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知的障害児の運動探求

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(1)

知 的 障 害 児 の 運 動 探 求

保健体育

佐 分 利

Studing hlovement of A/1entally Retarded Child

IkuyO SABtlRI

1.は

じ め に

障害児教育が「 内在化」 に偏 り「 できる

Jこ

とだけを追 って しまいがちな傾 向(1)に対 して

,発

の主体 を子 ども自身 に返 し,「ヨコの発達」をも発達 と してとらえる9)考えは

,幅

の広 い学習指導 の可能性を示唆す る。 先回の「 知的障害児のダンス学習J●)では

, T養

護学校の中学部全員 (男子

5人

,女

7人

)を

対象に

,一

人一人の生徒の活動 を引き出す ことを 目標 と したダンス学習指導を行 った結果

,手

がか りとした運動課題への挑戦以外 にも

,生

徒の 自発的

,創

造的な運動探求が見 られた ことを報告 した。 能力別 に決め られた課題だけを練習す るのではない学習では

,ク

ラスの どの生徒 も自分の力を発揮 しなが ら友だちとかかわ り合い

,再

び 自分の力を確認 し発見 していた。 このダンス学習での方法, す なわ ち,「運動課題は学習の手がか りと し

,達

成 目標 と しない。能力混合 の クラスで同 じ手がか りを体験す ることか ら始める」は, ダンス以外の運動学習でも広が りのある学習の場 を提供できる のではないか と考え られ る。 今回

,先

回の報告での中学部一年生 (男子

3人

,女

2人

)の

三年生時のマ ッ ト運動学習でも, 手がか りと した運動課題である前方回転 を中心 に

,様

々な運動への取 り組みが見 られたので報告 し たい。

2.学

習 の 概 要 学習は

,岩

田の鳥取大学教育学部卒業研究6)と して

,1993年

T養

護学校三年生の

H子

の前転習 得への練習課題をクラス全員の学習 目標「 いろいろな回転をしよう

Jの

手がか りと して

6回

行 った ものである。

H子

,脳

性麻痺の後遺症と過緊張によって本人の意欲に比べ

,痙

性歩行

,運

動の協調性に欠け るなどの所見を得

,動

きがぎこちないとされている生徒である。

H子

は「か らだづ くり」をね らい とした養護訓練でのサーキ ッ トトレーニングに組み込まれた前方回転 (以下前転 とす る

)の

前半部 代

(2)

佐分利育代 :知的障害児の運動探求 分

,す

なわち両手で支持 して頭を中に入れ

,足

で床 を蹴 って

,背

中を丸 くして前 に転が る部分が5 人のクラスメー トのうちただひとりできないで

,マ

ッ トの前で止 まって しまっていた。

H子

の他の学習者

4人

のうち

,前

転の後半部分で床 に手を付かず起 きあが りまでをスムーズにで きるのは

A子

(ダウン症候群

)の

みで

,男

3人 , S男

(ダウン症候群

), T男

(てんかん

),U男

(プラダー・ ヴイ リー症候群

,肥

)は

いずれ も起 きあが りの後半部分は完成 してい るとは言えな いが

,前

に転がれ るということで「 できる」 と して自他 ともに評価 している。 精神発達 と運動発達 との関わ りで前転の運動発達を評価 している近藤14jによれば

,H子

の前転は

2∼ 3歳

,A子

以外の前転は

4∼ 5歳

の発達段階である。生活習慣

,社

会性 など他の発達 の評価 と 近藤 による表 を比較す ると

,

どの生徒 も手を着かず に起 き

,一

連の動作 と して行える段階の潜在能 力はあると思われ る。適切 な手がか りによ って「 できる

J段

階を固定させず

,次

の段階

,あ

るはさ らに幅広 い技の経験 に向けて探求を深め られ るはずである。 指導者は岩 田

, T養

護学校の教諭

2人

が指導補助 と してついて下 さった。佐分利 は指導補助 と し て第1∼

3時

の学習に参加 した。 学習の手がか りと学習経過は以下のようである。 第

1時 10月

25日 いろいろな「 回 る」 を手がか りにマ ッ トの上で も回 ってみ よう

2時 10月

30日 前転 を手がか りにマ ッ トの上でいろいろに回 ってみよう 第

3時 11月

2日 坂道前転 を手がか りに坂道マ ッ トでいろいろに回ろう

4時

11月 9日 動物歩 きを手がか りにマ ッ トの上でいろいろに回 ってみ よう 第

5時

11月18日 いろいろな場所での前転 を手がか りにいろいろに回 ってみ よう 第

6時 12月

22日 いろいろな場所での前転 を手がか りに好 きな場所で好 きな回 り方 を しよう 第

1, 2, 3及

6時

はクラス全員での学習ができたが

,第

4時

での学習の手がか りがあまりに も

H子

の腕支持 と

,蹴

りの練習を意識 した ものであったため

,学

習が進む中で

H子

とそれ以外の生 徒の能力別 グループ学習になって しまった。また

,第

5時

で も準備運動でのつ まづきが原因で

,H

子のみ個人練習になって しまった。第

6時

では

H子

も他の生徒 と一緒に様 々な場での回転運動 を体 験 した後

,

自分の好 きな場所 (遠くヘ ジャンプ して前転す るように 目標 となる線を引 いてあるマ ッ ト

)を

選んで練習 した後

,坂

道での前転では何度試みても成功 した。 第

1時

か ら

3時

では一つの運動課題 を手がか りに

,友

だちと交流 しなが ら多 くの運動が試み られ る学習活動が展開された。本報告では

,佐

分利が参加 した学習の最後にあたる第

3時

の学習を取 り 上げ

,観

察者が移動 しなが ら

H子

を中心 にクラス全体を撮 った ビデオを手がか りに

,生

徒 の運動探 求を分析

,知

的障害児のマ ッ ト運動学習における自発的な探求の可能性 とその意味を考察す る。

3.第

3時

における坂道前転 を手がか りに した学習での各生徒の運動探求

1.第

3時

の学習の流れ 学 習 目 標 マ ッ トの上 で 回 ってみ よ う 学 習 経 過 ウ ォー ミングア ッ マ ッ トで 回 る プ み ん なで い ろ い ろ な回 り方 をす る 一 人 で身 体 の い ろ い ろ な と ころ を回す 一 人 で い ろい ろ な回 り方 で 回 る 前 転 をす る 坂 道 で前転 をす る い ろ い ろ な回 り方 で 回 る

(3)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第

2号 (1995) 243

表1は

3時

の学習の流れである。図1から

5は

,第

3時

の学習のうち展開部分の各生徒の学習 を時間経過 に沿 って取 り出 した ものである。指導者が提案 した運動課題は 《》で

,指

導補助者が各 生徒 の運動学習の手がか りと して提案 した運動は

<>で

示 した。 また

,生

徒が友だちを真似た り, 友だちとの関わ りの中で一緒 に試 した運動を

[]で ,自

ら考え取 り組んだ運動を『』で示 した。

()

