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弁護 が精選! 重要労働判例 - 第 151 回 NHK 名古屋放送局 ( リハビリ出勤と最低賃 法 ) 事件 NHK 名古屋放送局 ( リハビリ出勤と最低賃 法 ) 事件 ( 名古屋地裁平 判決 ) 1うつ病による休職からの復職が問題となり テスト出局 ( リハビリ出勤 ) 中の作

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弁護⼠が精選! 重要労働判例 - 第151回 

NHK名古屋放送局(リハビリ出勤と最低賃

⾦法)事件

NHK名古屋放送局(リハビリ出勤と最低賃⾦法)事件(名古屋地裁 平29.3.28判決) ①うつ病による休職からの復職が問題となり、テスト出局(リハビリ出勤)中の作業 に対して無給とされていたケースで、原告の⾏った作業が労働基準法上の労働とは いえず、最低賃⾦法違反が否定された事例 ②原告の主治医による復職可能との評価にもかかわらず、産業医および第三者の専⾨ 医の意⾒も踏まえて復職を認めず解職したことの違法性等が否定された事例 掲載誌:労判1161号46ページ ※裁判例および掲載誌に関する略称については、こちらをご覧ください

1 事案の概要

 被告⽇本放送協会(以下「Y協会」)の職員であった原告(以下「X」)が、精神疾患 による傷病休職の期間が満了したことにより解職となったところ、同期間満了前に精神疾 患が治癒しておりY協会からの解職は違法無効であるとして、労働契約上の権利を有する 地位確認請求並びに傷病休職中に⾏ったY協会のテスト出局(いわゆるリハビリ出勤。⼼ の健康の問題ないしメンタルヘルス不調により、療養のため⻑期間職場を離れている職員 が、職場復帰前に元職場に⼀定期間継続して試験的に出勤すること)により、労働契約上 の債務の本旨に従った労務の提供をしたとしてテスト出局開始以後の賃⾦およびこれに対 する遅延損害⾦の請求およびテスト出局の中⽌や解職が違法であるとして不法⾏為に基づ く損害賠償等の請求を⾏った事案である。 [1]本判決で認定された事実 年⽉⽇ 事 実 H3.4.1 XがY協会に職員として採⽤された。 H18.7.26 XがY協会名古屋放送センターで勤務を開始した。 H19.3.22〜 H19.5.23 Xが頸部痛および頭痛を理由に、有給休暇および傷病⽋勤により⽋務した。 H20.2.25〜 H20.6.24 Xがうつ病を理由に、傷病⽋勤した。 H20.6.25〜 H22.10.31 Xがうつ病を理由に、傷病休職(同年2⽉25⽇からはY協会の職員就業規則40条2 項の無給休職扱)により⽋務した。

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H22.11.1 同年5⽉12⽇からのテスト出局を経て、復職した。 H23.8.19 H23.8.25 H23.8.26 Xがうつ病に起因するとみられる頭痛または体調不良を理由に、傷病⽋勤により ⽋務した。 H23.9.12〜 H24.1.13 Xがうつ病が再発したことを理由に、傷病⽋勤により⽋務した。 H24.1.16〜 Xがうつ病が再発したことを理由に、傷病休職により⽋務した。 H25.4.8〜 H25.7.26 平成25年4⽉8⽇、Xがテスト出局を開始したが、同年7⽉26⽇同テスト出局が中 ⽌になった。 H26.9.22 Xがテスト出局(以下「本件テスト出局」)を開始した。 H26.12.19 本件テスト出局が中⽌になった。 H27.4.15 休職期間が満了し、Y協会はXを解職した(以下「本件解職」)。 [2]主な争点  本件の争点は、①本件テスト出局中無給であることが最低賃⾦法に反するか、②本件テ スト出局の開始から本件解職までの間に、休職事由が消滅したといえるか、③本件テスト 出局の中⽌および本件解職が有効か、④不法⾏為は成⽴するか、の4点である。ここで は、このうち①②の点について取り上げる。

