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(1)

Ⅰ.はじめに

 ICU(intensive care unit)や第三次救急医療施設でのい わゆるクリティカルケアでは,急性疾患の突然の発症,慢 性疾患の急性増悪,偶発的事故や災害,重篤な疾病,身体 侵襲の大きい手術などによって,生命の危機にさらされた 患者に対応することが多い。また,このような患者の危機 的な状態を目の当たりにした家族は,精神的に激しく動揺 し,強い不安,恐怖,悲嘆などの感情を呈して精神の危機 状態に陥ることも多い1)  クリティカルケアにおける家族看護は,患者そのものに 対する集中治療と同様に重要な位置付けにあり,看護師の 関心も極めて高い。そのアプローチとしては,ニードを中 心とした家族の心理状態をアセスメントし,効果的な看護 介入のあり方を模索したものが多く,更にLazarusら2) ストレス・コーピング理論を基に,家族のコーピングに焦 点を当ててケアの方向性を見出そうとするものもある。  我が国では,クリティカルな状態にある患者家族のニー ドとしては,Molter3)の45項目のニードが最も良く知ら

れている。このニードは,海外ではCCFNI (Critical Care Family Needs Inventory)4)という家族アセスメントツール

として臨床や研究で盛んに用いられている。Bouman5)

Molterの45項目のニードを独自に分類し,家族ニードのア

セスメントの枠組みを提供している。また,IIFS (Iowa

ICU Family Scale)という調査票を用いてICUでの家族の

心理的行動的状況を記述しているものもある6,7)。コーピ

ングについては,Koller8)

Jalowiec Coping Scaleを用いて 測定した重要なコーピングストラテジーの記述や危機状態 にある家族のコーピングを明らかにした先駆的な研究もあ る9, 10)  海外ではこのような家族ニードとコーピングに焦点を当 てた家族看護のあり方に関する研究が多く見受けられる が,我が国では,ニードそのものに焦点を置いた家族アセ スメント研究が特徴的である11, 12)。その多くは, Molterの 45項目のニードを基にインタビューによってニードの程度 を明らかにしたもので,ニードの充足度を同時に調査して いるものがある13-17)。しかし,これらの研究の多くは,文 化背景や家族観の違う国で開発されたアセスメントツール を使用し,しかも対象のサンプリングはその病院のみに限 定してまとめたもので,我が国の特徴として普遍的に記述 するには限界がある。  こうした状況を鑑み,救急看護認定看護師らで構成す る研究メンバーによって,重症・救急患者家族のアセス メントツールであるCNS-FACE(Coping & Needs Scale for Family Assessment in Critical and Emergency care settings)18-21)

が我が国で独自に開発された。現在では病院の規模を問わ ず,全国で多くの救命救急センターやICUでこのツール が臨床にも研究にも活用され始め,共通する測定ツールに よって重症・救急患者家族のニードとコーピングが記述さ れようとしている。  本研究ではこのCNS-FACEを用い,国内の複数の施設 での患者家族のデータを収集・分析することによって,重 症・救急患者家族の入院期間中のニードとコーピングの推 移の特徴を明らかにし,家族のニードとコーピングの関係 について,因果構造をモデル化することを目的に行った。

Ⅱ.研究方法

1.対象と期間  11名の救急看護認定看護師らで構成されるCNS-FACE 研究会のメンバーが属する9ヶ所の救命救急センター, ICU・CCUに入院した患者194名の家族211名を対象とし た。患者は,疾患,重症度,性別,年齢を問わず,キー パーソンとなる家族が存在している患者とし,対象家族は CNS-FACEによる行動評定が可能と救急看護認定看護師 が判断した患者の家族である(未成年を除く)。対象家族 山口大学大学院医学系研究科 Graduate School of Medicine, Yamaguchi University

重症・救急患者家族のニードとコーピングに関する構造モデルの開発

−ニードとコーピングの推移の特徴から−

Drawing up of Structural Equation Modeling for Family Needs and Coping Strategies in Critical Care Settings

山 勢 博 彰

Hiroaki Yamase

キーワード:家族ニード,コーピング,cns-face,クリティカルケア看護,構造方程式

(2)

