香川大学農学部学術報告 242
香川県における3種毒蛾の生態概説*
(四国地方に.おける主要衛生害虫の生態学的研究Ⅰ)
松 沢 寛・藤 井 幸 彦**
Ecoldgicalnotes onthe three s■pecies of urtitating・mOths,EuPrbctis
.pava,E.PseudoconsPersaandE.similisinKagaWapref占cture
(Ecologicalstudieson someimportantinsectsfrom
the sanitary viewin Shikoku.Ⅰ.)
HiroshiMATSUZAWA and・Yukihiko FuJI
緒 第2次大戦後日本の各地においては,毒蛾の発生ないし毒蛾禍の問題がさかんに・論じられているが(4ト(9),香川 県もその例にもれず,ほとんど毎年この種の話題が賑やかさを増している(12).こうした情勢から世人の中には,第 2次大戦後日本に急に毒蛾が増えてきたのではあるまいかと想像する向もあるが,近年の毒蛾発生の実情からして 決して無理からぬことと思う(1)い けれども本邦に.おける毒蛾(ここではとくにナミドクガ)の発生盈が本当に増え てきたか,減って女たかをここではっきりいい切ることは,この種の昆虫では非常にむずかしいことである.ある 人は戦後の町や村の明るさが,次第に彼等をその近.郊にけんせいしたために人体の被害をこうむる頻度も高まって きたのではあるまいかといっているが,これもたしかに・うなずける点をもっている..しかしながらこうした間藤を 今ここでとりあげるのほ本論文の本旨ではないので他日にゆずり,ここでは特に問題になるナミドクガβ“クγ〃Cfよ■ざ .βα〝α,チャドクガ点\ク.sβ鋸d♂C0犯坤♂㌢・.Sα,モンシロドクガ且S∼∽査〃・S(クワを食害するものはクワノキンケムシすな わちモンシロドクガモドキ 且.方α乃fカocα桝♪αでg√Sよ一班gJ之sではないという説もあるが,ここでは井上(1958)*** の考にしたがっておく)の3種について,その生態,発生の概要を過去数年の調査観察に・もとずいて述べること.に する. 本文に先だって,当研究室岡本秀俊教官ならびに応用昆虫学専攻学生諸君,林学研究室苫田藍率教官の助力に・対 し厚く感謝の恵を表するいまた名古屋市衛生局防疫係長松沢正三氏は名古屋市周辺のナミドクガ大発生(昭和29,30) に関する事情説明書(6),対策などについての多数の負重な資料を寄せられ,益する処きわめて大であったし,香川 県小豆郡土庄町,同大川部大”=町当局には各種の調査研究に多大の後援をいただいた.ここに特記して謝意を表す る. 調査研究成績ならびに考察 1.発 生 経 過 香川県における1年間の発生回数はナミドクガは1回,チャドクガは2臥 モンシロドクガは年3回であって, 西南日本2ノ3の地方での調査成績と別にそれほどことなるところはない(1)(3)(さ)(8)(10).ただナミドクガについては, *香川大学農学部応用尾虫学研究室某紙No36い,本研究の山部は昭和銅年度日本昆虫学会四国支部大会(高 知)で講汲 **香川県大川郡丹生保健所技師 ***江崎外6氏著:原色日本蛾頬図鑑(下),(大阪,保育社)より
第12巻第2号(1960) 243 韓国水原では年2回の発生をなすという■記録があるが(11),詳細は不明であるい 香川県に.おける経過の概要は第1
国のようで,ナミドクガ,モンシロドクガは幼虫轡で,チャニドクガは卵態で越冬を行ない,ナミドクガは3月中下
+Abult, ・▼Egg, − Larva, ④Pupa
FIG.1.Life history chart Of the thr’ee SpeCies olurticating moths,EuProctis Pava,.E.♪seudoconsz>er・Sa and E,.Similisin KAGAWA pr・efectur・e
旬,モンシロドクガは4月中旬頃から越冬から覚めた幼虫の春季 活動がはじまる.−・方チャドクガは,春に.なって卵から醇化し, 幼虫のステイジに入るので,第1回目の発蛾も他の2者より若干 おくれ,第2図のような関係となる.. チャドクガおよびモンシロドクガの第1回と第2回または第1, 2回と第3回の発蛾の盈的関係は十分には分らないが,ナミドク ガの香川県における発蛾最盛期は,6月中下旬に当っており,年 に・よっては7月上旬まで最盛期にかかることもある.、借越冬より 春季活動に入る頃のナミドクガおよびモンシロドクガの幼虫令期 は,それぞそ第14令および筋3令のようで,爾後どん食をつずけ て急速に生長を行なう. 2.発 育 次にこれら3種毒蛾の発育について述べる.前述のように.これ らの3種は,もっとも被害の点で問題になりやすいので,比較の ためそれぞれのステイジの発育所要日数を一・括して第1表にかか げる..(但しナミドクガはクヌギ Q払〝C〟S(㍑協わggよ ドダガはチャ コ撒紺.S≠乃β乃Sよs, モンシロドクガはクワ 肋γαざ ∂∂班∂.γCどぶ を・もって飼育)卵期間はモンシロドクガはそれほど長 くもないが,ナミドクガ,チャドクガは他の屁虫のそれに比して 期間がやや岸びく傾向があり,幼虫期間もどちらかというとそう FIG.2.Showing the emerIgenCe Of
the thr’ee SpeCies ofurticating
motilS,g〝♪γ−α勇・S.β椚昭,.g ♪ざβ〝doc∂乃∫♪βr・Sαand且.sわ乃∠Jよ5
during the season frIOm early SummertOSummerinKagawa
香川大学農学部学術報告 TAB.,1Developmentalperiodindays of the thr・ee SpeCiesofuIticating moths(1958∼1959).
A.動ゆ川班s.βα〃α
244
*Number of egg masses.