Oで

囲んだ数字はその運動の試技数で

,Oで

囲んだ数字は 自ら挑戦 した試技数を表す。

(1)S男

の運 動探 求 30 0指導者力潮謗引 (前転》(1)

lm石ふ

け 友

a%

く>指導補助者が│ [坂 になったマット上にねころぷ]① 成功 [拝

禁ら

│ <納

9替

!巻

古魅④

た技 1 指導補助者へ試技 を勧 める① ② 「J自 ら考えた技│ <手 と膝をついた姿勢での検転>(1) H子の前転練習をのぞき込む

⑪…謁醗贈

1

稲享

8翻

騨琥撃醍棚 議 ④

にろ

]W刈 ∞ … 自発備 謝 [マ ットを辞 網 助林 [腕側挙前転の まね]① 図

1,S男

の運動探求

S男

(ダウ ン症候群

)は ,マ

ッ トでの回転 の手がか りと して指導者が提示 した

,平

坦 なマ ッ トで の前転 を

1度

行 ったがその後

,本

時の学習の手がか りと しての運動課題「 坂道での前転

Jが

提示 さ れ

,他

の生徒が試技 してもその様子を見ているだけで試み ようとは しなか った。その理 由の一つ と して担任は,「視力が弱いため

,高

所の恐怖が強 く

,段

差 に弱い」 ことをあげている。 また,「友だ ちの動 きを見てか ら行動を起 こす」傾向にあるとの所見 もある。

a.連

続横 回 りでの坂道登 り降 り

S男

が再びマ ッ ト上に上が ったのは約12分後で

,U男

がマ ッ トの上に寝 ころんだのを真似 て 自分 もマ ッ トの上 に寝 ころんだ。そ して

,こ

の転が りを手がか りに指導補助である佐分利 (指導補助者

S)が

提案 した坂道での横転 を

S男

は受け入れ

,最

初 の

1度

だけ補助 を受け坂の上か ら下へ転が っ た。上か ら下への横転 に続 き

, S男

はそのまま坂 の下か ら上へ転が り登 った。指導補助者

Sが

「 す ごいす ごい」 と誉めると

,再

び横転で坂を下 り

,そ

して登 った。 横転 による坂の下 りと登 り

,す

なわち運動を反対側 に繰 り返 して行 う発想は

,第

2時

の学冒で S 男が

T男

や指導者 に命 じて『 前転 と後転 を繰 り返す (写真

1)』

,『筒 になった補助マ ッ ト上 に

T

男を腹這いにならせ

,H子

A子

を指導 してマ ッ トを一緒に転が し

,反

対 にも転がす (写真

2)』

, 『 補助マ ッ トを越えて前転

,後

転で補助マ ッ トを再び越 える (写真

3)』

など盛んに試 していた も のである。 そ して「

S君

考えたの

(H子

)」 「

S君

や って

,教

えてよ

(U男

)」 「注文が難 しいね (指導補助者)」 な ど認め られ賞賛を得ていた。第

2時

での

S男

は 自分が運動そのものを試技す る というよりも, 自分の発想 を次 々と指導者や

,友

だちに指示 して試技 させ

,ま

た補助 も手伝わせ て いた。それを今回は横転での反対方向への繰 り返 しという自分の運動探求の中で試 したものと して 興味深い。 傾斜を横転 で転が り登 ることをこの時 も指導補助者

Sに

勧めている。転が り登 るのが下手 な指導 補助者

Sの

試技の後で

, S男

はもう1度横転での下 りと登 りを繰 り返 した。

(4)

佐分利育代 :知的障害児の運動探求

写真

1.前

転 と後転の繰 り返 しをT男に指示する

写真

2.補

助マ ツ ト上での腹遣いをT男に指示する

││

■ど狩

(5)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第

2号

(1995) 高 さへの感覚 になれ ることへの手がか りと して手 と膝で支持 した姿勢で横転で坂を下 りることの 指導補助者

Sの

提案に応 じたが

,す

ぐに手足 を仲ば した横転で登 って返 った。

b.腕

側挙前転補助 左腕の支持力の弱さもあ って頭 を入れ られ ない

H子

に対 して指導補助者

Sが

腕側挙での前転 を提 案 した。行 き詰 まっていた前転か らの気分転換の意味もあ った。指導補助者

Sが

見本を示 し

,そ

の 際に

H子

S男

に指導補助者

Sの

手を持 って補助 して くれ るように依頼 した。指導補助者の見本は

2回

行 った。

1回

目の指導補助者

Sへ

の補助では

,前

転 の勢 いに振 られて

H子

は手を離 して しまったが

, S男

はやは り振 られてはいたが手 を離 さなか った。そ して

2回

目の補助では

,今

度 も手を離 した

H子

に 対 して

, S男

は前転 の動 きについて手を前 に運んでいた。補助の意味を理解 し

,試

技者のタイ ミン グに合わせ て動 くこともできた と評価できる。

H子

が腕側挙での前転 に挑戦 した

, S男

にとって

3度

日の補助では

,さ

らに

,回

転の方 向に手を 引 っ張 り

,H子

を回そうとす る様子が見 られた。

H子

が頭を入れ られ ないので指導補助者

Sが

もう1度見本を行 った。

S男

4回

目の補助は

,回

転 に合わせ て自分も移動 しなが ら手 を引 っ張 るという力強いものであ った。 続 いてマ ッ トに上が った

H子

に対 しては

,手

を握 っていつで も引 っ張 ることので きる体制で待 っ た。 しか し

H子

,頭

を入れ られず

,腕

側挙での前転の試みは失敗 に終わ った。

Ct坂

道での前転 坂道での横転の後

,指

導補助者

Sよ

H子

の坂道での腕側挙前転への補助 を依頼 され応 じたが, 後は

H子

と指導補助者

Sが

頭 をどう入れ るか話 している間

,H子

の横に座 っていた。 しば らくして, マ ッ トのは しに手をや ってか ら立 ち上が り, 自ら坂道での前転 を試みた。

S男

の坂道前転の自発的な試技は

, 1度

目は頭 を入れ られ な くて前 に転がれ なか ったが

,続

いて の試技では成功 した。

S男

が坂道前転 にそれ まで挑戦 しなか った理 由が祝力の弱さによるものであ るとす るなら

,横

転運動 によってか らだで坂の高さ経験す ることで高さへの恐怖 という課題 を解決 できた とと らえ られ る。

S男

のこの試技は

,坂

道での前転が学習の手がか りと して示 され てか ら約 20分後であ った。

d.マ

ッ トを引き上げる補助の発見

H子

への補助 坂道前転 に成功 した

S男

H子

が指導者 と指導補助者の補助を受けて坂道での前転 を練習 してい るのをのぞき込むようにマ ッ トの横 に座 って見ていた。そ して

H子

が腰を高 くできず頭を手の中に 入れ られないのを見なが ら

,マ

ッ トの横 に付いている持 ち手を引き上げる動作 を繰 り返 した。次に, 突然立 ち上が って

H子

の後 に行 き

,そ

の足下のマ ッ トを両手で持 った。

H子

の補助 に付いていた指導者 と指導補助者

Sが

そのアイデ ィアを認め

,H子

も「

S君

,頭

いい」 と納得 して

, S男

の考案 による補助での

H子

の試技が行われ ることになった。

S男

,H子

が足を蹴 るタイ ミングに合わせてマ ッ トを引き上げ

,そ

のけ りを大 き くす ることで

H子

の腰を高 く上げ

,頭

を入れやす くす るという補助 を考案 した。

H子

の腕 は指導者 と指導補助者 が補助 し

,こ

S男

考案の補助で

H子

は左 に傾 きなが らではあるが前 に転が ることができた (写真 4)。

S男

の この補助 の探求 を追 ってみ ると

,実

はマ ッ トの持 ち手 を引 き上げ て考 え る以前 に

S男

が補 助 の探 求 を始 めていたので は ないか と解釈 で きる行動が あ った。それ は まず

,補

助 を行 うす ぐ前 の

(6)