に,同じ患者について2名のキーパーソンがいる場合は, それぞれにデータ収集をした。データの収集期間は,平成 14年3月∼6月におこなった。 2.測定ツール(CNS-FACE)について  CNS-FACEは,暫定版の作成から完成版の作成に至る まで,国内の複数の施設を対象に,入院患者の家族から得 られた実際のデータを基にして開発されたものである18-21)  CNS-FACEの理論的概念には,危機理論とストレス・ コーピング理論が使われている。危機理論では,危機モデ ルの中の危機から適応に至るプロセスモデル22)が用いら れ,ストレス・コーピング理論では,Lazarusらのストレ ス・コーピング理論2)が用いられている。この2つの理 論より,概念モデルが設定されている(図1)18)。また,

CNS-FACEで測定する構成概念は,CCFNI(Critical Care Family Needs Inventory)4)Ways of Coping スケール23)

用いられている。  CNS-FACEは,看護師の客観的な行動観察による行動 評定ツールである。家族のとる行動を観察することによっ て,動因としてのニードとコーピング様式に関して尺度化 し,量的評価をするものである。1つ1つの尺度項目には, ニードの型とコーピングの型の両側面があり,行動評定に よってその家族がどんなニードを持って,どんなコーピン グを働かせているのかを測定する。例えば,メモを取ると いう行動は,情報のニードでもあり,計画型のコーピング 行動でもある。ところが,同じ情報のニードでも,医師や 看護師に病状説明やオリエンテーションを直接求めてくる といった行動は,直接的な社会支援を志向したコーピング である。  CNS-FACEの尺度は,ニードの6カテゴリーとコーピ ングの2カテゴリーで構成されている。ニードは,医療者, 家族,知人などの社会的リソースを求める社会的サポート のニード,自己の感情表出によってそれを満たそうとする 情緒的サポートのニード,家族自身の物理的・身体的安楽 を求める安楽・安寧のニード,患者に関する情報を求める 情報のニード,患者に何かをして役に立ちたいという接近 のニード,患者への治療と処置に安心感や希望を持ちたい という保証のニードである。コーピングは,ストレス状況 に情動反応を調節して対処しようとする情動的コーピング と,直接その問題を解決できるようなやり方で対処する問 題志向的コーピングである。  評定方法は,家族の中のキーパーソンを特定し,面会の 様子,看護師や医師との対応の様子,オリエンテーション 時や病状説明時の様子などを観察し,「あてはまらない」, 「少しあてはまる」,「あてはまる」,「大変あてはまる」の 1∼4段階の評定ポイントに従ってチェックする(表1)。 尺度得点は,ニードの6カテゴリーとコーピングの2カテ ゴリー毎に,最小1点∼最大4点の範囲で得点化される21)  アセスメントツールとしての信頼性と妥当性について も,多角的に検証されており,項目の内的整合性の指標と なるクロンバックα係数は,社会的サポートのニードが 0.62,安楽・安寧のニードが0.61,その他のニードとコー ピングは,0.7∼0.8以上である。構成概念妥当性を確認し た因子分析では,ニードの6因子の累積寄与率が57.1%, コーピングの2因子では35.0%である20) 3.データの収集と集計  対象の入院患者について,家族の中のキーパーソンを 特定し,CNS-FACEの46の行動評定項目について,患者 の受け持ち看護師,またはCNS-FACE研究会のメンバー である救急看護認定看護師が観察した。データ収集の時 期は,各施設で任意の時間(日勤の終了時,深夜交替時, 日中の面会終了時など)を定め,基本的に入院から救命 救急センターまたはICU・CCU退出まで24時間に1回測 定した。測定データは,インターネットを通してサーバ

へ直接データを送信し,各得点をCGI(Common Gateway

Interface)プログラムによる自動計算システムにて集計し た。ホームページのアドレスは非公開とし,アクセスには パスワード認証によるセキュリティチェックを設けた。 4.分析方法

(3)