Bけ 且♪・Sβ〝d〃CO乃ざ少βγSα L ∴、 + −Cbnfid読celi云iit Coe侃cient var・iation
Min.∼Max
156′〉206 52∼59 10へノ16 11′〉17 Of population 嬰畢{9担_川
175い59′・・ノ17(;21 54.21′〉56巾05 12.78′}13.72 13小52′}14.38 15“32′−15.80 51.84′}52.38 13.13′→14.03 16..53∼17.51 Stage :. 一_」彪L._ Egg Lar・Va Pr・ep.+ pupa(甘) 〃 (−♀) 0−.73 126 347 2.71 54* 64 65 46 14∼17 49′〉56 9′}18 13′・・′21 Egg Larva Pr・ep.+ pupa(甘) ′′ しキ)*Numberofegg masses, A:Thelstgeneration(Hybernated attheeggstage), B:The2nd generation
C一.」乳‥由班ま■Jよs
*Number・Of egg masses, **Hybernated at thelarvalstage. A,B,C:Thelst,2nd,3rd generation.
第12巻第2号(1960) 245 した傾向がつよい… もっともナミドクガは,その幼虫期間に.15∼16令を経過し,チャドクガは8∼9命を経過す るので,5令経過のモンシロドクガとはずい分な相違があるのは当然で,こ.うした経過命数こそもっともそれぞれ のドクガの珪理生態的特性を・よくしめすものであろう. 次に在繭期間(前腑期+腑期)は一般にサミドクガが特に長く,平均して20日あまり,チャドクガはそれに次い で長く13日内外で蛾の中では比較的長い方である“しかしモンシロドクガはそれらに比扱するとやや短かく,とく に.夏季のものほ10日足らずで羽化してしまうこうした発育速度が年間の発生回数を規定することは当然一つの適 応にはちがいないが,これら3種のかなり近緑なる間柄を考察する時興味深いものがある‖ 前桶期は概していずれ も3∼5日イ立で,一L般にナミドクガは数日雌の方が雄より遅れて羽化脱出する傾向があり,またそうした報葛もあ るが(8),初発の早晩は著者(松沢)の香川におけるこれまでの調査では,ほとんど同時かもしくは1,2日雌のカ がおくれる程度のことも少なくなく,こうしたことをあまり強調することはかえって誤解を招くおそれがあると思 う.他の2種でもナミドクガとほぼ同様で,・一般に雄のカが1∼3日僅早く羽化脱隠する傾向は存する.. 成虫の寿命については従来あまりよく調べられてほいないが,ナミドクガについては7∼9日で,1∼2日雄の 方が雌より長命であるという報嘗がある.けれども著者の過去の調査でほ,第2表のようにいずれの種類とも平均 して7,8日位で,また一般に雌の方が1,2日雄より長命の傾向が認められた.
TAB.2.Duration ofsurvivingin days of the adult moths(1959). Cit
tariance mean(95%)
s。eCies&Sexll
Min∼Max of var・iation (%)21.40 17.63 7.94′〉 8..88 9い63′・・ノ10.45 ガ..丹那畑 6…43′} 7.29 7日53−・8..31 /㌻
E.ク・Sβ鋸d〃‖(A)♀
19い24 14い90 C∂乃・Sタβ㌢■√S〃 20‖40 15.08 7.13′} 7.87 9‖58−・10一.32 22.37 21い12 5u70′・.′ 6.64 6.53′・〉 7..39 2163 19り83 6‖67∼7..29 7.77′−ノ 8…67 見・Sよ■研≠J査S(B) ′倉 ♀ 20.92 19.53 6..38・} 7.20 8り47′} 9..45 さて,従来の報告の中には,ナミドクガやチャドクガなどはある程度の大きさをもった集団のままでないと生育 が不可能もしくは不良になってしまうという結果を示めしたものが2,3存する(8〉..このことは事実とすれば生物 学的にはきわめて興味ある問題といわざるを得ないが,その解釈に当っては生理的あるいは生態的などいくつかの 見解が生ずるのは当然であろう.この点に関して著者らの研究室でも目下ナミドクガの場合について実験中である が,現在の段階から推定を下すならば,この間題は膵化後の節1,2令幼虫が他の個体と体毛を接して定位しない 限り,きわめてさかんな移動を行なう(他の個体をさがし求めてそれと体毛を接してならんでほじめて安定状態に 達する)習性ともきわめて大きな関係をもっているということが言えそうで,したがって1頭1頭にばらされた個 体は安定状態に達するまで移動をくり返してほとんど餌につくことがない.現在の実験の進行段階では,少なくと も数頭以上の集団を形成しさえすれば安定状態を償って正常な摂食をつず仇生長を行なうこと,まったくの単独 飼育でもきわめて低率ではあるが摂食を行なって生長していくものが存すること,少なくとも教頭以上の集団飼育 では,棲息密度が大なる程生育率が良く,生長が速やかであるとはいえず,むしろとくに生長の早いものは低密度 の区または単独飼育区において見られるといったことが分ってきつつある.しかしいずれにしてもこれらのドクガ 頬の集団形成は生物学的にきわめて興味をひく問題であるが,その機構は割合に単純なもののように推測される・香川大学農学部学縮報告 248 3.食 性 チャドクガは通常チャ コⅧ紺・Sよ■乃¢〝」S≠\s,サザンカ Cα班βJJ≠α,5α.Sα托す以α,ツバキ C..わ卯融■cαを食し,モンシ ロドクガはクワ 肋γ鋸S∂〃∽∂.