246 佐分利育代:知的障害児の運動探求

写真

4 S男

のH子への補助

写真

5-l S男

のT男へ の補助

(7)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第

2号

(1995) 坂道前転の 自発的な試行 と思われた行動である。 と らえ方 によっては

1度

目の失敗が

H子

ので きな い状態の模擬試行で

, 2度

目に行 った成功例で

H子

の前転 に足 りない ところ (すなわち足 のけ り) を確かめた と考え られ る。同 じように

, S男

自身の坂道前転 に立つ前 にマ ッ トの端を引 っ張 った こ と

,指

導補助者 と

H子

が話す傍 らに座 っている時の様子

,さ

らにその前の指導補助者 に依頼 され て

H子

の補助 を前 に転がれ るように手伝 った時 まで

,補

助への課題解決 の過程 と してさかのぼ ること ができた。 も しそう考えることができるとすれば

, S男

は課題 を順序 を追 って思考 し解決す る力 を 持 っていると言える。少 なくとも

,H子

の前転 に欠けている力を発見 し

,そ

の克服法を見つけ

,別

の道具で予備実験 して試 してか ら

,本

番で試 して成功す るという力を持 っていることを見せ て くれ た。 しかも

,H子

の運動のタイ ミングに合わせて 自分の運動を行 うという正確 さと

,H子

に必要 な 強 さで

H子

のけ りを補助 している。 腕側挙前転

,今

回の補助 とも

, S男

が運動 を理解 し

,必

要 な力を予測 して補助す る意味 も理解 し て

,そ

れを実際 に行 う力を持 っていると言える。 ②

T男

への補助

H子

へのこの補助を見ていた

T男

に依頼されて

, T男

にも補助 し

,良

いタイミングでス ピー ド感 のある前転を体験させた (写真

5-1, 5-2)。

また前転の後

, T男

の横回りに対 しても同 じ要領 で

2度

補助 し

, T男

の連続横転の探求を助けている。 ③ 指導補助者への補助 指導補助者も依頼 し

S男

の補助を受けた。

S男

のマ ットを引き上げるタイミングは誰を対象 とし ても

,前

転の動きを妨げないものであった。

S男

は見つけた技術を繰 り返 し試すことで着実に自分 のものとして獲得 していったものと思われる。

T男

と指導補助者への補助の直後も

A子

が違う回り方に挑戦 したいか ら補助は しないで くれと断っ たときも密かにマ ットを引き上げる真似をして笑うという行動を見せたり

, 5分

ほど後で

H子

が前 転練習を しようとしている時にも再びこの補助で助けようとした。そ して指導補助者である担任 に 補助を止め られた後,「ころりんてゆけ

Jと

声をかけて応援 した。

(1)T男

の運動探求

T男

にはてんかんの所見があり

,小

発作に見舞われたときに動きが止まり急激な落ち込みと見え ることがあるとのことだが

,運

動学習ではエネルギ ッシュで

,興

味を持 っていろいろなことに挑戦 する。 しかも繊細で柔軟な動きや気配 りも見せる。 《》指導者が提案 した技・課題 <>指導補助者が 提案 した技 []友だちか ら得 た技 rJ自ら考 えた技 (1)・・課題練習 ③ ②・・ 自発練 習 《前転)(1)[H子の補助](1) ② ↓ く左手を着かないで起きて> 蜘 転) (1) ↓ 「坂になったマット上で弾んでから前転J①(2)成功 『夕・イナミッタな開脚前転J ↓ ③ ④ 『後転J ① [S男 の考案 した補助で坂道前転]① 「S男 の考案 した補助で2回鋤 転J O② ←『 3回 に挑戦J 「マットの坂を高くするJ① 「止まるだけ―よJ (登坂前転》 r2回 連続』①<左手!>│ 『夕・イナミックな開脚前転連続J① ↓ ↓ <腕側挙片足前転>(lX2)⑨Э 勢いをつけて ↑ 「頭くるっと回ったぞ」と評価→『片足踏切前転』① 図

2.T男

の運動探 求

(8)

佐分利育代!知的障害児の運動探求 一年生時のダンス学習での

T男

,並

べた傘を大 きな連続 ジャンプで跳び越 し

,傘

と傘の間隔を 測る九帳面さを見せ “

),即

興 のダ ンスではゆ っくりと した音楽に呼吸を合わせ なが ら手を広げ浸 り きって踊 る様子が印象的であ った。今回のマ ッ ト運動で もやは り

T男

のダイナ ミックな運動探求が 見 られた。

ai前

転補助

H子

が前転 を始め るとす ぐに

H子

にかけよ り

,U男

を真似 て

H子

の手を押 さえる補助をか って出 た。 この補助は

,第

2時

U男

が指導者 とともに行 っていた補助の仕方で

,そ

の時

H子

が前転 に成 功 していている。補助を通 して

,腕

の支え

,頭

を入れ ること

,お

尻を高 くす ること

,足

を蹴 ること を

H子

に伝え る

U男

と共 にそれ らを言葉 と して繰 り返 しなが ら

,H子

の試技を共有 し内的体験 を重 ねている様子が見 られた。

b.前

H子

への補助の直後 に行 った最初の前転は, これ までの単発の前転 に比べ上体の返 しが速 く

,か

らだ全体 のまとま り感があるものになっていた。

T男

は第

2時

の最後 に発表 した「 各人の最高の技

Jで

,

自らマ ッ トの枚数を増や して長 くし, 誰よりも多い回数

, 7回

の連続前転 を行 って応、ら応ゝらになった。速い上体 の返 しは連続前転の中で 獲得 したと考え られ る。 また

,H子

の補助を通 してのイメージ トレー三 ングが最初の試技への準備 になっていた とも考え られ る。

c.坂

道での前転

T男

H子

の前転学習のために提案 された坂道での前転では

,誰

よりも早 く行 った。そ して次 々 と友だちの学習 とかかわ り合いなが ら自らのダイナ ミックさという良さを仲ば している。

d.H子

への補助

U男

とともに

H子

の試技を補助 して

,平

坦 なマ ッ トでの補助を深めてい る。 この坂道での

H子

の 前転試技 には クラス全体が集ま り補助 した りのでき込んだ りしている。

e.両

足跳ぴか らの前転

H子

への補助に続いて

,坂

の頂上で両足ではずんでか ら行 うというダイナ ミックな坂道前転 を行 っ た。回転前半の勢 いに対 して後半は身体が開き

,左

手で支えて起 きあが るものになった。 指導補助者

Sの

「 左手を着か ないで起 きて」の指摘 によ り再び挑戦

,上

体をス ピー ドに合わせ て 起 こ し左手を着かず に両足で立 ち上がるところまでできた。「左手を着かない

Jこ

との意識は上体 を引き起 こす力になったと見 られ

,T男

にわかる手がか りだ った といえる。

T男

は先 々回 (第1時

)の

前転では片手を着 いて起 きている。前転後半 の技術が獲得できた と言 える。 また

,飛

び込み前転系の両足跳びを してか らの前転へのフ【戦は前時 (第

2時

)に

始 まっている。 円筒のマ ッ トを飛び越 して前転を しようと して

,頭

を入れ られずに顔か ら落 ちている。円筒のマ ッ トを置いたのは

T男

,そ

れ を超えての前転 の発案 も

T男

である。 この発案はす ぐに

S男

に取 り入 れ られ

, S男

が指導者 に指示 してさせた円筒マ ッ トを越 えなが らの前転 と後転 の連続 に発展 した。 この

S男

に指示 され ての指導者の試技を見た後

T男

は再び円筒マ ッ ト越 えの前転 に挑戦 し

,そ

れを 成功させてい る。最初の試技か ら

2分

後であ った。

T男

の発見が

S男

のアイデ ィアを引きだ し

, S

男のアイデ ィアによる指導者の試技が

T男

の運動への ヒン トを与えたといえる。

f.S男

の補助 による坂道での前転 と横転

T男

は好奇心旺盛である。

S男

H子

のために考案 した

,足

下のマ ッ トを引き上げ る補助を 自ら

(9)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第

2号

(1995)