2 判断

[1]争点①(本件テスト出局中無給であることが最低賃⾦法に反するか):反しない (1)判断枠組み  本判決は、まず、本件テスト出局が就業規則上の無給休職扱期間中になされたものであ ることから、その期間中の作業には賃⾦が⽀払われないのが原則であると判⽰した。  もっとも、Xの作業が、Y協会の指揮命令下で⾏われた労働基準法上の労働、具体的に は、「被告のテスト出局が、傷病休職中にもかかわらず、職員に労働契約上の労務の提供 を義務付け⼜は余儀なくするようなものであり、実際にも本件テスト出局中にXが⾏った 作業が労働契約上の労務の提供といえる」場合には、最低賃⾦法の適⽤があるから、この 点を検討すべきとの判断枠組みを⽰した。 (2)Xが主張する本件テスト出局の問題点と本判決の判断  上記を前提に、本件のテスト出局が、例外的に「労働契約上の労務の提供を義務付け⼜ は余儀なくするようなもの」に当たるか否かを判断する際、Xの主張する問題点に対応し て、以下のとおり判断した。 Xの主張 本判決の判断 制度上の問題の有無 テスト出局は、主治医の職場復 帰可能との判断が開始の前提と なっている。 期間が24週間と⻑期間である。 ⼀般的なリハビリ出勤と⽐較して⻑いことは否定できない が、テスト出局中の作業として軽度のものが想定されている ことにも照らすと、制度⾃体が直ちに労働契約上の労働の提 供を義務付けまたは余儀なくするようなものとはいえず、主 治医の具体的な判断内容や職員の実際の病態・病状、職場で の順応状況によっては柔軟にテスト出局の内容や期間を検討 し、場合によっては短期間にできる点を考慮すると、期間の 合理性を否定すべきとまではいえない。

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後半の12週間はフルタイムの出 局で、かつ、通常の業務を想定 した作業が予定されている。 後半の12週間は職場の実態に合わせて通常業務を想定した作 業を⾏うこととされているが、制度上、作業の成果や責任等 が求められるものではない。 作業内容は上司が指⽰すること になっている。 テスト出局はY協会の職場の資源を利⽤し、その管理下で作業 をするものであるから、管理職の指⽰に従うこと⾃体は当然 である。 テスト出局は復職判断の重要な 考慮要素となるため、復職を希 望するものはテスト出局に応じ ざるを得ず、⾃由な同意に基づ くものではない。 テスト出局の前提となる傷病休職はそもそも解雇猶予の制度 であり、テスト出局が職場復帰援助措置義務に沿う制度であ る以上、テスト出局の状況が復職の判断材料とされることを もって、テスト出局が制度として労働契約上の労働の提供を 義務付けまたは余儀なくするものとはいえない。 傷病⼿当を受給できることはリ ハビリ出局を無給とすることを 正当化しない。 健康保険法に基づく保険給付の受給ができることや、テスト 出局中交通費も⽀給されることからすれば、制度設計上、テ スト出局中の経済的負担の軽減が図られており、テスト出局 が制度として労働契約上の労働の提供を義務付けまたは余儀 なくするとの評価につながらない。 運⽤上の問題の有無 上司から業務の指⽰を受けて⾏ い、スピードが要求され、責任 も⽣じるものであった。 出勤時間が厳格に運⽤されてい た。 Xが実際にニュース制作業務等を担当したニュース内容を⾒て も、原告に相当のニュース制作業務等の経験があることに照 らすと、作業⾃体にそれほど負担感があるものではない。 確かにXが本件テスト出局中に⾏ったニュース制作業務等は、 実際に放送されていることからしても職員が本来的業務とし て⾏う事の⼀部を担当したものではあるが、実際に⾏った役 割や作業内容が本来Xが果たすべきものと同⽔準に⾄っていた とまでは認められない。 [2]争点②(本件テスト出局の開始から本件解職までの間に、休職事由が消滅したとい えるか):消滅していない (1)主治医の意⾒  本判決では、Xの主治医であるD医師が、本件テスト出局の開始から本件解職までの間 に疾病が治癒し、復職可能な状況にあったと判断しているが、D医師の判断は、Xが規則 正しい⽣活を送っていることを主な根拠に復帰可能と判断したにすぎず、「Xが傷病⽋勤 及び傷病休職以前に⾏っていた業務の負荷にどの程度耐えられるかどうかの考慮や検証が ⼗分に⾏えていないのではないかという疑問があ」ること等から本件テスト開⽰時点や開 始後間がない段階で、Xの休職事由が消滅したと認めるに⾜りるものとはいえないとし た。  さらに、本件テスト出局中⽌後、D医師がY協会に求められて提出した判断について、 D医師とY協会の産業医や管理職との⾯談等が実現しなかったため、「判断……の前提と して、本件テスト出局の状況、Xの勤務環境や業務内容について⼗分な情報が提供されて いない可能性が否定できない」とした。  以上から、D医師の意⾒によっても、Xについて、本件テスト出局開始時から本件解職 に⾄るまでの間に、疾病が治癒し、復職可能な状態にあったと認められるかについては、 疑問が残るとした。 (2)産業医および第三者の専⾨医の意⾒  Y協会は、産業医であるB医師およびC医師に加え、E⼤学医学部精神神経医学講座教授 であるE医師からも意⾒書を取得しているところ、各意⾒書はXの復職は時期尚早または 不可である旨結論付けている。

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 本判決では、本件テスト出局においても、復職がかかった重要な段階であったにもかか わらず、原告がストレスに対して過剰に反応し、衝動的または感情的で、攻撃的な対応に 出てしまう場⾯が繰り返し⾒られたこと等から、Xの疾病が根本的な解決に⾄っていない 可能性があるという各意⾒は⾸肯できると判⽰した。