γぐg∫,アカメヤナギ ざαJよ.ガgJα乃d〝わざα,カワヤナギ 5.g㌢・α¢∠J∠■5頼Jα,ナガバカワ ヤナギぶ,.G∠Jg∠■α乃α,プラタナス(スズカケノキ)タJαf〃乃〝.S〃γ査一朗加漬s,クヌギ ¢〝βγ・ム・〝S〃C鋸わ■5S∠鯛α,かキ ∂才郎ク.γγ〃一S助舶,ナワシログミ 且払狗押那少∽郎那などを食し,時としてザクロ グ〟乃去−cα G㌢・α扉紆刑 を会す ることもあるしかし従来モンシロドクガは,クワその他2,3の植物のみを食するいわゆる 01igopbagous の 種類と考えられていたようであって,この点は・一つ見直さなければならない小 間題のもう一つの生態品種(クワそ の他につくものはg明知・α需S∬α乃fゐocα∽♪α であるとする説にとっては,それに対応する 且.該矧眉.ゞ の方)は サクラ ダ7〝乃〝5 その他の植物を食するといい,幼虫に班紋,体色などの形態的な相違があるというが,この間の 事情についてはなお検討の余地がある㌔
ナミドク−ガは典型的なPolyphagousな昆虫に数えられるであろうが,従来その食草として記録されたものだけ
でも39科110種にのぼっている(8)り しかしそれらの中には長の患味での食草として若干あやしいものも含まれてお り,一応100種内夕もと見込む方が穏当かも知れない… もちろん著者等は従来未記録の食草を新たに雇干知り得たの ではあるが,それを追加するにしてもそれほど増加するわけではない‖ ところでナミドクガの特に嗜好する植物ほ,香川県下での著者等の調査にもとずくと,イバラ科植物 点∂gαCβαβ ではノイパラ 点∂・∽ク勒舶用加仇モミジイチゴ凡娩描か拍相知=orma叫神妙細胞s,ブナ科植物劫gαCβ〃β ではアベマキ(物抑制=励砧戯■〃・S,クヌギ Q.αC〝fよ−∫古壷■∽α,コナラ(ハハノ)¢‥ゞ♂γrαfα,アカガシ Q.仇㍑止吼 マメ科植物エβgび弼ど乃〃ぶαβ ではヤマフジ ーⅣゐ血椚α∂㌢α¢カッ∂0≠㌢・γ∫,ツ・ツジ科 β㌢紘郎βαβ の植物ではナツハゼ l旬血擁■〟肌C≠■路離狛吼モチッソジ点ゐ〃d∂dg乃dr∂花柳抽vaT■・.如ゆ0乃fc〟桝,タデ科植物タ〃Jγ即搾α‘βα♂でを享イタ ドリ ア叫γg∂乃α研γ・β.γ乃〃〝fγ紘カバノキ科植物β♂f捉JαCgαβではヒメヤシヤプシ Aわ㍑S 〝如〃緑風叩ねおよびヤ シヤプシAJ乃〟・Sメγ桝αなどであるが,クルミ科.ルgJ?乃dαCβ〃βのノダルミ グJαf.γ‘・βγγ〃α加∂査■JαCβα,マメ科の ヤマハギエβ・S♪βdβZα∂オぐ〃わr var・..毎抑祓吼カラスノ、エLンドゥ y盲七≠α.Sαfgγα,クスノキ科エαα㌢・〃Cβαβ のヤマ コウバシ ββ乃gOよ乃gJα〟C祝桝,イバラ科のヤマザクラ グγ〝乃〟ざ(ね矧卵・≠〝桝 VaI、卵伽ね紬‰ タヂ科のスイパ忍従∽β∬AcgねZα,グミ科gJαgαgク富αCβαβのナワシログミgJαβαg柁録9♪〝乃gβ那,トウダイグサ科g鋸♪ゐ〃γ∂グαCβαβ
のアカメガシワ 肋〃∂f〟・S.如如磁(・α,・ユリ科上之■〃α¢βαgのサルトリイバラ 5椚≠Jα.方Cゐわz〃,ツバキ科アゐβαCβαβのヒサ嘉キE鋸7・.γα如∂乃∼cα,ウラボシ科P〃Jツタ〃♂≠加βαβのワラビf熔融励反別α卯沼助朝∵なども若干食害し,
またリンゴ肋J〟ぶ♪〝班fJαVar・.あ血ぬ扇払‰ヒワEγわ∂∂fr.γαブ〃♪〃乃f¢α,カキかわ5少.γγ鋸」泡戯」モモjり㈲那 Pβr・ざヂcα,ナシア.γγ・払S5∼椚ク乃払オランダイチゴダrαg(7γ≠■〃Cゐ才わβ乃ゞf.s vaI・.α乃α乃〃.SSα,・ノラマメ yどごね釣∂α, ハダカムギ 励γ■dβわ∽ ぴ〝Jg〃γβ Var■〃 乃鋸ね胡,チャ Tゐβα・扇■乃β乃・S∼・Sなどの果樹や農作物に.もよく加害を認め た.. けれどもナミドクガは自然状態でははじめからしまいまで同じまたは同様な植物だけを食するものではなく,次 々に食草の転換をなす.すなわち吾m県では,はじめクヌギ,アペマ・キクヌギなどに産卵を行ない,膵イヒした幼虫 は大体その場所でそれらの植物の菓を食して生長し**〔第1期卜一応越冬にはいることとなるが,早春ふたたび活動 だ開始した幼虫は,今度は主としてモチッツジを食して集団のまま生長をつずける〔第2期〕。山野ではこの頃ま をそれ以外に食するもの(菓)がないからでもあろう‖ やがて今度は次第に.モチッ・ツジをはなれて,ヤマフジ,カ シ,クヌギその他多数の植物を食物とするようになり,次第に少数個体よりなる集団に分かれていわゆる分散を開 始する前兆を示すようになるが(儲3期〕,やがて分散して今度はイタドリを主として求めるようになり〔第4期〕, 間もなく営繭痺化を開始する. 従釆ナミドクガの食性については,春季その集団が次第に解かれ分散していくことがいろいろな植物を食する結 果をひきおこすといわんばかりの説明を与えている場合があるが,著者等は香川県下の多発地葦の幼虫群の大勢の *最近,野口童子もこの間題について簡単な報告を行なった(第20回日本.昆虫学会.大阪,1960−10−14∼ 16)。 **名古屋市東辺丘陵地帯ではこうした芳命幼虫はほとんど日中は落葉下にひそみ,夜間出でて摂食を行なった という第12巻第2号(1960) 247 動きを季節的に.追跡してみて,もっと生 理的な見解に立っている.すなわち,生 理的要求に応じて彼等は食物の転換をな そうとし,ごのことがかたい彼等の集団 性を次第にゆるめさせていくと解釈した いのである.集団性を解くといっても, 決して−時に1匹1匹パラバラに無力向 に分散することはなく,当分の間は少数 個体よりなる集団性の名残りがもちつず けられ,老熟期に.