S男

に依頼 してその補助での前転 に挑戦 した (写真

5-1, 5-2)。

タイ ミングいい

S男

の補助でス ピー ド感のある前転ができた

T男

は「 軽 いよ。軽 いよ」 とその感 想 を回に し

, S男

の補助の効果 を友だちに知 らせた。 さ らに

, S男

の補助 によるス ピー ド感 を活か しての連続横転 を考え

, S男

に補助 を頼んで

2度

挑 戦 している。その1度日は

2回

連続 の横転

, 2度

日は「

3回

連続」 と 目標 を回に して

4回

続けて転 が った。

2度

目の試技では

2回

転 した ところで位置がずれてきたが

,そ

れ をよい位置に戻 して3回

4回

と転が った。

T男

が補助を依頼 した ことで

S男

の補助が評価 され

,技

能 と して定着 した。そ して

T男

の運動探 求にもつなが っている。

g.坂

を高 くする

S男

の補助のアイデ イアを ヒン トに したのか

T男

,一

番上に しいてあるマ ッ トを半分に折 り坂 の頂上に引き上げる。「 考え るんだ よ

Jの

T男

の言葉 に指導補助者が「 も っと高 くす るの

Jと

聞 く と「 うん」 と答える。指導者が手伝 い下 にマ ッ トを入れ

,高

い坂を作 る。 さ らに指導者がマ ッ トを なお したが

,そ

のことで

T男

の次の行動が止め られたようになった。指導者が学習者の行動の何を 理解 し

,何

を手伝 うか問題である。学習者の考えている日標がよ く見えないままに今の行動にのみ 手 を貸す ことが学習者の行動 を止めて しまうこともあるのではないか と思われ る。

h.跳

んで前転か ら開脚前転ヘ 坂の頂上で片足跳び と両足跳 びを行 った後,「こうや った らこう

,頭

か らこう」 といい

,前

転 を 行 った。前転か らす ぐに後 ろへ倒れ

,ゆ

りか ご運動のように反動を使 って両脚 を高 く上げて戻 った。 腕側挙片足前転 に挑戦 している

A子

の試技の後

,真

似す るように両手を広げてマ ッ トにつき

,開

脚で手の支持 な しに起 きあが ると

,続

けて

2回

目の開脚前転 を行 った。 ダイナ ミックな

2回

連続開 脚前転だ った。

iJ登

坂前転 指導者の提案 による

,坂

道 を上 ってい く前転 に対す る

A子

の挑戦の見て

, T男

も試みたいとの意 志を見せ

,マ

ッ トの坂の下 にス タンバ イす るが なかなか順番が回 ってこない。「

U男

君 どけて

Jと

言 うが

U男

に先を越 され

,足

を踏み ならして

A子

に「 どけて

Jと

主張す るが腕側挙前転 の練習 に必 死の

A子

にもまた先を越 され る。それでも

A子

の試技に合わせて「 ごろん ごろん

J声

をかけて待ち, ようや く順番を獲得す る。

S男

と協力 してずれたマ ッ トを直 した後,「こっちか ら行 くぞ。危 ない ぞ

Jと

両手を広げてみんなにア ピール し

,坂

の下か らの前転 に挑戦 した。 スムーズに起 きあが ることはできないが力を込めて体を起 こ し

, 2回

日の前回 りに入 る。

2回

目 の着地は坂を上 りき って頂上を越 して床の上だ ったが, しっか りと起 きあが った。

j.ダ

イナ ミックな連続開脚前転 腕側挙前転 に挑戦 していた

U男

が「 できた」 と指導補助者 に報告 し

,A子

が拍手 して「 できたで きた

Jと

認めているのを見て

T男

は,「俺のはす ごいんだぞ

Jと

主張 し

,U男

を どかせてダイナ ミッ クに腕 を回 しなが ら連続 の開脚前転を見せた。

k.腕

側挙片足前転 ダイナ ミックな開脚前転 を見せた

T男

,指

導補助者

Sが

腕側挙前転 を提案す る。勢いをつけ, 腕を前 に仲ば して起 きることを指導補助者

Sは

つけ加えた。1回日の試技はまとまった前半に比べ, 後半で左手を着いて起 きようと した。 「 左手」 と指摘 し

,指

導補助者

Sが

T男

を真似てみせ ると

, 2回

目は指導補助者

Sが

足 を前後に 249

(10)

250 佐分利育代 :知的障害児の運動探求 開き勢 いをつけているのを真似 して試技 した。 しか しお尻がマ ッ トか ら上が らない。 「 止 まるだけ―よJ「見てよおか しい」 と言い

,も

う一度勢いをつけて回る。

S男

がマ ッ トを引 き上げて少 し上げて くれ るが うま く上体 を起 こせず,「こうや って

Jと

止 ま って しまうことを訴え た。 この訴えに対 しては指導者 も指導補助者 も助言を していない。

l.片

足で踏み切 つての前転 指導補助者

Sが

異 なる前転 の連続 を

A子

に提案 していると

, T男

は「 手 な しでか

,手

あ りでか」 と聞き意欲を見せ る。そ して

A子

の試技 の後,「俺の見とれ これだぞ。 いいか行 くぞ」 と片足で踏 み切 って大き く前転 した。お尻はついていたが「 頭 くるっと回 ったぞ」 と回転後半 の感覚 を 自己評 価 した。

(3)A子

の運動探 求

A子

(ダウン症候群

)は

負けず嫌 いで何事にも一生懸命取 り組 もうとす る意欲があるとの担任の 所見通 り

,前

年のダンス学冒でも熱心 に新 しい運動に取 り組んでいた。 自由なダンスでも リズ ミカ ルに楽 しそうに踊 るが

,真

似 され るとやめて しまうところもあ り

,友

だちと動 きを真似 し合 って楽 しむ ことや

,友

だちと一緒 に見つけ ることはあまりなか った。運動能力が高 く

,友

だちの真似 より も指導者の運動に挑戦す ることや, 自分で見つけた課題 に挑戦す ることが多い。 前転 は両手を前に出 して起 き上が ることができる。第1時では膝は離れ ているが両足をそろえて 起 き上が り

, 2回

連続の前転 を行 った。第

2時

では脚 もそろえて

, 4回

の連続前転 もス ピー ド感 を 持 って正確 に力強 く行 った。手で支えることはできないが手を使わず に後転 も行 った。

H子

の前転 学習の手がか りを

A子

の興味あるものと していかに提示 し

,運

動探求の意欲 を持たせ続けるかが問 題の一つである。 図

3.A子

の運動探求

ai坂

道での連続前転

H子

の前転探求に対 して

A子

はそばに座 った り

,の

ぞ き込んだ り,「がんばれ

Jと

声かけ した り はす るが

, S男

T男

,U男

のように直接手を出 して補助 に回 った りは しない。 自分の技術 に対 し ては意欲旺盛であり

,み

んなのや ることくらいはできるという自信 もある。 坂道での前転が指導者か ら提示 され て

, T男

U男

が興味を持 って取 り組んで もす ぐには取 り組 まなか ったが

, T男

が坂の上で跳んでか ら回るという勢 いのある前転 を見せ

,指

導補助者か ら指摘 されて

,手

を着かないで起 き上が る練習を した直後, 自分 も勢いをつけて坂の上か ら前転 し

,膝

が く》指導者が提案 した技・課題 <>指導補助者が 提案 した技 []友だちか ら得 た技 『J自ら考えた技 (1)・・ 課題練習 ③ ②・・ 自発練 習 『回転途中で開脚』 『連続』① ↓ (1)での失敗を受け 指導補助者は く坂での開脚前転)(1) ② ③ 踏切足を変更 して 評価 したが満 齢 FBW前転》(1) 頭を入れる練習 足できない <腕側挙前転>(1)② ③ 『連続J④ ⑤ ↓ ↓ く腕側挙片足前転>(1)② 「連続』③ ④DD⑦ E横転・坂道往復]① ↑↑ 自己評価「ちょっとできた」│ 「 これできたでJ指導補助者へ 《登坂前転)(1)② <異穏前転連続 >(1)