表1 CNS-FACEの行動評定項目 項目No. ニードの分類 評  定  内  容 1 社会的サポート 家族同士で相談したり支え合っている 2 知人などの家族以外の人と相談したり支え合っている 3 PTや医療事務などの他職種への紹介や援助を求める 4 経済的な問題について相談をする 5 情緒的サポート 患者の死について話をする 6 患者との思い出話をする 7 不安を訴える 8 罪責感を表出する 9 患者の名前を大声で叫んだりすがりつく 10 悲しんだり泣いたりする 11 ショックで卒倒したり,身体症状を訴える 12 パニック状態になる 13 やりたい事があっても我慢している 14 放心状態または上の空 15 身の置き所がなくうろうろしている 16 話にまとまりがない 17 状況を受け入れることができない 18 怒りや叱責などの言動がある 19 奇跡を望む言動がある 20 拒否的な言動がある 21 厳しいことを言われても動揺することなく落ち着いている 22 喜んだり,笑顔が見られる 23 安 楽 ・ 安 寧 待合室や家族控室に関して要望がある 24 外部への連絡方法について尋ねる 25 院内や付近の食堂や売店について尋ねる 26 家族待機について工夫や改善を申し入れる 27 一人になれる時間,場所を求める 28 身体的安楽や休息を求める 29 情 報 現在の治療,処置,ケアに関して尋ねる 30 現在の患者の状態や安否について尋ねる 31 患者の予後について尋ねる 32 医療者の話を熱心に聞く 33 モニターを見つめたり,話すことをメモしている 34 処置やケアの様子を覗こうとする 35 医療者に何をしたらいいのかを尋ねる 36 接 近 患者へ励ましの言葉をかける 37 多くの面会回数,時間を求める 38 患者の身体ケアに参加する 39 患者へのサポートに積極的である 40 患者の体に触れる 41 患者へねぎらいの言葉をかける 42 面会したがらない 43 保 証 医療者に感謝やねぎらいの言葉をかける 44 ICUなどの現在の病棟での治療やケアを望む 45 医療者に任せたり頼んだりする 46 処置やケアに理解を示し,安心や信頼を示す言葉がある 情動的コーピングの項目(No.):5,7∼20,27,28,42 問題志向的コーピングの項目(No.):1∼4,6,21∼26,29∼41,43∼46

(4)

 各ニードとコーピングの基本統計量を算出し,入院から 退室(死亡退院を除く)まで継続してデータ収集できた ケースについて,入院からの時期別による変化の傾向を分 析した。この推移の特徴からニードとコーピングのカテゴ リー化をし,ニードがコーピングに与える因果構造につい て構造方程式モデリングを行った。分析には統計パッケー ジソフトSPSS(Ver.11.0J)およびAMOS(Ver.4.0)を用 いた。 5.倫理的配慮  対象家族には,研究に用いるデータ収集をすることにつ いて口頭で伝え,承諾を得た。データ収集は,通常の看護 ケアでの観察を通した行為とし,データの取り扱いは個人 が特定できないようにコード番号で示した。また,個人の 医療情報として公表されることにならないよう,専ら量的 な分析のみに留めた。なおこのCNS-FACEによる研究は, 研究の倫理的側面を検討する大学医学部附属病院医薬品等 治験・臨床研究等審査委員会(IRB)での審査を受け,承 認されたものである。