はいってはじめて解か れた形となる しかも大勢的に.は明らか に.その時期その時期に求めているものが あると観察の結果考えられるからである 多種多様しかもほとんど無尽蔵の食餌植 物の生育している中に.あってさえ,彼等 はその中からえ.らんだAからB,または BからCへの食物転換をどうしてもある 時期に.立ち到ると余儀なくされるように 自然状態においては感じられる.第3図 に示したようなリンゴ園あるいはモモ園 などへの大嵐進出(昭和33年春,香川県 豊島では,モチッツジの生育の多い雑木 林からヤシヤプシ植栽林へ移動し,さら に麦畑,リンゴ園に大盤に進出し,昭和 34年春は香川県大川郡下で,同様な雑木 林からモモ因に大盤に進出した)もこう した生理的要求にもと.ずいた食物転換に つながるものではなかろうか FIG。3 LarvaeoftheFar・Eastemurticatingmoth,EuタrOCtis Pava on the ieaves of apple and the damage of apple tr・eesin the orchar・d by them(TESHIMA,KAGAWA
1958.). 4 香川県下のナミドクガ多発林相 チャドクガやモンシロドクガ(現在の香川県では,大きな桑園はほとんどなくなり,名残りをとどめる路傍の桑 株に多く発生する)については今さら詳述するまでもないのでここではナミドクガの多発地の林相について述べる ことにする 従来ナミドクガの多発地については,27 とんどなく,比較的村落濫近い浅い林であるか,交通路に近い槽悪林地といったような場所が多いい 香川県の場合 もやはり同様で,はとんどが集落に近い処である小 しかも落葉樹種の混堕歩合の高い,いわゆる森林で,同時に前 記のモチッツジその他の生育がきわめて顕著な場所である 今一つの例として昨年(1959)激発をみた香川県大川 郡田面峠付近の林相解析の墟果を示すと第4図および第3表の如ぐであって,同じく昨年の多発区域であった木田 郡三木町田中興の場合も概観的にはほとんど同様であった。 調査の結果判明したことは,発生区域内にはナミドわガの特に.嗜好する植物が,ほとんど無尽蔵といってさしつ かえないほどに高い頻度でもって生育しており,いかにもといった感がつよい. もとより香川県は,概して好悪な疎林ばかりであって,コナラ,クヌギ,アベマキクヌギその他の落葉樹の混生 歩合の比較的高い,第3衷のごとき植物を含む林地に富んでいるが,ナミドクガの多発環境としては,きわめて好 適な条件下にあると判断される..したが去て将来も随所に局所的多発時には激発をみるものと予想せられる ナミドクガの多発地となり易い条件と.しては 1、クヌギ,アペマ・キクヌギ,コナラその他の産卵の対象となる落葉樹の混生歩合が比較的高いこと.
248 香川大学農学部学術報告
2‖ 越冬から覚めた虐後の,早春の食餌植物として,普通もっとも重要な役割をはたすモチッツジの生育の多い
処であるこ.と 3.発育段階に応じて彼等の求める各種の食餌植物の存在皮が比較的高いこと. 4..疎林でしかも越冬も容易であるような環境 というような事項が一応考えられるが,樹高の比較的低い,いわゆる落葉檻木の丘陵地といった植物景観の処に も大発生をみる場合のあることは,近年の名古屋市周辺での激発の実例(6)からも明らかである ナミドクガの越冬場所は,通常風当りの比較的少ない丘陵地などの凹所や,日当りの良い草むらなどの落葉下で あることが多いが,丘陵地の茶園なども越冬ということからみるときわめて好適な環境となりうるようで,香川県 大川郡田面峠付近では,このことにまつわる問題がかなり世人の注目を・ひいたことは事実である・しかしてふミド クガが春越冬から覚めて,実によく茶の菓を囁食して当分の間の生長を畳ねるものであることも真実であるFIG。4一Showing the vegitation of wood where the outbreak o董theFarEastermurticating moth,Euβrociis.Pava was seen(OKAWA,KAGAWA,1959).
Cタ:Cα一Sオα〝gαク〝∂∠−〝♂デ扉・ざScHNEfD(助㌢g)− かg:かねs♪.γ70S励ゑZエ′.郎.(助ゐよ). Ej:茸㍍・.γαブ〃♪0托よcαTHUNB(g∠5αゐαゐよ)」・ g♪:gJαβαg乃α,S少鋸乃gβ乃・S THtJNB.(Ⅳの路・Sゐ壷わgα研グ). アd:Pさ乃〝.Sdβ乃.S去■.伽γ〃SrEB.♂f Z〟CC.(A烏α桝αf5れ タゐ:ア〝βγαγよαゐよ7・.SαfαMATSIJM.(助2祝). .腎:Pよ■βγよ\s.拍動用ねαか・DoNい(Aざβろg)い タ∫:且賊−∂∂Jα.ざ紘一5オ沼〃乃ざNAXAエ(肋♂α烏β)ハ ¢α:Q〝βγC以、SαC〟f∠s.s≠∽αCARRtJTJH.(肋花αg壷). 点d:皮ゐ♂d∂dβ乃d㌢鋸=打払ね雨脚∴MQ.(几幻ね〝∂α・f.ざ〝才一S祝グオ).
Rl:RhododendY・On lineaY・ifolium SIEBet Zucc.varり maCrOSe少alum MAKINO
(肋cゐ蒼古.sαf.s〝.タオ)
月例:点0−Sα桝お〃乙β〃㌢・αTHUNBい(納豆−∂αγ仇)
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筍12巻第2号(1960)
TA】】r3.List of vascular・plants frIOm TAZURA・r6GE,OKAWA,KAGAWA PrIef”Where the
outbreak of the Far Eastern urIticating moth was seen(1959).