(11)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第

2号

(1995) 251

伸びきるくらいに立 ち上がるとそのまま続けて

2回

目を回 った。

T男

の課題であ った

,手

を着か な いで起 きることはもちろん達成 しさらに

,ジ

ャンプでつけた回転の勢いを坂道の傾斜 によ って増 し, その勢 いを両脚で しっか り受けとめ

,平

坦 なマ ッ トでは得 られ ない起 きあが りの力に変えていた。

T男

が見つけた課題

, T男

が注意 された課題 を 自分のものに して取 り組み

,達

成感を得 た運動探 求 ととらえ られ る。

b.坂

道での開脚前転 指導者が開脚前転 を提案 し師範 してみせ ると

A子

はす ぐに挑戦 し成功 している。指導補助者

Kが

開脚前転での

2回

連続 を見せ ると

,こ

れ に誰 よ りも速 く挑戦 したのが

A子

,回

転後半で少 し足を 寄せ なが らではあるが成功 している。

ci坂

道での腕側挙前転 勢いのある前転

,開

脚前転の成功 より

,指

導補助者

Sが

手で支持 しない

,腕

側挙前転 を提案 し,

2度

師範 した。

U男

が挑戦 しようと したがため らい,「

Aち

ゃんや ってよ」 とマ ッ トを降 りた。そ れ に答え挑戦 し

,起

きあが りは両足でであるが

,成

功 した。

A子

の成功を受けて

U男

も挑戦 した。

A子

はこの後1分後 と

, 1分

50秒

後 にも腕側挙前転 に自主的に挑戦 している。特 に

3度

日の挑 戦では

,マ

ッ ト上の

S男

を退かせての試技で

,両

足での起 きあが りではあるが成功 した。

A子

の成 功 を受けて

U男

も挑戦 した。 さ らに

,開

脚前転 と横転の練習をはさんで約

5分

後 には

,腕

側挙前転を

2回

続けて回る連続技 に 自ら挑戦

,成

功 し

,指

導補助者や友だちか ら「 うまい

Jと

の評価 を受けている。そ してその

3分

後 にも

2回

連続 の腕側挙前転を行 っている。

d.A子

流の開脚前転

A子

がb.で 行 った回転後半で足 を少 し寄せた開脚前転が

,脚

をそろえた仲膝で手 を着 き頭 を入 れて

,回

転途中で開脚 し

,脚

を閉 じて起 きるという明確 な運動 と して出現 した。

回転 し終わ った

A子

は「 エヘヘ ン」 と指導者 に向か って笑 った。 この

A子

流の開脚前転 を

,A子

は先に開脚前転を提示 して くれた指導者 に見せたか った。 しか し指導者は

,指

導補助者

Kに

指導 さ れ て壁例立を している

H子

を見ていて

A子

を見ていなか った。

A子

は「 これ もできた しなあ

,足

こ う しても

Jと

指導者 に訴え

,注

意 を引 くように した。「 す ごいな。 もう1度や ってみ て」 という指 導者 の言葉 に

,再

A子

流の開脚前転 を行 った。

e.腕

側挙片足前転への自己練習

A子

C.で

の連続の腕側挙前転 のスムーズな試技 に対 して

,指

導補助者

Sは

足 を前後 に して頭 を入れ る

,片

足での腕側挙前転を提案 した。 これ に対 して

A子

は「 あ

,そ

うか

Jと

答 え試技 しよう と したが

, S男 , T男

,指

導者がマ ッ トを直そ うと していたためす ぐにはできなか った。 しば らく 待 っているが指導者がマ ッ トを丁寧 になお しているため待 ちきれず,「

S先

生 に教 えて も らったの や りたい」 と主張 し試技 した。 まず

,足

を前後にす る際に左足 を前に して回 ったが右側 に傾 いて転が った。 この結果を

A子

は, 指導者 らがなお して高 くしていたマ ッ トの坂のせ いだと主張す るかのようにマ ッ トの高さを「 減 ら して」 と言 った。 しか し

,そ

う言いなが らもマ ッ トの横の床の上で

,今

度は右足を前に して

,頭

を入れ る練習 を行 っ ていた。左足 を前に したせいでバ ランスが とれ なか ったとの 自らのフ ィー ドバ ックによる練習のよ うであ った。 マ ッ ト上での次の試技は

,右

足を前に して行い

,傾

かずに成功 してそのまま手で支持 しての前転

(12)

佐分利育代 :知的障害児の運動探求 を続けて行 った。「 や ったあ」 との 自己評価を行 った。 指導者が提案 した

,坂

の下か らの登坂前転 に

2度

挑戦 した後

,も

う一度片足での腕側挙前転 の連 続 に挑戦

,今

度は

,起

き上が るときも片足づつで

2回

目の前転 も手を使わず に行 った。

S男

は, こ の

A子

の試技 に合わせて,「ごろん

,ご

ろん

Jと

声をかけた。 指導補助者

Sは

「 うまいうまい

Jと

評価 した後

,起

きあが りの時に片足を着かないで起 きる腕側 挙片足前転をさ らに提案 し

, 2度

試技 した。 これ に対 し

U男

も興味を示 し

,挑

戦 した。

A子

,左

足を前に して

,右

脚 を仲ば したままで前転 し膝を曲げた左足 と仲ば した右足で起 き上がろうとす る が右足がつかえて勢 いが止 まり難 しい。「 エヘヘ」 と失敗 を笑いなが らも手を叩き

,楽

しそうであ る。だが

,指

導補助者

Sが

「 いい

Jと

評価す ると不満そ うに壁 によりかか った。

S男

U男

,H子

の挑戦の間

,隣

のマ ッ トで練習 し,「ち ょっとできた

Jと

みんなのところへ戻 っ て

,試

技の準備 を し「 これで きたで」 と指導補助者

Sを

見た。そ してその言葉通 り

,片

脚 を仲ば し たままで起 き上が り

,そ

のまま続けて

2回

目の前転 を行 い起 き上が る際には仲ば した片脚が上が っ ていた。

A子

の片足での腕側挙前転連続 は完成 した。指導補助者

Sの

「 そうそう」の言葉 を今度 は 満足そうに受けた。

U男

A子

の成功 に刺激 され て腕側挙前転 に挑戦 し

,U男

のそれ までの試技の中で最 もうま く行 き「 できた

Jと

得意顔で指導補助者

Sに

告げているのを見て

,A子

は「 できたできた」 と

,片

足跳 びを しなが ら体を反 らし手を叩いて喜んだ。それ まではあま り友だちのことに関心を示 さない

A子

だ ったが

,

自分の技 の完成で友だちの成功 も喜べ る余裕ができた と思われ る。 片足での腕側挙前転の一連の練習において

A子

,運

動を要素に分け

,足

での支持を確保す ると いう課題を持 っての練習や

,他

が評価 しても自分で評価できないことは解決 まで追求す るなどの運 動探求を見せた。

f.横

転での坂道往復

S男

が, 自ら考え出 した横転での坂の下 りと登 りの試技を

,指

導補助者

Sに

指示 して行わせ てい るのを見た

A子

は, 自分 も真似 して横転での坂道往復 を行 った。

g.異

種前転連続 この時間にできた

,前

,開

脚前転

,腕

側挙片足前転 を連続す る指導補助者

Sの

提案に挑戦す る が

,課

題 に対す る理解ができなか ったようで

,そ

れぞれ区別の付かない前転 になった。

(4)U男

の運動 探 求 (前転)(1)「H子の補助』① ② ↓ 蜘 転) (1)② く坂での関脚前転》(1) <通的と瞬陣F陣嵌>(1)② <腕側挙前転>(1) ↓ 「痛か ったよ。 マ ッ トに寝 ころぶ 「 S君 手なくても できる?や って 肘、手首を内に入れて みてJ ↓ ↑ ② ③ ④←「できたJ ↑ 首力ヾ キ7ていうよ」 腕を広げて「手lRtしで やったよJ <背 中から跳んでマット上に転がる>(1) く》指導者が提案 した技・課題 く>指導補助者が 提案 した技 []友だ ちか ら得 た技 『J自ら考えた技 (1)・・課題練習 ③ ②・・ 自発練 習 図

4.U男

の運動探 求

(13)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第

2号

(1995) 253 プラダー・ ヴ ィリー症候群。 ロー レル指数

274(中 1時 )と

いう肥満であ るが

,運

動は好 きで, ダンス学習でも楽 しんで取 り組んでいる。運動の持続 により疲れを感 じた ら, 自ら床 に寝て調節 し, 再び運動の中にはい ることもできる。 ダンス学習では, 自由に踊 る内容で

