 対象とした研修を積極的に行っている。研修は、①主任向け、④係長向け、⑤課長向けと いったように階層別に行われる。それぞれの 2013 年における実施内容は、主任向けの研修 が、意識改革とコミュニケーションに関する社内研修とヤマハ株式会社の工場の見学からな る。工場見学は、各主任が北見木材で行う作業の後工程を理解することで、業務遂行におけ る一層の改善がなされることを目的としたものである。係長向けの研修は、業務における問第1章
事例の紹介
【製造業】
人材育成題発見能力や、発見した問題を改善する力の養成に向けたもので、社外講習を活用している。 課長向け研修も係長研修と同様、社外講習であり、リーダーシップ能力や業務改善能力の向 上を目的としている。