1u FAMり C(〉刑β〃S豆■f〃β A㌢・fβ桝査.s∠αノ拍.sわ!fゐよ肋間.L.トAび扉郎雨s エ.vaT・‖ ∠乃dよ−c・α.加地.扇■沼り.乳汁卯・fγよ−乃β川紘s点∂∬∂. varいC鋸ば都府描」釣・α乃Cぁいβf5αぴ,Cゐ㌢.γSα乃fゐβ桝鋸∽肋ゐよ机〉 几ねか潤∽扉。情沌d,C£γ一∫∼鋸桝 わ卯吻c〝研かC,エαCわ灯αdβ乃fαfα放鳥∠乃0,エSわね乃去■./壱㌢・α几ね胡研リアβ咋γα5c〃乃dβ乃ざ5ぐゐ 扉」別♪け5の耽・ゐ〝.S OJβγ〃Cβ鋸・Sんいrαγα.方αC鋸∽〆αfツC・αγ少〟研かαゐJSf 2.FAMCα♪γげOJ∠αCβαβ 九㈲ね卯・αgγ・αCよJよ少βS〟f¢.Var・.gJαろγα ルの■カリ1月∂鋸γ乃〟研 ♂㌢βS〝弼 rゐ鋸乃∂り Ⅴ・・蛮Jα′α≠〝桝 rゐ〟乃∂. 3小 FAMGβ乃f哀’α乃αCβαβ Cγ・α紺ノα7・離αグα少0乃左上α5よβ∂.βf Z〟CC・,G血流α乃αざC・α∂7α及川郎VaI・−β払卯gβ7よ肋・方わ‘班・ 4、.FAM,且∂β乃αCβαβ かわ.坤γ川S助ゑ査−ム.カJ 5.FAM.ア㌢よ■研〟gαCβαβ エ.γ.S≠玖即戯αCJβfゐ㌢■扇’dβぶか鋸∂.γ. 6.FAM.〃γグ.S之卜乃αCβα♂ Ard∼5≠’αブα♪∂乃どcαβJ 7.FAM.Erf¢αどβαβ ♪/t・′ご=丑ノIJ冊ユ∴こふ・t/∴P・/吋バ;・∴、・r′一九′′∴〟ん一(Jり・Jt・ノごんり‥J∫J‘′′〟∴・∫′∼∫1J川・尺・〃川・〝汗 /bgよ■〝肌 ぶfβ∂..βf Z〃CC.Var・い 弼αC㌢〃5β少αJ〟研 肋ゑ査如,l旬cC≠搾去〟桝 Cよわ■αわ‘雛 Tゐ卯乃れ V β払卯・gβγ・よ■鳳得す 8.FAM,ノわαわαCβαβ gαわ♪α乃αガ㌢・よ−d■乃よノ〃J≠〝・S〃袖 9小FAM、EJαβ〃gク2αCβαβ 且Jαβαgタ‡〝S少〟乃gβ乃.Sコn如〝沌 10FAMⅤ≠−∂JαCβαg V∠oJα研α乃dsゐ〝7gCαlγ仁β以沌.,Ⅴ”gγ.γ♪ocβ㌢αざA.Gタ■α.γ 11.FAM.TゐβαCβαβ Cα椚βJJグα.グα♪0乃ダcαんβ鋸γ.γαブα如乃グcαγゐ祝乃∂. 12FAM.CβJα.Sわ一αCβαβ E勿叫γ∽〝S〃Jαfα5よβ∂u foTma・Sfγ■≠−離αル払鋸那 13.FAMい A乃αCα7離■αぐβαβ 忍ゐ〝Sわ・・去cゐocα㌢やα腰セ.,属..タα〃α乃査cαエ 14いFAM.g〝♪ゐ0γ∂去■αC♂αβ 肋Jわf〝S.グαタク〝gC鋸S肋♂JJ…Aブg 15.FAM.エβg〝研去■乃〃」Sαβ .lバ′Jご、・′、り∼iJ.、;′.・∫ノごtJい(′ エJいJ〟…JJ、・りiJノ・い.ノ即・、ごりjJJ,し−、、JJJ(JJざ′けl川 ノ・ヾl・ござ−Jりイ仙・J直子〝 肋fs〝椚,エβ一S♪βdβZα∂云α法〃r〟7C㌢・.Var・。..絶妙祓α肋ゐα≠,エいC“乃βαfαGl加乃リエ・が伽Sα 5査β∂.βf Z〝CC,P“βγα㌢・∠αぁわ・.S〟fα肋fs㍑∽リ Ⅴ≠c去■α.Sαめαエ,Ⅴ小CγαCC・α」L va‡・l.錘卯頑血 〟秘,Ⅴ.fβわ′α。S少β㌢・∽α肋β乃Cゐ.1れ1Sfαγ・まα∂㌢・αCゐ.γ∂of7一γ・S5よβ∂いβf Z〟CC 16FAM,点∂,SαC♂αβ P㌢〟れ〝S do乃αγ・∠〟桝Sよβ∂va∫・5♪∂乃fα児βα肋点∠加,皮0Sα弼〟〃すβ0㌢・α:n物∽れ,月初わS♪αJ桝α・ f〟S71ゐ〝乃み./bγ∽ムc0♪f〃♪ゐγJJ鋸.S肋ゑ去■乃0 17.FAM.5〃,ガげγαgαCβαg ∂β〟fgよ■〃C㌢・β刀αfα5∠♂∂ βf Z〝CC 18い FAMエαα7・αCβαβ β√〃Z〃きJJgJの化て〃〃5iど∂ 19FAMり エα7・離■zα∂αJαC・♂αe Aお鋸αわよノbJ≠■の旭∴打扇dz 20、FAMい Cα㌢・.γ〃♪ゐ〆JαCβαβ か∠−如沼地S.S〟クβγ∂〝Sエ 21.FAM‖ ア∂J.yg(〉乃αC・βαβ 点∽傲㍑J如・βねSαエリア叫γg∂乃〃桝屋β.γ乃∂〝fγ■∠α肋ゐよぉ
香川大学農学部学術琴儀 250 22.FAM.肋γ・αCβαβ 」托c以Sβ7♂Cfα Tゐ〟乃∂ 23.FAM劫g(ZCβαβ t∴.・J′・・一ご・・t・・∼ヘリ;・・ご・・;‥、→・、J∼砧・・′・り・・い・り い・一′∼7、ト′∴−ト有・・・・バイ・り、‥‥ハごソ、ムーご・・・ご一・ QりgJα鋸Cαてゐ〟乃∂.,Q.αC伽gよ■・S・S去班αCα”’視れ¢がαr∠α々よ■J去\sβJ祝朗β′ 24…FAM.β捉g以JαCβαβ AJ乃鋸ゞ.か研α5去βれβ才ZれCCリ・A・研αJf査乃βγ一山■S CαJJ” 25‖FAM../以gJα花dαCβα♂ クJαf.γCα7・.γα一Sわ′0∂査Jα‘♂αS去−β∂′βf Zれ“ 26いFAMリ ぶαJよ(αCβαβ 5αJ査∬g7・αC・去J壱SfツJα〟よす 27。.FAM‖ 0“戯dαCβαβ し・・∼・・∴りJ佑‥一∴・‥√ノ・・い(・・■′J⊥・′ご・〃・(−ゝ・′′∴J√・J∴、りぶ・・′lJ‥ノ・・こ⊥∴・・J/ 28..FAM‖ ノ射矧別.γJJさdαC♂αβ エッ‘∂7之Sγ仇動α才α月壱γ∂ 29.FAM.エ之J去−αCβαβ /・り∴・.ござ・りJl、JリんJ一′、・J′、′・・/、り′∴1−∴く・・、、・ざノ′∫′J(′T・最′ニーご上 30。.FAM−C.γββ7αCβαβ Cα㌢β.ガCO乃よ−cαβ00払 31小FAM‖ Gタα∽左搾βαβ