,床

に寝ていたが,「寝 てもできるねえ

Jの

指導者 の言葉 に

,仰

向いて寝たまま腕や脚 を動か して踊 り

,や

がて起 き上が っ てランニングか らジャンプというダイナ ミックなダンスを見せた(D。 また

,人

の面倒 をよ く見 ることもでき

,今

回のマ ッ ト運動でも

,H子

の補助 をか って出るなど友 だちを励ます ことができる。ただ度が過 ぎて

,で

きない子を焦 らせた り

,非

難 して しまう結果 にな ることもある。

a.前

転補助 第

2時

の学習で

,指

導者 とともに

H子

を補助 して前転 を成功 させ ている (写真6)。 その経験か ら

,H子

が前転 を しようと してマ ッ トの前 に来 るとす ぐにその支持手 を押 さえた補助 に着 く。

T男

が真似を してもう一方の手 を押 さえると

,H子

に対 して,「頭を入れ て

,お

尻高 く

,け

Jと

声 を かける。腕を補助 し,「頭 を入れて

,お

尻を高 く」す る事は

,腕

の支持力が弱 く

,過

緊張のためか, 頭の後ろをマ ッ トにつけ ることのできない

H子

に対 して指導者が言 ってきた言葉である。 また

,第

2時

H子

が前転 に成功 したとき「足をけ ったの

Jと

成功の時のフ ィー ドバ ックを行 っていたのを 覚えていての「 ける

Jと

いう言葉かけであ った と思われ る。 前時での補助を繰 り返 して行えた こと

, T男

に補助を教えることができた こと

,H子

に適切 な言 葉かけ

,特

に前回の成功時に

H子

自身が体感 した「 ける」 ことを助言できているなど

,技

能 と して 補助が身に付いたものと評価できる。 写真

6.U男

と指導者の補助により成功 したH子の前転 (第2時)

b.坂

道での前転 指導者がマ ッ トの一方 を高 くして坂道を作 りそれを利用 した前転 を提案 した とき

, T男

に続 いて す ぐに挑戦 した。そ して,「面 白い」 と言うと再度挑戦 した。

C.坂

道での前転の補助

2度

の試技で

,坂

道での前転のおも しろさを味わい

,H子

に対 して「やれ

,や

Jと

誘 うと

,補

助 に回 った。

U男

が左手を支え

, T男

が右手を支えた。

S男

A子

がので き込み, クラス全員で

H

子の前転に挑戦す ることになった。

H子

は手への補助にも関わ らず, また

,坂

で腰の位置が高 くなっ ているが頭を入れて前に転が ることができない。

(14)