Ⅲ.結  果

1.対象者の特徴  194名の患者の年齢は52.25±19.61(mean±SD)歳で, 最高齢が87歳,最低年齢が0歳であった。性別は,男性 122名(62.9%),女性72名(37.1%)であった。疾患の内 訳 は, 脳 疾 患45名(23.2 %),CPAOA (cardiopulmonary arrest on arrival )34名(17.5%),循環器疾患23名(11.9%), 外 傷20名(10.3 %), 自 殺 企 図20名(10.3 %), 中 毒19名 (9.8%),その他33名(17.0%)であった。また重症度は, 第三次救急対応患者の中でも予後は安定していると判断さ れる患者が78名(40.2%)で最も多く,CPAOAなどの生 命の危険が大きい患者が41名(21.1%),第三次救急対応 患者で予後不良の患者34名(17.5%),第二次救急対応患 者33名(17.0%),初期救急対応患者8名(4.1%)であっ た。  患者の救命救急センターまたはICU・CCU在室日数は, 最低1日から最高60日の範囲であり,平均在室日数は6.11 ±3.92日であった。  CNS-FACEによる行動評定データは,211名の家族から 延べ1305日(件)分を収集した。対象家族は,配偶者88名 (41.7%),親50名(23.7%),子供40名(19.0%),兄弟20 名(9.5%),親戚8名(3.8%),その他5名(2.4%)であっ た。 2.各ニードとコーピングの基本統計量  延べ1305日(件)分の各ニードとコーピング得点の平均 値と標準偏差は次のようになった。ニードでは,社会的サ ポート1.69±0.55,情緒的サポート1.33±0.35,安楽・安寧 1.09±0.23,情報2.00±0.65,接近2.17±0.73,保証1.94± 0.72で情報と接近が2点以上で,保証,社会的サポート, 情緒的サポートの順に低下し,安楽・安寧のニードは最も 低かった。コーピングでは,情動的1.24±0.32,問題志向 的1.85±0.42で問題志向的コーピングが高かった(図2)。 3.各ニードとコーピングの推移  入院初日から退室(死亡退院を除く)まで継続してデー 図2 ニードとコーピングの箱ひげ図(n=1305) (社会的サポートから保証まではニードで,情動的と問題志向的はコーピングを示す。また,箱の下端・中央・上端の水平 線は,それぞれ25パーセンタイル値,平均値,75パーセンタイル値を表し,ひげの上端は最大値,下端は最小値を示す)

(5)

タ収集できていた患者は59名で,その在室日数は,最低4 日から最高15日の範囲であり,平均在室日数は7.23±2.12 日であった。この患者の家族59名のニードとコーピングに ついて,在室日数の80パーセンタイルである10病日目まで の推移を平均値によって示した(図3,4)。  ニードの推移を見ると,情報のニードは4病日目から上 昇に転じ,保証のニードは,2病日目にやや下降してから 上昇し,その後は横ばいで6病日目に再び上昇していた。 接近のニードは病日を経るに従って上昇していた。社会的 サポートのニードは病日毎に多少の変化はあるものの,ほ ぼ横ばいでの推移であった。情緒的サポートと安楽・安寧 のニードは,全体に低値での推移で,入院当日が最も高 く,情緒的サポートのニードについては病日が経るに従っ て下降していた。コーピングは,病日を経るに従って情動 的コーピングは下降し,問題志向的コーピングは上昇して いた。 4.構造方程式モデリングの結果  各ニードの推移の特徴より,上昇傾向が読み取れる情 報,接近,保証のニードを観測変数とした潜在変数(患者 との相互関係上のニードと呼ぶ)と,横ばいあるいは低値 での推移であった情緒的サポート,社会的サポート,安 楽・安寧のニードを観測変数とした潜在変数(自己の安定 性を維持するニードと呼ぶ)を設定した。コーピングにつ いては情動的コーピングと問題志向的コーピングのそれぞ れを潜在変数として設定した。なお,コーピングの潜在変 数は1つの観測変数で構成するために,尺度の信頼性係数 による固定母数を誤差項に投入した。  以上のような変数によって,ニードがコーピングに与え る影響について構造方程式モデリングを行った(図5)。 モデルの乖離度を示すχ2が512.31,p=0.03(有意確率)で, 図4 入院から10病日目までの各コーピングの平均値の変化(n=59) 図3 入院から10病日目までの各ニードの平均値の変化(n=59)

(6)

モデルとデータの当てはまりの程度を示すGFI(goodness of fit index:適合度指標)が0.89,パラメータ数の影響を 考慮した修正GFIのAGFI(adjusted goodness of fit index:

修正適合度指標)が0.81,乖離度からパラメータ数の影響

を修正した指標であるRMSEA(root mean square error of approximation:平均二乗誤差平方根)が0.09で示されるモ デルが導かれた。主要パラメータのうち,「患者との相互 関係上のニード」は問題志向的コーピングに0.91(標準化 係数),「自己の安定性を維持するニード」は情動的コーピ ングに0.93(同)の高い影響を与えていた。