/バブ.・…ご′l‥ふ・・′′ご・・・・ノヾ‥∴・、こミ一 打り・∴・ヾ∫・∴・′い届′√l′・・′J仁L㌔・∴・1/い・・√川√ざ・こ、∴′l、′ご・∫ヾ
.し‥′‥、い.川.いご両、∴‥・∫パノい∫‥ −\−′J〃‥/・‘いl=・・∴・・、・1ん止、=・ノバ・J・・1J√血′汀■;=■=こし gJdる7・α几飯南死〃 32…FAM C以♪γβ・SSαぐ♂αβ C彪α研α♂C.γ♪α7査sα如胡Sαゝ塵乃dJ 33FAMrαガ∂d去αC♂αβ Cγ.γ♪わ∽♂γ壷−αブα♪β乃左cαかぃ伽乃 34小FAM‖ j㌔犯αCβαβ ア∠乃鋸S dβ乃S哀.β∂γ・α5査−♂∂・♂f Z〝CC 35..FAM.ア∂J.γ少〃d去■αCβαβJい・・ノ吊‥t∫…′ヾ・い.′、バ・∫∫・、ご‥ン八丁ざ〃h・ハ‥、・′た行、・り√‥′〃∫′・・∫ご・・川小l/∼ご′′′′rれ・
∴・一三、ごl、・;門JJ−′t∼か∫れル′∴ト′j‥′・√こ!浩j・ござ′j・・ムー・′∴′∴JH・=′・ん√!バ‥ごりイl・‘血ノj∫ ざ√加//ヽこIl 蕗如戒c〟肌Cゐ㌢■よS≠ 36.FAM,.GJβ去cカβ乃壷■αCβα♂ GJ♂∠・cゐβ乃去αgJα〟Cα月boゑ・′GいJ豆’乃gαγ査一昔CJ〃γゐg巾 37…FAM.0.s研〝乃dαCβαβ 0−S∽〝乃dα.葎函南cα7協鋸舟 5発 賦 最 盛 期 香川県に.おけるナミドクガの発蛾は通常、6月上旬 から7月上旬にわたるが,いわゆる発蛾最盛期は6 月下旬に.当っている.昨年(1959)の観察では,6 月22日∼同29日頃が丁度それに当ったが,4基の蛍 光誘蛾灯によって著者等が誘殺した峨数の日々変動 は第5図*のごとくであった.性別にこれをみれば, 概して発蛾初期に瀬雌蛾より堆蛾の割合が高く,後 に登るにしたがって雌蛾の割合が次第に増加して来 るが,こうした事情は他の地方たとえば多治見地方 でもすでに観察されている(5) ところでいわゆる最盛期における雌堆蛾の割合 は,やはりはじめは若干雄蛾の割合が高いようであ p巴n鼠耳︶讐電卓R葛hむq∈nZ 0 0 ハU O ︵U O O 5 0 一l⊥ 2 1 2〔 25 30 20 ウち 30 5 JUNE TUNEFIG5Fluctuation ctlrVeS Of the number of moths, Euproctis.Pava capturedbyfour魚uorescent lampsat6ⅩAWA,KAGAWA(1959)
第12巻第2号ぐ19印) 251 るが,間もなくがえちして樺蛾の割合が雄より高くなってしまう.こうした雌雄比の逆転の起る準が兵庫県でみられ た場合(4)のよラ重いねゆ冴発蛾最盛期め中期に当っているがて 明瞭である上,雌蛾の絶対盈がどうしキものか雄に比較しで一般的に低いようである(著者等の経験で軋誘蛾灯 の光源取付位置とくに.その地上よりの高さなどによって若干のちがいが生ずるように思う..・一般に雄蛾は光源の付 近でもそそっゃゝしし:行動をしめすことが多く,身軽なためにかなり高い処に・もとび上れるが,雄蛾ほ非常に鈍重で 灯よりもむしろ下方の下草ヰ器物に静止してしまうことが多い). 本県の発蛾殴盛期と岐阜県(さ)あたりのそれを比較するに・,岐阜県では通常6月15,16日噴から同24,25日位まで のようであるから,数日なヤ、し1週間億香川県より早い傾向がある.しかしこ.うした事情は年により若干のちがい は起りラることであろう∴ ところでチャ下クガは年2回(7月,9∼10月),干ンシロドクガは年3回(6月,8月,10月)の鼠虫出現期が あるが,どの時期の発生がもっとも多いかは場所によりまた年にもよるので−・概に.はいえない… しかし著者等の従 来の観察で軋 モン㌣ロドケガは本県においては第1化期の発蛾塵が比較的多く,もっとも顕著な山をつくるよう に思われる. 8 大 発 生 かってチャドクガや雫ンシ‡サ豆:ク ない.とくに屯ンシ・ロドクガ軋 となった事情になって釆たことは一事えないことと思う.しかしナミドクガの大発生は,近年頻繁に各地で報ぜられ 問題となった 従来のきわめて乏しい資料からセはあるが,ナミドクガは大体8年イ立の周期をもってそれを繰り返えすものと考 えられ,逓年はさらにこうした大発生のピー・クが,北から南へ向って起るのではないかなギといろいろ論議されて いる・・昭和29,30,31年と愛知県,岐阜県,兵庫琴に十ミドクガの異常な大発生が見られたことは,多くの記録(4) (5)(d〉匹もとどめられ記憶に.も新らい溺香椚県では昭和33年(小豆郡豊島地方ゝ昭和34年*(大川郡大川村田面