254 佐分利育代:知的障害児の運動探求 指導者が

,手

の位置を示す手形 をマ ッ ト上に置いたが

,H子

の腕が崩れ て

,頭

の後 ろをマ ッ トに つけるまでいかない。 ここで一旦

H子

の坂道での前転 は中止 され る。

d.坂

道での開脚前転 指導者が坂の上か らの開脚前転 を提案 した。手の支えを少 な くして

H子

の頭 を入れやす くしよう とのね らいも含 まれている。指導者の提案に「 やめてよも一

Jと

,最

初に反応 したのは

U男

だ った。 新 しく少 し難 しそうなことに対す る反応のようである。

A子

が挑戦 し

,成

功す るとす ぐに

U男

も挑 戦 したが

,体

を起 こせず にマ ッ ト上 に仰 向けに寝 て しま った。「 あいた」 と

,

どこかが痛か った こ とを告げた。 指導補助者

Kが

坂道での開脚前転の連続 を見せ ると

,A子

の挑戦 に続 いて

U男

も挑戦 した。先の 試技で

,上

体を起 こせ なか ったが

,連

続 を試みた勢 いか らか

,今

回は上体 を起 こせ ることができた。 自ら,「できた」 と評価す ると再度連続の開脚前転 を行 い

,

この試技で も上体 を起 こす ことができ た。そ して再び「 できた」 と評価 した。

U男

,最

初の開脚前転で上体 を起 こす ことができなか った。 この結果 を 自己の課題 と して持 っ ていたか らこそ

,連

続の開脚前転の試技で「 できた

Jと

評価 した。 しか もその結果 を再度確かめ る 試技を 自ら行 っている。連続 を試行 したときのス ピー ド感を

,上

体を起 こすための技術 と して意識 的に使 ったと思われ る。 ただ

U男

は前転を上体 を起 こす までの技 とと らえてお り

,足

の裏で立つ ところまでを回転 の中に 入れていない。 したが って連続での前転 も

,お

尻 を着 いた姿勢で1回目を終わ り

, 2回

目は手を着 いてお尻 を上げてか ら改めて行 っている。前転前半の転が りができない

H子

はできないと して 日立 つが

,U男

のように後半が うま く行かない子 どもはで きない子と しては 目立たず

,そ

のために運動 探求に対す る手がか りを得 られ に くいままで過 ご していたのではないか ということが一つの指導の 課題 と して上げ られ る。

e.坂

道での腕側挙前転 指導補助者

Sが

,腕

側挙による前転 を

2回

行 って見せた。 これ に対 して再び「 やめて。 もう」 と 言いなが らも試技 しようと してやめ,「

Aち

ゃんや ってよ

Jと

A子

に依頼 した。

A子

が応 じて

,成

功す ると

,す

ぐに挑戦 した。腕 を開き

,手

の支持 な しで前 に転が ることはでき たが体を起 こす ことはできず,「かたいで しょう。痛か ったよ

Jと

言い

,首

の後 ろを押 さえなが ら, 「 首がポキ ッていうよ

Jと

訴え

,マ

ッ ト上に寝転が った。腕側挙前転への挑戦 は一旦 ここで終わ っ た。 約12分半後

, S男

の補助 による

H子

の前転成功

, T男

の開脚前転

,A子

の腕側挙片足前転 の練習 な どが始 まると

,再

びマ ッ ト上 に上が った。

T男

が坂 に下か ら登 ってい く前転 を しようと して, 「

U君

どけて」 と頼むが

,坂

の頂上か ら手首を内側 に曲げての前転 を行 う。手の支持 な しでの前転 の練習か と思われ る。

A子

が腕側挙片足前転 の練習 を しているのを見て,「

,い

まの。ねえ

S君

できるあれ」 と声 を かけると

,

自らマ ッ トに上が り腕 を広げ

,腕

側挙前転 に挑戦 した。頭 を入れ るとき少 し手で支え, その後は両腕を広げて転が ることがで き

,体

も起 こせた。そ して,「手 な しでや ったよ

Jと

評価 し 「 手 な しでもできる。や ってみて

Jと

S男

を誘 った。 最初の試技では

,首

への衝撃が強 く

,続

けて練習す る気にはなれず

,マ

ッ トを離れたが

,そ

の試 技か ら13分後

, 1度

の試 し練習の後の成功であ った。 さ らに1分後

,A子

がその 日獲得 した新 しい運動である片足での腕側挙前転 をなどを指導補助者

(15)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第

2号

(1995) 255

Sに

「 これ もで きたで」 と言いなが ら見せ ていると

,U男

も手を着 いてか ら離 し

,腕

を開いて転が る前転 を して見せた。 この

, 4度

目の腕側挙前転 は

,最

もなめ らかに回ることができ

,U男

自身 も 「 で きた

Jと

得意そうに指導補助者

Sの

方を見た。

A子

,右

足で跳びなが ら拍手を し

,体

を反 ら せ なが ら「 できた

,で

きた

Jと

評価 した。

(5)H子

の運動 探 求 脳性麻痺後遺症があ り

,筋

過緊張 とされている。痙性歩行 を行 い

,協

調運動が うま く行かず

,左

側は特 に不得意である。意欲的に取 り組む姿勢 は見 られ

,楽

しか った運動学冒の後 には「 楽 しくて しかた ないんです

Jと

か「 この前の音楽が好 きです」 と明るく語 りかけてくる。傘踊 りの練習では 大 きな声で音楽 に合わせ て唄いなが ら踊 る。 マ ッ ト運動の前転が

,回

転前半で頭 を入れ られずそのために転がれ ないクラスでた った一人の生 徒であ り

,今

回のマ ッ ト運動学習のね らいの一つは

,い

ろいろな回 り方の中で

H子

には前転 を体験 させたいことがあ った。 このため

,他

4人

に比べ

H子

にとっては前転が手がか りではな く目標 と して前面に出て しまった学習を何度 も強い られ ることになった。 第

2時

,H子

U男

と指導補助者 の

,手

を押 さえ身体 を支える補助だけで

,前

に転が ることが できている (写真6)。 「 どうや った らできたの

Jと

内省への確かめを したところ,「足をけ ったの」 と答えた。確かにこの 日は自分でよ く足 を蹴 っていた。 この質問への回答によって

,H子

が体感 と してできた ときの感覚を自覚 して

,フ

ィー ドバ ックできていることが分か った。 この 日不在だ った 担任 に次の時間には是非見せたいと楽 しみに していたが

,こ

の 日得 られた感覚が

,技

能 と して

H子

に定着す るように学習の手がか りを準備す る必要がある。 《》指導者が提案│ く前転)(1)(2) 「 S君 頭いいJと納得 して く!を磐為誘導が│ く嫡 的 ① ∵ ?♀ 成功 明 た ?J ⑤⑥ 提案した技 │ 《手形で着手位置を指定されて》 指導補助者sの補助で [Y男 の考案 した補助で] []友だ ちか ら得│ <両 手を補助 されたノハンドの前転>(1)(2) た技 │ <ア コツト・ の前転の補助>(lX2)(3) 阿 自拷 え越 │ 《開脚前転)(1) 指導補助者Kの指導で一人 での坂道前転(1) (1)・・課題練習 │ 「何で前 はできたんですか」 ③Э・・自発練習│ 「前はできたけど今日・・J 指導補助者Kホ°lV立てを使 って 腰が上がれば 自然 に前 に落 ちることを説 明 図

5.H子

の運動探求

a.前

転 前時の成功か ら,「一人でや る。 自信がある

Jと

言 って前転 に積極的に取 り組んだ。担任 に

,前

転ができることを見せた くての取 り組みであ ったが

,頭

を入れ ることが どう してもできない。す ぐ に

, T男

U男

が補助 に走 り寄 った。

U男

に「 頭 を入れて

,お

尻高 く

,け

Jと

言葉 をかけ られ る が

,前

に転が ることはできない。

b.坂

道での補助付 き前転 坂道での前転は

,H子

の前転学習ために指導者が提案 した手がか りである。 クラスの仲 間全員が 手を補助 した りのできこんだ りす る中

,試

技 しようとす るが

,頭

を入れ るまでに支持腕が崩れ

,な

か なかできない (写真7)。

(16)

佐分利育代 :知 的障害児の運動探求 写真

7.H子

の坂道前転 とクラスの仲間 この後

J描

かれた手形が示す着手の位置を手がか りに しての坂道前転

,両

腕を補助 され ての手の 支持 な しの前転

,開

脚か ら頭を入れての前転 などを指導者や

,指

導補助者 に提案 され挑戦す るが, どう しても頭を入れ ることができない

c,S男

の補助による坂道前転 突然立 ち上が って

H子

の足下のマ ッ トを両手で持 った

S男

による

,マ

ッ トをけ りのタイ ミングに 合わせ て引 き上げるという補助 の提案は,「

S君

,頭

いい

Jと

H子

も納得 しての積極的 な試技 をも た らした。指導者 と指導補助者 による両手への補助 と

, S男

によってけ りの力を得た前転 は始めて の試技で成功 した。 この際

H子

, S男

が少 しだけ引 き上げているマ ッ トの上に足を起 き

,そ

の補 助を充分 に理解 している様子であ った。そ してこの思考 に対 して「 見た

Jと

まわ りの者, とりわけ この 日一番 に見ても らいたか った担任 に確認 した。

H子

の成功は

,ク

ラス全員 に認め られた。 この成功 は

S男

の考案の評価 につなが り

, T男

にもS 男の補助 によりよリダイナ ミックな前転の機会を与え ることとなった。

d.一

人での坂道前転への挑戦

S男

の補助 による坂道前転の成功 に対 し

,担

任 (指導補助者

K)は

それが

H子

一人での成功で な いことを

H子

に強調 した。

H子

, T男

S男

の補助で前転 を試みた り

,A子

U男

が腕側挙 の前 転を練習 しているのを待 っていたが

,そ

の練習が一段落す るとマ ッ トに上が り

,一

人の力での前転 を試みた。 何度 も試み ようとす るが頭を入れ ることができない。いよいよ転がろうとしたとき

, S男

がそ っ とマ ッ トを引き上げたが

,H子

は腕での支持ができず

,頭

を入れ られ ないで前につんのめ って しま う。それで も挑戦 しようと し

, S男

か ら「 ころりんていけ」 と手 も動か しなが らの声援をも らった。 しか し前 に転が ることができない。

e.指

導補助者

Kの

指導 による坂道前転 「 こう背中か ら落 ちるだけでいい

Jと

マ ッ トの上 に背中か ら落 ちてみせ る指導補助者

K(担

任) に

H子

は声 を上げてお も しろが って見せた。

U男

が指導補助者

Kを

真似 て転が って見せ

,H子

に 「 できるよ

Jと

声をかける。

H子

は手 をマ ッ トに着 くが前 に転がれ ない。指導補助者

Kに

,「力で回ればいい」 と質 問 し

,そ

の後は指導補助者

Kの

顔 を見つめた。

Kに

対 し,「何で前はできたんですかJ「何で前 の時は違 うんですか

Jと

問いつめる。指導補助者

Kは

H子

に答えず に何かを取 りにその場 を離れて しまう。その後 ろ姿に「 前はできたけど今 日・・J

(17)

席取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第

2号

(1995) と

,Kの

いなか った第

2時

にわずかな補助でできた前転 をその 日

Kに

見せ られ なか ったことを訴え た。 この間

S男

はマ ッ トの端を持 ったまま じっと二人の様子をうかが っている。 その後は

,指

導者が「 もう一回やろう」 と声をかけたのに対 して,「もういい」 と手を振 って拒 否 した。

H子

は担任である

Kに

認めてもらえないことが, 自分のそれ までの成功がなか ったと同 じ ことに しか思えない様子であ ったと 補助付きで成功 した

H子

の前転 を どう評価す るか

,前

転の成功のお も しろさを味わ うことのでき た

H子

,H子

にそのお も しろさを味わわせた

S男

の補助 を どう認め るか

,前

転 を手がか りにどん な体験を引き出そうとす るのか指導者

,指

導補助者間の見解の統一が必要である。 指導補助者

Kは

この後

,鉄

製のポール立てを持 って来 てそれ を倒 しなが ら,「これのように

H子

の背中がまっす ぐのままで丸 くな らないか ら回れ ない

Jと

説明す る。

H子

,U男

,A子

は笑 って見 ているが

,そ

の説明までで授業時間が終わ って しまった。 どうすれば背中を丸 くできるのか

,H子

に必要 なのはその手がか りではなか ったか。

(6)坂

道前転 を手 が か りに した学習 での運動 探 求 表

2は

各生徒が試技 した回転の種類 と

,そ

の学習活動を

,工

夫や新 しい技への挑戦 など自発的な 練習の回数

,マ

ッ トの置 き方や使 い方 に関わ る行動の回数

,友

だちに伝 えた技や友だちへの補助や 励ま しの回数

,真

似た りして友だちか ら得た技や友だちの補助や援助 を受けた回数

,指

導者や指導 補助者が学習の手がか りと して提案 した技への挑戦の回数に分けて取 り上げたものである。 表

2「

坂道での前転」を手がか りに したマッ ト運動学習での生徒の活動 (約33分 間)

回   学 剛 転 工夫や新 し い技への挑 戦等 自発的 練習 マ ッ トの使 い方、置き 方 に関わる 行動 友だちへ伝 えた技、友 だちへの補 助、励 ま し 友だちか ら 得た技、受 けた補助、 援助 指導者、補 助者よ り提 案 された技