Ⅳ.考  察

 本研究の対象となった家族の患者の疾患は,集中治療室 や救命救急センターのようなクリティカルケアや第三次救 急医療で対象とする重症かつ多様な疾患であった。また対 象家族も,多い順に配偶者,親,子供,兄弟と臨床上対応 することの多い家族員であった。  各ニードとコーピングの得点は,クリティカルケアの臨 床場面で観察されるニードとコーピングの特徴を示してい るものと解釈でき,臨床的にも了解可能なものであった。 例えば家族自身の安楽・安寧のニードとしての要望はあま り聞くことはないが,患者の現状や予後について尋ねる情 報のニードは高いという認識は多くの看護師が持っている ものである。  本研究では,疾患別,および患者の重症度別に各ニード とコーピングの特徴を見いだすことはしていないが,生命 を脅かす最も危険な状態であれば,特定のニードが高いな どといった特徴があると思われる。臨床的には,患者が重 症であればあるほど家族の危機状態も強く,情動的反応が 顕著に見られるということがしばしばある。  入室期間全体に渡るニードとコーピングの得点を見る と,最も高いのが接近のニードで,次が情報と保証のニー ドであった。最も低かったのは,安楽・安寧のニードで あった。コーピングでは,情動的コーピングより問題志 向的コーピングが高かった。ニードについて,上位3つ のニードはMolterの古典的研究3)でも重要なニードと位 置づけられており,KollerもCCFNIによる面接調査の結 果からこれらのニードの重要性を検証している8)。国内で も,千明らがこれらのニードが高いという調査結果を提出 している15)。また,意識回復を望めないほどの重症患者家 族のニードでは,接近のニードである患者ケア参加への要 望は最も高いという報告もある24)  ニードとコーピングの日毎の推移を見ると,ニードで は,情報,接近,保証のニードが病日の経過に従って高く なる傾向が見られ,逆に,情緒的サポートと安楽・安寧 のニードは入院当日が最も高く,低値での推移であった。 コーピングは,問題志向的コーピングが,病日の経過に 従って高くなる傾向があり,情動的コーピングは,入院当 初が比較的高く,その後は減少していくという推移であっ た。精神的な危機状態にある人のコーピングの推移は,危 機に陥ったはじめの時期は情動的なコーピングメカニズム が働き,後半は問題志向的なコーピングメカニズムが働く といわれている25)。本研究は,こうした家族危機の様子を 裏付けることとなった。  入院からの各ニードの推移を分析した結果,「患者との 相互関係上のニード」と「自己の安定性を維持するニード」 の2つのカテゴリー構造の存在が推測された。前者は情 報,接近,保証という患者を通して,または患者を対象と したニードであり,後者は情緒的サポート,社会的サポー ト,安楽・安寧という家族自身の精神的・社会的・身体的 安定を図ろうとするニードである。  これらのニードの推移の特徴とコーピングの推移とを 対比すると,「患者との相互関係上のニード」は問題志向 的コーピングに,「自己の安定性を維持するニード」は情 図5 構造方程式モデリング

(7)

動的コーピングに影響を与えていることが推測されたが, この因果構造は構造方程式モデリングによってより明ら かになった。因果関係の強さを示す標準化係数は各々0.91 と0.93で,かなりの影響があることが裏付けられ,家族の ニードの内容がそれぞれのコーピング行動への特徴をもた らしていた。  以上,CNS-FACEによって得られたデータ分析の結果 から考察できることをまとめたが,CNS-FACEそのもの の改良点や本研究の限界も幾つか存在している。  本研究で用いたCNS-FACEは,一般的な心理測定用具 の開発プロセスに則って作成し,信頼性と妥当性について も検討はされているものの,社会的サポートと安楽・安寧 のニードの内的整合性を示すクロンバックαが0.6台20) 充分高いとは言えず,測定用具としての厳密性を高めるた めにさらなる改良が必要である。  またアセスメント方法は,看護師による行動評定,すな わち他者による客観評価であり,インタビューなどによっ て家族自身の気持ちを引き出して主観的データを評価した ものではない。そのため,本研究で得られた結果は,個々 の家族の心理的状況を個別にアセスメントした結果とは 言えない。さらに,入院環境,病状変化,客観的な重症 度,治療内容,予後予測,家族背景,家族ケアの内容など によって変化すると思われるニードとコーピングについて も,それらの変数を同時に測定して要因分析をしたもので もない。  このように,本研究には限界やCNS-FACE自体の課題 が残されており,今後更に詳細な検討が必要と思われる。