峠附近ヰ鹿)と従来みなかっだ大慶麹故が窄められたノ.それがそもそもの大発生のピ・−クというものであったかど
うか(強力な防除作業を行なったので),大発生 TAB・4n Number・pfadvltsQfthe・lFarE粥temurticat・r といってもそれぞれの土地の事情によって若干現 ingmothAighttotheliihttr叩duringfivedays at the per・iod of・fhe養akof emer・ ゎれ方がちがう場合もあるので,よく分らないフ シもあるが,いずれにしても後者の場合などは過 去3年倍増えに.増えて大方その極に達する状態で あったことは間違いないしかして昭和35年には, 防除の効果も相当に大であった(2)とはいえ.,前年 全域的にかなりの多発をみた香川県東部各地とも genCe… MIKI血6(ⅠⅩENOBE),KAGAWA.,1957∼1960 1957 1958 1959 1960 305 極度に発生数の減少を釆たした…木田郡三木町村 903 近でも,第4表のように昭和35年に・は極度の減少 7 を見た … ̄ 前述のナミドクガの大発生の8年周期説がいか なる程度に信頼できるものであるか,また香川県 での特異性がこうしたことの中にも認められるか どうかという問題は,もちろん今後の調査研究に A:Fluorescentlamp(Day−1ight,FI.,20D) B: 〃 (Blue,Fし20B) C: 〃 (Chemical,FL−20BL) 倹つぼかはないが,7,8年目毎に急激に個体数を激増して大発生を現出するといったタイプではなく,その2{ノ 3年前からかなり目立った個体数増加を来たし,ついに大発生のピーークに.至るといったタイプに属するものではあ るまいかい 著者等は単なる憶測でなく香川県に.おける過去数年の体験からかかる推察をなすものである 7 増 殖 能 力 成虫は静止する時は両週を屋根形に.たたんで各肢をのばし,器物に接着する姿勢をとる..一・般に牛後羽化するもの *この年には徳島県鳴門地方でもかなりな大発生をみた.
香川大学農学部学術報告 252 が多いが,多くは初日から交尾を行ない, 時に2日目の夕刻よりこれを行なうもの もある.交尾時間はかなり長く,ナミド クガでは20時間前後にもわたるのが普通 である.交尾は尾端を接して垣線的に.連 結し,雄蛾は後半身を雌蛾の瑚下にかく されたような状態をしめす.. 3種のドクガはいずれも交尾終了後は 蕃ちに産卵を開始するが,通常1∼4卵 塊,平均2卵塊イ立を産下するが,いずれ も第8図のように燐毛をもって表面を掩 う..産卵は食餌植物の葉裏匿なすことが 多いが,もちろん例外も認められ,比較 的せまい容器内では器物の壁などに産着 することもある日 これらの3秩のドクガの1雌成虫当り の産下卵数はきわめて多く,調査の結果 は第5表の如くである“したが・つて環境 抵抗などという問題を一応ぬきにして考 えるならば,相当に増殖力の大きな昆虫 ということができよう..
FIG6.Egg masses of theFar・Easter・nurticating moth,
β明叶α需’.sガαぴα.
TAB.5.Fecundity per femaleadult of each species of urticating moth. Mean Species
u
Number・0董individuals testedI Min.∼Max巾 且.ガαγα 且♪Sβ鋸(わc¢乃.S♪β㌢■一Sα 且sわ乃≠わ 692∼・1280 184へ′311 216・、′603 8 天 敵 今日までに知られたこれらのドクガ頬の天敵は,かなりに多く,およそ10穐のものが知られている。.しかし著者 等が香Jtl県下で実際濫確認しているものは次のようであって,種類としてはそれほど多くはない.しかしヤドリバ 車扱ア加商■乃ヂ♂αβによるナミドクガの被寄生率はかなりに高く,5∼10%時に20%内外のこともある.大発生時に 疾病(恐らく Virus病)にたおされる幼虫数はきわめて大のようで,昨年(1959)大川郡田面峠一滞の大発生時に は50%もしくはそれ以上も疾病に犯されてたおれたものと見込まれる. 寄生性双黄羽目ニ キナコハリバ工 Cα7・どβJ査■αβ∬Cど.ゞα如才∼占紹 (ヤドリバエ・科・rαどゐ∼雅言dαβ). ブランコヤドリバェ 及妨郎戯■乃α.拍動㍑ねα7玩闘.Sβ乃d サンセイハリバェ β∬07∠\sfαC〃乃ノブ死ブ・SダαJJ∂乃 ドクガヤドリバェ・ 封働Ⅶαが■cfαβα7・の叩ダ
第12巻界2号(1960) 253 寄生性膜週日: 種名不詳の1種(目■下倹討申) 疾、 病: m−γ弘S 病の1橙(β〃γrヴJよ乃〃do烏鋸gαAよ一之α紺αβfαJタ),寄生菌病の1種 摘 要 ナミドクガ,チャドクギ,モンシロドクガの3種のドクガの生態を明らかにするために,昭和31年(1956)以来 研究を行ない,おおむね次のような成績を得た 1)香川県における1年間の発生回数はナミドクガは1臥 チャドクガは2臥 モンシロドクガは3回で,その 経過図は第1図の如くである.