S男

3 3 4

17

2

10

3 4

T男

9212

14

1 3 5 4

A子

10 1 1

15

1 9 , 7

U男

5 1 2 7 3 1 6

H子

1 3

4

6

10

指導者や指導補助者か ら提案された技への挑戦の回数よりも, 自発的な練習や

,友

だちとの関わ りによって練習 している回数が

,

どの生徒も多い。

H子

の学習にも

,指

導者の与えた手がかりに挑 戦する場には友だちがいて

,補

助 した り声援を送 ったり

,ま

,H子

の課題達成のために補助を工 夫する

S男

の学習もあった。

S男

,坂

道前転の学習が始まって12分間も

H子

や友だちの学習の傍 らに座 り込んでみているだ けであったが

,い

ったんマ ットに転がってか らは

,誰

よりも多 くの工夫や 自発的な運動探求を行 っ

(18)

佐分利育代 :知 的障害児の運動探求 ている。

S男

,

自分の工夫 した技のアイデ ィアを友だちに提供 して挑戦 させた り

,工

夫 した補助 で友だちの技を発展 させた り

,友

だちと関わ って自分 自身のアイデ イアや運動

,補

助 の確実性を高 めている。

S男

は指導者か ら提案 された技 にす ぐに挑戦す る場面 は少 ないが

,友

だちと関わ りなが ら運動探求を行 っていることがわか る。表

2か

らは

, S男

が誰 よ りも独創的であ り

,ま

た友だちの 課題 を通 して 自己の課題 を見つけ解決す る力を発揮 していると言える。

T男

,チ

ャレンジ した回転 の種類 も多 く

,友

だちの運動を真似 し

,

自分なりのダイナ ミックな 運動 と して展開 している。指導者か ら提案 された技 よりも友だちか らの技 に挑戦 した回数が1回で はあるが多い。 また

,指

導者 よ り提案 された技で も

,指

導者がクラス全体や他 の生徒 に手がか りと して提案 した技に自分も挑戦す ることが多 く

, T男

だけのために指導者が手がか りを与えているも のは学習の中で1回にす ぎない。

T男

は,「見てよおか しい」 と指導者 に問いかけた り

,A子

に指 導補助者が提案 した運動 に対 して,「手な しでか

,手

あ りでか」 と意欲 を見せた りしている。友だ ちの運動や指導者の提案 にア ンテナを張 り, 自らダイナ ミックに動 く

T男

に対 して

,今

回の学習で は

,そ

の運動欲求を見抜 き

,運

動探求の適切 な手がか りを指導者が提供 できていたか疑間である。

A子

5人

の中で前転 の完成度が最 も高い生徒であるため

,指

導者や指導補助者か ら運動探求の 手がか りを得 ることが多い。

A子

もそれに挑戦 し

,で

きないときは納得がい くまで工夫 し練習す る。

A子

が この時間に取 り組んだ前転系の運動は

,連

続で行 ったものも

1種

類 と数えて

, 10種

類だ っ た。前時に

A子

が新たに獲得 した前転は

,腕

を体前 に上げて起 きなが らのス ピー ドのある連続だ っ た。本時では数回練習 しなが ら

,開

脚糸の前転

,腕

側挙での前転

,腕

側挙前転 を片足で起 きての連 続 まで発展 させてできるようになった。挑戦す る技の内容が難 しいため

,指

導者対

A子

の関わ りの 方が

,友

だちを真似た り

,友

だちに真似 された りよ り多い学習になっているが

,U男

T男

のよう に

,A子

を 目標 に しなが ら練習 している生徒 もいる。

U男

,H子

を補助 した り

,A子

の運動探求 と関わ って活発に動いていた印象 にも関わ らず

,数

字を並べてみるとマ ッ トでの練習回数は少ない。意識 と しては自分は前転ができると思 ってお り,

H子

につききりで補助 した り

,A子

と共 に指導者が提案 した課題 に挑戦 してうま く行かず

,

しば ら くマ ッ トを離れた りしたため と思われ る。 しか し

,で

きなか った技への探求はマ ッ ト上にいないと きも続けてお り

,腕

側挙の前転では

,初

めの挑戦か ら

13分

後には段階的 な練習を工夫 して再び挑 戦 し

,成

功させている。

H子

,ク

ラスでただ一人

,達

成 目標 と しての前転学習を した生徒 といえる。本時の手がか りで ある坂道前転 ももともと前転 のできない

H子

のための手がか りであ った。

H子

は指導者や指導補助 者の提案や補助をクラスの中で最 も多 く受け

,友

だちか らの励 ま しや補助 も多 く受けている。い っ ぽうで 自発的な練習がほとん どできていない。 しか し

S男

の補助のアイデ ィアを知 り

,

自分でも納 得できたときは積極的に挑戦 し

,前

転 にも成功 した。本時に

H子

が成功 した前転 は

,指

導者や指導 補助者が提案 した補助 によるものではな く

, S男

の補助 によるこの

1回

だけだ った。 自発的 な練習 もその後で出てきている。

4.第

3時

に見 られ た 自発 的 運 動 学 習 の 方 法 各生徒の運動探求には

,指

導者や友だちの運動の模倣

,友

だちが指導者に指摘された り提案され た運動への挑戦

,友

だちのアイディアをヒン トにするなどにより自らの課題を見つけ

,そ

の課題を 解決 し

,運

動の技能として定着させている

,生

徒 自身が主体となって進めたと言える自発的な学習

(19)

席取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第

2号 (1995) 259

の過程が見 られた。 自らの課題 を得 てか らの探求の様子は以下のように取 り上げ られた。

a.言

語化 された 自己課題

<目

標の直接的な言語化

>

T男

S男

の補助 による連続横転 における発言・「

3回

連続J

T男

の登坂前転 における発言 。「 こっちか ら行 くぞ。危 ないぞJ

T男

の腕側挙前転での回転後半 の練習での課題・「 止 まるだけ―よ」

A子

の腕側挙片足前転 における発言 。「

S先

生 に教えてもらったのや りたいJ

<友

だちへの課題の提示

>

U男

の腕側挙前転試行前 におけ る

S男

への発言 。「何

,今

の。ねえ

S君

できるあれJ

b.段

階的な課題解決

<運

動 を分解 しての部分練習

>

A子

の腕側挙片足前転 における

,回

転前半での片足支持の練習

<運

動 を分解 しての段階的練習

>

U男

の腕側挙前転 における腕の支持を徐 々に無 くしての練習

<運

動 を分解 しての試 し練習

>

T男

のダイナ ミックな開脚前転 におけ る,「こうや った らこう

,頭

か らこう

Jと

言 いなが らの 前転

<仮

説 をたててのプレ試行 を通 しての課題解決

>

S男

の 自らの蹴 りを強 くした前転練習 と

,マ

ッ トの持ち手を使 っての引き上げの練習 を通 して の

H子

への補助

<友

だちに試行 させてか ら取 り組む

>

U男

の腕即挙前転における

A子

への試技 の依頼 。「

Aち

ゃんや ってよJ

<問

題 を見つけての再試行 と指導者への問いかけ

>

T男

の腕側挙前転での回転後半 の練習での問いかけ 。「 見てよおか しいJ

C.探

求 した運動の確立

,新

しい運動への発展

<以

前 に成功 した ことを再び試 した り

,他

の運動 にも応用 した りする

>

U男

H子

の前転への補助の再試行 と

T男

への指導

U男

の坂道での前転

,及

び腕側挙前転成功後 の再試行

S男

H子

への補助の

T男

や指導補助者への試行

H子

の前時で成功 した前転への挑戦 (不成功)

S男

の連続横転での往復

T男

S男

の補助による横転連続や ダイナ ミックな開脚前転連続

<以

前 に成功 した ことを友だちに教える

>

U男

H子

への補助の

T男

との再試行

<偶

然できた運動 を再試行する

>

A子

流の開脚前転

<自

己評価 と

,友

だちや指導者への報告

>

A子

の開脚前転及び腕側挙片足前転 における報告 と再試行

T男

の片足踏み切 りによる前転 。「 頭 くるっと回 ったぞ」

U男

の開脚前転及び腕側挙前転での 自己評価 。「 できたJ

参照

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