結  論

1.入室期間全体でのニードは,接近のニードが最も高く, 次に高いのが情報と保証のニードで,最も低かったのが 安楽・安寧のニードであった。 2.入室期間全体でのコーピングは,情動的コーピングよ り,問題志向的コーピングが高かった。 3.ニードの日毎の推移は,情報,接近,保証のニードが 経過に従って高くなる傾向が見られ,逆に,情緒的サ ポートと安楽・安寧のニードは入院当日が最も高く,情 緒的サポートのニードについては,病日を経るに従って 低くなる傾向にあった。 4.コーピングの日毎の推移は,問題志向的コーピングが 経過するに従って高くなる傾向があり,情動的コーピン グは,入院当初が比較的高く,その後は減少していた。 5.情報,接近,保証のニードで構成される「患者との相 互関係上のニード」と,情緒的サポート,社会的サポー ト,安楽・安寧のニードで構成される「自己の安定性を 維持するニード」,および,「情動的コーピング」と「問 題志向的コーピング」の潜在変数で示される構造方程式 モデリングを作成した。 6.構造方程式モデリングでは,「患者との相互関係上の ニード」は問題志向的コーピングに0.91(標準化係数), 「自己の安定性を維持するニード」は情動的コーピング に0.93(同)の高い影響を与えていた。

謝  辞

 データ収集に協力いただいた,CNS-FACE研究会の救 急看護認定看護師の皆様,山口大学付属病院高度救命救急 センターの看護師の皆様に心より感謝いたします。 (本研究は,平成14年度日本看護研究学会奨学会の助成を 受けて行ったものである)

要   旨

 本研究はCNS-FACE (Coping & Needs Scale for Family Assessment in Critical and Emergency care settings)を測 定ツールとして用い,重症・救急患者家族のニードとコーピングの推移の特徴を明らかにし,その関係について 因果構造をモデル化することを目的に行った。方法は,救命救急センター,ICU・CCUに入院した患者194名の 家族211名を対象とし,日毎のニードとコーピングを測定した。その結果,情報,接近,保証のニードと問題志 向的コーピングが経過に従って高くなる傾向が見られ,情緒的サポートと情動的コーピングは経過に従って低く なる傾向にあった。また,患者との相互関係上のニード,自己の安定性を維持するニード,情動的コーピング, 問題志向的コーピングを潜在変数とする構造方程式モデリングを作成した。

(8)

文  献

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24)大北薫, 加藤小百合, 他 : 意識回復を望めない患者を持つ 家族へのアプローチ,エマージェンシーナーシング,16(4), 318-320,2003. 25)山勢博彰 : 危機的患者の心理的対処プロセス,看護研究,28 (6),13-23,1995. 平成17年9月9日受  付 平成18年4月21日採用決定  

Abstract

 In the present study, the Coping and Needs Scale for Family Assessment in Critical and Emergency care settings( CNS-FACE) was used to clarify the characteristics of needs and coping transition for families with members requiring critical care. And I described how strong the factors affect between the needs and coping strategies by using the structural equation modeling. The CNS-FACE was administered between admission and discharge to 211 family members of 194 patients who were admitted to an emergency room or ICU. In terms of chronological shifts in needs and coping strategies, needs for information, proximity and assurance became greater and problem-oriented coping played a more important role with time, while need for emotional support and emotional coping became less relevant with time. In addition, I drew up the structural equation modeling: latent variables were needs on mutual relations with a patient, needs to maintain own stability, problem-oriented coping, and emotional coping.

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