3 実務上のポイント

[1]テスト出局を無給とする点について  本件は判断枠組みとして、本件テスト出局が就業規則上の無給休職扱期間中になされた ものであることから、その期間中の作業には賃⾦が⽀払われないことが原則と⽰しつつ、 「被告のテスト出局が、傷病休職中にもかかわらず、職員に労働契約上の労務の提供を義 務付け⼜は余儀なくするものであり、実際にも本件テスト出局中にXが⾏った作業が労働 契約上の労務の提供といえる」場合は最低賃⾦法が適⽤されるとして、この点を制度⾯と 運⽤⾯に分けて検討している点が注⽬される。  本判決の判断は、リハビリ出勤の制度設計の際に参考になると思われるが、例えば (ⅰ)制度上、作業の成果や責任等が求められるような建付けとしない (ⅱ)リハビリ出勤の期間は合理的に説明がつく範囲にする (ⅲ)無給のリハビリ出勤期間中、健康保険法に基づく保険給付や交通費を受給できるよ うにするなどの経済負担の軽減を図る といった点に注意しておくべきであろう。  なお、学説の中には、リハビリ出勤を無給とするためには、「使⽤者との使⽤従属関係 にないところで、純粋に任意になされているという必要がある」とし、「休職者が、純粋 に任意にリハビリのための作業に従事したと⾔えるためには、休職者に対して『リハビリ 勤務に応じる義務はない』と告げるだけでは⾜りず、リハビリ勤務の参加の有無やリハビ リ勤務中の状況を復職判断において考慮しないという制度設計をする必要がある」(島⽥ 裕⼦「リハビリ勤務の法的性質」⺠商法雑誌144巻3号407ページ)とするものがある が、本判決は、「テスト出局の状況が復職の判断材料とされることをもって、テスト出局 が制度⾃体として労働契約上の労働の提供を義務付け⼜は余儀なくするようなものとはい うことはできない」と述べているので、このような学説の⽴場は採⽤しなかったといえ る。 [2]主治医と産業医の判断が分かれた点について  実務上、主治医が復職可能と判断する⼀⽅、産業医が復職不可と判断するケースはよく ⾒られる。主治医の判断は、厚⽣労働省「⼼の健康問題により休業した労働者の職場復帰 ⽀援の⼿引き」にて指摘されているとおり、「病状の回復程度によって職場復帰の可能性 を判断していることが多く、それはただちに職場で求められる業務遂⾏能⼒まで回復して いるか否かの判断とは限らないことにも留意すべき」である。本件でも、Xの勤務環境や 業務内容について考慮が不⼗分であった点が重視されており、実務上注⽬に値する。  また、本判決では特段⾔及されていないが、医師の専⾨性を判断の考慮要素とする裁判 例(エール・フランス事件 東京地裁 昭59.1.27判決 労判423号23ページ)も存在す るところ、産業医の専⾨が精神医学でない場合、本件Y協会のように外部専⾨医の意⾒書 を取得することも検討に値する。 【著者紹介】 ⼤川 信太郎 おおかわ しんたろう 森・濱⽥松本法律事務所 弁護⼠ 2015年東京⼤学法学部卒業、2016年弁護⼠登録。 ◆森・濱⽥松本法律事務所 http://www.mhmjapan.com/

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■裁判例と掲載誌 ①本⽂中で引⽤した裁判例の表記⽅法は、次のとおり 事件名(1)係属裁判所(2)法廷もしくは⽀部名(3)判決・決定⾔渡⽇(4)判決・決定の別 (5)掲載誌名および通巻番号(6) (例)⼩倉電話局事件(1)最⾼裁(2)三⼩(3)昭43.3.12(4)判決(5)⺠集22巻3号(6) ②裁判所名は、次のとおり略称した 最⾼裁 → 最⾼裁判所(後ろに続く「⼀⼩」「⼆⼩」「三⼩」および「⼤」とは、 それぞれ第⼀・第⼆・第三の各⼩法廷、および⼤法廷における⾔い渡しであること を⽰す) ⾼裁 → ⾼等裁判所 地裁 → 地⽅裁判所(⽀部については、「○○地裁△△⽀部」のように続けて記 載) ③掲載誌の略称は次のとおり(五⼗⾳順) 刑集:『最⾼裁判所刑事判例集』(最⾼裁判所) 判時:『判例時報』(判例時報社) 判タ:『判例タイムズ』(判例タイムズ社) ⺠集:『最⾼裁判所⺠事判例集』(最⾼裁判所) 労経速:『労働経済判例速報』(経団連) 労旬:『労働法律旬報』(労働旬報社) 労判:『労働判例』(産労総合研究所) 労⺠集:『労働関係⺠事裁判例集』(最⾼裁判所)

参照

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