2)これら3超のドクガの自然状態に・おけや発育所要日数は第1表のようであるが,ナミドクガは15∼16令,チ
ャドクガは8∼9令,・モンシロドク如ま5令を準過して営繭桶化する 3)チャドクガはチヤ,サザンカ,ツパキなど,モンシロドクガはクワ,各種のヤナ・ギ類,プラタナス,クヌギ, カキ,ナワシログミ,ザクロなどの菓を食するがナミドクガは一層多種頬の植物を食し,現在39科100種以 上の金融植物が知られている..香川県下の山林内における食餌植物については,本文中に.詳述したが,イバ ラ科,ブナ科,マメ科,ツツジ科,タデ科,カバノキ科などに属する約12種ならびに.約9種の果樹および作 物が顕著に食害せられた‖ とくにナミドクガは生長するに.つれて次第に各種のことなった植物を食するよう になるが,それでもかなり選択性がつよく,やはり生理的要求にもとずくものと考えられた. 4)香川県下のナミドクガの多発林相は第3図にも示したように∴一般に滞英樹の多い比較的浅い山林である 5)チャドクガは7月と9∼10月,モンシロドクがは6月,8月および10月の3回成虫の羽化が見られる ナミ ドクガは6月上旬から7月上旬にかけて1回だけ羽化してくるが,そのピ−クは通常6月下旬(22∼29日頃) に.あたる6)ナミドクガの成虫出現顛の初期に.は一般に.雄蛾が多く,後期には掛こ雌蛾が多いが,性比の逆転の起る頃が
丁度発蛾最盛期の中期にあたる 7)近年香川県におけるナミドクガの大発生は昭和33年(1958)に小雷郡豊島,昭和34年(1959)には大出郡大 川村で相当大きな規模で起ったい しかしていずれの場合にも農作物に大被害が見られた 8)これら3痺のドクガの1雌成虫あたりの産卵数は第5表の如くで,かなり多い方に属する 9)成虫の寿命はいずれも7∼8日位であるが,雌の方が1,2日長命の傾向が認められた 10)有力な天敵としてはヤドリバェ・科に属するものが3,4種存するが,伝染性のはげしい疾病も存するようで あった. 引 用 文 献 (1)松沢 寛:香川県医師会誌,1ちユ9,(1959) (7)緒方一・番:衛生動物8,98,(1957). (2)∵・ 藤井幸彦:防虫科学,25,41,(1960) (3)南肛仁博:農作害虫新説(湯浅・河田編),408− 412,東京一朝倉番店,(1952) (4)宮田舜徳・増住正明:衛生動物,8,100,(1957) 倍)森下哲夫:衛生動物,8,53,(1957). (6)名古屋市衛生局:本市に.おける毒蛾の発生と対策 の概況,32P,(1955) (8)・エ:衛生動物,9,116,(1958) (9)∵:衛生動物,9,208,(1958). ㈹ 尾崎畳夫:農作害虫精鋭,461−463,471−475, 東京一朝倉書店,(1951) 仰 斉藤孝蔵:森林昆虫学,114−115,東京一朝倉・沓 店,(1957) R‘sⅥm占In or・der to clarify the actualstate of appearance of the three species of urticating moths, EuPY・OCtis.Pava,E一Pseudocons♪ersaandE”SimilisinKagawaprefectur・eandtheir・eCO王0gicalcharactors, thisstudy wascarTiedoutextendinglrom1956to1960andacquir・ed the following results:
1)The time of appearance of the three species of moths was different each other,Theappearance
香川大学農学部単術報嶺
254
appear・anCe OfE..Pava was only oncein a year. Thelife・history charts of the three spedies are
Sbownin Fig.1.
2)E。Pseudoconspersa and E.similirs have9instars and 5instars respectivelyin theirlarval stage,althoughE.Pavahave15∼16instarsinthatstage..Thedevdopm占ntalperiodofeach stageof
these species was shownin Tab.1
3)AsthefoodplantsofE・♪seudoconSPcrsa,Thea si一乃enSis,Camellia Sasanqua,C・・jabonica!etC・ ar・e known and those of E.similis,Morus bombycis,SOme SpeCies of Sali’x,Plaianus orientGlis,
Quercus acuiissima,Di’os?.γrOS kaki,Elaeagunus Pungens,Punica gY’anaium,are Observedin general・ ThefoodplantSOfE..Pavaar占verynumerIOuSin vよrietiesand they reachmorethan40fami1iesand lOOspeciestoday.T申OughthedetailonthefoodplantsofE.jtavainthewoodinKagawapr占fecture is describedin thepresent paper・,about12species
Rosaceae,Legumi’nosae,Ericaceae,Pol.ygonaceae,Beiulaceae,etC.and about9specie去of fruit tr・eeS and agr・iculturalplants are greatly eaten by this species of urticating moth.E.jlava shows a con・
sider・able tendency of preference,although they eat var・ious plants belonglng tO the different fami1ies astheirIdevelopmentgoeson,anditseems thatitisduetotheir・physiologicalr・equir・ement.
4)The typicalphase of the wood wherIe the outbreak of E..Pava was seenin Kagawa prefecture
isshownin Fig.3.In general,thosewoods ar・e nOt早O deep compar’ativelyalthoughmanydeciduous
trees are growing.
5)Theemer・genCePer・iod of E.Pseudoconspersa wasJulyandfrom September・tOOctober,and that
OfE・Simili?aSthreetimesddr−ingayear,thatisJuly,AugustandOctoberい Buttheemergence o董ELjlavaふasonlyoncedurIingayearanditwasfromthebeginningofJunetothatofJulダ,.The
peako董軒emer’genCeOfE・PavawasthelatterpartofJune(22th∼29th)
6)Atthebeginningperiodoftheeinergenceof且.Pava,thenumber of themaleadultmothswas more than thatof thefemaleadultsin general,but at thelatter period,the number of thefemale adults was rather・mOr・ethanthatofthe males.Theperiodofrever・Salbf the sex:ratio cori・espOnded
to the middle of the emergence period o董this species
7)RecentoutbreakofE..Pavain Kagawaprefectur・eWere foundat2district,Teshima(Sh6zugun) in1958and6kawa(Okawagun)in1959..The damageinAicted on thewild and agriculturalplants
was comparatively great at both of the time.
8)The numberofeggslaidoutperfemale ofthese species of urticating moths was
greatanditisshownin Tab.5
9)TheloDgeVitypftPeadultmQthofthesespecieswasabout7∼8、daysinaverage,but the dur.a・ tion ofsur・viving ofthe female waslor・2dayslonger・than the male.
10)Astheimpor・tantenemiesagainst thesespecies ofurtic?ting motns,there were sopleinfectious diseasesalthough30r・4speciesof Tachirnidaeandsome‡‡ymenopter.ouspaf’aSiteswer’efoundinKagwa・